IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日新電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-プラズマ処理装置 図1
  • 特開-プラズマ処理装置 図2
  • 特開-プラズマ処理装置 図3
  • 特開-プラズマ処理装置 図4
  • 特開-プラズマ処理装置 図5
  • 特開-プラズマ処理装置 図6
  • 特開-プラズマ処理装置 図7
  • 特開-プラズマ処理装置 図8
  • 特開-プラズマ処理装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160480
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075520
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】東 大介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 将喜
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084AA07
2G084BB02
2G084BB14
2G084CC08
2G084CC09
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD04
2G084DD12
2G084DD22
2G084DD25
2G084DD35
2G084DD55
2G084FF07
2G084FF32
2G084HH02
2G084HH18
2G084HH20
2G084HH26
2G084HH30
2G084HH34
2G084HH42
2G084HH45
2G084HH52
(57)【要約】
【課題】複数のアンテナを用いてプラズマを安定させながら処理室の内部の被処理物に所要のプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置(1)は、筐体(2)と、筐体(2)の内部にプラズマを発生させるための磁界を生成する、複数のアンテナ(7)と、複数のアンテナ(7)のそれぞれに、それぞれ磁界を生成させるための高周波電流を供給する、少なくとも2つの電源(8)と、制御部(C)と、を備える。電源(8)は、プラズマを所要の周期で間歇的に発生させるように、周期のうちの所要のデューティ比の第1期間において、プラズマを発生させる高周波電流を供給する。制御部(C)は、少なくとも2つの電源(8)におけるデューティ比を個別に制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、
前記処理室の内部にプラズマを発生させるための磁界を生成する、複数のアンテナと、
前記複数のアンテナに前記磁界を生成させるための高周波電流を供給する、少なくとも2つの電源と、
制御部と、を備え、
前記電源は、前記プラズマを所要の周期で間歇的に発生させるように、前記周期のうちの所要のデューティ比の第1期間において、前記プラズマを発生させる高周波電流を供給する電源であり、
前記制御部は、
前記少なくとも2つの電源における前記デューティ比を個別に制御する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記処理室の内部に生じたプラズマの発光をモニタする、複数のプラズマ発光モニタを、さらに備え、
前記制御部は、前記複数のプラズマ発光モニタの検出結果を用いて、前記少なくとも2つの電源における前記デューティ比を個別に制御する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記複数のアンテナは、所定の配列方向に沿って配列されており、
前記複数のプラズマ発光モニタには、前記配列方向及び当該配列方向に直交する直交方向の各々の方向に沿って複数設けられた前記プラズマ発光モニタが含まれている、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記複数のアンテナは、所定の配列方向に沿って配列されており、
前記処理室の内部で被処理物を前記配列方向に搬送する搬送機構を、さらに備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記処理室の内部に生じたプラズマの発光をモニタする、複数のプラズマ発光モニタを、さらに備え、
前記複数のプラズマ発光モニタは、前記配列方向に沿って設けられ、
前記制御部は、前記複数のプラズマ発光モニタの検出結果を用いて、前記少なくとも2つの電源における前記デューティ比を個別に制御する、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記被処理物の温度を検知する、複数の温度検知部を、さらに備え、
前記複数の温度検知部は、前記配列方向に沿って設けられ、
前記制御部は、前記複数の温度検知部の検知結果を用いて、前記少なくとも2つの電源における前記デューティ比を個別に制御する、請求項4または5に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器内に配置したアンテナを用いて当該真空容器内に誘導結合性のプラズマを発生させるプラズマ処理装置が知られている。プラズマ処理装置は、その種別に応じて、発生させたプラズマを用いた所定のプラズマ処理を被処理物に施す。
【0003】
また、プラズマ処理装置においては、真空容器内に複数のアンテナを設けて被処理物にプラズマ処理を行うものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-69653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマ処理装置において、複数のアンテナを用いてプラズマを安定させながら処理室の内部の被処理物に所要のプラズマ処理を行うことについては改善の余地がある。
【0006】
本開示は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、複数のアンテナを用いてプラズマを安定させながら処理室の内部の被処理物に所要のプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係るプラズマ処理装置は、処理室と、前記処理室の内部にプラズマを発生させるための磁界を生成する、複数のアンテナと、前記複数のアンテナに前記磁界を生成させるための高周波電流を供給する、少なくとも2つの電源と、制御部と、を備え、前記電源は、前記プラズマを所要の周期で間歇的に発生させるように、前記周期のうちの所要のデューティ比の第1期間において、前記プラズマを発生させる高周波電流を供給する電源であり、前記制御部は、前記少なくとも2つの電源における前記デューティ比を個別に制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、複数のアンテナを用いてプラズマを安定させながら処理室の内部の被処理物に所要のプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置の構成を説明する図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】上記プラズマ処理装置の要部構成を示す図である。
図4図1に示した電源の具体的な動作例を示す図である。
図5】上記プラズマ処理装置において、デューティ比を変更した場合での発光強度比の変化の具体例を示すグラフである。
図6】上記プラズマ処理装置において、デューティ比を変更した場合での成膜速度の変化の具体例を示すグラフである。
図7】本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置の要部構成を説明する図である。
図8図7に示したプラズマ処理装置において、デューティ比を変更した場合での表面温度と成膜速度との具体的な関係の例を説明するグラフである。
図9図7に示したプラズマ処理装置の変形例の要部構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1について、図1乃至図4を用いて詳細に説明する。図1は、本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置1の構成を説明する図である。図2は、図1のII-II線断面図である。図3は、上記プラズマ処理装置1の要部構成を示す図である。図4は、図1に示した電源8の具体的な動作例を示す図である。
【0011】
なお、以下の説明では、所定のプラズマ処理として、誘導結合性のプラズマを使用したプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相堆積)法によって、被処理物としての被処理サンプルWの表面に所定の皮膜を成膜する成膜処理を行うプラズマ処理装置1を例示して説明する。
【0012】
しかしながら、本開示は、所定のプラズマ処理として、例えば、スパッタ法によって被処理サンプルWに所定の皮膜を成膜する成膜処理を行うプラズマ処理装置に適用することができる。また、本開示は、所定のプラズマ処理として、プラズマを用いて、被処理サンプルWの表面に対して、所定の加工を行う表面加工処理、例えば、エッチング処理あるいはアッシング処理を行うプラズマ処理装置に適用することができる。なお、スパッタ法を行うプラズマ処理装置においては、ターゲットは、例えば、後述するプラズマ生成領域HAの内部に設置される。
【0013】
<プラズマ処理装置1の構成>
図1に示すように、本実施形態1のプラズマ処理装置1は、筐体2と、フランジ3と、真空カバー4と、アンテナカバー5と、ステージ6と、を備えている。また、プラズマ処理装置1は、アンテナ7と、制御部Cと、ステージ駆動部SDと、プラズマ発光モニタPDと、を備えている。さらに、プラズマ処理装置1では、被処理サンプルWは搬送機構によってステージ6と公知のロードロック室との間で搬送される(図示せず)。
【0014】
図2及び図3に示すように、プラズマ処理装置1には、複数、例えば、3つのアンテナ71、72、及び73(”7”で総称する)が設けられており、真空カバー4及びアンテナカバー5は、アンテナ7毎に設置されている。これらのアンテナ7は、例えば、隣接する2つのアンテナ7どうしが等間隔に配置された状態で、例えば、図2及び図3に示した所定の配列方向MHに沿って配列されている。
【0015】
被処理サンプルWは、例えば、液晶パネルディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)パネルディスプレイなどに用いられるガラス基板、合成樹脂基板であり得る。また、被処理サンプルWは、各種用途に用いられる半導体基板であり得る。プラズマ処理装置1は、上記所定のプラズマ処理によってバリア(防湿)膜などの所定の皮膜を被処理サンプルW上に成膜するほか、表面やコーティング層の少なくとも一部のエッチングや表面改質を行う。なお、被処理サンプルW以外に、立体的かつ比較的複雑な形状のボルトや金具等の治具などの構造物を被処理物として適用し得る。
【0016】
<筐体2>
筐体2は、被処理サンプルWに対して上記所定のプラズマ処理を行う処理室を構成するための筐体本体2aを備え、当該筐体本体2aの上部には、上記処理室の内部と外部とを連通する第1の開口部2bが設けられている。筐体2(筐体本体2a)の上面側には、複数の開口部を有するフランジ3が気密に取り付けられている。
【0017】
プラズマ処理装置1においては、筐体本体2aにフランジ3が取り付けられた状態において、フランジ3の開口部は、上記処理室の内部と外部とを連通する第1の開口部2bに含まれる。換言すれば、筐体2の上面側において、フランジ3及び真空カバー4が取り付けられた場合、第1の開口部2bはフランジ3及び真空カバー4によって閉塞される。
【0018】
また、筐体2には、上記所定のプラズマ処理に対応した、上記皮膜の成膜用ガスを含んだ処理ガスを筐体2のプラズマ生成領域HA(処理室)の内部に導入する処理ガス供給部を備えており(図示せず)、処理ガスの雰囲気下で当該プラズマ処理が行われるようになっている。なお、処理ガスは、例えば、アルゴン、水素、窒素、シラン、または酸素である。
【0019】
また、筐体2には、ステージ6の温度を検出する温度センサが設けられており(図示せず)、当該温度センサの検出結果は、制御部Cに出力される。そして、制御部Cは、入力した温度センサの検出結果を用いたフィードバック制御を行うことにより、上記プラズマ処理中に、ステージ6を予め定められた設定温度となるように制御する。
【0020】
また、筐体2には、図1に示すように、ステージ6を駆動するためのステージ駆動部SDが設けられている。ステージ駆動部SDは、図示しないモータ等の駆動機構を含んでおり、制御部Cからの指示に従って、ステージ6について、所定の駆動動作を行うよう構成されている。具体的にいえば、ステージ駆動部SDは、例えば、筐体2の内部で、被処理サンプルWを載置した状態のステージ6に揺動動作を行わせたり、ステージ6に回転動作を行わせたり、ステージ6に昇降動作を行わせたりするようになっている。
【0021】
<フランジ3>
フランジ3は、図2に示すように、例えば、互いに対向する2つの第1辺部3aと、第1辺部3aに直交するとともに、互いに対向する2つの第2辺部3b(図1)と、を有する矩形状の枠体を備えている。また、フランジ3は、例えば、上記枠体の内側において一方の第2辺部3bから他方の第2辺部3bにわたって設けられた、第3辺部3c及び第4辺部3dを備えている。換言すれば、これらの第3辺部3c及び第4辺部3dの各両端部は、第2辺部3bに連続して形成されている。第3辺部3c及び第4辺部3dは、2つの第1辺部3aの間において、第1辺部3aと平行となるように形成されてもよい。
【0022】
また、第1辺部3a、第2辺部3b、第3辺部3c、及び第4辺部3dはそれぞれ、第1の開口部2b側に突出する後述の突出部を有していてよい。なお、以下の説明では、第1辺部3a、第2辺部3b、第3辺部3c、及び第4辺部3dについて、辺部3hと総称する。
【0023】
<真空カバー4>
また、プラズマ処理装置1には、第1の開口部2bを閉塞する真空カバー4が、当該第1の開口部2bに脱着可能に取り付けられるように構成されている。つまり、真空カバー4は、第1の開口部2bを閉塞するようにフランジ3に気密に取り付けられるとともに、可逆的にフランジ3から取り外し可能に取り付けられる。
【0024】
ここで、フランジ3は、上記処理室の外部から当該処理室の内部に向かう方向において第1の開口部2bの開口面積を段階的に小さくするように形成された突出部を有していてよい。例えば、第1辺部3a、第3辺部3c及び第4辺部3dのそれぞれは、第1の開口部2bの内部において、真空カバー4の周縁部を係止するように突出する第1の支持部を有していてよい。第1の支持部は上記突出部の一部であってよい。
【0025】
また、真空カバー4は、外側カバーの一例であり、第2辺部3bの上面に当接するとともに、第1辺部3a、第3辺部3c及び第4辺部3dにおける第1の支持部の上面に当接して支持される。真空カバー4は、例えば、金属製である。
【0026】
<アンテナカバー5>
また、プラズマ処理装置1には、アンテナカバー5が第1の開口部2bの内部にてフランジ3に対し取り外し可能に支持されている。具体的には、アンテナカバー5は、図1及び図2に示すように、例えば、断面U字状に構成されたアンテナ収容部5aを備えている。また、アンテナカバー5は、カバー支持部5bと、カバー開口部5cとを備えている。カバー支持部5bは、断面U字状のアンテナ収容部5aの2つの端部から連続的に形成されるとともに、アンテナ収容部5aの端部から外向きに張り出すように形成された鍔部である。つまり、カバー支持部5bは、外向きフランジ形状を有する。
【0027】
ここで、例えば、フランジ3の辺部3hは、第1の開口部2bの内部において、アンテナカバー5の周縁部を係止するように突出する第2の支持部を有していてよい。第2の支持部は、上記突出部の一部であり、上記第1の支持部よりも第1の開口部2bの内部側に突出している(突出長が大きい)。アンテナカバー5が第1の開口部2bの内部に支持された状態において、カバー支持部5bは、フランジ3の辺部3h(の上記第2の支持部)によって支持される。また、アンテナカバー5は、アンテナ収容部5aによって囲まれて形成されたカバー開口部5cを有している。
【0028】
また、アンテナカバー5は、例えば、アルミナなどの誘電材料を用いて構成されており、誘電性を有する内側カバーを構成している。また、アンテナカバー5には、アンテナ収容部5aは、アンテナ7の形状に対応するように形成されている。アンテナ収容部5aは、アンテナ7が取り付けられた状態において、アンテナ7の外周面の一部を覆うような形状に構成されている。
【0029】
また、アンテナカバー5には、カバー支持部5bがフランジ3の辺部3hに取り外し可能に支持されている。さらに、アンテナカバー5には、カバー開口部5cが真空カバー4側に開口するように設けられている。このカバー開口部5cは、後述のアンテナ収容空間AKの一部を構成する第2の開口部の一例である。
【0030】
また、筐体2には、少なくとも真空カバー4及びアンテナカバー5によって囲まれたアンテナ収容空間AKが形成されている。本実施形態のプラズマ処理装置1には、アンテナ収容空間AKは、フランジ3の内壁面によっても囲まれている。このアンテナ収容空間AKは、包囲空間の一例であり、誘導結合性のプラズマを発生させるためのアンテナ7が収容されている。但し、このアンテナ収容空間AKには、その空間の大きさがアンテナ7によるプラズマを維持することができない大きさに設定されているため、プラズマ非生成領域として機能する。
【0031】
具体的いえば、筐体2には、第1の開口部2bの内部にアンテナカバー5を取り付けることによって、当該筐体2の内部空間が画定されてプラズマ生成領域HAが筐体本体2aの内部に形成される。このプラズマ生成領域HAの内部には、ステージ6及び当該ステージ6に支持された被処理サンプルWが配置されるようになっており、プラズマ生成領域HAが上記処理室を実質的に構成している。換言すれば、筐体2では、アンテナカバー5により、プラズマ生成領域HAと上記プラズマ非生成領域とが互いに区切られている。
【0032】
さらに、筐体2においては、フランジ3及び真空カバー4がそれぞれ筐体本体2a及びフランジ3に気密に取り付けられることにより、上記処理室を含んだ真空容器を構成している。つまり、図1に示すように、筐体2においては、真空ポンプPOが筐体本体2aに連結されており、制御部Cが真空ポンプPOの制御を行うことにより、プラズマ生成領域HAの内部は少なくともプラズマ処理の際に所定の真空度とされる。
【0033】
具体的にいえば、筐体2においては、真空ポンプPOを用いて排気することにより、プラズマ生成領域HA内が減圧されるとともに、アンテナ収容空間AKも減圧される。これは、アンテナカバー5と筐体2とが、互いに接する部分は真空シールされておらず、隙間を介してプラズマ生成領域HAとアンテナ収容空間AKとは互いに連通しているためである。
【0034】
また、アンテナ収容空間AKは、プラズマ生成領域HAと比べると狭く、プラズマの生成及び維持が困難な領域(プラズマ非生成領域)となっており、アンテナ7に通電してプラズマ生成領域HAにプラズマを発生させている状態において、アンテナ収容空間AKの気圧は、プラズマ生成領域HAと同等の、例えば1Pa~100Paであってよい。
【0035】
なお、図1に示すように、筐体2及びステージ6は、各々電気的に接地されている。また、筐体2には、プラズマ生成領域HAの内部での圧力(真空度)を検知する圧力計(図示せず)が設けられており、制御部Cは、当該圧力計の検知結果を用いて、プラズマ生成領域HAの内部の真空度の制御を行う。
【0036】
<アンテナ7>
アンテナ7は、例えば、円筒状に構成されるとともに、銅などの金属材料を用いて構成されている。また、アンテナ7は、配列方向MHに直交する直交方向TH(図3)に沿って平行に設けられた直線状部を有する直線状のアンテナ7である。
【0037】
また、アンテナ7の一方の端部及び他方の端部は、それぞれアンテナ絶縁部13A及び13Bを介して真空カバー4に電気的に絶縁された状態で設けられており、筐体2の外部に気密に引き出されている。換言すれば、アンテナ7においては、上記直線状部の両端部が、図1に示すように、各々略90°折り曲げられることにより、アンテナ7の一方の端部及び他方の端部が筐体2の上方に向かって伸ばされている。
【0038】
また、アンテナ7には、チラー12が接続されており、当該チラー12によって循環された冷却媒体、例えば、冷却水によってアンテナ7は所定温度に冷却されるようになっている。具体的には、チラー12は、図示しないポンプ等の駆動部を含み、冷却水を循環させるためのチラー本体12aと、チラー本体12aに気密に連結された配管12bとを備えている。
【0039】
また、配管12bは、アンテナ7の内部空間にも配置されており、アンテナ7の当該内部空間を冷却水の循環路として利用するよう構成されている。すなわち、アンテナ7には、図1に矢印R1及びR2にて示すように、アンテナ7の内部空間に冷却水を流すことにより、当該アンテナ7の冷却を行うようになっている。
【0040】
<電源8等>
また、アンテナ7の一方の端部及び他方の端部には、インピーダンス調整部9及びインピーダンス調整部10がそれぞれ電気的に接続されている。インピーダンス調整部9は、図1に示すように可変コンデンサを有する整合回路(マッチングボックス)を備えており、整合回路を介してアンテナ7の一方の端部が電源8に接続されている。また、インピーダンス調整部10は、可変コンデンサを備えており、アンテナ7の他方の端部は可変コンデンサを介して電気的に接地されている。
【0041】
電源8は、例えば、13.56MHzの高周波電力を、インピーダンス調整部10を介してアンテナ7の一方の端部に供給する。プラズマ処理装置1には、制御部Cがインピーダンス調整部10の上記可変コンデンサの容量を変更することにより、アンテナ7に高周波電力が効率的に供給されるように制御する。
【0042】
また、本実施形態1においては、電源8、インピーダンス調整部9、及びインピーダンス調整部10がアンテナ7毎に設けられている。換言すれば、本実施形態1のプラズマ処理装置1は、電源8、インピーダンス調整部9、アンテナ7、及びインピーダンス調整部10を備えた、高周波回路をアンテナ7毎に有する。
【0043】
具体的にいえば、本実施形態1においては、図3に示すように、3つのアンテナ71、72、及び73に応じて、3つの電源81、82、及び83(”8”で総称する)がそれぞれ設けられており、各電源8は、対応するアンテナ7に対して、インピーダンス調整部9及びインピーダンス調整部10を用いて、高周波電流を供給する。
【0044】
<プラズマ発光モニタPD>
また、図1乃至図3に示すように、本実施形態1のプラズマ処理装置1においては、筐体(処理室)2の内部に生じたプラズマの発光をモニタするプラズマ発光モニタPDが複数設けられている。具体的にいえば、図3に示すように、複数、例えば、3つのプラズマ発光モニタPDがアンテナ7の配列方向MHに沿って設けられている。また、複数、例えば、2つのプラズマ発光モニタPDが直交方向THに沿って設けられている。
【0045】
換言すれば、図3に示すように、3つの各プラズマ発光モニタPDがアンテナ7と対向するように当該アンテナ7の直交方向THに設けられ、2つの各プラズマ発光モニタPDが3つの各アンテナ7の長手方向の上記直線状部と対向するように設けられている。
【0046】
具体的にいえば、プラズマ発光モニタPDは、例えば、筐体2の内部のプラズマからの光を検知する受光素子と、当該受光素子が検知した検知光を分光する分光器と、を備えている(図示せず)。そして、プラズマ発光モニタPDでは、分光器は受光素子によって受光した光の波長スペクトル(つまり、プラズマの発光スぺクトル)を取得して、制御部Cに出力する。
【0047】
<制御部C>
制御部Cは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じてプラズマ処理装置1の各部の制御を行う機能ブロックである。具体的には、制御部Cは、プラズマ生成領域HAにおける被処理サンプルWのプラズマ処理について、所定の制御処理を実行する。
【0048】
また、本実施形態1においては、制御部Cは、アンテナ7毎の電源8(つまり、上記高周波回路)の制御を行うことにより、各アンテナ7で発生させるプラズマの生成制御を実行し得る。これにより、本実施形態1では、制御部Cは、アンテナ7をより適切に動作させることができ、アンテナ収容空間AKでのプラズマの発生を確実に抑制可能となる。この結果、本実施形態1では、アンテナ収容空間AKでの不必要なプラズマによるアンテナ7の損傷等の発生をより確実に抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態1の制御部Cにおいては、各電源8は、制御部Cからの指示に従って、対応するアンテナ7に対して供給する、高周波電流の大きさを周期的に増減させることにより、当該アンテナ7によるプラズマを所要の周期で間歇的に発生させるように、周期のうちの所要のデューティ比の第1期間において、プラズマを発生させる高周波電流を供給する。換言すれば、本実施形態1の制御部Cは、3つの電源8におけるデューティ比を個別に制御する。
【0050】
具体的にいえば、制御部Cは、1組のアンテナ7及び電源8に対して、図4に例示するように、オンの期間(上記第1期間)及びオフの期間を調整することによって、当該電源8におけるデューティ比の個別制御を行う。また、本実施形態1では、制御部Cは、後に詳述するように、複数のプラズマ発光モニタPDの検出結果を用いて、複数の電源8における上記デューティ比を個別に制御する。
【0051】
なお、上記周期が、例えば、1msecの場合、オンの期間及びオフの期間は、それぞれ、例えば、0.9msec~0.1msecの範囲内の値及び0.1msec~0.9msecの範囲内の値である。具体的には、例えば、0.8msecのプラズマのオンの期間及び0.2msecのプラズマのオフの期間の時間設定をしてもよい。
【0052】
また、制御部Cは、5つの各プラズマ発光モニタPDの検出結果を用いて、3つの電源8における上記デューティ比を個別に制御する。具体的にいえば、制御部Cは、5つの各プラズマ発光モニタPDから検出結果が入力されると、所要の分光強度(上記波長スペクトルにおける所要の波長帯の強度)に基づき、筐体2の内部に生じたプラズマの発光強度を取得する。そして、制御部Cは、取得した筐体2の内部のプラズマの発光強度を基に、電源8毎の上記デューティ比を決定して、決定したデューティ比に従って、対応する電源8の駆動制御を行う。
【0053】
また、制御部Cは、発光分光分析装置(Optical Emission Spectrometer)としても機能するようになっており、各プラズマ発光モニタPDの上記受光素子の検知光に対して、所定の分光分析処理を実行するよう構成されている。これにより、制御部Cにおいては、筐体2の内部にプラズマが発生した場合、分光分析結果を基に、そのプラズマに含まれる、元素及び元素の濃度を検知することが可能となる。なお、上記プラズマの発光強度及び分光分析結果は、プラズマ発光モニタPDの検出結果であり、プラズマに関する所定の発光データの具体例である。
【0054】
<作用>
以上のように構成された本実施形態1のプラズマ処理装置1は、筐体2と、筐体2の内部にプラズマを発生させるための磁界を生成する、3つのアンテナ7と、3つのアンテナ7のそれぞれに、それぞれ磁界を生成させるための高周波電流を供給する、3つの電源8と、制御部Cと、を備える。3つの電源8は、プラズマを所要の周期で間歇的に発生させるように、周期のうちの所要のデューティ比の第1期間において、プラズマを発生させる高周波電流を供給する。
【0055】
制御部Cは、3つの電源8におけるデューティ比を個別に制御する。これにより、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、3つのアンテナ7を用いてプラズマを安定させながら筐体(処理室)2の内部の被処理サンプルWに所要のプラズマ処理を行うことができる。なお、ここでいう所要のプラズマ処理とは、被処理サンプルWに対して、例えば、面内均一に成膜処理などの処理を行うことをいう。
【0056】
具体的にいえば、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、電源8におけるデューティ比を個別に制御することにより、各アンテナ7に対応した、上記高周波回路のインピーダンス(例えば、上記整合回路の可変コンデンサの容量)を変更することなく、各アンテナ7によるプラズマを安定させた状態で維持することができる。この結果、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、プラズマに含まれたラジカル及びイオンなどの被処理サンプルWに向かう活性種のフラックス比の制御をアンテナ7単位に適切に行うことができ、被処理サンプルWに対する所要のプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0057】
また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、アンテナ7単位に上記デューティ比を制御することから、各アンテナ7によるプラズマの密度を局所的に調整することができる。この結果、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、被処理サンプルWに対して、アンテナ7毎に異なる条件での所要のプラズマ処理を行うことができる。換言すれば、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、アンテナ7単位に、被処理サンプルWに対して、例えば、異なる特性の皮膜を成膜したり、異なる条件でエッチング処理したりすることができる。
【0058】
また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、図3に示したように、3つのプラズマ発光モニタPD及び2つのプラズマ発光モニタPDが配列方向MH及び直交方向THの各々の方向に沿ってそれぞれ設けられている。また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cは5つのプラズマ発光モニタPDの検出結果を用いて、3つの電源8における上記デューティ比を個別に制御する。
【0059】
これにより、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cは3つの各アンテナ7によるプラズマの状態を把握することができる。この結果、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cはプラズマの安定な状態を確保しつつ、被処理サンプルWに対する高精度なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0060】
具体的にいえば、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cが5つの各プラズマ発光モニタPDの検出結果を用いることにより、制御部Cは、被処理サンプルWに向かう、上記活性種のフラックスに対して、同じ分子量においてもラジカルまたはイオンの解離状態に対応したプラズマの発光強度で区別して、当該発光強度をリアルタイムで検知することができる。この結果、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cはアンテナ7単位に、所望の活性種のフラックス比でのプラズマ処理を被処理サンプルWに施すことができる。
【0061】
換言すれば、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cが5つのプラズマ発光モニタPDの各検出結果に含まれた発光強度が均一になるように、各アンテナ7のデューティ比を制御することにより、被処理サンプルWに対するフラックス比を均一化して、成膜される、皮膜の膜質分布を均一にすることができる。
【0062】
また、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cは電源8における上記デューティ比の個別制御を行うことから、アンテナ7毎に高周波電流を流さない、オフの期間(つまり、上記第1期間以外の期間)を容易に設定することができる。これにより、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cはオフの期間の間、被処理サンプルWに対して、プラズマによる温度上昇及びシース電界を低下させることが可能となり、当該被処理サンプルWに対するイオン衝撃によるダメージを抑制することができる。
【0063】
<動作例>
ここで、図5及び図6も参照して、本実施形態1のプラズマ処理装置1における、制御部Cの制御動作による効果について具体的に説明する。図5は、上記プラズマ処理装置1において、デューティ比を変更した場合での発光強度比の変化の具体例を示すグラフである。図6は、上記プラズマ処理装置1において、デューティ比を変更した場合での成膜速度の変化の具体例を示すグラフである。
【0064】
なお、図5を用いた説明においては、本実施形態1のプラズマ処理装置1に対して、例えば、フッ化シリコンガス(SiF4)、窒素ガス、及び水素ガスを上記処理ガスとした状態で、被処理サンプルWにシリコン窒化膜を形成する、第1検証試験の結果を例示して説明する。
【0065】
また、図5において、プラズマ発光モニタPDの検出結果である、プラズマに含まれた波長スペクトルとして、シリコンは253nm、フッ化シリコン(SiF)は295nm、窒素ガスは316nm、及び水素ガスは657nmを採用して、下記の各発光強度比を求めた。さらに、この第1検証試験では、デューティ比の周期として、例えば、1msecを用いて、オンの期間/オフの期間のデューティ比を変更した。
【0066】
図5の横軸に例示するように、制御部Cがアンテナ7のデューティ比を変更した場合、窒素ガス/フッ化シリコンの発光強度比は、デューティ比に応じて、同図5に△にて示す値が求められた。また、この検証試験の結果、被処理サンプルWにおいては、デューティ比が小さいほど、長寿命である窒素ガスのラジカルが当該被処理サンプルW近傍に多数存在する。このため、被処理サンプルWにおいては、窒化が促進されて、良質なシリコン窒化膜が成膜されることが確認された。
【0067】
また、制御部Cがアンテナ7のデューティ比を変更した場合、シリコン/フッ化シリコンの発光強度比は、デューティ比に応じて、同図5に〇にて示す値が求められた。また、この検証試験の結果、フッ化シリコンガスのプラズマによる分解に対して、シリコンのラジカルの存在は過剰なプラズマ反応と考えられる。また、シリコンのラジカルは、未結合手も多いことから、シリコン窒化膜中への欠陥要因となる。このため、シリコンのラジカルが少ない方、つまり、デューティ比が小さいほど、良質なシリコン窒化膜を被処理サンプルWに成膜できることが確認された。
【0068】
また、制御部Cがアンテナ7のデューティ比を変更した場合、窒素ガス/水素ガスの発光強度比は、デューティ比に応じて、同図5に□にて示す値が求められた。また、この検証試験の結果、被処理サンプルWにおいては、デューティ比が小さいほど、長寿命である窒素ガスのラジカルが当該被処理サンプルW近傍に多数存在する。このため、被処理サンプルWにおいては、窒化が促進されて、良質なシリコン窒化膜が成膜されることが確認された。
【0069】
以上のように、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cが5つの各プラズマ発光モニタPDの検出結果を用いることにより、所望の活性種のフラックス比でのプラズマ処理を被処理サンプルWに施すことができることが実証された。
【0070】
次に、図6を用いて、本実施形態1のプラズマ処理装置1における、第2検証試験の結果例を説明する。この第2検証試験では、上記第1検証試験と同じ処理ガスを用いて、被処理サンプルWにシリコン窒化膜を形成した場合における成膜速度を測定した。
【0071】
図6に点線70にて示すように、第2検証試験において、制御部Cがアンテナ7のデューティ比を変更することにより、被処理サンプルWに対する、シリコン窒化膜の成膜速度を制御(変更)できることが確かめられた。換言すれば、本実施形態1のプラズマ処理装置1では、制御部Cはプラズマ処理の処理時間を鑑みつつ、良質な皮膜の成膜処理を選択的に行えることが実証された。
【0072】
また、デューティ比と成膜速度は単純な比例関係になく、オンの期間を短くする割に成膜速度が高い。そのため、デューティ比の制御によって、被処理サンプルW0の表面の温度上昇(オンの期間に比例する事象)を抑えつつ、高い成膜速度を実現することができることが確認された。
【0073】
なお、複数のアンテナに対して、電源からの投入電力の増減調整または高周波電流の振幅変調などを一括して制御する比較例では、本実施形態1のものと異なり、上記高周波回路のインピーダンスが大きく変化して、上記整合回路内の可変コンデンサの容量もまた変化することにより、プラズマが不安定なものとなる。
【0074】
換言すれば、比較例では、可変コンデンサの容量が変化すると、プラズマ点灯時において、上記整合回路でのマッチングまでに時間を要することとなり、プロセス処理が不安定になったり、可変コンデンサの摺動部の劣化が進行し易くなったりするという別の問題点が生じる。さらに、この比較例においては、本実施形態1のものと異なり、筐体(処理室)内のプラズマの密度を局所的に調整(制御)することが困難であり、本実施形態1のものと異なり、単一の処理室の内部において、異なる条件でのプラズマ処理を行うことは難しいものであった。
【0075】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について図7を用いて具体的に説明する。図7は、本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置1の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。また、図7では、図面の簡略化のために、図1に示したステージ駆動部SDの図示は省略している。
【0076】
実施形態2と実施形態1との主な相違点は、筐体2の内部で被処理サンプルW0を配列方向MHに搬送する搬送機構M1を設けるとともに、被処理サンプルW0の温度を検知する温度検知部S1、S2を設けた点である。
【0077】
図7に示すように、本実施形態2のプラズマ処理装置1においては、被処理物としての被処理サンプルW0がステージ61上に設置されている。ステージ61には、例えば、図1に示したステージ駆動部SDに加えて、当該ステージ61を配列方向MHに沿って往復移動するための搬送機構M1が設けられている。搬送機構M1は、図示しないモータ等の駆動部材を備えるとともに、制御部Cからの指示に従って、被処理サンプルW0を載置したステージ61を、図7に示す状態から同図7に矢印SHに示す方向(つまり、配列方向MH)に沿って搬送する。
【0078】
換言すれば、本実施形態2のプラズマ処理装置1においては、被処理サンプルW0は、搬送機構M1の動作によるステージ61の移動に応じて、3つのアンテナ7の下方、つまり、各アンテナ7による局所的なプラズマの発生領域を順次通過するように搬送される。
【0079】
また、本実施形態2のプラズマ処理装置1においては、複数、例えば、2つの温度検知部S1、S2が配列方向MHに沿って設けられている。具体的にいえば、図7に示すように、温度検知部S1がアンテナ71とアンテナ72との間で第3辺部3cに設置され、温度検知部S2がアンテナ72とアンテナ72との間で第4辺部3dに設置されている。また、温度検知部S1、S2は、各々、その下方を通過する被処理サンプルW0の温度として、当該被処理サンプルW0の表面温度を検知して、検知結果を制御部Cに出力するようになっている。
【0080】
また、本実施形態2のプラズマ処理装置1においては、制御部Cは、実施形態1のものと同様に、5つの各プラズマ発光モニタPDから検出結果が入力される。また、制御部Cは、各プラズマ発光モニタPDから検出結果と2つの温度検知部S1、S2の検知結果を用いて、3つのアンテナ7毎に上記デューティ比を個別に制御する。
【0081】
以上の構成により、本実施形態2のプラズマ処理装置1は、実施形態1のものと同様な効果を奏する。
【0082】
また、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、被処理サンプルW0は搬送機構M1によって3つのアンテナ7の配列方向MHに沿って搬送されるので、当該被処理サンプルW0に対して、異なるアンテナ7によるプラズマを用いたプラズマ処理を施すことができ、異なる条件でのプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0083】
換言すれば、本実施形態2では、実施形態1に比べて、各アンテナ7によるプラズマの密度を局所的により容易に調整することができることから、アンテナ7単位に、被処理サンプルW0に対して、例えば、異なる特性の複数の皮膜を積層するように順次成膜したり、異なる条件で、硬度が互いに相違する積層膜に対して順次エッチング処理したりすることができる。
【0084】
また、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、制御部Cは、実施形態1のものと同様に、5つのプラズマ発光モニタPDの検出結果を用いて、3つの電源8における上記デューティ比を個別に制御する。これにより、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、制御部Cは3つの各アンテナ7によるプラズマの状態を把握することができ、制御部Cはプラズマの安定な状態を確保しつつ、被処理サンプルWに対する高精度なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0085】
また、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、制御部Cは、2つの温度検知部S1、S2の検知結果を用いて、3つの電源8における上記デューティ比を個別に制御する。これにより、本実施形態2のプラズマ処理装置1では、制御部Cは被処理サンプルW0の温度を把握することができることから、プラズマの安定な状態を確保しつつ、被処理サンプルW0に対するより高精度なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0086】
ここで、図8を用いて、本実施形態2のプラズマ処理装置1における、第3検証試験の結果例を説明する。図8は、図7に示したプラズマ処理装置1において、デューティ比を変更した場合での表面温度と成膜速度との具体的な関係の例を説明するグラフである。この第3検証試験では、上記第1検証試験と同じ処理ガスを用いて、被処理サンプルW0にシリコン窒化膜を形成した。
【0087】
また、第3検証試験では、上記温度センサによって検出される、ステージ61の温度を、例えば、150℃(図8に実線91及び実線94にて図示)または240℃(図8に点線92及び点線93にて図示)とした場合について説明する。また、図8では、縦軸が左右の2軸に応じたものであり、点線93と実線94は左の縦軸、実線91と点線92は右の縦軸に対応している。さらに、左の縦軸の成膜速度は、例えば、エリプソメーターで測定した膜厚と成膜時間とを基に求めた。
【0088】
図8に実線91及び点線92に示すように、いずれのステージ61の温度の場合も、被処理サンプルW0の温度は、デューティ比の減少に伴いリニアに減少した。これは、デューティ比に関わらず、被処理サンプルW0の温度がオンの期間の長さに比例することを表す。一方、いずれのステージ61の温度の場合も、成膜速度は、デューティ比の減少に伴いリニアに減少した場合の値よりも大きい値をとった。
【0089】
これは、デューティ比を下げることにより、オンの期間の長さあたりの成膜速度は上昇することを表す。この理由としては、プラズマ消灯中においても残留したラジカルがプラズマ処理に寄与するためである。結果として、プラズマ処理中に高周波電流のデューティ比を下げることにより、プラズマ処理に要するオンの期間を短縮でき、被処理サンプルW0の温度を低減できる。
【0090】
なお、被処理サンプルW0の表面温度が300℃以下である場合には、制御部Cが、各アンテナ7のデューティ比を変更する場合、ステージ61の温度に関わらず、被処理サンプルW0の表面温度及び被処理サンプルW0に対するシリコン窒化膜の成膜速度も変化することが確認された。
【0091】
また、図8に実線94及び点線93に示すように、被処理サンプルW0の表面温度が300℃以上500℃以下である場合には、制御部Cが、各アンテナ7のデューティ比を変更する場合、ステージ61の温度に関わらず、被処理サンプルW0の表面温度及び被処理サンプルW0に対するシリコン窒化膜の成膜速度も変化することが確認された。さらに、被処理サンプルW0の表面温度が高い温度である場合の方が、各アンテナ7のデューティ比を大きくするにつれて、被処理サンプルW0の表面温度が低い温度である場合に比べて、当該表面温度の温度上昇及び上記成膜速度の速度上昇も大きくなることが実証された。
【0092】
〔変形例〕
本開示の変形例について、図9を用いて具体的に説明する。図9は、図7に示したプラズマ処理装置1の変形例の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0093】
変形例と実施形態2との主な相違点は、搬送機構M1に代えて、ステージ6上で被処理サンプルW0を配列方向MHに沿って搬送する搬送機構M2を設けた点である。図9に示すように、本変形例のプラズマ処理装置1においては、ステージ6上で被処理サンプルW0を挟持した状態で配列方向MHに沿って往復移動するための搬送機構M2が設けられている。
【0094】
搬送機構M2は、図示しないモータ等の駆動部材を備えるとともに、制御部Cからの指示に従って、被処理サンプルW0を、図9に示す状態から同図9に矢印SHに示す方向(つまり、配列方向MH)に沿って搬送する。以上の構成により、本変形例のプラズマ処理装置1は、実施形態2のものと同様な効果を奏する。
【0095】
なお、上記の説明では、直線状のアンテナ7を用いた場合について説明したが、本開示は処理室(筐体2)の内部にプラズマを発生させるための磁界を生成するものであれば何等限定されない。例えば、渦巻状に形成されたアンテナを用いることもできる。
【0096】
また、上記の説明では、少なくとも2つの電源8として、アンテナ7の設置数と同じ3つの電源8を用いた場合について説明したが、本開示の電源8の設置数はこれに限定されるものではなく、制御部Cが少なくとも2つの電源8におけるデューティ比を個別に制御するものであればよい。具体的にいえば、例えば、4つのアンテナ7を設けた場合において、1つの電源8に対して、2つのアンテナ7を並列または直列に接続することにより、制御部Cは、当該1つの電源8と、残り2つのアンテナ7にそれぞれ直列に接続された2つの各電源8とにおいて、3つの電源8におけるデューティ比を個別に制御するものでもよい。
【0097】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本開示の第1態様のプラズマ処理装置は、処理室と、前記処理室の内部にプラズマを発生させるための磁界を生成する、複数のアンテナと、前記複数のアンテナに前記磁界を生成させるための高周波電流を供給する、少なくとも2つの電源と、制御部と、を備え、前記電源は、前記プラズマを所要の周期で間歇的に発生させるように、前記周期のうちの所要のデューティ比の第1期間において、前記プラズマを発生させる高周波電流を供給する電源であり、前記制御部は、前記少なくとも2つの電源における前記デューティ比を個別に制御する。
【0098】
上記構成によれば、複数のアンテナを用いてプラズマを安定させながら処理室の内部の被処理物に所要のプラズマ処理を行うことができる。
【0099】
本開示の第2態様は、第1態様のプラズマ処理装置において、前記処理室の内部に生じたプラズマの発光をモニタする、複数のプラズマ発光モニタを、さらに備え、前記制御部は、前記複数のプラズマ発光モニタの検出結果を用いて、前記少なくとも2つの電源における前記デューティ比を個別に制御してもよい。
【0100】
上記構成によれば、制御部は複数の各アンテナによるプラズマの状態を把握することができることから、複数のアンテナを用いてプラズマを安定させながら処理室の内部の被処理物に所要のプラズマ処理をより高精度に行うことができる。
【0101】
本開示の第3態様は、第2態様のプラズマ処理装置において、前記複数のアンテナは、所定の配列方向に沿って配列されており、前記複数のプラズマ発光モニタには、前記配列方向及び当該配列方向に直交する直交方向の各々の方向に沿って複数設けられた前記プラズマ発光モニタが含まれてもよい。
【0102】
上記構成によれば、複数のプラズマ発光モニタが複数のアンテナの配列方向及び当該配列方向に直交する直交方向の各々の方向に沿って設けられているので、プラズマの安定な状態を確保しつつ、被処理物に対する高精度なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0103】
本開示の第4態様は、第1態様から第3態様のいずれかの態様のプラズマ処理装置において、前記複数のアンテナは、所定の配列方向に沿って配列されており、前記処理室の内部で被処理物を前記配列方向に搬送する搬送機構を、さらに備えてもよい。
【0104】
上記構成によれば、被処理物は搬送機構によって複数のアンテナの配列方向に沿って搬送されるので、当該被処理物に対して、異なるアンテナによるプラズマを用いたプラズマ処理を施すことができ、異なる条件でのプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0105】
本開示の第5態様は、第4態様のプラズマ処理装置において、前記処理室の内部に生じたプラズマの発光をモニタする、複数のプラズマ発光モニタを、さらに備え、前記複数のプラズマ発光モニタは、前記配列方向に沿って設けられ、前記制御部は、前記複数のプラズマ発光モニタの検出結果を用いて、前記少なくとも2つの電源における前記デューティ比を個別に制御してもよい。
【0106】
上記構成によれば、制御部は複数の各アンテナによるプラズマの状態を把握することができることから、被処理物に対して、異なるアンテナによるプラズマを用いたより高精度なプラズマ処理を施すことができ、異なる条件でのより高精度なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0107】
本開示の第6態様は、第1態様から第5態様のいずれかの態様のプラズマ処理装置において、前記被処理物の温度を検知する、複数の温度検知部を、さらに備え、前記複数の温度検知部は、前記配列方向に沿って設けられ、前記制御部は、前記複数の温度検知部の検知結果を用いて、前記少なくとも2つの電源における前記デューティ比を個別に制御してもよい。
【0108】
上記構成によれば、制御部は被処理物の温度を把握することができることから、プラズマの安定な状態を確保しつつ、被処理物に対するより高精度なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【0109】
本開示は上述した各実施形態及び変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び変形例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
1 プラズマ処理装置
2 筐体(処理室)
7、71、72、73 アンテナ
8、81、82、83 電源
C 制御部
PD プラズマ発光モニタ
S1、S2 温度検知部
M1、M2 搬送機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9