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特開2024-160543表示パネル、及び、表示パネルの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160543
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】表示パネル、及び、表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1334 20060101AFI20241107BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20241107BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G02F1/1334
G02F1/1333
G02F1/1335 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075664
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中井 貴子
(72)【発明者】
【氏名】島田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正
(72)【発明者】
【氏名】橋本 純一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智徳
【テーマコード(参考)】
2H189
2H291
【Fターム(参考)】
2H189AA04
2H189AA53
2H189CA08
2H189HA16
2H189LA02
2H189LA03
2H189LA05
2H189LA10
2H189LA14
2H189LA15
2H189MA15
2H189NA09
2H291FA02Y
2H291FA13X
2H291FA13Z
2H291FA16Y
2H291FA71Z
2H291FA82Z
2H291FA85Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FD22
2H291FD26
2H291GA02
2H291GA04
2H291GA08
2H291GA19
2H291GA23
2H291GA24
2H291JA02
2H291LA21
2H291LA40
2H291MA20
2H291NA62
(57)【要約】
【課題】 額縁領域近傍における表示ムラを抑制することができる表示パネル、及び、当該表示パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の表示パネルは、画像を表示する表示領域と、上記表示領域の周囲に設けられた額縁領域と、を備え、スイッチング素子を有する第1の基板と、光硬化モノマーの重合体を含有するポリマー含有層と、上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を遮る遮光部が上記額縁領域に配置されていない第2の基板と、をこの順に有する。
【選択図】 図1D

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示領域と、前記表示領域の周囲に設けられた額縁領域と、を備え、
スイッチング素子を有する第1の基板と、光硬化モノマーの重合体を含有するポリマー含有層と、前記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を遮る遮光部が前記額縁領域に配置されていない第2の基板と、をこの順に有することを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記ポリマー含有層は、前記光硬化モノマーの重合体により構成されるポリマーネットワークと、液晶成分と、を含有することを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記ポリマー含有層は、前記光硬化モノマーの重合体により構成され、かつ、前記第1の基板側の表面及び前記第2の基板側の表面に位置する一対のポリマー層と、前記一対のポリマー層の間に位置する液晶成分と、を含有することを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項4】
前記第1の基板は、互いに平行に延設された複数のゲート線と、絶縁層を介して前記複数のゲート線と交差する方向に互いに平行に延設された複数のソース線と、を備え、
前記表示領域において、前記複数のゲート線及び前記複数のソース線と重畳する位置にブラックマトリクス層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項5】
前記第2の基板は、更に、前記額縁領域において、前記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を透過する着色部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項6】
更に、前記第1の基板の前記ポリマー含有層と反対側の額縁領域及び前記第2の基板の前記ポリマー含有層と反対側の額縁領域の少なくとも一方の額縁領域に、インク部を備えることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項7】
更に、前記第2の基板の前記ポリマー含有層と反対側に位置する第2の基板側フィルムを備え、
前記インク部は、前記第2の基板側フィルムと前記第2の基板との間、及び、前記第2の基板側フィルムの前記第2の基板と反対側の少なくとも一方に位置する第2の基板側インク部を備えることを特徴とする請求項6に記載の表示パネル。
【請求項8】
前記第2の基板側インク部は、前記第2の基板側フィルムと前記第2の基板との間に位置することを特徴とする請求項7に記載の表示パネル。
【請求項9】
前記第2の基板側フィルムは、UVカットフィルムであることを特徴とする請求項7に記載の表示パネル。
【請求項10】
前記第2の基板側フィルムは、偏光子であることを特徴とする請求項7に記載の表示パネル。
【請求項11】
更に、前記第1の基板の前記ポリマー含有層と反対側に位置する第1の基板側フィルムを備え、
前記インク部は、前記第1の基板側フィルムと前記第1の基板との間、及び、前記第1の基板側フィルムの前記第1の基板と反対側の少なくとも一方に位置する第1の基板側インク部を備えることを特徴とする請求項6に記載の表示パネル。
【請求項12】
前記第1の基板側インク部は、前記第1の基板側フィルムと前記第1の基板との間に位置することを特徴とする請求項11に記載の表示パネル。
【請求項13】
前記第1の基板側フィルムは、UVカットフィルムであることを特徴とする請求項11に記載の表示パネル。
【請求項14】
前記第1の基板側フィルムは、偏光子であることを特徴とする請求項11に記載の表示パネル。
【請求項15】
更に、筐体を含み、
前記インク部は、前記筐体と同色であることを特徴とする請求項6に記載の表示パネル。
【請求項16】
スイッチング素子を有する第1の基板と、画像を表示する表示領域の周囲に設けられた額縁領域に遮光部を備えない第2の基板との間に、光硬化モノマーを含有する組成物が充填されたパネル前駆体に対して、前記第2の基板側から光を照射する露光工程を備えることを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項17】
前記露光工程の後、更に、第1の基板側インク部が前記額縁領域に配置された第1の基板側フィルムを、前記第1の基板の前記第2の基板と反対側に貼り合わせる貼合工程を備えることを特徴とする請求項16に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項18】
前記露光工程の後、更に、第2の基板側インク部が前記額縁領域に配置された第2の基板側フィルムを、前記第2の基板の前記第1の基板と反対側に貼り合わせる貼合工程を備えることを特徴とする請求項16に記載の表示パネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示パネル、及び、表示パネルの製造方法に関する。より具体的には、表示パネル、及び、当該表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示パネルの背面が透けて見える表示を行うことができるシースルーパネル等の表示パネルが注目されている。例えば、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)層を用いた表示パネルが開発されている。PDLC層は、光硬化モノマーを光重合させることにより得られるポリマーネットワーク中に、液晶成分が分散された構成を有し、電圧の印加によって液晶成分の配向状態を変化させることにより液晶成分とポリマーネットワークとの屈折率差を利用して、透明状態と散乱状態とを切り替えることができる。
【0003】
PDLC層を用いた表示パネルに関する技術として、例えば、特許文献1には、互いに対向して配置された第1基板及び第2基板と、上記第1基板及び第2基板の間に設けられた高分子分散型の液晶層と、上記第1基板に設けられたブラックマトリクスとを備え、画像表示を行う表示領域、及び該表示領域の周囲に額縁領域が規定された液晶表示装置であって、上記額縁領域では、上記ブラックマトリクスが互いに離間する複数の遮光部により構成されている液晶表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/103589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図28は、比較形態に係る表示パネルの外観を示す模式図である。図28に示すように、比較形態の表示パネル1Rでは、額縁領域1NA(具体的には、端子辺と反対側の額縁領域1NA)近傍において、ある温度(例えば45℃)で透過率が他の領域と異なるエリアが出現する。このように、PDLC層を備える比較形態の表示パネル1Rでは、端子が設けられた端子辺と反対側の額縁領域1NA近傍において、ある温度(パネル作製条件、材料によって異なるが、例えば、30~40数℃)で他のエリアよりも透過率がアップし、ムラ(表示ムラ)が発生する。
【0006】
比較形態の表示パネルと同様に、上記特許文献1の液晶表示装置においても、額縁領域近傍の透過率が他のエリアよりも増大し、表示ムラが発生するという課題がある。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、額縁領域近傍における表示ムラを抑制することができる表示パネル、及び、当該表示パネルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一実施形態は、画像を表示する表示領域と、上記表示領域の周囲に設けられた額縁領域と、を備え、スイッチング素子を有する第1の基板と、光硬化モノマーの重合体を含有するポリマー含有層と、上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を遮る遮光部が上記額縁領域に配置されていない第2の基板と、をこの順に有する、表示パネル。
【0009】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記ポリマー含有層は、上記光硬化モノマーの重合体により構成されるポリマーネットワークと、液晶成分と、を含有する、表示パネル。
【0010】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記ポリマー含有層は、上記光硬化モノマーの重合体により構成され、かつ、上記第1の基板側の表面及び上記第2の基板側の表面に位置する一対のポリマー層と、上記一対のポリマー層の間に位置する液晶成分と、を含有する、表示パネル。
【0011】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)又は上記(3)の構成に加え、上記第1の基板は、互いに平行に延設された複数のゲート線と、絶縁層を介して上記複数のゲート線と交差する方向に互いに平行に延設された複数のソース線と、を備え、上記表示領域において、上記複数のゲート線及び上記複数のソース線と重畳する位置にブラックマトリクス層が設けられている、表示パネル。
【0012】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)又は上記(4)の構成に加え、上記第2の基板は、更に、上記額縁領域において、上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を透過する着色部を備えている、表示パネル。
【0013】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)又は上記(5)の構成に加え、更に、上記第1の基板の上記ポリマー含有層と反対側の額縁領域及び上記第2の基板の上記ポリマー含有層と反対側の額縁領域の少なくとも一方の額縁領域に、インク部を備える、表示パネル。
【0014】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(6)の構成に加え、更に、上記第2の基板の上記ポリマー含有層と反対側に位置する第2の基板側フィルムを備え、上記インク部は、上記第2の基板側フィルムと上記第2の基板との間、及び、上記第2の基板側フィルムの上記第2の基板と反対側の少なくとも一方に位置する第2の基板側インク部を備える、表示パネル。
【0015】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(7)の構成に加え、上記第2の基板側インク部は、上記第2の基板側フィルムと上記第2の基板との間に位置する、表示パネル。
【0016】
(9)また、本発明のある実施形態は、上記(7)又は上記(8)の構成に加え、上記第2の基板側フィルムは、UVカットフィルムである、表示パネル。
【0017】
(10)また、本発明のある実施形態は、上記(7)又は上記(8)の構成に加え、上記第2の基板側フィルムは、偏光子である、表示パネル。
【0018】
(11)また、本発明のある実施形態は、上記(6)、上記(7)、上記(8)、上記(9)又は上記(10)の構成に加え、更に、上記第1の基板の上記ポリマー含有層と反対側に位置する第1の基板側フィルムを備え、上記インク部は、上記第1の基板側フィルムと上記第1の基板との間、及び、上記第1の基板側フィルムの上記第1の基板と反対側の少なくとも一方に位置する第1の基板側インク部を備える、表示パネル。
【0019】
(12)また、本発明のある実施形態は、上記(11)の構成に加え、上記第1の基板側インク部は、上記第1の基板側フィルムと上記第1の基板との間に位置する、表示パネル。
【0020】
(13)また、本発明のある実施形態は、上記(11)又は上記(12)の構成に加え、上記第1の基板側フィルムは、UVカットフィルムである、表示パネル。
【0021】
(14)また、本発明のある実施形態は、上記(11)又は上記(12)の構成に加え、上記第1の基板側フィルムは、偏光子である、表示パネル。
【0022】
(15)また、本発明のある実施形態は、上記(6)、上記(7)、上記(8)、上記(9)、上記(10)、上記(11)、上記(12)、上記(13)又は上記(14)の構成に加え、更に、筐体を含み、上記インク部は、上記筐体と同色である、表示パネル。
【0023】
(16)また、本発明の他の一実施形態は、スイッチング素子を有する第1の基板と、画像を表示する表示領域の周囲に設けられた額縁領域に遮光部を備えない第2の基板との間に、光硬化モノマーを含有する組成物が充填されたパネル前駆体に対して、上記第2の基板側から光を照射する露光工程を備える、表示パネルの製造方法。
【0024】
(17)また、本発明のある実施形態は、上記(16)の構成に加え、上記露光工程の後、更に、第1の基板側インク部が上記額縁領域に配置された第1の基板側フィルムを、上記第1の基板の上記第2の基板と反対側に貼り合わせる貼合工程を備える、表示パネルの製造方法。
【0025】
(18)また、本発明のある実施形態は、上記(16)又は上記(17)の構成に加え、上記露光工程の後、更に、第2の基板側インク部が上記額縁領域に配置された第2の基板側フィルムを、上記第2の基板の上記第1の基板と反対側に貼り合わせる貼合工程を備える、表示パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、額縁領域近傍における表示ムラを抑制することができる表示パネル、及び、当該表示パネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】実施形態1に係る表示パネルの平面模式図である。
図1B】実施形態1に係る表示パネルが備える第1の基板の平面模式図である。
図1C】実施形態1に係る表示パネルが備える第2の基板の平面模式図である。
図1D図1A中のA1-A2線に沿った実施形態1に係る表示パネルの断面模式図である。
図2】比較形態に係る表示パネルのTFT基板の平面模式図である。
図3図2の破線で囲んだ領域におけるTFT基板の走査電子顕微鏡写真である。
図4】実施形態1に係る表示パネルの一例を示す断面模式図である。
図5】実施形態1に係る表示パネルにおいて、第2の基板側インク部が、第2の基板側フィルムの第2の基板と反対側に位置する場合について説明する断面模式図である。
図6】実施形態1に係る表示パネルにおいて、第2の基板側インク部が、第2の基板側フィルムと第2の基板との間に設けられる場合について説明する断面模式図である。
図7】実施形態1に係る表示パネルの製造方法を示す模式図である。
図8】実施形態1の変形例1に係る表示パネルの断面模式図である。
図9】実施形態1に係る表示パネルの額縁反射について説明する断面模式図である。
図10】実施形態1の変形例1に係る表示パネルの額縁反射について説明する断面模式図である。
図11】実施形態1に係る表示パネル及び実施形態1の変形例1に係る表示パネルの額縁反射を比較した表である。
図12】実施形態1の変形例1に係る表示パネルが備える第1の基板側フィルムの平面模式図である。
図13】実施形態1の変形例2に係る表示パネルが備える第1の基板側フィルムの平面模式図である。
図14】実施形態1の変形例3に係る表示パネルとバックライトとを備える液晶表示装置の断面模式図である。
図15】実施形態1の変形例4に係る筐体付き表示パネルの製造方法を示した模式図である。
図16】実施形態1の変形例5に係る表示パネルを示す断面模式図である。
図17】垂直配向膜の機能について説明する断面模式図である。
図18】垂直配向膜とポリマーとの絡み合いについて説明する断面模式図である。
図19】水平配向膜の機能について説明する断面模式図である。
図20】水平配向膜とポリマーとの絡み合いについて説明する断面模式図である。
図21】実施例1に係る表示パネルの製造方法を示した模式図である。
図22】比較例1に係る表示パネルの製造工程で用いられるパネル前駆体の平面模式図である。
図23図22において破線で囲んだ領域の拡大平面模式図である。
図24】比較例1に係る表示パネルの製造方法を示す模式図である。
図25】40Jで露光した比較例3の表示パネルの表示ムラを示す平面模式図である。
図26】100Jで露光した比較例3の表示パネルの表示ムラを示す平面模式図である。
図27】比較例3に係る表示パネルを製造する際の露光量と、当該表示パネルの保持率との関係を示すグラフである。
図28】比較形態に係る表示パネルの外観を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【0029】
(実施形態1)
図1Aは、実施形態1に係る表示パネルの平面模式図である。図1Bは、実施形態1に係る表示パネルが備える第1の基板の平面模式図である。図1Cは、実施形態1に係る表示パネルが備える第2の基板の平面模式図である。図1Dは、図1A中のA1-A2線に沿った実施形態1に係る表示パネルの断面模式図である。図1A図1Dに示すように、本実施形態の表示パネル1は、画像を表示する表示領域1AAと、表示領域1AAの周囲に設けられた額縁領域1NAと、を備え、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)120を有する第1の基板100と、光硬化モノマーの重合体を含有するポリマー含有層200と、上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を遮る遮光部320が額縁領域1NAに配置されていない第2の基板300と、をこの順に有する。このような態様とすることにより、額縁領域1NAにおいて、光硬化モノマーの重合が促進され、ポリマー含有層200における残存モノマー(未反応モノマー)の量を抑制することができる。その結果、額縁領域1NA近傍における表示ムラを抑制することができる。
【0030】
ここで、上述のように、PDLC層を備える比較形態の表示パネル1Rでは、ある温度で他のエリアよりも透過率がアップして可逆的な表示ムラが発生する。この現象は、PDLC層中のポリマーネットワーク表面に垂直配向している液晶成分が、ある温度で水平配向に変わる「アンカリング転移」の転移点で起こる現象である。当該転移点の温度ではアンカリングが弱いため、閾値未満の電圧(例えば0.5Vの電圧)でも透明になってしまうために表示ムラが発生すると考えられる。他の領域でもアンカリング転移は起こるが、アンカリング転移の起こる温度がもっと高温であるため、端子辺と反対側の額縁領域1NAのみムラとなって認識されてしまうと考えられる。
【0031】
すなわち、端子辺と反対側の額縁領域1NA近傍のみにおいて表示ムラが見られるのは、アンカリング転移の起こる温度(アンカリング転移点)が、端子辺と反対側の額縁領域1NAの方が、その他の領域よりも低いためと考えられる。この理由は次のように考えられる。
【0032】
図2は、比較形態に係る表示パネルのTFT基板の平面模式図である。図3は、図2の破線で囲んだ領域におけるTFT基板の走査電子顕微鏡写真である。上記比較形態の表示パネル1Rは、図2に示すように、スイッチング素子としてのTFTが設けられたTFT基板100Rを備える。TFT基板100Rの端子辺と反対側には、表示領域1AAとシール500Rとの間に表示エリア外の配線パターン101Xが配置されている。
【0033】
例えば、図2及び図3に示すように、配線パターン101Xに重畳しない領域は充分に露光されるためポリマーが形成されるが、配線パターン101Xの裏(配線パターン101Xの下層に重畳する領域)は充分に露光されず、ポリマーが形成されない。その結果、PDLC層に含まれる、露光されなかった光硬化モノマーが表示領域1AAへと染み出し、アンカリング転移点が下がり、アンカリング転移が低温で起こってしまうと考えられる。
【0034】
また、比較形態の表示パネル1Rでは、高温信頼性試験において、端子辺と反対側の額縁領域1NA近傍に不可逆の透明エリアが発生する。この理由は次のように考えられる。すなわち、上述のようにPDLC層に含まれる、露光されなかった光硬化モノマーが表示領域1AAへと染み出すことにより、高温でのエージングによりポリマーの表面状態が変化して不可逆的な透明エリアムラ(不可逆的な表示ムラ)になると考えられる。
【0035】
上記特許文献1の液晶表示装置では、額縁領域のブラックマトリクスが縞状に離れて配置されている。これにより、額縁領域において、ブラックマトリクスによる遮光エリアの面積が減少し、残存モノマーの量を減少させることができる。しかしながら、特許文献1の液晶表示装置では、額縁領域に依然として遮光エリアが存在するため、露光によりPDLC層を形成する際に、額縁領域の一部が遮光エリアの影になってしまう。その結果、遮光エリアには残存モノマーが存在することとなる。したがって、特許文献1の液晶表示装置では、残存モノマーの染み出しによる影響を充分に低減することはできない。
【0036】
一方、本実施形態では、額縁領域1NAにブラックマトリクス等の遮光部320を有さない第2の基板300を用いているため、特許文献1のように、露光によりPDLC層を形成する際に遮光部の影になってしまう部分はない。そのため、額縁領域1NAにおいて、光硬化モノマーの重合が促進されて、残存モノマー量が表示領域1AAと同等かそれ以下のレベルとなり、額縁領域1NA近傍における表示ムラを抑制することができる。以下、本実施形態の表示パネル1の詳細を説明する。
【0037】
図4は、実施形態1に係る表示パネルの一例を示す断面模式図である。図4に示すように、本実施形態の表示パネル1は、第1の基板100と、ポリマー含有層200と、第2の基板300と、をこの順に有する。
【0038】
第1の基板100は、ポリマー含有層200に向かって順に、第1の支持基板110と、ソース線101Sと、絶縁層130と、画素電極140と、を備える。第2の基板300は、ポリマー含有層200に向かって順に、第2の支持基板310と、遮光部320と、オーバーコート層321と、対向電極322と、を備える。第1の基板100は、TFT基板ともいう。第2の基板300は、対向基板ともいう。
【0039】
第1の基板100は、表示領域1AAにおいて、第1の支持基板110上に、互いに平行に延設された複数のゲート線101Gと、絶縁層を介して各ゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線101Sと、を備える。複数のゲート線101G及び複数のソース線101Sは、各画素を区画するように全体として格子状に形成されている。
【0040】
各ソース線101Sと各ゲート線101Gとの交点にはスイッチング素子としてのTFT120が配置されている。互いに隣接する2本のソース線101Sと互いに隣接する2本のゲート線と101Gに囲まれた各領域には画素電極140が配置されている。画素電極140は、TFT120が備える半導体層を介して対応するソース線101Sと電気的に接続されている。
【0041】
表示パネル1は、ソース線101Sに電気的に接続されたソースドライバ、ゲート線101Gに電気的に接続されたゲートドライバ、及び、コントローラを更に備えている。ゲートドライバは、コントローラによる制御に基づいて、ゲート線に走査信号を順次供給する。ソースドライバは、TFT120が走査信号によって電圧印加状態となるタイミングで、コントローラによる制御に基づいてソース線101Sにデータ信号を供給する。ドライバが配置される額縁領域1NAには、TFT120の端子パターン(額縁パターン)120Aが設けられている。
【0042】
画素電極140は各々、対応するTFT120を介して供給されるデータ信号に応じた電位に設定され、画素電極140と対向電極322との間で縦電界が発生する。ポリマー含有層200に含まれる正の誘電率異方性を有する液晶成分220は、電界方向と平行に並ぼうとする、すなわち、正の誘電率異方性を有する液晶成分220は電極に対して垂直に配向する。ポリマーネットワーク210に対して液晶成分220がランダムな方向で存在する電圧無印加状態では光を散乱することができる。また、画素電極140と対向電極322との間に印加する電圧の大きさを制御し、液晶成分220が電界方向と平行に並んだ場合に、正面視で透過状態を実現することができる。
【0043】
ポリマーの平均屈折率をnp、液晶の長軸方向の屈折率をne、短軸方向の屈折率をnoとしたとき、ne>>no≒npが成り立つ。電圧無印加状態では、npと、ne及びnoの平均値((ne+no)/2)との間に屈折率差があるため「散乱」して見る。一方、電圧印加状態においては、パネルを正面から見たとき(電界方向と平行方向から見たとき)にnp≒noが成り立つので屈折率差は小さくなり、「透明」に見える。
【0044】
第1の支持基板110及び第2の支持基板310としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の絶縁基板が挙げられる。ガラス基板の材料としては、例えば、フロートガラス、ソーダガラス等のガラスが挙げられる。ブラスチック基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン等のプラスチックが挙げられる。
【0045】
各TFT120は、複数のソース線及び複数のゲート線のうちの対応するソース線101S及びゲート線101Gに接続され、対応するゲート線101Gから突出した(ゲート線の一部である)ゲート電極、対応するソース線101Sから突出した(ソース線101Sの一部である)ソース電極、複数の画素電極140のうちの対応する画素電極140と接続されたドレイン電極、及び、薄膜半導体層を有する三端子スイッチである。ソース電極及びドレイン電極は、ソース線101Sと同じ層に設けられる電極であり、ゲート電極はゲート線101Gと同じ層に設けられる電極である。
【0046】
各TFT120の薄膜半導体層は、例えば、アモルファスシリコン、ポリシリコン等からなる高抵抗半導体層と、アモルファスシリコンにリン等の不純物をドープしたn+アモルファスシリコン等からなる低抵抗半導体層とによって構成される。また、薄膜半導体層として、酸化亜鉛等の酸化物半導体層を用いてもよい。
【0047】
絶縁層130は、例えば、無機絶縁膜、有機絶縁膜、又は、上記有機絶縁膜と無機絶縁膜との積層体である。無機絶縁膜としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiO)等の無機膜や、それらの積層膜を用いることができる。有機絶縁膜としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜や、それらの積層体を用いることができる。絶縁層130は、着色しておらず、無色透明である。
【0048】
オーバーコート層321は、第2の基板300のポリマー含有層200側の面を平坦化する機能を有する。オーバーコート層321は、例えば、有機絶縁膜である。有機絶縁膜としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜や、それらの積層体を用いることができる。本実施形態では、表示パネル1がオーバーコート層321を備える態様について説明するが、表示パネル1は、オーバーコート層321を備えていなくてもよい。
【0049】
画素電極140は、互いに隣接する2本のソース線101Sと互いに隣接する2本のゲート線101Gとに囲まれた各領域に配置された電極である。画素電極140は、対応するTFT120を介して供給されるデータ信号に応じた電位に設定される。対向電極322に対しては一定値に保たれた共通信号が供給され、対向電極322は一定の電位に保たれる。
【0050】
ポリマー含有層200は、光硬化モノマーの重合体を含有する。光硬化モノマーの重合体は、光硬化モノマーに光を照射して重合することにより得られる重合体である。ポリマー含有層200は、例えば、光硬化モノマーを含有する組成物に光を照射して重合することにより得られる層である。上記組成物は、光硬化モノマーに加えて、液晶成分220を含有してもよい。この場合、ポリマー含有層200にも、液晶成分220が含まれる。
【0051】
ポリマー含有層200は、上記光硬化モノマーの重合体により構成されるポリマーネットワーク210と、液晶成分220と、を含有する。本実施形態のポリマー含有層200は、高分子分散液晶層ともいう。ポリマー含有層200では、光硬化モノマーの重合体(光硬化モノマーの硬化物)の繊維状マトリクスが凝集して三次元的に連続したポリマーネットワーク210が形成されており、該ポリマーネットワーク210中に液晶成分220が存在する状態となっている。
【0052】
高分子分散液晶層であるポリマー含有層200は、電圧無印加時に散乱状態であり、電圧印加時に透明状態である。このような態様とすることにより、偏光板を必要としない表示パネル1を実現することができる。より具体的には、電圧無印加時に散乱状態であり、電圧印加時に液晶成分220の配向が変化して透明状態となる。表示パネル1はシースルーパネルとして機能する。なお、本明細書では、画素電極140と対向電極322との間に閾値以上の電圧が印加された電圧印加状態を、単に「電圧印加状態」又は「電圧印加時」ともいい、画素電極140と対向電極322との間に閾値未満の電圧が印加された(電圧無印加を含む)電圧無印加状態を、単に「電圧無印加状態」又は「電圧無印加時」ともいう。電圧無印加状態とは、より具体的には、256階調表示における、0階調状態(V0)をいう。
【0053】
例えば、ポリマーネットワーク210内に、液晶成分220が存在した状態である場合、電圧無印加状態において、液晶成分220は、ポリマーネットワーク210に沿って配向する。入射光は、ポリマーネットワーク210と液晶成分220との屈折率差によって、光は直進できずに散乱し、曇りガラス状(散乱状態)が実現される。
【0054】
一方、電圧印加状態では、正の誘電率異方性を有する液晶成分220がその長軸方向を電界方向と平行に並ぶため、液晶成分220は電極(画素電極140及び対向電極322)に対して垂直に配向する。ここで、常光屈折率がポリマーの屈折率に等しい液晶成分であれば、液晶成分220とポリマーネットワーク210との屈折率差はなくなり光学的に界面のない状態となる。その結果、入射光は散乱せず直進するため、透明状態が実現される。
【0055】
散乱状態とは、光を散乱する状態である。例えば、散乱状態にある高分子分散液晶層の透過率は、例えば、20%以下であってよい。また、散乱状態にある高分子分散液晶層の透過率の下限は、例えば0~1%である。本明細書中、散乱状態にある高分子分散液晶層の透過率は、散乱状態にある高分子分散液晶層の平行光線透過率を指す。
【0056】
散乱状態にある高分子分散液晶層の透過率は、例えば、次のようにして求めることができる。光源としてLEDを備える通常のバックライト(液晶表示装置用光源)上に、高分子分散液晶層を備える電圧無印加状態の表示パネルを配置した場合の輝度、及び、上記バックライト上に何も配置しない場合の輝度を、トプコン社製の輝度計(SR-UL1)を用いて受光角2°にて測定する。測定波長は、視感度Y値であって、波長約550nmとする。上記バックライト上に電圧無印加状態の表示パネルを配置した場合の輝度を、バックライト上に何も配置しない場合の輝度で除することにより、散乱状態にある高分子分散液晶層の透過率を求めることができる。
【0057】
また、散乱状態にある高分子分散液晶層の光散乱率を示すヘイズは、例えば、80%以上であってよく、90%以上であってよい。また、散乱状態にある高分子分散液晶層の光散乱率を示すヘイズの上限は、例えば90~100%である。本実施形態では、散乱状態にある高分子分散液晶層は、可視光を散乱する。そのため、散乱状態にある高分子分散液晶層は、曇りガラスと同様の状態である。本明細書中、ヘイズは、JIS K 7136に準拠した方法で測定される。上記ヘイズは、例えば、日本電色工業社製の濁度計「HazeMeter NDH2000」等により、光源としてハロゲンランプを用いることができる。
【0058】
透明状態とは、光に対して透明性を有する状態である。例えば、透明状態にある高分子分散液晶層の透過率は25%以上であってよく、30%以上であってよい。なお、配線の影響がなければ、透過率は、例えば、60%以上となる。また、透明状態にある高分子分散液晶層の透過率の上限は、例えば100%である。本実施形態では、透明状態にある高分子分散液晶層は、可視光に対して透明である。本明細書中、透明状態にある高分子分散液晶層の透過率は、透明状態にある高分子分散液晶層の平行光線透過率を指す。
【0059】
透明状態にある高分子分散液晶層の透過率は、例えば、次のようにして求めることができる。光源としてLEDを備える通常のバックライト(液晶表示装置用光源)上に、高分子分散液晶層を備える電圧印加状態の表示パネルを配置した場合の輝度、及び、上記バックライト上に何も配置しない場合の輝度を、トプコン社製の輝度計(SR-UL1)を用いて受光角2°にて測定する。測定波長は、視感度Y値であって、波長約550nmとする。上記バックライト上に電圧印加状態の表示パネルを配置した場合の輝度を、バックライト上に何も配置しない場合の輝度で除することにより、透明状態にある高分子分散液晶層の透過率を求めることができる。
【0060】
このように、表示パネル1は、高分子分散液晶層中のポリマーネットワーク210と液晶成分220とのneの屈折率差、及び、noの屈折率差を変えることで、表示パネル1を透過する光の量を調整するため、一般的な液晶表示パネルで必要とされる偏光板を必要としない。
【0061】
光硬化モノマーは室温で液晶成分220と相溶し、紫外線照射により硬化してポリマーが形成される場合に液晶成分220と相分離するものである。光硬化モノマーの重合に用いられる光の波長は、315nm以上、400nm以下であることが好ましく、340nm以上、380nm以下であることがより好ましく、350nm以上、380nm以下であることが更に好ましい。
【0062】
光硬化モノマーは、例えば、下記式(M1)~(M21)で表される反応性基を有することが好ましい。
【0063】
【化1】
【0064】
【化2】
【0065】
【化3】
【0066】
【化4】
【0067】
【化5】
【0068】
上記式(M1)~(M21)で表される反応性基を有する光硬化モノマーとしては、具体的には、(M1)~(M3)で表される反応性基を有するアクリル系モノマー、(M4)で表される反応性基を有するアリルエーテル系モノマー、例えば、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ノボラック樹脂のポリアリルエーテル等、(M7)~(M10)で表される反応性基を有するエポキシ化合物、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、(M11)で表される反応性基を有する3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、(M12)、(M13)で表される反応性基を有するオキセタン系化合物、例えば、エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)や3-エチル-3-クロロメチルオキセタン(OXC)、(M14)で表される反応性基を有するマレイミド系化合物、例えば、マレイミドエチルアセテートやポリアルキレンエーテルビスマレイミド、等が好ましいが、本実施形態では特に(M1)又は(M2)で表される反応性基を有するアクリル系モノマーが密着性の改善効果の点から好ましい。
【0069】
上記アクリル系モノマーとしては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、またその他、多官能のウレタンオリゴマー、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0070】
また、上記した反応性基を有する光硬化モノマーのなかでも、密着性の改善効果や耐熱サイクル性に優れる点から反応性基を3つ以上有する化合物を含有することがより好ましく、4つ以上有する化合物を含有することが更により好ましい。
【0071】
また、光硬化モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。更に、光硬化モノマーは、分子構造内に水酸基等の親水性基を有することが密着性や耐熱サイクル性の改善効果が顕著なものとなる点から好ましく、特に4つ以上の反応性を持つ化合物を含む混合物であって、該混合物中、親水性基を有する化合物を40~80質量%となる割合で含む混合物として用いることが特に好ましい。
【0072】
重合開始剤は必要に応じて添加してもよい。熱重合開始剤としては公知慣用のものが使用でき、例えば、メチルアセトアセテイトパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パ-オキシジカーボネイト、t-ブチルパーオキシベンゾエイト、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパ-オキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、p-ペンタハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネイト、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾニトリル化合物、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオン-アミヂン)ジハイドロクロライド等のアゾアミヂン化合物、2,2’アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、2,2’アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等のアルキルアゾ化合物等を使用することができる。具体的には、和光純薬工業株式会社製の「V-40」、「VF-096」、日本油脂株式会社(現日油株式会社)の「パーへキシルD」、「パーへキシルI」等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えばBASF社製の「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「ダロキュア1173」、「イルガキュア907」、「イルガキュア127」、「イルガキュア369」、「イルガキュア379」、「イルガキュア819」、「イルガキュア2959」、「イルガキュア1800」、「イルガキュア250」、「イルガキュア754」、「イルガキュア784」、「イルガキュアOXE01」、「イルガキュアOXE02」、「イルガキュアOXE04」、「ルシリンTPO」、「ダロキュア1173」、「ダロキュアMBF」やLAMBSON社製の「エサキュア1001M」、「エサキュアKIP150」、「スピードキュアBEM」、「スピードキュアBMS」、「スピードキュアMBP」、「スピードキュアPBZ」、「スピードキュアITX」、「スピードキュアDETX」、「スピードキュアEBD」、「スピードキュアMBB」、「スピードキュアBP」や日本化薬社製の「カヤキュアDMBI」、日本シイベルヘグナー社製(現DKSH社)の「TAZ-A」、ADEKA社製の「アデカオプトマーSP-152」、「アデカオプトマーSP-170」、「アデカオプトマーN-1414」、「アデカオプトマーN-1606」、「アデカオプトマーN-1717」、「アデカオプトマーN-1919」、UCC社製の「サイラキュアーUVI-6990」、「サイラキュアーUVI-6974」や「サイラキュアーUVI-6992」、旭電化工業社製の「アデカオプトマーSP-150、SP-152、SP-170、SP-172」やローディア製の「PHOTOINITIATOR2074」、BASF社製の「イルガキュア250」、GEシリコンズ社製の 「UV-9380C」、みどり化学社製の「DTS-102」等が挙げられる。
またカチオン重合を行う場合は、例えばUVACURE1590(ダイセル・サイテック製)、CPI-110P(サンアプロ製)、などのスルホニウム塩やIRGACURE250(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、WPI-113(和光純薬製)、Rp-2074(ローディア・ジャパン製)等のヨードニウム塩が挙げられる。
【0073】
電子線硬化する場合は、重合開始剤はあってもなくてもよい。
【0074】
これら重合開始剤の使用量は光硬化モノマーに対して0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部が特に好ましい。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。また必要に応じて増感剤等も用いてもよい。
【0075】
液晶成分220は、アクリレート、メタクリレート、マレイミド、N-フェニルマレイミド、シロキサンなどの重合性基を有していなくてよい。
【0076】
本実施形態において、液晶成分220は、下記式(L)で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよい。
Δε=(液晶成分の長軸方向の誘電率)-(液晶成分の短軸方向の誘電率) (L)
【0077】
正の誘電率異方性を有する液晶成分(液晶分子)は電界方向と平行方向に配向し、負の誘電率異方性を有する液晶成分は電界方向と垂直方向に配向する。なお、正の誘電率異方性を有する液晶成分はポジ型液晶ともいい、負の誘電率異方性を有する液晶成分はネガ型液晶ともいう。また、液晶成分の長軸方向が遅相軸の方向となる。また、電圧無印加時における液晶成分の長軸の方向は、液晶成分の初期配向の方向ともいう。
【0078】
液晶成分220としては、例えば、トラン系の液晶材料(-C≡C-(炭素炭素三重結合)を連結基として有する液晶材料)を用いることができる。
【0079】
液晶成分220の屈折率異方性Δnは、0.18以上、0.24以下であり、液晶成分220の誘電率異方性Δεは、15以上、25以下であり、液晶成分220の回転粘性γ1は、100mPa・s以上、300mPa・s以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、強散乱及び低電圧駆動の両立可能とし、かつ、ポリマーネットワークを含有しない通常の液晶表示装置と同等の応答速度を実現することができる。液晶成分220の屈折率異方性Δn、誘電率異方性Δε及び回転粘性γ1が全て上記の範囲内となることによりこのような効果を実現することができる。
【0080】
トラン系の液晶材料の具体例としては、下記一般式(L1)で表される構造を有する液晶材料が挙げられる。
【0081】
【化6】
(上記式中、Q及びQは、それぞれ独立に芳香環基を表し、Xは、フッ素基又はシアノ基を表し、n及びnは、それぞれ独立に0又は1を表す。)
【0082】
上記一般式(L1)におけるn及びnは、同時に0となることはない。すなわち、n及びnの和は1又は2である。
【0083】
上記一般式(L1)における芳香環基は置換基を有していてもよい。
【0084】
上記一般式(L1)中、Q及びQは、それぞれ独立に、下記一般式(L2-1)~(L2-7)のいずれかの構造であることが好ましい。
【0085】
【化7】
【0086】
上記一般式(L1)で表わされる構造を有する液晶材料の具体的構造としては、例えば以下の構造が挙げられる。
【0087】
【化8】
【0088】
液晶成分220とポリマーネットワーク210との重量比は、液晶成分:ポリマーネットワーク=7:3~9:1であることが好ましい。すなわち、液晶成分220の重量比が7以上、9以下であり、液晶成分220の重量比が7以上であるとき、ポリマーネットワーク210の重量比は3以下であり、液晶成分220の重量比が9以下であるとき、ポリマーネットワーク210の重量比は1以上であることが好ましい。このような態様とすることにより、強散乱及び低電圧駆動を効果的に両立させることが可能となる。ポリマーネットワーク210の重量比が10を超えると強散乱は得られるが駆動電圧が高くなり、ポリマーネットワーク210の重量比が3未満であると駆動電圧は抑えられるが強散乱が得られない場合がある。なお、散乱度及び駆動電圧は、液晶成分220とポリマーネットワーク210との重量比に加えて、ネットワークサイズ及びネットワークを形成している成分等を調整することにより、効果的に制御することができる。
【0089】
第2の基板300は、上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を遮る遮光部320が額縁領域1NAに配置されていない。このような態様とすることにより、上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光が、第2の基板300の額縁領域1NA全体を透過可能となり、額縁領域1NAにおいて、光硬化モノマーの重合が促進され、ポリマー含有層200における残存モノマー(未反応モノマー)の量を抑制することができる。その結果、額縁領域1NA近傍における表示ムラを抑制することができる。
【0090】
上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を遮る遮光部320が額縁領域1NAに配置されていないとは、実質的に額縁領域1NA全体に遮光部320が配置されていないことをいう。
【0091】
第2の基板300は、表示領域1AAに重畳し、かつ、額縁領域1NAに重畳しない遮光部320を備える。遮光部320は、上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を遮る機能を有する。遮光部320は、例えば、光吸収度の指標となるOD値3以上の光学特性を有していればよい。遮光部320のOD値は、3.5以上であることが好ましく、4以上であることが更に好ましい。遮光部320のOD値の上限は特に限定されないが、例えば、6以下である。
【0092】
測定波長λでのOD値(OD(λ))は、下記式により求めることができる。測定波長λは、例えば、光硬化モノマーの重合に用いられる波長である。OD値は、Kollmorgen社製、TD-904にてマクベス濃度測定法により測定することができる。
OD(λ)=Log10[T(λ)/I(λ)]=Log10T(λ)-Log10I(λ)
λは測定波長、T(λ)は測定波長における透過光量、I(λ)は測定波長における入射光量を表す。
【0093】
遮光部320は、第2の支持基板310とポリマー含有層200との間に配置される。遮光部320は、例えば、ブラックマトリクス層であることが好ましい。ブラックマトリクス層は、黒色顔料を含有した樹脂材料、又は、遮光性を有する金属材料が好適に用いられる。ブラックマトリクス層は、例えば、黒色顔料を含む感光性樹脂を塗布して成膜し、露光及び現像等を行うフォトリソグラフィ法により形成される。
【0094】
第1の基板100は、互いに平行に延設された複数のゲート線と、絶縁層を介して上記複数のゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線101Sと、を備え、表示領域1AAにおいて、複数のゲート線及び複数のソース線101Sと重畳する位置にブラックマトリクス層が設けられており、遮光部320としてのブラックマトリクス層が額縁領域1NAに配置されていないことが好ましい。このような態様とすることにより、額縁領域1NA近傍における表示ムラを抑制しつつ、表示領域1AAにおける反射を抑制することができる。
【0095】
第2の基板300は、額縁領域1NAにおいて、上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を透過する着色部321aを備えていてもよい。このような態様とすることにより、着色部321aを表示パネル1の額縁として機能させることができる。着色部321aは、例えば、オーバーコート層321の額縁領域1NAを着色することにより得られる。
【0096】
着色部321aは、第2の支持基板310とポリマー含有層200との間に配置される。着色部321aは、上記光硬化モノマーの重合に用いられる波長以外の波長の光を透過してもよい。例えば、光硬化モノマー波長400nmの光で重合する場合、着色部321aは、波長400nmの光に加えて、400nm以外の波長の光を透過してもよい。
【0097】
なお、オーバーコート層321は、着色部321aを有さないことも好ましい。このような態様とすることにより、当該領域を、表示領域1AAの透過部と同じ状態とすることが可能となり、表示不良等の不具合を抑えることができ、かつ、生産性を向上させることができる。
【0098】
表示パネル1は、更に、第1の基板100のポリマー含有層200と反対側の額縁領域1NA及び第2の基板300のポリマー含有層200と反対側の額縁領域1NAの少なくとも一方の額縁領域1NAに、インク部500を備えることが好ましい。このような態様とすることにより、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aが光に曝されることにより電気特性が影響を受けるのを抑えることができる。また、表示パネル1の額縁反射を抑えることができる。インク部500は、表示パネル1の額縁として機能する。
【0099】
本実施形態では、図4に示すように、第2の基板300のポリマー含有層200と反対側の額縁領域1NAに、第2の基板側インク部520が配置される態様について説明する。
【0100】
インク部500は、光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を透過してもよいし、透過しなくてもよいが、光硬化モノマーの重合に用いられる波長の光を透過しない方が好ましい。このような態様とすることにより、光硬化モノマーの分解等を抑えることができる。インク部500は、例えば、顔料及び染料の少なくとも一方により色付けされた部材である。第2の基板側インク部520は、例えば、後述する第2の基板側フィルム620の額縁領域1NAに加色印刷を施すことにより得られる。
【0101】
表示パネル1は、第2の基板300のポリマー含有層200と反対側に、第2の基板側フィルム620を備えていてもよい。第2の基板側フィルム620は、例えば、トリアセチルセルロース(TAC(Triacetylcellulose))フィルム等の保護フィルム等である。また、粘着剤にUV吸収粘着剤を用いることにより、第2の基板側フィルム620としてPET(Polyethylene terephthalate)フィルムを用いることもできる。第2の基板側フィルム620の厚みは特に限定されないが、例えば、50μm以上、300μm以下である。
【0102】
表示パネル1は、第2の基板300のポリマー含有層200と反対側に位置する第2の基板側フィルム620を備え、インク部500は、第2の基板側フィルム620と第2の基板300との間、及び、第2の基板側フィルム620の第2の基板300と反対側の少なくとも一方に位置する第2の基板側インク部520を備えることが好ましい。このような態様とすることにより、第2の基板300側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができる。また、表示パネル1の第2の基板300側の額縁反射を抑えることができる。
【0103】
図5、実施形態1に係る表示パネルにおいて、第2の基板側インク部が、第2の基板側フィルムの第2の基板と反対側に位置する場合について説明する断面模式図である。図6は、実施形態1に係る表示パネルにおいて、第2の基板側インク部が、第2の基板側フィルムと第2の基板との間に設けられる場合について説明する断面模式図である。
【0104】
第2の基板側インク部520は、第2の基板側フィルム620と第2の基板300との間に位置することが好ましい。このような態様とすることにより、図5に示すように、第2の基板側インク部520が第2の基板側フィルム620の第2の基板300と反対側に位置する場合に比べて、観察者が視認可能な端子パターン120Aの範囲を狭めることができ、表示特性を向上させることができる。
【0105】
図4図5及び図6に示すように、インク部500と画素電極140との距離500Dが大きいほど、斜めから観察したときに視認される画素外(額縁領域1NA)の面積が大きくなる。そのため第2の基板側フィルム620の第2の粘着剤層720側に加色印刷を行って第2の基板側インク部520を設けることが好ましい。
【0106】
第2の基板側フィルム620は、UVカットフィルム621であることが好ましい。このような態様とすることにより、表示領域1AAの画素配線下などに存在する僅かな残存モノマーが太陽光や蛍光灯などに含まれる紫外光によって露光され、ムラが発生してしまうのを抑え、表示品位の低下を抑制することができる。UVカットフィルムとしては、基材そのものが紫外線を吸収するTACフィルム等の保護フィルムが挙げられる。
【0107】
表示パネル1は、第1の基板100のポリマー含有層200と反対側に、第1の基板側フィルム610を備えていてもよい。第1の基板側フィルム610は、例えば、トリアセチルセルロース(TAC(Triacetylcellulose))フィルム等の保護フィルム等である。また、粘着剤にUV吸収粘着剤を用いることにより、第1の基板側フィルム610としてPET(Polyethylene terephthalate)フィルムを用いることもできる。第1の基板側フィルム610の厚みは特に限定されないが、例えば、50μm以上、300μm以下である。
【0108】
第1の基板側フィルム610は、UVカットフィルム611であることが好ましい。このような態様とすることにより、表示領域1AAの画素配線下などに存在する僅かな残存モノマーが太陽光や蛍光灯などに含まれる紫外光によって露光され、ムラが発生してしまうのを抑え、表示品位の低下を抑制することができる。UVカットフィルムとしては、基材そのものが紫外線を吸収するTACフィルム等の保護フィルムが挙げられる。
【0109】
表示パネル1は、第1の基板100と第1の基板側フィルム610との間に、第1の粘着剤層710を備える。第1の粘着剤層710の厚みは特に限定されないが、例えば、15μm以上、50μ以下であり、15μm以上、25μm以下であることが好ましい。
【0110】
同様に、表示パネル1は、第2の基板300と第2の基板側フィルム620との間に、第2の粘着剤層720を備える。第2の粘着剤層720の厚みは特に限定されないが、例えば、15μm以上、50μ以下であり、15μm以上、25μm以下であることが好ましい。
【0111】
粘着剤層は、隣り合う部材の面と面とを接合し、実用上充分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。粘着剤層を形成する材料としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の樹脂材料等が挙げられる。
【0112】
第1の粘着剤層710は、UV吸収剤を含有することが好ましい。このような態様とすることにより、表示領域1AAの画素配線下などに存在する僅かな残存モノマーが太陽光や蛍光灯などに含まれる紫外光によって露光され、ムラが発生してしまうのを抑えることができる。
【0113】
同様に、第2の粘着剤層720は、UV吸収剤を含有することが好ましい。
【0114】
UV吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤、トリアジン系UV吸収剤、ベンゾフェノン系UV吸収剤のうちの少なくとも1種を含有する。
【0115】
ベンゾトリアゾール系UV吸収剤としては、公知の化合物を使用することができる。具体的には、オクチル3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル)プロピオネート、[3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-メチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-w-[3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロポキシ]ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、(3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソプロピル)-ヒドロキシポリ(オキソ-1,2-エタンジイル)、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジタートペンチルフェノール、3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンジルプロピオン酸オクチルエステル、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールなどが好ましい。
【0116】
トリアジン系UV吸収剤としては、公知の化合物を使用することができる。具体的には、2-(4,6-ジメチル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール、2-(4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(2-ヒドロキシ-3-ジデシルオキシプロピル)オキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-(3-(2-エチルヘキシル-1-オキシ)-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,2’-[6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル]ビス(5-ブトキシフェノール)、6-メチルヘプチル2-{4-[4,6-ジ(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-3-ヒドロキシフェノキシ}プロパノエートなどが挙げられる。
【0117】
ベンゾフェノン系UV吸収剤としては、公知の化合物を使用することができる。具体的には、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0118】
図7は、実施形態1に係る表示パネルの製造方法を示す模式図である。本実施形態の表示パネル1の製造方法は、スイッチング素子としてのTFT120を有する第1の基板100と、画像を表示する表示領域1AAの周囲に設けられた額縁領域1NAに遮光部320を備えない第2の基板300との間に、光硬化モノマーを含有する組成物が充填されたパネル前駆体10に対して、第2の基板300側から光Lを照射する露光工程を備える。このような態様とすることにより、パネル前駆体10の額縁領域1NAにおいて光硬化モノマーの重合が促進され、光硬化モノマーが重合することにより形成されるポリマー含有層200において残存モノマー(未反応モノマー)の量を抑制することができる。その結果、額縁領域1NA近傍における表示ムラを抑制することができる。このように、本実施形態では残存モノマーを抑制することができるので、残存モノマーを抑制するために露光量を上げ過ぎる必要が無く、良好な表示パネル1を得ることができる。これにより、焼き付きも抑制することができる。
【0119】
図7に示すように、第1の基板100は、互いに平行に延設された複数のゲート線101Gと、絶縁層を介して複数のゲート線101Gと交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線101Sと、TFT120と、を備え、額縁領域1NAにTFT120の端子パターン120Aを有する。一方、第2の基板300は、額縁領域1NAに遮光部320を有さない。第2の基板300は、表示領域1AAに遮光部320を有する。
【0120】
パネル前駆体10は、例えば、第1の基板100又は第2の基板300にシール材を塗布し、上記シール材に囲まれた領域内に上記組成物を形成した後、第1の基板100及び第2の基板300をシール材により貼り合わせることにより製造することができる。なお、シール材に囲まれた領域内に上記組成物を充填するのは、第1の基板100及び第2の基板300を貼り合せた後に行うこともできる。具体的には、シール描画パターンに注入口を設けておき、真空チャンバー内で液晶を注入する真空注入方式が挙げられる。
【0121】
パネル前駆体10を露光して光硬化モノマーを重合させることによりポリマー含有層200を形成し、TFT120を備える第1の基板100、ポリマー含有層200、及び、第2の基板300を順に備える表示パネル1を実現することができる。
【0122】
図7に示すように、本実施形態の表示パネル1の製造方法は、上記露光工程の後、第2の基板側インク部520が額縁領域1NAに配置された第2の基板側フィルム620を、第2の基板300の第1の基板100と反対側に貼り合わせる貼合工程を備えていてもよい。このような態様とすることにより、第2の基板300側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができる。また、表示パネル1の第2の基板300側の額縁反射を抑えることができる。
【0123】
従来の製造方法でパネル露光を行う場合、残存モノマーを抑制する観点から、ブラックマトリクスを備える基板よりも遮光エリアが少ないTFT基板側から露光が行われている。しかしながら、当該TFT基板が備える遮光部材の影は充分に露光されず、残存モノマーが発生して表示ムラを発生させてしまう。
【0124】
一方、本実施形態では、額縁領域1NAにブラックマトリクス等の遮光部320を有さない第2の基板300を用い、第2の基板300側から露光することにより、額縁領域1NAで未反応モノマーが残存することを抑制できる。当該方法により作製した表示パネルは、そのままの状態であれば、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aが光に曝されることで電気特性が影響を受ける可能性がある。そのため、実装でパネルに貼り合されるフィルム(例えばUVカットフィルム)の額縁領域を加色印刷することで、電気特性が影響を受けるのを抑えることができる。このように、本実施形態では、第1の基板100、ポリマー含有層200及び第2の基板300から構成されるパネルを作製後、額縁領域1NAを加色印刷したUVカットフィルムを貼ることにより、表示パネル1に額縁を設けることができる。
【0125】
(実施形態1の変形例1)
上記実施形態1では、インク部500が、第2の基板300のポリマー含有層200と反対側の額縁領域1NAに配置される態様について説明したが、インク部500は、第2の基板300側に加えて、第1の基板100側に配置されてもよい。
【0126】
図8は、実施形態1の変形例1に係る表示パネルの断面模式図である。図8に示すように、本変形例の表示パネル1は、第1の基板100のポリマー含有層200と反対側に位置する第1の基板側フィルム610を備え、インク部500は、第1の基板側フィルム610と第1の基板100との間、及び、第1の基板側フィルム610の第1の基板100と反対側の少なくとも一方に位置する第1の基板側インク部510を備える。このような態様とすることにより、第1の基板100側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができる。また、表示パネル1の第1の基板100側の額縁反射を抑えることができる。
【0127】
第1の基板側インク部510は、例えば、第1の基板側フィルム610の額縁領域1NAに加色印刷を施すことにより得られる。
【0128】
第1の基板側インク部510は、第1の基板側フィルム610と第1の基板100との間に位置することが好ましい。このような態様とすることにより、第2の基板側インク部520の場合と同様に、第1の基板側インク部510が第1の基板側フィルム610の第1の基板100と反対側に位置する場合に比べて、観察者が視認可能な端子パターン120Aの範囲を狭めることができ、表示特性を向上させることができる。
【0129】
図9は、実施形態1に係る表示パネルの額縁反射について説明する断面模式図である。図10は、実施形態1の変形例1に係る表示パネルの額縁反射について説明する断面模式図である。図11は、実施形態1に係る表示パネル及び実施形態1の変形例1に係る表示パネルの額縁反射を比較した表である。
【0130】
ポリマー含有層200が高分子分散液晶層である場合、表示パネル1は両面から視認可能なシースルーパネルとして機能する。バックライト付きの表示パネルはTFT基板側から視認されることはないが、バックライトを有さず両面から視認可能なシースルーディスプレイはTFT基板側からも視認される。
【0131】
図9に示すように、上記実施形態1における第1の基板側フィルム610はインク部を有さないUVカットフィルム611であり、第2の基板側フィルム620は額縁領域1NAに第2の基板側インク部520を有するUVカットフィルム621である。図9及び図11に示すように、実施形態1の表示パネル1では、第2の基板300側に額縁加色印刷のUVカットフィルムを貼り合わせることで、対向基板である第2の基板300側の額縁反射は抑えられる。しかしながら、TFT基板である第1の基板100側には額縁加色印刷が施されていないため、額縁の金属反射が目立つ場合がある。
【0132】
一方、図10に示すように、本変形例における第1の基板側フィルム610は額縁領域1NAに第1の基板側インク部510を有するUVカットフィルム611であり、第2の基板側フィルム620は額縁領域1NAに第2の基板側インク部520を有するUVカットフィルム621である。図10及び図11に示すように、本変形例の表示パネル1では、第2の基板300と同様に第1の基板100側にも額縁加色印刷のUVカットフィルム611を貼り合わせることで、第1の基板100側及び第2の基板300側の額縁反射が抑えられ、第1の基板100側からも第2の基板300側からも同等の見栄えの表示パネルを実現することができる。
【0133】
このように、実施形態1の表示パネル1では、第1の基板100側から見る際は、金属反射による表示品位の低下が起こり易く、特に配線面積の大きい額縁領域1NAの反射が目立ってしまう。しかしながら、本変形例のように、第2の基板300側と同様に、第1の基板100側にも額縁領域1NAにインク部500が配置されることにより、額縁領域1NAの金属反射を低減し、表示品位を向上させることができる。
【0134】
本変形例の表示パネル1の製造方法は、上記露光工程の後、更に、第1の基板側インク部510が額縁領域1NAに配置された第1の基板側フィルム610を、第1の基板100の第2の基板300と反対側に貼り合わせる貼合工程を備えていてもよい。このような態様とすることにより、第1の基板100側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができる。また、表示パネル1の第1の基板100側の額縁反射を抑えることができる。
【0135】
(実施形態1の変形例2)
図12は、実施形態1の変形例1に係る表示パネルが備える第1の基板側フィルムの平面模式図である。図13は、実施形態1の変形例2に係る表示パネルが備える第1の基板側フィルムの平面模式図である。
【0136】
図12に示すように、上記変形例1では、第1の基板側フィルム610の額縁領域1NAにのみ加色印刷が施される。すなわち、第1の基板側インク部510が額縁領域1NAにのみ設けられる。一方、本変形例では、図13に示すように、第1の基板側フィルム610の額縁領域1NAに加えて、表示領域1AAの配線位置にも加色印刷が施される。すなわち、第1の基板側インク部510が額縁領域1NAに加えて、表示領域1AAにも設けられる。具体的には、第1の基板側インク部510は、表示領域1AAにおいてソース線101S及びゲート線と重畳する。
【0137】
ここで、TFT基板である第1の基板100は金属配線を備えるため、対向基板である第2の基板300に比べて第1の基板100は反射率が高く、外光の影響を受けて視認性が低下する場合がある。上記変形例1では、図12に示すように、額縁領域1NAのみに加色印刷が施された第1の基板側フィルム610を貼り合わせるため、額縁領域1NAの反射は抑えられるが、表示領域1AAでの反射を低減することは困難である。
【0138】
一方、本変形例では、図13に示すように、額縁領域1NAだけでなく表示領域1AAの画素配線に合わせて加色印刷した第1の基板側フィルム610を貼り合わせるため、額縁領域1NAに加えて、表示領域1AAの反射も抑えることが可能となるため、視認性を向上させることができる。
【0139】
(実施形態1の変形例3)
上記実施形態1及び変形例1~2では、ポリマー含有層200が光硬化モノマーの重合体により構成されるポリマーネットワーク210と、液晶成分220と、を含有する態様について説明したが、本変形例では、ポリマー含有層200が、第1の基板100及び第2の基板300の表面に位置する一対のポリマー層と、上記一対のポリマー層の間に位置する液晶成分と、を含有する態様について説明する。
【0140】
図14は、実施形態1の変形例3に係る表示パネルとバックライトとを備える液晶表示装置の断面模式図である。上記実施形態1及び変形例1~2におけるポリマー含有層200は、ポリマーネットワーク210中に液晶成分220が相分離した高分子分散液晶層であるが、本変形例のポリマー含有層200は、図14に示すように、上記光硬化モノマーの重合体により構成され、かつ、第1の基板100側の表面及び第2の基板300側の表面に位置する一対のポリマー層230と、一対のポリマー層230の間に位置する液晶成分220と、を含有する。
【0141】
ポリマー層230は、液晶成分220の配向を制御する層であり、配向維持層(PSA:Polymer Sustained Alignment)ともいう。ポリマー層230は、例えば、液晶材料に、モノマーやオリゴマー等の重合性成分を混合した液晶組成物をアレイ基板と対向基板との間に封入し、熱又は光(例えば、紫外線)照射によって、モノマー等を重合させて形成することができる。本変形例において、液晶成分220とポリマーネットワーク210との重量比は、液晶成分:ポリマーネットワーク=99.0:1.0~99.9:0.1であることが好ましい。このような態様とすることにより、ポリマー層230が配向維持層として効果的に機能する。
【0142】
図14に示すように、本変形例の第2の基板300は、カラーフィルタ層330を備える。カラーフィルタ層330を備える第2の基板300は、カラーフィルタ基板ともいう。カラーフィルタ層330は、赤色カラーフィルタ330R、緑色カラーフィルタ330G及び青色カラーフィルタ330Bから構成され、各画素に、赤色カラーフィルタ330Rを備える絵素、緑色カラーフィルタ330Gを備える絵素及び青色カラーフィルタ330Bを備える絵素の3つの絵素がストライプ状に設けられている。赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ及び青色カラーフィルタは、例えば、顔料を含有する透明樹脂で構成されている。通常、すべての画素に赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ及び青色カラーフィルタの組み合わせが配置され、赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ及び青色カラーフィルタを透過する色光の量を制御しつつ混色させることで各画素において所望の色が得られる。
【0143】
本変形例の第1の基板側フィルム610は、第1の偏光子612である。また、第2の基板側フィルム620は、第2の偏光子622である。第1の偏光子612及び第2の偏光子622(以下、単に偏光子ともいう)は、いずれも吸収型偏光子であり、互いに吸収軸が直交したクロスニコルの配置関係にある。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素錯体(又は染料)等の異方性材料を、染色及び吸着させてから延伸配向させた偏光子(吸収型偏光子)等を用いることができる。なお、一般的には、機械強度及び耐湿熱性を確保するために、ポリビニルアルコールフィルムの両側にトリアセチルセルロースフィルム等の保護フィルムが積層された状態で実用に供される。本明細書中、「偏光子」とは、直線偏光子(吸収型偏光子)を指し、円偏光板とは区別される。
【0144】
図14に示す液晶表示装置2は、表示パネル1と、表示パネル1の背面側に配置されたバックライト800と、を備える。バックライト800としては、液晶表示装置の分野において通常使用されるものを用いることができる。バックライト800としては、可視光を含む光を発するものであれば特に限定されず、可視光のみを含む光を発するものであってもよく、可視光及び紫外光の両方を含む光を発するものであってもよい。液晶表示装置2によるカラー表示を可能とするためには、白色光を発するバックライトが好適に用いられる。
【0145】
バックライト800は、表示パネル1の背面側に配置され、バックライト800で生じた光を、表示パネル1のポリマー含有層200を透過させ、観察面側に出射できればよく、直下型であっても、エッジライト型であってもよい。バックライト800の光源の種類は特に限定されず、例えば、発光ダイオード(LED)、冷陰極管(CCFL)等が挙げられる。バックライト800が発した光は、ポリマー含有層200への印加電圧によって、表示パネル1を透過する光量が制御される。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長380nm以上、800nm未満の光(電磁波)を意味する。
【0146】
図14に示すように、インク部500と画素電極140との距離500Dが大きいほど、斜めから観察したときに視認される画素外(額縁領域1NA)の面積が大きくなる。そのため、第2の基板側フィルム620としての第2の偏光子622の粘着剤層側に加色印刷が施されることが好ましい。すなわち、第2の基板側フィルム620としての第2の偏光子622と第2の粘着剤層720との間にインク部500を設けることが好ましい。
【0147】
(実施形態1の変形例4)
図15は、実施形態1の変形例4に係る表示パネルの製造方法を示した模式図である。図15に示すように、本変形例の表示パネル1は、更に、筐体900を含み、インク部500は、筐体900と同色である。このような態様とすることにより、額縁色と筐体色とを一致させることが可能となるため、額縁領域1NAと筐体900との境界が強調されず、見栄えを向上させることができる。
【0148】
同色であるとは、厳密な意味で同じ色であることまで必要ではなく、例えば、JISZ8730に規定されるL*a*b*表色系における色差が20以内の色であることをいう。同色であるとは、上記色差が0を超え、0.5以下であることが好ましい。
【0149】
本変形例の表示パネルは、次のように作製することができる。図15に示すように、スイッチング素子としてのTFT120を有する第1の基板100と、額縁領域1NAに遮光部320を備えない第2の基板300との間に、光硬化モノマーを含有する組成物が充填されたパネル前駆体10に対して、第2の基板300側から光Lを照射する。
【0150】
更に、第1の基板100の第2の基板300と反対側に、第1の粘着剤層710を介して第1の基板側フィルム610としてのUVカットフィルム611を貼り合わせる。同様に、第2の基板300の第1の基板100と反対側に、第2の粘着剤層720を介して第2の基板側フィルム620としてのUVカットフィルム621を貼り合わせる。なお、第1の基板側フィルム610の第1の粘着剤層710側の額縁領域1NA、及び、第2の基板側フィルム620の第2の粘着剤層720側の額縁領域1NAの少なくとも一方には、後述の工程で説明する筐体900と同色の加色印刷が施されている。当該加色印刷部分は、インク部500(第1の基板側インク部510、第2の基板側インク部520)に相当する。一例として、図15は、第2の基板側フィルム620の第2の粘着剤層720側の額縁領域1NAに、第2の基板側インク部520を備える態様を示している。
【0151】
以上のようにして得られた、UVカットフィルム付きの積層体を、インク部500と同色の筐体900にはめ込むことにより、本変形例の表示パネル1が得られる。
【0152】
(実施形態1の変形例5)
図16は、実施形態1の変形例5に係る表示パネルを示す断面模式図である。図16に示すように、本変形例の表示パネル1は、第1の基板100とポリマー含有層200との間、及び、第2の基板300とポリマー含有層200との間の少なくとも一方に配向膜を備えていてもよい。このような態様によっても、実施形態1と同様の効果が得られる。第1の基板100とポリマー含有層200との間に配置される配向膜は、第1の配向膜410ともいい、第2の基板300とポリマー含有層200との間に配置される配向膜は、第2の配向膜420ともいう。なお、図16に示される本変形例の表示パネル1はオーバーコート層321を有していないが、本変形例の表示パネル1は、実施形態1と同様に、遮光部320と対向電極322との間にオーバーコート層321を備えていてもよい。
【0153】
配向膜の材料としては、ポリイミドを主鎖に有するポリマー、ポリアミック酸を主鎖に有するポリマー、ポリシロキサンを主鎖に有するポリマー等の液晶表示パネルの分野で一般的な材料を用いることができる。配向膜に含まれるポリマーは、一種であっても二種以上であってもよい。
【0154】
配向膜は配向膜材料を塗布することによって形成することができ、上記塗布方法は特に限定されず、例えば、フレキソ印刷、インクジェット塗布等を用いることができる。配向膜は、液晶分子を膜面に対して略水平に配向させる水平配向膜であってもよいし、液晶分子を膜面に対して略垂直に配向させる垂直配向膜であってもよい。また、配向膜は、光官能基を有し、かつ配向処理として光配向処理が施された光配向膜であってもよいし、配向処理としてラビング処理が施されたラビング配向膜であってもよいし、配向処理が施されていない配向膜であってもよい。
【0155】
なお、配向膜に施される配向処理の方法としては、配向膜表面をローラー等で擦るラビング法が従来広く用いられてきた。これに対して、近年では、ラビング法に代わる配向処理の方法として、配向膜表面に光を照射する光配向法が広く展開されつつある。光配向法によれば、配向膜の表面に接触することなく配向処理を実施できるので、ラビング処理と異なり、配向処理中における汚れ、ごみ等の発生を抑制することができるという利点がある。
【0156】
第1の配向膜410及び第2の配向膜420は、水平配向膜であってもよいし、垂直配向膜であってもよいが、垂直配向膜であることが好ましい。このような態様とすることにより、表示パネル1においてポリマー含有層200と配向膜との間の剥がれを抑制することができる。
【0157】
水平配向膜に比べて垂直配向膜の方がポリマー含有層200と配向膜との間の剥がれを抑制することができる理由は、配向膜とポリマー含有層200との界面に存在する配向膜ポリマーの側鎖の量の違いによるものと考えられる。すなわち、界面に存在する配向膜ポリマーの側鎖の量が多いほど、配向膜ポリマーの側鎖がポリマー含有層200に含まれるポリマーと絡み合うことが可能となり、ポリマー含有層200と配向膜との間の剥がれを抑制することができると考えられる。
【0158】
図17は、垂直配向膜の機能について説明する断面模式図である。図18は、垂直配向膜とポリマーとの絡み合いについて説明する断面模式図である。図19は、水平配向膜の機能について説明する断面模式図である。図20は、水平配向膜とポリマーとの絡み合いについて説明する断面模式図である。
【0159】
図17に示すように、垂直配向膜430は、一般的に、支持基板911及び電極912(例えば、反射電極(Al、Ag等))を有する基板910と、支持基板921及び電極922(例えば、透明電極(ITO(Indium Tin Oxide)))を有する基板920との間に挟持された液晶層930に含まれる液晶分子931を、配向膜に対して垂直に配向させる機能を有する。そのため、垂直配向膜430に含まれる垂直配向膜ポリマー431は、主鎖432に加えて、液晶分子931を配向膜に対して垂直に配向させるために多くの側鎖433を有する。したがって、本変形例では、図18に示すように、垂直配向膜ポリマー431の側鎖433とポリマー含有層200に含まれるポリマー240(例えば、ポリマーネットワーク210、ポリマー層230)との間で絡み合い434が効果的に発生し、ポリマー含有層200と垂直配向膜430とが剥がれにくくなると考えられる。
【0160】
一方、図19に示すように、水平配向膜440は、一般的に、液晶分子931を、配向膜に対して水平に配向させる機能を有する。そのため、水平配向膜440に含まれる水平配向膜ポリマー441は、主鎖442を備えるが側鎖は無い(又は、垂直配向膜430が有する垂直配向膜ポリマー431よりも少ない)。そのため、図20に示すように、本変形例では、水平配向膜440に含まれる水平配向膜ポリマー441とポリマー240との絡み合いが発生しない(発生し難い)。したがって、水平配向膜440よりも垂直配向膜430の方が、ポリマー含有層200と配向膜との間の剥がれを抑制することができる。
【0161】
垂直配向膜ポリマー431は、例えば、ポリアミック酸を主鎖に有するポリマーである。垂直配向膜ポリマー431は、下記式(PA-1)で表される構造を有することが好ましい。このような態様とすることにより、ポリマー含有層200と配向膜との間の剥がれを効果的に抑制することができる。
【0162】
【化9】
【0163】
上記式(PA-1)中、X1は四価の基を表し、Y1は三価の基を表し、Zは一価の基を表し、sは1以上の整数を表す。
【0164】
上記式(PA-1)におけるX1は、下記式(X1-1)又は(X1-2)であることが好ましい。
【0165】
【化10】
【0166】
【化11】
【0167】
上記式(PA-1)におけるY1は、下記式(Y1-1)又は(Y1-2)であることが好ましい。
【0168】
【化12】
【0169】
【化13】
【0170】
上記式(Y1-1)及び(Y1-2)における*は、Zとの結合位置を表す。
【0171】
上記式(PA-1)におけるZは、下記式(Z-1)又は(Z-2)であることが好ましい。
【0172】
【化14】
【0173】
【化15】
【0174】
上記式(Z-1)及び(Z-2)における*は、Yとの結合位置を表す。
【0175】
上記式(Z-2)で表される側鎖はフッ素系の側鎖である。上記式(PA-1)におけるZは、式(Z-2)であることが好ましい。このような態様とすることにより、光配向処理を行うことが可能となる。
【0176】
垂直配向膜ポリマー431は、ポリシロキサンを主鎖に有するポリマーであることも好ましい。このような態様とすることによっても、ポリマー含有層200と配向膜との間の剥がれを効果的に抑制することができる。また、垂直配向膜ポリマー431がポリシロキサンを主鎖に有するポリマーを含有することにより、光配向処理を行うことが可能となる。
【0177】
ポリシロキサンを主鎖に有するポリマーは、ラジカル反応性官能基を有することが好ましい。このような態様とすることにより、ポリシロキサンを主鎖に有する垂直配向膜ポリマーをラジカル重合により硬化させることができ、硬化収縮を最小限に抑えることができる。ラジカル反応性官能基としては、例えば、ビニル基、α-メチルビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基等の不飽和有機基が挙げられる。これらのうち、硬化反応が円滑に進むことから、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するものが好ましい。
【0178】
ポリシロキサンを主鎖に有するポリマーは、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。
【0179】
上記加水分解性シラン化合物は、(s1)下記式(MS-1)で示される加水分解性シラン化合物(以下、(s1)化合物とも言う。)と、(s2)下記式(MS-2)で示される加水分解性シラン化合物(以下、(s2)化合物とも言う。)と、を含む加水分解性シラン化合物であることが好ましい。
【0180】
【化16】
【0181】
【化17】
【0182】
上記式(MS-1)中、R11は炭素数1~6のアルキル基である。R12はラジカル反応性官能基を含む有機基である。pは1~3の整数である。但し、R11及びR12が複数となる場合、複数のR11及びR12はそれぞれ独立している。
【0183】
上記式(MS-2)中、R13は炭素数1~6のアルキル基である。R14は水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフッ化アルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、エポキシ基、アミノ基またはイソシアネート基である。nは0~20の整数である。qは0~3の整数である。但し、R13及びR14が複数となる場合、複数のR13及びR14はそれぞれ独立している。
【0184】
((s1)化合物)
上記式(MS-1)中、R11は炭素数1~6のアルキル基である。R12はラジカル反応性官能基を含む有機基である。pは1~3の整数である。但し、R11及びR12が複数となる場合、複数のR11及びR12はそれぞれ独立している。上述のR11である炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのうち、加水分解の容易性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。上記のpとしては、加水分解縮合反応の進行の観点から1または2が好ましく、1がより好ましい。
【0185】
ラジカル反応性官能基を有する有機基としては、上述のラジカル反応性官能基により1個以上の水素原子が置換された直鎖状、分岐状または環状の炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基等が挙げられる。同一分子内に複数のR12が存在するとき、これらはそれぞれ独立している。また、R12が示す有機基はヘテロ原子を有していてもよい。そのような有機基としては、例えば、エーテル基、エステル基、スルフィド基等が挙げられる。
【0186】
(s1)化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、o-スチリルトリメトキシシラン、o-スチリルトリエトキシシラン、m-スチリルトリメトキシシラン、m-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メタクリロキシトリメトキシシラン、メタクリロキシトリエトキシシラン、メタクリロキシトリプロポキシシラン、アクリロキシトリメトキシシラン、アクリロキシトリエトキシシラン、アクリロキシトリプロポキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリプロポキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、2-アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2-アクリロキシエチルトリプロポキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロブチルトリメトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸等のトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0187】
((s2)化合物)
上記式(MS-2)中、R13は炭素数1~6のアルキル基である。R14は水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフッ化アルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、エポキシ基、アミノ基またはイソシアネート基である。nは0~20の整数である。qは0~3の整数である。但し、R13及びR14がそれぞれ複数となる場合、複数のR13及びR14はそれぞれ独立している。
【0188】
上述のR13である炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのうち、加水分解の容易性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。上記のqとしては、加水分解縮合反応の進行の観点から1または2が好ましく、1がより好ましい。
【0189】
上述のR14が上記炭素数1~20のアルキル基である場合、そのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、3-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、5-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、1-メチルヘキシル基、4,4-ジメチルペンチル基、3,4-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、6-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノナニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘプタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1~10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
【0190】
これらの(s2)化合物のうち、特に好ましい加水分解性シラン化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-i-プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ-イソシアネートプロピルトリメトキシシランが挙げられる。このような加水分解性シラン化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0191】
((s1)化合物および(s2)化合物の加水分解縮合)
上記(s1)化合物および(s2)化合物を加水分解縮合させる条件としては、(s1)化合物及び(s2)化合物の少なくとも一部を加水分解して、加水分解性基をシラノール基に変換し、縮合反応を起こさせるものである限り特に限定されるものではない。
【0192】
水平配向膜は、下記式(PA-2)で表される構造を有するポリマーを含有することが好ましい。
【0193】
【化18】
【0194】
上記式(PA-2)中、X2は四価の基を表し、Y2は三価の基を表し、tは1以上の整数を表す。
【0195】
上記式(PA-2)におけるX2は、下記式(X2-1)又は(X2-2)であることが好ましい。
【0196】
【化19】
【0197】
【化20】
【0198】
上記式(PA-2)におけるY2は、下記式(Y2-1)、(Y2-2)又は(Y2-3)であることが好ましい。
【0199】
【化21】
【0200】
【化22】
【0201】
【化23】
上記式(PA-2)におけるY2は、上記式(Y2-2)又は(Y2-3)であることが好ましい。このような態様とすることにより、光配向処理を行うことが可能となる。
【実施例0202】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0203】
(実施例1)
図21は、実施例1に係る表示パネルの製造方法を示した模式図である。図21に示す方法により、実施形態1の表示パネル1に対応する実施例1の表示パネルを作製した。具体的には、スイッチング素子としてのTFT120を有する第1の基板100と、額縁領域1NAに遮光部320を備えない第2の基板300との間に、光硬化モノマーを含有する組成物が充填されたパネル前駆体10を準備した。当該パネル前駆体10に対して、第2の基板300側から光Lを照射する露光工程を実施し、実施例1の表示パネル1を作製した。表示パネル1は、第1の基板100と第2の基板300との間に、光硬化モノマーが重合することにより形成されたポリマー含有層200を備えていた。露光工程において、光硬化モノマーの重合に用いられる光の波長は360nmであり、露光量は、20Jであった。
【0204】
更に、第1の基板100の第2の基板300と反対側に、第1の粘着剤層710を介して第1の基板側フィルム610としてのUVカットフィルム611を貼り合わせた。同様に、第2の基板300の第1の基板100と反対側に、第2の粘着剤層720を介して第2の基板側フィルム620としてのUVカットフィルム621を貼り合わせた。なお、第2の基板側フィルム620の第2の粘着剤層720側の額縁領域1NAには加色印刷を施した。当該加色印刷部分は、第2の基板側インク部520に相当する。
【0205】
以上のようにして得られた本実施例の表示パネル1は、額縁領域1NA近傍における表示ムラの抑えられた表示品位の高い表示パネルであった。この理由は次のように考えられる。露光する際、額縁領域1NAは透明であるため、光硬化モノマーに充分光が照射され、額縁領域1NAには残存モノマーが無い、又は、残存モノマーがごくわずかしか存在しなかったため、残存モノマーの表示領域1AAへの染み出しが抑制され、額縁領域1NA近傍における表示ムラが抑えられたと考えられる。
【0206】
また、本実施例の表示パネル1は、良好な保持率を有する表示パネルであった。この理由は次のように考えられる。上述の通り、本実施例では、額縁領域1NAを透明とすることにより額縁領域1NAの残存モノマーの発生を抑制することができた。そのため、額縁領域1NAの残存モノマーを少しでも多く露光するために過剰な露光をする必要がなく、液晶成分220の保持率が高く保たれたと考えられる。
【0207】
また、本実施形態の表示パネル1は、観察者が視認可能な端子パターン120Aの範囲を狭めることができ、表示特性を向上させることができた。
【0208】
また、第2の基板側インク部520を設けることにより、第2の基板300側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができた。また、表示パネル1の第2の基板300側の額縁反射を抑えることができた。
【0209】
(実施例2)
上記実施形態1の変形例1に対応する実施例2の表示パネル1を作製した。具体的には、第2の基板側フィルム620の第2の粘着剤層720側の額縁領域1NAに加えて、第1の基板側フィルム610の第1の粘着剤層710側の額縁領域1NAにも加色印刷を施してインク部500(第1の基板側インク部510)を設けたこと以外は、実施例1と同様にして表示パネル1を作製した。
【0210】
実施例1と同様に、実施例2の表示パネル1は、額縁領域1NA近傍における表示ムラの抑えられた表示品位の高い表示パネルであった。また、実施例2の表示パネルは、良好な保持率を有する表示パネルであった。また、実施例2の表示パネルは、観察者が視認可能な端子パターン120Aの範囲を狭めることができ、表示特性を向上させることができた。
【0211】
また、実施例1と同様に、実施例2の表示パネル1は、第2の基板側インク部520を設けることにより、第2の基板300側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができた。また、表示パネル1の第2の基板300側の額縁反射を抑えることができた。
【0212】
更に、実施例2の表示パネル1は、第1の基板側インク部510を設けることにより、第1の基板100側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができた。また、表示パネル1の第1の基板100側の額縁反射を抑えることができた。
【0213】
(実施例3)
上記実施形態1の変形例2に対応する実施例3の表示パネル1を作製した。具体的には、第1の基板側フィルム610の額縁領域1NAに加えて、表示領域1AAの画素配線(複数のゲート線101G及びソース線101S)と重畳する領域にも加色印刷を施して第1の基板側インク部510を設けたこと以外は、実施例2と同様にして表示パネル1を作製した。
【0214】
実施例2と同様に、実施例3の表示パネル1は、額縁領域1NA近傍における表示ムラの抑えられた表示品位の高い表示パネルであった。また、実施例3の表示パネルは、良好な保持率を有する表示パネルであった。また、実施例3の表示パネルは、観察者が視認可能な端子パターン120Aの範囲を狭めることができ、表示特性を向上させることができた。
【0215】
また、実施例2と同様に、実施例3の表示パネル1は、第2の基板側インク部520を設けることにより、第2の基板300側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができた。また、表示パネル1の第2の基板300側の額縁反射を抑えることができた。
【0216】
また、実施例2と同様に、実施例3の表示パネル1は、第1の基板側インク部510を設けることにより、第1の基板100側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができた。また、表示パネル1の第1の基板100側の額縁反射を抑えることができた。
【0217】
更に、実施例3の表示パネル1では、第1の基板側フィルム610の表示領域1AAに第1の基板側インク部510が配置されることにより、額縁領域1NAに加えて、表示領域1AAにおいても金属反射が低減し、視認性が向上したシースルーパネルを実現することができた。
【0218】
(実施例4)
上記実施形態1の変形例3に対応する実施例4の表示パネル1を作製した。具体的には、実施例1の表示パネル1におけるポリマー含有層200を、ポリマー層230及び液晶成分220を含有する層に替え、第2の基板300にカラーフィルタ層330を設け、第1の基板側フィルム610を第1の偏光子612に替え、第2の基板側フィルム620を第2の偏光子622に替え、更に、表示パネル1の背面側にバックライト800を配置して実施例4の表示パネル1、及び、当該表示パネル1とバックライト800とを備える液晶表示装置2を作製した。
【0219】
実施例1と同様に、実施例4の表示パネル1は、額縁領域1NA近傍における表示ムラの抑えられた表示品位の高い表示パネルであった。また、実施例4の表示パネルは、良好な保持率を有する表示パネルであった。また、実施例4の表示パネルは、観察者が視認可能な端子パターン120Aの範囲を狭めることができ、表示特性を向上させることができた。
【0220】
また、実施例1と同様に、実施例4の表示パネル1は、第2の基板側インク部520を設けることにより、第2の基板300側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができた。また、表示パネル1の第2の基板300側の額縁反射を抑えることができた。
【0221】
(実施例5)
上記実施形態1の変形例4に対応する実施例5の表示パネル1を作製した。具体的には、実施例1の表示パネル1を筐体900にはめ込んで作製した。インク部500は筐体900と同色であった。
【0222】
実施例1と同様に、実施例5の表示パネル1は、額縁領域1NA近傍における表示ムラの抑えられた表示品位の高い表示パネルであった。また、実施例5の表示パネル1は、良好な保持率を有する表示パネルであった。また、実施例5の表示パネル1は、観察者が視認可能な端子パターン120Aの範囲を狭めることができ、表示特性を向上させることができた。
【0223】
また、実施例1と同様に、実施例5の表示パネル1は、第2の基板側インク部520を設けることにより、第2の基板300側からの光に曝されることで、額縁領域1NAにおけるTFT120の端子パターン120Aの電気特性が影響を受けるのを抑えることができた。また、表示パネル1の第2の基板300側の額縁反射を抑えることができた。
【0224】
更に、実施例5の筐体付き表示パネル20は、表示パネル1と筐体900との境界が分かり難く、見栄えが良好であった。
【0225】
(実施例6)
上記実施形態1の変形例5に対応する表示パネルを作製した。具体的には、第1の基板100とポリマー含有層200との間に第1の配向膜410としての垂直配向膜を設け、第2の基板300とポリマー含有層200との間に第2の配向膜420としての垂直配向膜を設けたこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の表示パネルを作製した。
【0226】
水平配向膜を用いる場合は、表示パネルを持ち上げた際にポリマー含有層200と配向膜との間で剥がれが生じてしまうことがあるが、垂直配向膜を用いた実施例6の表示パネルでは剥がれが生じなかった。これは、配向膜とポリマー含有層200との界面に存在する「側鎖の量」の違いによるものであると考えられ、水平配向膜よりも側鎖の多い垂直配向膜の方が、配向膜ポリマーの側鎖とポリマーとの絡み合いが効果的に発生し、より剥がれが起きにくくなったと考えられる。
【0227】
(比較例1)
図22は、比較例1に係る表示パネルの製造工程で用いられるパネル前駆体の平面模式図である。図23は、図22において破線で囲んだ領域の拡大平面模式図である。図24は、比較例1に係る表示パネルの製造方法を示す模式図である。
【0228】
図22図24に示すように、スイッチング素子としてのTFTを有する第1の基板100と、額縁領域1NAにブラックマトリクス層を備える第2の基板300Rとの間に、光硬化モノマーを含有する組成物が充填されたパネル前駆体10Rを準備した。パネル前駆体10Rに対して、第1の基板100側(TFT基板側)から光Lを照射する露光工程を実施することにより、第1の基板100と第2の基板300Rとの間に、光硬化モノマーが重合することにより形成されたポリマー含有層200Rを備える比較例1の表示パネル1Rを作製した。露光工程において、光硬化モノマーの重合に用いられる光の波長は360nmであり、露光量は、20Jであった。
【0229】
パネル前駆体10Rは、表示領域1AAに、ゲート電極11a、容量線11b、及び、ソース電極14aを備え、額縁領域1NAに、保護回路4a、4b、検査用TFT5b、5ca、5cb、及び、遮光部21bを備えていた。
【0230】
比較例1の表示パネル1では、額縁領域1NA近傍において、ある温度で他のエリアよりも透過率がアップする可逆的な表示ムラが観察された。また、比較例1の表示パネル1では、高温信頼性試験において、額縁領域1NA近傍で不可逆的な透明エリアムラ(不可逆的な表示ムラ)が観察された。
【0231】
比較例1では、光硬化モノマー入りの液晶材料を充填したパネル前駆体10RをTFT基板側から露光してポリマーネットワークを形成した。この際、TFT基板の額縁領域1NAに形成されているパターン(TFTの端子パターン(遮光部21b)等)の影に充填された光硬化モノマー入りの液晶材料には光が当たらないため、ポリマー含有層200Rの当該領域では光硬化モノマーがポリマー化せずに残存モノマーとして存在してしまったと考えられる。すなわち、TFTパターンの裏に残存モノマーが残ってしまったと考えられる。当該残存モノマーが表示領域1AAへ染み出すことにより、比較例1の表示パネル1Rでは表示不均一エリアが発生したと考えられる。
【0232】
TFT基板にはスリットなどのパターンが形成されていることが多く、光が当たる部分では光硬化モノマーの重合反応が進行するが、光が当たらない部分も存在するため、残存モノマーをすべて無くすことは困難である。したがって、比較例1の表示パネル1Rでは、通常使用時、エージング時、ある温度範囲での使用時等において表示ムラが発生する可能性があり、当該表示ムラは、可逆的な表示ムラ、非可逆的な表示ムラのいずれの可能性もあると考えられる。
【0233】
(比較例2)
第2の基板300R側(対向基板側)から光Lを照射したこと以外は、比較例1と同様にして比較例2の表示パネル1Rを作製した。
【0234】
比較例2では、光硬化モノマー入りの液晶材料を充填したパネル前駆体10Rを対向基板側から露光してポリマーネットワークを形成した。この際、対向基板の額縁領域1NAに形成されているブラックマトリクス層の影に充填された光硬化モノマー入りの液晶材料には光が当たらないため、当該領域では光硬化モノマーがポリマー化せずに残存モノマーとして存在してしまったと考えられる。すなわち、ブラックマトリクス層の裏に残存モノマーが残ってしまったと考えられる。額縁領域1NAにおけるブラックマトリクス層は全面ベタ状の遮光部であるため、比較例2の残存モノマー量は、比較例1よりも多いと考えられる。当該残存モノマーが表示領域1AAへ染み出すことにより、比較例1の表示パネル1Rでは表示不均一エリアが発生したと考えられる。
【0235】
比較例2の表示パネル1Rでは、通常使用時、エージング時、ある温度範囲での使用時等において表示ムラが発生する可能性があり、当該表示ムラは、可逆的な表示ムラ、非可逆的な表示ムラのいずれの可能性もあると考えられる。ある温度範囲での使用時等において表示ムラが発生するとは、例えば、室温では全面均一に表示されていて問題ないが、ある温度では残存モノマーの影響が大きい部分だけで表示ムラが発生する場合をいう。
【0236】
(比較例3)
比較例1の露光工程における露光量を変化させて比較例3の表示パネルを作製した。具体的には、40Jで露光した表示パネル、60Jで露光した表示パネル、100Jで露光した表示パネル、及び、200Jで露光した表示パネルを作製した。
【0237】
図25は、40Jで露光した比較例3の表示パネルの表示ムラを示す平面模式図である。図26は、100Jで露光した比較例3の表示パネルの表示ムラを示す平面模式図である。図27は、比較例3に係る表示パネルを製造する際の露光量と、当該表示パネルの保持率との関係を示すグラフである。
【0238】
図25及び図26に示すように、40Jで露光した表示パネルに比べて、100Jで露光した表示パネルの方が、表示ムラが抑制されることが分かった。露光量を上げることにより、遮光部裏の残存モノマーの露光がやや促進され、残存モノマーの染み出しが若干抑制されたと考えられる。しかしながら、表示ムラの抑制の程度は充分ではなかった。
【0239】
また、図27に示すように、露光量を上げることにより、液晶材料の保持率が低下してしまうことが分かった。保持率の低下はエッジ焼付き等の不良の原因となる。
【符号の説明】
【0240】
1、1R:表示パネル
1AA:表示領域
1NA:額縁領域
2:液晶表示装置
4a、4b:保護回路
5b、5ca、5cb:検査用TFT
10、10R:パネル前駆体
11a:ゲート電極
11b:容量線
14a:ソース電極
21b、320:遮光部
100、300:基板
100R:TFT基板
101G:ゲート線(ゲートメタル)
101S:ソース線(ソースメタル)
101X:配線パターン
110、310:支持基板
120:薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)
120A:端子パターン(額縁パターン)
130:絶縁層
140:画素電極
200、200R:ポリマー含有層
210:ポリマーネットワーク
220:液晶成分
230:ポリマー層
240:ポリマー
321:オーバーコート層
321a:着色部
322:対向電極
330:カラーフィルタ層
330B:青色カラーフィルタ
330G:緑色カラーフィルタ
330R:赤色カラーフィルタ
410、420:配向膜
430:垂直配向膜
431:垂直配向膜ポリマー
432、442:主鎖
433:側鎖
434:絡み合い
440:水平配向膜
441:水平配向膜ポリマー
500D:距離
500R:シール
500、510、520:インク部
610、620:フィルム
611、621:UVカットフィルム
612、622:偏光子
710、720:粘着剤層
800:バックライト
900:筐体
910、920:基板
911、921:支持基板
912、922:電極
930:液晶層
931:液晶分子


図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
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