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特開2024-160548自己始動同期モータの回転子の製造方法、製造用治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160548
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】自己始動同期モータの回転子の製造方法、製造用治具
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20241107BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20241107BHJP
【FI】
H02K15/02 J
H02K15/02 K
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075669
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】秋山 貴伸
(72)【発明者】
【氏名】森林 諒伍
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB06
5H615BB14
5H615PP03
5H615PP06
5H615SS09
5H615SS10
5H615SS12
5H615SS13
5H615SS51
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB05
5H622QB01
(57)【要約】
【課題】着磁された永久磁石をダイキャスト後に挿入して回転子を製造することができる自己始動同期モータの回転子の製造方法、製造用治具を提供する。
【解決手段】実施形態の回転子1の製造方法は、自己始動同期モータを対象としたものであり、永久磁石7を模した形状に形成されていて、磁石挿入孔6に挿入されるダミー挿入部11と、ダミー挿入部11の端部が接続されていて、回転子鉄心3に取り付けられた際に当該回転子鉄心3の端面に接する端板12とを有する製造用治具10を回転子鉄心3に取り付ける工程と、導体バー5およびエンドリング8をダイキャストにより一体形成する工程と、製造用治具10を取り外した回転子鉄心3の磁石挿入孔6に着磁済みの永久磁石7を挿入する工程とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子鉄心に形成された複数のスロットに配置される導体バーと、前記導体バーの両端を短絡するエンドリングと、前記スロットよりも内周側に形成された複数の磁石挿入孔にそれぞれ挿入されている永久磁石とを有する自己始動同期モータの回転子の製造方法であって、
前記永久磁石を模した形状に形成されていて、前記磁石挿入孔に挿入されるダミー挿入部と、前記ダミー挿入部の端部が接続されていて、前記回転子鉄心に取り付けられた際に当該回転子鉄心の端面に接する端板と、を有する製造用治具を前記回転子鉄心に取り付ける工程と、
前記製造用治具を取り付けた状態で前記回転子鉄心を金型内に配置し、前記導体バーおよび前記エンドリングをダイキャストにより一体形成する工程と、
前記導体バーおよび前記エンドリングが形成された前記回転子鉄心から前記製造用治具を取り外す工程と、
前記製造用治具が取り外された前記回転子鉄心の前記磁石挿入孔に、着磁済みの前記永久磁石を挿入する工程と、
を含む自己始動同期モータの回転子の製造方法。
【請求項2】
前記回転子鉄心は、少なくとも1つの前記スロットが内周側に位置するいずれか1つの前記磁石挿入孔側まで延びており、当該磁石挿入孔に繋がっている請求項1に記載の自己始動同期モータの回転子の製造方法。
【請求項3】
前記回転子鉄心は、少なくとも1つの前記スロットが内周側に位置するいずれか1つの前記磁石挿入孔側まで延びており、磁石挿入孔との間にブリッジ部が形成されている請求項1に記載の自己始動同期モータの回転子の製造方法。
【請求項4】
前記製造用治具は、前記端板の前記回転子とは逆側となる面に取手が着脱自在に取り付け可能である、または、前記端板の前記回転子とは逆側となる面に取手が固定的に取り付けられたものである請求項1に記載の自己始動同期モータの回転子の製造方法。
【請求項5】
前記製造用治具は、前記ダミー挿入部と前記端板とが一体に形成されている、または、前記ダミー挿入部と前記端板とが分離可能になっている請求項1に記載の自己始動同期モータの回転子の製造方法。
【請求項6】
回転子鉄心のスロットに挿入される導体バーと、前記導体バーの両端を短絡するエンドリングと、前記スロットよりも内周側に形成されている磁石挿入孔に挿入されている永久磁石とを有する自己始動同期モータの回転子を製造するための治具であって、
前記永久磁石を模した形状に形成されていて、前記磁石挿入孔に挿入されるダミー挿入部と、
前記ダミー挿入部の端部が接続されていて、前記回転子鉄心に取り付けられた際に当該回転子鉄心の端面に接する端板と、
を備える製造用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自己始動同期モータの回転子の製造方法、製造用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されているように、自己始動同期モータは、回転子鉄心に形成された複数のスロットに配置される導体バーと、導体バーの両端を短絡するエンドリングと、スロットよりも内周側に形成された複数の磁石挿入孔にそれぞれ挿入されている永久磁石とを有する回転子を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-182543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような自己始動同期モータは、スロットの近くに磁石挿入孔が配置されている。その場合、着磁した永久磁石を挿入した後にダイキャストすると、熱によって永久磁石が減磁するおそれがあり、未着磁の永久磁石を予め挿入した状態でダイキャストしてから着磁しようとしても、回転子鉄心の端部から永久磁石までの距離が大きくなることから着磁が不十分となるおそれがある。かといって、永久磁石を挿入する前にダイキャストすると、溶融した金属が磁石挿入孔に漏洩してしまい永久磁石を挿入できなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、着磁された永久磁石をダイキャスト後に挿入して回転子を製造することができる自己始動同期モータの回転子の製造方法、製造用治具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の自己始動同期モータの回転子の製造方法は、回転子鉄心に形成された複数のスロットに配置される導体バーと、導体バーの両端を短絡するエンドリングと、スロットよりも内周側に形成された複数の磁石挿入孔にそれぞれ挿入されている永久磁石とを有する自己始動同期モータの回転子を製造するためのものであって、永久磁石を模した形状に形成されていて、磁石挿入孔に挿入されるダミー挿入部と、ダミー挿入部の端部が接続されていて、回転子鉄心に取り付けられた際に当該回転子鉄心の端面に接する端板と、を有する製造用治具を回転子鉄心に取り付ける工程と、製造用治具を取り付けた状態で回転子鉄心を金型内に配置し、導体バーおよびエンドリングをダイキャストにより一体形成する工程と、導体バーおよびエンドリングが形成された回転子鉄心から製造用治具を取り外す工程と、製造用治具が取り外された回転子鉄心の磁石挿入孔に、着磁済みの永久磁石を挿入する工程と、含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態による回転子の構成例を模式的に示す図
図2】回転子鉄心の構成例を模式的に示す図
図3】製造用治具の構成例を模式的に示す図
図4】製造工程の流れを説明する図
図5】製造工程における回転子鉄心の態様を模式的に示す図その1
図6】製造工程における回転子鉄心の態様を模式的に示す図その2
図7】回転子鉄心の他の構成例を模式的に示す図
図8】製造工程における回転子鉄心の他の態様を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態で想定している回転子1は、概ね円柱状に形成されていて、図示しない回転軸が挿入される軸孔2を中心部に有する回転子鉄心3を備えている。この回転子1は、A位置断面視として示すように、回転子鉄心3の外周部に形成されている複数のスロット4に、ハッチングにて示す導体バー5が配置されており、その内周側に形成されている磁石挿入孔6に、ハッチングにて示す永久磁石7が配置された構成となっている。なお、A位置断面視は、回転子1のA線の位置における断面の1極分を軸方向から見た状態を示している。
【0009】
回転子鉄心3は、図2に斜視として示すように、所定の形状に打ち抜かれた鉄心材3aを積層して形成されており、正面視として示すように、その外周部に複数のスロット4が周方向に並んで形成されている。また、回転子鉄心3は、スロット4の内周側に、永久磁石7が挿入される磁石挿入孔6が複数形成されている。本実施形態では周方向に4つの永久磁石7が配置される構成であり、近接して配置される2つの永久磁石7が1組となって1つの磁極を形成している。
【0010】
また、各磁石挿入孔6は、短手側の一方の端部が、外周側に位置する1つのスロット4に繋がっている。そのため、図1のA位置断面視に示す近接領域(R1)においては、永久磁石7と導体バー5とが互いに接した状態で配置される。また、導体バー5は、アルミダイキャストによってエンドリング8と一体で形成されている。このエンドリング8は回転子鉄心3の軸方向の両端面に形成されており、導体バー5とともにいわゆるかご型導体を形成している。なお、図1および図2に示したスロット4や磁石挿入孔6の形状、数および配置は一例であり、これに限定されない。
【0011】
さて、このような回転子1を製造する際には、着磁した永久磁石7を磁石挿入孔6に挿入した状態でダイキャストすると、熱によって永久磁石7が減磁するおそれがある。また、未着磁の永久磁石7を予め挿入した状態でダイキャストし、ダイキャスト後に永久磁石7を着磁しようとしても、回転子鉄心3の外周面や端部からの距離が大きくなることから着磁が不十分となるおそれがある。かといって、永久磁石7を挿入する前にダイキャストすると、溶融した金属が磁石挿入孔6に漏洩してしまい、永久磁石7が挿入できなくなるおそれがある。
【0012】
そこで、本実施形態では、図3に示す製造用治具10を用いることにより、着磁された永久磁石7をダイキャスト後に磁石挿入孔6に挿入して回転子1を製造することを可能にしている。具体的には、製造用治具10は、図3に正面側斜視および裏面側斜視として示すように、永久磁石7を模した形状に形成されていて、磁石挿入孔6に挿入されるダミー挿入部11と、ダミー挿入部11の端部が接続されていて、回転子鉄心3に取り付けられた際に回転子鉄心3の端面に接する端板12とを有している。
【0013】
本実施形態ではアルミダイキャストを想定しており、製造用治具10は、例えばSUS304や鉄のように溶融アルミによる影響を受けない材質で形成されている。また、製造用治具10は、ダミー挿入部11と端板12とが一体に形成されている。以下、ダミー挿入部11が設けられていて、回転子鉄心3の端面に接する側を端板12の裏面側とし、その反対側の面を正面側として説明する。なお、アルミ以外のダイキャストを対象とすることもでき、その場合には溶融合金による影響を受けない材質で製造用治具10を形成すればよい。
【0014】
ダミー挿入部11は、端板12の裏面側において、回転子鉄心3の磁石挿入孔6に対応する位置にそれぞれ設けられている。本実施形態の場合、磁石挿入孔6は4つ設けられているため、ダミー挿入部11も4つ設けられている。これらのダミー挿入部11は、その長さ、幅および厚みが永久磁石7と同一形状となるように形成されている。
【0015】
そのため、ダミー挿入部11は、磁石挿入孔6に挿入された状態では、磁石挿入孔6内に永久磁石7を挿入した状態と同じ空間を占有する。また、ダミー挿入部11を磁石挿入孔6に挿入することによって、占有している空間への溶融アルミの侵入を阻むことができる。これにより、後述するように、ダイキャスト後の状態において、磁石挿入孔6内に永久磁石7を挿入するための空間を確保することが可能となる。
【0016】
端板12は、全体として平坦な円板状に形成されており、ダミー挿入部11の全体が磁石挿入孔6に挿入された状態では、裏面側が回転子鉄心3の軸方向の端面に密に接した状態になる。これにより、製造用治具10を回転子鉄心3に取り付けた状態では、回転子鉄心3の端面のうち端板12が密に接している範囲への溶融アルミの侵入が阻まれるとともに、端板12の周囲にエンドリング8が形成されることになる。なお、端板12は、全体として矩形状に形成したり、全体として多角形に形成したりすることもできる。
【0017】
また、端板12は、ダミー挿入部11とは逆側となる正面側に取手13が取り付けられている。本実施形態の場合、端板12のほぼ中心にタップ穴が設けられており、取手13としてのアイボルトが着脱可能に取り付けられている。この取手13を設けたことにより、製造用治具10を回転子鉄心3に取り付ける作業、および、製造用治具10を回転子鉄心3から取り外す作業を容易に行うことができる。ただし、取手13としては、アイボルトに限らず、ユーボルトなどの他の形状のものを採用することができる。また、取手13は、着脱可能なものではなく、端板12に例えば溶接などにより固定するすることもできる。
【0018】
次に、製造用治具10を用いた回転子1の製造方法について図4から図6を参照しながら説明する。なお、図4から図6は、実際の回転子1の製造工程のうち製造用治具10を用いる場合に関連する幾つかの工程を抽出して示したものであり、回転子鉄心3そのものは、図4の工程を開始する前に既に出来上がっているものとする。
【0019】
回転子1の製造工程では、まず、回転子鉄心3に製造用治具10を取り付ける取り付け工程を実施する(S1)。この取り付け工程では、図5に取り付け態様として示すように、黒塗りの矢印(F1)に示すようにダミー挿入部11を磁石挿入孔6に挿入しつつ、端板12が回転子鉄心3の端面に接する状態になるように製造用治具10取り付ける。なお、実際には、回転子鉄心3を軸方向が天地方向に沿った状態で配置し、上方から吊り下げた製造用治具10を取り付ける手順で作業が行われるが、回転子鉄心3の配置態様や製造用治具10の取り付け態様は作業環境に応じて適宜選択すればよい。
【0020】
続いて、製造用治具10が取り付けられた回転子鉄心3を金型20内に配置する配置工程を実施する(S2)。この配置工程が完了すると、図5に配置態様として一部断面視にて示すように、密閉された金型20内に回転子鉄心3および製造用治具10が配置される。なお、図面を見やすくするために製造用治具10にはハッチングを付している。また、図5では省略しているが、金型20は、回転子鉄心3を配置可能な分離型の構造となっている。
【0021】
製造用治具10は、金型20内に配置された状態では、端板12が図示上方から金型20の一部によって抑えられ、回転子鉄心3の図示下方側の端部が金型20の一部によって抑えられることによって、端板12と回転子鉄心3の端面とが密に接触した状態になる。この金型20には取手13が配置される空間が設けられているため、取手13を取り付けたまま金型20内に配置することができる。
【0022】
このように固定子鉄心3を金型20内に配置した場合には、回転子鉄心3に形成されている空間のうち、軸孔2は端板12および金型20によって封止され、磁石挿入孔6はダミー挿入部11によって封止されることになる。そのため、金型20内においては、エンドリング8を形成するために設けられている形成領域(R2)と、導体バー5が形成されるスロット4とが、溶融アルミが充填される空間として存在することになる。
【0023】
続いて、金型20内の空間に溶融アルミを充填するダイキャスト工程を実施する(S3)。これにより、図5にダイキャスト態様として示すように、封止されている部位を除いた金型20内の空間に溶融アルミが充填され、導電バーとエンドリング8とが形成される。
【0024】
ダイキャスト工程が完了すると、回転子鉄心3を金型20から取り出す取り出し工程を実施し(S4)、回転子鉄心3から製造用治具10を取り外す取り外し工程を実施する(S5)。この取り外し工程では、図6に取り外し態様として示すように、白抜きの矢印(F2)に示すように回転子鉄心3から製造用治具10を取り外す。
【0025】
これにより、B位置断面視として示すように、回転子鉄心3は、それぞれのスロット4内に導体バー5が配置されるとともに、磁石挿入孔6内ではダミー挿入部11が挿入されていた場所に永久磁石7を挿入するための空間が確保される。つまり、磁石挿入孔6とスロット4とが繋がっている場合であっても、永久磁石7を挿入するための空間を確保することが可能となる。なお、B位置断面視は、B線の位置における回転子鉄心3の断面を軸方向から見た図である。
【0026】
続いて、ダミー挿入部11によって確保された空間に、着磁済みの永久磁石7を挿入する挿入工程を実施する(S6)。これにより、図6に磁石挿入態様として示すように、回転子鉄心3に永久磁石7が配置された回転子1が製造される。すなわち、ダイキャスト工程の後に着磁済みの永久磁石7を挿入する挿入工程を実施するという手順で回転子1を製造することができる。
【0027】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
本実施形態の回転子1の製造方法は、回転子鉄心3に形成された複数のスロット4に配置される導体バー5と、導体バー5の両端を短絡するエンドリング8と、スロット4よりも内周側に形成された複数の磁石挿入孔6にそれぞれ挿入されている永久磁石7とを有する自己始動同期モータを対象としたものであり、永久磁石7を模した形状に形成されていて、磁石挿入孔6に挿入されるダミー挿入部11と、ダミー挿入部11の端部が接続されていて、回転子鉄心3に取り付けられた際に当該回転子鉄心3の端面に接する端板12と、を有する製造用治具10を回転子鉄心3に取り付ける工程と、治具を取り付けた状態で回転子鉄心3を金型20内に配置して、導体バー5およびエンドリング8をダイキャストにより一体形成する工程と、導体バー5およびエンドリング8が形成された回転子鉄心3から製造用治具10を取り外す工程と、製造用治具10が取り外された回転子鉄心3の磁石挿入孔6に、着磁済みの永久磁石7を挿入する工程と、を含んでいる。
【0028】
このような工程を実施することにより、ダイキャスト時の熱による減磁や着磁が不十分になるといったおそれがなく、ダイキャスト工程の後に着磁済みの永久磁石7を挿入する挿入工程を実施するという手順で回転子1を製造することができる。
【0029】
また、回転子鉄心3は、少なくとも1つのスロット4が内周側に位置するいずれか1つの磁石挿入孔6側まで延びており、当該磁石挿入孔6に繋がっている。このような回転子鉄心3を対象とした場合であっても、上記した製造方法を採用することにより、ダイキャスト工程の後に着磁済みの永久磁石7を挿入する挿入工程を実施するという手順で回転子1を製造することができる。
【0030】
また、製造用治具10は、端板12の回転子1とは逆側となる面に取手13が着脱自在に取り付け可能である、または、端板12の回転子1とは逆側となる面に取手13が固定的に取り付けられた構成となっている。これにより、製造用治具10の取り付けや取り外しを容易に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0031】
この場合、本実施形態のように取手13を取り付けた状態でダイキャストを可能にすることにより、製造用治具10の取り付けや取り外しをさらに容易に行うことができ、作業効率を大きく向上させることができる。
【0032】
また、製造用治具10は、ダミー挿入部11と端板12とが一体に形成されている。これにより、製造用治具10の取り付けや取り外しを容易に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0033】
ただし、製造用治具10は、ダミー挿入部11と端板12とが分離可能になっている構成であってもよい。このような構成とすることにより、例えば端板12に複数の取付孔を設け、製造対称の回転子1の磁石挿入孔6に合わせたダミー挿入部11を付け替えることにより、仕様が異なる回転子1を製造する場合であっても製造用治具10を汎用的に利用することができる。
【0034】
また、製造用治具10は、回転子鉄心3のスロット4に挿入される導体バー5と、導体バー5の両端を短絡するエンドリング8と、スロット4よりも内周側に形成されている磁石挿入孔6に挿入されている永久磁石7とを有する自己始動同期モータの回転子1の製造するためのものであって、永久磁石7を模した形状に形成されていて、磁石挿入孔6に挿入されるダミー挿入部11と、ダミー挿入部11の端部が接続されていて、回転子鉄心3に取り付けられた際に当該回転子鉄心3の端面に接する端板12と、を備える。
【0035】
このような製造用治具10を用いることにより、予め永久磁石7を挿入しなくても、ダイキャスト後には永久磁石7を挿入するための空間を確保することができ、上記したダイキャスト時の熱による減磁や着磁が不十分になるといったおそれがなく、ダイキャスト工程の後に着磁済みの永久磁石7を挿入する挿入工程を実施するという手順で回転子1を製造することができる。
【0036】
また、例えば図7に斜視および正面視として示すように、少なくとも1つのスロット4が内周側に位置するいずれか1つの磁石挿入孔6側まで延びており、当該磁石挿入孔6との間にブリッジ部31が形成されている回転子鉄心30を対象とすることができる。この回転子鉄心30は、所定の形状に打ち抜かれた鉄心材30aを積層して形成されたものであり、正面視として示すように、その外周部に複数のスロット4が周方向に並んで形成されているとともに、スロット4の内周側には永久磁石7が挿入される磁石挿入孔6が複数形成されている。
【0037】
そして、この回転子鉄心30に製造用治具10を取り付け、図4に示す各工程を実施して回転子1を製造することができる。具体的には、図8に取り付け/取り外し態様として示すように、黒塗りの矢印(F1)に示すようにダミー挿入部11を磁石挿入孔6に挿入しつつ、端板12が回転子鉄心30の端面に接する状態になるように製造用治具10取り付け、ダイキャスト工程を実施する。
【0038】
その後、白抜きの矢印(F2)に示すように回転子鉄心30から製造用治具10を取り外すことにより、C位置断面視として示すように、回転子鉄心30は、それぞれのスロット4内には導体バー5が配置されるとともに、磁石挿入孔6内に永久磁石7を挿入するための空間が確保される。なお、C位置断面視は、C線の位置における回転子鉄心30の断面を軸方向から見た図である。
【0039】
そして、磁石挿入態様として示すように、確保された空間に永久磁石7を挿入することにより回転子1を製造することができる。このように、ブリッジ部31を備える回転子鉄心30を対象とした場合であっても、ダイキャスト時の熱による減磁や着磁が不十分になるといったおそれがなく、ダイキャスト工程の後に着磁済みの永久磁石7を挿入する挿入工程を実施するという手順で回転子1を製造することができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
図面中、1は回転子、3、30は回転子鉄心、4はスロット、5は導体バー、6は磁石挿入孔、7は永久磁石、8はエンドリング、10は製造用治具、11はダミー挿入部、12は端板、13は取手を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8