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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160519
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
G01S7/497
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075613
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂元 優太
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084EA11
(57)【要約】
【課題】点群データに含まれる点の数が減少することを抑制すること。
【解決手段】物体検出装置は、鉛直方向に対する照射角度を変更しながらレーザ光を照射してレーザ光が当たった点までの距離を測定するレーザ距離計と、レーザ距離計から点の集合である点群データを取得する制御装置と、を備える。制御装置は、点の位置を表す座標系において地表面よりも下に位置する点を点群データから抽出する。制御装置は、地表面よりも下に位置する点の座標を、地表面に対して面対称となる位置の座標に変換する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が備える物体検出装置であって、
鉛直方向に対する照射角度を変更しながらレーザ光を照射して前記レーザ光が当たった点までの距離を測定するレーザ距離計と、
前記レーザ距離計から前記点の集合である点群データを取得する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記点の位置を表す座標系において地表面よりも下に位置する前記点を前記点群データから抽出し、
前記地表面よりも下に位置する前記点の座標を、前記地表面に対して面対称となる位置の座標に変換する、物体検出装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記地表面から前記レーザ距離計までの高さから、前記地表面よりも下に位置する前記点を前記点群データから抽出する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記移動体が用いられる環境を示す地図データを記憶した記憶装置を備え、
前記制御装置は、
前記移動体の自己位置を推定し、
前記地図データから、前記地表面よりも下に位置する前記点を前記点群データから抽出する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記移動体が用いられる環境を示す地図データを記憶した記憶装置を備え、
前記地図データは、前記レーザ光を鏡面反射させる鏡面反射部の位置情報を含み、
前記制御装置は、
前記移動体の自己位置を推定し、
前記鏡面反射部が前記自己位置から所定範囲に存在している場合、前記地表面よりも下に位置する前記点の座標を、前記地表面に対して面対称となる位置の座標に変換する、請求項1又は請求項2に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体検出装置は、レーザ距離計と、制御装置と、を備える。レーザ距離計は、所定の照射角度毎にレーザ光を照射する。レーザ距離計から照射されたレーザ光が物体に当たると、レーザ光は反射する。レーザ距離計は、物体で反射したレーザを受光すると、レーザ光の照射からレーザ光の受光までに要した時間からレーザ光が当たった箇所までの距離を算出する。制御装置は、レーザ光から点群データを取得する。点群データは、レーザ光が当たった箇所の位置を点で表したデータである。制御装置は、点群データから物体に関する情報を認識する。物体に関する情報は、例えば、物体までの距離、又は物体の形状である。
【0003】
レーザ光が水面に入射するなどして鏡面反射が生じると、鏡面反射したレーザ光が物体で反射した後にレーザ距離計に受光される。このため、鏡面反射が生じた場合、鏡面反射が生じていない場合に比べてレーザ光の照射からレーザ光の受光までの時間が長くなる。この場合、制御装置が物体に関する情報を正しく認識できないおそれがある。
【0004】
特許文献1に開示の物体検出装置は、レーザ距離計の検出結果から自己位置の推定を行う。物体検出装置は、点群データから鏡面反射したレーザ光によって得られた点を除去する。これにより、鏡面反射したレーザ光によって得られた点によって自己位置の推定精度が低下することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-129058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、鏡面反射したレーザ光によって得られた点は除去される。このため、点群データに含まれる点の数が減少する。これにより、物体に関する情報を正しく認識できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する物体検出装置は、移動体が備える物体検出装置であって、鉛直方向に対する照射角度を変更しながらレーザ光を照射して前記レーザ光が当たった点までの距離を測定するレーザ距離計と、前記レーザ距離計から前記点の集合である点群データを取得する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記点の位置を表す座標系において地表面よりも下に位置する前記点を前記点群データから抽出し、前記地表面よりも下に位置する前記点の座標を、前記地表面に対して面対称となる位置の座標に変換する。
【0008】
レーザ距離計よりも下方にレーザ光を照射した場合であって当該レーザ光が鏡面反射した場合に得られる点は、地表面よりも下の座標を示す。このため、点の位置を表す座標系において地表面よりも下に位置する点を点群データから抽出すると、鏡面反射したレーザ光によって得られた点を抽出できる。制御装置は、地表面よりも下に位置する点の座標を、地表面に対して面対称となる位置の座標に変換する。この変換により得られた座標は、鏡面反射したレーザ光が物体に当たった箇所の位置を示す。点群データに含まれる点の座標を変換することによって、点群データから点を除去する場合に比べて、点群データに含まれる点の数が減少することが抑制される。
【0009】
上記物体検出装置について、前記制御装置は、前記地表面から前記レーザ距離計までの高さから、前記地表面よりも下に位置する前記点を前記点群データから抽出してもよい。
上記物体検出装置について、前記移動体が用いられる環境を示す地図データを記憶した記憶装置を備え、前記制御装置は、前記移動体の自己位置を推定し、前記地図データから、前記地表面よりも下に位置する前記点を前記点群データから抽出してもよい。
【0010】
上記物体検出装置について、前記移動体が用いられる環境を示す地図データを記憶した記憶装置を備え、前記地図データは、前記レーザ光を鏡面反射させる鏡面反射部の位置情報を含み、前記制御装置は、前記移動体の自己位置を推定し、前記鏡面反射部が前記自己位置から所定範囲に存在している場合、前記地表面よりも下に位置する前記点の座標を、前記地表面に対して面対称となる位置の座標に変換してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、点群データに含まれる点の数が減少することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】移動体が用いられる環境の模式図である。
図2図1の移動体の概略構成図である。
図3図2の制御装置が実行する自己位置推定制御を示すフローチャートである。
図4図1の移動体が用いられる環境の模式図である。
図5図2の制御装置が実行する自己位置推定制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
物体検出装置の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、移動体10が用いられる環境A1は、地表面20を含む。移動体10は、例えば、車両である。車両は、例えば、乗用車、又は産業車両である。産業車両は、例えば、フォークリフト、トーイングトラクタ、又は搬送車である。地表面20は、移動体10が移動する路面である。
【0014】
環境A1は、鏡面反射部21を備える。鏡面反射部21は、地表面20上に位置している。鏡面反射部21は、鏡面反射を生じさせ得る物体である。本実施形態において、鏡面反射部21は、偶発的に発生したものである。鏡面反射部21は、例えば、地表面20上に存在する水溜まりである。環境A1は、少なくとも1つの物体31を含む。物体31は、例えば、位置の変化が生じにくい構造物である。構造物は、例えば、壁、柱、又は屋根である。図1では、1つの物体31を図示しているが、環境A1は、複数の物体31を含んでいてもよい。
【0015】
<物体検出装置>
図2に示すように、移動体10は、物体検出装置30を備える。物体検出装置30は、制御装置11を備える。制御装置11は、プロセッサ12と、記憶部13と、を備える。プロセッサ12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)である。記憶部13は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部13は、処理をプロセッサ12に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部13、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置11は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0016】
物体検出装置30は、レーザ距離計15を備える。レーザ距離計15は、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)と称される場合もある。レーザ距離計15は、3次元座標系の座標で物体31の位置を検出する。図1に示すように、レーザ距離計15は、周囲にレーザ光L1を照射する。レーザ距離計15は、鉛直方向に対する照射角度を角度分解能に従って変更しながらレーザ光L1を照射する。本実施形態のレーザ距離計15は、鉛直方向及び水平方向の両方向に対する照射角度を変更しながらレーザ光L1を照射する。レーザ距離計15は、照射したレーザ光L1が当たった箇所P1,P2から反射された反射光を受光するまでの時間からレーザ光L1が当たった箇所P1,P2までの距離を測定する。詳細にいえば、レーザ距離計15は、レーザ光L1を照射した際に受光するまでに要した時間から当該レーザ光L1を照射した照射角度における物体31までの距離を測定する。
【0017】
レーザ光L1が当たった箇所P1,P2は、物体31の表面の一部を表す。レーザ光L1が当たった箇所P1,P2の位置は、レーザ光L1の照射角度とレーザ光L1が当たった箇所P1,P2までの距離とを用いた極座標系の座標で表すことができる。極座標系におけるレーザ光L1が当たった箇所P1,P2の座標は、直交座標系の座標に変換される。レーザ距離計15は、センサ座標系でのレーザ光L1が当たった箇所P1,P2の座標を導出する。センサ座標系は、レーザ距離計15を原点とする3軸直交座標系である。センサ座標系は、例えば、互いに直交するX軸とY軸によって水平方向の位置を表し、X軸及びY軸に直交するZ軸によって鉛直方向の位置を表す座標系である。レーザ距離計15は、レーザ光L1が当たった箇所P1,P2のセンサ座標系での座標を示す点P11,P21を点群データPCとして出力する。センサ座標系は、点P11,P21の位置を表す座標系である。
【0018】
物体検出装置30は、記憶装置16を備える。記憶装置16は、制御装置11が読み取り可能な情報を記憶している。記憶装置16は、例えば、ハードディスクドライブ、又はソリッドステートドライブである。記憶装置16は、地図データD1を記憶している。
【0019】
地図データD1は、環境A1を示すデータである、地図データD1は、例えば、物体31の存在する位置を表すデータである。本実施形態において地図データD1は、環境A1に存在する物体31、及び地表面20を地図座標系の座標で表したデータである。地図座標系は、例えば、3軸直交座標系である。地図座標系は、環境A1の任意の一点を原点とする座標系である。地図座標系は、例えば、互いに直交するX軸とY軸によって水平方向の位置を表し、X軸及びY軸に直交するZ軸によって鉛直方向の位置を表す座標系である。
【0020】
制御装置11は、移動体10の自己位置を推定する。自己位置は、地図データD1上での移動体10の位置である。自己位置は、地図座標系での移動体10の一点を示す座標である。移動体10の一点は任意であるが、例えば、移動体10の水平方向での中心位置を挙げることができる。制御装置11は、点群データPCと地図データD1とを照合することで自己位置の推定を行う。以下、自己位置推定制御について説明する。自己位置推定制御は、所定の制御周期で繰り返し行われる。
【0021】
<自己位置推定制御>
図3に示すように、ステップS1において、制御装置11は、レーザ距離計15から点群データPCを取得する。点群データPCは、点P11,P21の集合である。点P11,P21は、物体31の表面であってレーザ光L1が当たった箇所P1,P2をセンサ座標系での座標で表したデータである。図1には、点群データPCの一例を示す。図1に示す点群データPCは、レーザ光L1が物体31に当たった場合の例を示す。図1では、説明の便宜上、一部の点P11,P21のみを図示している。
【0022】
点群データPCは、第1点P11と、第2点P21と、を含む。第1点P11は、レーザ光L1が鏡面反射することなく物体31に当たることで得られた点P11である。第2点P21は、レーザ光L1が鏡面反射部21で鏡面反射して物体31に当たることで得られた点P21である。図1に示すように、環境A1が鏡面反射部21を備える場合、鏡面反射部21に照射されたレーザ光L1は、鏡面反射され得る。鏡面反射されたレーザ光L1は、物体31で反射されてレーザ距離計15に受光される。これにより、点群データPCは、第2点P21を含む。図1に示す例では、第1点P11は、箇所P1の座標を示す。第2点P21は、箇所P3の座標を示している。箇所P3の座標は、詳細には箇所P2によって反射されたレーザ光によるものである。
【0023】
次に、ステップS2において、制御装置11は、センサ座標系において地表面20よりも下に位置する点P11,P21を点群データPCから抽出する。制御装置11は、地表面20からレーザ距離計15までの高さから、地表面20よりも下に位置する点P11,P21を点群データPCから抽出する。地表面20からレーザ距離計15までの高さは、レーザ距離計15の取り付け高さから予め把握することができる。即ち、センサ座標系における地表面20のZ座標は、予め把握することができる。制御装置11は、点群データPCに含まれる点P11,P21であって地表面20のZ座標よりもZ座標が下方に位置する点P11,P21を、地表面20よりも下に位置する点P11,P21として抽出する。図1に示す例では、地表面20よりも下に位置する点P11,P21として第2点P21が抽出される。センサ座標系における地表面20のZ座標は、記憶部13又は記憶装置16に記憶しておけばよい。上下とは、鉛直方向における上下である。
【0024】
レーザ距離計15は、レーザ光L1を照射した際に受光するまでに要した時間から当該レーザ光L1を照射した照射角度における物体31までの距離を測定する。図1から把握できるように、鏡面反射部21で鏡面反射が生じた場合、鏡面反射されたレーザ光L1の反射角はレーザ光L1の照射角度から変化する。即ち、レーザ距離計15によるレーザ光L1の照射角度と鏡面反射されたレーザ光L1が物体31に当たる際の角度とが異なる。レーザ距離計15は、レーザ光L1の照射角度で物体31にレーザ光L1が当たったとみなして物体31までの距離を測定する。レーザ距離計15がレーザ距離計15よりも下方に向けてレーザ光L1を照射した場合であって、当該レーザ光L1が鏡面反射して物体31に当たった場合、地表面20よりも下に位置する第2点P21が得られることになる。
【0025】
地表面20を境にして物体31を上下反転させた仮想的な物体を仮想物体32とする。第2点P21は、仮想物体32にレーザ光L1が当たった場合に得られる点であるとみなすことができる。レーザ光L1が鏡面反射した場合、レーザ光L1の入射角と反射角とは同一である。従って、物体31におけるレーザ光L1が当たった箇所P2と、仮想物体32における第2点P21が位置する箇所P3とは同一箇所である。即ち、地表面20を境に物体31を上下反転させた場合、箇所P2と箇所P3とは重なり合う。
【0026】
次に、ステップS3において、制御装置11は、地表面20よりも下に位置する第2点P21のセンサ座標系における座標を、地表面20に対して面対称となる位置の座標に変換する。即ち、制御装置11は、第2点P21のセンサ座標系におけるX座標及びY座標を維持しつつ地表面20を境として上下反転した位置の座標にZ座標を変換する。制御装置11は、地表面20のセンサ座標系におけるZ座標を認識しているため、地表面20から第2点P21のZ軸方向の寸法を認識することができる。制御装置11は、地表面20から第2点P21のZ軸方向の寸法分だけ地表面20から上方の位置にZ座標を変換すればよい。ステップS3でZ座標を変換した第2点P21を仮想点P22とする。仮想点P22は、鏡面反射したレーザ光L1が物体31に当たった箇所P2のセンサ座標系における座標とみなすことができる。これにより、制御装置11は、第1点P11及び仮想点P22を含む点群データPCを得る。
【0027】
次に、ステップS4において、制御装置11は、第1点P11及び仮想点P22を含む点群データPC用いて自己位置の推定を行う。制御装置11は、点群データPCから得られたランドマークと同一形状のランドマークを地図データD1から抽出する。制御装置11は、地図データD1からランドマークの地図座標系の位置を認識する。ランドマークの位置と移動体10との相対位置は、レーザ距離計15の検出結果から把握できる。従って、制御装置11は、ランドマークの地図座標系での位置を認識することで、自己位置を推定することができる。ランドマークは、レーザ距離計15により識別可能な特徴を有する物体31である。
【0028】
[第1実施形態の作用]
レーザ距離計15は、レーザ光L1を照射する。レーザ光L1が鏡面反射すると、鏡面反射が生じていない場合に比べてレーザ光L1の照射からレーザ光L1の受光までの時間が長くなる。これにより、レーザ光L1が物体31に当たった箇所P2とレーザ距離計15が認識する点P21の位置にずれが生じる。
【0029】
地表面20に存在する鏡面反射部21でレーザ光L1の鏡面反射が生じた場合、得られる点P21は、センサ座標系における地表面20よりも下の座標を示す。このため、センサ座標系において地表面20よりも下に位置する点P21を点群データPCから抽出すると、地表面20に存在する鏡面反射部21で鏡面反射したレーザ光L1によって得られた点P21を抽出できる。制御装置11は、地表面20よりも下に位置する点P21の座標を、地表面20に対して面対称となる位置の座標に変換する。この変換により得られた座標は、鏡面反射したレーザ光L1が物体31に当たった箇所の位置を示す。
【0030】
[第1実施形態の効果]
(1-1)制御装置11は、地表面20よりも下に位置する点P21の座標を、地表面20に対して面対称となる位置の座標に変換する。点群データPCに含まれる点P21の座標を変換することによって、点群データPCから点P11,P21を除去する場合に比べて、点群データPCに含まれる点P11,P21の数が減少することが抑制される。
【0031】
本実施形態のように、点群データPCを用いて自己位置の推定を行う場合、鏡面反射することで得られた点P21を用いて自己位置が行われることで、自己位置の推定精度が低下することが抑制される。更に、点群データPCに含まれる点P11,P21の数が減少することによって自己位置の推定精度が低下することが抑制される。
【0032】
(1-2)制御装置11は、地表面20からレーザ距離計15までの高さから、地表面20よりも下に位置する点P21を点群データPCから抽出する。従って、地表面20よりも下に位置する点P21の抽出を行いやすい。
【0033】
[第2実施形態]
物体検出装置の第2実施形態について説明する。以下の説明において、第1実施形態との差異について説明する。
【0034】
図4に示すように、環境A1は、物体41を備える。物体41は、移動体10よりも上に位置する。物体41は、例えば、屋根である。
環境A1は、鏡面反射部42を備える。本実施形態の鏡面反射部42は、継続的に地表面20に存在する。鏡面反射部42は、例えば、移動体10のユーザが意図的に配置したものである。鏡面反射部42は、例えば、ミラーである。鏡面反射部42は、移動体10が物体41の下に位置している場合に、鏡面反射部42で鏡面反射したレーザ光L1がランドマークとなる物体31に当たるように配置されている。
【0035】
地図データD1は、鏡面反射部42を地図座標系の座標で表したデータを含む。このデータは、鏡面反射部42の位置情報である。
制御装置11は、自己位置推定制御を行う。第2実施形態で行われる自己位置推定制御は、第1実施形態の自己位置推定制御とは異なる。
【0036】
<自己位置推定制御>
図5に示すように、ステップS1において、制御装置11は、レーザ距離計15から点群データPCを取得する。
【0037】
次に、ステップS11において、制御装置11は、鏡面反射部42が自己位置から所定範囲内に位置するか否かを判定する。所定範囲は、例えば、レーザ光L1の到達可能距離以下の範囲で設定される。ステップS11の判定結果が肯定の場合、制御装置11は、ステップS2~ステップS4の処理を行う。ステップS2~ステップS4の処理は、第1実施形態と同様である。ステップS11の判定結果が否定の場合、制御装置11は、ステップS4の処理を行う。即ち、鏡面反射部42が自己位置から所定範囲内に位置する場合、制御装置11は、地表面20よりも下に位置する第2点P21の座標を、地表面20に対して面対称となる位置の座標に変換して得られた仮想点P22を含む点群データPCから自己位置を推定する。鏡面反射部42が自己位置から所定範囲内に位置していない場合、制御装置11は、座標の変換を行うことなく、レーザ距離計15から取得した点群データPCから自己位置を推定する。ステップS4で推定した自己位置によって、次の制御周期でのステップS11の判定が行われる。
【0038】
[第2実施形態の効果]
(2-1)移動体10が物体41の下に位置している場合、レーザ光L1が物体41に遮られることによって照射角度によってはランドマークとなる物体31にレーザ光L1が当たらない場合がある。この場合、自己位置の推定精度が低下する場合がある。ランドマークとなる物体31にレーザ光L1が当たりにくい位置で、鏡面反射によりレーザ光L1が物体31に当たるように鏡面反射部42を配置すると、レーザ光L1を物体31に当てることができる。鏡面反射部42を配置しない場合に比べて、点群データPCに含まれる点P21の数を増やすことができる。そして、制御装置11は、鏡面反射部42が自己位置から所定範囲内に位置する場合、地表面20よりも下に位置する点P21の座標を、地表面20に対して面対称となる位置の座標に変換する。鏡面反射部42を設けることによって鏡面反射部42を設けない場合には得られない点P21を得ることができる。そして、この点P21から得られた仮想点P22を用いて自己位置を推定することができる。これにより、自己位置の推定精度の向上が図られる。
【0039】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0040】
○各実施形態において、制御装置11は、自己位置の推定に代えて障害物の検出を行ってもよい。例えば、制御装置11は、クラスタ化を行う。クラスタ化は、点群データPCに含まれる点P11,P21のうち同一物体とみなすことができる点P11,P21を1つのグループにすることである。制御装置11は、クラスタ化によりグループにされた点P11,P21を1つの障害物とみなす。制御装置11は、障害物を検出すると、障害物を回避するように移動体10を制御してもよい。制御装置11は、第1点P11及び仮想点P22を含む点群データPCを用いてクラスタ化を行う。これにより、障害物の位置、及び障害物の形状を精度良く認識することができる。この場合、制御装置11は、点群データPCを用いずに自己位置を推定してもよい。例えば、制御装置11は、デッドレコニングによる自己位置の推定を行ってもよいし、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から送信される衛星信号を用いた自己位置の推定を行ってもよい。
【0041】
○各実施形態において、制御装置11は、地図データD1から、地表面20よりも下に位置する点P21を点群データPCから抽出してもよい。制御装置11は、地図データD1から物体31の存在する位置の地表面20の高さを認識することができる。例えば、制御装置11は、地図座標系における地表面20のZ座標とセンサ座標系におけるZ軸の原点との差からセンサ座標系における地表面20の高さを認識する。制御装置11は、センサ座標系における地表面20の高さから、地表面20よりも下に位置する点P21を点群データPCから抽出する。そして、制御装置11は、地表面20よりも下に位置する点P21の座標を、地表面20に対して面対称となる位置の座標に変換する。この際、制御装置11は、物体31の存在する位置の地表面20の高さを用いて点P21の座標を変換する。地図データD1を用いることで、地表面20のZ座標が位置によって異なっている場合であっても、位置に応じた地表面20のZ座標を得ることができる。従って、仮想点P22を精度良く検出することができる。
【符号の説明】
【0042】
A1…環境、D1…地図データ、P11,P21…点、PC…点群データ、10…移動体、11…制御装置、15…レーザ距離計、16…記憶装置、20…地表面、30…物体検出装置、31…物体、42…鏡面反射部。
図1
図2
図3
図4
図5