IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 帝国繊維株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-消防ポンプ装置 図1
  • 特開-消防ポンプ装置 図2
  • 特開-消防ポンプ装置 図3
  • 特開-消防ポンプ装置 図4
  • 特開-消防ポンプ装置 図5
  • 特開-消防ポンプ装置 図6
  • 特開-消防ポンプ装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160501
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】消防ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 27/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A62C27/00 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075566
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中尾 徹
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AE03
(57)【要約】
【課題】 固定設備として使用可能である一方で、必要に応じて移動設備としても使用可能であり、設備コストを低減することを可能にした消防ポンプ装置を提供する。
【解決手段】 この消防ポンプ装置は、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプ12と、取水用ポンプ12を駆動する油圧ポンプ13と、有圧給水源又は取水用ポンプ12に接続される少なくとも1つの取水口15と、取水口15から供給される水を増圧する増圧ポンプ16と、増圧ポンプ16により増圧された水を排出する排水口17と、油圧ポンプ13及び増圧ポンプ16をそれぞれ駆動する動力源20と、取水用ポンプ12が収納される収納庫21と、取水用ポンプ12、油圧ポンプ13、取水口15、増圧ポンプ16、排水口17、動力源20及び21収納庫を搭載する筐体1とを備え、筐体1は、地面Gに対して固定される固定部3と、牽引手段又は吊り上げ手段が連結される連結部4とを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧により駆動される移動式の取水用ポンプと、該取水用ポンプを駆動する油圧ポンプと、有圧給水源又は前記取水用ポンプに接続される少なくとも1つの取水口と、前記取水口から供給される水を増圧する増圧ポンプと、該増圧ポンプにより増圧された水を排出する排水口と、前記油圧ポンプ及び前記増圧ポンプをそれぞれ駆動する動力源と、前記取水用ポンプが収納される収納庫と、前記取水用ポンプ、前記油圧ポンプ、前記取水口、前記増圧ポンプ、前記排水口、前記動力源及び前記収納庫を搭載する筐体とを備え、前記筐体は、地面に対して固定される固定部と、牽引手段又は吊り上げ手段が連結される連結部とを有することを特徴とする消防ポンプ装置。
【請求項2】
泡消火薬剤を貯留する薬剤タンクと、前記増圧ポンプにより増圧された水に対して前記泡消火薬剤を混合する混合装置とを備え、前記筐体が前記薬剤タンク及び前記混合装置を搭載することを特徴とする請求項1に記載の消防ポンプ装置。
【請求項3】
前記筐体は、該筐体の長手方向の一方側に配設された車輪を有し、前記連結部が前記筐体の長手方向の他方側に配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の消防ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精油所に代表される特定事業所において好適に使用される消防ポンプ装置に関し、更に詳しくは、固定設備として使用可能である一方で、必要に応じて移動設備としても使用可能である消防ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精油所や火力発電所のような特定事業所においては、大規模火災等に備えて、移動式の消防ポンプ装置が配備されている(例えば、特許文献1参照)。このような移動式の消防ポンプ装置は、必要に応じて、河川や海などの水源から取水を行い、大容量の送水を可能にする。また、上述のような特定事業所においては、固定式の消防ポンプ装置も随所に設置されている。このような固定式の消防ポンプ装置は、消火栓等の有圧給水源に接続され、その有圧給水源から取水した水を送水するように構成されている。
【0003】
しかしながら、固定式の消防ポンプ装置と移動式の消防ポンプ装置とは互いに構造が異なるため、一方が他方の役割を果たすことができない。そのため、あらゆる状況での消防活動に対処するために、両者を配備することが一般的に行われている。このように固定式の消防ポンプ装置と移動式の消防ポンプ装置の両方を配備した場合、設備コスが高くなるという問題がある。また。固定式の消防ポンプ装置が故障した場合、それを移動式の消防ポンプ装置で代用することができず、移動式の消防ポンプ装置が故障した場合、それを固定式の消防ポンプ装置で代用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-109903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、固定設備として使用可能である一方で、必要に応じて移動設備としても使用可能であり、設備コストを低減することを可能にした消防ポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の消防ポンプ装置は、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプと、該取水用ポンプを駆動する油圧ポンプと、有圧給水源又は前記取水用ポンプに接続される少なくとも1つの取水口と、前記取水口から供給される水を増圧する増圧ポンプと、該増圧ポンプにより増圧された水を排出する排水口と、前記油圧ポンプ及び前記増圧ポンプをそれぞれ駆動する動力源と、前記取水用ポンプが収納される収納庫と、前記取水用ポンプ、前記油圧ポンプ、前記取水口、前記増圧ポンプ、前記排水口、前記動力源及び前記収納庫を搭載する筐体とを備え、前記筐体は、地面に対して固定される固定部と、牽引手段又は吊り上げ手段が連結される連結部とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプと、該取水用ポンプを駆動する油圧ポンプと、有圧給水源又は取水用ポンプに接続される少なくとも1つの取水口と、取水口から供給される水を増圧する増圧ポンプとを備えているので、移動式の取水用ポンプ又は消火栓等の有圧給水源から供給される水を利用して消防活動を行うことができる。また、取水用ポンプ、油圧ポンプ、取水口、増圧ポンプ、排水口、動力源及び収納庫を搭載する筐体は、地面に対して固定される固定部と、牽引手段又は吊り上げ手段が連結される連結部とを有しているので、固定状態で使用することが可能であり、装置全体を移動させることも可能である。従って、本発明の消防ポンプ装置は、固定設備として使用可能である一方で、必要に応じて移動設備としても使用可能である。これにより、不要な設備投資を削減し、設備コストを低減することが可能になる。
【0008】
本発明の消防ポンプ装置は、泡消火薬剤を貯留する薬剤タンクと、増圧ポンプにより増圧された水に対して泡消火薬剤を混合する混合装置とを備え、筐体が薬剤タンク及び混合装置を搭載することが好ましい。このような薬剤タンク及び混合装置を更に備えることにより、泡消火機能を発揮することができる。
【0009】
筐体は、該筐体の長手方向の一方側に配設された車輪を有し、連結部が筐体の長手方向の他方側に配設されていることが好ましい。このような車輪と連結部を筐体に配設することにより、本発明の消防ポンプ装置を着脱装置装備車により簡単に移動させることが可能となり、迅速な消防活動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態からなる消防ポンプ装置を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態からなる消防ポンプ装置を示す概略図である。
図3】移動式の取水用ポンプの一例を示す正面図である。
図4】移動式の取水用ポンプの一例を示す左側面図である。
図5】移動式の取水用ポンプの一例を示す右側面図である。
図6】本発明の消防ポンプ装置を移動させるための着脱装置装備車を示す側面図である。
図7】本発明の消防ポンプ装置を搭載した状態の着脱装置装備車を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は本発明の実施形態からなる消防ポンプ装置を示すものである。
【0012】
本実施形態の消防ポンプ装置は、図1に示すように、後述する各種機材等を搭載する筐体1を備えている。筐体1は、直方体形状を有し、その周囲に複数の扉2を備えている。また、筐体1は、地面Gに対して固定される複数の固定部3と、牽引手段又は吊り上げ手段が連結される連結部4とを備えている。固定部3は、例えばブラケットのような構造を有し、地面Gに設置された固定基材5に対して例えばボルトや杭により固定されるようになっている。連結部4は、牽引手段又は吊り上げ手段の掛け金等が係合するような構造を有している。更に、筐体1の長手方向の一方側には地面Gに当接するように複数の車輪6が配設されている。車輪6は、例えば鉄や鋼等の金属で構成されていると良い。これに対して、連結部4は筐体1の長手方向の他方側に配設されている。また、筐体1の長手方向の他方側には地面Gに当接するように複数の脚部7が配設されている。筐体1は複数の車輪6と複数の脚部7を地面Gに当接させるようにして水平に配置される。なお、固定部3、連結部4、車輪6及び脚部7の配置は、図示の例に限定されるものではなく、所定の機能を発揮する限りにおいて種々の配置を選択することができる。
【0013】
図2に示すように、筐体1には、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプ12と、該取水用ポンプ12を駆動する油圧ポンプ13と、消火栓等の有圧給水源又は取水用ポンプ12に接続される少なくとも1つの取水口15と、取水口15から供給される水を増圧する増圧ポンプ16と、増圧ポンプ16により増圧された水を排出する排水口17と、泡消火薬剤を貯留する薬剤タンク18と、増圧ポンプ16により増圧された水に対して泡消火薬剤を混合する混合装置19と、油圧ポンプ13及び増圧ポンプ16をそれぞれ駆動する動力源20と、取水用ポンプ13が収納される収納庫21とが搭載されている。図2においては、1つの取水口15を備えた構造が例示されているが、増圧ポンプ16に対して例えば1つ~3つの取水口15を設けることができる。複数の取水口15を設ける場合、それら取水口15は、全て同じ形状であり、有圧給水源とも取水用ポンプ12とも接続可能である。取水口15は、平時には有圧給水源に接続され、非常時には有圧給水源から外されて取水用ポンプ12と接続される。なお、薬剤タンク18及び混合装置19は他の機器と共に筐体1に搭載されていることが望ましいが、これらを除外することも可能である。
【0014】
取水用ポンプ12は、送水用のホース22を介して取水口15に接続される。ホース22は、大容量送水を可能にするために、その内径が例えば150mm~400mmであることが好ましい。取水用ポンプ12と油圧ポンプ13との間には、油送出用の油圧ホース23と、油回収用の油圧ホース24とが接続されている。これら一対の油圧ホース23,24はそれぞれリール25,26により巻き取り自在に構成されている。有圧給水源又は取水用ポンプ12に接続される取水口15は配管29及びバルブ30を介して増圧ポンプ16の入水部に連結されている。混合装置19は、増圧ポンプ16の放水部と排水口17とを連結する配管31の途中に配設されている。そして、混合装置19には配管32及びバルブ33を介して薬剤タンク18が接続されている。
【0015】
動力源20としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電動モータ等を採用することができる。移動式の取水用ポンプ12及びそれに付随するホース22等は通常は収納庫21に収納されるが、使用時には収納庫21から取り出され、取水用ポンプ12が水源Wに投入された状態で使用される。なお、筐体1における各種機材の配置は図2の例に限定されるものではなく、必要に応じて任意の配置を採用することができる。
【0016】
上述のように構成される消防ポンプ装置を固定設備として使用する場合、筐体1を固定部3により地面Gに対して固定した状態とする。そして、取水口15から供給される水を増圧ポンプ16により増圧し、増圧ポンプ16により増圧された水を排出口17から排出することができる。必要に応じて、増圧ポンプ16により増圧された水に対して混合装置19により泡消火薬剤を混合することが可能である。また、通常は消火栓等の有圧給水源から取水しながら消防活動を行う一方で、有圧給水源からの給水量が不十分である場合や有圧給水源が使用不能である場合は、油圧により駆動される移動式の取水用ポンプ12を用いて河川や海などの水源から取水しながら消防活動を行うことができる。油圧により駆動される取水用ポンプ12は、落差が大きい水源からでも取水することが可能である。
【0017】
上述した消防ポンプ装置において、有圧給水源から取水する際の増圧ポンプ16の最大放水量は2000リットル/分以上、より好ましくは2000リットル/分~60000リットル/分であり、取水用ポンプ12から取水する際の増圧ポンプ16の最大放水量は10000リットル/分以上、より好ましくは10000リットル/分~60000リットル/分であると良い。このような増圧ポンプ16の最大放水量を確保することにより、優れた消火能力を発揮することが可能となる。
【0018】
上述した消防ポンプ装置において、取水用ポンプ12は、取水口15と水面との落差が10m以上、より好ましくは15m以上となる水源Wから揚水する能力を備えていると良い。このような揚水能力は油圧駆動方式により達成可能である。これにより、河川や海などの水源Wから取水するにあたって落差が大きい場合でも取水を確実に行うことができる。
【0019】
図3図5は移動式の取水用ポンプの一例を示すものである。図3図5に示すように、取水用ポンプ12は、立体構造をなすフレーム41と、フレーム41の下部に搭載されたポンプ本体42と、フレーム41の上部に固定されたフロート43とを備えている。フロート43はフレーム41及びポンプ本体42を水中で浮揚させるのに十分な浮力を有している。また、フレーム41の下部には複数個の車輪44が配設されており、これら車輪44によって取水用ポンプ12が路面上において走行自在になっている。
【0020】
ポンプ本体42は、オイル導入部45及びオイル排出部46を備えた油圧モータ47と、該油圧モータ47により駆動されるインペラーを内蔵するポンプハウジング48と、該ポンプハウジング48の取水口に取り付けられたストレーナー49と、該ポンプハウジング48の排出口に設けられたカップリング部材50とを備えている。油圧モータ47のオイル導入部45には油圧ホース23が接続され、油圧モータ47のオイル排出部46には油圧ホース24が接続される。一方、カップリング部材50には送水用のホース22が連結される。
【0021】
このように構成される取水用ポンプ12は、油圧ポンプ13により与えられる油圧に基づいて油圧モータ47を駆動することにより、水源Wからポンプハウジング48内に水を取り込み、ホース22を介して増圧ポンプ16の取水口15に水を供給する。1台の取水用ポンプ12による送水量は例えば3000リットル/分~15000リットル/分であり、送水圧力は例えば0.2MPa~1.5MPaである。
【0022】
上述した実施形態では1台の取水用ポンプ12を用いた場合について説明したが、1台の増圧ポンプ16に対して複数台の取水用ポンプ12を使用することが可能であり、その場合、複数の取水用ポンプ12を接続するための複数の取水口15を増圧ポンプ16に設置すれば良い。
【0023】
図6は本発明の消防ポンプ装置を移動させるための着脱装置装備車を示し、図7は本発明の消防ポンプ装置を搭載した状態の着脱装置装備車を示すものである。着脱装置装備車50は、コンテナ等の被搬送体を着脱可能に構成された車両である。図6及び図7に示すように、着脱装置装備車50は、エンジンを備えた車体51と、車体51に配設された複数の車輪52と、車体51の前部に設けられた運転室53と、車体51の後部に設けられた牽引装置54(牽引手段)とを備えている。牽引装置54は、車体51の前後方向に揺動自在となるように車体1に軸支されたL字型のアーム55と、該アーム55を駆動する油圧シリンダ56と、アーム55の先端に取り付けられた掛け金57とから構成されている。
【0024】
上述した消防ポンプ装置を移動設備として使用する場合、地面Gに設置された筐体1の固定状態を解除した後、着脱装置装備車50に搭載された牽引装置54の掛け金57を筐体1の連結部4に連結し、油圧シリンダ56の駆動によりL字型のアーム55を車体1の前方側に向かって揺動させることにより、筐体1を車体1の前方側に向かって引き上げる(図6参照)。そして、L字型のアーム55を車体1の前方側に向かって概ね水平に倒すことにより、筐体1が車体1上に積載される(図7参照)。その際、筐体1の長手方向の一方側(後方側)に車輪6が配設される一方で、連結部4が筐体1の長手方向の他方側(前方側)に配設されているので、着脱装置装備車50への積載に際して筐体1の移動が円滑に行われる。また、筐体1には消防ポンプ装置として必要な全ての装備が搭載されているので、着脱装置装備車50が移動した場所において、前述の固定状態と同様に消防活動を行うことができる。
【0025】
上述した消防ポンプ装置は、図1のように固定設備として使用可能である一方で、必要に応じて図7のように移動設備としても使用可能である。これにより、不要な設備投資を削減し、設備コストを低減することが可能になる。
【0026】
また、上述した実施形態では、牽引装置54を備えた着脱装置装備車50を用いて消防ポンプ装置の移動を行う場合について説明したが、本発明に係る消防ポンプ装置は他の牽引手段又は吊り上げ手段を備えた車両によって搬送することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 筐体
2 扉
3 固定部
4 連結部
5 固定基材
6 車輪
7 脚部
12 取水用ポンプ
13 油圧ポンプ
15 取水口
16 増圧ポンプ
17 排水口
18 薬剤タンク
19 混合装置
20 動力源
21 収納庫
22 ホース
23,24 油圧ホース
25,26 リール
29,31,32
30,33 バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7