(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160500
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】大型化学消防車
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A62C27/00 501
A62C27/00 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075565
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中尾 徹
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AA03
2E189AA04
2E189AC06
2E189AC07
(57)【要約】
【課題】 有圧給水源からの取水に加えて、落差が大きい水源からでも取水することを可能にした大型化学消防車を提供する。
【解決手段】 この大型化学消防車は、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプ12と、取水用ポンプ12を駆動する油圧ポンプ13と、有圧給水源又は取水用ポンプ12に接続される少なくとも1つの取水口15と、取水口15から供給される水を増圧する増圧ポンプ16と、増圧ポンプ16により増圧された水を放射する放射銃17と、泡消火薬剤を貯留する薬剤タンク18と、増圧ポンプ16により増圧された水に対して泡消火薬剤を混合する混合装置19と、油圧ポンプ13及び増圧ポンプを16それぞれ駆動する動力源20と、取水用ポンプ12が収納される収納庫21とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧により駆動される移動式の取水用ポンプと、該取水用ポンプを駆動する油圧ポンプと、有圧給水源又は前記取水用ポンプに接続される少なくとも1つの取水口と、前記取水口から供給される水を増圧する増圧ポンプと、該増圧ポンプにより増圧された水を放射する放射銃と、泡消火薬剤を貯留する薬剤タンクと、前記増圧ポンプにより増圧された水に対して前記泡消火薬剤を混合する混合装置と、前記油圧ポンプ及び前記増圧ポンプをそれぞれ駆動する動力源と、前記取水用ポンプが収納される収納庫とを有することを特徴とする大型化学消防車。
【請求項2】
前記有圧給水源から取水する際の前記増圧ポンプの最大放水量が2000リットル/分以上であり、前記取水用ポンプから取水する際の前記増圧ポンプの最大放水量が10000リットル/分以上であることを特徴とする請求項1に記載の大型化学消防車。
【請求項3】
前記取水用ポンプは、前記取水口と水面との落差が10m以上となる水源から揚水する能力を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の大型化学消防車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精油所に代表される特定事業所において好適に使用される大型化学消防車に関し、更に詳しくは、有圧給水源からの取水に加えて、落差が大きい水源からでも取水することを可能にした大型化学消防車に関する。
【背景技術】
【0002】
精油所や火力発電所のような特定事業所では、高所放水機能や泡消火機能を備えた消防車(例えば、特許文献1~3参照)を配備し、それらを操作する消防要員を常駐させておくことが必要である。
【0003】
このような消防車は、通常は消火栓等の有圧給水源から取水しながら消防活動を行うが、有圧給水源からの給水量が不十分である場合や有圧給水源が使用不能である場合は、河川や海などの水源から取水を行うように構成されている。より具体的には、消防車に搭載された真空ポンプにより水源から取水し、その水を使用して消火活動を行うのである。
【0004】
しかしながら、真空ポンプにより取水を行う場合、落差が大きい水源から取水を行うことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-155394号公報
【特許文献2】特開平11-9715号公報
【特許文献3】特開2022-148077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、有圧給水源からの取水に加えて、落差が大きい水源からでも取水することを可能にした大型化学消防車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の大型化学消防車は、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプと、該取水用ポンプを駆動する油圧ポンプと、有圧給水源又は前記取水用ポンプに接続される少なくとも1つの取水口と、前記取水口から供給される水を増圧する増圧ポンプと、該増圧ポンプにより増圧された水を放射する放射銃と、泡消火薬剤を貯留する薬剤タンクと、前記増圧ポンプにより増圧された水に対して前記泡消火薬剤を混合する混合装置と、前記油圧ポンプ及び前記増圧ポンプをそれぞれ駆動する動力源と、前記取水用ポンプが収納される収納庫とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の大型化学消防車は、取水口から供給される水を増圧する増圧ポンプと、該増圧ポンプにより増圧された水を放射する放射銃と、泡消火薬剤を貯留する薬剤タンクと、増圧ポンプにより増圧された水に対して泡消火薬剤を混合する混合装置とを備えているので、消防活動において高所放水機能や泡消火機能を発揮することができる。また、通常は消火栓等の有圧給水源から取水しながら消防活動を行う一方で、有圧給水源からの給水量が不十分である場合や有圧給水源が使用不能である場合は、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプを用いて河川や海などの水源から取水しながら消防活動を行うことができる。油圧により駆動される取水用ポンプは、落差が大きい水源からでも取水することが可能である。また、本発明の大型化学消防車は、取水用ポンプを駆動する油圧ポンプを備えると共に、移動式の取水用ポンプが収納される収納庫を備えているので、取水用ポンプの搬送及び駆動を車両自体で完結させることができる。
【0009】
本発明において、有圧給水源から取水する際の増圧ポンプの最大放水量は2000リットル/分以上であり、取水用ポンプから取水する際の増圧ポンプの最大放水量は10000リットル/分以上であることが好ましい。このような増圧ポンプの最大放水量を確保することにより、優れた消火能力を発揮することが可能となる。
【0010】
取水用ポンプは、取水口と水面との落差が10m以上となる水源から揚水する能力を備えることが好ましい。これにより、河川や海などの水源から取水するにあたって落差が大きい場合でも取水を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態からなる大型化学消防車を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態からなる大型化学消防車のポンプユニットを示す概略図である。
【
図3】移動式の取水用ポンプの一例を示す正面図である。
【
図4】移動式の取水用ポンプの一例を示す左側面図である。
【
図5】移動式の取水用ポンプの一例を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる大型化学消防車を示し、
図2はそのポンプユニットを示すものである。
【0013】
本実施形態の大型化学消防車は、
図1に示すように、エンジンを備えた車体1と、車体1に配設された複数の車輪2と、車体1の前部に設けられた運転室3と、運転室3の後側に設置された資材搬送用のクレーン4と、車体1の後部に搭載されたポンプユニット10とを備えている。
【0014】
ポンプユニット10は、複数の扉を有する筐体11を備えている。また、ポンプユニット10は、
図2に示すように、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプ12と、該取水用ポンプ12を駆動する油圧ポンプ13と、消火栓等の有圧給水源又は取水用ポンプ12に接続される少なくとも1つの取水口15と、取水口15から供給される水を増圧する増圧ポンプ16と、増圧ポンプ16により増圧された水を放射する放射銃17と、泡消火薬剤を貯留する薬剤タンク18と、増圧ポンプ16により増圧された水に対して泡消火薬剤を混合する混合装置19と、油圧ポンプ13及び増圧ポンプ16をそれぞれ駆動する動力源20と、取水用ポンプ13が収納される収納庫21とを備えている。
図2においては、1つの取水口15を備えた構造が例示されているが、増圧ポンプ16に対して例えば1つ~3つの取水口15を設けることができる。複数の取水口15を設ける場合、それら取水口15は、全て同じ形状であり、有圧給水源とも取水用ポンプ12とも接続可能である。
【0015】
取水用ポンプ12は、送水用のホース22を介して取水口15に接続される。ホース22は、大容量送水を可能にするために、その内径が例えば150mm~400mmであることが好ましい。取水用ポンプ12と油圧ポンプ13との間には、油送出用の油圧ホース23と、油回収用の油圧ホース24とが接続されている。これら一対の油圧ホース23,24はそれぞれリール25,26により巻き取り自在に構成されている。有圧給水源又は取水用ポンプ12に接続される取水口15は配管29及びバルブ30を介して増圧ポンプ16の入水部に連結されている。混合装置19は、増圧ポンプ16の放水部と放射銃17とを連結する配管31の途中に配設されている。そして、混合装置19には配管32及びバルブ33を介して薬剤タンク18が接続されている。
【0016】
放水銃17は、筐体11の外部に配設されている。この放水銃17は揺動自在に構成され、その放水方向を任意に変更することが可能である。動力源20は、油圧ポンプ13及び増圧ポンプ16を駆動するための専用装置であっても良いが、車体1に搭載されたエンジンを利用することも可能である。専用装置として動力源20を設ける場合、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電動モータ等を採用することができる。放水銃17を除くポンプユニット10の構成要素はいずれも筐体11の内部に収納されている。但し、移動式の取水用ポンプ12及びそれに付随するホース22等は運搬時には収納庫21に収納されるが、使用時には収納庫21から取り出され、取水用ポンプ12が水源Wに投入された状態で使用される。取水用ポンプ12の搬送にはクレーン4が使用される。なお、ポンプユニット10における各種機材の配置は
図2の例に限定されるものではなく、必要に応じて任意の配置を採用することができる。
【0017】
上述のように構成される大型化学消防車は、取水口15から供給される水を増圧ポンプ16により増圧し、増圧ポンプ16により増圧された水を放射銃17により放射することができる。必要に応じて、増圧ポンプ16により増圧された水に対して混合装置19により泡消火薬剤を混合することが可能である。そのため、消防活動において、高所放水機能や泡消火機能を発揮することができる。また、通常は消火栓等の有圧給水源から取水しながら消防活動を行う一方で、有圧給水源からの給水量が不十分である場合や有圧給水源が使用不能である場合は、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプ12を用いて河川や海などの水源から取水しながら消防活動を行うことができる。油圧により駆動される取水用ポンプ12は、落差が大きい水源からでも取水することが可能である。また、上述した大型化学消防車は、取水用ポンプ12を駆動する油圧ポンプ13を備えると共に、移動式の取水用ポンプ12が収納される収納庫21を備えているので、取水用ポンプ12の搬送及び駆動を車両自体で完結させることができる。
【0018】
上述した大型化学消防車において、有圧給水源から取水する際の増圧ポンプ16の最大放水量は2000リットル/分以上、より好ましくは2000リットル/分~60000リットル/分であり、取水用ポンプ12から取水する際の増圧ポンプ16の最大放水量は10000リットル/分以上、より好ましくは10000リットル/分~60000リットル/分であると良い。このような増圧ポンプ16の最大放水量を確保することにより、優れた消火能力を発揮することが可能となる。
【0019】
上述した大型化学消防車において、取水用ポンプ12は、取水口15と水面との落差が10m以上、より好ましくは15m以上となる水源Wから揚水する能力を備えていると良い。このような揚水能力は油圧駆動方式により達成可能である。これにより、河川や海などの水源Wから取水するにあたって落差が大きい場合でも取水を確実に行うことができる。なお、従来のような真空ポンプでは揚水可能な落差が7m程度である。
【0020】
図3~
図5は移動式の取水用ポンプの一例を示すものである。
図3~
図5に示すように、取水用ポンプ12は、立体構造をなすフレーム41と、フレーム41の下部に搭載されたポンプ本体42と、フレーム41の上部に固定されたフロート43とを備えている。フロート43はフレーム41及びポンプ本体42を水中で浮揚させるのに十分な浮力を有している。また、フレーム41の下部には複数個の車輪44が配設されており、これら車輪44によって取水用ポンプ12が路面上において走行自在になっている。
【0021】
ポンプ本体42は、オイル導入部45及びオイル排出部46を備えた油圧モータ47と、該油圧モータ47により駆動されるインペラーを内蔵するポンプハウジング48と、該ポンプハウジング48の取水口に取り付けられたストレーナー49と、該ポンプハウジング48の排出口に設けられたカップリング部材50とを備えている。油圧モータ47のオイル導入部45には油圧ホース23が接続され、油圧モータ47のオイル排出部46には油圧ホース24が接続される。一方、カップリング部材50には送水用のホース22が連結される。
【0022】
このように構成される取水用ポンプ12は、油圧ポンプ13により与えられる油圧に基づいて油圧モータ47を駆動することにより、水源Wからポンプハウジング48内に水を取り込み、ホース22を介して増圧ポンプ16の取水口15に水を供給する。1台の取水用ポンプ12による送水量は例えば3000リットル/分~15000リットル/分であり、送水圧力は例えば0.2MPa~1.5MPaである。
【0023】
上述した実施形態では1台の取水用ポンプ12を用いた場合について説明したが、1台の増圧ポンプ16に対して複数台の取水用ポンプ12を使用することが可能であり、その場合、複数の取水用ポンプ12を接続するための複数の取水口15を増圧ポンプ16に設置すれば良い。
【符号の説明】
【0024】
1 車体
2 車輪
3 運転室
4 クレーン
10 ポンプユニット
11 筐体
12 取水用ポンプ
13 油圧ポンプ
15 取水口
16 増圧ポンプ
17 放水銃
18 薬剤タンク
19 混合装置
20 動力源
21 収納庫
22 ホース
23,24 油圧ホース
25,26 リール
29,31,32
30,33 バルブ