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特開2024-160546内燃機関用点火装置および内燃機関用点火装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160546
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】内燃機関用点火装置および内燃機関用点火装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02P 9/00 20060101AFI20241107BHJP
   F02P 3/05 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
F02P9/00 302A
F02P3/05 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075667
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】泉 光宏
【テーマコード(参考)】
3G019
【Fターム(参考)】
3G019BA01
3G019CA03
3G019EA11
3G019EB06
(57)【要約】
【課題】ON時電圧を大きくすることなく、放電エネルギーを大きくできる技術を提供する
【解決手段】この内燃機関用点火装置1は、トランス20と、1次コイルL1への通電を制御する通電制御部30と、2次コイルL2と接続されて燃焼室で着火動作を行う点火プラグ90とを有する。通電制御部30は、一定の電力を供給するバッテリ31と、電圧を可変に制御して1次コイルL1へ出力するコンバータ32と、1次コイルL1と直列に接続されるイグナイタ34と、コンバータ32の出力電圧値およびイグナイタ34のON/OFFを制御するECU33とを有する。ECU33は、イグナイタ34のON期間において、コンバータ32からの出力電圧を次第に大きくする。これにより、ON時電圧による異常放電を抑制しつつ、放電のための電気エネルギーを確保することができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用点火装置であって、
電磁結合された1次コイルおよび2次コイルを有するトランスと、
前記1次コイルへの通電を制御する通電制御部と、
前記2次コイルとグラウンドとの間に電気的に接続され、内燃機関の燃焼室で着火動作を行う点火プラグと、
を有し、
前記通電制御部は、
一定の電力を供給するバッテリと、
前記バッテリから出力する電圧を可変に制御し、前記1次コイルの一端へ出力するコンバータと、
前記1次コイルの他端と直列に接続されるイグナイタと、
前記コンバータの出力電圧値および前記イグナイタのON/OFFを制御するECUと、
を有し、
前記ECUは、
前記イグナイタのON期間において、前記コンバータからの出力電圧を次第に大きくする、内燃機関用点火装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関用点火装置であって、
前記ECUは、
前記ON期間の終了後、前記点火プラグの放電中、前記コンバータからの出力電圧を、前記ON期間の最終電圧値に維持する、内燃機関用点火装置。
【請求項3】
内燃機関用点火装置の制御方法であって、
前記内燃機関用点火装置は、
電磁結合された1次コイルおよび2次コイルを有するトランスと、
前記1次コイルへの通電を制御する通電制御部と、
前記2次コイルとグラウンドとの間に電気的に接続され、内燃機関の燃焼室で着火動作を行う点火プラグと、
を有し、
a)前記1次コイルに電力を供給する通電工程と、
b)前記1次コイルへの電力供給を遮断し、前記点火プラグを放電させる放電工程と、
c)前記点火プラグの放電後、次の前記通電工程まで待機する待機工程と、
を行い、
前記工程a)において、前記通電制御部は、前記1次コイルへの供給電圧を次第に大きくする、制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の制御方法であって、
前記通電制御部は、
一定の電力を供給するバッテリと、
前記バッテリから出力する電圧を可変に制御し、前記1次コイルの一端へ出力するコンバータと、
前記1次コイルの他端と直列に接続されるイグナイタと、
前記コンバータの出力電圧値および前記イグナイタのON/OFFを制御するECUと、
を有し、
前記工程a)において、前記イグナイタをON状態としつつ、前記コンバータからの出力電圧を次第に大きくし、
前記工程b)において、前記イグナイタをOFF状態としつつ、前記コンバータからの出力電圧を前記工程a)の最終電圧値に維持する、制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の制御方法であって、
前記工程c)において、前記イグナイタをOFF状態に維持しつつ、前記コンバータからの出力電圧を前記工程a)の初期電圧値に下げる、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用点火装置および内燃機関用点火装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用点火コイルにおいては、コイルアセンブリの1次コイルに電流を流して磁界を発生させた後に電流を遮断することにより、自己誘導作用により2次コイルに高電圧を発生させる。このとき2次コイルに発生した高電圧によって、点火プラグにおいて放電が行われる。
【0003】
従来の内燃機関用点火コイルについては、例えば、特許文献1に記載されている。従来の内燃機関用点火コイルでは、イグナイタをONとして1次コイルに電圧を一定時間供給した後に、イグナイタをOFFにする。すると、自己誘導作用によって、2次コイルの両端に高電圧が発生する(以下、この電圧を「放電時電圧」と称する)。これにより、点火プラグにおいて放電が生じる。
【0004】
このとき、イグナイタをONとした直後には、2次コイルには、1次コイルに供給された電圧よりも大きな電圧が生じる(以下、この電圧を「ON時電圧」と称する)。1次コイルに供給する電圧が大きいほど、自己誘導作用によって2次コイルに生じる放電時電圧が大きくなり、放電しやすくなる。一方で、1次コイルに供給する電圧が大きいほど、2次コイルに発生するON時電圧が大きくなり、ON時電圧によって意図しない放電が生じる可能性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-82193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガソリンのリーンバーンエンジンや、ガソリンよりも着火し難い難燃性燃料を用いた内燃機関では、点火プラグにおける放電エネルギーを大きくすることが求められる。しかし、単に1次コイルに供給する電圧を大きくすると、ON時電圧も比例して大きくなるという問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、ON時電圧を大きくすることなく、放電エネルギーを大きくできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、内燃機関用点火装置であって、電磁結合された1次コイルおよび2次コイルを有するトランスと、前記1次コイルへの通電を制御する通電制御部と、前記2次コイルとグラウンドとの間に電気的に接続され、内燃機関の燃焼室で着火動作を行う点火プラグと、を有し、前記通電制御部は、一定の電力を供給するバッテリと、前記バッテリから出力する電圧を可変に制御し、前記1次コイルの一端へ出力するコンバータと、前記1次コイルの他端と直列に接続されるイグナイタと、前記コンバータの出力電圧値および前記イグナイタのON/OFFを制御するECUと、を有し、前記ECUは、前記イグナイタのON期間において、前記コンバータからの出力電圧を次第に大きくする。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の内燃機関用点火装置であって、前記ECUは、前記ON期間の終了後、前記点火プラグの放電中、前記コンバータからの出力電圧を、前記ON期間の最終電圧値に維持する。
【0010】
本願の第3発明は、内燃機関用点火装置の制御方法であって、前記内燃機関用点火装置は、電磁結合された1次コイルおよび2次コイルを有するトランスと、前記1次コイルへの通電を制御する通電制御部と、前記2次コイルとグラウンドとの間に電気的に接続され、内燃機関の燃焼室で着火動作を行う点火プラグと、を有し、a)前記1次コイルに電力を供給する通電工程と、b)前記1次コイルへの電力供給を遮断し、前記点火プラグを放電させる放電工程と、c)前記点火プラグの放電後、次の前記通電工程まで待機する待機工程と、
を行い、前記工程a)において、前記通電制御部は、前記1次コイルへの供給電圧を次第に大きくする。
【0011】
本願の第4発明は、第3発明の制御方法であって、前記通電制御部は、一定の電力を供給するバッテリと、前記バッテリから出力する電圧を可変に制御し、前記1次コイルの一端へ出力するコンバータと、前記1次コイルの他端と直列に接続されるイグナイタと、前記コンバータの出力電圧値および前記イグナイタのON/OFFを制御するECUと、を有し、前記工程a)において、前記イグナイタをON状態としつつ、前記コンバータからの出力電圧を次第に大きくし、前記工程b)において、前記イグナイタをOFF状態としつつ、前記コンバータからの出力電圧を前記工程a)の最終電圧値に維持する。
【0012】
本願の第5発明は、第4発明の制御方法であって、前記工程c)において、前記イグナイタをOFF状態に維持しつつ、前記コンバータからの出力電圧を前記工程a)の初期電圧値に下げる。
【発明の効果】
【0013】
本願の第1発明~第5発明によれば、1次コイルへの電力供給開始時に2次コイルに生じるON時電圧を抑制しつつ、1次コイルへの電力遮断時における1次電流を大きくできる。これにより、ON時電圧による異常放電を抑制しつつ、放電のための電気エネルギーを確保することができる。
【0014】
特に、本願の第2発明および第4発明によれば、点火プラグの放電中に1次側の電気的な条件を変更せず、維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る内燃機関用点火装置の回路図である。
図2】第1実施形態に係る内燃機関用点火装置において、出力電圧を定電圧とした場合の点火信号、出力電圧、1次電圧および2次電圧の例を示した図である。
図3】第1実施形態に係る内燃機関用点火装置の制御の流れを示したフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る内燃機関用点火装置における点火信号、出力電圧、1次電圧および2次電圧の例を示した図である。
図5】第2実施形態に係る内燃機関用点火装置における点火信号、出力電圧、1次電圧および2次電圧の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
<1.第1実施形態>
<1-1.内燃機関用点火装置の構成>
本発明の第1実施形態となる内燃機関用点火装置1の構成について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態に係る内燃機関用点火装置1の回路図である。
【0018】
本実施形態の内燃機関用点火装置1は、例えば、自動車等の車両の車体に搭載され、内燃機関用の点火プラグ90に火花放電を発生させるための高電圧を印加する装置である。図1に示すように、内燃機関用点火装置1は、トランス20と、通電制御部30と、点火プラグ90とを有する。
【0019】
トランス20は、電磁結合された1次コイルL1および2次コイルL2を有する。2次コイルL2は、1次コイルL1よりも巻き数が大きい。2次コイルL2は、その両端部に、高圧側端子21と、低圧側端子22とを有する。
【0020】
通電制御部30は、1次コイルL1への通電を制御する。通電制御部30は、バッテリ31と、コンバータ32と、ECU(Engine Control Unit)33と、イグナイタ34とを有する。
【0021】
バッテリ31は、直流電力を充放電可能な電源装置(蓄電池)である。コンバータ32は、バッテリ31から供給される電圧を無段階または複数段階の電圧値へと変換可能なDC-DCコンバータである。本実施形態のコンバータ32は、バッテリ31から供給される電圧を無段階の電圧値へと変換可能である。コンバータ32は、トランス20の1次コイルL1およびイグナイタ34に、所望の電圧値へと変換した直流電圧を供給する。
【0022】
コンバータ32の種類は、使用するバッテリ31の種類に応じて適宜選択される。例えば、バッテリ31としてHEV車に搭載されたHEV用バッテリを用いる場合や、48V電源を使用する場合には、コンバータ32には降圧DC-DCコンバータを用いる。また、バッテリ31として12V電源を使用する場合には、昇圧DC-DCコンバータを用いる。
【0023】
ECU33は、車体のトランスミッションやエアバックの作動等を総合的に制御するコンピュータである。ECU33は、コンバータ32の出力電圧値を制御する。また、ECU33は、イグナイタ34に対して点火信号を出力し、イグナイタ34のON/OFF動作を制御する。
【0024】
イグナイタ34は、1次コイルL1の通電を制御する。イグナイタ34は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子である。イグナイタ34は、ECU33から供給される点火信号に従ってON/OFFし、1次コイルL1の通電を制御する。
【0025】
点火プラグ90は、内燃機関の燃焼室の内部に配置され、内燃機関の燃焼室で着火動作を実現するための装置である。点火プラグ90は、トランス20の2次コイルL2の高圧側端子21と、グラウンドとの間に電気的に接続される。すなわち、点火プラグ90の一端は、高圧側端子21に接続され、点火プラグ90の他端は、接地される。2次コイルL2の高圧側端子21に高電圧が誘起されると、点火プラグ90のギャップにおいて放電が起こり、火花が発生する。これにより、内燃機関に充填された燃料に点火される。
【0026】
<1-2.コンバータの出力電圧について>
続いて、図2図4を参照しつつ、本実施形態の内燃機関用点火装置1におけるコンバータ32の出力電圧および2次電圧の変化について説明する。以下では、コンバータ32の出力電圧を出力電圧Vo、1次コイルL1に供給される電圧を1次電圧V1、2次コイルL2の高圧側端子21における電圧を2次電圧V2として説明する。
【0027】
図2は、従来の内燃機関用点火装置と同様に、出力電圧Voが定電圧とした場合の点火信号Si、出力電圧Vo、1次電圧V1および2次電圧V2の例を示した図である。図2の例では、(B)に示すように、コンバータ32の出力電圧Voが一定の電圧値Vs[V]に固定されている。すなわち、コンバータ32を有していない従来の内燃機関用点火装置と同じ構成を示している。ここで、まず、図2を参照しつつ、従来の内燃機関用点火装置における各電圧の変化について説明する。
【0028】
内燃機関用点火装置1においては、
通電期間T1:1次コイルL1の通電
放電期間T2:点火プラグ90における放電
待機期間T3:放電後、1次コイルL1への通電開始までの待機期間
を、ピストンの動きに合わせて繰り返すことによって、定期的に燃焼室内での燃焼を行い、内燃機関における吸入・圧縮・燃焼・排気のサイクルを繰り返す。
【0029】
図2に示すように、時刻t1にイグナイタ34がONとなり、通電期間T1が開始されると、1次コイルL1に、出力電圧Voと同じ電圧値Vsの電圧がかかる。すなわち、1次電圧V1が電圧値Vs[V]となる。そして、通電期間T1中、1次電圧V1は、電圧値Vsを維持する。図2の(D)に示すように、通電期間T1が開始され、1次コイルL1へ通電が開始されると、1次コイルL1に電圧が供給されるのに伴って2次コイルL2にも電圧が生じる。ここで、通電開始直後に発生する電圧を、ON時電圧Vonと称する。1次電圧V1が電圧値Vs[V]である場合のON時電圧Vonの電圧値をVx[V]とする。その後、1次コイルL1への通電が継続すると、トランス20内の磁束の形成に伴って2次電圧V2は、Vx[V]から次第に小さくなる。
【0030】
通電期間T1が終了し、時刻t2にイグナイタ34がOFFとなると、1次コイルL1への電力供給が遮断され、2次コイルL2には、ON時電圧と逆向き(マイナス)の高電圧が発生する。これにより、点火プラグ90に高電圧が印加され、点火プラグ90のギャップにおいて放電が生じる(放電期間T2)。その後、放電に伴ってトランス20に形成された磁束が弱まり、次第に2次電圧V2の絶対値が小さくなる。これにより、点火プラグ90における放電が終了する。そして、2次電圧V2は0[V]へと収束する。
【0031】
放電完了後の待機期間T3では、2次電圧V2は、0[V]のまま維持される。このような、通電期間T1、放電期間T2および待機期間T3のサイクルが繰り返される。
【0032】
上述の通り、ガソリンのリーンバーンエンジンや、ガソリンよりも着火し難い難燃性燃料を用いた内燃機関では、点火プラグにおける放電エネルギーを大きくすることが求められる。しかし、単に1次コイルに供給する出力電圧Voを大きくすると、ON時電圧Vonも比例して大きくなるという問題が生じる。すなわち、通電期間T1の間、従来よりも大きな電圧値を1次コイルL1に供給しようとすると、ON時電圧Vonも大きくなる。すると、ON時電圧Vonによって点火プラグ90において放電が生じる可能性がある。本実施形態では、そのような問題を解決するために、コンバータ32によって出力電圧Voを可変としている。
【0033】
続いて、本実施形態の内燃機関用点火装置1における 点火信号Si、出力電圧Vo、1次電圧V1および2次電圧V2について、図3および図4を参照しつつ説明する。図3は、本実施形態における内燃機関用点火装置1の制御の流れを示したフローチャートである。図4は、本実施形態に係る内燃機関用点火装置1の制御方法における点火信号Si、出力電圧Vo、1次電圧V1および2次電圧V2の例を示した図である。
【0034】
図3に示すように、通電期間T1の開始前に、ECU33は、まず、バッテリ31からの出力電圧Vbの値と、コンバータ32からの出力電圧Voの現在の値とを取得する。また、同時に、ECU33は、内燃機関の回転数や吸気圧の値を取得する。そして、取得したこれらの値を用いて通電マップを参照し、所望電圧値Vs[V]および通電時間Δt[ms]を算出する(ステップST1)。
【0035】
ここで、所望電圧値Vs[V]および通電時間Δt[ms]は、図2の例のように、電圧値が一定の電力を1次コイルL1に供給すると仮定した条件で、1次コイルL1へ電圧値Vs[V]を時間Δt[ms]供給後の1次電流の値が、所定の電流値となるように算出される。
【0036】
次に、ECU33は、予め決められた放電開始時刻(通電遮断時刻)t2と、ステップST1で算出された通電時間Δtから、通電開始時刻t1を算出する。また、ECU33は、通電期間T1開始時(通電開始時刻t1)における出力電圧Voの電圧値である初期電圧値Vmin[V]と、通電期間T1終了時(通電開始時刻t2)における出力電圧Voの電圧値である最終電圧値Vmax[V]とを算出する(ステップST2)。
【0037】
本実施形態では、ステップST2において、図4(B)に示すように、通電期間T1における出力電圧Voが初期電圧値Vmin[V]から最終電圧値Vmax[V]まで直線的に増加するように算出される。なお、通電期間T1における出力電圧Voの増加率は必ずしも一定でなくてもよい。例えば、通電期間T1の終わり(時刻t2)に向かうにつれて、次第に出力電圧Voの増加率が大きくなってもよい。
【0038】
このとき、初期電圧値Vmin[V]は、ON時電圧Vonが所定の閾値を超えないように設定される。また、出力電圧Voの上昇により、2次電圧V2がON時電圧Vonを超えないように、通電期間T1中の出力電圧Voの上昇率が算出される。
【0039】
続いて、通電期間T1の開始前の所定のタイミング(時刻t0)において、ECU33は、コンバータ32からの出力電圧Voを初期電圧値Vmin[V]へと変更させる(ステップST3)。具体的には、時刻t0は、通電期間T1が開始される時刻t1よりも数100[μs]程度前の時刻である。
【0040】
そして、ECU33は、時刻t1において、イグナイタ34をONとして1次コイルL1に電力の供給を開始し、時刻t2まで電力供給を維持する(ステップST4:通電工程)。また、ECU33は、時刻t1~t2の通電期間T1中、コンバータ32からの出力電圧VoがステップST2で算出した通り、初期電圧値Vmin[V]から最終電圧値Vmax[V]へと次第に大きくなるように制御する。これにより、1次コイルL1への供給電圧が、初期電圧値Vmin[V]から最終電圧値Vmax[V]へと次第に大きくなる。
【0041】
その後、ECU33は、時刻t2において、イグナイタ34をOFFにして1次コイルL1への電力供給を遮断する。これにより、点火プラグ90が放電する(ステップST5:放電工程)。なお、点火プラグ90における放電が行われる放電期間T2の間、ECU33は、コンバータ32からの出力電圧Voを、通電期間T1の最終電圧値Vmax[V]に維持する。図1に示すように、トランス20の1次側と2次側とは、電気的に結合されている。このため、点火プラグ90の放電中に1次側の電気的な条件を変えることなく、維持することが好ましい。
【0042】
点火プラグ90の放電が行われる放電期間T2の後、次の通電期間T1までの間、トランス20への通電を行わずに待機する(待機期間T3:待機工程)。待機期間T3中、ECU33は、イグナイタ34をOFF状態に維持しつつ、コンバータ32からの出力電圧Voを直前の通電期間T1における初期電圧値Vmin[V]に戻す(ステップST6)。
【0043】
続いて、ECU33は、待機期間T3中、次のサイクルの通電期間T1より少し前に、次のサイクルのステップST1を行う。
【0044】
このように、この内燃機関用点火装置1では、通電期間T1中、1次コイルL1へ供給する出力電圧Voを次第に大きくしている。これにより、1次コイルL1への電力供給開始時(時刻t1)に2次コイルL2に生じるON時電圧Vonを抑制しつつ、1次コイルL1への電力遮断時における1次電流を大きくできる。これにより、ON時電圧Vonによる点火プラグ90の異常放電を抑制しつつ、放電のための電気エネルギーを確保することができる。
【0045】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態となる内燃機関用点火装置1の制御方法について、図5を参照しつつ説明する。図5は、第2実施形態に係る内燃機関用点火装置1の制御方法における点火信号Si、出力電圧Vo、1次電圧V1および2次電圧V2の例を示した図である。図5の例の制御方法では、コンバータ32からの出力電圧Voを、無段階ではなく、複数段階で出力する。なお、本実施形態における内燃機関用点火装置1の制御の流れは、第1実施形態と同様であるため、図3を参照する。
【0046】
第2実施形態において、ステップST1において所望電圧値Vs[V]および通電時間Δt[ms]を算出する方法は、第1実施形態と同様である。次に、ステップST2において初期電圧値Vmin[V]および最終電圧値Vmax[V]を算出するにあたり、図5(B)に示すように、通電期間T1における出力電圧Voが、初期電圧値Vmin[V]から最終電圧値Vmax[V]まで段階的に階段状に増加するように算出される。
【0047】
このとき、初期電圧値Vmin[V]は、ON時電圧Vonが所定の閾値を超えないように設定される。また、出力電圧Voの段階的な上昇により、2次電圧V2がON時電圧Vonを超えないように、通電期間T1中の出力電圧Voの上昇率が算出される。
【0048】
続いて、第1実施形態と同様に、通電期間T1の開始前の時刻t0において、ECU33は、コンバータ32からの出力電圧Voを初期電圧値Vmin[V]へと変更させる(ステップST3)。
【0049】
そして、ECU33は、時刻t1において、イグナイタ34をONとして1次コイルL1に電力の供給を開始し、時刻t2まで電力供給を維持する(ステップST4:通電工程)。また、ECU33は、時刻t1~t2の通電期間T1中、コンバータ32からの出力電圧VoがステップST2で算出した通り、初期電圧値Vmin[V]から最終電圧値Vmax[V]へと次第に大きくなるように制御する。図5の例では、通電期間T1中の時刻t3、時刻t4および時刻t5の3回、ECU33は、コンバータ32からの出力電圧Voを、次第に大きくなるように段階的に変更する。
【0050】
その後、ECU33は、時刻t2において、イグナイタ34をOFFにして1次コイルL1への電力供給を遮断する。これにより、点火プラグ90が放電する(ステップST5:放電工程)。また、点火プラグ90における放電が行われる放電期間T2の間、ECU33は、コンバータ32からの出力電圧Voを、通電期間T1の最終電圧値Vmax[V]に維持する。
【0051】
この第2実施形態のように、放電期間T2中、コンバータ32からの出力電圧Voは、滑らかに上昇するのではなく、段階的に大きくなってもよい。
【0052】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。
【0053】
本発明の内燃機関用点火装置は、自動車等の車両のみならず、発電機等の様々な装置や産業機械に搭載されて、内燃機関の点火プラグに電気火花を発生させて燃料を点火させるために使用されるものであればよい。
【0054】
上記の内燃機関用点火装置の細部の形状や構造は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更してもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 内燃機関用点火装置
20 トランス
30 通電制御部
31 バッテリ
32 コンバータ
33 ECU
34 イグナイタ
90 点火プラグ
L1 1次コイル
L2 2次コイル
Si 点火信号
T1 通電期間
T2 放電期間
T3 待機期間
V1 1次電圧
V2 2次電圧
Vmax 最終電圧値
Vmin 初期電圧値
Vo 出力電圧
Von ON時電圧
図1
図2
図3
図4
図5