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特開2024-160511インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法
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  • 特開-インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160511
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20241107BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241107BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241107BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C09D11/30
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/50 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075596
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 雅斗
(72)【発明者】
【氏名】津坂 友香
(72)【発明者】
【氏名】西田 知史
(72)【発明者】
【氏名】宮川 奈那子
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA19
2C056FA10
2C056FA13
2C056FC01
2H186BA08
2H186DA12
2H186DA19
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB54
4J039AB01
4J039BE01
4J039CA06
4J039EA46
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 植物由来の多糖類を用いてインクジェット記録用水性インクの特性を改善した、インクジェット記録用水性インクを提供する。
【解決手段】本発明のインクジェット記録用水性インクは、多糖類、着色剤、及び水を含み、前記多糖類は、構造中にグルコース骨格を含む多糖類及びその誘導体の少なくとも一方を含み、25℃で測定した前記多糖類の30重量%水溶液の粘度が、10.0mPa・s以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類、着色剤、及び水を含み、
前記多糖類として、構造中にグルコース骨格を含む多糖類及びその誘導体の少なくとも一方を含み、
25℃で測定した前記多糖類の30重量%水溶液の粘度が、10.0mPa・s以下である、
インクジェット記録用水性インク。
【請求項2】
多糖類、着色剤、及び水を含み、
前記多糖類として、構造中にβ-D-グルコース骨格を含む多糖類を含み、
25℃で測定した前記多糖類の30重量%水溶液の粘度が、10.0mPa・s以下である、
インクジェット記録用水性インク。
【請求項3】
前記多糖類が、構造中にグルコース骨格を含む多糖類である、請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項4】
前記水が主溶媒である、請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項5】
前記着色剤が樹脂分散顔料である、請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項6】
前記水性インク全体の重量における、前記多糖類の固形分含有量が2.0~15.0重量%である、請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項7】
前記水性インク全体の重量における、前記多糖類の固形分含有量が2.0~8.0重量%である、請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項8】
前記多糖類が、さらに、構造中にフルクトース骨格を含む、請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項9】
前記多糖類が、イヌリンである、請求項8記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項10】
前記多糖類が、さらに、構造中にソルビトール骨格を含む、請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項11】
前記多糖類が、ポリデキストロースである、請求項10記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項12】
前記水性インクが、多価金属塩を含む記録媒体へ記録するための水性インクである、請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項13】
インク流路、及びインク吐出手段含み、
前記インク流路に供給された請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インクを、前記インク吐出手段によって記録媒体に吐出する、
インクジェット記録装置。
【請求項14】
前記記録媒体が、多価金属塩を含む記録媒体である、請求項13記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
記録工程を含み、
前記記録工程は、記録媒体に水性インクをインクジェット方式により付与して記録する工程を含み、
前記水性インクは、請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インクである、
インクジェット記録方法。
【請求項16】
前記記録媒体が、多価金属塩を含む記録媒体である、請求項15記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用水性インクとしては、例えば、特許文献1に記載のものが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-127351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の環境問題に対する意識の高まりを受け、インクジェット記録用水性インクに対しても環境負荷の低減が求められるようになってきた。一方で、特許文献1に開示されるような一般的なインクジェット記録用水性インクには、インクジェット記録用水性インクの特性を改善するために、石油由来の水溶性溶剤が含まれる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、植物由来の多糖類を用いてインクジェット記録用水性インクの特性を改善した、インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録用水性インクは、
多糖類、着色剤、及び水を含み、
前記多糖類として、構造中にグルコース骨格を含む多糖類及びその誘導体の少なくとも一方を含み、
25℃で測定した前記多糖類の30重量%水溶液の粘度が、10.0mPa・s以下である。
【0007】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、
多糖類、着色剤、及び水を含み、
前記多糖類として、構造中にβ-D-グルコース骨格を含む多糖類を含み、
25℃で測定した前記多糖類の30重量%水溶液の粘度が、10.0mPa・s以下である。
【0008】
本発明のインクジェット記録装置は、
インク流路、及びインク吐出手段含み、
前記インク流路に供給された本発明のインクジェット記録用水性インクを、前記インク吐出手段によって記録媒体に吐出する。
【0009】
本発明のインクジェット記録方法は、
記録工程を含み、
前記記録工程は、記録媒体に水性インクをインクジェット方式により付与して記録する工程を含み、
前記水性インクは、本発明のインクジェット記録用水性インクである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、植物由来の多糖類を用いてインクジェット記録用水性インクの特性を改善可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「質量」という場合は、特に断らない限り「重量」と読み替えてもよいものとする。例えば、「質量比」は、特に断らない限り「重量比」と読み替えてもよく、「質量%」は、特に断らない限り「重量%」と読み替えてもよいものとする。
【0013】
また、以下の実施形態及び実施例においてメカニズムについて言及する場合、記載されたメカニズムはあくまで推定であり、記載されたメカニズムに限定されるものではない。
【0014】
<インクジェット記録用水性インク>
本発明のインクジェット記録用水性インク(以下、「水性インク」又は「インク」と言うことがある。)について説明する。本発明の水性インクは、多糖類、着色剤、及び水を含む。
【0015】
前記多糖類として、構造中にグルコース骨格を含む多糖類及びその誘導体の少なくとも一方を含む。前記多糖類は、例えば、構造中にグルコース骨格を含む多糖類であってもよい。前記グルコース骨格は、例えば、α-グルコース骨格及びβ-グルコース骨格の少なくとも一方を含んでもよい。また、前記グルコース骨格は、例えば、D-グルコース骨格及びL-グルコース骨格の少なくとも一方を含んでもよい。前記グルコース骨格は、例えば、β-D-グルコース骨格であることが好ましい。すなわち、例えば、前記多糖類として、構造中にβ-D-グルコース骨格を含む多糖類を含んでもよいし、例えば、前記多糖類が、構造中にβ-D-グルコース骨格を含む多糖類であってもよい。
【0016】
前記多糖類は、例えば、さらに、構造中にフルクトース骨格を含んでもよい。前記構造中にフルクトース骨格を含む多糖類としては、例えば、イヌリンがあげられる。
【0017】
前記多糖類は、例えば、さらに、構造中にソルビトール骨格を含んでもよい。前記構造中にソルビトール骨格を含む多糖類としては、例えば、ポリデキストロースがあげられる。
【0018】
25℃で測定した前記多糖類の30重量%水溶液の粘度は、10.0mPa・s以下である。なお、前記粘度は、上限値が、例えば、9.0mPa・s以下、8.0mPa・s以下、7.0mPa・s以下、6.0mPa・s以下、5.0mPa・s以下、又は4.5mPa・s以下であってもよく、下限値が、特に限定されないが、例えば、1.0mPa・s以上、1.2mPa・s以上、1.5mPa・s以上、1.7mPa・s以上、2.0mPa・s以上、又は2.2mPa・s以上であってもよい。
【0019】
本発明の水性インクにおいて、前記水性インク全体の重量における、前記多糖類の固形分含有量は、例えば、1.0重量%以上、2.0重量%以上、又は5.0重量%以上であってもよく、20.0重量%以下、18.0重量%以下、15.0重量%以下、10.0重量%以下、又は8.0重量%以下であってもよく、例えば、1.0~20.0重量%、1.0~18.0重量%、2.0~15.0重量%、2.0~8.0重量%であってもよい。
【0020】
前記着色剤は、例えば、顔料、染料等を含んでいてもよい。
【0021】
前記顔料は、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等があげられる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等をあげることができる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等があげられる。また、その他の顔料であっても水相に分散可能なものであれば使用できる。これらの顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6及び7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、74、78、150、151、154、180、185及び194;C.I.ピグメントオレンジ31及び43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、150、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、209、221、222、224及び238;C.I.ピグメントバイオレット19及び196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22及び60;C.I.ピグメントグリーン7及び36;並びにこれらの顔料の固溶体等もあげられる。
【0022】
前記顔料は、樹脂分散剤によって溶媒中に分散されるものであってもよい(樹脂分散顔料ともいう)。前記樹脂分散剤としては、例えば、一般的な高分子分散剤(顔料分散用樹脂や樹脂分散剤等ともいう)等を用いてよく、自家調製してもよい。また、本発明の水性インクにおいて、前記顔料は、高分子によりカプセル化されたものであってもよい。前記樹脂分散剤としては、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸の少なくとも一方をモノマーとして含むものを用いることができ、例えば、市販品を用いてもよい。前記樹脂分散剤は、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等の疎水性単量体、又は、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体からなる群から選ばれる2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等であってもよい。前記市販品としては、例えば、ジョンソンポリマー(株)製の「ジョンクリル(登録商標)611」、「ジョンクリル(登録商標)60」、「ジョンクリル(登録商標)586」、「ジョンクリル(登録商標)687」、「ジョンクリル(登録商標)63」及び「ジョンクリル(登録商標)HPD296」;ビックケミー社製の「Disperbyk190」及び「Disperbyk191」;ゼネカ社製の「ソルスパース20000」及び「ソルスパース27000」;等があげられる。
【0023】
前記顔料分散用樹脂を用いた前記顔料の分散方法としては、例えば、分散装置を使用して顔料を分散させることがあげられる。前記顔料の分散に使用する分散装置は、一般的な分散機であれば特に限定はされないが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル(例えば、高速型)等があげられる。
【0024】
前記顔料は、自己分散型顔料であってもよい。前記自己分散型顔料は、例えば、顔料粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性官能基及びこれらの塩の少なくとも一種が、直接又は他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。前記自己分散型顔料は、例えば、特開平8-3498号公報、特表2000-513396号公報、特表2008-524400号公報、特表2009-515007号公報、特表2011-515535号公報等に記載の方法によって顔料が処理されたものを用いることができる。前記自己分散型顔料の原料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。また、前記処理を行うのに適した顔料としては、例えば、三菱化学(株)製の「MA8」及び「MA100」等のカーボンブラック等があげられる。前記自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・コーポレーション社製の「CAB-O-JET(登録商標)200」、「CAB-O-JET(登録商標)250C」、「CAB-O-JET(登録商標)260M」、「CAB-O-JET(登録商標)270Y」、「CAB-O-JET(登録商標)300」、「CAB-O-JET(登録商標)400」、「CAB-O-JET(登録商標)450C」、「CAB-O-JET(登録商標)465M」及び「CAB-O-JET(登録商標)470Y」;オリエント化学工業(株)製の「BONJET(登録商標)BLACK CW-2」及び「BONJET(登録商標)BLACK CW-3」;東洋インク製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」等があげられる。
【0025】
前記水性インク全量における前記顔料の固形分含有量(顔料固形分量)は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度及び彩度等により、適宜決定できる。前記顔料固形分量は、例えば、0.1質量%~20質量%、1質量%~15質量%、2質量%~10質量%である。
【0026】
前記顔料は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記染料は、特に限定されず、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等があげられる。前記染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトブラック、C.I.ダイレクトブルー、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.ダイレクトオレンジ、C.I.ダイレクトバイオレット、C.I.ダイレクトブラウン、C.I.ダイレクトグリーン、C.I.アシッドブラック、C.I.アシッドブルー、C.I.アシッドレッド、C.I.アシッドイエロー、C.I.アシッドオレンジ、C.I.アシッドバイオレット、C.I.ベーシックブラック、C.I.ベーシックブルー、C.I.ベーシックレッド、C.I.ベーシックバイオレット及びC.I.フードブラック等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラックとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラック17、19、32、51、71、108、146、154及び168等があげられる。前記C.I.ダイレクトブルーとしては、例えば、C.I.ダイレクトブルー6、22、25、71、86、90、106及び199等があげられる。前記C.I.ダイレクトレッドとしては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、4、17、28、83及び227等があげられる。前記C.I.ダイレクトイエローとしては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132、142及び173等があげられる。前記C.I.ダイレクトオレンジとしては、例えば、C.I.ダイレクトオレンジ34、39、44、46及び60等があげられる。前記C.I.ダイレクトバイオレットとしては、例えば、C.I.ダイレクトバイオレット47及び48等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラウンとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラウン109等があげられる。前記C.I.ダイレクトグリーンとしては、例えば、C.I.ダイレクトグリーン59等があげられる。前記C.I.アシッドブラックとしては、例えば、C.I.アシッドブラック2、7、24、26、31、52、63、112及び118等があげられる。前記C.I.アシッドブルーとしては、例えば、C.I.アシッドブルー9、22、40、59、90、93、102、104、117、120、167、229及び234等があげられる。前記C.I.アシッドレッドとしては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、32、37、51、52、80、85、87、92、94、115、180、256、289、315及び317等があげられる。前記C.I.アシッドイエローとしては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、17、23、25、29、42、61及び71等があげられる。前記C.I.アシッドオレンジとしては、例えば、C.I.アシッドオレンジ7及び19等があげられる。前記C.I.アシッドバイオレットとしては、例えば、C.I.アシッドバイオレット49等があげられる。前記C.I.ベーシックブラックとしては、例えば、C.I.ベーシックブラック2等があげられる。前記C.I.ベーシックブルーとしては、例えば、C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、24、25、26、28及び29等があげられる。前記C.I.ベーシックレッドとしては、例えば、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14及び37等があげられる。前記C.I.ベーシックバイオレットとしては、例えば、C.I.ベーシックバイオレット7、14及び27等があげられる。前記C.I.フードブラックとしては、例えば、C.I.フードブラック1及び2等があげられる。
【0028】
前記水性インク全量における前記染料の固形分含有量(染料固形分量)は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度及び彩度等により、適宜決定できる。前記染料固形分量は、例えば、0.1重量%~20重量%であり、好ましくは、0.3重量%~10重量%である。
【0029】
前記染料は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
前記水は、イオン交換水、純水等であってもよい。
【0031】
前記水は、主溶媒であってもよい。本発明において、「主溶媒」とは、溶媒を構成する成分のうち、最も多い成分を言う。前記水性インク全量に対する前記水の配合量(水割合)は、所望のインク特性等に応じて適宜決定される。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。前記水の配合量は、例えば、50質量%~95質量%、好ましくは55質量%~90質量%、より好ましくは60質量%~80質量%である。
【0032】
前記水性インクは、例えば、さらに、前記水以外の溶媒として、水溶性溶剤を含んでいてもよい。前記水溶性溶剤は、例えば、植物由来の水溶性溶剤である。前記植物由来の水溶性溶剤は、例えば、グリセリン等があげられる。
【0033】
前記水性インクは、例えば、さらに、界面活性剤を含んでもよい。
【0034】
前記界面活性剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販品を用いてもよい。具体的に、前記界面活性剤は、例えば、シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等があげられる。
【0035】
前記シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製の「シルフェイス(登録商標)SAG002」、「シルフェイス(登録商標)SAG005」、「シルフェイス(登録商標)SAG503A」等があげられる。
【0036】
前記アセチレン系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1004」、「オルフィン(登録商標)E1008」及び「オルフィン(登録商標)E1010」;エアープロダクツアンドケミカルズ社製の「サーフィノール(登録商標)440」、「サーフィノール(登録商標)465」及び「サーフィノール(登録商標)485」;川研ファインケミカル(株)製の「アセチレノール(登録商標)E40」及び「アセチレノール(登録商標)E100」;等があげられる。
【0037】
前記水性インクは、前記シリコーン系界面活性剤や前記アセチレン系界面活性剤に加え/代えて、他の界面活性剤を含んでもよい。前記他の界面活性剤としては、例えば、花王(株)製のノニオン界面活性剤「EMULGEN(登録商標)」シリーズ、「RHEODOL(登録商標)」シリーズ、「EMASOL(登録商標)」シリーズ、「EXCEL(登録商標)」シリーズ、「EMANON(登録商標)」シリーズ、「AMIET(登録商標)」シリーズ及び「AMINON(登録商標)」シリーズ等;東邦化学工業(株)製のノニオン界面活性剤「ソルボン(登録商標)」シリーズ等;ライオン(株)製のノニオン界面活性剤「DOBANOX(登録商標)」シリーズ、「LEOCOL(登録商標)」シリーズ、「LEOX(登録商標)」シリーズ、「LAOL,LEOCOL(登録商標)」シリーズ、「LIONOL(登録商標)」シリーズ、「CADENAX(登録商標)」シリーズ、「LIONON(登録商標)」シリーズ及び「LEOFAT(登録商標)」シリーズ等;花王(株)製のアニオン界面活性剤「EMAL(登録商標)」シリーズ、「LATEMUL(登録商標)」シリーズ、「VENOL(登録商標)」シリーズ、「NEOPELEX(登録商標)」シリーズ、NS SOAP、KS SOAP、OS SOAP及び「PELEX(登録商標)」シリーズ等;ライオン(株)製のアニオン界面活性剤「LIPOLAN(登録商標)」シリーズ、「LIPON(登録商標)」シリーズ、「SUNNOL(登録商標)」シリーズ、「LIPOTAC(登録商標) TE,ENAGICOL」シリーズ、「LIPAL(登録商標)」シリーズ及び「LOTAT(登録商標)」シリーズ等;第一工業製薬(株)製のカチオン界面活性剤「カチオーゲン(登録商標)ES-OW」及び「カチオーゲン(登録商標)ES-L」等;があげられる。
【0038】
前記界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
前記水性インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防カビ剤等があげられる。前記粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等があげられる。
【0040】
本発明の水性インクは、例えば、多価金属塩を含む記録媒体へ記録するための水性インクである。前記多価金属塩としては、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、シュウ酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等があげられ、水溶性のカルシウム塩が好ましい。前記水溶性のカルシウム塩を含む記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウムなどの無機充填剤を通常の普通紙よりも多く配合した記録用紙等があげられ、例えば、International paper社製のHammermill Fore Multi-Purpose Paper等を使用してもよい。
【0041】
なお、本発明の水性インクが前記多価金属塩を含む記録媒体へ記録するための水性インクである場合、本発明の水性インクは、後述する実施例記載のOD値を向上させるために、前記着色剤として前記樹脂分散顔料を含むことが好ましい。OD値向上のメカニズムとしては、例えば、前記着色剤として前記樹脂分散顔料を含む場合、前記樹脂分散顔料に含まれる樹脂分散剤と前記多糖類とが一部結合し、前記顔料の表面に前記多糖類が存在することとなる。前記顔料の表面に前記多糖類が存在することで、前記記録媒体への前記水性インクの記録後、前記記録媒体に含まれる多価金属塩は、前記顔料表面の前記多糖類又は前記多糖類と結合した前記樹脂分散剤を含む前記樹脂分散顔料と反応しやすくなる。結果、記録媒体表面で前記樹脂分散顔料が凝集するため、OD値が向上すると考えられる。
【0042】
なお、本発明の水性インク中に前記多価金属塩を直接加えた場合、記録媒体へ印刷する前に前記水性インクが凝集してしまうため保存安定性が悪くなる場合がある。また、前記多価金属塩を含まない記録媒体に対して、前記多価金属塩を含む処理液を塗布し、その後本発明の水性インクを塗布する場合、前記多価金属塩を含む処理液の塗布後に前記記録媒体が濡れてしまうため、前記記録媒体がカールしたり、あるいは塗布した前記水性インクがにじんだりする不具合が生じる場合がある。一方で、多価金属塩を含む記録媒体へ本発明の水性インクを記録すれば、前述の保存安定性不良や、カール、インクにじみ等の不具合が生じない点で好ましい。
【0043】
<インクジェット記録装置、インクジェット記録方法>
つぎに、本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法について説明する。
【0044】
本発明のインクジェット記録装置は、インク流路及びインク吐出手段を含み、前記インク流路に供給された本発明のインクジェット記録用水性インクを前記インク吐出手段によって記録媒体に吐出することを特徴とする。
【0045】
図1に、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、4つのインク収容部(インクカートリッジ2)と、インク吐出部(インクジェットヘッド)3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8とを主要な構成要素として含む。
【0046】
4つのインクカートリッジ2は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の水性インクを、それぞれ1色ずつ含む。例えば、前記4色の水性インクのうちの少なくとも一つが、本発明の水性インクである。本例では、4つのインクカートリッジ2のセットを示したが、これに代えて、水性イエローインク収納部、水性マゼンタインク収納部、水性シアンインク収納部及び水性ブラックインク収納部を形成するようにその内部が間仕切りされた一体型のインクカートリッジを用いてもよい。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
【0047】
ヘッドユニット4に設置されたインクジェットヘッド3は、記録媒体Pに記録を行う。記録媒体Pは、例えば、多価金属塩を含む記録媒体である。前記多価金属塩は、前述の水性インクの説明における多価金属塩と同様のものであってもよい。キャリッジ5には、4つのインクカートリッジ2及びヘッドユニット4が搭載される。駆動ユニット6は、キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。駆動ユニット6としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。プラテンローラ7は、キャリッジ5の往復方向に延び、インクジェットヘッド3と対向して配置されている。
【0048】
インクジェットヘッド3は、例えば、金属製の薄板が複数層重ねて構成されている。それぞれの薄板には、貫通穴が形成されている。貫通穴が形成された薄板が複数層重なることで、前記水性インクを通すための流路が形成される。前記薄板は、例えば、それぞれ、接着剤により接着されている。
【0049】
パージ装置8は、インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。パージ装置8としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。
【0050】
パージ装置8のプラテンローラ7側には、パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。ワイパ部材20は、へら状に形成されており、キャリッジ5の移動に伴って、インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。図1において、キャップ18は、水性インクの乾燥を防止するため、記録が終了するとリセット位置に戻されるインクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
【0051】
本例のインクジェット記録装置1においては、4つのインクカートリッジ2は、ヘッドユニット4と共に、1つのキャリッジ5に搭載されている。ただし、本発明は、これに限定されない。インクジェット記録装置1において、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、ヘッドユニット4とは別のキャリッジに搭載されていてもよい。また、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、キャリッジ5には搭載されず、インクジェット記録装置1内に配置、固定されていてもよい。これらの態様においては、例えば、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジと、キャリッジ5に搭載されたヘッドユニット4とが、チューブ等により連結され、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジからヘッドユニット4に前記水性インクが供給される。また、これらの態様においては、4つのインクカートリッジ2に代えて、ボトル形状の4つのインクボトルを用いてもよい。この場合、前記インクボトルには、外部から内部にインクを注入するための注入口が設けられていることが好ましい。
【0052】
このインクジェット記録装置1を用いたインクジェット記録は、例えば、つぎのようにして実施される。まず、記録用紙Pが、インクジェット記録装置1の側方又は下方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙される。記録用紙Pは、インクジェットヘッド3と、プラテンローラ7との間に導入される。導入された記録用紙Pに、インクジェットヘッド3から吐出される水性インクにより所定の記録がされる。記録後の記録用紙Pは、インクジェット記録装置1から排紙される。図1においては、記録用紙Pの給紙機構及び排紙機構の図示を省略している。
【0053】
図1に示す装置では、シリアル型インクジェットヘッドを採用するが、本発明は、これに限定されない。前記インクジェット記録装置は、ライン型インクジェットヘッドやロールトゥロールを採用する装置であってもよい。なお、前記シリアル型インクジェットヘッドは、インクジェットヘッドを記録媒体の幅方向に往復させつつ印刷するインクジェットヘッドである。ライン型インクジェットヘッドは、記録媒体の幅方向全体をカバーするインクジェットヘッドである。ロールトゥロールは、ロール状の記録媒体を繰り出して印刷し、再びロール状に巻き取る方式である。
【0054】
つぎに、本発明のインクジェット記録方法は、記録工程を含み、前記記録工程は、記録媒体に水性インクをインクジェット方式により付与して記録する工程を含み、前記水性インクは、本発明のインクジェット記録用水性インクであることを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法は、例えば、本発明のインクジェット記録装置を用いて実施可能である。前記記録は、印字、印画、印刷等を含む。前記記録媒体は、例えば、多価金属塩を含む記録媒体である。前記多価金属塩は、前述の水性インクの説明における多価金属塩と同様のものであってもよい。
【実施例0055】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。
【0056】
(顔料分散液Aの調製)
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)20質量%、スチレン-アクリル酸共重合体の水酸化ナトリウム中和物 7質量%(酸価50mgKOH/g、分子量10000)に、純水を加え全体を100質量%とし、撹拌混合して混合物を得た。この混合物を、0.3mm径ジルコニアビーズを充填した湿式サンドミルに入れ、6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータにより取り除き、孔径3.0μmセルロースアセテートフィルターでろ過することにより、顔料分散液Aを得た。なお、スチレン-アクリル酸共重合体は、一般に顔料の分散剤として用いられる水溶性のポリマーである。
【0057】
(顔料分散液Bの調製)
三菱化学(株)製のカーボンブラック「#2650」40gをイオン交換水200gに混合して、ビーズミルにて粉砕した。これにカルボキシル基剤を添加して、加熱撹拌を行い、酸化処理を行った。ついで、得られた液を溶剤にて数回洗浄後、水中に注ぎ、再度水洗を繰り返した後フィルターにてろ過処理し、顔料分散液Bを得た。この顔料分散液Bに含まれるカーボンブラックの平均粒子径を、(株)堀場製作所製の「LB-550」を用いて測定したところ、153nmであった。
【0058】
(実施例1~9、比較例1~3、参考例1~2)
水性インク組成(表1及び表2)における、色材(着色剤)を除く成分を、均一に混合し、インク溶媒を得た。次に、色材を前記インク溶媒に加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、表1に示す実施例1~9、比較例1~3、参考例1~2のインクジェット記録用水性インクを得た。
【0059】
なお、表1記載の、25℃で測定した多糖類の30重量%水溶液の粘度は、つぎの手順により評価を行った。まず、多糖類を、30wt%水溶液となるように水に均一に混合した。つぎに、得られた水溶液の粘度を、粘度計(東機産業(株)製、型式:TVE-25)を用いて、25℃の条件下で測定した。
【0060】
実施例1~9、比較例1~3、参考例1~2のそれぞれの水性インクについて、(a)環境対応性、(b)吐出安定性、(c)蒸発特性、(d)光学濃度(OD値)を下記方法により評価した。
【0061】
(a)環境対応性
実施例1~9、比較例1~3の水性インクを、下記評価基準に従って評価した。
【0062】
環境対応性 評価基準
A:水溶性溶媒及び多糖類として植物由来原料のみを含む
C:水溶性溶媒及び多糖類として植物由来原料以外の原料を含む
【0063】
(b)吐出安定性
ブラザー工業(株)製のインクジェット記録装置DCP-J987Nを使用して、実施例1~9、比較例1の水性インクを用いて、多価金属塩として水溶性のカルシウム塩を含む記録用紙(International paper社製、商品名:Hammermill Fore Multi-Purpose Paper)に対してベタ画像を記録し評価サンプルを作製した。下記評価基準に従って、先頭欠けを評価した。なお、「先頭欠け」とは、ベタ印字時に打ち出しはじめが不吐出となり、先頭部分が白紙のままになることをいう。
【0064】
吐出安定性 評価基準
A:ベタ印字時に先頭欠けがなかった
B:ベタ印字時に先頭欠けがなかった
【0065】
(c)蒸発特性
実施例1~9、比較例1の水性インク5gを開放瓶(口径20mm)に注入し、温度60℃、相対湿度40%の恒温槽にて重量変化がなくなるまで保管(5日間保管)した。その後、室温(25℃)に戻して開放瓶内の水性インクの状態を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
【0066】
蒸発特性 評価基準
A:完全蒸発後に流動性又はチキソ性があった
B:完全蒸発後に流動性及びチキソ性がなかった
【0067】
(d)光学濃度(OD値)
ブラザー工業(株)製のインクジェット記録装置DCP-J987Nを使用して、実施例1~9、比較例1、参考例1~2の水性インクを用いて、多価金属塩として水溶性のカルシウム塩を含む記録用紙(International paper社製、商品名:Hammermill Fore Multi-Purpose Paper)に対して画像を記録し評価サンプルを作製した。前記評価サンプル中の3箇所の光学濃度(OD値)を、X-Rite社製の分光測色計SpectroEye(光源:D50、視野角:2°、ANSI-T)により測定し、平均値よりOD値を求めた。実施例1~9、比較例1のOD値と参考例1~2のOD値(基準値)とを比較し、下記評価基準に従って評価した。なお、参考例1のOD値を「樹脂分散顔料を使用した場合のOD値基準値」とし、参考例2のOD値を「自己分散顔料を使用した場合のOD値基準値」とした。
【0068】
光学濃度(OD値) 評価基準
A:OD値が基準値から向上した
B:OD値が基準値から向上しなかった
【0069】
実施例1~9、比較例1~3、参考例1~2の水性インクの水性インク組成及び評価結果を、表1及び表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1に示すように、実施例1~9は、水溶性溶媒及び多糖類に植物由来原料のみを含み、環境対応性評価が「A」であった。吐出安定性評価も「B」以上であり、水性インクの特性を改善することができた。
【0073】
また、樹脂分散顔料を使用し、かつ、多糖類の固形分含有量が2.0~15.0重量%である、実施例1、3~8は、吐出安定性評価及び光学濃度(OD値)が「A」であった。さらに、多糖類の固形分含有量が2.0~8.0重量%である、実施例1、5、7、8は、蒸発特性評価が「A」であった。
【0074】
一方で、比較例1は、水溶性溶剤として石油由来原料を含む(評価「C」)。また、25℃で測定した多糖類の30重量%水溶液の粘度が10.0mPa・sを超える比較例2、及び構造中にグルコース骨格を含まない多糖類を用いた比較例3は、粘度が高くインクを吐出できないため、吐出安定性を評価することができなかった。すなわち、水性インクの特性を改善することができなかった。
【0075】
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
(付記1)
多糖類、着色剤、及び水を含み、
前記多糖類として、構造中にグルコース骨格を含む多糖類及びその誘導体の少なくとも一方を含み、
25℃で測定した前記多糖類の30重量%水溶液の粘度が、10.0mPa・s以下である、
インクジェット記録用水性インク。
(付記2)
多糖類、着色剤、及び水を含み、
前記多糖類として、構造中にβ-D-グルコース骨格を含む多糖類を含み、
25℃で測定した前記多糖類の30重量%水溶液の粘度が、10.0mPa・s以下である、
インクジェット記録用水性インク。
(付記3)
前記多糖類が、構造中にグルコース骨格を含む多糖類である、付記1記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記4)
前記水が主溶媒である、付記1から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記5)
前記着色剤が樹脂分散顔料である、付記1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記6)
前記水性インク全体の重量における、前記多糖類の固形分含有量が2.0~15.0重量%である、付記1から5のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記7)
前記水性インク全体の重量における、前記多糖類の固形分含有量が2.0~8.0重量%である、付記1から5のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記8)
前記多糖類が、さらに、構造中にフルクトース骨格を含む、付記1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記9)
前記多糖類が、イヌリンである、付記8記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記10)
前記多糖類が、さらに、構造中にソルビトール骨格を含む、付記1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記11)
前記多糖類が、ポリデキストロースである、付記10記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記12)
前記水性インクが、多価金属塩を含む記録媒体へ記録するための水性インクである、付記1から11のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記13)
インク流路、及びインク吐出手段含み、
前記インク流路に供給された付記1から12のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インクを、前記インク吐出手段によって記録媒体に吐出する、
インクジェット記録装置。
(付記14)
前記記録媒体が、多価金属塩を含む記録媒体である、付記13記載のインクジェット記録装置。
(付記15)
記録工程を含み、
前記記録工程は、記録媒体に水性インクをインクジェット方式により付与して記録する工程を含み、
前記水性インクは、付記1から12のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インクである、
インクジェット記録方法。
(付記16)
前記記録媒体が、多価金属塩を含む記録媒体である、付記15記載のインクジェット記録方法。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明によれば、植物由来の多糖類を用いてインクジェット記録用水性インクの特性を改善可能である。本発明の水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法の用途は、各種記録媒体へのインクジェット記録に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 インクジェット記録装置
2 インクカートリッジ
3 インク吐出部(インクジェットヘッド)
4 ヘッドユニット
5 キャリッジ
6 駆動ユニット
7 プラテンローラ
8 パージ装置
図1