(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160540
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】制流体の設置装置の組立方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16L55/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075656
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】玉田 聡
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025BA21
3H025BB01
(57)【要約】
【課題】クレーンへの負荷を軽減できる制流体の設置装置の組立方法を提供すること。
【解決手段】制流体の設置装置を構成する機能装置である切断機5は、連結されて機能する複数の分割体からなり、複数の分割体のうち一の分割体であるアダプタ54を筐体側要素である蓋体53に設けられた固定冶具55に係止させ、固定治具55に係止されたアダプタ54に、他の分割体である駆動機構8を連結して切断機5を組み立て、蓋体53と切断機5との間に設置されたジャッキ7によって、蓋体53に駆動機構8の荷重を支持させた状態で、固定冶具55の係止を解除させる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に対し密封状に取付けられる筐体と、該筐体の開口部に取付けられ該筐体の内部を開閉可能な作業弁と、該作業弁に取付けられる機能装置とにより構成される制流体の設置装置の組立方法であって、
前記機能装置は、連結されて機能する複数の分割体からなり、
前記複数の分割体のうち一の分割体を筐体側要素に設けられた係止部に係止させ、前記係止部に係止された前記一の分割体に、他の分割体を連結して機能装置を組み立て、
前記筐体側要素と前記機能装置との間に設置されたジャッキによって、前記筐体側要素に前記機能装置の荷重を支持させた状態で、前記係止部の係止を解除させることを特徴とする制流体の設置装置の組立方法。
【請求項2】
前記ジャッキは、接続されて前記筐体側要素を構成する前記分割体に一体的に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の制流体の設置装置の組立方法。
【請求項3】
前記ジャッキは、接続されて前記筐体側要素を構成する前記分割体の周方向に複数箇所に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の制流体の設置装置の組立方法。
【請求項4】
前記ジャッキは、接続されて前記筐体側要素を構成する前記分割体の周方向に3箇所等配されていることを特徴とする請求項3に記載の制流体の設置装置の組立方法。
【請求項5】
複数の前記ジャッキは、同一の駆動源により駆動されることを特徴とする請求項3に記載の制流体の設置装置の組立方法。
【請求項6】
前記他の分割体の下部と、前記ジャッキの上部とが上下に凹凸係合することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の制流体の設置装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不断流状態で流体管を密封する筐体内に制流体を設置するための設置装置の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体管路に弁やプラグ等の制流体を配置する場合には、流体管路を構成する流体管の一部を切断し、その切断した箇所に制流体を設置することが一般的に行われている。流体管を切断する切断方法として、流体管に対し密封状に筐体を取付け、該筐体の開口部に筐体内を開閉可能な作業弁を取付けるとともに、作業弁にカッタと駆動部とを有する切断機を設置し、作業弁を開けた状態で駆動部によりカッタを進行させて筐体内において不断流状態で流体管の一部を切断することが知られている。
【0003】
また、上記のような方法で流体管が切断された箇所に制流体を設置する方法として、例えば、特許文献1に示されるように、筐体と、作業弁と、作業弁に取付けられる挿入機と、を用いる制流体設置方法があり、作業弁を開放した状態で挿入機により制流体を進行させることにより筐体内に不断流状態で制流体を設置するようになっている。このような制流体設置方法にあっては、筐体、作業弁、制流体等の各部材をクレーンにより吊り下げて設置位置まで運搬し、流体管に組み立てるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-108594号公報(第11頁、第9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような制流体の設置にあっては、特に流体管の管径が大きい場合には、当該流体管を外嵌する筐体、作業弁、そして筐体内に設置される制流体も大型化することから、吊上能力の高い大型のクレーンを用意する必要があり、クレーンの可動範囲や設置スペースが大きくなるため、制流体の設置作業に大きなスペースを確保しなければならないという問題があった。特に、特許文献1のように切断機としてホールソーを用いる場合には、流体管の外径よりも大径のホールソーを要するため、これに伴い当該ホールソーを収容する筐体やこの筐体内に密封状態で設置する制流体の重量が嵩み、クレーンの大型化が避けられなかった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、クレーンへの負荷を軽減できる制流体の設置装置の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の制流体の設置装置の組立方法は、
流体管に対し密封状に取付けられる筐体と、該筐体の開口部に取付けられ該筐体の内部を開閉可能な作業弁と、該作業弁に取付けられる機能装置とにより構成される制流体の設置装置の組立方法であって、
前記機能装置は、連結されて機能する複数の分割体からなり、
前記複数の分割体のうち一の分割体を筐体側要素に設けられた係止部に係止させ、前記係止部に係止された前記一の分割体に、他の分割体を連結して機能装置を組み立て、
前記筐体側要素と前記機能装置との間に設置されたジャッキによって、前記筐体側要素に前記機能装置の荷重を支持させた状態で、前記係止部の係止を解除させることを特徴としている。
この特徴によれば、機能装置を構成する複数の分割体を別々にクレーンで運搬でき、かつジャッキを介して筐体側に機能装置の荷重を支持させることで、クレーンへの負荷を軽減させた状態で1つの分割体と筐体側に設けられた係止部の係止を解除させることができ、クレーンを小型化することができる。
【0008】
前記ジャッキは、接続されて前記筐体側要素を構成する前記分割体に一体的に固定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ジャッキを分割体に予め固定させた状態で筐体側に移動させることでジャッキの位置決めが不要となり、ジャッキに精度良く機能装置の荷重を支持させることができる。
【0009】
前記ジャッキは、接続されて前記筐体側要素を構成する前記分割体の周方向に複数箇所に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、複数のジャッキに機能装置の荷重を分散させて安定して支持させることができる。
【0010】
前記ジャッキは、接続されて前記筐体側要素を構成する前記分割体の周方向に3箇所等配されていることを特徴としている。
この特徴によれば、機能装置の荷重を確実にすべてのジャッキに分散させて安定して支持させることができる。
【0011】
複数の前記ジャッキは、同一の駆動源により駆動されることを特徴としている。
この特徴によれば、機能装置を精度良く上昇させることができる。
【0012】
前記他の分割体の下部と、前記ジャッキの上部とが上下に凹凸係合することを特徴としている。
この特徴によれば、他の分割体がジャッキとの凹凸係合により芯合わせされ、分割体同士を精度良く連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例における筐体に作業弁の弁箱を取付ける様子を示す側断面図である。
【
図3】弁箱に弁体及び弁蓋を取付ける様子を示す側断面図である。
【
図4】切断機を設置する工程において、作業弁に取付フランジ筒を取付ける様子を示す側断面図である。
【
図5】切断機を設置する工程において、取付フランジ筒にカッタ及び蓋体を取付ける様子を示す側断面図である。
【
図7】切断機を設置する工程において、駆動機構を吊り下げる様子を示す側断面図である。
【
図9】切断機を設置する工程において、軸部材をアダプタを介してカッタと接続した様子を示す側断面図である。
【
図10】切断機を設置する工程において、ジャッキにより駆動機構を持ち上げる様子を示す側断面図である。
【
図11】切断機を設置する工程において、ジャッキを縮み方向に動作させて駆動機構のケース部と蓋体とを接続した様子を示す側断面図である。
【
図12】切断機により流体管を切断する様子を示す側断面図である。
【
図13】流体管の切片を回収した様子を示す側断面図である。
【
図14】弁導入機を設置する工程において、円筒部材を作業弁に取付ける様子を示す側断面図である。
【
図15】弁導入機を設置する工程において、バタフライ弁における仕切壁、開閉軸及び弁体を円筒部材に取付ける様子を示す側断面図である。
【
図16】弁導入機を設置する工程において、円筒部材に取付フランジ筒を取付けた様子を示す説明図である。
【
図17】弁導入機を設置する工程において、弁吊金具及び蓋体を取付ける様子を示す側断面図である。
【
図18】弁導入機を設置する工程において、駆動機構を吊り下げる様子を示す側断面図である。
【
図19】弁導入機を設置する工程において、軸部材をアダプタを介して弁吊金具と接続する様子を示す側断面図である。
【
図20】弁導入機を設置する工程において、ジャッキにより駆動機構を持ち上げる様子を示す側断面図である。
【
図21】弁導入機を設置する工程において、ジャッキを縮み方向に動作させて駆動機構のケース部と蓋体とを接続した様子を示す側断面図である。
【
図22】弁導入機を設置する工程において、駆動機構により弁吊金具を下降させる様子を示す側断面図である。
【
図23】弁導入機を設置する工程において、駆動機構により弁吊金具及びバタフライ弁を僅かに上方に吊り上げる様子を示す側断面図である。
【
図24】弁導入機によりバタフライ弁を流体管の切断箇所に設置した様子を示す側断面図である。
【
図25】弁吊金具を円筒部材及び取付フランジ筒内に引き上げた様子を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る制流体の設置装置の組立方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例においては、流路構成部材を構成する既設の流体管1の所定箇所を切断し、その切断箇所にバタフライ弁10(制流体)を設置するまでの一連の流れを
図1から
図25を参照して説明する。
【0016】
図1に示されるように、地中に埋設された流体管1の所定箇所の周囲を掘削し、上方に開口する分岐部2aを有する2分割構造の筐体2を密封状に囲繞する。尚、流体管1内の流体は、例えば、上水や工業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。更に尚、筐体2は、本実施例では分割筐体21と分割筐体22による上下2分割構造であるが、他の複数分割構造であってもよく、分割筐体同士の接合は、溶接若しくはパッキンを介しボルトにより取付けても構わない。
【0017】
流体管1は、鋼管であって、断面視略円形状に形成されている。尚、本発明に係る流体管は、ダクタイル鋳鉄、その他鋳鉄、その他の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0018】
また、流体管1に筐体2を密封状に取付ける際には、筐体2の下方にコンクリート基礎9,9を形成し、筐体2周辺の重量を支持して流体管1の折れ曲がり等を防止する。尚、筐体2や後述する切断機5及び弁導入機6の重量を支持できるものであれば、コンクリート基礎9,9に限られず、ジャッキなどを用いてもよい。
【0019】
図1と
図2のA-A断面図に示されるように、コンクリート基礎9,9は、筐体2の上下の分割筐体21,22同士の分割境界200よりも上方に平坦な上端面9a,9aが位置している。またコンクリート基礎9,9は、上端面9a,9aに連なる管軸方向視で凹形状を成す湾曲面9b,9bが筐体2の外面及び流体管1の外周面に渡って一面に接して支持している。つまり、コンクリート基礎9,9は、筐体2及びその側方に延びる流体管1の重量を下方から支持するとともに、分割境界200、すなわち筐体2の周面における水平方向の端部である頂点よりも上方まで覆うように配設されている。そのため、コンクリート基礎9,9によって筐体2が上下方向に保持され、筐体2の不測の挙動を効果的に規制することができる。また、分割境界200を覆うように配設されることで、分割筐体21,22同士の分離を補助的に防止することができる。更にコンクリート基礎9,9は、管軸直交方向に流体管1の管径の略2倍若しくは2倍超の幅寸を有していることで、後述するように筐体2の上方に接続される各部材が管周に沿って傾動するモーメントに対抗して、支持することができる。
【0020】
次いで、筐体2の分岐部2a(開口部)に分岐部2aの開口を閉塞可能な作業弁4を取付ける工程について説明する。先ず、作業弁4を構成する弁箱41を上方から図示しないクレーンに吊支されるフックを備えた吊り具及びワイヤにより吊持して分岐部2aのフランジ2b上に載置し、フランジ2b上で弁箱41の位置調整をしながらフランジ2bと弁箱41とを図示しないボルトナットで固定する。なお、本実施例で使用されるクレーンは、例えば移動式のラフテレーンクレーンが好適であり、言うまでもなくその吊上能力に応じて大型化し、後述する各部材の中で最も重量の大きい部材を吊り上げ可能な仕様が、各旋回半径における許容吊り上げ荷重を検討しながら選択されるものである。またクレーンの設置面積は、アウトリガー等を含めると、流体管1の掘削面積よりも広い面積を要する場合が多い。
【0021】
この弁箱41は、上下方向に貫通する略筒状を成し、一方の側方に設けられた開口部41aから略水平方向に延びるスライド溝41bが形成されており、スライド溝41bの奥側(開口部41aと反対側)には、弁座部41cが形成されている。尚、フランジ2bと弁箱41との間には、図示しないOリングが圧接されるため、分岐部2aと弁箱41とが密封状に接続される。
【0022】
次に、
図3に示されるように、作業弁4を構成する弁体42、弁蓋43及び弁棒44をユニット化した状態で吊り具C及びワイヤWにより吊持して弁箱41の開口部41aの側方まで下降させる。そして、この吊持状態で弁箱41の側方に弁蓋43を図示しないボルトナット等により固定する(
図4参照)。
【0023】
弁箱41の側方に弁蓋43を固定する際には、弁蓋43の開口部43aから突出した弁体42の突出部分を弁箱41の開口部41aに挿入し、弁箱41に当接するまで弁蓋43を水平方向にスライドさせ、弁蓋43と弁箱41とを図示しないボルトナットで固定する。弁蓋43と弁箱41との間には、図示しないパッキンが周方向に亘って圧接されるため、弁蓋43と弁箱41との間の密封性を確保できる。
【0024】
尚、本実施例では、ユニット化された弁体42、弁蓋43及び弁棒44を吊り具C及びワイヤWにより吊持した状態で弁箱41に取付ける形態を例示したが、これに限られず、例えば、弁箱41の近傍に載置台を配置し、該載置台に弁体42、弁蓋43及び弁棒44を載置した状態で弁箱41に取付けるようにしてもよい。また、例えば、弁体42、弁蓋43、弁棒44の順に別々に弁箱41に取付けるようにして、クレーンへの負荷を更に分散して軽減するようにしてもよい。
【0025】
このように、作業弁4は、弁箱41(略4500kg)と、弁体42、弁蓋43及び弁棒44(略6000kg)と、で構成されており、筐体2の分岐部2aに対して、これらを順番に組み立てることで作業弁4を構成するようになっている。つまり、弁箱41と弁体42、弁蓋43及び弁棒44を別々に吊り具C及びワイヤWで運搬できることから、作業弁4を組み立てた状態で分岐部2aに設置する場合(総重量が10500kgの作業弁4)に比べて、クレーンへの負荷を分散して軽減できるため、クレーンを小型化することができ、作業弁4を設置する作業スペースを省スペース化できる。また、吊り具C及びワイヤWへの負荷も軽減されるため、太い吊り具C及びワイヤWを用意する必要がなく、使用する吊り具C及びワイヤWのコストも抑えることができる。
【0026】
また、後述のように、流体管1を切断する手段として本実施例のカッタ52のようなホールソーを用いる場合、当該ホールソーが流体管1の外径よりも大径となるため、これに伴い作業弁4の構造も大きくなるが、このような場合でも作業弁4を構成する部材を分割して別々に吊り具C及びワイヤWで運搬できることから、クレーンを好適に小型化できる。
【0027】
尚、本実施例では、弁蓋43と弁箱41とがボルトナットにより固定される形態を例示したが、これに限られず、例えば、万力などの別の固定手段により固定されてもよいし、溶接などで固着されていてもよい。
【0028】
次に、作業弁4の上方に流体管1を切断するための切断機5を設置する工程について説明する。先ず、
図4に示されるように、上下方向に貫通する取付フランジ筒51(筒状体)を吊り具C及びワイヤW(
図3参照)により吊持して弁箱41の上方まで下降させ、弁箱41の上方に取付フランジ筒51を図示しないボルトナット等により固定する。本実施例における取付フランジ筒51の重量は、略2600kgとなっている。また、取付フランジ筒51と弁箱41との間には、図示しないOリングが圧接されるため、弁箱41と取付フランジ筒51とが密封状に接続される。
【0029】
尚、本実施例では、取付フランジ筒51を弁箱41の上に載置した後も、安全性確保のために取付フランジ筒51にワイヤWを若干緩めた状態で図示しないクレーンに接続するが、これに限られず、吊り具C及びワイヤWを取付フランジ筒51から取外してもよい。また、取付フランジ筒51を位置調整しやすくするために、クレーンにより取付フランジ筒51を若干吊った状態で弁箱41に対して位置調整を行うようにしてもよい。取付フランジ筒51には、足場51aとフランジ51bを有している。
【0030】
次に、
図5に示されるように、取付フランジ筒51に対してカッタ52を仮設置する。詳しくは、カッタ52の上方に取付フランジ筒51の蓋体53を接続した状態で吊り具C及びワイヤWにより吊持して取付フランジ筒51の上方まで下降させる。カッタ52は、周端に切断刃を備えた円筒部材52aと、この円筒部材52aに同軸に配設され穿孔刃よりも先方に突出したセンタードリル52bと、からなり、円筒部材52aとセンタードリル52bとは固定されている。また、円筒部材52aとセンタードリル52bとの上方には、上端に環状突部54aが形成されたアダプタ54が相対回転不能に取付けられている。
【0031】
また、蓋体53には、中心部に上下方向に貫通する貫通孔53aが形成されており、貫通孔53aにアダプタ54が挿通されている。また、蓋体53は、貫通孔53aの内周面から外径方向に凹設される凹部53bが周方向に複数形成されており、凹部53bには、貫通孔53aの径方向に進退可能な固定冶具55(係止部)が配設されている。固定冶具55が貫通孔53aの内径方向に突出し、アダプタ54の環状突部54aの下面に係止することで、カッタ52と蓋体53とが一体化されている。固定冶具55は、アダプタ54の周囲に3つ等配されている(
図6参照)。
【0032】
本実施例におけるカッタ52の重量は、略2910kgとなっており、蓋体53の重量は、略1900kgとなっており、アダプタ54の重量は、略290kgとなっており、これらの総重量は略5100kgとなっている。
【0033】
取付フランジ筒51の上方に蓋体53を載置した状態で取付フランジ筒51と蓋体53との位置合わせを行い、図示しないボルトナット等により固定する。取付フランジ筒51と蓋体53との間には、図示しないパッキンが周方向に亘って圧接されるため、取付フランジ筒51と蓋体53との間の密封性を確保できる。このとき、カッタ52は、取付フランジ筒51の内部に収容されることとなる。取付フランジ筒51は、作業弁4に固定されたことで、後にカッタ52が相対動作する筐体2側の構成要素(筐体側要素)となり、その後、取付フランジ筒51に固定されたことで蓋体53も筐体2側の構成要素(筐体側要素)となる。
【0034】
図6に示されるように、蓋体53の下部フランジ53dの上面には、その周方向に予めジャッキ7が複数設けられている。これらジャッキ7は、貫通孔53aを中心とした同心円上に3つ等配されている。
図5に示されるように、ジャッキ7は、図示しない駆動手段である油圧ポンプから加圧された作動油が供給されるシリンダ7aと、シリンダ7aに対して上下に動作するシリンダラム7bとから構成されている。
【0035】
シリンダラム7bには、ナット71,72が螺合されている。また、ジャッキ7は、シリンダ7aに油圧ポンプのタンクに接続される2つのカプラ73,74を備える複動シリンダである。本実施例における3つのジャッキ7のカプラ73,74は、それぞれ同一の油圧ポンプに接続され、動作が同期される。
【0036】
尚、本実施例では、蓋体53を取付フランジ筒51の上に載置した後も、安全性確保のために蓋体53にワイヤWを若干緩めた状態でクレーンに接続しているが、これに限られず、吊り具C及びワイヤWを蓋体53から取外してもよい。また、蓋体53を位置調整しやすくするために、クレーンにより蓋体53を若干吊った状態で取付フランジ筒51に対して位置調整を行うようにしてもよい。
【0037】
次に、切断機5の駆動機構8(駆動部)をカッタ52に接続する。先ず、駆動機構8の構造について
図8に基づいて説明する。
【0038】
図8に示されるように、駆動機構8は、軸部材81と、軸部材81を把持若しくは把持解除可能な把持部材82と、把持部材82を軸部材81の軸方向の範囲内で進退移動させる進退部材83と、進退部材83よりも下方の位置で軸部材81を移動規制若しくは規制解除可能な規制部材84と、進退部材83及び規制部材84が取付けられる基部材85と、から主に構成されている。本実施例における駆動機構8の重量は、略6060kgとなっている。
【0039】
基部材85には、上方に立設する支柱部85aが複数設けられており、進退部材83は、支柱部85aに沿って上下方向にスライド移動可能に取付けられている。すなわち、軸部材81を把持部材82により把持し、その状態で進退部材83を支柱部85aに沿って移動させることにより、軸部材81を上下方向にスライドさせることができるようになっている。
【0040】
また、基部材85の下方には、軸部材81を挿通可能な筒状のケース部86が設けられている。ケース部86の内周面には、軸部材81の外周面との間を密封する図示しないパッキンが設けられているとともに、ケース部86の下面には、環状に形成される環状溝86cが形成されており、環状溝86cに環状のパッキンS4が圧入されている。
【0041】
また、進退部材83の一部には、回転モータ87が固設されており、回転モータ87によって軸部材81を把持した状態の把持部材82に対して回転力を付与することによって軸部材81に回転を伝えることができるとともに、軸部材81が回転することにより、カッタ52を回転させることができるようになっている。尚、軸部材81は、複数用意することで、軸方向に継ぎ足して軸方向の長さを長くできるようになっており、このような継ぎ足し構造のため、重量と高さを軽減することができる。
【0042】
駆動機構8をカッタ52と接続する際には、駆動機構8の荷重を3つのジャッキ7に支持させる。詳しくは、
図7に示されるように、まず、駆動機構8の軸部材81を予め所定長さ下方に進行させ、軸部材81の下端部がケース部86よりも下方に突出した状態とし、吊り具C及びワイヤWにより駆動機構8を図示しないクレーンで吊り下げる。このとき、ジャッキ7のシリンダラム7bに螺合された上方のナット72(
図4参照)を取り外した状態とし、この状態で各シリンダラム7bをケース部86に形成された上下方向に貫通する孔86a(
図9参照)にそれぞれ挿通させる。
【0043】
駆動機構8を吊り下げる工程では、シリンダラム7bを孔86aに挿通させることで、駆動機構8と蓋体53及びカッタ52とを芯合わせするとともに、周方向に位置合わせすることができる。軸部材81がアダプタ54の上面54bに接触するまで下げられることで、駆動機構8の荷重はアダプタ54及び固定冶具55等を介して筐体2側に支持される。
【0044】
図9に示されるように、ジャッキ7のシリンダラム7bに螺合された下方のナット71は、軸部材81がアダプタ54の上面54bに接触するまで下げられた状態において、ケース部86の下面86bと略接触する位置に予め設定しておく、または軸部材81がアダプタ54の上面54bに接触するまで下げられた状態において、ケース部86の下面86bとが略接触する位置まで移動させることで、駆動機構8の荷重を補助的に支持することができ、駆動機構8の落下や転倒を防ぐことができる。また、軸部材81がアダプタ54の上面54bに接触するまで下げられた状態で、上方のナット72を再度シリンダラム7bに螺合させ、下方のナット71と上方のナット72とでケース部86を上下に挟持する(
図9参照)。
【0045】
また、軸部材81がアダプタ54の上面54bに接触するまで下げられた状態において、ワイヤWを張りが若干緩めた状態となるようクレーンによる吊り具Cの高さ位置を調整することで、駆動機構8の落下や転倒を補助的に防ぐことができる。
【0046】
次いで、ケース部86と蓋体53の上部フランジ53cとの隙間から作業者がアクセスして、軸部材81とアダプタ54とをボルトナットN1により接続する。
【0047】
尚、本実施例では、駆動機構8をアダプタ54の上に載置した後も、安全性確保のために駆動機構8にワイヤWを若干緩めた状態でクレーンに接続したままとするが、これに限られず、吊り具C及びワイヤWを駆動機構8から取外してもよい。
【0048】
次に、
図10に示されるように、ジャッキ7を伸び方向に動作させることで、駆動機構8、アダプタ54、カッタ52をクレーンにより僅かに上方に持ち上げ、固定冶具55を凹部53b内に退避させ、固定冶具55とアダプタ54の環状突部54aの下面との係止状態を解除する。このときには、カッタ52(略2910kg)、アダプタ54(略290kg)、駆動機構8(略6060kg)をジャッキ7の伸び方向の動作により持ち上げるため、ジャッキ7にかかる重量は、略9260kgとなっている。
【0049】
続いて、
図11に示されるように、ジャッキ7の縮み方向の動作によりケース部86が蓋体53の上部フランジ53cに載置されるように駆動機構8が降ろされ、ケース部86の下面86bが蓋体53の上部フランジ53cに接地し、カッタ52、アダプタ54、駆動機構8の荷重が筐体2側に支持される。
【0050】
この状態で、図示しないボルトナットによりケース部86と蓋体53とを固定する。これにより、取付フランジ筒51、カッタ52、蓋体53、アダプタ54及び駆動機構8により機能装置である切断機5が構成され、筐体2、作業弁4及び切断機5により設置装置が構成される。この際、センタードリル52bが弁体42と接触しないように調整されるのは言うまでもない。
【0051】
また、ケース部86と蓋体53とを固定したときには、パッキンS4がケース部86と蓋体53の上部フランジ53cとの間で圧接されるため、ケース部86と蓋体53との間の密封性を確保できる。尚、本実施例では、ケース部86の下面に形成された図示しない環状溝にパッキンS4が圧入されている形態を例示したが、これに限られず、蓋体53の上部フランジ53c側に環状溝を設け、該環状溝にパッキンS4が圧入されていてもよい。
【0052】
尚、本実施例では、ケース部86を蓋体53の上に載置した後も、安全性確保のために駆動機構8にワイヤWを若干緩めた状態でクレーンに接続しているが、これに限られず、吊り具C及びワイヤWを駆動機構8から取外してもよい。
【0053】
次に、切断機5により流体管1を切断する工程について説明する。
図12に示されるように、先ず、作業弁4の弁体42を退避させて分岐部2aを開放するとともに、上述した把持部材82により軸部材81における後端側の外周面を把持する。次いで、回転モータ87を駆動させ、軸部材81及びカッタ52を回転させる。そして、軸部材81及びカッタ52が回転された状態で進退部材83を流体管1に向けて進行させる。これによると、先ずカッタ52のセンタードリル52bが流体管1の管壁を穿設する。
【0054】
軸部材81及びカッタ52の進行移動は、把持部材82が軸部材81を把持位置から規制部材84に近接する位置までの範囲で行われ、軸部材81は、図示しないパッキンに摺動して進行移動され、進行移動完了後の軸部材81及びカッタ52は、規制部材84によって移動規制される。その後、回転モータ87による軸部材81の回転を停止し、軸部材81の上端に図示しない別の軸部材を連結し、上記工程を繰り返すことでカッタ52の円筒部材52aが流体管1を切断する。この際、必ずしも図示しない別の軸部材を連結するとは限らず、予め所定長さの軸部材81を用いて、切断を完了してもよい。
【0055】
図13に示されるように、カッタ52により流体管1が切断されると、流体管1が切断されることにより形成された切片1aが円筒部材52a内に保持された状態となる。そして、軸部材81及びカッタ52を上記工程と逆の手順で退行移動させることで、切片1aとともに取付フランジ筒51の内部に引き上げ、作業弁4の弁体42により分岐部2aを閉塞することで、流体管1の切断作業が完了する。
【0056】
以上説明したように、流体管1を切断する際の機能装置である切断機5は、複数の分割体である取付フランジ筒51、カッタ52、蓋体53、アダプタ54及び駆動機構8が連結されて機能し、複数の分割体のうち1つの分割体であるアダプタ54を筐体2側に設けられた固定冶具55(係止部)に係止させ、固定冶具55に係止されたアダプタ54に、駆動機構8を組み立て、筐体2側と駆動機構8との間に設置されたジャッキ7によって、筐体2側に駆動機構8の荷重を支持させた状態で、固定冶具55の係止を解除させる。これによれば、機能装置である切断機5におけるカッタ52、蓋体53及びアダプタ54(略5100kg)と駆動機構8(略6060kg)とを別々に運搬可能であることからクレーンへの負荷を分散して軽減できる。加えて、ジャッキ7を介して筐体2側に駆動機構8(略6060kg)の荷重を支持させることで、クレーンへの負荷を軽減させた状態でアダプタ54と筐体2側に設けられた固定冶具55の係止を解除させることができ、クレーンを小型化することができ切断機5を設置する作業スペースを省スペース化できる。
【0057】
特に、本実施例のようにカッタ52のようなホールソーを用いる場合には、少なくとも流体管1よりも大径の円筒部材52aを要するため、切断機5の構成も大型化するが、このような場合であっても、カッタ52、蓋体53及びアダプタ54と駆動機構8とを別々に設置することから、クレーンへの負荷を分散して、クレーンを好適に小型化することができる。
【0058】
尚、ここでは、作業性の観点からカッタ52、蓋体53及びアダプタ54をユニット化した状態で取付フランジ筒51に固定する形態を例示したが、これに限られず、例えば、カッタ52、蓋体53及びアダプタ54を別々に且つ順番に取付フランジ筒51に取付けるようにしてクレーンへの負荷を更に分散して軽減するようにしてもよい。この場合には、カッタ52を取付フランジ筒51内で保持する保持手段を用意すればよい。
【0059】
駆動機構8を吊り下げる工程では、シリンダラム7bを駆動機構8の孔86a(
図9参照)にそれぞれ挿通させることで、駆動機構8と蓋体53及びカッタ52とがシリンダ7aに案内されて芯合わせされ、カッタ52を位置決めしながら流体管1に対して精度よく設置できる。また、このように駆動機構8の下部と、ジャッキ7の上部とを上下に凹凸係合させることで、機能装置である切断機5を構成する分割体同士を精度良く連結することができる。
【0060】
また、ジャッキ7は、接続されて筐体2側を構成する蓋体53に一体的に固定されており、ジャッキ7を蓋体53に固定させた状態で筐体2側に移動させることでジャッキ7の位置決めが不要となり、ジャッキ7に精度良く切断機5の荷重を支持させることができる。
【0061】
また、ジャッキ7は、蓋体53の下部フランジ53dの周方向に複数箇所に配置されており、複数のジャッキ7に切断機5の荷重を分散させて安定して支持させることができる。
【0062】
また、ジャッキ7は、蓋体53の下部フランジ53dの周方向に3箇所等配されている。これによれば、仮に切断機5の荷重バランスによってケース部86の下面が傾斜した場合であっても、3箇所全てのジャッキ7のシリンダラム7bの下方のナット71上にケース部86の下面が当接し、切断機5の荷重を確実に全てのジャッキ7に分散させて安定して支持させることができる。
【0063】
また、ジャッキ7のシリンダラム7bを駆動機構8のケース部86の孔86a(
図9参照)にそれぞれ挿通させ、ケース部86を上下からナット71,72で挟持させることで、駆動機構8の落下や転倒を補助的に防ぐことができる。
【0064】
また、複数のジャッキ7は、同一の駆動手段である油圧ポンプにより駆動されて動作が同期されるため、切断機5を精度良く上下動させることができる。
【0065】
また、カッタ52と蓋体53とを固定冶具55により接続した状態で取付フランジ筒51内にカッタ52を収容するとともに、蓋体53と取付フランジ筒51とを固定するようになっているため、取付フランジ筒51を密封状に閉塞する蓋体53を利用してカッタ52を保持することができる。これによれば、カッタ52を保持するための特別な冶具を蓋体53とは別個に用意しなくて済み、構造を簡素化することができる。
【0066】
また、駆動機構8のケース部86を蓋体53から離間させた状態で、蓋体53の貫通孔53aを介してカッタ52(アダプタ54)と駆動機構8の軸部材81とを連結した後、ケース部86を蓋体53に密封状に接続するようになっている。これによれば、駆動機構8のケース部86と蓋体53との隙間からカッタ52と軸部材81とを連結することができるため、カッタ52と軸部材81とを連結するための作業孔等をケース部86や蓋体53に形成しなくて済み構造を簡素化できる。また、カッタ52と軸部材81とが接続された後にケース部86と蓋体53とを接続するため、アダプタ54及び軸部材81によりケース部86と蓋体53とがガイドされ、且つ安定した状態で接続作業を行うことができる。
【0067】
また、ケース部86と蓋体53との間にスペーサとして配置されたジャッキ7により確保されたケース部86と蓋体53の上部フランジ53cとの隙間から作業者がアクセスして、軸部材81とアダプタ54とをボルトナットN1により接続するため、軸部材81とアダプタ54との連結作業時に駆動機構8が落下することを防止でき、安全性が高い。また、ジャッキ7にケース部86を載置することにより、吊り具C及びワイヤWで吊った状態に比べケース部86が安定するため、軸部材81とアダプタ54との連結作業を行いやすい。
【0068】
尚、特に図示しないが、作業弁4の弁体42により分岐部2aを閉塞した状態のまま、先ず、駆動機構8を蓋体53から取外し、蓋体53とカッタ52とを切片1aとともに取付フランジ筒51から取外し、取付フランジ筒51を作業弁4から取外すことで、切断機5の撤去作業が完了する。このように、切断機5を構成する各部材を別々にクレーンにより運搬できるため、切断機5の撤去作業時におけるクレーンへの負荷を軽減できる。
【0069】
次に、流体管1を切断した箇所にバタフライ弁10を設置するための弁導入機6を設置する工程について説明する。先ず、
図14に示されるように、作業弁4の弁体42により分岐部2aを閉塞した状態のまま、上下方向に貫通する円筒部材61(筒状体)を吊り具C及びワイヤWにより吊持して作業弁4の上方まで下降させ、作業弁4の上方に円筒部材61を図示しないボルトナット等により固定する。本実施例における円筒部材61の重量は、略3000kgとなっている。また、円筒部材61と作業弁4(弁箱41)との間には、図示しないOリングが圧接されるため、円筒部材61と作業弁4とが密封状に接続される。円筒部材61は、作業弁4に固定されたことで、筐体2側の構成要素(筐体側要素)となる。
【0070】
円筒部材61に対してバタフライ弁10を仮設置する工程を説明する。先ず、バタフライ弁10の構造について
図15に基づいて説明する。
【0071】
図15に示されるように、バタフライ弁10は、流体管1の流路を流体が通過可能状態と通過不能状態とに制御するものであり、ほぼ中央部に開口を有する仕切壁11と、仕切壁11の上端部に回動可能に取付けられる開閉軸12と、開閉軸12を中心に回動して仕切壁11の開口を開閉可能に設けられた弁体13と、仕切壁11の上端部に密封状に接続される略水平方向に延びる略円形の上蓋部14(蓋体部)と、を備える。仕切壁11には、その両側面及び底面に亘ってパッキン(図示略)が固着され、上蓋部14には、その外周面の全周に亘ってパッキン(図示略)が固着されており、これらパッキンは直交して連続するように接続される。尚、本実施例におけるバタフライ弁10の総重量は、略9540kgとなっている。更に尚、仕切壁11と上蓋部14との間がパッキン等で密封されていることは言うまでもない。
【0072】
バタフライ弁10を円筒部材61に仮設置する際には、先ず、仕切壁11、開閉軸12及び弁体13(本体部)を一体化した状態で吊り具C及びワイヤWにより吊持して円筒部材61内に収容される位置まで下降させる。このとき、弁体13は、管軸方向と略平行(仕切壁11の開口を開放した状態)となるように配置する。
【0073】
そして、円筒部材61の周方向に複数形成された窓部61aを介して外部から円筒部材61内に一部突出するように係止部材62(係止部、保持部)を挿入する。これにより、ここでは図示しないが、仕切壁11から外側に突出する突出片が係止部材62の先端部に載置(係止)されるようになり、仕切壁11、開閉軸12及び弁体13が円筒部材61に保持されることとなる。尚、
図17では断面形状の都合上、紙面左右に円筒部材61及び係止部材62が配置されているように示されているが、実際には紙面貫通方向に円筒部材61及び係止部材62が配置され、係止部材62にそれぞれ仕切壁11の突出片が係止されている。
【0074】
次いで、上蓋部14を吊り具C及びワイヤWにより吊持して開閉軸12を挿通させた状態で仕切壁11の上部に載置する。そして、図示しない固定手段により上蓋部14と仕切壁11とを密封状に接続してバタフライ弁10を構成する。
【0075】
尚、本実施例では、一体化した仕切壁11、開閉軸12及び弁体13に対して上蓋部14を固定することでバタフライ弁10を円筒部材61上で構成する形態を例示したが、仕切壁11、開閉軸12、弁体13、上蓋部14をそれぞれ順番に別々に設置することでバタフライ弁10を構成してもよい。また、仕切壁11と弁体13を一体化し、開閉軸12と上蓋部14を一体化し、それらを組み立てることでバタフライ弁10を構成してもよい。つまり、少なくとも上蓋部14が他の部材(本体部)から分割されており、且つそれらを組み立てることでバタフライ弁10が構成される形態であれば自由に変更することができる。
【0076】
次に、
図16に示されるように、上下方向に貫通する取付フランジ筒63を吊り具C及びワイヤWにより吊持して円筒部材61の上方まで下降させ、円筒部材61の上方に取付フランジ筒63を図示しないボルトナット等により固定する。本実施例における取付フランジ筒63の重量は、略2600kgとなっている。取付フランジ筒63は、円筒部材61に固定されたことで、筐体2側の構成要素(筐体側要素)となる。
【0077】
また、取付フランジ筒63の下面には、図示しない環状溝が形成されており、この環状溝には、環状のパッキンが圧入されている。そのため、円筒部材61と取付フランジ筒63とを固定したときには、パッキンが円筒部材61と取付フランジ筒63との間で圧接されるため、円筒部材61と取付フランジ筒63との間の密封性を確保できる。尚、円筒部材61側に環状溝を設け、この環状溝にパッキンが圧入されていてもよい。
【0078】
次に、
図17に示されるように、取付フランジ筒63に対してバタフライ弁10と接続される弁吊金具64を仮設置する。詳しくは、弁吊金具64の上方に取付フランジ筒63の蓋体65を接続した状態で吊り具C及びワイヤWにより吊持して取付フランジ筒63の上方まで下降させる。弁吊金具64は、略水平方向を向く取付面部64aと、取付面部64aの略中心に設けられる貫通孔64bから上方に延びる筒状の軸部64cと、取付面部64aと軸部64cとの間に亘って設けられる補強用のリブ64dと、を備えている。また、軸部64cの上端部には、アダプタ66が接続されている。
【0079】
また、蓋体65は、中心部に上下方向に貫通する貫通孔65aが形成されており、貫通孔65aにアダプタ66が挿通されている。また、蓋体65は、貫通孔65aの内周面から外径方向に凹設される凹部65bが周方向に複数形成されており、凹部65bには、貫通孔65aの径方向に進退可能な固定冶具67が配設されている。固定冶具67が貫通孔65aの内径方向に突出し、アダプタ66の環状突部66aの下面に係止することで、弁吊金具64と蓋体65とが一体化されている。
【0080】
本実施例における弁吊金具64の重量は、略2000kgとなっており、蓋体65の重量は、略1900kgとなっており、アダプタ66の重量は、略270kgとなっており、これらの総重量は略4170kgとなっている。
【0081】
取付フランジ筒63の上端に蓋体65を載置した状態で取付フランジ筒63と蓋体65との位置合わせを行い、図示しないボルトナット等により固定する。蓋体65は、取付フランジ筒63に固定されたことで、筐体2側の構成要素(筐体側要素)となる。取付フランジ筒63と蓋体65との間には、図示しないパッキンが周方向に亘って圧接されるため、取付フランジ筒63と蓋体65との間の密封性を確保できる。
【0082】
次に、弁導入機6の挿入機としての駆動機構8を弁吊金具64に接続する。尚、駆動機構8は、流体管1の切断作業時に用いたものと同一のものを使用しているため、駆動機構8の構造の説明を省略する。
【0083】
図18に示されるように、駆動機構8を弁吊金具64と接続させる際には、軸部材81を予め所定長さ下方に進行させ、軸部材81の下端部がケース部86よりも下方に突出した状態とし、クレーンにより駆動機構8を吊り下げる。このとき、ジャッキ7のシリンダ7aに螺合された上方のナット72を取り外した状態とし、この状態で各シリンダ7aをケース部86に形成された上下方向に貫通する孔86a(
図9参照)にそれぞれ挿通させる。
【0084】
図19に示されるように、駆動機構8を吊り下げる工程では、軸部材81がアダプタ66の上面66b(
図17参照)に接触するまで下げられることで、駆動機構8の荷重はアダプタ66、固定冶具67等を介して筐体2側に支持される。
【0085】
次いで、ジャッキ7により形成されるケース部86と蓋体65の上部フランジ65cとの隙間から作業者がアクセスして、軸部材81とアダプタ66とをボルトナットN2により接続する。
【0086】
次に、
図20に示されるように、駆動機構8、アダプタ66、弁吊金具64をジャッキ7の伸び方向の動作により僅かに上方に持ち上げ、固定冶具67を凹部65b内に退避させる。このときには、弁吊金具64(略2000kg)、アダプタ66(略270kg)、駆動機構8(略6060kg)をジャッキ7の伸び方向の動作により持ち上げるため、ジャッキ7にかかる重量は、略8330kgとなっている。
【0087】
次に、
図21に示されるように、ジャッキ7の縮み方向の動作によりケース部86が蓋体65の上部フランジ65c載置されるように駆動機構8が降ろされ、ケース部86の下面が蓋体65の上部フランジ65cに接地し、弁吊金具64、アダプタ66、駆動機構8の荷重が筐体2側に支持される。
【0088】
この状態で、図示しないボルトナットによりケース部86と蓋体65とを固定する。また、ケース部86と蓋体65とを固定したときには、図示しないパッキンがケース部86と蓋体65の上部フランジ65cとの間で圧接されるため、ケース部86と蓋体65との間の密封性を確保できる。
【0089】
尚、本実施例では、ケース部86を蓋体65の上に載置した後も、安全性確保のために駆動機構8にワイヤWを若干緩めた状態でクレーンに接続するが、これに限られず、吊り具C及びワイヤWを駆動機構8から取外してもよい。
【0090】
次いで、
図22に示されるように、駆動機構8により弁吊金具64を下降させ、弁吊金具64の取付面部64aとバタフライ弁10の上蓋部14とを取付フランジ筒63の窓部63aから図示しないボルトナットにより接続する。これにより、円筒部材61、取付フランジ筒63、弁吊金具64、蓋体65、アダプタ66及び駆動機構8により機能装置である弁導入機6が構成され、筐体2、作業弁4及び弁導入機6により設置装置が構成される。尚、このとき、バタフライ弁10の開閉軸12は、弁吊金具64の軸部64cに挿入される。更に尚、円筒部材61、取付フランジ筒63、蓋体65は、連結されて機能する弁導入機6を構成するとともに、筐体2側に接続された以降は、筐体側要素の構成要素も兼ねる。
【0091】
その後、
図23に示されるように、駆動機構8により弁吊金具64及びバタフライ弁10を僅かに上方に吊り上げ、係止部材62を退行させて円筒部材61の窓部61aから引き抜く。尚、図示しないが、窓部61aには、密封状に閉塞するように栓がされる。この際、バタフライ弁10の下端部が作業弁4の弁体42と接触しないように調整されるのは言うまでもない。
【0092】
次に、弁導入機6により流体管1の切断された箇所にバタフライ弁10を設置する工程について説明する。
図24に示されるように、作業弁4の弁体42を退避させて分岐部2aを開放するとともに、上述した把持部材82により軸部材81における後端側の外周面を把持する。そして、進退部材83を流体管1に向けてスライドさせることで軸部材81及びバタフライ弁10を流体管1に向けて進行させる。
【0093】
軸部材81及びバタフライ弁10の進行移動は、把持部材82が軸部材81を把持位置から規制部材84に近接する位置までの範囲で行われ、進行移動完了後の軸部材81及びバタフライ弁10は、規制部材84によって移動規制される。その後、軸部材81の上端に図示しない別の軸部材を連結し、上記工程を繰り返すことでバタフライ弁10を流体管1の切断箇所に配置する。バタフライ弁10を流体管1の切断箇所に配置した後、所定の固定手段によりバタフライ弁10を筐体2に固定する。この際、必ずしも図示しない別の軸部材を連結するとは限らず、予め所定長さの軸部材81を用いて、配置を完了してもよい。
【0094】
尚、バタフライ弁10を筐体2に固定した状態にあっては、仕切壁11の図示しないパッキンが筐体2の両内側面及び内底面に亘って圧接されるとともに、上蓋部14の図示しないパッキンが分岐部2aの内周面に亘って圧接されるため、流体管1を流れる流体が仕切壁11と筐体2との間から回り込むことが防止されるとともに、分岐部2aから流体が漏れることが防止される。
【0095】
次いで、
図25に示されるように、円筒部材61及び取付フランジ筒63内の流体を外部に排出するとともに、円筒部材61の図示しない作業孔部からアクセスして弁吊金具64の取付面部64aとバタフライ弁10の上蓋部14とのボルトナットによる接続を解除する。そして、軸部材81を上記工程と逆の手順で退行移動させ、弁吊金具64を円筒部材61及び取付フランジ筒63の内部に引き上げることで、バタフライ弁10を流体管1の切断箇所に設置する作業が完了する。
【0096】
尚、特に図示しないが、先ず、駆動機構8を蓋体65から取外し、蓋体65と弁吊金具64とを取付フランジ筒63から取外し、取付フランジ筒63を円筒部材61から取外し、円筒部材61を作業弁4から取外すことで、弁導入機6の撤去作業が完了する。このように、弁導入機6を構成する各部材を別々にクレーンにより運搬できるため、弁導入機6の撤去作業時におけるクレーンへの負荷を軽減できる。その後、作業弁4を筐体2の分岐部2aから取外すことで、流体管1の所定箇所を切断し、その切断箇所にバタフライ弁10を設置するまでの一連の作業が完了する。
【0097】
このように、作業弁4に仕切壁11、開閉軸12及び弁体13を設置し、作業弁4に設置された仕切壁11、開閉軸12及び弁体13に上蓋部14を取付けることでバタフライ弁10を構成している。これによれば、バタフライ弁10の本体部である仕切壁11、開閉軸12及び弁体13と、蓋体部である上蓋部14と、を別々に運搬できることから、バタフライ弁10を組み立てた状態で円筒部材61に設置する場合(略9540kg)に比べて、クレーンへの負荷を分散して軽減できるため、クレーンを小型化することができ、バタフライ弁10を設置する作業スペースを省スペース化できる。
【0098】
本実施例のようにカッタ52のようなホールソーを用いる場合には、少なくとも流体管1よりも大径の円筒部材52aを要するため、筐体2の構成も大型化し、これに伴いバタフライ弁10、特に、分岐部2aを閉塞するための上蓋部14が大型化してしまうが、このような場合であっても、仕切壁11、開閉軸12及び弁体13と上蓋部14とを別々に設置することから、クレーンへの負荷を分散して、クレーンを好適に小型化することができる。
【0099】
また、作業弁4にバタフライ弁10を収容可能な円筒部材61(略3000kg)を設置し、その円筒部材61内に仕切壁11、開閉軸12及び弁体13を設置するとともに、円筒部材61に設置された仕切壁11、開閉軸12及び弁体13に上蓋部14を取付けるため、作業弁4に設置した円筒部材61を用いて、バタフライ弁10を位置決めしながら精度よく設置できる。
【0100】
また、円筒部材61には、係止部材62が取付け可能となっており、この係止部材62に仕切壁11、開閉軸12及び弁体13を係止した安定状態で上蓋部14を精度よく取付けることができる。
【0101】
また、係止部材62にバタフライ弁10を保持させた状態で、該バタフライ弁10に駆動機構8及び弁吊金具64(挿入機)を連結するため、バタフライ弁10を安定させた状態で、バタフライ弁10に駆動機構8及び弁吊金具64を精度よく取付けることができ、この駆動機構8及び弁吊金具64により筐体2内の所期の位置にバタフライ弁10を設置することができる。
【0102】
さらに、バタフライ弁10を構成した後、駆動機構8及び弁吊金具64を接続して弁導入機6を構成することから、バタフライ弁10と駆動機構8及び弁吊金具64を一体的に組み立てた状態で作業弁4に設置することに比べて、クレーンの負荷を軽減できる。
【0103】
また、駆動機構8及び弁吊金具64とバタフライ弁10との間、具体的には、駆動機構8のケース部86と蓋体65の間にスペーサとしてのジャッキ7を配置し、ジャッキ7に載置された駆動機構8に接続される弁吊金具64の取付面部64aをバタフライ弁10の上蓋部14と連結する。これによれば、駆動機構8の駆動によりバタフライ弁10の上蓋部14との連結作業ができるためクレーンへの負荷を軽減して該クレーンを小型化することができる。
【0104】
以上説明したように、切断機5、弁導入機6は、複数の分割体から構成されており、流体管1に筐体2を密封状に取付けた後、前記分割体を筐体2に順次組み立てるようになっている。具体的には、切断機5の場合、取付フランジ筒51と、カッタ52及び蓋体53と、駆動機構8と、に分割されており、これらを筐体2に接続された作業弁4に順次組み立てることにより機能装置である切断機5が構成される。また、弁導入機6の場合、円筒部材61と、取付フランジ筒63と、弁吊金具64、蓋体65と、アダプタ66と、駆動機構8と、に分割されており、これらを筐体2に接続された作業弁4に順次組み立てることにより機能装置である弁導入機6が構成される。これによれば、切断機5、弁導入機6を構成する複数の分割体を別々にクレーンで運搬でき、加えてジャッキ7を介して円筒部材61、取付フランジ筒63及び蓋体65を含む筐体2側に機能装置を構成する駆動機構8の荷重を支持させるため、クレーンへの負荷を軽減して該クレーンを小型化することができる。
【0105】
また、複数の分割体のうち一の分割体を筐体2に設けられた係止部に係止させ、前記係止部に係止された一の分割体に、残りの分割体を組み立てるようになっている。具体的には、切断機5の場合、一の分割体であるカッタ52を、作業弁4を介して筐体2に接続される取付フランジ筒51の蓋体53に設けられる固定冶具55(係止部)に係止させ、そのカッタ52に他の分割体である駆動機構8を組み立てるようになっている。また、弁導入機6の場合、一の分割体である弁吊金具64を、作業弁4を介して筐体2に接続される取付フランジ筒63の蓋体65に設けられる固定冶具67(係止部)に係止させ、その弁吊金具64に他の分割体である駆動機構8を組み立てるようになっている。これによれば、複数の分割体のうち一の分割体を筐体2の係止部に係止させた安定状態で、この一の分割体に残りの分割体を精度高く取付けることができる。
【0106】
また、駆動機構8はカッタ52の駆動、進退移動用と、弁導入機6及びバタフライ弁10の挿入用として兼用できるため、構造を簡素化することができる。
【0107】
尚、本実施例では、作業弁4、切断機5、弁導入機6、バタフライ弁10がそれぞれ複数の分割体から構成される形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、切断機5、弁導入機6、のうち少なくとも1つが複数の分割体から構成されていればよい。また、不断流状態での切断や弁導入の際に全ての窓部や作業孔部などには蓋を密封状に取り付けるのは言うまでもない。
【0108】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0109】
例えば、前記実施例では、制流体としてバタフライ弁10を用いる形態を例示したが、本発明はこれに限られず、例えば、制流体は、仕切弁、プラグ、または切換弁等であってもよい。例えば前記実施例では、バタフライ弁10を複数の分割体から構成される態様を例示したが、これに限らず制流体を一体に構成してもよい。
【0110】
前記実施例では、ジャッキの台数について必要最低限の台数で作業性と安定性を確保できる3台の等配としたが、総重量の負荷やジャッキの性能により適宜ジャッキの台数を増やし等配してもよい。また、負荷に対して安定性を確保するために、等配ではなくジャッキを偏在させてもよい。