(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160494
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】飲料用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20241107BHJP
A23C 9/152 20060101ALN20241107BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20241107BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20241107BHJP
A23L 2/02 20060101ALN20241107BHJP
【FI】
A23D9/00 514
A23C9/152
A23L2/00 B
A23L2/00 E
A23L2/02 E
A23L2/02 A
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075548
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】井川 幸枝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 周
(72)【発明者】
【氏名】武藤 麻里
【テーマコード(参考)】
4B001
4B026
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC17
4B001EC01
4B026DG08
4B026DG20
4B026DK01
4B026DK02
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4B026DX01
4B026DX10
4B117LC03
4B117LG01
4B117LG05
4B117LG08
4B117LK10
4B117LL06
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、高濃度で油脂を含有しながらも、迅速かつ手軽に使用することができる飲料用油脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明によって、飲料に添加するための容器詰油脂組成物が提供される。本発明の油脂組成物は、ベニバナ油、ヒマワリ油またはMCTオイルから選択される食用油脂を90重量%以上含有し、乳化剤および酸化防止剤を含有するが、乳由来の材料を含んでない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料に添加するための容器詰油脂組成物であって、
ベニバナ油、ヒマワリ油またはMCTオイルから選択される食用油脂を90重量%以上含有し、乳化剤および酸化防止剤を含有するが、乳由来の材料を含まない、上記油脂組成物。
【請求項2】
果汁または乳を含む液体と混合して飲料を調製するための、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
容量が50mL以下の容器に充填されている、請求項1または2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
油脂組成物の過酸化物価が5以下である、請求項1または2に記載の油脂組成物。
【請求項5】
窒素置換されて容器に充填されている、請求項1または2に記載の油脂組成物。
【請求項6】
調製後の飲料における油脂組成物の配合量が1~20重量%である、請求項1または2に記載の油脂組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の油脂組成物を製造する方法であって、
食用油脂を乳化剤および酸化防止剤と混合する工程を含む、上記方法。
【請求項8】
油脂組成物を窒素置換しながら容器に充填する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料に添加するための容器詰油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品添加物に関するコーデックス一般規格(CODEX STAN 192-1995)14.1.4.3に分類されているように、水や湯で希釈して飲用するタイプの濃縮物が数多く流通している。このような濃縮物は、濃縮形態であるため輸送性に優れており、消費者が自分の好みに応じて飲料の濃さ、割り材(水、湯、牛乳など)や甘さなどの配合をカスタマイズできるという利便性がある。特に、濃縮物が液体の形態であるものは、固体(粉末体)であるものと比較して、粉末化する際の香りの飛散や酸化等の影響が少なく風味がよい、飲料に還元する(すなわち水や湯で希釈する)際の分散性がよいなどの観点から注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、希釈して飲用するタイプの紅茶飲料が記載されており、特許文献2には、希釈して飲用するタイプの緑茶飲料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-012845号公報
【特許文献2】特開2015-012846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に飲食品は水系で用いられることが多く、食品に油脂を高濃度で含有させると、他の食品と混合しにくくなる場合がある。特に容器詰食品においては、迅速かつ手軽に使用できることが重要な商品価値となるところ、高濃度の油脂を含有する飲料を迅速かつ手軽に調製することが難しい場合がある。
【0006】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、高濃度で油脂を含有しながらも、迅速かつ手軽に使用することができる飲料用油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、液状組成物に油脂を高濃度で含有させた場合であっても、食用油脂を最適化して酸化防止剤と乳化剤を配合することによって、優れた飲料添加用油脂組成物を調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
[1] 飲料に添加するための容器詰油脂組成物であって、ベニバナ油、ヒマワリ油またはMCTオイルから選択される食用油脂を90重量%以上含有し、乳化剤および酸化防止剤を含有するが、乳由来の材料を含まない、上記油脂組成物。
[2] 果汁または乳を含む液体と混合して飲料を調製するための、[1]に記載の油脂組成物。
[3] 容量が50mL以下の容器に充填されている、[1]または[2]に記載の油脂組成物。
[4] 油脂組成物の過酸化物価が5以下である、[1]または[2]に記載の油脂組成物。
[5] 窒素置換されて容器に充填されている、[1]または[2]に記載の油脂組成物。
[6] 調製後の飲料における油脂組成物の配合量が1~20重量%である、[1]または[2]に記載の油脂組成物。
[7] [1]または[2]に記載の油脂組成物を製造する方法であって、食用油脂を乳化剤および酸化防止剤と混合する工程を含む、上記方法。
[8] 油脂組成物を窒素置換しながら容器に充填する工程を含む、[7]に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油脂を高濃度で含有する飲料を迅速かつ手軽に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、飲料に添加するための容器詰油脂組成物に関しており、本発明に係る油脂組成物は、食用油脂を90重量%以上含有し、さらに乳化剤および酸化防止剤を含有する。
【0011】
本発明に係る容器詰油脂組成物は、好ましい態様において100mL以下の小容量の容器に充填されており、迅速かつ手軽に使用することができる。容器の容量は、例えば、1~50mLとすることができ、好ましくは1.5~40mL、より好ましくは2~20mLとすることができる。また、本発明に係る油脂組成物は、1回使い切りで用いるのに好適である。
【0012】
本発明に係る油脂組成物を充填する容器について、材質や形状などは特に制限されない。容器の材質としては、アルミ缶、スチール缶などの金属製容器、PETボトルなどの樹脂製容器、ガラス瓶、紙容器など、飲料容器に通常用いられる材質のいずれも用いることができる。好ましい態様において、本発明に係る容器は、手軽に油脂組成物を放出することができるため樹脂製のポーション型である。油脂組成物を容器に密封する際は、容器内の空気が少なくなるよう窒素ガスなどで置換したり、容器内に油脂組成物を完全充填したりすることが好ましい。
【0013】
本発明においては、食用油脂として、ベニバナ油、ヒマワリ油、MCTオイルの1種以上を使用し、食用油脂として加工油脂を使用してもよい。本発明に係る油脂組成物は油脂を90重量%以上含有するが、本発明のように油脂を多く配合することによって加熱殺菌を不要とすることができるため、熱による成分劣化や香味変化、水分が存在することによる加水分解などの抑制が可能となる。したがって、本発明によれば、油脂組成物に含まれる成分を安定的に保存することができ、油脂組成物の物性や香味を長時間維持することができる。本発明に係る油脂組成物は、90重量%以上の食用油脂を含み、食用油脂の含有量は92重量%以上が好ましく、94重量%以上や96重量%以上としてもよい。
【0014】
本発明に係る油脂組成物は乳由来の材料を含んでおらず、本発明に係る油脂組成物は、コーヒー飲料や紅茶飲料などに乳風味や乳感を付与するために添加されるコーヒーフレッシュなどとは異なるものである。ここで、乳由来の材料としては、例えば、乳脂肪と無脂乳固形成分が考えられる。無脂乳固形成分を供給する原料としては、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、加工乳、クリーム、濃縮乳、無糖れん乳、全粉乳、クリームパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳、脱脂乳、濃縮ホエイ、脱脂濃縮乳、加糖脱脂れん乳、脱脂粉乳、ホエイパウダーなどが挙げられ、乳脂肪を供給する原料としては、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、加工乳、クリーム、濃縮乳、無糖れん乳、全粉乳、クリームパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳などが挙げられる。
【0015】
本発明に係る油脂組成物は、好ましい態様において過酸化物価が5以下であり、0.1~3であってもよい。油脂の酸化が進んで過酸化物価が高くなると酸化臭が感じられるようになり好ましくない。油脂組成物の過酸化物価は公知の方法によって測定することができ、例えば、酢酸-クロロホルム法によって測定することが好ましい。
【0016】
本発明に係る一つの実施態様において、食用油脂は常温において液状である。また、低温保管した場合に油脂が固化してしまうと容器から出しづらくなるため、低温保管しても固化しにくいという観点から、脂肪酸として中鎖以下であることが好ましく、または、脂肪酸が長鎖である場合、不飽和脂肪酸(オレイン酸やリノール酸など)が80%以上を占めることが好ましく、82%以上、84%以上、86%以上、88%以上、90%以上であってもよい。また、本発明に係る油脂組成物は、好ましい態様において、ココアバター、バターオイル、オリーブオイル、ココナッツオイル、ゴマ油、米油をいずれも含有しない。
【0017】
本発明に係る油脂組成物は、乳化剤を含有する。乳化剤の含有量は0.1~10重量%が好ましく、8重量%以下や6重量%以下、さらには4重量%以下としてもよい。
【0018】
本発明において使用する乳化剤は、飲料に油脂組成物を配合した際の分散性向上の目的で配合しており、食用であれば制限なく使用することができ、例えば、加工デンプン、レシチン、サポニン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウムなどを挙げることができる。中でも、本発明においては、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することが好ましい。
【0019】
本発明に係る油脂組成物は、乳化剤に加えて酸化防止剤も含有する。酸化防止剤は公知のものを制限なく使用することができ、本発明の機能はもちろん、飲料の風味や酸化安定性を損なわない範囲で使用することができる。酸化防止剤としては、例えば、トコフェロールなどの油溶性の抗酸化剤、ローズマリー抽出物、ヤマモモ抽出物などのポリフェノール類、およびアスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムなどを好適に使用することができる。酸化防止剤の含有量は0.01~10重量%が好ましく、0.02~8重量%や0.05~6重量%、さらには0.1~4重量%としてもよい。酸化防止剤の含有量は、酸化防止剤の種類によって適宜選択すればよく、例えば、L-アスコルビン酸の場合、0.02~0.08重量%程度としてもよい。
【0020】
本発明に係る油脂組成物は、成分を安定的に分散させ、さらに、容器から抽出後に食品にかけたり、飲料に混ぜ合わせたりするのに最適な粘度に調整してもよい。本発明に係る油脂組成物は、液状であれば粘度は特に制限されず、用途に応じて適宜調整すればよいが、例えば、2mPa・s以上とすることができ、3mPa・s以上、4mPa・s以上、5mPa・s以上、6mPa・s以上、10mPa・s以上、1700mPa・s以下、1600mPa・s以下、1500mPa・s以下、1400mPa・s以下、1200mPa・s以下、1000mPa・s以下、800mPa・s以下、500mPa・s以下、400mPa・s以下、300mPa・s以下とすることができる。好ましくは4~1700mPa・s、さらに好ましくは5~1600mPa・s、殊更に好ましくは6~1500mPa・sの範囲である。粘度が低すぎると、液体と混合して適度な粘度を有する飲料が得られにくくなる場合がある。また、粘度が高すぎると、液体と混合して適度な粘度を有する飲料が得られにくくなる場合があることはもちろん、油脂組成物が容器の底や壁面に残ってしまい使い切ることが難しくなることがある。本発明において油脂組成物の粘度は、21℃においてSV型(音叉振動式)粘度計で測定することができる。
【0021】
油脂組成物の粘度は公知の方法で適宜調整すればよいが、増粘剤や、界面活性剤などの粘度調整剤を使用することができる。増粘剤としては、例えば、LMペクチンやHMペクチンなどのペクチン、κ-カラギナン、λ-カラギナン、ι-カラギナンなどのカラギナン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ローカストビーンガム、マンナン、イヌリン、アラビアガム、アラビノガラクタン、ガティーガム、カラヤガム、グァーガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、α化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸架橋澱粉などが挙げられる。水や牛乳、アルコールなどの液体と混ぜ合わせて飲料を調製する場合は、液体の成分を踏まえて液状組成物の粘度や成分を調整することによって最適な粘度を有する飲料を調製すればよい。また、増粘、分散の役割をする添加物として、ミツロウ、二酸化ケイ素、グリセリン脂肪酸エステルなどを油脂組成物に配合してもよい。
【0022】
本発明に係る油脂組成物は、香味を付与する成分を含有することができる。好ましい態様において、油脂組成物は、例えば、香料や果汁などを含有する。香料としては、公知の香料を制限なく使用することができる(例えば、特許庁「周知・慣用技術集(香料)」第II部の食品用香料を参照)。使用する香料のフレーバーとしては、例えば、下記が挙げられる。
(1)シトラス系: オレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ユズフレーバー、スダチフレーバーなど
(2)ベリー類系: ストロベリーフレーバー、ラズベリーフレーバー、ブルーベリーフレーバーなど
(3)トロピカルフルーツ系: マンゴーフレーバー、パパイヤフレーバー、グァバフレーバー、パッションフルーツフレーバー、ライチフレーバーなど
(4)フルーツ系: アップルフレーバー、グレープフレーバー、パイナップルフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、メロンフレーバー、アンズフレーバー、ウメフレーバー、チェリー(サクランボ)フレーバーなど
(5)茶・コーヒー系: 緑茶フレーバー、ウーロン茶フレーバー、紅茶フレーバー、コーヒーフレーバーなど
(6)乳系: ミルクフレーバー、クリームフレーバー、バターフレーバー、チーズフレーバー、ヨーグルトフレーバーなど
(7)ミート系: ビーフフレーバー、ポークフレーバー、チキンフレーバーなど
(8)ハーブ・スパイス系: アサフェチダフレーバー、アジョワンフレーバー、アニスフレーバー、アンゼリカフレーバー、ウイキョウフレーバー、オールスパイスフレーバー,シナモンフレーバー、カッシャフレーバー、カモミールフレーバー、カラシナフレーバー、カルダモンフレーバー、キャラウェイフレーバー、クミンフレーバー、クローブフレーバー、コショウフレーバー、コリアンダーフレーバー、サッサフラスフレーバー、セイボリーフレーバー、サンショウフレーバー、シソフレーバー、ジュニパーベリーフレーバー、ジンジャーフレーバー、スターアニスフレーバー、セイヨウワサビフレーバー、セージフレーバー、タイムフレーバー、タラゴンフレーバー、ディルフレーバー、トウガラシフレーバー,ナツメフレーバー、ナツメグフレーバー、バジルフレーバー,パセリフレーバー、マジョラムフレーバー、ローズマリーフレーバー、ローレルフレーバー、ワサビフレーバーなど
(9)ミント系: ペパーミントフレーバー、スペアミントフレーバー、和種ハッカフレーバーなど
(10)ナッツ系: アーモンドフレーバー、カシューナッツフレーバー、ピーナッツフレーバー、ヘーゼルナッツフレーバー、ウォルナッツフレーバー、チェスナッツフレーバー、マカデミアナッツフレーバー、ぺカンナッツフレーバー、ピスタチオフレーバー、ブラジルナッツフレーバー、ココナッツフレーバーなど
(11)洋酒系: ワインフレーバー、ウイスキーフレーバー、ブランデーフレーバー、ラムフレーバー、ジンフレーバー、リキュールフレーバーなど
(12)穀物系: ゴマフレーバー、コーンフレーバー、ポテトフレーバー,スイートポテトフレーバー、米飯フレーバー、ブレッドフレーバーなど
(13)シュガー系: ハネーフレーバー、メープルシロップフレーバー,シュガーフレーバー、黒糖フレーバー、モラセスフレーバーなど
(14)その他: ココアフレーバー、バニラフレーバーなど
果汁としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、ユズ、スダチ、などのシトラス系果汁、ストロベリー、ラズベリー、ブルーベリーなどのベリー類系果汁、マンゴー、パパイヤ、グァバ、パッションフルーツ、ライチなどのトロピカルフルーツ系果汁、アップル、グレープ、パイナップル、バナナ、ピーチ、メロン、アンズ、ウメ、チェリー(サクランボ)の果汁などが挙げられる。
【0023】
本発明に係る油脂組成物は、甘味料、酸味料、pH調整剤、調味料、賦形剤、保存料、着色料など、飲食品に用いられる一般的な原料を含んでいてよい。
【0024】
本発明に係る油脂組成物は、機能性成分が配合されていてもよい。本発明において「機能性成分」とは、生体内に吸収されて種々の栄養的又は健康上の利益を提供する成分を意味する。このような機能性成分としては、例えば、特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、機能性食品、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品、栄養調整食品、サプリメントなどに有効成分として用いられる成分を挙げることができる。一つの態様において、機能性成分を配合した場合は、栄養成分表示として、成分名と食品単位当たりの含有量を表示したり、機能性関与成分として、成分名と一日当たりの摂取目安量当たりの含有量を表示したりしてよい。
【0025】
本発明に係る機能性成分は、脂溶性であっても水溶性であってもよく、脂溶性の機能性成分と水溶性の機能性成分を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
脂溶性の機能性成分としては、例えば、コエンザイムQ10、クルクミン、トコトリエノール、テストステロン、メントール、脂肪酸、カロテノイド、レスベラトロール、脂溶性ビタミン、セサミン、α-リポ酸、ノコギリヤシエキス、セントジョーンズワート(ヒペリシン)、ロイヤルゼリー(デセン酸)、ヘスペリジン、ノビレチン、ケルセチン、ケンフェロール、ミリシトリン、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステイン、ミリセチン、スチルベン、および、これらの2種以上の組合せなどを挙げることができる。脂肪酸としては、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの高度不飽和脂肪酸(PUFA)はもちろん、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リノール酸、パルミチン酸などが挙げられる。カロテノイドとしては、例えば、α-カロテン、β-カロテン、ルテイン、リコペン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、フコキサンチン、キサントフィルなど、脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンKなどが挙げられる。
【0027】
水溶性の機能性成分としては、例えば、アントシアニン、グルコサミン、コラーゲン、水溶性ビタミン(ビタミンB群、ビタミンCなど)、ミネラル、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、カフェイン、カテキン、カテキン以外のフラボノイド類、ポリフェノール類、および、これらの2種類以上の組み合わせなどを挙げることができる。また、水に不溶性の機能性成分を使用することもでき、例えば、鉄、カルシウム、乳酸菌、ビフィズス菌、および、これらの2種類以上の組み合わせを挙げることができる。
【0028】
機能性成分を油脂組成物に配合する場合、機能性成分の含有量は特に限定されないが、機能性成分を含む油脂組成物の全体量に対して、例えば、0.001~100重量%とすることができ、好ましくは0.01~67重量%、より好ましくは0.1~35重量%であり、1~20重量%としてもよい。油脂組成物における機能性成分の含有量は、機能性成分の種類によるが、例えば、3重量%以上や5重量%以上、さらには10重量%以上としてもよい。
【0029】
本発明の油脂組成物は、好ましい態様において1回使い切りであり、他の液体と混合して飲料が調製される。本発明に係る油脂組成物と混合する液体としては、飲用できるものであれば特に制限はないが、例えば、水はもちろん、炭酸水やアルコール(エタノール)水溶液、牛乳などの乳、豆乳、果汁(野菜汁を含む)などを好適に使用することができる。特に本発明に係る油脂組成物は、濃度が比較的高い液体に対して使用することが好ましく、具体的には、脂質、タンパク質及び炭水化物の合計濃度が3%以上の液体に添加すると、食用油脂の香味が強くなりすぎることがなく、飲みやすい飲料を調製することができるため好ましい。本発明に係る油脂組成物を添加する液体は、脂質、タンパク質及び炭水化物の合計濃度が4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上であってよく、上記合計濃度の上限は特に制限されないものの、飲料としての味わいの観点から、20%以下が好ましく、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下としてもよい。
【0030】
好ましい態様において、本発明に係る油脂組成物と混合する液体は牛乳などの乳を含み、この場合、油脂組成物を添加した飲料は乳系飲料となる。また、本発明に係る油脂組成物と混合する液体は果汁(野菜汁を含む)を含み、この場合、油脂組成物を添加した飲料は果汁飲料となる。なお、本発明において果汁飲料とは、野菜汁を含む飲料(野菜飲料)を含む概念である。これら乳系飲料や果汁飲料は味わいが濃厚であり、栄養素を豊富に含み、油脂組成物を添加した際に飲みやすく、美味しく健康的な飲料となる。本発明に係る油脂組成物を飲料に添加する場合、アルコール飲料であっても非アルコール飲料であってもよい。
【0031】
本発明に係る油脂組成物は、好ましい態様において、飲料の1~20重量%となるように配合される。飲料への油脂組成物の添加量が多くなりすぎると飲料の香味が悪くなる場合があるため、油脂組成物の配合量は1.5~16重量%がより好ましく、2~12重量%がさらに好ましく、2~8重量%がよりさらに好ましい。また、本発明の好ましい態様において、油脂組成物を添加して調製した飲料における脂質、タンパク質、炭水化物の合計濃度は、例えば、1~30重量%とすることができ、2~25重量%や3~20重量%、さらには4~15重量%としてもよい。
【0032】
本発明においては、混合する液体に応じた成分を油脂組成物に配合し、液体と油脂組成物を混合した際に飲料の性状を調整することができる。例えば、LMペクチンはカルシウムなどの2価金属イオンとゲルを形成するため、LMペクチンを油脂組成物に配合しておけば、牛乳と混合した際に粘度が高くなり、スムージーのような食感とすることができる。また、HMペクチンは酸や糖の存在によりゲル化するため、HMペクチンを油脂組成物に配合しておけば、酸や糖を含む液体を混合して飲料の粘度を変化させることができる。本発明に係る油脂組成物を液体と混合して調製した飲料について、その粘度は特に制限されず、低粘度の飲料としても、スムージーなどの高粘度の飲料としてもよい。飲用する際の飲料の粘度は、例えば、0.5~100mPa・sや1~60mPa・sとしてもよく、飲料の種類に応じて、0.5~10mPa・sや20~60mPa・sとしてもよい。
【0033】
本発明に係る油脂組成物は、加熱殺菌しなくてもよいし、加熱殺菌をしてもよい。好ましい態様において本発明に係る油脂組成物は、熱による油脂の劣化を避けるため加熱殺菌されないが、例えば、低温などで無菌充填を行う態様としてもよい。加熱殺菌をする場合、加熱殺菌した後に容器に充填してもよいし、容器に充填した後に加熱殺菌してもよい。
【0034】
本発明の油脂組成物は、例えば、食用油脂を乳化剤および酸化防止剤と混合して油脂組成物を調製する工程、調製した油脂組成物を容器に充填する工程、を備えた製造工程によって製造することができる。油脂組成物を調製する際は、例えば、パドルミキサーやホモミキサー、必要であれば高圧ホモミキサーなど、公知の混合装置を自由に用いることができる。また、各工程の順序を入れ替えたり、適宜新たな工程を入れたりすることも可能で、例えば、濾過などによって残渣などを取り除く工程を挿入することもできる。さらに、本発明においては、食用油脂と乳化剤などを混合してから容器に充填してもよいが、例えば、容器に食用油脂を入れてから乳化剤などを添加してもよいし、また、容器に乳化剤などを入れてから食用油脂を添加してもよい。
【0035】
好ましい態様において、本発明に係る油脂組成物は、液体と混合しやすいように常温で液状であるが、本発明に係る油脂組成物は、乳化してあっても乳化していなくてもよく、本発明に係る製造方法は、乳化工程を含んでいても含んでいなくてもよい。
【実施例0036】
以下、具体例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、濃度などは重量(質量)基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0037】
実験1
1-1.油脂組成物の製造
60℃に加温した食用油脂に、ポリグリセリン脂肪酸エステル(乳化剤、サンソフトA-173E、太陽化学)3%とトコフェロール(酸化防止剤、理研Eオイル705、理研ビタミン)3%を添加し、撹拌して完全に溶解させた後、油脂組成物3mLを樹脂製容器に充填した。食用油脂としては下記の市販品を使用し、不飽和脂肪酸の割合はベニバナ油で約92%、ヒマワリ油で約86%であった。
・菜種油: 日清キャノーラ油(日清オイリオ)
・大豆油: 健康サララ(味の素)
・ベニバナ油: 日清一番搾りべに花油(日清オイリオ)
・ヒマワリ油: オレインリッチ・プレミアムな健康ヒマワリ油(昭和産業)
・MCTオイル: 日清MCTオイル(日清オイリオ)
1-2.乳系飲料への添加
上記のようにして製造した油脂組成物を乳系飲料へ添加して評価した。すなわち、1-1で製造した油脂組成物を、(a)市販の牛乳(タカナシ牛乳3.6、タカナシ乳業)、(b)牛乳を2倍希釈したもの、に対して、最終的な飲料における油脂組成物の配合量が3重量%となるように添加して飲料を調製した。なお、タンパク質、脂質、炭水化物を合計した濃度は、(a)が約11.8%、(b)が約5.9%であった。
【0038】
次いで、調製した飲料について、油脂組成物を添加していない飲料を対照(コントロール)として、専門パネル5名で香味評価を行った。事前にパネルが対照を飲用し、乳系飲料の味わい、特に後味についてディスカッションをして共通認識を持つようにした上で、各サンプルについて各パネルが個別に評価し、以下の評価基準に基づいて評価をした。
○: 5名のパネル全員が対照と同等に味わいや後味が良好であると評価した場合
△: 対照と同等に良好であると評価したパネルが3~4名の場合
×: 対照と同等に良好であると評価したパネルが2名以下の場合
評価結果を表1に示す。ヒマワリ油、ベニバナ油またはMCTオイルから製造した油脂組成物は乳系飲料と容易に混合することができ、また、調製した飲料は優れた味わいが感じられ、後味が良好であった。一方、大豆油または菜種油から製造した油脂組成物を添加した場合、調製した飲料について、対照と比較して、後味にえぐみが感じられ、対照の味わいを損ねているとパネル全員が評価をした。
【0039】
【0040】
実験2
実験1と同様にして油脂組成物を製造し、果汁飲料(野菜飲料)に添加した。すなわち、(a)市販の果汁飲料(野菜1日これ1本、カゴメ)、(b)果汁飲料を2倍希釈したもの、に対して、最終的な飲料における配合量が3重量%となるように油脂組成物を添加して飲料を調製した。タンパク質、脂質、炭水化物を合計した濃度は、(a)が約8.9%、(b)が4.4%であった。
【0041】
次いで、調製した飲料について、油脂組成物を添加していない飲料を対照(コントロール)として、専門パネル5名で香味評価を行った。事前にパネルが対照を飲用し、乳系飲料の味わい、特に後味についてディスカッションをして共通認識を持つようにした上で、各サンプルについて各パネルが個別に評価し、以下の評価基準に基づいて評価をした。
○: 5名のパネル全員が対照と同等に味わいや後味が良好であると評価した場合
△: 対照と同等に良好であると評価したパネルが3~4名の場合
×: 対照と同等に良好であると評価したパネルが2名以下の場合
評価結果を表2に示す。ベニバナ油、ヒマワリ油またはMCTオイルから製造した油脂組成物は乳系飲料と容易に混合することができ、また、調製した飲料は優れた味わいが感じられ、後味が良好であった。一方、大豆油または菜種油から製造した油脂組成物を添加した場合、調製した飲料について、対照と比較して後味にえぐみが感じられ、対照の味わいを損ねているとパネル全員が評価をした。
【0042】
【0043】
実験3
3-1.油脂組成物の製造
下記のようにして2種類の容器詰油脂組成物を製造し、23℃で6ヶ月保管した。
(油脂組成物A) 60℃に加温した日清一番搾りべに花油(日清オイリオ)に、ポリグリセリン脂肪酸エステル(乳化剤、サンソフトA-173E、太陽化学)3%とトコフェロール(酸化防止剤、理研Eオイル705、理研ビタミン)3%を配合し、撹拌して完全に溶解させた後、油脂組成物3mLを窒素置換をした樹脂製容器に充填した上で、アルミピローに包装し(23℃で6ヶ月保管後の過酸化物価:1.7meq/kg)。
(油脂組成物B) 60℃に加温した日清一番搾りべに花油(日清オイリオ)に、ポリグリセリン脂肪酸エステル(乳化剤、サンソフトA-173E、太陽化学)3%を配合し、撹拌して完全に溶解させた後、3mLを窒素置換をせずに樹脂製容器に充填した(23℃で6ヶ月保管後の過酸化物価:6.2meq/kg)。
【0044】
なお、油脂組成物の過酸化物価は、酢酸-クロロホルム法で測定した。まず、クロロホルムと酢酸の混合液(2:3)にサンプルを溶解させ、窒素置換を行った上で、飽和ヨウ化カリウム溶液を添加して室温暗所で反応させ、さらに水を加えて浸透させた後、1%デンプン溶液を指示薬としてチオ硫酸ナトリウム標準液(0.01mol/L)で滴定を行った。
【0045】
3-2.乳系飲料への添加
市販の牛乳(タカナシ牛乳3.6、タカナシ乳業)に、3-1で製造した油脂組成物を添加して飲料を調製した後、油脂組成物を添加していない飲料を対照(コントロール)として、実験1と同様に飲料の味わい、特に後味を評価した。
【0046】
評価結果を表3に示す。本発明の実施例である油脂組成物Aを添加した飲料は、油脂組成物の配合量が10%であっても容易に乳系飲料と混合することができ、また、飲料の後味が大きく損なわれることもなかった。その一方で、酸化防止剤を含まない油脂組成物Bを10%配合した飲料は、対照と比較して後味が損なって感じられ、また、油の劣化臭を感じるとパネル全員が評価をした。
【0047】
【0048】
3-3.果汁飲料への添加
市販の果汁飲料(野菜1日これ1本、カゴメ)に、3-1で製造した油脂組成物を添加して飲料を調製した後、油脂組成物を添加していない飲料を対照(コントロール)として、実験2と同様に飲料の味わい、特に後味を評価した。
【0049】
評価結果を下表に示す。本発明の実施例である油脂組成物Aを添加した飲料は、油脂組成物の配合量が10%であっても容易に果汁飲料と混合することができ、また、飲料の後味が大きく損なわれることもなかった。その一方で、酸化防止剤を含まない油脂組成物Bを10%配合した飲料は、対照と比較して後味が損なって感じられ、また、酸味が弱まった上で油の劣化臭を感じるとパネル全員が評価をした。
【0050】