(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160522
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
F04C18/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075616
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘基
(72)【発明者】
【氏名】知念 武士
(72)【発明者】
【氏名】星野 皓介
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA06
3H039AA11
3H039BB04
3H039CC01
3H039CC35
(57)【要約】
【課題】耐久性や信頼性の向上を図ることができる回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の回転式圧縮機は、外シリンダと、内シリンダと、ロータと、仕切部材と、を備えている。仕切部材は、ロータの外周面に沿って延びる可撓性を有する板状に形成されている。仕切部材は、作動空間を圧縮室及び吸込室に仕切った状態で、内シリンダ及びロータのうち第1部材の回転力を、内シリンダ及びロータのうち第2部材に伝達可能である。内シリンダには、流入連通口と流出連通口とが形成されている。流入連通口は、吸込室に連通するとともに、内シリンダの回転に伴い流入路に連通可能である。流出連通口は、圧縮室に連通するとともに、内シリンダの回転に伴い流出路に連通可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流入する流入路及び冷媒が流出する流出路が形成された外シリンダと、
シリンダ軸線回りに回転可能に前記外シリンダ内に配置された筒状の内シリンダと、
前記シリンダ軸線に対して偏心したロータ軸線回りに回転可能に前記内シリンダ内に配置されるとともに、前記内シリンダとの間に作動空間を形成する円柱状のロータと、
前記内シリンダの内周面に接続された第1側端部、及び前記ロータの外周面に接触する第2側端部を有し、前記ロータの外周面に沿って延びる可撓性を有する板状に形成されるとともに、前記作動空間を圧縮室及び吸込室に仕切った状態で、前記内シリンダ及び前記ロータのうち第1部材の回転力を、前記内シリンダ及び前記ロータのうち第2部材に伝達可能な仕切部材と、を備え、
前記内シリンダには、
前記吸込室に連通するとともに、前記内シリンダの回転に伴い前記流入路に連通可能な流入連通口と、
前記圧縮室に連通するとともに、前記内シリンダの回転に伴い前記流出路に連通可能な流出連通口と、が形成されている回転式圧縮機。
【請求項2】
前記仕切部材は、弾性変形可能に構成されている請求項1に記載の回転式圧縮機。
【請求項3】
前記流入路は、前記外シリンダの内周面上で開口するとともに、前記外シリンダの内周面に沿って円弧状に形成されている請求項1又は請求項2に記載の回転式圧縮機。
【請求項4】
前記流出路は、前記内シリンダのうち、前記内シリンダの軸方向において前記流入路と異なり、かつ前記内シリンダの周方向において前記流入路と異なる位置に形成されている請求項3に記載の回転式圧縮機。
【請求項5】
前記仕切部材のうち、前記第1側端部は前記内シリンダの内周面に固定され、前記第2側端部は前記ロータの外周面に固定され、
前記ロータには、駆動源からの動力が伝達される請求項1又は請求項2に記載の回転式圧縮機。
【請求項6】
前記仕切部材のうち、前記第1側端部は前記内シリンダの内周面に固定され、前記第2側端部は前記ロータの外周面に接触し、
前記内シリンダには、駆動源からの動力が伝達される請求項1又は請求項2に記載の回転式圧縮機。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の回転式圧縮機と、
前記回転式圧縮機に接続された放熱器と、
前記放熱器に接続された膨張装置と、
前記膨張装置と前記回転式圧縮機との間に接続された蒸発器と、を備えている冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置等の冷凍サイクル装置には、回転式圧縮機が利用されている。回転式圧縮機は、シリンダ室と、ロータと、ベーンと、を有する。ロータは、シリンダ室の内部に配置されて、シリンダ室の軸線に対して偏心回転する。ベーンは、ロータのスリット内に進退可能に配置される。回転式圧縮機では、ベーンの先端面とシリンダ室の内面との間が摺動した状態で、ロータがシリンダ室内を偏心回転する。これにより、シリンダ室内に冷媒を取り込みつつ、シリンダ室内で冷媒を圧縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術にあっては、ベーンの先端面がシリンダ室の内面に常時、かつ局所的に摺動する構成である。そのため、油膜切れ等に伴うベーンの摩耗やベーンの焼き付き等が生じる可能性があった。
本発明が解決しようとする課題は、耐久性や信頼性の向上を図ることができる回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の回転式圧縮機は、以下の態様を採用した。
(1)の態様に係る回転式圧縮機は、外シリンダと、内シリンダと、ロータと、仕切部材と、を備えている。外シリンダは、冷媒が流入する流入路及び冷媒が流出する流出路が形成されている。内シリンダは、シリンダ軸線回りに回転可能に外シリンダ内に配置されている。内シリンダは、筒状である。ロータは、シリンダ軸線に対して偏心したロータ軸線回りに回転可能に内シリンダ内に配置されている。ロータは、内シリンダとの間に作動空間を形成する円柱状である。仕切部材は、内シリンダの内周面に接続された第1側端部、及びロータの外周面に接触する第2側端部を有している。仕切部材は、ロータの外周面に沿って延びる可撓性を有する板状に形成されている。仕切部材は、作動空間を圧縮室及び吸込室に仕切った状態で、内シリンダ及びロータのうち第1部材の回転力を、内シリンダ及びロータのうち第2部材に伝達可能である。内シリンダには、流入連通口と流出連通口とが形成されている。流入連通口は、吸込室に連通するとともに、内シリンダの回転に伴い流入路に連通可能である。流出連通口は、圧縮室に連通するとともに、内シリンダの回転に伴い流出路に連通可能である。
【0006】
(2)上記(1)の態様に係る回転式圧縮機において、前記仕切部材は、弾性変形可能に構成されていることが好ましい。
【0007】
(3)上記(1)又は(2)の態様に係る回転式圧縮機において、前記流入路は、前記外シリンダの内周面上で開口するとともに、前記外シリンダの内周面に沿って円弧状に形成されていることが好ましい。
【0008】
(4)上記(3)の態様に係る回転式圧縮機において、前記流出路は、前記内シリンダのうち、前記内シリンダの軸方向において前記流入路と異なり、かつ前記内シリンダの周方向において前記流入路と異なる位置に形成されていることが好ましい。
【0009】
(5)上記(1)から(4)の何れかの態様に係る回転式圧縮機において、前記仕切部材のうち、前記第1側端部は前記内シリンダの内周面に固定され、前記第2側端部は前記ロータの外周面に固定され、前記ロータには、駆動源からの動力が伝達されることが好ましい。
【0010】
(6)上記(1)から(4)の何れかの態様に係る回転式圧縮機において、前記仕切部材のうち、前記第1側端部は前記内シリンダの内周面に固定され、前記第2側端部は前記ロータの外周面に接触し、前記内シリンダには、駆動源からの動力が伝達されることが好ましい。
【0011】
(7)の態様に係る冷凍サイクル装置は、上記(1)から(6)の何れかの態様に係る回転式圧縮機と、前記回転式圧縮機に接続された放熱器と、前記放熱器に接続された膨張装置と、前記膨張装置と前記回転式圧縮機との間に接続された蒸発器と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態における回転式圧縮機の断面図を含む、冷凍サイクル装置の概略構成図。
【
図2】
図1のII-II線に相当する回転式圧縮機の断面図。
【
図5】第1の実施形態における回転式圧縮機の動作説明図であって、
図4に対応する断面図。
【
図6】第1の実施形態における回転式圧縮機の動作説明図であって、
図4に対応する断面図。
【
図7】第1の実施形態における回転式圧縮機の動作説明図であって、
図4に対応する断面図。
【
図8】第1の実施形態における回転式圧縮機の動作説明図であって、
図4に対応する断面図。
【
図10】第1の実施形態における回転式圧縮機の動作説明図であって、
図5に対応する断面図。
【
図11】第1の実施形態における回転式圧縮機の動作説明図であって、
図5に対応する断面図。
【
図12】第1の実施形態における回転式圧縮機の動作説明図であって、
図5に対応する断面図。
【
図13】第1の実施形態における回転式圧縮機の動作説明図であって、
図5に対応する断面図。
【
図14】第2の実施形態に係る回転式圧縮機において、
図3に対応する断面図。
【
図15】第2の実施形態に係る回転式圧縮機において、
図2に対応する断面図。
【
図17】第2の実施形態に係る回転式圧縮機の動作説明図であって、
図16に対応する断面図。
【
図18】第2の実施形態に係る回転式圧縮機の動作説明図であって、
図16に対応する断面図。
【
図19】第2の実施形態に係る回転式圧縮機の動作説明図であって、
図16に対応する断面図。
【
図21】第2の実施形態に係る回転式圧縮機の動作説明図であって、
図20に対応する断面図。
【
図22】第2の実施形態に係る回転式圧縮機の動作説明図であって、
図20に対応する断面図。
【
図23】第2の実施形態に係る回転式圧縮機の動作説明図であって、
図20に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態の回転式圧縮機、回転式圧縮機の製造方法及び冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
始めに、冷凍サイクル装置1について簡単に説明する。
図1は、第1の実施形態における回転式圧縮機2の断面図を含む、冷凍サイクル装置1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、回転式圧縮機2と、放熱器である凝縮器3と、膨張装置4と、吸熱器としての蒸発器5と、を備えている。
【0014】
回転式圧縮機2は、いわゆるロータリ式の圧縮機である。回転式圧縮機2は、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒を圧縮して高温・高圧の気体冷媒とする。回転式圧縮機2の具体的な構成については後述する。
凝縮器3は、回転式圧縮機2に対して冷媒の流通方向で下流側に接続されている。凝縮器3は、回転式圧縮機2から送り込まれる高温・高圧の気体冷媒から熱を放熱させ、高圧の液体冷媒にする。
【0015】
膨張装置4は、凝縮器3に対して冷媒の流通方向で下流側に接続されている。膨張装置4は、凝縮器3から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、低温・低圧の液体冷媒にする。
蒸発器5は、膨張装置4と回転式圧縮機2との間に接続されている。蒸発器5は、膨張装置4から送り込まれる低温・低圧の液体冷媒を気化させ、低温・低圧の液体冷媒を低圧の気体冷媒にする。蒸発器5は、低圧の液体冷媒が気化する際に周囲から気化熱を奪う。これにより、蒸発器5の周囲が冷却される。蒸発器5を通過した低圧の気体冷媒は、回転式圧縮機2内に再び取り込まれる。
【0016】
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒とに相変化しながら循環する。本実施形態の冷凍サイクル装置1において、冷媒はR410AやR32等のHFC系冷媒、R1234yfやR1234ze等のHFO系冷媒、CO2等の自然冷媒等を用いることが可能である。
【0017】
次に、回転式圧縮機2について説明する。
本実施形態の回転式圧縮機2は、圧縮機本体11と、アキュムレータ12と、を備えている。
アキュムレータ12は、いわゆる気液分離器である。アキュムレータ12は、蒸発器5と圧縮機本体11との間に設けられている。アキュムレータ12は、吸い込みパイプ21を通して圧縮機本体11に接続されている。アキュムレータ12は、蒸発器5で気化された気体冷媒、及び蒸発器5で気化されなかった液体冷媒のうち、気体冷媒のみを圧縮機本体11に供給する。
【0018】
圧縮機本体11は、ケース30と、回転軸31と、電動機部(駆動源)32と、圧縮機構部33と、を備えている。本実施形態の圧縮機本体11は、回転軸31の軸方向を上下方向として配置されている。
ケース30は、回転軸31、電動機部32及び圧縮機構部33を収容する。ケース30は、筒状に形成されるとともに、上下方向(軸方向)の両端部が閉塞されている。ケース30内には、潤滑油Jが収容されている。潤滑油J内には、圧縮機構部33の少なくとも一部が浸漬されている。
【0019】
回転軸31は、ケース30の軸線(ロータ軸線)O1と同軸上に配置されている。以下の説明では、軸線O1に沿う方向を単に軸方向といい、軸方向から見た平面視で軸線O1に交差する方向を第1径方向といい、軸線O1周りの方向を第1周方向という場合がある。
【0020】
電動機部32は、ケース30内における軸方向の第1側に配置されている。圧縮機構部33は、ケース30内における軸方向の第2側に配置されている。以下の説明では、軸方向に沿う電動機部32側を上側、圧縮機構部33側を下側とする。
【0021】
電動機部32は、いわゆるインナーロータ型のDCブラシレスモータである。具体的に、電動機部32は、固定子35と、回転子36と、を備えている。
固定子35は、ケース30の内壁面に焼嵌め等により固定されている。
回転子36は、固定子35の内側に径方向に間隔をあけた状態で、回転軸31の上部に固定されている。
【0022】
図2は、
図1のII-II線に対応する断面図である。
図3は、
図1に示す圧縮機構部33の拡大図である。
図2、
図3に示すように、圧縮機構部33は、機構ハウジング50と、ロータ51と、内シリンダ52と、仕切部材53と、を備えている。
機構ハウジング50は、ロータ51、内シリンダ52及び仕切部材53を収容する。機構ハウジング50は、外シリンダ60と、主軸受61と、副軸受62と、を備えている。
【0023】
図4は、
図3のIV-IV線に対応する断面図である。
図5~
図8は、回転式圧縮機2の動作説明図であって、
図4に対応する断面図である。
図3、
図4に示すように、外シリンダ60は、筒状に形成されている。具体的に、外シリンダ60は、軸線O1と同軸に配置された円板状に形成されるとともに、軸線O1に対して偏心した軸線O2を中心として軸方向に貫通する貫通孔60aが形成された構成である。外シリンダ60は、回転軸31の下部を取り囲んだ状態で、ケース30の内壁面に固定されている。なお、以下の説明では、軸線O2に直交する方向を第2径方向といい、軸線O2周りの方向を第2周方向という場合がある。
【0024】
外シリンダ60には、機構ハウジング50内に冷媒を流入させる流入路63が形成されている。流入路63は、流入口63aと、接続孔63bと、複数の流入溝(上側流入溝63c及び下側流入溝63d)と、を備えている。
図3に示すように、流入口63aは、外シリンダ60を第2径方向に延びている。流入口63aは、外シリンダ60の外周面で開口している。流入口63aには、ケース30を貫通した吸い込みパイプ21が挿し込まれている。すなわち、流入口63aは、機構ハウジング50の内外を連通させている。
接続孔63bは、外シリンダ60のうち第2周方向で流入口63aと同じ位置に形成されている。接続孔63bは、外シリンダ60を軸方向に貫通している。接続孔63bは、軸方向の中央部において、流入口63aに接続されている。
【0025】
図3、
図4に示すように、上側流入溝63cは、外シリンダ60の上端部に形成されている。上側流入溝63cは、外シリンダ60の内周面及び上端面で開口するとともに、第2周方向に沿って延びている。上側流入溝63cには、接続孔63bの上端部が接続されている。
図4の例において、上側流入溝63cは、接続孔63bとの接続部分を延在方向の中心とした平面視でC字状(円弧状)に形成されている。また、軸線O2を中心とした上側流入溝63cの中心角は、180°以上に設定されている。
【0026】
図9は、
図3のIX-IX線に対応する断面図である。
図10~
図13は、回転式圧縮機2の動作説明図であって、
図5に対応する断面図である。
図3、
図9に示すように、下側流入溝63dは、外シリンダ60の下端部に形成されている。下側流入溝63dは、外シリンダ60の内周面及び下端面で開口するとともに、第2周方向に沿って延びている。下側流入溝63dには、接続孔63bの下端部が接続されている。下側流入溝63dは、上側流入溝63cと同様に、接続孔63bとの接続部分を延在方向の中心とした平面視でC字状(円弧状)に形成されている。上側流入溝63cと下側流入溝63dとは、軸方向から見て全体が重なり合っている(第2周方向で同範囲に形成されている。)。なお、流入溝63c,63dは、少なくとも一つ設けられていればよい。また、複数の流入溝63c,63dを設ける場合において、各流入溝63c,63dの位置や寸法は、適宜異ならせてもよい。
【0027】
外シリンダ60には、機構ハウジング50から冷媒を流出させる流出路64が形成されている。流出路64は、横孔64aと、縦孔64bと、を備えている。
【0028】
横孔64aは、外シリンダ60のうち、各流入溝63c,63dに対して第2周方向で異なる位置であって、軸方向で各流入溝63c,63d間に位置する部分に形成されている。図示の例において、横孔64aは、第2径方向で流入口63aと向かい合っている。なお、横孔64aの内径は、流入口63aの内径よりも小さい。また、横孔64aにおける第2径方向の外側開口部は、外シリンダ60の外周面に設けられた蓋部材65によって閉塞されている。
縦孔64bは、横孔64aにおける第2径方向の中間部分から上方に延びている。縦孔64bは、外シリンダ60の上面で開口している。
【0029】
図3に示すように、主軸受61は、外シリンダ60の上端開口部を閉塞している。主軸受61は、回転軸31のうち、外シリンダ60よりも上方に位置する部分を回転可能に支持している。具体的に、主軸受61は、主筒部71と、主フランジ部72と、を備えている。
【0030】
主筒部71は、軸線O1と同軸に配置されている。主筒部71内には、回転軸31が貫通している。これにより、主筒部71は、回転軸31を回転可能に支持している。
主フランジ部72は、主筒部71の下端部から第1径方向の外側に張り出している。主フランジ部72は、外シリンダ60の上面に重ね合わされた状態で、ビス等によって外シリンダ60に固定されている。主フランジ部72のうち、縦孔64bと平面視で重なり合う部分には、吐出孔72aが形成されている。吐出孔72aは、主フランジ部72を軸方向に貫通している。すなわち、吐出孔72aは、流出路64を通じて機構ハウジング50の内外を連通させている。なお、吐出孔72aは、副軸受62や外シリンダ60に形成されていてもよい。
【0031】
副軸受62は、外シリンダ60の下端開口部を閉塞している。副軸受62は、回転軸31のうち、外シリンダ60よりも下方に位置する部分を回転可能に支持している。具体的に、副軸受62は、副筒部74と、副フランジ部75と、を備えている。
【0032】
副筒部74は、軸線O1と同軸に配置されている。副筒部74内には、回転軸31が貫通している。これにより、副筒部74は、回転軸31を回転可能に支持している。
副フランジ部75は、副筒部74の上端部から第1径方向の外側に張り出している。副フランジ部75は、外シリンダ60の下面に重ね合わされた状態で、ビス等によって外シリンダ60に固定されている。
【0033】
図3、
図4に示すように、ロータ51は、軸線O1と同軸に配置された円柱状に形成されている。ロータ51は、機構ハウジング50内において、回転軸31に固定されている。したがって、ロータ51は、貫通孔60aの内周面のうち、第2径方向の一方側(流出路64側)に位置する部分に接近した状態で配置されている。ロータ51は、回転軸31の回転に伴い、軸線O1回りを回転可能に構成されている。なお、ロータ51は、主軸受61及び副軸受62によって機構ハウジング50に対する軸方向の移動が規制されている。
【0034】
内シリンダ52は、軸線O2と同軸に配置された筒状に形成されている。内シリンダ52は、機構ハウジング50内において、ロータ51の周囲を取り囲んでいる。内シリンダ52は、軸方向の寸法が外シリンダ60やロータ51と同等に形成されるとともに、外径がロータ51の外径よりも大きく貫通孔60aの内径よりも小さく形成されている。すなわち、内シリンダ52は、主軸受61及び副軸受62によって機構ハウジング50に対する軸方向の移動が規制された状態で、軸線O2回りに回転可能に機構ハウジング50内に配置されている。内シリンダ52が軸線O2回りに回転する過程において、内シリンダ52の外周面は、貫通孔60aの内周面上を全周に亘って摺動可能である。
【0035】
内シリンダ52には、複数の流入連通口(上側流入連通口52a及び下側流入連通口52b)と、流出連通口52cと、が形成されている。
上側流入連通口52aは、内シリンダ52の上端部に形成されている。上側流入連通口52aは、内シリンダ52を第2径方向に貫通するとともに、内シリンダ52の上端面で開口している。
図4~
図7に示すように、上側流入連通口52aは、内シリンダ52の回転に伴い、第2径方向から見て上側流入溝63cと重なり合った状態(第2周方向で同位置に配置された状態)で、上側流入溝63cと連通する。一方、
図8に示すように、上側流入連通口52aは、第2径方向から見て上側流入溝63cと重なり合わない状態で、外シリンダ60の内周面によって閉塞される。
【0036】
図3、
図9に示すように、下側流入連通口52bは、内シリンダ52の下端部において、下側流入連通口52bと第2周方向で同位置に形成されている。下側流入連通口52bは、内シリンダ52を第2径方向に貫通するとともに、内シリンダ52の下端面で開口している。
図9~
図12に示すように、下側流入連通口52bは、内シリンダ52の回転に伴い、第2径方向から見て下側流入溝63dと重なり合った状態(第2周方向で同位置に配置された状態)で、下側流入溝63dと連通する。一方、
図13に示すように、下側流入連通口52bは、第2径方向から見て下側流入溝63dと重なり合わない状態で、外シリンダ60の内周面によって閉塞される。すなわち、上側流入連通口52a及び上側流入溝63c同士、並びに下側流入連通口52b及び下側流入溝63d同士は、内シリンダ52の回転位置に応じて連通及び遮断が切り替えられる。
【0037】
図3、
図9に示すように、流出連通口52cは、内シリンダ52のうち各流入連通口52a,52bに対して第2周方向で異なる位置であって、軸方向で各流入溝63c,63d間に位置する部分に形成されている。軸線O2と、流出連通口52cと下側流入連通口52b(上側流入連通口52a)とをそれぞれ結ぶ直線がなす共役角のうち、劣角側の角度(第2周方向での間隔のうち小さい方の間隔)は、90°よりも小さくなっている。劣角側の角度について、好適には15°~35°とすることで、圧縮容積を確保しつつ効果的に吸込室S1aと圧縮室S1bを区画することができる。また、後述する仕切部材53と内シリンダ52との固定方法においても十分な固定範囲を確保することができ、圧縮性能を犠牲にすることなく、強固で信頼性の高い構造とすることができる。図示の例において、流出連通口52cと下側流入連通口52bとの第2周方向での間隔は、下側流入溝63dにおける延在方向の両端部間の距離よりも狭くなっている。
【0038】
流出連通口52cは、内シリンダ52を第2径方向に貫通している。
図12に示すように、流出連通口52cは、内シリンダ52の回転に伴い、第2径方向から見て流出路64(横孔64a)と第2径方向から見て重なり合った状態(第2周方向で同位置に配置された状態)で、横孔64aと連通する。一方、
図9~
図11、
図13に示すように、流出連通口52cは、第2径方向から見て横孔64aと重なり合わない状態で外シリンダ60の内周面によって閉塞されている。すなわち、流出連通口52c及び横孔64a同士は、内シリンダ52の回転位置に応じて連通及び遮断が切り替えられる。
【0039】
図4に示すように、仕切部材53は、機構ハウジング50内のうち、ロータ51と内シリンダ52とで囲まれた空間(以下、作動空間S1という。)に配置されている。仕切部材53は、第1径方向(又は第2径方向)を厚さ方向とし、厚さ方向に弾性変形可能な板ばね状に形成されている。本実施形態において、仕切部材53の幅(軸方向の寸法)は、外シリンダ60やロータ51、内シリンダ52と同等に形成されている。これにより、仕切部材53は、主軸受61及び副軸受62によって機構ハウジング50に対する軸方向の移動が規制されている。なお、仕切部材53は、例えば金属材料やゴム材料、樹脂材料の何れかによって構成された単層構造でもよく、金属材料を芯材とし、芯材とは異種材料(ゴム材料や樹脂材料等)の外皮材によって芯材を被覆する積層構造であってもよい。また、仕切部材53は、少なくとも可撓性を有していればよい。
【0040】
仕切部材53は、内シリンダ52の内側でロータ51の周囲を取り囲んでいる。本実施形態において、仕切部材53の長さは、ロータ51の周長以下に設定されている(
図8参照)。
図5に示すように、仕切部材53は、平面視において、第1周方向の第1側から第2側に向かうに従い第1径方向の外側から内側に延びる渦巻状に形成されている。仕切部材53は、ロータ51と内シリンダ52との回転位置に関わらず、曲率半径が大きくなる向きに常時付勢されている。
【0041】
仕切部材53のうち、第1周方向における第1側端部は、内シリンダ52の内周面のうち、流入連通口52a,52bと流出連通口52cとの間に位置する部分に固定されている。一方、仕切部材53のうち、第1周方向における第2側端部は、ロータ51の外周面に接触している。本実施形態において、仕切部材53の第2側端部は、ロータ51の外周面に固定されている。これにより、仕切部材53は、ロータ51及び内シリンダ52の回転に伴って回転しつつ、流入連通口52a,52bが連通する吸込室S1aと、流出連通口52cが連通する圧縮室S1bと、に作動空間S1を仕切っている。吸込室S1aと圧縮室S1bとは、仕切部材53によって第1周方向及び第1径方向に仕切られている。なお、仕切部材53は、ロータ51と内シリンダ52とが最も接近した位置(第2径方向から見て流出路64と重なり合う位置)を通過する際、ロータ51の外周面と内シリンダ52の内周面とに密接した状態でロータ51と内シリンダ52とに挟み込まれる。
【0042】
仕切部材53及び内シリンダ52間、並びに仕切部材53及びロータ51間の固定方法は、接合(溶接やロウ付け、接着剤、両面テープ等)や加締め、締結等、適宜選択可能である。また、仕切部材53のうち、少なくとも内シリンダ52との固定部分、及びロータ51との固定部分は、自然長の状態において直線状(曲率半径が無限大)に形成されていることが好ましい。これにより、仕切部材53と、内シリンダ52及びロータ51と、のそれぞれの固定強度を確保し易い。また、仕切部材53の長さは、ロータ51の周長以下であれば適宜変更が可能である。
【0043】
仕切部材53は、ロータ51及び内シリンダ52間を接続することで、ロータ51の回転力を内シリンダ52に伝達可能である。すなわち、圧縮機構部33は、回転軸31(電動機部32)の回転に伴い、ロータ51が軸線O1回りに回転することで、仕切部材53が引っ張られる。これにより、内シリンダ52が仕切部材53によって引っ張られることで、軸線O2回りに回転する(従動する)。
【0044】
次に、上述した回転式圧縮機2の作用について説明する。
図1、
図4、
図9に示すように、電動機部32の固定子35に電力が供給されると、回転軸31が回転子36とともに軸線O1回りの一方側に回転する。回転軸31の回転に伴い、ロータ51が軸線O1回りの一方側に回転する(
図4、
図9中矢印P1参照)。ロータ51が回転すると、ロータ51の回転力が仕切部材53を介して内シリンダ52に伝達される。これにより、ロータ51の軸線O1回りの一方側への回転に伴い、内シリンダ52が軸線O2回りの一方側に回転する。すなわち、内シリンダ52は、ロータ51の回転に同期して、ロータ51の回転方向と同一方向に回転する。
【0045】
図4~
図13に示すように、ロータ51及び内シリンダ52が回転することで、流入連通口52a,52b及び流入路63間、並びに流出連通口52c及び流出路64間それぞれの連通及び遮断が繰り返される。具体的に、内シリンダ52は、流入連通口52a,52bが流入溝63c,63dと連通する第1区間、及び流入連通口52a,52bと流入溝63c,63dとの連通が遮断される第2区間を繰り返し移動する。
【0046】
第1区間は、
図4~
図7に示すように、例えば上側流入連通口52aが上側流入溝63cにおける第2周方向の第1側端部と重なり合う位置(
図4に示す吸込開始位置)から上側流入溝63cにおける第2周方向の第2側端部に重なり合う位置(
図7に示す吸込終了位置)に至る区間である。第1区間では、流入連通口52a,52bと流入路63とが常時連通している。
第2区間は、
図8に示すように、例えば上側流入連通口52aが上側流入溝63cにおける第2周方向の第2側端部及び第1側端部間を移動する区間である。第2区間では、上側流入連通口52aが外シリンダ60の内周面によって閉塞されることで、上側流入溝63cとの連通が遮断されている。なお、内シリンダ52の回転位置に応じた下側流入連通口52bと下側流入溝63dとの連通状態は、上側流入連通口52aと上側流入溝63cとの連通状態と同様である。
【0047】
一方、
図9~
図11に示すように、内シリンダ52が第1区間を移動する過程において、流入連通口52a,52bが吸込終了位置に到達するまでの間、流出連通口52cは外シリンダ60の内周面によって閉塞されている。これにより、流出連通口52cと流出路64(横孔64a)との連通が遮断されている。そして、
図12に示すように、流入連通口52a,52bが吸込終了位置に到達すると、流出連通口52cの全体が横孔64aと重なり合う。これにより、流出連通口52cと流出路64とが連通する。その後、
図13に示すように、内シリンダ52が第2区間を移動する間に流出連通口52cが横孔64aを通過することで、内シリンダ52が第1区間に進入する前に再び流出連通口52cと流出路64との連通が遮断される。なお、流出連通口52cは、流入連通口52a,52bが吸込終了位置から吸込開始位置を移動する過程において、流出路64(横孔64a)に連通すればよい。
【0048】
ここで、本実施形態では、ロータ51及び内シリンダ52が互いに偏心した軸線回りに回転する。そのため、ロータ51及び内シリンダ52の回転に伴い、仕切部材53は曲率半径が拡大及び縮小するように変形する。具体的に、
図4~
図8に示すように、内シリンダ52が第1区間を軸線O2回りの一方側に回転する過程において、仕切部材53は曲率半径が拡大する方向に変形する。すると、吸込室S1aの容積が徐々に拡大することで、吸込室S1a内に負圧が発生する。これにより、吸込みパイプ21及び流入路63を通じて吸込室S1a内に気体冷媒が取り込まれる。また、仕切部材53の曲率半径が拡大する方向に仕切部材53が変形することで、圧縮室S1bの容積が徐々に縮小する。これにより、内シリンダ52が第1区間を軸線O2回りの一方側に回転することに伴い、圧縮室S1b内の圧力が徐々に増加する。そして、吸込終了位置において、流出連通口52cが横孔64aに連通することで、圧縮室S1b内で圧縮された気体冷媒が流出路64及び吐出孔72aを通じて圧縮機構部33の外部に吐出される。圧縮機構部33の外部に吐出された気体冷媒は、上述したように凝縮器3に送り込まれる。
【0049】
このように、本実施形態では、軸線(シリンダ軸線)O2回りに回転可能に外シリンダ60内に配置された内シリンダ52と、軸線(ロータ軸線)O1回りに回転可能に内シリンダ52内に配置されるとともに、内シリンダ52との間に作動空間S1を形成するロータ51と、ロータ51の外周面に沿って延びる可撓性を有する板状に形成されるとともに、ロータ(第1部材)51の回転力を内シリンダ(第2部材)52に伝達可能に構成され、作動空間S1を吸込室S1a及び圧縮室S1bに仕切る仕切部材53と、を備える構成とした。
この構成によれば、ロータ51及び内シリンダ52が互いに偏心した状態でそれぞれの軸線回りに回転することで、仕切部材53が曲率半径を拡大又は縮小させる方向に変形する。この場合、吸込室S1aが拡大するのに伴い圧縮室S1bが縮小する。したがって、吸込室S1a内に発生した負圧によって流入路63及び流入連通口52a,52bを通じて吸込室S1a内に気体冷媒を流入しつつ、圧縮室S1b内の気体冷媒を圧縮させることができる。そして、流出連通口52cと流出路64とが連通した時点で、圧縮室S1b内の気体冷媒を作動空間S1の外部に吐出することができる。
ここで、本実施形態では、互いに回転するロータ51及び内シリンダ52間の空間(作動空間S1)が仕切部材53によって仕切られている。この場合、内シリンダ52は、外周面が外シリンダ60の内周面上を摺動することで回転可能に支持される。また、仕切部材53は、ロータ51及び内シリンダ52間で動力伝達可能に構成されている。そのため、ベーンを利用した回転式圧縮機に比べて、摺動抵抗が常時、かつ局所的に作用する箇所の発生を抑制できる。したがって、耐久性や信頼性に優れた回転式圧縮機2を提供できる。
【0050】
本実施形態の回転式圧縮機2において、仕切部材53は弾性変形可能な構成とした。
この構成によれば、ロータ51及び内シリンダ52の回転に伴い、仕切部材53が伸長及び収縮変形し易くなる。これにより、回転式圧縮機2の動作信頼性を長期に亘って確保し易い。
【0051】
本実施形態の回転式圧縮機2において、流入路63(流入溝63c,63d)は、外シリンダ60の内周面に沿って円弧状に形成されている構成とした。
この構成によれば、内シリンダ52が1回転する過程において、吸込室S1aと流入溝63c,63dとが連通している区間(第1区間)を確保し易い。そのため、吸込室S1a及び圧縮室S1bの容積の変化量(圧縮比)を確保し易く、圧縮性能に優れた回転式圧縮機2を提供できる。
【0052】
本実施形態の回転式圧縮機2において、流出路64は、内シリンダ52のうち、軸方向において流入溝63c,63dと異なり、第2周方向において流入溝63c,63dと異なる位置に形成されている構成とした。
この構成によれば、例えば制御弁等を設けることなく、流入連通口52a,52b又は流出連通口52cを通じて流入路63及び流出路64間が短絡すること等を抑制できる。これにより、低コスト化を図った上で、信頼性に優れた回転式圧縮機2を提供できる。
【0053】
本実施形態の回転式圧縮機2は、仕切部材53のうち、第1側端部が内シリンダ52の内周面に固定され、第2側端部がロータ51の外周面に固定された状態で、電動機部32からの動力がロータ51に伝達される構成とした。
この構成によれば、仕切部材53の両端部がロータ51及び内シリンダ52それぞれに固定されるので、圧縮室S1bの圧力によって仕切部材53が変形して、圧縮室S1b及び吸込室S1a間が連通してしまうこと等を抑制できる。その結果、動作信頼性を確保し易い。その上で、内シリンダ52の内側に配置されたロータ51に対して電動機部32の動力を伝達することで、回転軸31とロータ51との連結構造を簡素化し易い。
【0054】
そして、本実施形態の冷凍サイクル装置1においては、上述した回転式圧縮機2を備えているため、耐久性及び信頼性に優れた冷凍サイクル装置1を提供できる。
【0055】
なお、本実施形態では、仕切部材53の両端部がロータ51及び内シリンダ52に各別に固定された構成について説明したが、この構成に限られない。仕切部材53は、作動空間S1を仕切り、かつロータ51及び内シリンダ52間の動力伝達が可能であって、少なくとも内シリンダ52に固定されていればよい。
上述した実施形態では、流入路63と流出路64とが、軸方向及び第1周方向で異なる位置に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。流入路63と流出路64とのレイアウトは適宜変更が可能である。
上述した実施形態では、駆動源として電動機部32を用いた場合について説明したが、この構成に限られない。駆動源としては、例えば内燃機関等であってもよい。この場合、内燃機関の動力は、クランクシャフト等を介してロータ51に伝達される。
【0056】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態に係る回転式圧縮機2において、
図3に対応する断面図である。
図15は、第2の実施形態に係る回転式圧縮機2において、
図2に対応する断面図である。第2の実施形態は、電動機部(駆動源)32の動力が内シリンダ(第1部材)152に伝達されるとともに、内シリンダ152の回転に伴いロータ(第2部材)151が回転する点で、第1の実施形態と相違している。第2の実施形態の各構成のうち、第1の実施形態に対応する構成については、適宜説明を省略する場合がある。
図14、
図15に示す回転式圧縮機2において、圧縮機構部33は、機構ハウジング50と、ロータ151と、内シリンダ152と、仕切部材(第1仕切部材153a及び第2仕切部材153b)と、を備えている。
【0057】
図16は、
図14のXVI-XVI線に対応する断面図である。
図17~
図19は、回転式圧縮機2の動作説明図であって、
図16に対応する断面図である。
図14、
図16に示すように、外シリンダ60の貫通孔60aは、軸線(シリンダ軸線)O1と同軸に形成されている。
外シリンダ60に形成された流入路63のうち、接続孔163bは、外シリンダ60の下面で開口している。流入路63のうち、流入溝163cは、外シリンダ60の下端部において、外シリンダ60の内周面及び下端面で開口するとともに、第1周方向の第1側から第2側に沿って延びる円弧状に形成されている。流入溝163cは、延在方向(第1周方向)の第2側端部において接続孔163bに接続されている。図示の例において、軸線O1を中心とした流入溝163cの中心角は、180°未満に設定されている。
【0058】
副軸受62において、副筒部74は、軸線O1に対して偏心した軸線O2上に配置されている。副フランジ部75は、副筒部74の上端部から第2径方向の外側に張り出している。副フランジ部75は、外シリンダ60の下面に重ね合わされた状態で、ビス等によって外シリンダ60に固定されている。
【0059】
ロータ151は、ロータ本体151aと、支持軸151bと、を備えている。
ロータ本体151aは、軸線O2と同軸に配置された円柱状に形成されている。ロータ本体151aは、貫通孔60aの内周面のうち、第1径方向の一方側(流出路64側)に位置する部分に接近した状態で配置されている。
支持軸151bは、ロータ本体151aから下方に向けて突出している。支持軸151bは、軸線O2と同軸に配置されている。支持軸151bは、副筒部74内に挿入されている。したがって、ロータ151は、軸線O2回りに回転可能に副軸受62に支持されている。
【0060】
内シリンダ152は、シリンダ本体152aと、頂壁152bと、連結軸152cと、を備えている。
シリンダ本体152aは、軸線O1と同軸に配置された筒状に形成されている。シリンダ本体152aには、複数の流入連通口(第1流入連通口152d及び第2流入連通口152e)と、複数の流出連通口(第1流出連通口152f及び第2流出連通口152g)と、が形成されている。
【0061】
流入連通口152d,152eは、シリンダ本体152aの下端部において第1径方向で向かい合う位置に形成されている。すなわち、第1流入連通口152d及び第2流入連通口152eは、第1周方向で等間隔に配置されている。
図16~
図19に示すように、各流入連通口152d,152eは、内シリンダ152の回転に伴い、第1径方向から見て流入溝163cと重なり合った状態(第1周方向で同位置に配置された状態)で、流入溝163cと連通する。一方、流入連通口152d,152eは、第1径方向から見て流入溝163cと重なり合わない状態で、外シリンダ60の内周面によって閉塞される。
【0062】
図20は、
図14のXX-XX線に対応する断面図である。
図21~
図23は、回転式圧縮機2の動作説明図であって、
図20に対応する断面図である。
図14、
図20に示すように、各流出連通口152f,152gは、シリンダ本体152aのうち各流入連通口152d,152eに対して第1周方向で異なる位置であって、軸方向で流入溝163cと異なる位置に形成されている。具体的に、第1流出連通口152fは、第1流入連通口152d及び第2流入連通口152e間のうち、第1流入連通口152d寄りに位置する部分に形成されている。第2流出連通口152gは、第1流入連通口152d及び第2流入連通口152e間のうち、第2流入連通口152e寄りに位置する部分に形成されている。第1流出連通口152f及び第2流出連通口152gは、第1径方向で向かい合っている。すなわち、第1流出連通口152f及び第2流出連通口152gは、第1周方向で等間隔に配置されている。
【0063】
図14、
図15に示すように、頂壁152bは、シリンダ本体152aの上端開口部を閉塞している。頂壁152bは、機構ハウジング50内において、ロータ本体151aを上方から支持している。
連結軸152cは、頂壁152bのうち軸線O1上に位置する部分から上方に突出している。連結軸152cは、主筒部71内に回転可能に支持されている。主筒部71内において、連結軸152cは回転軸31の下端部に連結されている。すなわち、内シリンダ52は、回転軸31の回転に伴い、軸線O1回りに回転可能に構成されている。
【0064】
図16、
図20に示すように、第1仕切部材153a及び第2仕切部材153bは、作動空間S10内において、ロータ本体151aを間に挟んで向かい合って配置されている。具体的に、各仕切部材153a,153bは、ロータ本体151aの周長に対して半分程度の長さで円弧状に延びている。各仕切部材153a,153bは、ロータ本体151aの周囲を全体に亘って取り囲んでいる。
【0065】
第1仕切部材153aの第1側端部は、シリンダ本体152aの内周面のうち第1流入連通口152d及び第1流出連通口152f間に位置する部分に固定されている。第1仕切部材153aの第2側端部は、ロータ本体151aの外周面に接触している。
第2仕切部材153bの第1側端部は、シリンダ本体152aの内周面のうち第2流入連通口152e及び第2流出連通口152g間に位置する部分に固定されている。第2仕切部材153bの第2側端部は、ロータ本体151aの外周面に接触している。各仕切部材153a,153bは、それぞれの第2側端部がロータ本体151aの外周面に接近する方向に付勢されている。本実施形態において、ロータ151は、内シリンダ152の回転に伴いロータ本体151aの外周面と仕切部材153a,153bとの間に作用する摩擦力によって軸線O2回りに回転(従動)する。なお、各仕切部材153a,153bのうち、第2側端部の曲率半径は、他の部分に比べて小さくなっていることが好ましい。これにより、ロータ本体151aの外周面と仕切部材153a,153bとの間に作用する摩擦力を確保し易い。
【0066】
作動空間S10は、第1仕切部材153aと第2仕切部材153bとによって第1周方向及び第1径方向に仕切られている。具体的に、作業空間S10は、ロータ151及び内シリンダ152の回転に伴い、第1吸込室S10a、第2吸込室S10b、第1圧縮室S10c及び第2圧縮室S10dに切り替えられる。
図16に示すように、第1吸込室S10aは、少なくとも第1流入連通口152dが開口する空間である。
図19に示すように、第2吸込室S10bは、少なくとも第2流入連通口152eが開口する空間である。
図16に示すように、第1圧縮室S10cは、少なくとも第1流出連通口152fが開口する空間である。
図19に示すように、第2圧縮室S10dは、少なくとも第2流出連通口152gが開口する空間である。なお、仕切部材153a,153bは、ロータ本体151aとシリンダ本体152aとが最も接近した位置(第1径方向から見て流出路64と重なり合う位置)を通過する際、ロータ本体151aの外周面とシリンダ本体152aの内周面とに密接した状態でロータ本体151aとシリンダ本体152aとに挟み込まれる。
【0067】
図16、
図20に示すように、第1流入連通口152dが流入溝163cにおける第1周方向の第1側端部で連通した状態において、第2流入連通口152e、第1流出連通口152f及び第2流出連通口152gはそれぞれ外シリンダ60の内周面によって閉塞されている(吸込開始位置)。この場合、作動空間S10のうち、第1流入連通口152dが開口する部分が第1吸込室S10aを形成し、第1流出連通口152fが開口する部分が第1圧縮室S10cを形成する。なお、
図16、
図20に示す例において、第1圧縮室S10cには第2流入連通口152eが開口しているものの、第2流入連通口152eは外シリンダ60の内周面によって閉塞されている。これにより、第1圧縮室S10cは密閉空間として維持される。
【0068】
この状態から、電動機部32の固定子35に電力が供給されると、回転軸31が回転子36とともに軸線O1回りの一方側に回転する。回転軸31の回転に伴い、内シリンダ152が軸線O1回りの一方側に回転する(
図16、
図20中矢印P2参照)。内シリンダ152が回転すると、内シリンダ152の回転力が仕切部材153a,153bを介してロータ本体151aの外周面に伝達される。これにより、内シリンダ152の軸線O1回りの一方側への回転に伴い、ロータ151が軸線O2回りの一方側に回転する。すなわち、ロータ151は、内シリンダ152の回転に同期して、内シリンダ152の回転方向と同一方向に回転する。
【0069】
図17、
図21に示すように、第1吸込開始位置からロータ151及び内シリンダ152が回転すると、第1仕切部材153aは曲率半径が拡大する方向に変形するとともに、第2仕切部材153bは曲率半径が縮小する方向に変形する。第1仕切部材153aの曲率半径が大きくなることで、第1吸込室S10aの容積が徐々に拡大する。その結果、第1吸込室S10a内に負圧が発生することで、第1吸込室S10a内に気体冷媒が取り込まれる。また、第1仕切部材153aの曲率半径が大きくなることで、第1圧縮室S10cの容積が徐々に縮小する。
【0070】
図18、
図22に示すように、ロータ151及び内シリンダ152がさらに回転することで、第1流入連通口152dが流入溝163cにおける第1周方向の第2側端部を通過する。これにより、第1流入連通口152dが外シリンダ60の内周面によって閉塞され、第1吸込室S10a内への気体冷媒の流入が遮断される。なお、
図18、
図22に示す例において、第1流入連通口152dが流入溝163cを通過した後、第1仕切部材153aはロータ本体151aとシリンダ本体152aとに挟み込まれる。これにより、第1圧縮室S10cと第2流入連通口152eとの連通が遮断される。
【0071】
その後、
図19、
図23に示すように、ロータ151及び内シリンダ152がさらに回転すると、第1流入連通口152dが外シリンダ60の内周面によって閉塞されたまま、第1流出連通口152fが流出路64(横孔64a)に連通する。これにより、第1圧縮室S10c内で圧縮された気体冷媒が流出路64及び吐出孔72aを通じて圧縮機構部33の外部に吐出される。
【0072】
一方、
図18、
図22に示すように、第1流入連通口152dが流入溝163cを通過した時点で、第2流入連通口152eは流入溝163cに連通する。この場合、作動空間S10のうち、第2流入連通口152eが開口する部分が第2吸込室S10bを形成し、第2流出連通口152gが開口する部分が第2圧縮室S10dを形成する。すなわち、作動空間S10のうち、第1流入連通口152d及び第2流出連通口152gが開口する空間は、第2吸込室S10bとの関係で第2圧縮室S10dとして機能し、第1圧縮室S10cとの関係で第1吸込室S10aとして機能する。
【0073】
この状態で、ロータ151及び内シリンダ152が回転することで、
図19、
図23及び
図16、
図20に示すように、第2吸込室S10b内に気体冷媒が取り込まれるとともに、第2圧縮室S10d内の気体冷媒が圧縮される。なお、
図16、
図20に示す例において、第2流入連通口152eが流入溝163cを通過した後、第1流入連通口152dが吸込開始位置に到達する。そのため、作動空間S10のうち、第2流入連通口152e及び第1流出連通口152fが開口する空間は、第1吸込室S10aとの関係で第1圧縮室S10cとして機能し、第2圧縮室S10dとの関係で第2吸込室S10bとして機能する。その後、さらにロータ151及び内シリンダ152が回転することで、第2流出連通口152gと流出路64とが連通する。その結果、第2圧縮室S10d内の気体冷媒が圧縮機構部33の外部に吐出される。
【0074】
このように、本実施形態では、作動空間S10が複数の吸込室S10a,S10c及び圧縮室S10b,S10dに区画されることで、ロータ151及び内シリンダ152が1回転する間に気体冷媒の吐出が複数回行われる。これにより、高圧の気体冷媒を安定して吐出することができ、動作信頼性を確保し易い。
【0075】
なお、本実施形態では、2つの仕切部材153a,153bを軸線O1回りに等間隔(回転対称)で配置した構成について説明したが、この構成に限られない。仕切部材は、3つ以上設けても構わない。仕切部材を3つ以上設けた場合であっても、作動空間内において各仕切部材を等間隔に設けることが好ましい。
【0076】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、耐久性や信頼性の向上を図ることができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1…冷凍サイクル装置、2…回転式圧縮機、4…膨張装置、5…蒸発器、32…電動機部(駆動源)、51…ロータ、52…内シリンダ、52a…上側流入連通口(流入連通口)、52b…下側流入連通口(流入連通口)、52c…流出連通口、53…仕切部材、60…外シリンダ、63…流入路、64…流出路、151…ロータ、152…内シリンダ、152d…第1流入連通口(流入連通口)、152e…第2流入連通口(流入連通口)、152f…第1流出連通口(流出連通口)、152g…第2流出連通口(流出連通口)、153a…第1仕切部材(仕切部材)、153b…第2仕切部材(仕切部材)、O1…軸線(ロータ軸線、シリンダ軸線)、O2…軸線(シリンダ軸線、ロータ軸線)、S1a…吸込室、S1b…圧縮室、S10a…第1吸込室(吸込室)、S10b…第2吸込室(吸込室)、S10c…第1圧縮室(圧縮室)、S10d…第2圧縮室(圧縮室)