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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001605
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】吐出容器、吐出製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/44 20060101AFI20231227BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B65D83/44
B05B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100363
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】夏目 脩平
(72)【発明者】
【氏名】片岡 公雄
【テーマコード(参考)】
3E014
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC02
3E014PC03
3E014PC13
3E014PD04
3E014PE06
3E014PF02
4F033RA02
4F033RB08
4F033RC04
4F033RC06
4F033RC24
(57)【要約】
【課題】急激な圧力上昇に対応することができる吐出容器と、吐出製品を提供する。
【解決手段】容器本体3とバルブ4とを備え、バルブ4が、吐出操作時に内容物を吐出するための吐出機構Dと、内圧上昇時にガスPを放出するための放出機構Rとを備え、放出機構Rが、ステムラバー44と、ステムラバー44を収容するシール材収容部9と、シール材収容部9と容器本体3内とを連通してステムラバー44に容器本体3内の圧力を伝達する貫通孔42b3とを有するハウジング42と、貫通孔42b3から外部へと続く、定常時にはステムラバー44で遮断され、内圧上昇時にはステムラバー44が容器本体3内の圧力を受けて変形することにより自動的に開放されてガスPを外部に放出する放出通路R1とを備え、貫通孔42b3からの圧力を受けた際のステムラバー44の下流側への変形を促す変形空間7が設けられている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液とガスとを含む内容物が充填される容器本体と、
容器本体に取り付けられるバルブと、を備え、
バルブが、
吐出操作時に内容物を吐出するための吐出機構と、
内圧上昇時にガスを放出するための放出機構と、を備え、
放出機構が、
シール材と、
シール材に容器本体内の圧力を伝達する圧力伝達路を有するハウジングと、
圧力伝達路から外部へと続く、定常時にはシール材で遮断され、内圧上昇時にはシール材が容器本体内の圧力を受けて変形することにより自動的に開放されてガスを外部に放出する放出通路と、を備え、
圧力伝達路からの圧力を受けた際のシール材の下流側への変形を促す変形空間が設けられている、吐出容器。
【請求項2】
圧力伝達路の延長線上に変形空間が設けられている、請求項1記載の吐出容器。
【請求項3】
吐出機構が、ステム孔を有するステムと、ステム孔を塞ぐステムラバーと、を備え、
ステムラバーがシール材を兼ねている、請求項1記載の吐出容器。
【請求項4】
ハウジングが、
シール材が載置されるシール材受けを有する外側ハウジングと、
シール材受けに載置されたシール材を押さえるシール材押えを有する内側ハウジングと、を備え、
シール材受けとシール材押えとで挟まれたシール材の挟部の外側に圧力伝達路が位置している、請求項1記載の吐出容器。
【請求項5】
容器本体の開口部とハウジングとの間をシールするガスケットを備え、
ガスケットがシール材を兼ねている、請求項1記載の吐出容器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の吐出容器と、吐出容器に充填された内容物と、を備えた、吐出製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の圧力が上昇した時にガスを自動的に外部に放出するバルブを備えた吐出容器と、吐出製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガス透過性を有する合成樹脂材料からなる蓋体で容器本体を密閉し、容器内の圧力が異常に上昇したときには、合成樹脂のガス透過性を利用してガスを外部に放出し、内圧の上昇を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-147383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、合成樹脂のガス透過能力は小さく、圧力が急激に上昇するとガスの放出が間に合わず、容器等が変形してしまうことがある。
【0005】
本発明は、急激な圧力上昇に対応することができる吐出容器と、吐出製品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吐出容器は、原液とガスとを含む内容物が充填される容器本体3と、容器本体3に取り付けられるバルブ4、4A、4Bと、を備え、バルブ4、4A、4Bが、吐出操作時に内容物を吐出するための吐出機構Dと、内圧上昇時にガスを放出するための放出機構Rと、を備え、放出機構Rが、シール材8(ステムラバー44、ガスケット6)と、シール材44、8、6に容器本体3内の圧力を伝達する圧力伝達路42b5(貫通孔42b3、142b4)とを有するハウジング42、142、242と、圧力伝達路42b5(貫通孔42b3、142b4)から外部へと続く、定常時にはシール材44、8、6で遮断され、内圧上昇時にはシール材44、8、6が容器本体3内の圧力を受けて変形することにより自動的に開放されてガスを外部に放出する放出通路R1と、を備え、圧力伝達路42b5(貫通孔42b3、142b4)からの圧力を受けた際のシール材44、8、6の下流側への変形を促す変形空間7が設けられていることを特徴としている。
【0007】
上記吐出容器においては、圧力伝達路42b5(貫通孔42b3、142b4)の延長線上に変形空間7が設けられていることが好ましい。
【0008】
吐出機構Dが、ステム孔41aを有するステム41と、ステム孔41aを塞ぐステムラバーと、を備え、ステムラバーがシール材44を兼ねていることが好ましい。
【0009】
ハウジング142が、シール材8が載置されるシール材受け142b3を有する外側ハウジング142bと、シール材受け142b3に載置されたシール材8を押さえるシール材押え142a1を有する内側ハウジング142aと、を備え、シール材受け142b3とシール材押え142a1とで挟まれたシール材8の挟部8bの外側に圧力伝達路(貫通孔142b4)が位置していることが好ましい。
【0010】
容器本体3の開口部3eとハウジング242との間をシールするガスケットを備え、ガスケットがシール材6を兼ねていてもよい。
【0011】
本発明の吐出製品は、上記吐出容器2、2A、2Bと、吐出容器2、2A、2Bに充填された内容物と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吐出容器と吐出製品は、圧力が異常に高くなったときに、放出通路を介してガスを放出するため、合成樹脂のガス透過性を利用して放出するものと比べて短時間でガスを放出し、圧力を正常値に戻すことができる。また、変形空間を設けることで、シール材の下流側への変形のし易さ、し難さを変形空間の位置や大きさを変えることにより制御しやすくなり、内圧がどれだけ上昇すればガスを放出させるのかといった調整が行いやすい。
【0013】
圧力伝達路の延長線上に変形空間が設けられている場合、シール材を変形させやすくなり、ガスを放出しやすい。
【0014】
吐出機構が、ステム孔を有するステムと、ステム孔を塞ぐステムラバーとを備え、ステムラバーがシール材を兼ねている場合、部品点数が少なくなり、構造が簡単になる。
【0015】
ハウジングが、シール材が載置されるシール材受けを有する外側ハウジングと、シール材受けに載置されたシール材を押さえるシール材押えを有する内側ハウジングとを備え、シール材受けとシール材押えとで挟まれたシール材の挟部の外側に圧力伝達路が位置している場合、シール材の外周部を変形させやすく、ガスを放出しやすい。また、ステムラバーがシール材を兼ねているものと比べて、シール材が内容物、特に原液に接触し難く、内容物による膨潤や収縮の影響を受けにくい。
【0016】
容器本体の開口部とハウジングとの間をシールするガスケットを備え、ガスケットがシール材を兼ねている場合、ステムラバーがシール材を兼ねているものと比べて、シール材が内容物、特に原液に接触し難く、内容物による膨潤や収縮の影響を受けにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る吐出製品の断面図である。
図2図1のバルブ付近を拡大した断面図である。
図3】内圧上昇時のシール材の変形を示す断面図である。
図4】他の吐出製品のバルブ付近を拡大した断面図である。
図5】内圧上昇時のシール材の変形を示す断面図である。
図6】他の吐出製品のバルブ付近を拡大した断面図である。
図7】内圧上昇時のシール材の変形を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態に係る吐出製品1について図面に基づいて詳細に説明する。吐出製品1は、吐出容器2と、原液Cと噴射剤(ガス)Pとを有する内容物とを備えている。吐出容器2は、図1に示すように、内容物が充填される容器本体3と、容器本体3に取り付けられるバルブ4とを備えている。バルブ4は、図2に示すように、吐出操作時に内容物を吐出するための吐出機構Dと、内圧上昇時にガスを自動的に放出するための放出機構Rとを備えている。以下、各構成部品について詳細に説明する。
【0019】
容器本体3は、例えばブリキやアルミニウム等の金属製であって、所定の内圧を加えても破裂しない耐圧性を有する耐圧容器である。この容器本体3は、図1に示すように、底部3aと、底部3aの外周端から立ち上がる略円筒状の胴部3bと、胴部3bの上端から徐々に縮径しながら上方に延びる肩部3cと、肩部3cの上端から上方に延びる首部3dとを備えている。首部3dの上端が開口部3eになっている。首部3dの外周面には、固定部材(キャップ)45と螺合するための雄ネジ3d1が設けられている。また、容器本体3は金属製に限らず、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製であっても良い。
【0020】
バルブ4はいわゆるエアゾールバルブであって、図2に示すように、側面にステム孔41aを有する有底筒状のステム41と、ステム41の下部を上下動可能に収容するハウジング42と、ステム41の下方に位置してステム41を常時上方に付勢する弾性体(バネ)43と、ステム41が押し下げられる前又は傾倒する前はステム孔41aを塞ぎ、ステム41が押し下げられたとき又は傾倒したときには変形してステム孔41aを開放するステムラバー44と、容器本体3の開口部3eに載置されたハウジング42を固定する固定部材(キャップ)45とを備えている。キャップ45は、ハウジング42に収容されたステム41、弾性体43、ステムラバー44をハウジング42内に留める役割もある。なお、吐出機構Dは、ステム41と、弾性体43と、ステムラバー44とで構成されている。
【0021】
キャップ45は、略円板状の上底部45aと、上底部45aの外周縁から下方に向かって延びる筒部45bとを備えている。上底部45aの平面視中央には、ステム41を通すための挿通孔45a1が設けられている。挿通孔45a1の径はステム41の外径よりも大きいため、挿通孔45a1の内周面とステム41の外周面との間には隙間が形成されるが、その隙間の上流側(容器本体3内側)において、ステムラバー44の内周面が常にステム41の外周面に当接してシールを形成しているため、その隙間から内容物が漏れ出すことは無い。筒部45bの内周面には、容器本体3の首部3dに螺着するための雌ネジ45b1が設けられている。このキャップ45は、例えばブリキやアルミニウム等の金属製、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン等の合成樹脂製である。
【0022】
ハウジング42は、筒状であって内部にステム41の下部や弾性体43を収容するステム収容部42aと、ステム収容部42aの上端から径外方向に延びるフランジ部42bと、フランジ部42bの下面から下方に延びる筒状のガスケット取付部42cとを備えている。このハウジング42は、例えばポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製である。
【0023】
ステム収容部42aの下端からは、ディップチューブ5の上部を内挿するための筒状のチューブ取付部42dが下方に向かって延びている。ステム収容部42aとチューブ取付部42dとの間には仕切り部42eが設けられている。この仕切り部42eには、ディップチューブ5を通ってきた内容物(主として原液C)をステム収容部42aに送るための連通孔42e1が設けられている。
【0024】
フランジ部42bの外径は開口部3e(首部3dの上端)の外径と等しいか大とされている。フランジ部42bの上面には、平面視、ステム収容部42aを囲むようにして円環状の窪み42b1が設けられている。ステムラバー44はこの窪み42b1に設置される。要は、窪み42b1によって形成された空間が、ステムラバー(シール材)44の収容部(シール材収容部9)として機能する。窪み42b1の内周側には、換言すればステム収容部42aの上端には、上方に向かって立ち上がる環状突起42fが設けられている。容器本体3にキャップ45を螺着させると、キャップ45の上底部45aとこの環状突起42fとでステムラバー44が上下方向から挟まれてシールを形成し、内容物が環状突起42fを超えて径外方向へ流れることを防止する。窪み42b1の外周側は、窪み42b1よりも一段上に上がった平坦部42b2になっている。平坦部42b2の上面は、容器本体3に螺着されたキャップ45の上底部45aの下面と当接する。要は、キャップ45に上から押さえ付けられるようにしてハウジング42は容器本体3の開口部3eに固定されている。なお、ステムラバー44もキャップ45に上から押さえ付けられている。
【0025】
ところでフランジ部42bには、フランジ部42bの上面側(シール材収容部9)と容器本体3内とを連通する貫通孔42b3が設けられている。この貫通孔42b3は、ステム41内や挿通孔45a1、容器本体3の開口部3eとハウジング42のフランジ部42bとの間を通らない放出通路R1を形成するために設けられている。貫通孔42b3は窪み42b1で開口しており、窪み42b1に設置されたステムラバー44によって塞がれている。要は、ステムラバー44が貫通孔42b3のシール材としても機能している。貫通孔の径は例えば0.1~5mmである。
【0026】
ガスケット取付部42cには、フランジ部42bの平坦部42b2の下面と容器本体3の開口部3e(首部3dの上端)との間で上下方向に挟まれてシールを形成する円環状のガスケット6が取り付けられている。具体的には、ガスケット6の上面をフランジ部42bの下面に当接させるようにして、フランジ部42bの下面とガスケット取付部42cの外周面とで形成された入隅部に位置させている。ガスケット6を挟む力は、キャップ45による上からの押さえ付けによって与えられている。ガスケット6の外径は開口部3e(首部3dの上端)の外径と等しいか大、かつキャップ45の筒部45bの内径より小とされており、ガスケット6が取り付けられた状態で、ガスケット6の外周面とキャップ45の筒部45bの内面との間でシールがない。要は、ガスケット6の外周面とキャップ45の筒部45bの内面との間にガスPを通すことができる隙間が形成されている。このガスケット6は例えば合成ゴム製である。
【0027】
ステムラバー44は円環状であって、内周面がステム41の外周面に当接している。ステム41の外周面に周方向に連続する凹溝41bが設けられているため、ステムラバー44の内縁部が凹溝41bに嵌まり込んでいるともいえる。ステムラバー44の外径は、フランジ部42bの上面に設けられた窪み42b1の外径とほぼ等しく、ステムラバー44は窪み42b1に嵌まり込んでいる。ステムラバー44の、環状突起42fよりも内側を内側部44aとし、環状突起42fよりも外側を外側部44bとすると、内側部44aの下方は空間であって、内側部44aを下から支えるものは無く、ステム41が押し下げられるとそれにつられて下方に撓み、ステムラバー44の内周面によるステム孔41aの閉塞が解かれる。この際、ステムラバー44の内周面の上端はステム41の外周面に当接し続けるため、ステムラバー44の内周面とステム41の外周面との間から内容物が漏れ出すことは無い。また、内側部44aの上方にはキャップ45の上底部45aが位置しているため、容器本体3内の圧力が上昇しても内側部44aが上方に撓むことは無い。
【0028】
外側部44bの上面(フランジ部42bとは反対側の面)には、環状に連なる溝部44b1が設けられており、キャップ45の上底部45aの下面との間に空間が形成されている。溝部44b1は、断面略台形状をしている。溝部44b1が設けられている部分は、キャップ45の上底部45aとフランジ部42bとに挟まれていない非挟部44b2となり、溝部44b1が設けられていない部分はキャップ45の上底部45aとフランジ部42bとによって上下方向から挟まれた挟部44b3となる。非挟部44b2は、径方向において2つの挟部44b3の間に位置している。換言すれば2つの挟部44b3の間に非挟部44b2が形成されている。溝部44b1(非挟部44b2)は、平面視で貫通孔42b3と重なっている。また、貫通孔42b3の延長線上に位置している。
【0029】
上記ステムラバー44は例えば合成ゴム製であって、変形した際に元の形状に戻ろうとする復元性(弾力性)を備えている。また、内圧上昇前の定常時の圧力では大きな変形は生じず、放出通路R1の遮断状態を維持できるが、内圧上昇時には容器本体3内の圧力を受けて変形し、放出通路R1を自動的に開放する剛性を有している。タイプAデュロメータ硬さは例えば50~90度である。非圧縮時の板厚は、非挟部44b2で例えば0.5~2mm、挟部44b3で例えば0.7~3mmである。非挟部44b2は挟部44b3よりも厚みが薄い。内側部44aの厚み(板厚)は例えば0.7~3mmであり、非挟部44b2と同じである。バルブ4への装着時には、挟部44b3はハウジング42の窪み42b1とキャップ45の上底部45aとの間で圧縮されて、内側部44aよりも薄くなる。溝部44b1の幅は、上底(上辺)が例えば0.3~3mm、下底(下辺)が例えば0.2~2mmである。溝部44b1の深さは例えば0.2~2mmである。これらの数値を調節することで、放出通路R1が開放されるときの圧力を調整することができる。
【0030】
例えば、硬さを増したり、板厚を大きくしたり、溝部44b1(すなわち空間)の寸法を小さくすれば、大きな圧力上昇が生じるまで開放されず、硬さを小さくしたり、板厚を小さくしたり、溝部44b1の寸法を大きくすれば、小さな圧力上昇でも開放されるようになる。特に、ハウジング42の窪み42b1とキャップ45の上底部45aで挟部44b3の圧縮率を調整することで、環状突起42fの内側部44aはステム41が未作動の位置にあるときに、ステム孔41aをシールしやすい硬度を維持しつつ、環状突起42fの外側部44bは所定の圧力になったときに、変形しやすい硬度にすることができる。
【0031】
放出機構Rは、ステムラバー44と、ハウジング42と、放出通路R1とで構成されている。従って、ステムラバー44は吐出機構Dと放出機構Rとで兼用されている。
【0032】
吐出容器2に充填されている内容物は、原液Cと、原液Cを吐出するための噴射剤(ガス)Pとを備えている。原液Cは、洗顔剤、手指洗浄剤、手指消毒剤、入浴剤、保湿剤、クレンジング剤、日焼け止め、化粧水、シェービング剤、制汗剤、害虫忌避剤、消炎鎮痛剤、鎮痒剤などの皮膚用品、トリートメント剤、スタイリング剤、染毛剤などの頭髪用品などの人体用品、ホイップクリーム、オリーブオイルなどの食品、消臭剤、芳香剤、殺虫剤、防虫剤、花粉除去剤、抗菌剤、洗浄剤、園芸用肥料などの家庭用品、潤滑剤などの工業用品などである。但し、これらの用途に限られるわけではない。
【0033】
噴射剤Pは、液化ガス、圧縮ガスおよびこれらの混合ガスである。液化ガスとしては、例えば、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィンおよびこれらの混合物等が挙げられる。圧縮ガスとしては、例えば、窒素、圧縮空気、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素およびこれらの混合物等が挙げられ、25℃における圧力が0.2~1.0MPa未満となるように充填される。
【0034】
次に、吐出製品1が高温下に置かれたときの放出機構Rの作用について説明する。吐出製品1が高温下に置かれると、噴射剤Pが膨張し容器本体3内の圧力(内圧)が上昇する。貫通孔42b3は、ステムラバー44の主に非挟部44b2に圧力を伝達する圧力伝達路として機能するが、内圧が所定の圧力に達すると、図3に示すように、主に非挟部44b2が空間を小さくする方向に変形する。要は、溝部44b1によって形成された空間が、非挟部44b2の下流側(貫通孔42b3とは反対側であって、容器本体3内から見て外部に向かう方向)への変形を促す変形空間7として機能する。非挟部44b2の変形によって、貫通孔42b3の閉塞が解かれるとともに、非挟部44b2の径外側にある挟部44b3がフランジ部42bの上面から離れて、挟部44b3によるシールが解除される。その結果、内容物の主として噴射剤Pが、貫通孔42b3、フランジ部42bの上面とキャップ45の上底部45aの下面との間、フランジ部42bの外周面とキャップ45の筒部45bの内周面との間、容器本体3の首部3dの外周面とキャップ45の筒部45bの内周面との間からなる放出通路R1を通って外部に自動的に放出される(図2参照)。
【0035】
内容物の放出によって内圧が下がり定常時の圧力に戻ると、ステムラバー44の復元性によって非挟部44b2が元の位置(形状)に戻り、再び貫通孔42b3が塞がれる。また、挟部44b3がフランジ部42bの上面と再度当接する。放出通路R1は遮断されるため、ガスの放出は止まる。
【0036】
このように本発明の吐出容器2では、ガスケット6とステムラバー44とによって密閉されている吐出容器において、ハウジング42にあえて貫通孔42b3を設けることで外部にガスを放出するための放出通路R1を形成するとともに、定常時には放出通路R1を遮断し、内圧上昇時には放出通路R1を自動的に開放するシール材(ステムラバー44)を設けているため、内圧が上昇した際には短時間でガスを放出することができ、急激な圧力上昇にも対応することができる。その結果、内圧によってキャップ45と容器本体3との螺着(係合)が外れ、キャップ45やバルブ4が吹き飛ぶといった問題を解消することができる。
【0037】
なお、内容物を意図的に吐出させる、要はバルブ4を吐出操作して吐出機構Dから内容物を吐出させる場合は、ステム41を押し下げる等してステムラバー44の内側部44aを変形させ、ステムラバー44によるステム孔41aの閉塞を解き、ディップチューブ5、ハウジング42内、ステム41内を通る吐出通路D1を経て外部に内容物を吐出させる。
【0038】
図4は、本発明の異なる吐出製品1Aを示している。図1の吐出製品1では、容器本体3とキャップ45が金属製であったが、この吐出製品1Aでは例えばポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製等である。なお、図4では容器本体3の下方を省略しているが、図1の吐出容器3と同様の構成である。
【0039】
また、図1の吐出容器2のバルブ4では、ステムラバー44が圧力伝達路42b3を塞ぐシール材を兼ねていたが、この吐出容器2Aのバルブ4Aでは、ステムラバー44とは別に円環状のシール材8を設けている。シール材8の材質は、図1の吐出製品1で用いられていたステムラバー44と同じである。従ってシール材8は、変形しても元の形状に戻る復元性を備えている。また、内圧上昇前(定常時の圧力)では大きな変形は生じず、放出通路R1の遮断状態を維持できるが、内圧上昇時には容器本体3内の圧力を受けて変形し、放出通路R1を自動的に開放する剛性を有している。
【0040】
ハウジング142は2つに分割されている。吐出機構Dを収容している部材を内側ハウジング142aとし、内側ハウジング142aの外周側に位置する部材を外側ハウジング142bとすると、内側ハウジング142aは、ステム収容部42aの上端から径外方向に向かって延びる、シール材8を上方から押さえるシール材押え142a1を備えている。外側ハウジング142bは、シール材押え142a1の外周側に位置する円環状の基部142b1と、基部142b1の上端から径外方向に向かって延びるフランジ部142b2と、基部142b1の下端から径内方向に延びる、シール材8が載置されるシール材受け142b3とを備えている。
【0041】
シール材受け142b3とシール材押え142a1との間には、シール材8を収容するためのシール材収容部9が形成されている。シール材8はこのシール材収容部9に収容され、シール材受け142b3の上面とシール材押え142a1の下面とで上下方向に挟まれて、シール材受け142b3とシール材押え142a1の間をシールしている。
【0042】
シール材受け142b3の内径は、ステム収容部42aの外径と等しいか僅かに大である。シール材受け142b3には、基端部近傍に、シール材受け142b3の上面側(シール材収容部9)と容器本体3内とを連通する貫通孔142b4が設けられている。定常時、この貫通孔142b4はシール材8によって塞がれている。
【0043】
シール材押え142a1の外径は、基部142b1の内径よりも小であり、シール材押え142a1の外周面と基部142b1の内周面との間には空間が形成されている。空間の横(径)方向の幅は例えば0.5~3mmである。この空間が、シール材8が内圧を受けた際のシール材8の下流側(貫通孔142b4とは反対側)への変形を促す変形空間7となる。またこの変形空間7によってシール材8に、シール材受け142b3とシール材押え142a1とで挟まれていない非挟部8aが形成される。シール材受け142b3とシール材押え142a1とで上下方向から挟まれている挟部8bは、シール材受け142b3の上面とシール材押え142a1の下面との間をシールしている。
【0044】
貫通孔142b4は、平面視、変形空間7(非挟部8a)と重なるようにして設けられている。また、延長線上に変形空間7が位置するようにして設けられている。シール材8の外径は、基部142b1の内径と等しいか大であり、シール材8の外周面は基部142b1の内周面に当接している。シール材8の内径は、ステム収容部42aの外径とほぼ等しい。
【0045】
上記構成の吐出製品1Aが高温下に置かれるなどして内圧が上昇すると、貫通孔142b4からシール材8に内圧が加わり、図5に示すように、非挟部8aが、シール材押え142a1の外周面と基部142b1の内周面との間の変形空間7に向かって変形する。変形によって、シール材8による貫通孔142b4の閉塞が解かれる。また、シール材8の外周面が基部142b1の内周面から離れる。その結果、内容物の主として噴射剤Pが、貫通孔142b4、基部142b1の内周面とシール材8の外周面との間、基部142b1やフランジ部142b2の上面とキャップ45の上底部45aの下面との間、フランジ部142b2の外周面とキャップ45の筒部45bの内周面との間、容器本体3の首部3dの外周面とキャップ45の筒部45bの内周面との間からなる放出通路R1を通って外部に放出される(図4参照)。ガスの放出によって内圧が下がると、シール材8の復元性によって変形前の元の位置に戻り、再び貫通孔142b4が塞がれる。また、シール材8の外周面が基部142b1の内周面と再度当接する。放出通路R1は遮断されるため、ガスの放出は止まる。
【0046】
図4の吐出製品1Aでは、シール材8がステムラバーとは別に設けられているため、シール材とステムラバーとを兼用しているものと比べてシール材8が内容物の特に原液Cに触れにくく、内容物によるシール材8の膨潤や収縮、劣化を抑制することができ、長期間にわたって安定した放出動作をさせることができる。
【0047】
他の構成については、図1の吐出製品1と同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0048】
図6は、本発明のさらに異なる吐出製品1Bを示している。この吐出製品1Bでは、容器本体3の開口部3eとハウジング242のフランジ部242bとの間をシールするガスケット6がバルブ4Bの構成部品のひとつとされている。
【0049】
また、ガスケット6が放出通路R1を閉じるシール材を兼ねている。具体的に説明すると、非圧縮時のガスケット6の外径が、キャップ45の筒部45bの上部(雌ネジ45b1よりも上の部分)の内径よりも大とされており、ガスケット6の外周面がキャップ45の筒部45の上部の内周面に密着してシールを形成している。このガスケット6の材質は、図1の吐出製品1で用いられていたステムラバー44や図4のシール材8と同じである。従ってガスケット6は、変形しても元の形状に戻る復元性を備えている。また、内圧上昇前(定常時の圧力)では大きな変形は生じず、放出通路R1の遮断状態を維持できるが、内圧上昇時には容器本体3内の圧力を受けて変形し、放出通路R1を自動的に開放する剛性を有している。
【0050】
ガスケット6に内圧を伝達するため、ハウジング242には、貫通孔42b3に加えて、フランジ部242bの上面及び外周面に沿って延びる通路溝42b4が形成されている。そして貫通孔42b3と通路溝42b4とによって圧力伝達路42b5が形成されている。なお、フランジ部242bに代えて、キャップ45の上底部45aの下面や筒部45bの内周面に通路溝を設けてもよい。また、通路溝42b4を設けなくても、フランジ部242bの上面及び外周面に沿ってガスPが流れる程度の隙間が形成されることがある。この場合、圧力伝達路42b5は形成されるため、必ずしも通路溝42b4を設ける必要は無い。
【0051】
上記構成のバルブ4Bを容器本体3に取り付けると、容器本体3の首部3dの外周面と、キャップ45の筒部45bの上部の内周面との間に隙間が形成される。隙間の横(径)方向の幅は例えば0.5~3mmである。この隙間がガスケット6の下流側への変形を促す変形空間7として機能する。ガスケット6の外径は、容器本体3の首部3dの上端部の外径よりも大である。そのため、バルブ4Bを容器本体3に取り付けた際、ガスケット6には、容器本体3の首部3dの上端面とハウジング242のフランジ部242bの下面との間で上下方向から挟まれた挟部6bと、首部3dよりも外側に位置して挟まれない非挟部6aとが形成される。変形空間7と非挟部6aは平面視、圧力伝達路42b5に重なっている。また、圧力伝達路42b5の延長線上に設けられている。
【0052】
上記構成の吐出製品1Bでは、内圧が上昇すると、内圧が圧力伝達路42b5を通じてガスケット6の外周部に加わるが、外周部の下流側に変形空間7が形成されており、外周部を下流側から支えるものが無いため、内圧を受けて外周部が下流側に撓むようにして変形する(図7参照)。これにより、ガスケット6の外周面とキャップ45の筒部45bの内周面との間のシールが解かれ、内容物の主に噴射剤Pが、貫通孔42b3、通路溝42b4、ガスケット6の外周面とキャップ45の筒部45bの内周面との間、容器本体3の首部3dの外周面とキャップ45の筒部45bの内周面との間からなる放出通路R1を通じて外部に放出される。ガスの放出によって内圧が下がると、ガスケット6の復元性によって変形前の元の位置に戻り、再びガスケット6の外周面とキャップ45の筒部45bの内周面との間のシールが形成される。放出通路R1は遮断されるため、ガスの放出は止まる。
【0053】
図6の吐出容器2Bでは、ステムラバーがシール材を兼ねていないため、兼ねているものと比べてシール材が内容物の特に原液Cに触れにくく、内容物によるシール材の膨潤や収縮、劣化を抑制することができ、長期間にわたって安定した放出動作をさせることができる。また、ハウジング242が1つの部材であるため、図4のハウジング142のように2つの部材から構成するものに比べて部品点数を減らすことができる。
【0054】
他の構成については、図1の吐出製品1と同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0055】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、貫通孔42b3、142b4や通路溝42b4は1つに限らず、複数設けてもよい。図4の吐出製品1Aにおいて、シール材8を円環状としていたが、外側ハウジング142bのシール材受け142b3の内周面と内側ハウジング142aのステム収容部42aの外周面との間のシールが確保できる場合は、必ずしも円環状とする必要は無い。キャップ45は容器本体3に螺着されていたが、放出通路R1を確保できる固定方法であれば、カシメ固定等、公知の種々の固定方法を採用し得る。例えば、キャップの上底部や筒部であって、シール材の下流側に放出孔を設ければ放出通路R1を確保することができる。変形空間7は平面視環状であったが、必ずしも環状である必要は無い。
【符号の説明】
【0056】
1、1A、1B 吐出製品
2、2A、2B 吐出容器
3 容器本体
3a 底部
3b 胴部
3c 肩部
3d 首部
3d1 雄ネジ
3e 開口部
4、4A、4B バルブ
41 ステム
41a ステム孔
41b 凹溝
42 ハウジング
42a ステム収容部
42b フランジ部
42b1 窪み
42b2 平坦部
42b3 貫通孔(圧力伝達路)
42c ガスケット取付部
42d チューブ取付部
42e 仕切り部
42e1 連通孔
42f 環状突起
43 弾性体
44 ステムラバー(シール材)
44a 内側部
44b 外側部
44b1 溝部
44b2 非挟部
44b3 挟部
45 固定部材(キャップ)
45a 上底部
45a1 挿通孔
45b 筒部
45b1雌ネジ
5 ディップチューブ
6 ガスケット(シール材)
7 変形空間
8 シール材
8a 非挟部
8b 挟部
9 シール材収容部
142 ハウジング
142a 内側ハウジング
142a1 シール材押え
142b 外側ハウジング
142b1 基部
142b2 フランジ部
142b3 シール材受け
142b4 貫通孔(圧力伝達路)
242 ハウジング
242b フランジ部
42b4 通路溝
42b5 圧力伝達路
6a 非挟部
6b 挟部
D 吐出機構
D1 吐出通路
R 放出機構
R1 放出通路
C 原液
P 噴射剤(ガス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7