(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160537
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】薄膜状粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20241107BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241107BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241107BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/02
A61K8/73
A61Q1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075647
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 有咲
(72)【発明者】
【氏名】森田 恭輔
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB152
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB431
4C083AB432
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC482
4C083AC662
4C083AC792
4C083AC862
4C083AD022
4C083AD072
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD262
4C083BB11
4C083BB25
4C083CC01
4C083CC12
4C083CC14
4C083EE07
4C083FF04
4C083FF06
(57)【要約】
【課題】薄膜状粉末化粧料において、衝撃に対しても媒体から脱落しにくく、化粧料のトレが良好で、凝集物が少ない、薄膜状粉末化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)~(D);(A)板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体、(B)板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体(ただし、成分(A)を除く)、(C)デキストリン脂肪酸エステル、(D)25℃で液状の不揮発性油剤を含む、薄膜状粉末化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体、
(B)板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体(ただし、成分(A)を除く)、
(C)デキストリン脂肪酸エステル、
(D)25℃で液状の不揮発性油剤
を含む、薄膜状粉末化粧料。
【請求項2】
前記成分(C)に対する前記成分(A)の含有質量比(A)/(C)が5~100である、請求項1に記載の薄膜状粉末化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量比(A)/(B)が0.3~2.5である、請求項1または2に記載の薄膜状粉末化粧料。
【請求項4】
前記成分(A)における板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の薄膜状粉末化粧料。
【請求項5】
前記成分(B)における板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の薄膜状粉末化粧料。
【請求項6】
前記成分(D)の含有量が化粧料に対して10質量%を超える、請求項1または2に記載の薄膜状粉末化粧料。
【請求項7】
前記成分(A)がジメチコノールおよびアミノプロピルトリエトキシシランの架橋生成物で表面処理されてなる粉体を含む、請求項1または2に記載の薄膜状粉末化粧料。
【請求項8】
前記成分(C)がイソステアリン酸デキストリンを含む、請求項1または2に記載の薄膜状粉末化粧料。
【請求項9】
前記成分(C)がイソステアリン酸デキストリンを含む、請求項7に記載の薄膜状粉末化粧料。
【請求項10】
請求項1または2に記載の薄膜状粉末化粧料が媒体に担持されてなる、化粧品。
【請求項11】
次の成分(A)~(D);
(A)板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体、
(B)板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体(ただし、成分(A)を除く)、
(C)デキストリン脂肪酸エステル、
(D)25℃で液状の不揮発性油剤
を含む化粧料基剤と、溶媒と、を混合した混合物を用いて媒体に薄膜を形成することを有する、化粧品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜状粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション、アイカラー、パウダーアイブロウ等の固形粉末化粧料は、通常金皿等の容器に粉末が充填されて圧縮成形される。一方で、試供品サンプルや携帯用などの目的で、プラスチックフィルムや厚紙といったシート状媒体(基材)上に粉末含有化粧料基剤を固形化して薄膜状の化粧料を形成する形態がある。
【0003】
このような形態においては、粉末含有化粧料基剤を溶媒に分散させてスラリー状態とし、当該スラリーを紙などのシート状媒体に塗布などの方法により成膜する。このため、シート状媒体への成膜性が重要な品質項目となる。
【0004】
例えば、特許文献1では、ノニオン性界面活性剤および粉末成分を含む粉末化粧料基剤を精製水に分散した塗工液を紙基材に塗布し、紙状化粧料とすることが記載されている。当該紙状化粧料によれば、紙基材に均一に化粧料が塗布されるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように紙基材などの媒体に化粧料が適切に付着(固着)して強固な膜を形成する必要がある。化粧品は、輸送時などに衝撃を受けることが多く、膜が強固でない場合、衝撃を受けた際に、媒体から化粧料が部分的に欠落する場合がある。
【0007】
一方で、固形粉末化粧料においては、指や塗布具(例えば、マット)を用いて使用者の肌へ化粧料を塗布するが、この際化粧料のトレが適量であること(指や塗布具などに化粧料が適量付着すること)が重要な項目となる。
【0008】
しかしながら、媒体への付着性を高め、形成される薄膜を強固にすればするほど、化粧料は媒体からとれにくくなる、すなわち、媒体への付着性と化粧料のトレとはトレードオフの関係にあり、両立させることが困難である。
【0009】
さらには、粉末化粧料は、粉末の配合量が多く、特に粉体を溶媒に分散させて薄膜を形成させる場合には、粉体の凝集体が生成しやすい。粉体の凝集体は肌に伸ばした際にも崩れにくく、化粧膜を形成しにくいため、化粧効果を減ずる原因にもなる。
【0010】
そこで本発明は、薄膜状粉末化粧料において、衝撃に対しても媒体から化粧料が脱落しにくく、化粧料のトレが良好で、凝集体が少ない、薄膜状粉末化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成を有する。
1.次の成分(A)~(D);
(A)板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体、
(B)板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体(ただし、成分(A)を除く)、
(C)デキストリン脂肪酸エステル、
(D)25℃で液状の不揮発性油剤
を含む、薄膜状粉末化粧料。
2.前記成分(C)に対する前記成分(A)の含有質量比(A)/(C)が5~100である、1.に記載の薄膜状粉末化粧料。
3.前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量比(A)/(B)が0.3~2.5である、1.または2.に記載の薄膜状粉末化粧料。
4.前記成分(A)における板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種を含む、1.~3.のいずれかに記載の薄膜状粉末化粧料。
5.前記成分(B)における板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種を含む、1.~4.のいずれかに記載の薄膜状粉末化粧料。
6.前記成分(D)の含有量が化粧料に対して10質量%を超える、1.~5.のいずれかに記載の薄膜状粉末化粧料。
7.前記成分(A)がジメチコノールおよびアミノプロピルトリエトキシシランの架橋生成物で表面処理されてなる粉体を含む、1.~6.のいずれかに記載の薄膜状粉末化粧料。
8.前記成分(C)がイソステアリン酸デキストリンを含む、1.~7.のいずれかに記載の薄膜状粉末化粧料。
9.1.~8.のいずれかに記載の薄膜状粉末化粧料が媒体に担持されてなる、化粧品。
10.次の成分(A)~(D);
(A)板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体、
(B)板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体(ただし、成分(A)を除く)、
(C)デキストリン脂肪酸エステル、
(D)25℃で液状の不揮発性油剤
を含む、化粧料基剤と溶媒とを混合した混合物を用いて媒体に薄膜を形成することを有する、化粧品の製造方法。
11.前記成分(C)に対する前記成分(A)の含有質量比(A)/(C)が5~100である、10.に記載の化粧品の製造方法。
12.前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量比(A)/(B)が0.3~2.5である、10.または11.に記載の化粧品の製造方法。
13.前記成分(A)における板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種を含む、10.~12.のいずれかに記載の化粧品の製造方法。
14.前記成分(B)における板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種を含む、10.~13.のいずれかに記載の化粧品の製造方法。
15.前記成分(D)の含有量が化粧料基剤に対して10質量%を超える、10.~14.のいずれかに記載の化粧品の製造方法。
16.前記成分(A)がジメチコノールおよびアミノプロピルトリエトキシシランで表面処理されてなる粉体を含む、10.~15.のいずれかに記載の化粧品の製造方法。
17.前記成分(C)がイソステアリン酸デキストリンを含む、10.~16.のいずれかに記載の化粧品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の薄膜状粉末化粧料によれば、衝撃に対しても媒体から脱落しにくく、欠けや粉チリが少なく、塗布具や指への化粧料の付着量が適量で(化粧料のトレが良好で)、化粧料中の凝集体が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で行う。
【0014】
本発明の第一実施形態は、次の成分(A)~(D);
(A)板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体、
(B)板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体(ただし、成分(A)を除く)、
(C)デキストリン脂肪酸エステル、
(D)25℃で液状の不揮発性油剤
を含む、薄膜状粉末化粧料である。
【0015】
上記構成の薄膜状粉末化粧料により、衝撃に対しても媒体から脱落しにくく(媒体への付着性が高く)、化粧料のトレが良好で、凝集体が少ない薄膜状粉末化粧料となる。
【0016】
上記構成の薄膜状粉末化粧料が、上記効果を奏するメカニズムは以下のように推察される。
【0017】
薄膜状粉末化粧料は、溶媒に分散させた化粧料基剤を媒体に塗布するなどして当該基剤を(シート状)媒体に付着させ、溶媒が揮発することで、媒体上に薄膜状の化粧料が担持される。化粧料では、塗布時に肌に均一に並ぶためフィットしやすく、またなめらかな使用感から板状粉体が汎用されるが、板状粉体はその形状から媒体上に保持させる際に層のように重なり合うため、衝撃を受けると塊となって剥離しやすい。本発明者らが種々の検討をした結果、成分(A)のように板状粉体をアミノ変性シリコーンで処理した粉体と、成分(C)デキストリン脂肪酸エステルと、を組み合わせると、媒体への付着性が良好となることを見出した。これは、成分(A)と成分(C)とが、一体化しやすく、媒体上で強固な化粧膜を形成し、衝撃が加わっても化粧料が媒体上に留まることができるためであると考えられる。この際、成分(B)を組み合わせることで、成分(A)と成分(C)との結びつきが強くなりすぎ、化粧料のトレが悪化したり、凝集体が生成することを緩和するものと考えられる。また、成分(D)により、成分(A)、(B)および(C)の分散性を向上し、各成分が効果的にその効果を発現させることができるため、成分(D)の配合によりすべての効果が向上するものと考えられる。
【0018】
なお、本発明における粉末化粧料とは、粉体(粉末、粒子)を主成分として構成される化粧料である。なお、ここで主成分とは、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であることを指す。すなわち、本実施形態においては、成分(A)、成分(B)およびその他の粉体を含めた粉体(表面処理粉体を含む)の合計量が、化粧料に対して50質量%以上(上限は化粧料全量から成分(C)、成分(D)の含有量を除いた質量%)であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは、70~99質量%、さらにより好ましくは70~85質量%である。
【0019】
薄膜状粉末化粧料における薄膜状とは、媒体上で略均一な厚みで固体状に形成された膜を指す。この際、化粧料厚みとしては、例えば2mm以下であり、1mm以下であってもよく、800μm以下であることが好ましく、50~500μmであってもよい。
【0020】
以下、薄膜状粉末化粧料を単に化粧料とも称する。
【0021】
本実施形態を構成する各成分について以下説明する。
【0022】
(成分(A):板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体)
成分(A)は、板状粉体を母体とし、当該母体をアミノ変性シリコーンで表面処理した粉体である。
【0023】
ここで、板状粉体とは、平均粒子径が平均厚みよりも大きい粉体を指し、具体的にはアスペクト比が3以上であることが好ましい。アスペクト比は、平均粒子径と粒子の平均厚さとの比により計算されるものであり、アスペクト比=(平均粒子径/平均厚さ)で定義される。平均粒子径は、卓上走査型電子顕微鏡(proX PREMIUM、ジャスコインタナショナル社製)を用いて、加速電圧5~15kV、拡大率1000~25000倍にて100個の粒子を測定した画像データから算出することができる。また、板状粉体の粒子径は長径(最大径)を用いる。厚さは、原子間力顕微鏡により基準面との差を測定し、相加平均したものを平均厚さとする。板状粉体の平面形状は、矩形、円形、不定形等いずれであってもよい。また、板状粉体には、板状の他、薄片状、鱗片状等と称される形状の粉体も含まれる。
【0024】
板状粉体であることで、媒体からの化粧料のトレが良好となり、また、化粧料を肌に塗布した際になめらかな使用感となる。一方で、板状粉体を配合すると、衝撃によって媒体から化粧料が塊として欠落しやすい傾向にあるが、本実施形態の構成によれば、板状粉体を含有することによるなめらかな使用感を維持したまま、媒体への付着性を向上させることができる。
【0025】
板状粉体としては、具体的にはマイカ、セリサイト、タルク、板状硫酸バリウム、板状硫酸カルシウム、合成フルオロフロゴパイト、ホウケイ酸(Ca/Al)、ホウケイ酸(Ca/Na)、(PET/ポリメタクリル酸メチル)ラミネート、(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)等の無機板状粉体、およびこれらの板状粉体に被覆処理を施した複合粉体(酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)、酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Na)、二酸化珪素・酸化チタン被覆マイカ、二酸化珪素・酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Na)など)が挙げられる。
【0026】
中でも、媒体からのトレや耐衝撃性の点から、成分(A)における板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種以上を含むことが好ましい。ここで、板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種以上を含むとは、マイカ、セリサイト、タルク、または合成フルオロフロゴパイトに被覆処理を施した複合粉体を含んでいてもよい。好ましくは、マイカ、セリサイト、タルク、または合成フルオロフロゴパイトは(2種以上の粉体を含む)複合粉体ではない。
【0027】
成分(A)の平均粒子径は、媒体からのトレの点で、3μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが好ましい。なお、成分(A)の平均粒子径の上限は特に限定されるものではないが、通常1000μm以下であり、500μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、50μm未満であってもよく、25μm以下であってもよい。
【0028】
成分(A)は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0029】
成分(A)の含有量は、化粧料に対して、本発明の効果の観点から、1~30質量%であることが好ましく、1~25質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることがさらにより好ましい。
【0030】
表面処理剤であるアミノ変性シリコーンは、アミノ基又はアンモニウム基を有しているシリコーン化合物であることが好ましい。アミノ変性シリコーンは、液状、固形状等のいずれの形状であってもよく、また、架橋構造の有無を問わない。これらの中でも、耐衝撃性により優れる等の観点から、架橋構造を有するアミノ変性シリコーンを用いることが好ましく、表面処理剤であるアミノ変性シリコーンは、ジメチコノールおよび3-アミノプロピルトリエトキシシランの架橋生成物を用いることが好ましい。
【0031】
〔架橋構造を有さないアミノ変性シリコーン〕
架橋構造を有さないアミノ変性シリコーンとして、特に限定されず、末端水酸基の全て又は一部がメチル基等で封鎖されたアミノ変性シリコーンオイル、末端が封鎖されていないアモジメチコンのどちらでもよい。媒体への付着性の観点からは、架橋構造を有さないアミノ変性シリコーン表面処理粉体としては、アモジメチコン表面処理であることが好ましい。
【0032】
架橋構造を有さないアミノ変性シリコーンとして、例えば、以下の一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0033】
【0034】
〔式(1)中、Rは、それぞれ独立して、水酸基、水素原子又はRaを示し、Raは、置換又は非置換の炭素数1~20の一価炭化水素基を示し、好ましくはRはメチル基であり、XはRa、-Q-NH(CH2)nNH2-ORa又は水酸基を示し、好ましくはRaはメチル基または水酸基であり、Qは炭素数1~8の二価炭化水素基を示し、好ましくはプロピレン基、イソプロピレン基、またはイソブチレン基を示す。nは1~5の数を示し、好ましくは2である。p及びqはその和が数平均で2以上2000未満であることが好ましく、より好ましくは20以上2000未満、更に好ましくは30以上1000未満となる数を示す。〕
【0035】
式(1)で表されるアミノ変性シリコーンは、アモジメチコンであることが好ましい。
【0036】
上記アミノ変性シリコーンの官能基当量は、好ましくは200g/mol~3万g/mol、更に好ましくは500g/mol~1万g/mol、更に好ましくは600g/mol~5000g/molである。
【0037】
ここで、官能基当量とは、アミノ基又はアンモニウム基1個当たりのシロキサン骨格の質量を意味している。表記単位のg/molはアミノ基又はアンモニウム基1mol当たりに換算した値である。従って、官能基当量の値が小さいほど分子内でのアミノ基又はアンモニウム基の比率が高いことを示している。
【0038】
アミノ変性シリコーンの好適な市販品の具体例としては、SF8451C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,粘度600mm2/s,官能基当量1700g/mol)、SF8452C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,粘度700mm2/s,官能基当量6400g/mol)、SF8457C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,粘度1200mm2/s,官能基当量1800g/mol)、KF8003(信越化学工業社製,粘度1850mm2/s,官能基当量2000g/mol)、KF8004(信越化学工業社製,粘度800mm2/s,アミノ当量1500g/mol)、KF867S(信越化学工業社製,粘度1300mm2/s,官能基当量1700g/mol)、XF42-B8922(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製,粘度70000mm2/s,官能基当量13000g/mol)等のアミノ変性シリコーンオイルや、SM8704C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,官能基当量1800g/mol)等のアモジメチコーンエマルションが挙げられる。
【0039】
上記アミノ変性シリコーンは、特に限定されないが、粉体が均一に被覆され、化粧膜の均一性が得られるという観点から、100~3000mm2/s(25℃)の範囲の動粘度を有するものであることがより好ましい。これは、エマルションの形で使用してもよい。このアミノ変性シリコーンのエマルションは、例えば、アミノ変性シリコーンと溶媒を高剪断で機械混合したものや、アミノ変性シリコーンを水及び乳化剤で乳化したもの、若しくはこれらの組み合わせによって、又は乳化重合によっても調製することができる。
【0040】
〔架橋構造を有するアミノ変性シリコーン〕
架橋構造を有するアミノ変性シリコーンとしては、特に限定されないが、例えば、両末端反応性ジオルガノポリシロキサンおよびアミノシランの架橋生成物が挙げられ、より具体的には、ジメチコノールおよびアミノシランの架橋生成物が挙げられる。なお、以下、ジメチコノールおよびアミノシランの架橋生成物での表面処理を、単にジメチコノールおよびアミノシラン処理等とも記載する場合がある。
【0041】
両末端反応性ジオルガノポリシロキサンとは、リニアなジオルガノポリシロキサン骨格の両末端に反応性基(例えば、水酸基)を有する両末端反応性ジオルガノポリシロキサンを指し、好ましくは下記式(2)で表される構造を有する。
【0042】
【0043】
R1は水酸基であり、R2は、それぞれ独立して非置換または置換の炭素数1~20の炭化水素基であり、Lは3~10,000である。
【0044】
R2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基;及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子及び/又はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基等が挙げられる。
【0045】
両末端反応性ジオルガノポリシロキサンはジメチコノールであることが好ましい。
【0046】
両末端反応性ジオルガノポリシロキサンの分子量は、300~200,000であることが好ましい。両末端反応性ジオルガノポリシロキサンとしてはオイルの形態の物や、他のシリコーンオイルとの希釈物、または、水との乳化物からなるエマルジョンがある。エマルジョンは両末端反応性ジオルガノポリシロキサンのオイルを機械乳化して得られたものと、低分子シロキサンを出発原料として乳化重合により得られたものとがある。エマルジョン化する時の乳化剤が安全性の高いものであれば、いずれのタイプのエマルジョンを用いても構わない。エマルジョンの製造方法としては、特開2016-145213号公報に記載の方法などを用いることができる。例えば、式(2)の両末端反応性ジオルガノポリシロキサンの水エマルジョンを調製する方法としては、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの低分子環状シロキサンを出発原料として乳化重合する方法やオイル状の両末端反応性ジオルガノポリシロキサンと界面活性剤、水を少なくとも含有する系を乳化混合装置により機械乳化する方法が例示される。
【0047】
アミノシランとしては、(アミノアルキル)アルコキシシランが好ましく、例えば、下記式(3)または(4)で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【0049】
一般式(3)または(4)中、R3、およびR5は、それぞれ独立してアミノ基で置換された炭素数1~10(好ましくは1~8、より好ましくは1~6、特に好ましくは2~3)のアルキル基であり、R4、およびR7は、それぞれ独立して、炭素数1~10(好ましくは1~8、より好ましくは1~4、特に好ましくは1~2)のアルキル基であり、R6は、炭素数1~10(好ましくは1~8、より好ましくは1~4、特に好ましくは1~3)のアルキレン基である。R3、およびR5におけるアミノ基の置換数は1~3であることが好ましく、1である(アミノアルキル基である)ことがより好ましい。複数のR3~R7は、それぞれ同じであってもよいし、異なる置換基であってもよい。また、一般式(3)または(4)中、nおよびmは1~4の整数を表す。nおよびmは2または3であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0050】
(アミノアルキル)アルコキシシランとしては、具体的には、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。反応副生物の安全性の観点で3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0051】
ジメチコノールおよびアミノシランの架橋生成物は、シリコーンゲルであることが好ましい。シリコーンゲルとはゴム弾性つまりゴム硬度を有しないジオルガノポリシロキサンの微3次元架橋構造を有する重合体である。具体的には、前記式(2)の両末端反応性ジオルガノポリシロキサンが水サスペンションまたは水エマルジョンの形態にあるものを出発原料としてアミノシランと反応させたシリコーンゲルである。
【0052】
ジメチコノールおよびアミノシランの架橋生成物処理粉体におけるジメチコノールおよびアミノシランの架橋生成物含有量は、ジメチコノールおよびアミノシランの架橋生成物処理粉体に対して0.01~30質量%が好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。なお、架橋生成物の含有量は、架橋生成物処理粉体の製造時の架橋生成物の処理量とほぼ一致する。
【0053】
ジメチコノールおよびアミノシランの架橋生成物の製造方法は、公知の手法を用いることができ、例えば、特開2016-145213号公報に記載の方法が挙げられる。具体的には、ジメチコノールのエマルジョン、好適には水エマルジョンと、アミノシランとを反応させることで得ることができる。反応の際には、触媒を用いてもよい。ジメチコノールおよびアミノシランの含有比率は、架橋生成物がシリコーンゲル形状である場合には、例えば、ジメチコノール:アミノシラン=100:0.1~100:35(質量比)であり、100:5~100:25(質量比)である。
【0054】
この際、シリコーンゲルを製造してから、被処理粉体の表面処理を行ってもよいし、被処理粉体の存在下で、ジメチコノールおよびアミノシランを混合し、加水分解・縮合反応を行うことで、シリコーンゲルを粉体粒子表面に析出させた後、加熱することで粒子表面に架橋生成物を固着する方法であってもよい。加水分解・縮合反応の際には水性溶媒を用いることが好ましく、水性溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコールおよびこれらの混合溶媒が挙げられる。好ましくは、水性溶媒は水である。また、加水分解・縮合反応の際の温度は、例えば、5~60℃であることが好ましく、15~30℃であることがより好ましい。また、加水分解・縮合反応後の加熱における加熱条件は適宜設定されるが、例えば、100~180℃で3時間以上である。また、被処理粉体と、架橋生成物との混合質量比は、例えば、被処理粉体:架橋生成物=99.99~0.01~70:30であり、99:1~90:10である。
【0055】
成分(A)のアミノ変性シリコーン処理粉体の市販品としては、例えば、アモジメチコン処理として、マイカ Y-2300WA3(ヤマグチマイカ社製)、EX-15WA3(母体:マイカ)(ヤマグチマイカ社製);ジメチコノールおよびアミノプロピルトリエトキシシラン(の架橋生成物)処理として、SE-TA-13、SE-TA-46、SE-TA-68、SE-TA-EX(母体:タルク)(三好化成社製)、SE-MA-23(母体:マイカ)(三好化成社製)、SE-S-100S(母体:セリサイト)(三好化成社製)等が挙げられる。
【0056】
(成分(B):板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体)
成分(B)は、板状粉体を母体とし、当該母体をアミノ変性シリコーン以外のシリコーンで表面処理した粉体である。
【0057】
板状粉体であることで、媒体からの化粧料のトレが良好となり、また、化粧料を肌に塗布した際になめらかな使用感となる。一方で、板状粉体は、衝撃によって媒体から塊として剥離しやすい傾向にあるが、本実施形態の構成によれば、板状粉体を含有することによるなめらかな使用感を維持したまま、媒体への付着性を向上させることができる。
【0058】
板状粉体としては、具体的にはマイカ、セリサイト、タルク、合成フルオロフロゴパイト、板状硫酸バリウム、板状硫酸カルシウム、ホウケイ酸(Ca/Al)、ホウケイ酸(Ca/Na)、(PET/ポリメタクリル酸メチル)ラミネート、(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)等の無機板状粉体、およびこれらの板状粉体に被覆処理を施した複合粉体(酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)、酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Na)、酸化チタン被覆ガラス末、二酸化珪素・酸化チタン被覆マイカ、二酸化珪素・酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Na)など)などが挙げられる。
【0059】
中でも、媒体からのトレや耐衝撃性の点から、成分(B)における板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種以上を含むことが好ましい。ここで、板状粉体が、マイカ、セリサイト、タルク、および合成フルオロフロゴパイトからなる群から選択される少なくとも一種以上を含むとは、マイカ、セリサイト、タルク、または合成フルオロフロゴパイトに被覆処理を施した複合粉体を含んでいてもよい。好ましくは、マイカ、セリサイト、タルク、または合成フルオロフロゴパイトは(2種以上の粉体を含む)複合粉体ではない。
【0060】
成分(B)の平均粒子径は、媒体からのトレの点で、3μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが好ましい。なお、成分(B)の平均粒子径は、卓上走査型電子顕微鏡(proX PREMIUM、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、加速電圧5~15kV、拡大率1000~25000倍にて100個の粒子を測定した画像データから算出することができる。また、成分(B)の粒子径は長径(最大径)を用いる。なお、成分(B)の平均粒子径の上限は特に限定されるものではないが、通常1000μm以下であり、500μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、50μm未満であってもよく、25μm以下であってもよい。
【0061】
成分(B)は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0062】
成分(B)の含有量は、化粧料に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらにより好ましい。
【0063】
成分(B)に対する成分(A)の含有質量比(A)/(B)(以下単に(A)/(B)とも称する)は、本発明の効果の点から、0.1~3であることが好ましく、媒体からの化粧料のトレの点から、0.3~2.5であることがより好ましい。また、(A)/(B)は、媒体からの脱落抑制の点から、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であってもよい。また、(A)/(B)は、凝集物の生成抑制の点から、2.3以下であることが好ましく、2.0以下であってもよい。また、この際、成分(A)および成分(B)の合計量は、10~30質量%であることが好ましく、凝集物の生成抑制の点から、15~25質量%であることがより好ましい。本発明の好適な態様は、(A)/(B)が0.1~3であり、成分(A)および成分(B)の合計量は、10~30質量%である;(A)/(B)が0.1~3であり、成分(A)および成分(B)の合計量は、15~25質量%である;(A)/(B)が0.3~2.5であり、成分(A)および成分(B)の合計量は、10~30質量%である;(A)/(B)が0.3~2.5であり、成分(A)および成分(B)の合計量は、15~25質量%である。
【0064】
表面処理剤であるシリコーン処理剤としては、通常化粧料に用いられるものであれば、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルハイドロジェンポリシロキサン(ハイドロゲンジメチコン、メチコン)、高粘度シリコーン、架橋型シリコーン、フェニル変性シリコーン、アクリルーシリコーングラフト共重合体、アルキルシラン、シリコーン樹脂等が挙げられ、その1種又は2種以上用いることができる。
【0065】
具体的には、INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)で表すと、ジメチコン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、(アクリレーツ/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、トリエトキシカプリリルシランが挙げられ、これらの1種又は2種以上用いることができる。中でも、凝集物の生成抑制の観点からは、表面処理剤であるシリコーン処理剤としては、ジメチコン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、およびジフェニルジメチコンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ジメチコン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、およびジフェニルシロキシフェニルトリメチコンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0066】
また、成分(B)のシリコーン処理の処理剤の量は、処理剤の種類やその組み合わせ及び母体粉体の種類によっても異なるが、シリコーン処理をした粉体に対して処理剤は0.5~30質量%が好ましく、更に1~25質量%が好ましい。
【0067】
そして、シリコーン処理する方法も、特に限定されず、通常公知の方法、例えば、溶媒を用いた湿式法、気相中で処理する乾式法等を用いることができる。例えば、処理剤と、イソプロピルアルコール等の揮発性有機溶媒の混合溶液を母体粉体に添加し、ヘンシェルミキサー等の混合機で均一に攪拌し、加熱工程で溶媒除去することにより得ることができる。
【0068】
(成分(C):デキストリン脂肪酸エステル)
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンと脂肪酸とのエステルである。
【0069】
デキストリンは、グルコース平均重合度が3~150であるのが好ましく、さらに10~100であるのがより好ましい。デキストリンの糖鎖は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0070】
デキストリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、炭素数4~26の脂肪酸であることが好ましく、さらに、炭素数4~26の直鎖または分岐鎖を有する飽和脂肪酸であることがより好ましい。
【0071】
炭素数4~26の分岐飽和脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、2-エチル酪酸、エチルメチル酢酸、イソヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸(2-ヘキシルデカン酸)、イソステアリン酸、イソアラキン酸、イソヘキサコサン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜選択又は組み合わせて使用することができる。これらのうち、炭素数8~24のものがより好ましい。
【0072】
また、炭素数2~22の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜、選択又は組み合わせて使用することができる。これらの中でも、炭素数8~22のものが好ましく、特に炭素数12~22のものが好ましい。
【0073】
デキストリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン、(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリン、イソステアリン酸デキストリン等が挙げられる。これらのデキストリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、千葉製粉社製の「レオパールKL2」「レオパールKS2」「レオパールTT2」「レオパールTL2」「レオパールMKL2」「レオパールWX」「ユニフィルマHVY」等が挙げられる。
【0074】
このうち、媒体からの脱落抑制が一層向上することから、成分(C)がイソステアリン酸デキストリンであることが最も好ましい。イソステアリン酸とは、分岐したステアリン酸の1種又は2種以上の混合物を意味する。例えば5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-オクタン酸は、イソブチレン2量体のオキソ反応により炭素数9の分岐アルデヒドとし、次いでこのアルデヒドのアルドール縮合により炭素数18の分岐不飽和アルデヒドとし、次いで水素添加、酸化することにより製造することができ(以下「アルドール縮合型」と略す)、これは例えば日産化学工業株式会社より市販されている。2-ヘプチルウンデカン酸はノニルアルコールをガーベット反応(Guerbet reaction)に付し、次いで酸化することにより製造することができ、これは例えば三菱化成株式会社より市販されており、分岐位置の若干異なる類似混合物として、日産化学工業株式会社より市販され、さらに出発アルコールが直鎖飽和ではない2箇所メチル分岐したタイプも同様に日産化学工業株式会社より市販されている(以下総じて「ガーベット反応型」と略す)。また、メチル分岐イソステアリン酸は、例えばオレイン酸のダイマー製造時の副産物として得られるもので〔例えばJ.Amer.Oil Chem.Soc.,51,522(1974)に記載〕、例えば米国エメリー社などから市販されていたものがあげられる(以下「エメリー型」と略す)。エメリー型イソステアリン酸の出発物質であるダイマー酸のさらに出発物質は、オレイン酸だけでなく、リノール酸、リノレン酸等も含まれる場合がある。
【0075】
デキストリン脂肪酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0076】
成分(C)の含有量は、例えば、化粧料中0.005~10質量%であり、好ましくは0.01~5質量%であり、より好ましくは0.05~3質量%である。この範囲であれば、本願発明の効果が発揮されやすい。
【0077】
成分(C)に対する成分(A)の含有質量比(A)/(C)は、1~200であることが好ましく、媒体からの化粧料のトレ、媒体からの脱落抑制の点から、5~100であることがより好ましく、媒体からの化粧料のトレ、凝集抑制の点から、5を超え80以下であることがさらに好ましく、8~80であることがさらにより好ましい。
【0078】
(成分(D):25℃で液状の不揮発性油剤)
本明細書において、油剤とは、水に不溶(難溶性)の油溶性化合物を指し、例えば、水への溶解度(1013.25hPa、20℃)が2g/100gH2O未満の物質を指す。「25℃で液状の不揮発性油剤」における液状とは、25℃において流動性を有することを指し、例えば、25℃における粘度として20000mPa・s以下であることを指す。また、不揮発性油剤とは、例えば、常圧での沸点が260℃以上である油剤である。なお、ここでいう油剤とは、単独で化粧料中に配合されるものを指し、表面処理剤としての油剤はここに含まれない。なお、下記記載のように、媒体への成膜の際に揮発性成分は揮発させるため、化粧料中には揮発性油剤を含まないことが好ましい。
【0079】
本発明における25℃で液状の不揮発性油剤は、化粧料に通常使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、流動パラフィン(ミネラルオイル)、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油類、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、オクチルドデカノール、テトラデシルデカノール等の高級アルコール類、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ブチル、イソステアリン酸デシル、イソステアリン酸ラウリル、イソデカン酸イソデシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコ-ル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、セバシン酸ジエチル、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸エチル、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(フィトステリル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(コレステリル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-サルコシン-イソプロピル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル等のエステル油類、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、アルコキシ変性ポリシロキサン等のシリコーン油類等が挙げられる。
【0080】
中でも、成分(D)として、炭化水素類および/またはエステル油類を含むことが好ましい。成分(D)における炭化水素類および/またはエステル油類の含有量は、媒体への化粧料の保持性、化粧料のトレの観点から、50質量%を超える(上限100質量%)ことが好ましく、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上であってもよい。
【0081】
成分(D)は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0082】
成分(D)の含有量は、特に限定されるものではないが、効果発現の観点から、5質量%を超えることが好ましく、媒体からの脱落抑制の観点から、10質量%を超えることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、成分(D)の含有量は、化粧効果の観点から、化粧料に対して、30質量%以下であることが好ましく、凝集体の生成抑制の観点からは、25質量%以下であることがより好ましい。成分(D)の含有量は、化粧料中、5質量%を超え、30質量%以下であることが好ましく、10質量%を超え、25質量%以下であることがより好ましく、15~25質量%であることがさらに好ましい。
【0083】
なお、成分(D)は、油剤(液状油、半固形油、固形油)中、凝集物生成抑制、化粧料のトレの観点から、80質量%以上(上限100質量%)であることが好ましく、90質量%を超えることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく。98質量%以上であることがさらにより好ましい。換言すれば、半固形油および/または固形油(液状油以外の油剤)の含有量は、油剤(液状油、半固形油、固形油)中、20質量%以下(下限0質量%)であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0084】
(その他の粉体)
本実施形態の薄膜状粉末化粧料は、感触調整などの観点から、成分(A)および成分(B)以外の粉体を含んでいてもよい。
【0085】
粉体としては、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、有色顔料類、複合粉体類、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末などが挙げられる。
【0086】
無機粉体類としては、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化クロム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母(マイカ)、合成雲母、セリサイト、合成セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化ホウ素、シリカなどが挙げられる。
【0087】
光輝性粉体類としては、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン(酸化チタン被覆雲母)、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、二酸化珪素・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄酸化チタン被覆ガラス末、アルミニウムパウダーなどが挙げられる。
【0088】
有機粉体類としては、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸粉体、N-アシルリジン、ナイロン、ポリメチルシルセスキオキサン、架橋型オルガノポリシロキサン重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチルなどのポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチルとポリイソプレンの複合体、ポリアクリル酸エステル、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。架橋型オルガノポリシロキサン重合体としては、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーなどの部分架橋型メチルポリシロキサン、(ジメチコン/フェニルジメチコン)クロスポリマーなどの部分架橋型メチルフェニルポリシロキサン、ジメチコンコポリオールクロスポリマーなどの部分架橋型ポリエーテル変性シリコーン、部分架橋型アルキル変性シリコーン、例えば、INCI名称で、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー等が挙げられる。なお、架橋型オルガノポリシロキサン重合体は、架橋型オルガノポリシロキサン重合体と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で化粧料に含有させてもよい。このようなシリコーンゲルは市販品を使用することができ、例えば、KSG-18A、KSG-16、KSG-15AP(以上、信越シリコーン社製)、エラストマーブレンドDC9045(東レ・ダウコーニング社製)などを挙げることができる。
【0089】
有色顔料類としては、チタン酸鉄等の無機赤色顔料、無機褐色系顔料、黄土等の無機黄色系顔料、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をアルミニウムなどでレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、およびこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体などが挙げられる。タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号などが挙げられる。
【0090】
複合粉体類としては、硫酸バリウム被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン被覆二酸化珪素、酸化亜鉛被覆二酸化珪素などが挙げられる。
【0091】
粉体は、1種または2種以上の表面処理剤を用いて表面処理を施してもよい。表面処理としては、シリコーン処理、トリアルコキシアルキルシラン処理、アルキルチタネート処理、油剤処理、フッ素化合物処理、リン脂質処理、脂肪酸処理などが挙げられる。
【0092】
処理量は粉体に対して0.5~30質量%が好ましく、より好ましくは1~20質量%のである。
【0093】
なお、特に限定されるものではないが、粉末化粧料における補正材料(成分(A)~(D)の他、顔料などの化粧効果を付与する機能材料以外の材料)としては、タルク、マイカ、合成雲母およびこれらの表面処理粉体を用いることができる。これらの補正材料は、化粧料中、例えば20~90質量%であり、40~80質量%であってもよい。
【0094】
(任意成分)
本実施形態の薄膜状粉末化粧料は、上記成分の他、通常化粧料に使用される高級アルコール、界面活性剤、高分子、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、アルコール類、美容成分等を本発明の効果を妨げない範囲で適宜含有することができる。
【0095】
(用途および化粧品)
他の実施形態は、上記実施形態の薄膜状粉末化粧料が媒体に担持されてなる、化粧品である。
【0096】
媒体としては、平面形状であっても、意匠性の観点から立体形状(平面から離間した部分が存在する形状)であってよい。形状としては任意の形状を採ることができ、長方形などの形状に限定されることなく、意匠性を考慮して、花びら、羽根など、種々の形状を採ることができる。また、媒体は透明であっても不透明であってもよく、さらには着色されていても無着色であってもよい。
【0097】
媒体を構成する材料としては、紙、樹脂(ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなど)、不織布、布などが挙げられる。
【0098】
媒体としては、化粧料が付着しやすいことからシート状媒体であることが好ましい。シート状媒体の厚みは、例えば、10~500μmである。シート状媒体は、1枚(1個)であってもよいし、複数枚用いてもよい(複数枚で化粧品を構成してもよい)。
【0099】
また、薄膜状粉末化粧料は、シート状媒体の片面に担持(保持)されていてもよいし、両面に担持(保持)されていてもよい。多数回(3回以上)の使用が可能となることから、薄膜状粉末化粧料は、シート状媒体の両面に担持(保持)されていることが好ましい。なお、1回の使用であれば、化粧料は多くとれても特段問題にならないが、多数回使用する場合には、1回で多く化粧料が取れると以降の使用時に化粧料がなくなってしまうので、1回あたりのトレが適量である必要がある。
【0100】
通常の化粧品サンプルは、(シート状)媒体の片面に化粧料が形成されているが、このような形態に比べ、薄膜状粉末化粧料が媒体の両面(さらには全面)に担持(保持)されている形態は、化粧料の保持性がより困難であるところ、上記実施形態の構成によれば、(シート状)媒体の両面に化粧料を担持しても、衝撃時の化粧料の欠落や粉チリが低減されたものとなる。
【0101】
上記実施形態の薄膜状化粧料およびこれが媒体に担持されてなる化粧品の用途は、特に限定されないが、ファンデーション、下地、アイカラー、アイライナー、頬紅(チーク)、白粉(おしろい、フェイスパウダー)、アイブロウ等のメーキャップ化粧料に好適に用いられる。特に、薄膜状化粧料およびこれが媒体に担持されてなる化粧品は、粉体を多く含む化粧料を均一な膜として塗布することが可能であることから、ファンデーション、アイカラー、頬紅、白粉の形態が好適である。
【0102】
(製造方法)
上記実施形態の薄膜状化粧料およびこれが媒体に担持されてなる化粧品の製造方法は特に限定されるものではないが、以下の方法が好適である。
【0103】
次の成分(A)~(D);
(A)板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体、
(B)板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体(ただし、成分(A)を除く)、
(C)デキストリン脂肪酸エステル、
(D)25℃で液状の不揮発性油剤
を含む、化粧料基剤と溶媒とを混合した混合物を用いて媒体に薄膜を形成することを有する。
【0104】
また、本発明の一態様は、次の成分(A)~(D);
(A)板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体、
(B)板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体(ただし、成分(A)を除く)、
(C)デキストリン脂肪酸エステル、
(D)25℃で液状の不揮発性油剤
を含む、化粧料基剤と溶媒とを混合した混合物を用いて形成されてなる、薄膜状化粧料である。
【0105】
さらに、本発明の一態様は、次の成分(A)~(D);
(A)板状粉体がアミノ変性シリコーンで表面処理されてなる粉体、
(B)板状粉体がシリコーンで表面処理されてなる粉体(ただし、成分(A)を除く)、
(C)デキストリン脂肪酸エステル、
(D)25℃で液状の不揮発性油剤
を含む、化粧料基剤と溶媒とを混合した混合物を用いて媒体に薄膜状化粧料が形成されてなる、化粧品である。
【0106】
溶媒を混合する前の化粧料基剤の製造方法は特に限定されず、例えば、成分(A)、成分(B)およびその他の粉体をヘンシェルミキサー等で混合分散し、さらに成分(C)、成分(D)を混合する方法等が挙げられる。
【0107】
化粧料基剤と混合される溶媒としては、常圧における沸点が260℃以下の揮発性化合物が好ましく、具体的には、水;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールのような低沸点アルコール;イソドデカン、イソヘキサデカン、軽質流動イソパラフィン等の低沸点炭化水素油;低重合度のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の低沸点の鎖状もしくは環状シリコーン油;低沸点パーフルオロポリエーテル等の低沸点フッ素化合物等が挙げられる。これらの溶媒は単独もしくは二種以上の混合物として用いることができる。
【0108】
中でも、溶媒としては、粉体の分散性の観点から、低沸点アルコールおよび/または低沸点炭化水素油を含むことが好ましい。
【0109】
溶媒の混合量は、媒体に化粧膜を形成するために、塗布や吹付け(噴霧)が可能な流動性を付与する程度に任意に選択されるが、例えば、化粧料基剤100質量部に対して溶媒10~200質量部を用いることが好ましく、50~200質量部であることがより好ましい。この範囲であれば、粉体の流動性、溶媒の除去が良好である。
【0110】
ここで、流動性とは、粉体を主成分とする化粧料基剤を、溶媒と混合した混合物を、内口径2.47cm、胴径4.05cm、全高7.4cmの容器(第一硝子株式会社製「薬ビンPS-6K」)に30g入れ、付属の蓋で栓をした後、25℃、1気圧の環境下で90°傾け、1分間静置すると混合物の一部が蓋の内側に付着する状態のことを意味する。
【0111】
ついで、溶媒と混合して得られた液状またはペースト状の混合物(化粧料スラリー)を媒体に接触させる。接触方法としては、例えば、上記混合物に媒体を浸漬する方法、媒体の表面に上記混合物を吹き付ける方法(スプレー法)、上記混合物を媒体にスクリーン印刷する方法などを採用することができる。この際、浸漬または吹き付けをする時間や回数、使用する化粧料スラリーの濃度を調整することにより、媒体上に担持させる化粧料の量(厚さ)を調整することができる。
【0112】
なお、媒体は基剤形成面に接着剤から形成される接着剤層を有していてもよい。
【0113】
媒体に化粧料の薄膜を形成する方法としては、浸漬、吹付け、塗布のいずれであってもよい。中でも、均一な薄膜が形成されることから、媒体に化粧料の薄膜を形成する方法は浸漬または吹付であることが好ましい。
【0114】
その後、通常、溶媒を除去する。溶媒除去方法としては、特に限定されないが、例えば、20~80℃で乾燥することが好ましい。乾燥時間は、溶媒の種類や乾燥温度により異なるが、例えば、1分~60分である。
【実施例0115】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0116】
実施例1~28、比較例1~9:フェイスパウダー
下記表1に示す処方のフェイスパウダーを調製した。
【0117】
(製造方法)
a.成分1~13、22を均一に混合した。
b.成分14~21を加温溶解し、aに加えて均一に混合し、化粧料基剤を得た。
c.bの化粧料基剤100部を溶媒(イソプロピルアルコール)100部に加えて攪拌し、化粧料スラリーを調整した。
d.cの化粧料スラリーに直径約4cm、厚さ60μmの紙製媒体を含浸塗布(浸漬)し、紙製媒体上に化粧料スラリーを保持させた。乾燥後塗布量が約0.5gになるように設定した。60℃の送風乾燥機内で5分間乾燥して溶媒を除去し、薄膜状化粧料(厚さ300μm)が紙製媒体(シート状基材)の両面に担持された化粧品(フェイスパウダー)を得た。
【0118】
(評価方法)
評価1:凝集体の生成抑制
各試料について、化粧料表面にできる粉体の凝集体(ブツ)を目視にて確認した。
【0119】
(評価基準)
◎:凝集体が全くみられない
〇:凝集体がほとんどみられない(1~2個)
△:凝集体がわずかにみられる(3~4個)
×:凝集体が明らかにみられる(5個以上)。
【0120】
評価2:衝撃に対するシート状媒体からの脱落抑制
各試料をプラスチック製容器に入れ、10cmの高さから10度落下させた後、その状態を判定した。
【0121】
(評価基準)
◎:変化なし
〇:欠けが1~2か所観察される
△:欠けが3~5か所観察される
×:欠けが6か所以上観察される。
【0122】
評価3:媒体からの化粧料のトレ
各試料について、専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて4段階に評価し、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により判定した。
【0123】
具体的には、各化粧料を塗布具(ブラシなど)でとり、付着する化粧料の付着量が実使用において適切な量であるかについて評価した。
【0124】
(評価基準)
3:塗布具への付着量が適切である
2:塗布具への付着量がわずかに多い、またはわずかに不足している
1:塗布具への付着量が多い、または付着量が不足している
0:塗布具への付着量が過剰である、または全く付着しない。
【0125】
(判定基準)
◎:2.5点以上
〇:2点以上2.5点未満
△;1点以上2点未満
×:1点未満。
【0126】
各評価結果を表1に示す。
【0127】
【0128】
*1:SE-MA-23 (三好化成株式会社製、平均粒子径:17-21μm)
*2:SE-TA-EX (三好化成株式会社製、平均粒子径:13-17μm)
*3:SE-S-100S (三好化成株式会社製、平均粒子径:8-12μm)
*4:マイカY-2300WA3 (株式会社ヤマグチマイカ製、平均粒子径:19μm)
*5:EX-15WA3 (株式会社ヤマグチマイカ製、平均粒子径:15μm)
*6:SA-S-JS-1 (三好化成株式会社製、平均粒子径:8-12μm)
*7:SA-TALC JA-46R (大東化成工業株式会社製、平均粒子径:7-11μm)
*8:KF-96 (6cs) (信越化学工業株式会社製)を3%処理した粉体(平均粒子径:8-12μm)
*9:KF-9901 (信越化学工業株式会社製)を3%処理した粉体(平均粒子径:7-11μm)
*10:KF-99-P (信越化学工業株式会社製)を3%処理した粉体(平均粒子径:19μm)
*11:KF-56 (信越化学工業株式会社製、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン)を3%処理した粉体(平均粒子径:19μm)
*12:ユニフィルマHVY (千葉製粉株式会社製)
*13:レオパールKL2 (千葉製粉株式会社製)
*14:レオパールMKL2 (千葉製粉株式会社製)
*15:レオパールISL2 (千葉製粉株式会社製)
*16:KLEAROL WHITE MINERAL OIL (SONNEBORN .INC 製)
*17:T.I.O(TAIWAN) (日清オイリオグループ株式会社製)
*18:KF-96(6cs)(信越化学工業株式会社製)
*19:ビオデルマSX-19<E>(一丸ファルコス株式会社製)
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
上記実施例のフェイスパウダーは、凝集体の生成抑制、媒体からの脱落抑制、媒体からの化粧料のトレのいずれも優れた効果を有するものであった。これに対して、成分(A)を含有していない比較例1は、媒体からの脱落抑制の点で劣るものであり、成分(B)を含有していない比較例2および成分(B)の代わりに他の表面処理された粉体を用いた比較例8、9は凝集体の生成抑制の点で劣り、さらに、成分(B)の代わりに他の表面処理された粉体を用いた比較例8、9は媒体からのトレも低下した。成分(C)を含有していない比較例3、および成分(C)の代わりに他の糖脂肪酸エステルであるステアリン酸イヌリンを用いた比較例10は媒体からの脱落抑制の点で劣り、成分(D)を含有していない比較例4は、全ての評価が×であった。
【0133】
<実施例:ファンデーション>
(成分) (質量%)
1.ジメチコノール・アミノプロピルトリエトキシシラン処理タルク(成分A)(*1)
10.0%
2.メチコン処理セリサイト(成分B)(*2) 2.0%
3.ジメチコン処理セリサイト(成分B)(*3) 10.0%
4.タルク 10.0%
5.窒化ホウ素 5.0%
6.オキシ塩化ビスマス(*4) 2.0%
7.合成フルオロフロゴパイト(*5) 1.0%
8.メチコン・水酸化Al・含水シリカ処理酸化チタン(*6) 0.02%
9.ナイロン-12(*7) 0.5%
10.マイカ 残量
11.赤酸化鉄 0.2%
12.黄酸化鉄 1.0%
13.黒酸化鉄 0.1%
14.酸化チタン 2.0%
15.酸化亜鉛 2.0%
16.イソステアリン酸デキストリン(成分C)(*8) 0.8%
17.パルミチン酸デキストリン(成分C)(*9) 0.2%
18.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(成分D)(*10) 6.0%
19.イソノナン酸イソトリデシル(成分D)(*11) 5.0%
20.ジメチコン(成分D)(*12) 4.0%
21.メチルパラベン 適量
22.香料 0.8%
23.ラベンダー油、アーモンド油、マカデミアナッツ油、椿油、精製ホホバ油、アンズ核油、コーン油、ブドウ種子油、ヤシ油、ヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、ローズヒップ油の混合物(美容成分の混合物)(成分D) 1.0%
化粧料基剤100%
24.イソプロピルアルコール(化粧料基剤100部に対して) 110部
*1:SE-TA-EX(三好化成株式会社製)
*2:KF-99-P(信越化学工業社製)を3%処理したセリサイト
*3:SA-S-JS-1(三好化成株式会社製)
*4:PEARL GLO UVR(エンゲルハード・アジア・パシフィック・インク製)
*5:PDM-20L(トピー工業株式会社製)
*6:微粒子酸化チタンSMT-500SAM(テイカ株式会社製)
*7:ガンツパールGPA-550(アイカ工業株式会社製)
*8:ユニフィルマHVY(千葉製粉株式会社製)
*9:レオパールKL2(千葉製粉株式会社製)
*10:ユビナールMC80(BASFジャパン株式会社製)
*11:サラコス913(日清オイリオグループ株式会社製)
*12:シリコンKF-96(10CS)(信越化学工業株式会社製)。
【0134】
(製造方法)
a:成分1~15、21を均一に混合した。
b:成分16~20を加温溶解した後aに加え、さらに成分22、23を加えて均一に混合し、化粧料基剤を得た。
c:bの化粧料基剤100部に、成分24の揮発性溶媒を110部加えてスラリー状とした。
d:cに直径約6cm、厚さ100μmの不織布製媒体を浸漬し、温風乾燥して溶媒を除去した。
e:dを20枚作製して容器に充填し、薄膜(厚さ500μm)の固形粉末化粧料としてファンデーションを得た。
【0135】
実施例では、成分(A)の含有量:10.0%、成分(B)の含有量:12.0%、成分(C)の含有量:1.0%、成分(D)の含有量:15.0%、(A)+(B)=22.0、(A)/(B)=0.8、(A)/(C)=10.0である。
【0136】
このようにして得られた実施例のファンデーションは、凝集体の生成抑制、媒体からの脱落抑制、媒体からの化粧料のトレに優れる化粧料であった。
【0137】
<実施例:アイカラー>
(成分) (質量%)
1.アモジメチコン処理マイカ(成分A)(*13) 12.0%
2.フェニル変性シリコーン処理タルク(成分B)(*14) 8.0%
3.ハイドロゲンジメチコン処理セリサイト(成分B)(*15) 1.0%
4.タルク 1.0%
5.マイカ 残量
6.ベンガラ 2.5%
7.黄酸化鉄 0.5%
8.赤色226号 1.0%
9.酸化チタン被覆合成金雲母(*16) 1.0%
10.シリカ・酸化チタン被覆マイカ(*17) 2.0%
11.ミリスチン酸デキストリン(成分C)(*18) 1.2%
12.スクワラン(成分D)(*19) 5.0%
13.トリエチルヘキサノイン(成分D)(*20) 8.0%
14.リンゴ酸ジイソステアリル(成分D)(*21) 2.0%
15.ワセリン(*22) 0.5%
16.メチルパラベン 適量
17.香料 1.0%
化粧料基剤100%
18.軽質流動イソパラフィン(化粧料基剤100部に対して) 100部
*13:マイカY-2300WA1(株式会社ヤマグチマイカ製)
*14:KF-56(信越化学工業株式会社製)を3%処理したタルク
*15:KF-9901(信越化学工業株式会社製)を2%処理したセリサイト
*16:HELIOS R10S(トピー工業株式会社製)
*17:TIMIRON SPLENDED VIOLET(メルク株式会社製)
*18:レオパールMKL2(千葉製粉株式会社製)
*19:精製オリーブスクワラン(日光ケミカルズ株式会社製)
*20:T.I.O(TAIWAN)(日清オイリオグループ株式会社製)
*21:コスモール222(日清オイリオグループ株式会社製)
*22:SNOW WHITE SPECIAL(SONNEBORN.INC製)。
【0138】
(製造方法)
a:成分1~9、15を均一に混合した。
b:成分10~14を加温溶解しaに加え、さらに成分16を加えて均一に混合し、化粧料基剤を得た。
c:bの化粧料基剤100部に、成分18の揮発性溶媒を100部加えてスラリー状とした。
d:cに直径約4cm、厚さ80μmの樹脂製媒体を浸漬し、温風乾燥して溶媒を除去した。
e:dを15枚作製して容器に充填し、薄膜(厚さ60μm)の固形粉末化粧料としてアイカラーを得た。
【0139】
実施例では、成分(A)の含有量:12.0%、成分(B)の含有量:9.0%、成分(C)の含有量:1.2%、成分(D)の含有量:15.0%、(A)+(B)=21.0、(A)/(B)=1.3、(A)/(C)=10.0である。
【0140】
このようにして得られた実施例のアイカラーは、凝集体の生成抑制、媒体からの脱落抑制、媒体からの化粧料のトレに優れる化粧料であった。
【0141】
<実施例:フェイスパウダー>
(成分) (質量%)
1.ジメチコノール・アミノプロピルトリエトキシシラン処理マイカ(成分A)
(*23) 8.0%
2.ジメチコン処理マイカ(成分B)(*24) 8.0%
3.ハイドロゲンジメチコン処理セリサイト(成分B)(*25) 3.0%
4.タルク 残量
5.(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー(*26) 0.2%
6.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー(*27)
0.1%
7.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー(*28)
0.1%
6.シリカ(*29) 0.5%
7.赤色226号 0.5%
8.イソステアリン酸デキストリン(成分C)(*8) 0.5%
9.ジメチコン(成分D)(*30) 2.0%
10.ミネラルオイル(成分D)(*31) 15.0%
11.メチルパラベン 適量
12.香料 0.3%
13.コーン油、ブドウ種子油、ラベンダー油、ヒマワリ油、ホホバ油、ヘーゼルナッツ油、ローズヒップ油の混合物(美容成分の混合物)(成分D) 0.5%
化粧料基剤100%
14.イソドデカン(化粧料基剤100部に対して) 90部
*23:SE-MA-23(三好化成株式会社製)
*24:シリコンKF-96(6CS)(信越化学工業株式会社製)を3%処理したマイカ
*25:KF-9901(信越化学工業株式会社製)を3%処理したセリサイト
*26:KSP-300(信越化学工業株式会社製)
*27:KSP-100(信越化学工業株式会社製)
*28:KSP-101(信越化学工業株式会社製)
*29:シリカマイクロビードP-1505(日揮触媒化成株式会社製)
*30:シリコンKF-96(20CS)(信越化学工業株式会社製)
*31:KLEAROL WHITE MINERAL OIL(SONNEBORN.INC製)。
【0142】
(製造方法)
a:成分1~7、11を均一に混合した。
b:成分8~10を加温溶解しaに加え、さらに成分12、13を加えて均一に混合し、化粧料基剤を得た。
c:bの化粧料基剤100部に、成分14の揮発性溶媒を90部加えてスラリー状とした。
d:cに直径約3cm、厚さ50μmの紙製媒体を浸漬し、温風乾燥して溶媒を除去した。
e:dを15枚作製して容器に充填し、薄膜(厚さ200μm)の固形粉末化粧料としてフェイスパウダーを得た。
【0143】
実施例では、成分(A)の含有量:8.0%、成分(B)の含有量:11.0%、成分(C)の含有量:0.5%、成分(D)の含有量:17.0%、(A)+(B)=19.0、(A)/(B)=0.7、(A)/(C)=16.0である。
【0144】
このようにして得られた実施例のフェイスパウダーは、凝集体の生成抑制、媒体からの脱落抑制、媒体からの化粧料のトレに優れる化粧料であった。
【0145】
<実施例:チーク>
(成分) (質量%)
1.アモジメチコン処理マイカ(成分A)(*32) 5.0%
2.ジメチコノール・アミノプロピルトリエトキシシラン処理マイカ(成分A)
(*23) 9.0%
3.ジメチコン処理セリサイト(成分B)(*33) 7.0%
4.ジメチコン処理タルク(成分B)(*34) 3.0%
5.タルク 5.0%
6.マイカ 残量
7.合成フルオロフロゴパイト(*35) 3.0%
8.酸化チタン被覆マイカ(*36) 0.7%
9.黄酸化鉄 1.5%
10.赤色202号 1.0%
11.赤色226号 1.0%
12.パルミチン酸デキストリン(成分C)(*37) 0.2%
13.ミネラルオイル(成分D)(*31) 8.0%
14.ジカプリン酸プロピレングリコール(成分D)(*38) 7.0%
15.ポリヒドロキシステアリン酸(*39) 1.0%
16.水添ポリイソブテン(*40) 0.1%
17.メチルパラベン 適量
18.香料 1.0%
化粧料基剤100%
19.エタノール(化粧料基剤100部に対して) 130部
*32:マイカY-2300WA3(株式会社ヤマグチマイカ製)
*33:シリコンKF-96(10CS)(信越化学工業株式会社製)を2%処理したセリサイト
*34:SA-TALC JA-46R(大東化成工業株式会社製)
*35:PDM-40L(トピー工業株式会社製)
*36:Flamenco Ultra Sparkle 4500(BASFジャパン株式会社製)
*37:レオパールTL2(千葉製粉株式会社製)
*38:ニッコールPDD(日本サーファクタント工業株式会社製)
*39:サラコスHS-6C(日清オイリオグループ株式会社製)
*40:パールリーム18(日本油脂株式会社製)。
【0146】
(製造方法)
a:成分1~11、17を均一に混合した。
b:成分12~16を加温溶解しaに加え、さらに成分18を加えて均一に混合し、化粧料基剤を得た。
c:bの化粧料基剤100部に、成分19の揮発性溶媒を130部加えてスラリー状とした。
d:cを直径約5cm、厚さ200μmの紙製媒体に噴霧し、温風乾燥して溶媒を除去した。
e:dを10枚作製して容器に充填し、薄膜(厚さ100μm)の固形粉末化粧料としてチークを得た。
【0147】
実施例では、成分(A)の含有量:14.0%、成分(B)の含有量:10.0%、成分(C)の含有量:0.2%、成分(D)の含有量:15.0%、(A)+(B)=24.0、(A)/(B)=1.4、(A)/(C)=70.0である。
【0148】
このようにして得られた実施例のチークは、凝集体の生成抑制、媒体からの脱落抑制、媒体からの化粧料のトレに優れる化粧料であった。
【0149】
<実施例:フェイスパウダー>
(成分) (質量%)
1.ジメチコノール・アミノプロピルトリエトキシシラン処理マイカ(成分A)
(*23) 6.0%
2.アモジメチコン処理タルク(成分A)(*41) 2.0%
3.ジメチコン処理セリサイト(成分B)(*3) 10.0%
4.メチコン処理マイカ(成分B)(*42) 5.0%
5.酸化亜鉛・硫酸バリウム被覆マイカ(*43) 5.0%
6.セリサイト 5.0%
7.タルク(*44) 残量
8.窒化ホウ素(*45) 5.0%
9.N-ラウロイル-L-リジン(*46) 0.1%
10.セルロース 0.5%
11.グンジョウ 4.0%
12.赤色202号 1.0%
13.イソステアリン酸デキストリン(成分C)(*8) 0.1%
14.(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン(成分C)
(*47) 0.8%
15.セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.2%
16.水添ポリイソブテン(*48) 0.2%
17.トリエチルヘキサノイン(成分D)(*20) 8.0%
18.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(成分D)(*49) 0.5%
19.2-エチルヘキサン酸セチル(成分D)(*50) 9.0%
20.メチルパラベン 適量
21.香料 0.7%
化粧料基剤100%
22.イソプロピルアルコール(化粧料基剤100部に対して) 150部
*41:EX-15WA3(株式会社ヤマグチマイカ製)
*42:KF-99-P(信越化学工業株式会社製)を3%処理したタルク
*43:酸化亜鉛50%・硫酸バリウム被覆マイカ
*44:タルク粉 EX-15(株式会社ヤマグチマイカ)
*45:SHP-6(水島合金鉄株式会社製)
*46:アミホープLL(味の素株式会社製)
*47:レオパールTT2(千葉製粉株式会社製)
*48:パールリーム6(日本油脂株式会社製)
*49:KF-56(信越化学工業株式会社製)
*50:サラコス816T(日清オイリオグループ株式会社製)。
【0150】
(製造方法)
a:成分1~12、20を均一に混合した。
b:成分13~19を加温溶解しaに加え、さらに成分21を加えて均一に混合し、化粧料組成物を得た。
c:bの化粧料基剤100部に、成分22の揮発性溶媒を150部加えてスラリー状とした。
d:実施例3の化粧料基剤(フェイスパウダー)100部をイソプロピルアルコール100部に加えて攪拌しスラリー状とした。
e:dの化粧料スラリーに、直径約6cm、厚さ70μmの紙製媒体の上端部を除いた部分を含浸塗布(浸漬)して、紙製媒体上に化粧料スラリーを保持させ、60℃の送風乾燥機内で10分間乾燥した。
f:dの化粧料スラリーが保持されていない部分に、スプレーガンを用いてグラデーションを形成するようにcの化粧料スラリーを噴霧して保持させた後、60℃の送風乾燥機内で5分間乾燥してイソプロピルアルコールを除去し、グラデーションが形成された化粧料組成物を得た。
g:fを15枚作製して容器に充填し、薄膜(厚さ600μm)の固形粉末化粧料としてフェイスパウダーを得た。
【0151】
実施例では、成分(A)の含有量:8.0%、成分(B)の含有量:15.0%、成分(C)の含有量:0.9%、成分(D)の含有量:17.5%、(A)+(B)=23.0、(A)/(B)=0.5、(A)/(C)=8.9である。
【0152】
このようにして得られた実施例のフェイスパウダーは、凝集体の生成抑制、媒体からの脱落抑制、媒体からの化粧料のトレに優れる化粧料であった。