(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160498
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】調圧弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
F16K17/04 B
F16K17/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075562
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】東條 信男
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA03
3H059BB29
3H059CB25
3H059FF02
3H059FF12
(57)【要約】
【課題】ボディと弁座ユニットとの間に設けられたシールにおいて使用液の漏れが生じても、これらの間から外部に使用液が漏れ出ることを抑制する。
【解決手段】調圧弁100は、調圧室10を形成するボディ1と、調圧室10内の使用液を排出するための余液排出路Lを形成する弁座ユニット2と、余液排出路Lの開口部Laを開閉するピストン弁体3と、を備える。ボディ1と弁座ユニット2との間には、これらの間を液密に封止する弁座シール8が設けられている。弁座ユニット2には、弁座ユニット2のアダプタ22の外周面22aに設けられた開口部L10aと余液排出路Lとを接続する第一戻し流路L10が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用液の圧力を調整する調圧弁(100,100A)であって、
流入する使用液の圧力を調整するための調圧室(10)を形成するボディ(1)と、
前記ボディ(1)に設けられると共に前記調圧室(10)に連通する取付孔(1d)に嵌め込まれ、前記調圧室(10)内の使用液を排出するための余液排出路(L)を形成する弁座ユニット(2)と、
前記調圧室(10)内にその一部が入り込み、使用液の圧力が設定圧力以下の場合、前記弁座ユニット(2)に着座して前記余液排出路(L)の開口部(La)を閉とし、前記使用液の圧力が前記設定圧力を越える場合、前記弁座ユニット(2)から離座して前記開口部(La)を開とするピストン弁体(3)と、
を備え、
前記取付孔(1d)内において前記ボディ(1)と前記弁座ユニット(2)との間には、これらの間を液密に封止する弁座シール(8)が設けられ、
前記弁座ユニット(2)には、前記弁座ユニット(2)の外周面(22a)のうち前記取付孔(1d)の内周面(1f)に対向する位置に設けられた開口部(L10a)と前記余液排出路(L)とを接続する第一戻し流路(L10)が形成されており、
前記ボディ(1)と前記弁座ユニット(2)との間において、前記弁座シール(8)は、前記第一戻し流路(L10)における前記弁座ユニット(2)の前記外周面(22a)側の開口部(L10a)よりも、前記調圧室(10)側に位置している、調圧弁(100,100A)。
【請求項2】
前記弁座シール(8)は、前記ボディ(1)の前記取付孔(1d)の前記内周面(1f)においてテーパ状に形成されたテーパ部分(1ft)と、前記弁座ユニット(2)の前記外周面(21a)においてテーパ状に形成されたテーパ部分(21at)とを面接触させた金属シール構造によって構成されている、請求項1に記載の調圧弁(100,100A)。
【請求項3】
前記弁座ユニット(2)は、弁座(21)と、前記弁座に隣接して設けられたアダプタ(22)と、を備え、
前記余液排出路(L)は、前記弁座(21)及び前記アダプタ(22)によって形成され、
前記弁座(21)には、前記ピストン弁体(3)が着座することによって開閉される前記余液排出路(L)の前記開口部(La)が設けられ、
前記アダプタ(22)には、前記第一戻し流路(L10)が形成され、
前記弁座シール(8)は、前記ボディ(1)と前記弁座(21)との間に設けられている、請求項1に記載の調圧弁(100,100A)。
【請求項4】
前記第一戻し流路(L10)は、前記弁座(21)において前記アダプタ(22)に当接する端面(21c)に設けられた弁座溝(21d)、及び、前記アダプタ(22)において前記弁座(21)に当接する端面(22c)に設けられたアダプタ溝(22d)の少なくともいずれかによって形成される、請求項3に記載の調圧弁(100,100A)。
【請求項5】
前記ボディ(1)には前記ピストン弁体(3)の着座及び離座時の移動をガイドするガイド孔(1e)が設けられており、前記ガイド孔(1e)の内周面(1g)と前記ピストン弁体(3)の外周面(32a)との間を液密に封止する弁体シール(4)を更に備え、
少なくとも前記ボディ(1)によって、前記ガイド孔(1e)の内周面(1g)に設けられた開口部(L20a)と前記取付孔(1d)の内周面(1f)に設けられた開口部(L20b)とを接続する第二戻し流路(L20)が形成されており、
前記弁体シール(4)は、前記第二戻し流路(L20)における前記ガイド孔(1e)の内周面(1g)側の前記開口部(L20a)よりも、前記調圧室(10)側に位置している、請求項1~4のいずれか一項に記載の調圧弁(100,100A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用液の圧力を調整する調圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、流入する使用液(液体)の圧力を調整する調圧弁が記載されている。このような調圧弁は、調圧室内の使用液を排出するための余液排出路を形成する弁座ユニットと、弁座ユニットに着座及び離座可能な弁体とを備えている。このような調圧弁では、例えば調圧室を形成するボディ及び弁座ユニットのように、複数の部材を組み合わせて使用されることがある。この場合、部材の当接部分からの液漏れを防止するため、当接部分にシールが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、超高圧の使用液を調圧する場合、シールが設けられていても部材の当接部分からの使用液の漏れを確実に防止することは困難となり易い。そこで、本発明は、ボディと弁座ユニットとの間に設けられたシールにおいて使用液の漏れが生じても、これらの間から外部に使用液が漏れ出ることを抑制可能な調圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、使用液の圧力を調整する調圧弁(100,100A)であって、流入する使用液の圧力を調整するための調圧室(10)を形成するボディ(1)と、ボディ(1)に設けられると共に調圧室(10)に連通する取付孔(1d)に嵌め込まれ、調圧室(10)内の使用液を排出するための余液排出路(L)を形成する弁座ユニット(2)と、調圧室(10)内にその一部が入り込み、使用液の圧力が設定圧力以下の場合、弁座ユニット(2)に着座して余液排出路(L)の開口部(La)を閉とし、使用液の圧力が設定圧力を越える場合、弁座ユニット(2)から離座して開口部(La)を開とするピストン弁体(3)と、を備え、取付孔(1d)内においてボディ(1)と弁座ユニット(2)との間には、これらの間を液密に封止する弁座シール(8)が設けられ、弁座ユニット(2)には、弁座ユニット(2)の外周面(22a)のうち取付孔(1d)の内周面(1f)に対向する位置に設けられた開口部(L10a)と余液排出路(L)とを接続する第一戻し流路(L10)が形成されており、ボディ(1)と弁座ユニット(2)との間において、弁座シール(8)は、第一戻し流路(L10)における弁座ユニット(2)の外周面(22a)側の開口部(L10a)よりも、調圧室(10)側に位置している。
【0006】
この調圧弁(100,100A)の弁座ユニット(2)には、余液排出路(L)に連通する第一戻し流路(L10)が設けられている。そして、弁座シール(8)は、第一戻し流路(L10)における弁座ユニット(2)の外周面(22a)側の開口部(L10a)よりも、調圧室(10)側に位置している。つまり、調圧室(10)内の使用液がボディ(1)と弁座ユニット(2)との間に入り込んで弁座シール(8)から漏れ出しても、漏れ出した使用液を第一戻し流路(L10)を介して余液排出路(L)に排出することができる。このように、調圧弁(100,100A)では、ボディ(1)と弁座ユニット(2)との間に設けられた弁座シール(8)において使用液の漏れが生じても、ボディ(1)と弁座ユニット(2)との間から外部に使用液が漏れ出ることを抑制できる。
【0007】
上記の調圧弁(100,100A)において、弁座シール(8)は、ボディ(1)の取付孔(1d)の内周面(1f)においてテーパ状に形成されたテーパ部分(1ft)と、弁座ユニット(2)の外周面(21a)においてテーパ状に形成されたテーパ部分(21at)とを面接触させた金属シール構造によって構成されていてもよい。この場合、調圧弁(100,100A)は、Oリング等の他のシール部材を用いることなく、ボディ(1)と弁座ユニット(2)との当接部分を封止できる。
【0008】
上記の調圧弁(100,100A)において、弁座ユニット(2)は、弁座(21)と、弁座に隣接して設けられたアダプタ(22)と、を備え、余液排出路(L)は、弁座(21)及びアダプタ(22)によって形成され、弁座(21)には、ピストン弁体(3)が着座することによって開閉される余液排出路(L)の開口部(La)が設けられ、アダプタ(22)には、第一戻し流路(L10)が形成され、弁座シール(8)は、ボディ(1)と弁座(21)との間に設けられていてもよい。ここで、例えば、超高圧の使用液を調圧する場合、弁座ユニット(2)において弁体(3)が当接する部分には高い硬度が求められる。そこで、調圧弁(100,100A)では、弁座ユニット(2)が弁座(21)とアダプタ(22)と用いて構成されている。これにより、調圧弁(100,100A)は、必要な箇所に必要な特性を有する材料を用いて弁座ユニット(2)を形成することができる。
【0009】
上記の調圧弁(100,100A)において、第一戻し流路(L10)は、弁座(21)においてアダプタ(22)に当接する端面(21c)に設けられた弁座溝(21d)、及び、アダプタ(22)において弁座(21)に当接する端面(22c)に設けられたアダプタ溝(22d)の少なくともいずれかによって形成されていてもよい。この場合、調圧弁(100,100A)では、弁座(21)及び/又はアダプタ(22)に設けられた溝によって、第一戻し流路(L10)を容易に形成することができる。
【0010】
上記の調圧弁(100,100A)は、ボディ(1)にはピストン弁体(3)の着座及び離座時の移動をガイドするガイド孔(1e)が設けられており、ガイド孔(1e)の内周面(1g)とピストン弁体(3)の外周面(32a)との間を液密に封止する弁体シール(4)を更に備え、少なくともボディ(1)によって、ガイド孔(1e)の内周面(1g)に設けられた開口部(L20a)と取付孔(1d)の内周面(1f)に設けられた開口部(L20b)とを接続する第二戻し流路(L20)が形成されており、弁体シール(4)は、第二戻し流路(L20)におけるガイド孔(1e)の内周面(1g)側の開口部(L20a)よりも、調圧室(10)側に位置していてもよい。
【0011】
この調圧弁(100,100A)には、少なくともボディ(1)によって形成された第二戻し流路(L20)が形成されている。そして、弁体シール(4)は、第二戻し流路(L20)におけるガイド孔(1e)の内周面(1g)側の開口部(L20a)よりも、調圧室(10)側に位置している。つまり、調圧室(10)内の使用液がボディ(1)のガイド孔(1e)の内周面(1g)とピストン弁体(3)の外周面(32a)との間に入り込んで弁体シール(4)から漏れ出しても、漏れ出した使用液を第二戻し流路(L20)を介して余液排出路(L)に排出することができる。このように、調圧弁(100,100A)では、ボディ(1)のガイド孔(1e)とピストン弁体(3)との間に設けられた弁体シール(4)において使用液の漏れが生じても、ボディ(1)のガイド孔(1e)とピストン弁体(3)との間から外部に使用液が漏れ出ることを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボディと弁座ユニットとの間に設けられたシールにおいて使用液の漏れが生じても、これらの間から外部に使用液が漏れ出ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る調圧弁の縦断面図である。
【
図2】
図2は、変形例に係る調圧弁の縦断面図である。
【
図3】
図3(a)は、変形例に係るアダプタを示す縦断面図である。
図3(b)は、変形例に係る弁座を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書において、「上」、「下」等の語句は、図面に示す状態に基づいており、構成を説明する上での便宜的なものである。
【0015】
図1に示される調圧弁100は、いわゆる差圧式の調圧弁である。調圧弁100は、一例として、農薬等の使用液を噴霧する動力噴霧機や洗浄機等に用いられる。調圧弁100は、使用液を吐出するポンプの吐出側に取り付けられ、ポンプから吐出される使用液の圧力を調節する。
【0016】
調圧弁100は、ボディ1、弁座ユニット2、ピストン弁体3、弁体シール4、バネ筒5、複数の皿バネ6、及び調圧キャップ7を備えている。
【0017】
ボディ1には、一方の側部に流入口1aが、これとは反対側の側部に流出口1bが各々形成されている。流入口1aと流出口1bとは、ボディ1内に形成された調圧室10を介して互いに連通している。調圧室10は、流入する使用液の圧力を調整するための部屋となる。例えば、流入口1aはポンプの吐出口に、流出口1bは噴射ノズルに、各々配管等を介して接続される。
【0018】
ボディ1の下面には、上下方向に延在する取付孔1dが形成されている。取付孔1dの上端は、調圧室10に連通している。ボディ1の上面には、上下方向に延在するガイド孔1eが形成されている。ガイド孔1eの下端は、調圧室10に連通している。ガイド孔1eは、ピストン弁体3が弁座ユニット2に着座及び離座するときの移動をガイドする。
【0019】
弁座ユニット2は、上下方向に軸線を有する円筒状を呈している。弁座ユニット2の筒孔は、調圧室10内の使用液を排出するための余液排出路Lを構成している。弁座ユニット2は、ボディ1に設けられた取付孔1dに嵌め込まれている。弁座ユニット2の上部は、調圧室10内に入り込んでいる。余液排出路Lの下端部は、調圧室10内の使用液を調圧弁100外に排出する余液口1cとなる。例えば、余液口1cは、ポンプが接続されるタンクに配管等を介して接続される。
【0020】
ピストン弁体3は、上下方向に軸線を有する棒状を呈し、弁座ユニット2と同軸に配置されている。ピストン弁体3は、上下方向に移動可能なように、ボディ1のガイド孔1eに差し込まれている。本実施形態においてピストン弁体3は、弁体31、及び弁棒32を備えている。
【0021】
弁体31は、弁棒32の下側に配置されている。弁体31は、調圧室10内において上側から弁座ユニット2の上部に着座する。すなわち、ピストン弁体3の一部(弁体31の下側の端部)が調圧室10内に入り込んでいる。なお、
図1では、ピストン弁体3の弁体31が弁座ユニット2に着座した状態が示されている。
【0022】
なお、弁体31の外周面とガイド孔1eの内周面1gとの間には、円環状の弁体シール4が設けられている。弁体シール4は、弁体31の外周面とガイド孔1eの内周面1gとの間を液密に封止する。弁体31は、弁体シール4を介してガイド孔1eによって上下方向の移動がガイドされている。調圧室10内には、ポンプ等によって加圧された高圧の使用液が流入する。このため、弁体シール4は、高圧に耐え得るものが用いられる。
【0023】
弁棒32は、弁体31と同軸に配置されている。弁棒32の下端部は、弁体31の上端部に当接している。弁棒32の下部は、円柱状を呈し、ガイド孔1eに差し込まれている。弁棒32の上部は、皿バネ6の付勢力を受ける。つまり、弁棒32は、皿バネ6の付勢力を受けるバネ受けとして機能する。
【0024】
バネ筒5は、上下方向に軸線を有する円筒状を呈し、ボディ1の上部の位置においてピストン弁体3と同軸に配置されている。バネ筒5は、ボディ1の上部に螺合することにより、ボディ1に固定される。
【0025】
複数の皿バネ6は、バネ筒5の筒孔内に上下方向に積層されている。複数の皿バネ6は、バネ筒5の筒孔内において圧縮された状態で配置されており、軸線方向にピストン弁体3の弁棒32を付勢する。これにより、ピストン弁体3の弁体31は、弁座ユニット2に着座する方向に付勢される。そして、弁棒32は、余液排出路Lの調圧室10側の開口部Laを覆うことによって、開口部Laを閉とする。なお、ピストン弁体3を付勢する付勢手段としては皿バネ6に限定されず、例えば圧縮コイルバネ等の他の部材であってもよい。
【0026】
ピストン弁体3は、流入口1aから調圧室10に供給された使用液の圧力が設定圧力以下の場合、弁座ユニット2に設けられた余液排出路Lの開口部Laを覆うようにして弁座ユニット2に着座し、開口部Laを閉とする。
【0027】
一方、ピストン弁体3は、供給された使用液の圧力が設定圧力を越える場合、皿バネ6を圧縮するように上方に移動し、弁座ユニット2から離座する。これにより、ピストン弁体3は、余液排出路Lの開口部Laを開とする。このように、調圧弁100は、使用液の一部を余液排出路L及び余液口1cを介して外部に排出することによって使用液の圧力を調節し、圧力が調節された使用液を流出口1bから吐出することができる。
【0028】
調圧キャップ7は、バネ筒5の上部に螺合している。調圧キャップ7の下側の端部は複数の皿バネ6の上部に当接している。調圧キャップ7の上下方向の位置を調節することで、調圧キャップ7とピストン弁体3の弁棒32との間に配置された複数の皿バネ6の初期荷重が調節される。
【0029】
次に、弁座ユニット2の詳細について説明する。弁座ユニット2は、弁座21と、弁座21に隣接して設けられたアダプタ22とを備えている。アダプタ22は、弁座21の下側に隣接して設けられている。余液排出路Lは、弁座21及びアダプタ22によって形成されている。つまり、余液排出路Lは、弁座21及びアダプタ22を上下方向において貫通している。弁座21の上端には、余液排出路Lの開口部Laが設けられている。弁座21の上部にピストン弁体3の弁体31が着座及び離座することにより、余液排出路Lの開口部Laが開閉される。
【0030】
ボディ1の取付孔1d内においてボディ1と弁座ユニット2との間には、これらの間を液密に封止する弁座シール8が設けられている。本実施形態において弁座シール8は、ボディ1と弁座21との間に設けられている。弁座シール8は、ボディ1の取付孔1dの内周面1fにおいてテーパ状に形成されたテーパ部分1ftと、弁座ユニット2の弁座21の外周面21aにおいてテーパ状に形成されたテーパ部分21atと、を面接触させた金属シール構造によって構成されている。
【0031】
弁座ユニット2には、弁座ユニット2の外周面のうち取付孔1dの内周面1fに対向する位置に設けられた開口部L10aと余液排出路Lとを接続する第一戻し流路L10が形成されている。本実施形態において第一戻し流路L10は、アダプタ22に設けられている。つまり、第一戻し流路L10は、アダプタ22の外周面22aのうち取付孔1dの内周面1fに対向する位置に設けられた開口部L10aと余液排出路Lとを接続する。第一戻し流路L10は、余液排出路Lに直交する方向に沿って延在している。
【0032】
また、アダプタ22の外周面22aには、周方向に延在する溝22bが設けられている。溝20bは、第一戻し流路L10の開口部L10aの位置を通っている。
【0033】
ボディ1の取付孔1dの内周面1fと弁座ユニット2の外周面(弁座21の外周面21a)との間において、弁座シール8は、第一戻し流路L10におけるアダプタ22の外周面22a側の開口部L10aよりも、調圧室10側に位置している。
【0034】
アダプタ22の外周面22aのうち取付孔1dの内周面1fに対向する位置には、外周面22aに形成された円環状のリング溝に嵌め込まれたOリングR1が装着されている。第一戻し流路L10は、第一戻し流路L10におけるアダプタ22の外周面22a側の開口部L10aがOリングR1よりも弁座シール8に近い位置となるように設けられている。すなわち、ボディ1の取付孔1dの内周面1fと弁座ユニット2の外周面との間において、第一戻し流路L10の開口部L10aは、弁座シール8とOリングR1との間に位置している。アダプタ22に装着されたOリングR1がボディ1の取付孔1dの内周面1fに圧接されることで、アダプタ22がボディ1に液密に装着される。
【0035】
以上のように、調圧弁100の弁座ユニット2には、余液排出路Lに連通する第一戻し流路L10が設けられている。そして、弁座シール8は、第一戻し流路L10におけるアダプタ22の外周面22a側の開口部L10aよりも、調圧室10側に位置している。つまり、調圧室10内の使用液がボディ1の取付孔1dの内周面1fと弁座ユニット2の外周面との間に入り込んで弁座シール8から漏れ出しても、漏れ出した使用液を第一戻し流路L10を介して余液排出路Lに排出することができる。このように、調圧弁100では、ボディ1と弁座ユニット2との間に設けられた弁座シール8において使用液の漏れが生じても、ボディ1と弁座ユニット2との間から外部に使用液が漏れ出ることを抑制できる。
【0036】
なお、ボディ1と弁座ユニット2との間には、OリングR1が設けられている。第一戻し流路L10の開口部L10aは、OリングR1よりも弁座シール8側に位置している。これにより、OリングR1は、弁座シール8から漏れ出た使用液がボディ1と弁座ユニット2との間から調圧弁100外に漏れでることを抑制できる。
【0037】
なお、弁座シール8から漏れ出た使用液は、調圧室10内における使用液の圧力に比べて圧力が低い。このため、OリングR1としては、弁座シール8のように高圧に耐え得る構成でなくてもよい。このため、OリングR1としては、低圧用の簡素な構成のOリング等を採用することができる。
【0038】
このOリングR1は、アダプタ22の外周面22aに設けられたリング溝に装着されていることに限定されない。OリングR1は、ボディ1の取付孔1dの内周面1fに設けられたリング溝に嵌め込まれていてもよい。
【0039】
弁座シール8は、ボディ1の取付孔1dのテーパ部分1ftと弁座21の外周面21aに設けられたテーパ部分21atとを面接触させた金属シール構造によって構成されている。この場合、調圧弁100は、Oリング等の他のシール部材を用いることなく、ボディ1と弁座ユニット2との当接部分を封止できる。
【0040】
弁座ユニット2は、弁座21、及びアダプタ22を備えている。弁座21には、ピストン弁体3の弁体31が着座する。アダプタ22には、第一戻し流路L10が設けられている。ここで、例えば、超高圧の使用液を調圧する場合、弁座ユニット2において弁体31が当接する部分には高い硬度が求められる。そこで、調圧弁100では、弁座ユニット2が弁座21とアダプタ22と用いて構成されている。これにより、調圧弁100は、必要な箇所に必要な特性を有する材料を用いて弁座ユニット2を形成することができる。ここでは、弁座21を形成する材料として、アダプタ22よりも硬度の高い材料を用いることができる。この調圧弁100では、弁座21よりも硬度が低いアダプタ22に対して第一戻し流路L10を容易に形成することができる。
【0041】
次に、調圧弁の変型例について説明する。以下では、実施形態に係る調圧弁100との相違点を中心に説明する。
図2に示されるように変形例に係る調圧弁100Aは、上記実施形態に係る調圧弁100に対し、第二戻し流路L20がさらに設けられている。なお、
図2は、
図1とは異なる角度での断面が示されている。
図2に示される調圧弁100Aにおいても、
図1に示される調圧弁100と同様に図示されない位置に、調圧室10に連通する流入口1a及び流出口1bが設けられている。
【0042】
第二戻し流路L20は、ボディ1のガイド孔1eの内周面1gに設けられた開口部L20aと、ボディ1の取付孔1dの内周面1fに設けられた開口部L20bとを接続する。第二戻し流路L20は、少なくともボディ1によって形成されている。調圧弁100Aは、ボディ1に取り付けられた流路形成部9を備えている。流路形成部9の内部には、一方の端部から他方の端部にわたって延在する流路L21が形成されている。本変形例において、第二戻し流路L20は、ボディ1及び流路形成部9によって形成されている。
【0043】
流路形成部9は、第一ソケット91、第二ソケット92、及びパイプ93を備えている。第一ソケット91及び第二ソケット92は、それぞれボディ1に取り付けられている。パイプ93は、第一ソケット91と第二ソケット92とを接続する。流路L21は、第一ソケット91、パイプ93、及び第二ソケット92によって形成される。
【0044】
ボディ1には、流路孔L22及びL23が設けられている。流路孔L22は、ボディ1のガイド孔1eの内周面1gからボディ1の側面に向って延在している。流路孔L23は、ボディ1の取付孔1dの内周面1fからボディ1の側面に向って延在している。流路孔L22と第一ソケット91内の流路L21とは互いに連通している。流路孔L23と第二ソケット92内の流路L21とは互いに連通している。つまり、流路孔L22におけるガイド孔1eの内周面1g側の端部の開口部が、第二戻し流路L20における一方の端部の開口部L20aとなる。流路孔L23における取付孔1dの内周面1f側の端部の開口部が、第二戻し流路L20における他方の端部の開口部L20bとなる。
【0045】
弁体シール4は、第二戻し流路L20におけるガイド孔1eの内周面1g側の開口部L20aよりも、調圧室10側に位置している。ボディ1のガイド孔1eの内周面1gには、周方向に沿って延在するリング溝が設けられている。この内周面1gに設けられたリング溝には、OリングR2が嵌め込まれている。OリングR2は、弁棒32の外周面32aとボディ1のガイド孔1eの内周面1gとの間を液密に封止する。開口部L20aは、OリングR2よりも調圧室10(弁体シール4)に近い側に位置している。第二戻し流路L20の開口部L20bは、OリングR1よりも調圧室10(弁座シール8)に近い側に位置している。
【0046】
このように、調圧弁100Aには、ボディ1及び流路形成部9によって、第二戻し流路L20が形成されている。そして、弁体シール4は、第二戻し流路L20におけるガイド孔1eの内周面1g側の開口部L20aよりも、調圧室10側に位置している。つまり、調圧室10内の使用液が弁体シール4から漏れ出しても、漏れ出した使用液を第二戻し流路L20を介してボディ1の取付孔1d側に導くことができる。そして、上述したようにボディ1の取付孔1dに嵌め込まれた弁座ユニット2のアダプタ22には、第一戻し流路L10が形成されている。これにより、第二戻し流路L20を介してボディ1の取付孔1d内に導かれた使用液は、第一戻し流路L10を介して余液排出路Lに排出される。
【0047】
このように、調圧弁100Aでは、ボディ1のガイド孔1eとピストン弁体3との間に設けられた弁体シール4において使用液の漏れが生じても、ボディ1のガイド孔1eとピストン弁体3との間から外部に使用液が漏れ出ることを抑制できる。
【0048】
なお、ボディ1とピストン弁体3(弁棒32)との間には、OリングR2が設けられている。第二戻し流路L20の開口部L20aは、OリングR2よりも弁体シール4側に位置している。これにより、OリングR2は、弁体シール4から漏れ出た使用液がボディ1のガイド孔1eとピストン弁体3との間からボディ1外に漏れでることを抑制できる。
【0049】
なお、弁体シール4から漏れ出た使用液は、調圧室10内における使用液の圧力に比べて圧力が低い。このため、OリングR2としては、弁体シール4のように高圧に耐え得る構成でなくてもよい。このため、OリングR2としては、低圧用の簡素な構成のOリング等を採用することができる。
【0050】
このOリングR2は、ボディ1のガイド孔1eの内周面1gに設けられたリング溝に嵌め込まれていることに限定されない。ピストン弁体3の外周面(弁棒32の外周面32a)に設けられたリング溝に装着されていてもよい。
【0051】
ピストン弁体3は使用液の調圧のために移動する。このため、弁体シール4から液漏れが生じ易い。この調圧弁100Aでは、弁体シール4から漏れ出した使用液を余液排出路Lに排出できるため、弁体シール4からある程度の液漏れを許容することができる。これにより、調圧弁100Aでは、弁体シール4の交換頻度を少なくすることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第一戻し流路L10は、弁座ユニット2のアダプタ22に設けられた孔によって形成されていることに限定されない。例えば、
図3(a)に示されるように、第一戻し流路L10Aは、アダプタ22の上側の端面22cに設けられたアダプタ溝22dによって構成されていてもよい。この端面22cは、弁座21の下側の端面に当接する面である。このアダプタ溝22d(第一戻し流路L10A)は、アダプタ22の外周面22aから余液排出路Lまで延在している。これにより、アダプタ22の上側の端面22cに弁座21が当接した状態において、弁座ユニット2の外周面のうちボディ1の取付孔1dの内周面1fに対向する位置と、余液排出路Lとを接続する第一戻し流路L10Aが形成される。
【0053】
また、例えば、
図3(b)に示されるように、第一戻し流路L10Bは、弁座21の下側の端面21cに設けられた弁座溝21dによって構成されていてもよい。この端面21cは、アダプタ22の上側の端面に当接する面である。この弁座溝21d(第一戻し流路L10B)は、弁座21の外周面21aから余液排出路Lまで延在している。これにより、弁座21の下側の端面21cにアダプタ22が当接した状態において、弁座ユニット2の外周面のうちボディ1の取付孔1dの内周面1fに対向する位置と、余液排出路Lとを接続する第一戻し流路L10Bが形成される。
【0054】
第一戻し流路L10に代えて、第一戻し流路L10A及びL10Bが設けられる場合であっても、第一戻し流路L10が設けられている場合と同様の効果を奏することができる。そして、これらの変形例では、弁座溝21d及びアダプタ溝22dによって、第一戻し流路L10A及びL10Bを容易に形成することができる。なお、第一戻し流路L10Aと第一戻し流路L10Bとは、同時に用いられてもよい。
【0055】
また、上記実施形態及び変形例では、弁座シール8が金属シール構造によって構成されていた。これに限定されず、弁座シール8は、シール部材によって構成されていてもよい。
【0056】
本開示の態様は、以下のように示され得る。
[1]使用液の圧力を調整する調圧弁(100,100A)であって、
流入する使用液の圧力を調整するための調圧室(10)を形成するボディ(1)と、
前記ボディ(1)に設けられると共に前記調圧室(10)に連通する取付孔(1d)に嵌め込まれ、前記調圧室(10)内の使用液を排出するための余液排出路(L)を形成する弁座ユニット(2)と、
前記調圧室(10)内にその一部が入り込み、使用液の圧力が設定圧力以下の場合、前記弁座ユニット(2)に着座して前記余液排出路(L)の開口部(La)を閉とし、前記使用液の圧力が前記設定圧力を越える場合、前記弁座ユニット(2)から離座して前記開口部(La)を開とするピストン弁体(3)と、
を備え、
前記取付孔(1d)内において前記ボディ(1)と前記弁座ユニット(2)との間には、これらの間を液密に封止する弁座シール(8)が設けられ、
前記弁座ユニット(2)には、前記弁座ユニット(2)の外周面(22a)のうち前記取付孔(1d)の内周面(1f)に対向する位置に設けられた開口部(L10a)と前記余液排出路(L)とを接続する第一戻し流路(L10)が形成されており、
前記ボディ(1)と前記弁座ユニット(2)との間において、前記弁座シール(8)は、前記第一戻し流路(L10)における前記弁座ユニット(2)の外周面(22a)側の開口部(L10a)よりも、前記調圧室(10)側に位置している、調圧弁(100,100A)。
[2]前記弁座シール(8)は、前記ボディ(1)の前記取付孔(1d)の前記内周面(1f)においてテーパ状に形成されたテーパ部分(1ft)と、前記弁座ユニット(2)の前記外周面(21a)においてテーパ状に形成されたテーパ部分(21at)とを面接触させた金属シール構造によって構成されている、上記[1]に記載の調圧弁(100,100A)。
[3]前記弁座ユニット(2)は、弁座(21)と、前記弁座に隣接して設けられたアダプタ(22)と、を備え、
前記余液排出路(L)は、前記弁座(21)及び前記アダプタ(22)によって形成され、
前記弁座(21)には、前記ピストン弁体(3)が着座することによって開閉される前記余液排出路(L)の前記開口部(La)が設けられ、
前記アダプタ(22)には、前記第一戻し流路(L10)が形成され、
前記弁座シール(8)は、前記ボディ(1)と前記弁座(21)との間に設けられている、上記[1]又は[2]に記載の調圧弁(100,100A)。
[4]前記第一戻し流路(L10)は、前記弁座(21)において前記アダプタ(22)に当接する端面(21c)に設けられた弁座溝(21d)、及び、前記アダプタ(22)において前記弁座(21)に当接する端面(22c)に設けられたアダプタ溝(22d)の少なくともいずれかによって形成される、上記[3]に記載の調圧弁(100,100A)。
[5]前記ボディ(1)には前記ピストン弁体(3)の着座及び離座時の移動をガイドするガイド孔(1e)が設けられており、前記ガイド孔(1e)の内周面(1g)と前記ピストン弁体(3)の外周面(32a)との間を液密に封止する弁体シール(4)を更に備え、
少なくとも前記ボディ(1)によって、前記ガイド孔(1e)の内周面(1g)に設けられた開口部(L20a)と前記取付孔(1d)の内周面(1f)に設けられた開口部(L20b)とを接続する第二戻し流路(L20)が形成されており、
前記弁体シール(4)は、前記第二戻し流路(L20)における前記ガイド孔(1e)の内周面(1g)側の前記開口部(L20a)よりも、前記調圧室(10)側に位置している、上記[1]~[4]のいずれかに記載の調圧弁(100,100A)。
【符号の説明】
【0057】
1…ボディ、1d…取付孔、1e…ガイド孔、1f…内周面、1ft…テーパ部分、2…弁座ユニット、3…ピストン弁体、4…弁体シール、8…弁座シール、10…調圧室、21…弁座、21a…外周面、21at…テーパ部分、21c…端面、21d…弁座溝、22…アダプタ、22a…外周面、22c…端面、22d…アダプタ溝、32a…外周面、100,100A…調圧弁、L…余液排出路、La…開口部、L10…第一戻し流路、L10a…開口部、L20…第二戻し流路、L20a…開口部。