(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160557
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】トルクリミッタ
(51)【国際特許分類】
F16D 7/02 20060101AFI20241107BHJP
H01F 1/057 20060101ALI20241107BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
F16D7/02 C
H01F1/057
H01F1/057 180
H01F7/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075691
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000114710
【氏名又は名称】ヤマウチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】平山 正
【テーマコード(参考)】
5E040
【Fターム(参考)】
5E040AA04
5E040BD01
5E040CA01
(57)【要約】
【課題】トルクの立ち上がり特性に優れたトルクリミッタを提供する。
【解決手段】トルクリミッタ10は、第1回転部12と、第1回転部12と同軸上において第1回転部12に対して回転できるように第1回転部12の外側に嵌められた第2回転部14と、第1回転部12に固定された永久磁石16と、第1回転部12の径方向において永久磁石16に対向するように第2回転部14に固定され、かつ永久磁石16との間でヒステリシストルクを生じさせるヒステリシス材18と、を備える。永久磁石16は、ラジアル異方性を有する金属焼結磁石である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転部と、
前記第1回転部と同軸上において前記第1回転部に対して回転できるように前記第1回転部の外側に嵌められた第2回転部と、
前記第1回転部および前記第2回転部のうちの一方に固定された永久磁石と、
前記第1回転部の径方向において前記永久磁石に対向するように前記第1回転部および前記第2回転部のうちの他方に固定され、かつ前記永久磁石との間でヒステリシストルクを生じさせるヒステリシス材と、を備え、
前記永久磁石は、ラジアル異方性を有する金属焼結磁石である、トルクリミッタ。
【請求項2】
前記永久磁石は、Nd-Fe-B磁石である、請求項1に記載のトルクリミッタ。
【請求項3】
前記永久磁石の極数は、20以上である、請求項1または2に記載のトルクリミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクリミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機およびATM等の種々の機器において、ヒステリシストルクを利用したトルクリミッタが用いられている。例えば、特許文献1に開示されたトルクリミッタは、円筒状外周部を有する第1回転体と、円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有する第2回転体とを備えている。第1回転体の円筒状外周部および第2回転体の円筒状内周部のうちの一方には永久磁石が設けられ、他方にはヒステリシス材が設けられている。このトルクリミッタでは、永久磁石とヒステリシス材との間に発生するヒステリシストルクを利用して、回転の伝達および遮断が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなトルクリミッタにおいて求められる特性は、トルクリミッタの使用箇所および用途に応じて異なる。例えば、複写機等に備えられた給紙装置において使用されるトルクリミッタには、紙の重送を防止するために、トルクの低下を抑制するとともに、トルクの立ち上がりを早くすることが求められる。この点に関して、特許文献1には、トルクの低下を抑制するための構成が開示されているが、トルクの立ち上がり特性を向上するための構成については開示されていない。
【0005】
そこで、本発明は、トルクの立ち上がり特性に優れたトルクリミッタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記のトルクリミッタを要旨とする。
【0007】
(1)第1回転部と、
前記第1回転部と同軸上において前記第1回転部に対して回転できるように前記第1回転部の外側に嵌められた第2回転部と、
前記第1回転部および前記第2回転部のうちの一方に固定された永久磁石と、
前記第1回転部の径方向において前記永久磁石に対向するように前記第1回転部および前記第2回転部のうちの他方に固定され、かつ前記永久磁石との間でヒステリシストルクを生じさせるヒステリシス材と、を備え、
前記永久磁石は、ラジアル異方性を有する金属焼結磁石である、トルクリミッタ。
【0008】
(2)前記永久磁石は、Nd-Fe-B磁石である、上記(1)に記載のトルクリミッタ。
【0009】
(3)前記永久磁石の極数は、20以上である、上記(1)または(2)に記載のトルクリミッタ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トルクの立ち上がり特性に優れたトルクリミッタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るトルクリミッタを示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、永久磁石を軸方向から見た図である。
【
図3】
図3は、実施例1および比較例1のトルク値の比較結果を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例2および比較例2のトルク値の比較結果を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例3および比較例3のトルク値の比較結果を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例1~5および比較例1~5のトルク値の比較結果を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例6~9および比較例6~9のトルク値の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るトルクリミッタについて図面を用いて説明する。
【0013】
(トルクリミッタの構成)
まず、トルクリミッタの基本的な構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るトルクリミッタを示す概略断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るトルクリミッタ10は、筒状の第1回転部12と、第1回転部12と同軸上に設けられた筒状の第2回転部14と、第1回転部12に固定された筒状の永久磁石16と、第2回転部14に固定された筒状のヒステリシス材18とを備えている。本実施形態では、第1回転部12、第2回転部14、永久磁石16およびヒステリシス材18はそれぞれ円筒形状を有している。
【0015】
第1回転部12は、筒状の軸部12aと、軸部12aから第1回転部12の径方向外側に向かって突出する突出部12bとを有している。なお、本明細書において、第1回転部の径方向とは、第1回転部の軸方向に直交する方向を意味する。以下において、単に径方向という場合は、第1回転部の径方向を意味し、単に軸方向という場合は、第1回転部の軸方向を意味する。
【0016】
第1回転部12は、例えば、合成樹脂を用いて構成される。合成樹脂としては、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン樹脂などが挙げられる。また、第1回転部12は、合成樹脂以外の材料を用いて構成することもできる。例えば、金属を用いて第1回転部12を構成してもよい。金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス、鉄などが挙げられる。第2回転部14、ならびに後述のスリーブ20,22およびキャップ24についても同様の材料を用いて構成することができる。なお、第1回転部12、第2回転部14、スリーブ20,22およびキャップ24は、公知の種々のトルクリミッタと同様に構成することができる。
【0017】
第2回転部14は、第1回転部12に対して回転できるように第1回転部12の外側に嵌められている。本実施形態では、第1回転部12(軸部12a)の両端部の外側に筒状のスリーブ20,22が嵌められている。また、軸方向における第2回転部14の一端部の内側に、中空円板状のキャップ24が固定されている。キャップ24は、スリーブ20に対して摺動可能(回転可能)に、スリーブ20の外側に嵌められている。軸方向における第2回転部14の他端部側は、スリーブ22に対して摺動可能(回転可能)に、スリーブ22の外側に嵌められている。このような構成により、第2回転部14は、第1回転部12に対して回転できるように第1回転部12に支持されている。
【0018】
永久磁石16およびヒステリシス材18は、径方向において互いに対向するように設けられている。本実施形態では、径方向において永久磁石16の外側にヒステリシス材18が設けられている。なお、本明細書において永久磁石16およびヒステリシス材18が径方向において対向している状態とは、永久磁石16およびヒステリシス材18のうちの一方が他方の内側に位置付けられている状態を意味する。したがって、永久磁石16とヒステリシス材18との間に他の筒状部材が挿入されている場合でも、永久磁石16およびヒステリシス材18のうちの一方が他方の内側に位置付けられている状態は、永久磁石16およびヒステリシス材18が径方向において対向している状態である。
【0019】
本実施形態では、永久磁石16は、第1回転部12(より具体的には、突出部12b)の外周面に固定されている。永久磁石16としては、金属焼結磁石が用いられる。永久磁石16については後述する。
【0020】
本実施形態では、ヒステリシス材18は、第2回転部14の内周面に固定されている。ヒステリシス材18は、半硬質磁性材料を用いて構成される。具体的には、例えば、Fe-Cr-Co系合金またはFe-Co系合金等の半硬質磁性材料に所定の磁場処理を行うことによってヒステリシス材18を構成することができる。本実施形態では、ヒステリシス材18の磁束密度は、0.7T以上であることが好ましく、保磁力は、2.5~12.5kA/mであることが好ましい。
【0021】
図示は省略するが、第1回転部12の軸部12aには、駆動装置によって回転駆動される回転軸が挿入される。上記回転軸は、第1回転部12と一体的に回転するように第1回転部12に連結される。なお、上記回転軸は、第2回転部14に対して回転可能に第1回転部12に挿入される。
【0022】
第2回転部14には、図示しない被回転部材が取り付けられる。本実施形態に係るトルクリミッタ10を給紙装置に用いる場合、被回転部材は、例えば、フィードローラ(給紙ローラ)に対して圧接するように設けられるリタードローラ(摩擦ローラ)である。
【0023】
本実施形態に係るトルクリミッタ10では、上述の駆動装置(図示せず)によって第1回転部12および永久磁石16が回転される。これにより、永久磁石16とヒステリシス材18との間にヒステリシストルクが発生し、ヒステリシス材18および第2回転部14が回転する。その結果、上記被回転部材に所定のトルクが与えられる。
【0024】
(永久磁石の構成)
永久磁石16は、金属焼結磁石であり、バインダー(結合材)を含まない磁石である。永久磁石16の密度は、例えば、7.0g/cm3以上である。永久磁石16の密度は、例えば、7.5g/cm3以上であることが好ましい。また、本実施形態では、永久磁石16の磁束密度は、1.0T以上であることが好ましく、保磁力は、800kA/m以上であることが好ましい。
【0025】
図2は、永久磁石16を軸方向から見た図である。
図2に示すように、本実施形態では、永久磁石16は、ラジアル異方性を有しかつ周方向に多極着磁された、金属焼結磁石である。本発明者による研究の結果、永久磁石としてラジアル異方性を有する金属焼結磁石を用いることによって、永久磁石として等方性磁石を用いる場合に比べて、トルクの立ち上がり速度が速くなることが分かった。そこで、本実施形態では、永久磁石16として、ラジアル異方性を有する金属焼結磁石が用いられる。なお、永久磁石がラジアル異方性を有しかつ周方向に多極着磁されているかどうかは、マグネットビュアーによって判定することができる。具体的には、永久磁石の端面上にマグネットビュアーを配置して着磁パターンを確認することによって判定することができる。
【0026】
本実施形態では、永久磁石16として、例えば、希土類焼結磁石が用いられる。より具体的には、永久磁石16として、例えば、Nd-Fe-B磁石が用いられる。
図2に示すように、本実施形態では、永久磁石16の極数は20である。永久磁石16の極数は、20以上であることが好ましく、22以上であることがより好ましい。
【0027】
永久磁石16は、公知の製造方法を用いて製造できるので詳細な説明は省略するが、例えば、加圧焼結法を用いて製造することができる。本実施形態では、永久磁石16は、例えば、ホットプレス法を用いて製造されたホットプレス磁石である。
【0028】
(変形例)
トルクリミッタの形状は上述の例に限定されず、本発明は、第1回転部と、第1回転部と同軸上において第1回転部に対して回転できるように第1回転部の外側に嵌められた第2回転部と、第1回転部および第2回転部のうちの一方に固定された永久磁石と、第1回転部の径方向において永久磁石に対向するように第1回転部および第2回転部のうちの他方に固定されたヒステリシス材とを備えた種々のトルクリミッタにおいて利用できる。
【0029】
したがって、例えば、第1回転部12の外周面にヒステリシス材が固定され、ヒステリシス材の径方向外側に位置するように第2回転部14の内周面に永久磁石が固定されてもよい。
【0030】
また、上述の実施形態では、第2回転部14が一つの部材によって構成されているが、第2回転部が複数の部材によって構成されてもよい。例えば、第2回転部が軸方向に分離された第1部材および第2部材によって構成されており、第1部材と第2部材とを接続するようにヒステリシス材または永久磁石が第1部材および第2部材に固定されてもよい。
【0031】
また、上述の実施形態では、第2回転部14およびキャップ24はスリーブ20,22を介して第1回転部12に回転可能に支持されているが、玉軸受等の他の軸受を介して第2回転部および/またはキャップが第1回転部に回転可能に支持されてもよい。また、スリーブおよび玉軸受等の軸受が設けられなくてもよい。すなわち、第2回転部および/またはキャップが第1回転部に対して摺動可能に設けられてもよい。
【0032】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0033】
(実施例1~9)
本発明者は、
図1に示したトルクリミッタ10と同様の構成を有する実施例1~9のトルクリミッタを作成した。なお、第1回転部12は、アルミニウムによって構成し、第2回転部14およびキャップ24は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)によって構成し、スリーブ20,22は、ポリアセタール(POM)によって構成した。
【0034】
永久磁石16としては、ラジアル異方性を有しかつ周方向に多極着磁された金属焼結磁石(Nd-Fe-B焼結磁石)を用いた。本実施例では、永久磁石16は、ホットプレス法によって製造されたホットプレス磁石である。実施例1~9のトルクリミッタの永久磁石16の着磁電圧は、1700Vまたは1100Vとし、着磁極数は18~30とした。永久磁石16の内径は15.4mmであり、外径は18.6mmであり、長さは18.7mmである。また、実施例1~9のトルクリミッタの永久磁石16の密度は、7.55g/cm3であった。
【0035】
ヒステリシス材18は、半硬質磁性材料(Fe-Cr-Co系合金)に磁場処理を行うことにより製造した。ヒステリシス材18の内径は19.08mmであり、外径は19.88mmであり、長さは18mmである。
【0036】
(比較例1~9)
永久磁石として、周方向に多極着磁された等方性ボンド磁石(Nd-Fe-Bボンド磁石)を用いた点を除いて、実施例1~9のトルクリミッタと同様の構成を有する比較例1~9のトルクリミッタを製造した。実施例1~9と同様に、比較例1~9のトルクリミッタの永久磁石の着磁電圧は、1700Vまたは1100Vとし、着磁極数は18~30とした。永久磁石の内径は15.4mmであり、外径は18.6mmであり、長さは18.7mmである。また、比較例1~9のトルクリミッタの永久磁石の密度は、6.0~6.3g/cm3であった。下記の表1に、実施例および比較例の各トルクリミッタの永久磁石の製造条件を示す。
【0037】
【0038】
(評価1)
本発明者は、上記の構成を有する実施例1~3および比較例1~3のトルクリミッタについて、トルク値の立ち上がり性能を評価した。トルク値は、MAGTROL社製のトルクセンサー(TS103)を用いて測定した。具体的には、トルクリミッタの第2回転部14を治具によって固定し、第1回転部12をトルクセンサーのシャフトに固定した状態で、シャフトを2rpmの回転速度で回転させて、トルクリミッタに作用するトルクを測定した。
図3~
図5にトルク値の測定結果を示す。なお、
図3には、実施例1および比較例1のトルクリミッタのトルク値を示し、
図4には、実施例2および比較例2のトルクリミッタのトルク値を示し、
図5には、実施例3および比較例3のトルクリミッタのトルク値を示している。
図3~
図5において、横軸は、測定開始後の第1回転部12の回転角度を示し、縦軸は、トルクリミッタのトルク値(測定値)を示す。
【0039】
図3~
図5に示すように、実施例1~3および比較例1~3の各トルクリミッタのトルク値は、回転角度が約4~8°の範囲において、最初のピーク値を示した。この最初のピーク値を示すまでのトルクの増加率(トルクのピーク値/ピーク値を示すまでの回転角度)をトルクの立ち上がり速度と定義した場合、いずれの着磁極数においても、実施例の立ち上がり速度が比較例の立ち上がり速度よりも大きくなった。この結果から、永久磁石として、ラジアル異方性を有しかつ周方向に多極着磁された金属焼結磁石を用いることによって、トルクの立ち上がり特性に優れたトルクリミッタが得られることが分かる。
【0040】
(評価2)
実施例4,5および比較例4,5のトルクリミッタについても、実施例1~3および比較例1~3のトルクリミッタと同様にトルク値を測定し、実施例1~5および比較例1~5のトルクリミッタのトルク値の最初のピーク値を比較した。比較結果を
図6に示す。なお、
図6において、横軸は、着磁極数を示し、縦軸は、トルクリミッタのトルク値の最初のピーク値を示す。
【0041】
図6に示すように、永久磁石としてラジアル異方性を有する金属焼結磁石を用いた場合(実施例1~5)と、永久磁石として等方性を有するボンド磁石を用いた場合(比較例1~5)とを比較すると、トルクリミッタのトルク値の最初のピーク値は、着磁極数が18の場合に同等の値となり、着磁極数が22以上の場合に差が生じた。この結果から、着磁極数が20以上でかつラジアル異方性を有する金属焼結磁石を用いることによって、同じ着磁極数でかつ等方性を有するボンド磁石を用いる場合に比べて、トルクの低下を防止しつつ、トルクの立ち上がり特性を向上できると考えられる。また、着磁極数が22以上でかつラジアル異方性を有する金属焼結磁石を用いることによって、同じ着磁極数でかつ等方性を有するボンド磁石を用いる場合に比べて、トルクリミッタのトルク値を確実に向上できることが分かる。
【0042】
(評価3)
実施例6~9および比較例6~9のトルクリミッタについても、実施例1~3および比較例1~3のトルクリミッタと同様にトルク値を測定し、トルク値の最初のピーク値を比較した。比較結果を
図7に示す。なお、
図7において、横軸は、着磁極数を示し、縦軸は、トルクリミッタのトルク値の最初のピーク値を示す。
【0043】
図7に示すように、着磁電圧が1100Vの場合でも、
図6に示した着磁電圧が1700Vの場合と同様の結果が得られた。すなわち、永久磁石としてラジアル異方性を有する金属焼結磁石を用いた場合(実施例6~9)と、永久磁石として等方性を有するボンド磁石を用いた場合(比較例6~9)とを比較すると、トルクリミッタのトルク値の最初のピーク値は、着磁極数が18の場合に同等の値となり、着磁極数が22以上の場合に差が生じた。この結果から、着磁電圧に関係なく、着磁極数が20以上でかつラジアル異方性を有する金属焼結磁石を用いることによって、同じ着磁極数でかつ等方性を有するボンド磁石を用いる場合に比べて、トルクの低下を防止しつつ、トルクの立ち上がり特性を向上できると考えられる。また、着磁極数が22以上でかつラジアル異方性を有する金属焼結磁石を用いることによって、同じ着磁極数でかつ等方性を有するボンド磁石を用いる場合に比べて、トルクリミッタのトルク値を確実に向上できることが分かる。