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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160550
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】検体抽出容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20241107BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G01N1/10 N
G01N1/04 H
G01N1/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075672
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】500272347
【氏名又は名称】DICプラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】須崎 正士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潤任
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052BA19
2G052CA03
2G052CA16
2G052GA11
2G052GA27
2G052JA23
(57)【要約】
【課題】検体採取棒が挿入されたとき、抽出液が押し出されて、容器本体の開口端から飛び出してしまうことを防ぐことができる検体抽出容器を提供する。
【解決手段】検体採取棒から検体を抽出する抽出液が収容される検体抽出容器1であって、上端を開口端12とし、内部に内部空間13が構成された容器本体11を備え、容器本体11は、一部品で構成されており、内部空間13において、開口端12から挿入された検体採取棒2が通る第1通路22と、開口端12から挿入された試験片4が通る第2通路23と、を区画する隔壁部21と、を備え、第1通路22は、第1通路22の底部に、検体採取棒2の採取部2Bと擦れる第1接触部14を備え、第2通路23は、第2通路23の底部に、抽出液3によって膨らんだ試験片4のパッド部4aと接触する第2接触部15を備え、第1通路22と第2通路23とは、スリット24によって連通している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体採取棒から検体を抽出する抽出液が収容される検体抽出容器であって、
上端を開口端とし、内部に前記開口端と連続する内部空間が構成された容器本体を備え、
前記容器本体は、一部品で構成されており、
前記内部空間において、前記開口端から挿入された前記検体採取棒が通る第1通路と、前記開口端から挿入された試験片が通る第2通路と、を区画する隔壁部と、を備え、
前記第1通路は、前記第1通路の底部に、前記検体採取棒の採取部と擦れる第1接触部を備え、
前記第2通路は、前記第2通路の底部に、前記抽出液によって膨らんだ前記試験片のパッド部と接触する第2接触部を備え、
前記第1通路と前記第2通路とは、連通部によって連通している
検体抽出容器。
【請求項2】
前記隔壁部は、前記開口端から前記内部空間の底部の方向に向かって延びており、
前記連通部は、前記隔壁部に設けられた貫通部である
請求項1に記載の検体抽出容器。
【請求項3】
前記貫通部は、前記隔壁部に設けられた、上下方向に延びるスリットで構成されている
請求項2に記載の検体抽出容器。
【請求項4】
前記容器本体は、前記容器本体を立った状態に支持する脚部を更に備える
請求項1に記載の検体抽出容器。
【請求項5】
前記脚部は、前記容器本体の外周に位置する外周壁部である
請求項4に記載の検体抽出容器。
【請求項6】
前記開口端は、前記隔壁部によって区画される、前記第1通路に連続する第1開口と、前記第2通路に連続する第2開口と、を備え、
前記第1開口と前記第2開口とは形状が異なる
請求項1に記載の検体抽出容器。
【請求項7】
前記容器本体は、樹脂成形体である
請求項1に記載の検体抽出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体採取棒から検体を抽出する抽出液が収容される検体抽出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
検体採取棒から検体を抽出する抽出液が収容される検体抽出容器は、抽出液が収容される容器本体を備えている。内部空間は、連通した2つの空間に区画されている。一方の空間は、検体採取棒が挿入される通路として構成されている。使用時には、開口端を塞ぐシール剥がし、検体採取棒が挿入される。通路の底部は、検体採取棒の先端に設けられた採取部に擦れるように狭い空間となっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-167509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の検体抽出容器では、検体採取棒が挿入されたとき、採取部によって、抽出液が押し出されることで、容器本体の開口端から飛び出してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための検体抽出容器は、検体採取棒から検体を抽出する抽出液が収容される検体抽出容器であって、上端を開口端とし、内部に前記開口端と連続する内部空間が構成された容器本体を備え、前記容器本体は、一部品で構成されており、前記内部空間において、前記開口端から挿入された前記検体採取棒が通る第1通路と、前記開口端から挿入された試験片が通る第2通路と、を区画する隔壁部と、を備え、前記第1通路は、前記第1通路の底部に、前記検体採取棒の採取部と擦れる第1接触部を備え、前記第2通路は、前記第2通路の底部に、前記抽出液によって膨らんだ前記試験片のパッド部と接触する第2接触部を備え、前記第1通路と前記第2通路とは、連通部によって連通している。
【0006】
上記構成によれば、第1通路に検体採取棒が挿入されたとき、抽出液は、採取部によって押し出されることで液面が上昇する。この際、抽出液は、隔壁部が備える貫通部を介して第2通路に移動する。これにより、抽出液は、開口端から溢れることを防ぐことができる。
【0007】
上記検体抽出容器において、前記隔壁部は、前記開口端から前記内部空間の底部の方向に向かって延びており、前記連通部は、前記隔壁部に設けられた貫通部として構成してもよい。
【0008】
上記構成によれば、隔壁部に設けられた貫通部は、第1通路と第2通路とを連通している。したがって、第1通路に検体採取棒が挿入されたときにも、抽出液が開口端から溢れることを防ぐことができる。
【0009】
上記検体抽出容器において、前記貫通部は、前記隔壁部に設けられた、上下方向に延びるスリットで構成してもよい。上記構成によれば、スリットの下方が採取部で塞がっても、抽出液は、採取部を乗り越えるようにしてスリットの上側部分を通じて第1通路から第2通路に流れることができる。その結果、抽出液が開口端から溢れることを抑えることができる。
【0010】
上記検体抽出容器において、前記容器本体は、前記容器本体を立った状態に支持する脚部を更に備える構成としてもよい。上記構成によれば、容器本体が脚部を備えている。したがって、試験片による測定結果が出るまでの間、試験片が第2通路に挿入された状態の容器本体を机等に置いたままにすることができる。
【0011】
上記検体抽出容器において、前記脚部は、前記容器本体の外周に位置する外周壁部で構成してもよい。上記構成によれば、脚部である外周壁部は、内周壁部の全周に亘って設けられている。したがって、容器本体に挿入された検体採取棒や試験片が何れの方向に傾いたとしても、容器本体は、机等に安定して支持される。
【0012】
上記検体抽出容器において、前記開口端は、前記隔壁部によって区画される、前記第1通路に連続する第1開口と、前記第2通路に連続する第2開口と、を備え、前記第1開口と前記第2開口とは形状が異なる構成してもよい。
【0013】
上記構成によれば、第1開口及び第2開口は、形状が異なる。したがって、第1開口に、第2開口に挿入すべき試験片を誤挿入したり、第1開口に挿入すべき第2開口に検体採取棒を誤挿入することを防ぐことができる。
【0014】
上記検体抽出容器において、前記容器本体は、樹脂成形体で構成してもよい。ポリプロピレンにより成形されている構成としてもよい。上記構成によれば、容器本体は、樹脂成形体であり、一部品で構成されているので、製造効率を向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検体採取棒が挿入されたとき、抽出液が押し出されて、容器本体の開口端から飛び出してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態における、検体抽出容器の斜視図である。
図2図2は、図1に示す検体抽出容器の2-2断面図である。
図3図3は、図1に示す検体抽出容器の3-3断面図である。
図4図4は、図1に示す検体抽出容器の第1通路に検体採取棒を挿入した状態を示す断面斜視図である。
図5図5は、図1に示す検体抽出容器の第2通路に試験片を挿入した状態を示す断面斜視図である。
図6図6は、図1に示す検体抽出容器の変形例を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用された検体抽出容器について図面を参照して説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、検体抽出容器1は、検体採取棒2から検体を抽出する抽出液3が収容された容器である。そして、検体抽出容器1は、試験片4が挿入される容器である。検体抽出容器1は、容器本体11を備えている。容器本体11は、ポリプロピレン等の硬質樹脂による樹脂成形体であって、かつ、1部品で構成されている。容器本体11は、指で摘まんでも内部空間13が大きく変形しない程度の強度を有している。また、容器本体11は、容器本体11に挿入したままの状態で試験片4に現れた判定結果を目視確認できるように透明又は半透明の樹脂材料により成形されている。
【0018】
容器本体11は、上面部に構成される開口端12と、開口端12と連続する内部空間13と、を備えている。内部空間13は、抽出液3を収容する空間である。開口端12は、使用前、内部空間13に抽出液3を収容した状態で、シート部材5によって閉塞されている。シート部材5は、樹脂製フィルムや樹脂製シートやアルミニウム箔等で構成されている。そして、シート部材5は、接着や溶着等で開口端12を構成する上面部に剥離可能に貼り付けられている。
【0019】
〔検体採取棒及び試験片〕
ここで検体採取棒2は、例えば滅菌綿棒である。検体採取棒2は、軸部2aと、軸部2aの一端に設けられる採取部2bと、を備えている。採取部2bは、綿等で構成された液体を吸収して保持する保持体である。採取部2bは、軸部2aに対して膨らんだ紡錘形状、円柱形状等を有している。検体採取棒2は、採取部2bを挿入端として、内部空間13に挿入される。
【0020】
試験片4は、細長い矩形片である。試験片4は、毛管現象によって抽出液3が浸透する片である。試験片4は、一端から他端に向って、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、メンブレン、吸収パッド等が構成されている。サンプルパッド及びコンジュゲートパッドが構成された部分は、内部空間13に対する挿入端となるパッド部4aである。パッド部4aにおいて、サンプルパッドとコンジュゲートパッドとの接続部分やコンジュゲートパッドとメンブレンとの接続部分は、2つのパッドが重なった接続部分であるため、他の部分よりも厚く構成されている。検体採取棒2の採取部2bも、試験片4のパッド部4aも、他の部分よりも厚い部分である。
【0021】
〔容器本体〕
図2及び図3に示すように、容器本体11は、内周壁部16と、内周壁部16の下端に位置する底部17と、内周壁部16の上端に位置する上面部18と、内周壁部16の外周に位置する外周壁部19と、を備えている。内周壁部16及び底部17は、有底の内部空間13を構成する。上面部18の内側は、開口端12を構成している。内部空間13は、開口端12から底部17の方向に向かう空間であり、かつ、上側の空間より下側の空間の方が狭くなる空間である。
【0022】
具体的に、内周壁部16は、上側筒部13aと、中間筒部13bと、下側筒部13cと、によって内部空間13を構成している。上側筒部13aは、開口端12を備える筒部であって、かつ、3つの筒部の中で最も上に位置する。上側筒部13aと中間筒部13bとの境界部分は、段差部13dが設けられている。中間筒部13bは、上側筒部13aと下側筒部13cとの間に位置する。下側筒部13cは、底部17によって塞がれた有底の空間である。抽出液3は、下側筒部13cが構成する空間のあたりに貯留される。
【0023】
内部空間13は、上下方向に延びる隔壁部21によって2つの空間に区画されている。すなわち、内部空間13は、隔壁部21によって第1通路22と第2通路23とが構成されている。第1通路22は、検体採取棒2が採取部2bを挿入端として挿入される空間である。第2通路23は、試験片4が挿入される。そして、第1通路22は、第2通路23よりも広い空間となるように構成されている。
【0024】
隔壁部21は、上下方向に延びる貫通部としてのスリット24を備えている。スリット24は、開口端12と同じ高さの上端から底部17まで連続した貫通部であって、かつ、連続して直線状に延びている。スリット24は、一定幅である。スリット24の幅は、毛管現象で抽出液3が上昇してしまうほどの狭さではない。スリット24は、第1通路22と第2通路23とを繋げる連通部である。これにより、抽出液3は、第1通路22と第2通路23との間を流れることができる。
【0025】
開口端12は、隔壁部21の上端によって2つの開口に区画されている。そして、開口端12は、第1通路22と繋がる第1開口12aと、第2通路23と繋がる第2開口12bと、を備えている。第1開口12aは、第2開口12bに対して異なる形状である。また、第1開口12aは、第2開口12bよりも大きい開口である。第1開口12aは、採取部2bの断面形状に類似したD字形状を有している。すなわち、第1開口12aは、半円より大きい円弧である優弧形状を有している。第2開口12bは、試験片4の断面形状に類似した矩形形状を有しており、そして、優弧における弦部分において、隔壁部21を隔てて第1開口12aと隣接している。
【0026】
隔壁部21において、第1通路22を構成する面は、上側筒部13aに相当する部分が底部17に対して垂直な平面である上側垂直面22aで構成されている。段差部13dを介して中間筒部13bに相当する部分は、平坦な底部17に対して傾斜する傾きの傾斜面22bで構成されている。下側筒部13cに相当する部分は、底部17に対して垂直な平面である下側垂直面22cで構成されている。また、隔壁部21において、第2通路23を構成する面は、上端から下端に亘って底部17に対して垂直な平面である垂直面23aで構成されている。
【0027】
第1通路22において、上側筒部13aに相当する部分は、平坦な底部17に対して傾斜する傾きの上側傾斜面22dで構成されている。中間筒部13bの部分は、底部17に対して傾斜する傾きの中間傾斜面22eで構成されている。下側筒部13cの部分は、底部17に対する垂直面22fで構成されている。
【0028】
第2通路23において、上側筒部13aに相当する部分は、底部17に対して傾斜する傾きの上側傾斜面23bで構成されている。中間筒部13bの部分及び下側筒部13cの部分は、底部17に対する垂直面23cで構成されている。なお、垂直面23cは、金型の抜き勾配が数度付いていてもよい。
【0029】
以上のように構成された第1通路22は、上側筒部13a、中間筒部13bにかけて空間が次第に狭くなる。そして、第1通路22は、下側筒部13cの部分で最も狭く、直線的に下方に延びる空間である。この空間を構成する垂直面22f及び下側垂直面22cは、採取部2bと接触する第1接触部14である。第1接触部14は、採取部2bを若干圧縮して支持することで検体を採取部2bから抽出液3に放出させる部分となる。また、上側筒部13aから中間筒部13bにかけての空間は、上側垂直面22a、傾斜面22b、上側傾斜面22d及び中間傾斜面22eで囲まれた空間である。この空間は、検体採取棒2が挿入された際に挿入端の移動をガイドする挿入ガイド部として機能する。
【0030】
第2通路23は、上側筒部13aで次第に狭くなる。中間筒部13b及び下側筒部13cの部分は、上側よりも狭く直線的に下方に延びる空間となる。この空間を構成する垂直面23a及び垂直面23cは、試験片4のパッド部4aと接触する第2接触部15である。第2接触部15は、抽出液3を吸収したパッド部4aを支持し、かつ、膨らみ過ぎないようにして、抽出液をメンブレンの方向へ展開させる部分となる。また、上側筒部13aの部分は、垂直面23aの上側部分及び上側傾斜面23bで囲まれた空間である。この空間は、試験片4が挿入された際に挿入端の移動をガイドする挿入ガイド部として機能する。
【0031】
容器本体11の底部17は、第1通路22の底部及び第2通路23の底部でもある。底部17は、平坦な面で構成されている。そして、底部17は、スリット24によって分断された隔壁部21の下端が連通している。
【0032】
容器本体11において、上面部18は、環状形状であり、かつ、内側に開口端12を構成している。上面部18は、シート部材5が貼り付けられることから、平坦な面で構成されている。そして、上面部18の外周からは、下方に向って外周壁部19が設けられている。
【0033】
外周壁部19は、内周壁部16の外側に、内周壁部16と離間して位置する環状壁である。外周壁部19は、スカート部である。外周壁部19は、容器本体11を支持する脚部である。外周壁部19は、上端よりも下端の方が外径が大きくなる円錐台形状とように構成されている。また、外周壁部19の下端は、同じ高さで揃っている。外周壁部19の下端は、外側に向って張り出す支持部25を備えている。外周壁部19の下端は、底部17よりも下側に位置することで、底部17の上下方向の高さ位置に依存することなく、安定的に支持できる。
【0034】
〔使用方法(作用)〕
使用前において、検体抽出容器1は、容器本体11における内部空間13に抽出液3が貯留された状態で、シート部材5が上面部18に貼り付けられることで開口端12が閉塞されている。例えば、抽出液3は、下側筒部13cに相当する部分に貯留される。または、抽出液3は、下側筒部13c及び中間筒部13bの下側半分位に相当する部分に貯留される。そして、検体抽出容器1は、検体採取棒2及び試験片4が付属されている。
【0035】
使用開始時、先ず、容器本体11からは、シート部材5が剥がされる。この際、容器本体11は、外周壁部19が脚部として機能することで、開口端12を上側にして立った状態で机等に安定して置くことができる。検体採取には、検体採取棒2を使用する。検体採取棒2の採取部2bには、検体が保持される。そして、検体採取棒2は、採取部2bを挿入端として、第1開口12aから第1通路22に挿入される。この際、第1開口12aは、第2開口12bに対して形状が異なる。また、第1開口12aは、第2開口12bよりも大きい。したがって、利用者は、検体採取棒2を挿入する開口を、第2開口12bと間違えることなく第1開口12aに挿入することができる。
【0036】
図4に示すように、第1通路22に挿入された検体採取棒2は、採取部2bが上側垂直面22a、傾斜面22b、上側傾斜面22d、及び中間傾斜面22eにガイドされながら、抽出液3に浸漬するまで挿入される。そして、採取部2bは、第1接触部14を構成する下側垂直面22c及び垂直面22fの部分で若干圧縮して支持される。この際、使用者は、検体採取棒2を上下に移動させてもよい。また、検体採取棒2を回転させてもよい。このようにして、検体が採取部2bから抽出液3に放出されることを促してもよい。検体は、採取部2bから抽出液3に放出される。容器本体11は、検体採取棒2が第1通路22に挿入されたままの状態であっても、脚部である外周壁部19によって安定して支持される。
【0037】
抽出液3は、第1通路22に検体採取棒2が挿入されることで、押し出されて液面が上昇する。この際、抽出液3は、隔壁部21が備えるスリット24を介して第2通路23に移動する。これにより、抽出液3は、内部空間13から溢れることを防ぐことができる。スリット24の下側が採取部2bで塞がれることがあっても、抽出液3は、スリット24の中でも採取部2bの上側の部分を通じで第1通路22から第2通路23に流れる。
【0038】
図5に示すように、次いで行われる試験片4の第2通路23への挿入作業は、容器本体11を机等に置いたまま行うことができる。第2通路23には、第2開口12bから試験片4がパッド部4aを挿入端として挿入される。この際、第2開口12bは、第1開口12aに対して形状が異なる。また、第2開口12bは、第1開口12aよりも小さい。したがって、利用者は、試験片4を挿入する開口を、第1開口12aと間違えることなく第2開口12bに挿入することができる。加えて、検体採取棒2が第1通路22に挿入されていることで、試験片4を第1通路22に誤挿入することを防ぐことができる。
【0039】
そして、第2開口12bから挿入されたパッド部4aは、抽出液3に浸漬される。すると、抽出液3は、メンブレン及び吸収パッドの方向に展開される。パッド部4aは、第2接触部15を構成する中間筒部13b及び下側筒部13cの部分において、膨らみ過ぎないようにして支持される。
【0040】
なお、試験片4の第2通路23への挿入作業は、第1通路22から検体採取棒2を抜いてから行ってもよい。第1通路22に検体採取棒2を挿入したままの状態で、更に試験片4を第2通路23に挿入し、そのままの状態を維持してもよい。検体採取棒2は、試験片4を第2通路23へ挿入してから抜いてもよい。
【0041】
試験片4は、メンブレンにおいて測定結果が出現するまで、例えば3分~15分程度、第2通路23に挿入されたままの状態とされる。容器本体11は、試験片4が第2通路23に挿入されたままの状態であっても、脚部である外周壁部19によって立った状態でも安定して支持される。また、容器本体11は、検体採取棒2が第1通路22に挿入され、かつ、試験片4が第2通路23に挿入されたままの状態であっても、脚部である外周壁部19によって立った状態でも安定して支持される。試験片4に現れた測定結果は、容器本体11が透明又は半透明なので試験片4が第2通路23が挿入されたままであっても、内周壁部16及び外周壁部19を介して目視確認することができる。また、試験片4は、第2通路23から抜いて測定結果を判定することができる。
【0042】
〔実施形態の効果〕
以上のような検体抽出容器1は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)第1通路22に検体採取棒2が挿入されたとき、抽出液3は、採取部2bによって押し出されることで液面が上昇する。この際、抽出液3は、隔壁部21が備えるスリット24を介して第2通路23に移動する。これにより、抽出液3は、開口端12から溢れることを防ぐことができる。
【0043】
(2)容器本体11は、指で摘まんでも変形しにくい強度を有している。したがって、容器本体11は、変形も抑えられるので、内部空間13が変形により狭くなっての抽出液3が開口端12から溢れることを抑えることができる。
【0044】
(3)第1接触部14は、検体採取棒2の採取部2bが圧接される。これにより、採取部2bは、第1接触部14によって若干潰されることによって、保持している検体を抽出液3に放出することができる。
【0045】
(4)第2接触部15は、試験片4のパッド部4aが圧接される。これにより、試験片4は、検体を毛管現象によって、サンプルパッドからコンジュゲートパッド、メンブレン、吸収パッドへと展開することができる。
【0046】
(5)隔壁部21は、スリット24を備える。スリット24は、第1通路22と第2通路23とを連通している。したがって、第1通路22に検体採取棒2が挿入されたときにも、抽出液3が開口端12から溢れることを防ぐことができる。
【0047】
(6)スリット24の下方が採取部2bで塞がっても、抽出液3は、採取部2bを乗り越えるようにしてスリット24の上側部分を通じて第1通路22から第2通路23に流れることができる。その結果、抽出液3が開口端12から溢れることを抑えることができる。
【0048】
(7)容器本体11は、脚部となる外周壁部19を備えている。したがって、試験片4による測定結果が出るまでの間、容器本体11を机等に置いたままにすることができる。容器本体11は、検体採取棒2及び試験片4が挿入された状態であっても、立った状態で机等に置くことができる。
【0049】
(8)外周壁部19は、脚部として構成されている。したがって、容器本体11は、机等に安定して置くことができる。すなわち、脚部である外周壁部は、内周壁部16の全周に亘って設けられている。したがって、検体採取棒2や試験片4が容器本体11に挿入された状態で何れの方向に傾いたとしても、容器本体11は、机等に安定して支持される。
【0050】
(9)第1通路22に対応する第1開口12a及び第2通路23に対応する第2開口12bは、形状が異なる。したがって、第1開口12aに、試験片4を誤挿入したり、第2開口12bに検体採取棒2を誤挿入することを防ぐことができる。
【0051】
(10)検体採取棒2の容器本体11への挿入端となる採取部2bは、試験片4の挿入端よりも大きい。これに合わせて、第1開口12aは第2開口12bより大きく構成されている。これにより、検体採取棒2は、第1開口12aから容易に挿入することができる。
【0052】
(11)第1通路22は、第1開口12aの近くに傾斜面によって挿入ガイド部が構成されているので、検体採取棒2を、円滑に第1通路22の底部で挿入することができる。
(12)第2通路23は、第2開口12bの近くに傾斜面によって挿入ガイド部が構成されているので、試験片4を、円滑に第2通路23の底部まで挿入することができる。
【0053】
(13)容器本体11は、樹脂成形体であり、一部品で構成されているので、製造効率を向上できる。
(14)容器本体11は、樹脂材料に、ポリプロピレン等の硬質樹脂を用いている。したがって、容器本体11は、撓みにくくなり、指などで摘ままれて内部空間13が潰れることで、内部空間13から抽出液3が溢れることを防ぐことができる。
【0054】
〔変形例〕
なお、検体抽出容器1は、更に、以下のように適宜変更して実施することもできる。検体抽出容器1は、上記各実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0055】
・容器本体11は、ポリプロピレン(PP)以外に、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(AS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の樹脂であってもよい。また、低密度ポリエチレン(LDPE)等の軟質樹脂であってもよい。また、容器本体11は、ガラスや金属製であってもよい。
【0056】
・第1開口12aと第2開口12bとは、形状が同じで、大きさだけが異なっていてもよい。
・外周壁部19は、円錐大形状ではなく、上端と下端の直径が同じ円柱形状であってもよい。更に、外周壁部19は、上端及び下端が同じ多角形形状の多角柱形状であってもよい。多角柱である場合も、上端の形状よりも下端の形状の方が大きい方が安定性の面から好ましい。
【0057】
・外周壁部19は、上面部18から下方に延びる筒形状でなくてもよい。例えば、脚部は、上面部18から下方に延びる同じ長さの複数の脚片で構成されていてもよい。すなわち、外周壁部19は、上面部18の外周端から下端にわたって等間隔にスリットを設けることで、複数の脚部を構成してもよい。
【0058】
・容器本体11は、外周壁部19を省略して、他の構成の脚部を設けてもよい。例えば、脚部は、内周壁部16の外周面から複数の脚片を放射状に設けることができる。各脚片は、三角形状の片であって、下辺に相当する支持端面が同じ高さに位置する。支持端面は、底部17の下面と同じ高さか、底部17の下面よりも下に位置する。このような脚部によれれば、容器本体11を小型化及び軽量化できる。
【0059】
・スリット24は、上端から底部17に至るまで、必ずしも一定幅である必要はない。例えば、図6に示すように、隔壁部21は、スリット24に代わる貫通部31を備えている。貫通部31は、拡幅部31aと、直線部31bと、を備えている。拡幅部31aは、上側筒部13aに相当する部分の中でも上側に偏った領域に設けられている。拡幅部31aは、上下を逆にした二等辺三角形の形状を有している。そして、直線部31bは、二等辺三角形の頂点部分から下方に向って直線的に延びている。
【0060】
以上のように構成された隔壁部21は、開口端12の近傍に拡幅部31aを備えている。これにより、第1開口12aは、第2開口12bの方へ拡大される。したがって、検体採取棒2は、採取部2bを挿入端として一層挿入し易くなる。また、第2開口12bは、第1開口12aの方へ拡大される。したがって、試験片4は、パッド部4aを挿入端として一層挿入し易くなる。また、貫通部31は、スリット24よりも第1通路22と第2通路23とが連通する部分の面積が増える。したがって、抽出液3は、貫通部が同じ幅のスリットで構成されている場合よりも第1通路22と第2通路23との間を流れ易くなる。
【0061】
なお、隔壁部21は、底部17と繋がる下端において、二等辺三角形の形状を有した拡幅部を設けてもよい。この場合、二等辺三角形の頂点部分は底部17から離れた側に位置し、頂点部分から上方に向って直線部が延びるように構成される。このような構成であっても、第1通路22と第2通路23とが連通する部分の面積が増える。したがって、抽出液3は、貫通部が同じ幅のスリット24で構成されている場合よりも第1通路22と第2通路23との間を流れ易くなる。
【0062】
更に、隔壁部21の上下方向の中間部分において、三角形、矩形、五角形、六角形等の多角形の形状を有した拡幅部を設けるようにしてもよい。このような構成によっても、第1通路22と第2通路23とが連通する部分の面積が増えるので、スリット24で構成されている場合よりも第1通路22と第2通路23との間を流れ易くなる。そして、拡幅部は、上下方向に延びるスリットの中で複数個所に設けるようにしてもよい。
【0063】
更に、スリット24は、上端から下端にわたって直線形状ではなく、波線形状であってもよい。また、スリット24は、間欠的に貫通部が構成された点線状であってもよい。更に、隔壁部21は、スリット24を設けるのではなく、全体に亘って散点状に、貫通孔を設けるようにしてもよい。貫通孔の形状は、円形でも多角形形状でもよいし、これらの形状が混ざっていてもよい。更に、複数の貫通孔の大きさは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0064】
・隔壁部21は、下端が底部17と繋がっていなくてもよい。この場合、底部17と隔壁部21の下端との間の間隙は、第1通路22と第2通路23とを繋ぐ貫通部となる。この場合、隔壁部21に設ける貫通部となるスリット24は、上端から下端にまで亘って設けてもよい。また、スリット24は、上端から高さ方向の中途部(高さ方向の半程度の位置まで)までとしてもよい。更に、スリット24は、下端から中途部までとしてもよい。隔壁部21は、開口端12の付近では設けられていなくてもよい。
【0065】
・容器本体11は、透明又は半透明ではなく、透光性を有していなくてもよい。例えば容器本体11は、遮光性であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…検体抽出容器
2…検体採取棒
2a…軸部
2b…採取部
3…抽出液
4…試験片
4a…パッド部
5…シート部材
11…容器本体
12…開口端
12a…第1開口
12b…第2開口
13…内部空間
13a…上側筒部
13b…中間筒部
13c…下側筒部
13d…段差部
14…第1接触部
15…第2接触部
16…内周壁部
17…底部
18…上面部
19…外周壁部
21…隔壁部
22…第1通路
22a…上側垂直面
22b…傾斜面
22c…下側垂直面
22d…上側傾斜面
22e…中間傾斜面
22f…垂直面
23…第2通路
23a…垂直面
23b…上側傾斜面
23c…垂直面
24…スリット
24a…拡幅部
25…支持部
31…貫通部
31a…拡幅部
31b…直線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6