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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160563
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/163 20060101AFI20241107BHJP
   G09G 3/38 20060101ALI20241107BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20241107BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G02F1/163
G09G3/38
G09G3/20 680G
G09F9/30 380
G09F9/30 338
G09F9/30 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075697
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽柴 良和
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 啓太
【テーマコード(参考)】
2K101
5C080
5C094
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DC54
2K101EC08
2K101EC74
2K101ED13
2K101EE02
2K101EG52
2K101EG54
5C080AA11
5C080BB05
5C080DD19
5C080FF11
5C080HH21
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ06
5C094AA31
5C094BA03
5C094BA52
5C094CA19
5C094DB01
(57)【要約】
【課題】コンタクト同士の電蝕を抑制できるエレクトロクロミックデバイスを提供する。
【解決手段】エレクトロクロミックデバイスは、エレクトロクロミック材料を挟んで第1方向に対向する2つの電極の一方(アノード電極An)に出力が接続されるオペアンプ70の正電源接続部と接続される第1配線E1と、当該出力の伝送路である第2配線E2と、オペアンプ70の正電源電位を伝送する透光性導体層Vsと第1配線E1とを接続する第1コンタクト81と、アノード電極Anと第2配線E2とを接続する第2コンタクト82と、を備え、第2方向Dxに平行に並ぶ第1配線E1の基部111と第2配線E2の第1基部121との間隔D2に比して、第1コンタクト81と第2コンタクト82との第2方向Dxの間隔D1が大きい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロクロミック材料を挟んで第1方向に対向する2つの電極と、
出力が前記2つの電極の一方に接続されるオペアンプ回路と、
前記オペアンプ回路の正電源接続部と接続される第1配線と、
前記出力の伝送路として設けられる第2配線と、
絶縁層を挟んで前記第1配線を形成する第1導体層と前記第1方向に積層されて前記オペアンプ回路の正電源電位を伝送する透光性導体層と、前記第1配線と、を接続する第1コンタクトと、
絶縁層を挟んで前記第2配線を形成する第2導体層と前記第1方向に積層された前記一方と、前記第2配線と、を接続する第2コンタクトと、を備え、
第2方向に平行に並ぶ前記第1配線の一部分と前記第2配線の一部分との間隔に比して、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとの前記第2方向の間隔が大きい、
エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトのうち一方が前記オペアンプ回路に対して前記第2方向の一側方側に位置し、
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトのうち他方が前記オペアンプ回路に対して前記一側方側に位置しない、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項3】
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとの前記第2方向の間隔が40μm以上である、
請求項2に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項4】
前記透光性導体層に対して前記第1方向に積層されて前記透光性導体層よりも電気抵抗値が低く、前記正電源電位を伝送する第3導体層を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項5】
前記第3導体層によって形成される配線の一部は、前記第1方向に直交する平面視点で前記第1配線の一部と重なる、
請求項4に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレクトロクロミックデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
印加電圧に応じて透光の度合いと着色の度合いを制御可能な領域を形成できるエレクトロクロミックデバイスが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010-518456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレクトロクロミック材料に対する印加電圧の増幅にオペアンプ回路を利用する場合、エレクトロクロミック材料に印加電圧を与えるための電極とオペアンプ回路の出力とのコンタクトと、オペアンプ回路に正電源を接続する伝送経路に含まれるコンタクトと、の位置関係によってはコンタクト同士の間で電蝕が生じることがあった。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、コンタクト同士の電蝕を抑制できるエレクトロクロミックデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるエレクトロクロミックデバイスは、エレクトロクロミック材料を挟んで第1方向に対向する2つの電極と、出力が前記2つの電極の一方に接続されるオペアンプ回路と、前記オペアンプ回路の正電源接続部と接続される第1配線と、前記出力の伝送路として設けられる第2配線と、絶縁層を挟んで前記第1配線を形成する第1導体層と前記第1方向に積層されて前記オペアンプ回路の正電源電位を伝送する透光性導体層と、前記第1配線と、を接続する第1コンタクトと、絶縁層を挟んで前記第2配線を形成する第2導体層と前記第1方向に積層された前記一方と、前記第2配線と、を接続する第2コンタクトと、を備え、第2方向に平行に並ぶ前記第1配線の一部分と前記第2配線の一部分との間隔に比して、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとの前記第2方向の間隔が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、デバイスの主要構成を示す概略図である。
図2図2は、ECパネルの構成例を示す概略図である。
図3図3は、アクティブエリアの積層構造に含まれる主要な構成を示す概略図である。
図4図4は、セグメント回路の構成を示す概略的な回路図である。
図5図5は、セグメント回路の構成に係る各種の配線、第1コンタクトを介した透光性電極層と第1配線との接続及び第2コンタクトを介したアノード電極と第2配線との接続の形態例を示すDx-Dy平面図である。
図6図6は、参考例としてのセグメント回路の構成を示す概略的な回路図である。
図7図7は、図6に示すセグメント回路の構成に係る各種の配線、第1コンタクトを介した透光性電極層と第1配線との接続及び第3コンタクトを介したアノード電極と第2配線との接続の形態例を示すDx-Dy平面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII断面図である。
図9図9は、図6のIX-IX断面図である。
図10図10は、セグメント回路Aの構成に係る各種の配線、第1コンタクトを介した透光性電極層と第1配線との接続及び第2コンタクトを介したアノード電極と第2配線E2との接続の形態例を示すDx-Dy平面図である。
図11図11は、図10のXI―XI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(実施形態1)
図1は、デバイス1の主要構成を示す概略図である。デバイス1は、エレクトロクロミックデバイスである。以下、特筆しない限り、ECという記載は、エレクトロクロミック(ElectroChromic)をさすものとする。ECデバイスは、印加電圧の制御によって透光の度合いと着色の度合いを可逆的に制御可能なEC材料15(図3参照)を利用したデバイスである。EC材料15として、例えば酸化タングステン(WO)等、イオン挿入系の金属酸化物が挙げられるが、これに限られるものでなく、同様の現象を生じさせる他の材料が採用されてもよい。
【0010】
図1に示すように、デバイス1は、アクティブエリアAAが形成されたECパネル10を備える。上述したEC材料15は、アクティブエリアAA内に封止されている。従って、アクティブエリアAAの透光の度合いと着色の度合いは、EC材料15に対する印加電圧の制御によって制御可能である。
【0011】
ECパネル10には、EC材料15に対する印加電圧の制御に係る各種の信号がホスト25から与えられる。係る各種の信号は、役割に応じて、それぞれ異なる経路で与えられる。図1に示す例では、ホスト25から、配線31,32,33が延出している。
【0012】
配線31を介して出力される信号は、ゲートドライバ21及び配線35を介して、駆動信号としてアクティブエリアAAに与えられる。配線32を介して出力される信号は、デコーダ22及び配線36を介して切替回路エリアSAに与えられる。配線33を介して出力された信号の電位は、切替回路エリアSA及び配線37を介して、後述するオペアンプ70の差動電位(+)としてアクティブエリアAAに与えられる。
【0013】
図2は、ECパネル10の構成例を示す概略図である。図2に示すように、アクティブエリアAAには、複数のセグメント回路40がマトリクス状に配置されている。
【0014】
図3は、アクティブエリアAAの積層構造に含まれる主要な構成を示す概略図である。図3に示すように、ECパネル10は、第1基板11と第2基板12とがEC材料15を挟んで第1方向Dzに対向することでEC材料15を封止する構成である。以下、第1方向Dzと記載した場合、第1基板11と第2基板12との対向方向をさす。また、第1方向Dzに直交する二方向のうち一方を第2方向Dxとし、他方を第3方向Dyとする。第2方向Dxと第3方向Dyとは直交する。
【0015】
第1基板11及び第2基板12は、例えばガラス基板のように、透光性を有する基板である。図示しないが、Dx―Dy平面を正面視する平面視点でアクティブエリアAAを縁取るようにシール材が設けられている。EC材料15は、第1基板11、第2基板12及び当該シール材によってアクティブエリアAA内に封止される。
【0016】
第1基板11のEC材料15側の面には、複数のアノード電極Anが形成されている。第2基板12のEC材料15側の面には、カソード電極Caが形成されている。複数のアノード電極Anは、Dx-Dy平面と平行な平面に、マトリクス状に並べられている。1つのアノード電極Anには、1つのセグメント回路40が接続されている。複数のアノード電極Anは、1つのカソード電極Caに対向する。アノード電極Anとカソード電極Caとの電位差が、EC材料15への印加電圧を決定する。実施形態1では、カソード電極Caに定電位が与えられる。ただし、「カソード電極Caに定電位が与えられる」とは、厳密にカソード電極Ca全体を完全に当該定電位にすることを意味せず、端子接続等によって外部から定電位が与えられることを示すに過ぎない。実施形態1では、カソード電極Caの電位が静的であることを前提とするので、アノード電極Anの電位制御によって、EC材料15への印加電圧制御が行われる。なお、図3では図示を省略しているが、後述する走査線350、伝送路370等の配線等、セグメント回路40を機能させるために必要な各種の構成は、アノード電極Anよりも第1基板11側に設けられる積層構造内に実装される。
【0017】
配線35は、図2に示す走査線Gate_1,Gate_2,Gate_3,・・・,Gate_mのように、複数の走査線を含む。ゲートドライバ21は、配線31を介してホスト25から与えられた信号に応じて動作し、走査線Gate_1,Gate_2,Gate_3,・・・,Gate_mに順次駆動信号を与える。mは、セグメント回路40の第2方向Dxの並び数及び走査線の数を示す2以上の自然数である。第3方向Dyに並ぶ複数のセグメント回路40は、同じ走査線を共有する。
【0018】
配線37は、図2に示す伝送路Data_1,Data_2,Data_3,・・・,Data_nのように、複数の伝送路を含む。当該複数の伝送路は、切替回路エリアSAを介して配線33と接続されている。nは、セグメント回路40の第3方向Dyの並び数及び伝送路の数を示す2以上の自然数である。第2方向Dxに並ぶ複数のセグメント回路40は、同じ伝送路を共有する。
【0019】
伝送路Data_1,Data_2,Data_3,・・・,Data_nのような複数の伝送路はそれぞれ個別の第1切替部51,52,53,・・・,5nを介して配線33と接続されている。図2に示すように、伝送路Data_1は、第1切替部51を介して配線33と接続されている。伝送路Data_2は、第1切替部52を介して配線33と接続されている。伝送路Data_3は、第1切替部53を介して配線33と接続されている。これらと同様、伝送路Data_nは、第1切替部5nを介して配線33と接続されている。
【0020】
第1切替部51,52,53,・・・,5nは、デコーダ22の制御下で動作する。デコーダ22は、第1切替部51,52,53,・・・,5nを個別に制御する信号を伝送する配線ASW1,ASW2,ASW3,・・・,ASWnと接続される。図2に示すように、配線ASW1は、デコーダ22と第1切替部51とを接続する。配線ASW2は、デコーダ22と第1切替部52とを接続する。配線ASW3は、デコーダ22と第1切替部53とを接続する。これらと同様、配線ASWnは、デコーダ22と第1切替部5nとを接続する。配線36は、配線ASW1,ASW2,ASW3,・・・,ASWnを含む。
【0021】
デコーダ22は、配線32を介してホスト25から与えられた信号に応じて動作し、第1切替部51,52,53,・・・,5nの動作を制御する。より具体的には、デコーダ22は、いわゆる組み合わせ論理回路として機能し、配線36に含まれる配線の数よりも少ない数の配線を含む配線32を介して与えられた信号に応じて第1切替部51,52,53,・・・,5nの動作を制御できる。
【0022】
図4は、セグメント回路40の構成を示す概略的な回路図である。セグメント回路40には、スイッチング素子60及びオペアンプ70が設けられている。
【0023】
スイッチング素子60は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)である。スイッチング素子60のゲートは、走査線350に接続されている。スイッチング素子60のソース又はドレインの一方は、伝送路370に接続されている。スイッチング素子60のソース又はドレインの他方は、オペアンプ70の非反転入力71(+)に接続されている。すなわち、スイッチング素子60は、走査線350を介してゲートに信号(駆動信号)が与えられたタイミングで、伝送路370を介して伝送される信号による電位に応じた電位をオペアンプ70に与えるスイッチング素子として機能する。
【0024】
図4に示す伝送路370は、図2に示す伝送路Data_1,Data_2,Data_3,・・・,Data_nのいずれかである。図4に示す走査線350は、図2に示す走査線Gate_1,Gate_2,Gate_3,・・・,Gate_mのいずれかである。
【0025】
図4に示すオペアンプ70は、透光性電極層Vsを介して正電源接続部73から正電源電位(Vsupply)が与えられ、負電源接続部74が配線39と接続されているオペアンプ回路である。また、上述したように、オペアンプ70は、非反転入力71(+)にスイッチング素子60のソース又はドレインの他方が接続されている。また、オペアンプ70は、反転入力72(-)及び出力75がアノード電極Anと接続されている。このような接続形態のオペアンプ70は、いわゆる非反転増幅回路として機能し、スイッチング素子60を介して非反転入力71(+)から与えられた信号電位に対応した信号を出力75からアノード電極Anに与える。
【0026】
図4において透光性電極層Vsと接続された電源80は、伝送路TL及び透光性電極層Vsを介して正電源接続部73から正電源電位(Vsupply)をオペアンプ70に与える。図4に示す伝送路TLは、実施形態1では、アクティブエリアAA(図1参照)外に設けられた配線である。なお、配線39を介して負電源接続部74から与えられる電位は、オペアンプ70の具体的な設計に応じた電位であり、グランド電位であってもよいし、正電源電位(Vsupply)と極性が異なる負の電位であってもよい。
【0027】
図5は、セグメント回路40の構成に係る各種の配線、第1コンタクト81を介した透光性電極層Vsと第1配線E1との接続及び第2コンタクト82を介したアノード電極Anと第2配線E2との接続の形態例を示すDx-Dy平面図である。
【0028】
図5に示すように、セグメント回路40は、オペアンプ70を挟んで第2方向Dxの一方側に第1配線E1と第2配線E2が設けられ、第2方向Dxの他方側に走査線350、伝送路370及び配線39が設けられる。走査線350及び配線39は、長手方向が第3方向Dyに沿う。伝送路370は、長手方向が第2方向Dxに沿う。平面視点で走査線350と伝送路370とが交差する位置にスイッチング素子60が設けられる。スイッチング素子60から第2方向Dxの一方側に延出するよう設けられた配線61が、図4における非反転入力71(+)に接続されている。また、配線39から第2方向Dxの一方側に延出する分岐線391が、図4における負電源接続部74に接続されている。
【0029】
第1配線E1は、長手方向が第3方向Dyに沿う基部111を有する。第1配線E1は、基部111の両端で屈曲して第2方向Dxに延出する延出部112を有する。延出部112は、オペアンプ70の第2方向Dxの一方側からオペアンプ70に接続されるよう設けられている。第1配線E1は、基部111において第1コンタクト81を介して透光性電極層Vs(図9参照)と接続されている。
【0030】
第2配線E2は、L字状の基部120を有する。基部120は、長手方向が第3方向Dyに沿う第1基部121と、長手方向が第2方向Dxに沿う第2基部122と、が連続して構成される。第1基部121は、基部111とオペアンプ70との間に位置する。第2基部122は、オペアンプ70に対して第3方向Dyの一方側で第2方向Dxに沿うよう設けられる。第1基部121又は第2基部122の一方からオペアンプ70に向かう延出部が反転入力72(-)に接続され、第1基部121又は第2基部122の他方からオペアンプ70に向かう延出部が出力75に接続される。第2配線E2は、第2基部122において第2コンタクト82を介してアノード電極An(図9参照)と接続されている。
【0031】
ここで、第1コンタクト81と第2コンタクト82との第2方向Dxの間隔を間隔D1とする。また、基部111と第1基部121との第2方向Dxの間隔を間隔D2とする。間隔D1は、間隔D2よりも大きい。特に、図5に示す構成では、第1コンタクト81が、オペアンプ70を基準として第2方向Dxの一方側に配置され、第2コンタクト82が、オペアンプ70を基準として第3方向Dyの一方側であって、かつ、第2方向Dxの他方側寄りの位置となるように配置されている。これによって、間隔D1を間隔D2よりも有意に大きくできている。このように、実施形態1では、第1コンタクト81と第2コンタクト82のうち一方(第1コンタクト81)がオペアンプ70に対して第2方向Dxの一側方側に位置し、第1コンタクト81と第2コンタクト82のうち他方(第2コンタクト82)がオペアンプ70に対して第2方向Dxの一側方側に位置しない。
【0032】
このような第1コンタクト81と第2コンタクト82の位置関係及び間隔D1が間隔D2よりも有意に大きいことの意義について、図6から図9を参照して説明する。
【0033】
図6は、参考例としてのセグメント回路400の構成を示す概略的な回路図である。セグメント回路400は、図4及び図5を参照して説明したセグメント回路40と異なり、オペアンプ70の反転入力72(-)及び出力75が第3コンタクト83を介してアノード電極Anと接続されている。
【0034】
図7は、図6に示すセグメント回路400の構成に係る各種の配線、第1コンタクト81を介した透光性電極層Vsと第1配線E1との接続及び第3コンタクト83を介したアノード電極Anと第2配線E2との接続の形態例を示すDx-Dy平面図である。図7に示すように、第3コンタクト83は、第2配線E2の第1基部121に設けられる。このため、セグメント回路400における第1コンタクト81と第3コンタクト83とは、オペアンプ70の第2方向Dxの一方側で隣り合う。従って、第1コンタクト81と第3コンタクト83との第2方向Dxの間隔D3は、セグメント回路40における第1コンタクト81と第2コンタクト82との間隔D1(図5参照)よりも小さくなる。
【0035】
図8は、図7のVIII-VIII断面図である。図8に示すように、第1基板11とアノード電極Anとの間には、第1基板11側からアノード電極An側に向かって、絶縁層91、導体層E、絶縁層92、透光性電極層Vs、絶縁層93が積層されている。第1配線E1及び第2配線E2は、導体層Eに含まれる。すなわち、第1配線E1と第2配線E2とは同層である。なお、走査線350、伝送路370及び配線39のような、第1配線E1と第2配線E2以外の配線は、一部又は全部が導体層Eに含まれてもよいし、導体層Eとは異なる図示しない導体層に含まれてもよい。
【0036】
絶縁層91、絶縁層92及び絶縁層93は、透光性を有する絶縁層である。係る絶縁層を形成する材料として、例えばケイ素(Si)の窒化物(SiN)又はケイ素(Si)の酸化物(SiO)に類する材料が採用されうるが、これらに限られるものでなく、透光性を有する絶縁層を形成できる他の材料が採用されてもよい。透光性電極層Vs、アノード電極An及びカソード電極Caは、透光性を有する導体層である。係る導電体層を形成する材料として、例えば酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)が採用されうるが、これらに限られるものでなく、透光性を有する導体層を形成できる他の材料が採用されてもよい。導体層Eは、いわゆるメタル電極として設けられる導体層である。係るメタル電極を形成する材料として、例えば銅又はアルミニウムが採用されうるが、これらに限られるものでなく、同様に機能する他の材料が採用されてもよい。
【0037】
導体層Eと透光性電極層Vsとの間は絶縁層92で絶縁されている。第1コンタクト81は、絶縁層92に設けられたコンタクトホールCH1内で、透光性電極層Vsから第1配線E1に向かって第1方向Dzに延出する。
【0038】
透光性電極層Vsとアノード電極Anとの間は絶縁層93で絶縁されている。第3コンタクト83は、絶縁層92、透光性電極層Vs及び絶縁層93を貫通するよう設けられたコンタクトホールCH2内で、アノード電極Anから第2配線E2に向かって第1方向Dzに延出する。なお、実施形態1において第2コンタクト82が設けられる個所の構造も、図8に示す第3コンタクト83と同様である。
【0039】
ここで、図8に示すように、第1コンタクト81と第3コンタクト83との間隔が間隔D3のように小さすぎると、第1コンタクト81に与えられる透光性電極層Vsの電位と第3コンタクト83に与えられる第3コンタクト83の電位との電位差が、図7に示す電位差伝達経路Cを介して第1コンタクト81と第3コンタクト83との間で作用することで、電気化学的な腐蝕(電蝕)が第1コンタクト81又は第3コンタクト83に生じることがある。係る電蝕は、オペアンプ70に接続される回路系統に異常を生じさせる原因となり得る。係る異常として、例えば、第1配線E1と第2配線E2との間のショート、第1コンタクト81又は第3コンタクト83による導通経路の不成立等が挙げられる。係る電蝕の発生要因として、特に、第1コンタクト81と第1配線E1との当接部位と、第3コンタクト83と第2配線E2との当接部位と、の間隔、すなわち、図7及び図8に示す間隔D3の大きさが重要になる。間隔D3が40μm未満である場合、係る電蝕のリスクは現実的となる。図7に示すように、第1コンタクト81が設けられる第1配線E1と第3コンタクト83が設けられる第2配線E2とがオペアンプ70の第2方向Dxの一方側で隣り合うと、係る電蝕のリスクを抑制することは困難である。
【0040】
そこで、実施形態1のセグメント回路40では、図7及び図8を参照して説明した参考例によるセグメント回路400と異なり、オペアンプ70を基準として、第3方向Dyの一方側であって、かつ、第2方向Dxの他方側寄りの位置となるように第2コンタクト82を配置している。これによって、間隔D1を間隔D2よりも有意に大きくして上述した電蝕のリスクを抑制している。実施形態1の間隔D1は、40μmよりも有意に大きい。
【0041】
図9は、図6のIX-IX断面図である。実施形態1では、オペアンプ70に対して第2方向Dxの一方側で第1コンタクト81と隣り合うように配置されるコンタクトであって第1コンタクト81と電位が異なるコンタクトは存在しない。従って、実施形態1では、参考例を参照して説明したような電蝕のリスクを抑制できる。
【0042】
以上、実施形態1によれば、EC材料15を挟んで第1方向Dzに対向する2つの電極(アノード電極An、カソード電極Ca)と、出力75が2つの電極の一方(アノード電極An)に接続されるオペアンプ回路(オペアンプ70)と、当該オペアンプ回路の正電源接続部73と接続される第1配線E1と、出力75の伝送路として設けられる第2配線E2と、絶縁層(絶縁層92)を挟んで第1配線E1を形成する第1導体層(導体層E)と第1方向Dzに積層されて当該オペアンプ回路の正電源電位(Vsupply)を伝送する透光性導体層(透光性電極層Vs)と、第1配線E1と、を接続する第1コンタクト81と、絶縁層(絶縁層92、絶縁層93)を挟んで第2配線E2を形成する第2導体層(導体層E)と第1方向Dzに積層された当該一方(アノード電極An)と、第2配線E2と、を接続する第2コンタクト82と、を備える。実施形態1によれば、第2方向Dxに平行に並ぶ第1配線E1の一部分(基部111)と第2配線E2の一部分(第1基部121)との間隔D2に比して、第1コンタクト81と第2コンタクト82との第2方向Dxの間隔D1が大きいことによって、第1コンタクト81と第2コンタクト82との電蝕を抑制できる。
【0043】
また、第1コンタクト81と第2コンタクト82のうち一方(第1コンタクト81)がオペアンプ回路(オペアンプ70)に対して第2方向Dxの一側方側に位置し、第1コンタクト81と第2コンタクト82のうち他方(第2コンタクト82)が当該オペアンプ回路に対して第2方向Dxの一側方側に位置しないことで、第1コンタクト81と第2コンタクト82とをより確実に物理的に遠隔配置できる。従って、第1コンタクト81と第2コンタクト82との電蝕をより確実に抑制できる。
【0044】
また、第1コンタクト81と第2コンタクト82の第2方向Dxの間隔が40μm以上であることで、第1コンタクト81と第2コンタクト82とをより確実に物理的に遠隔配置できる。従って、第1コンタクト81と第2コンタクト82との電蝕をより確実に抑制できる。
【0045】
(実施形態2)
次に、実施形態1と一部が異なる実施形態2について、図10及び図11を参照して説明する。実施形態2の説明では、実施形態1と異なる事項について特筆して説明し、実施形態1と同様の事項については、同じ符号を付して説明を省略することがある。実施形態2では、実施形態1のセグメント回路40に代えて、セグメント回路40Aが採用される。
【0046】
図10は、セグメント回路40Aの構成に係る各種の配線、第1コンタクト81を介した透光性電極層Vsと第1配線E1との接続及び第2コンタクト82を介したアノード電極Anと第2配線E2との接続の形態例を示すDx-Dy平面図である。図10に示すように、セグメント回路40Aは、実施形態1におけるセグメント回路40の構成に加えて、導体層M1が設けられる。
【0047】
導体層M1は、透光性電極層Vsよりも電気抵抗値が低い導体層である。具体的には、導体層M1を形成する材料として、例えば銅又はアルミニウムのように、いわゆるメタル電極の材料と同様の材料が採用されうるが、これらに限られるものでなく、同様に機能する他の材料が採用されてもよい。
【0048】
透光性電極層Vsは、上述したように、例えばITOのような透光性を有する導体層である。このような透光性を有する導体層は、いわゆるメタル電極に比して電気抵抗値が相対的に高い。このような電気抵抗値の相対的な高さは、透光性電極層Vsに正電源電位(Vsupply)を与えるための給電点と第1コンタクト81との位置関係によっては、電気抵抗値に起因する電圧低下(いわゆるIRドロップ)を生じさせることがある。つまり、給電点と第1コンタクト81との間の伝送路が透光性電極層Vsのみで構成されていることで、係る電気抵抗値の相対的な高さの影響を無視できなくなる可能性が生じる。そこで、実施形態2では、導体層M1によって給電点と第1コンタクト81との間の伝送路を形成することで、透光性を有する導体層のみによる伝送路に比して電気抵抗値の低い伝送路を形成できる。従って、係る電圧低下を抑制できる。言い換えれば、実施形態2では、図4に示す伝送路TLのうち一部が導体層M1によって構成され、アクティブエリアAA内にも延設されているといえる。
【0049】
図11は、図10のXI―XI断面図である。図11に示すように、導体層M1は、透光性電極層Vsと絶縁層93との間に積層され、透光性電極層Vsと当接する。また、図10に示すように、導体層M1のうち第3方向Dyに沿う部分は、平面視点で第1配線E1のうち第3方向Dyに沿う部分又は配線39と重なる。これによって、導体層M1を設けることによるアクティブエリアAAの透光性への影響をより低減できる。なお、図10に示す例では、導体層M1のうち第2方向Dxに沿って設けられる部分であって、導体層M1のうち第1配線E1と重なる部分と配線39と重なる部分とを接続する部分が平面視点でオペアンプ70と重なっているが、これは導体層M1の形態の一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0050】
以上、特筆した事項を除いて、実施形態2は、実施形態1と同様である。実施形態2によれば、透光性導体層(透光性電極層Vs)に対して第1方向Dzに積層されて当該透光性導体層よりも電気抵抗値が低い第3導体層(導体層M1)が正電源電位(Vsupply)を伝送することで、より確実にオペアンプ回路(オペアンプ70)に正電源電位(Vsupply)を伝送できる。
【0051】
また、第3導体層(導体層M1)によって形成される配線の一部がDx-Dy平面視点で第1配線E1の一部と重なることで、当該第3導体層による透光性の低下を抑制できる。
【0052】
なお、図9及び図11に示す積層構造では、第1配線E1を構成する導体層と第2配線E2を構成する導体層とが同一の導体層(導体層E)であるが、第1配線E1と第2配線E2とが異なる層であってもよい。
【0053】
また、図5及び図10に示す第2方向Dxと第3方向Dyとの関係は逆であってもよい。例えば、基部111及び第1基部121が走査線350及び配線39と平行で、延出部112及び第2基部122が伝送路370と平行であってもよい。この場合、オペアンプ70の周囲の構成のうち、図5及び図10における配線61及び分岐線391よりも左側の構成が右方向に90度回転したような回路構成となる。そして、この場合、第2コンタクト82がオペアンプ70に対して第2方向Dxの一側方側に位置し、第1コンタクト81がオペアンプ70に対して第2方向Dxの一側方側に位置しないことになる。
【0054】
また、図3では、セグメント回路40毎にアノード電極Anが区切られている。すなわち、上述した実施形態1では、図2においてマトリクス状に配置されたセグメント回路40毎にアノード電極Anがそれぞれ独立している。このようなアノード電極Anの態様は必須でない。例えば、カソード電極CaのようにアクティブエリアAA内で連続する電極層と同様の構成としてアノード電極Anが設けられてもよい。1つのアノード電極Anの全体は、1つのカソード電極Caの全体に対向する。この場合であっても、複数のセグメント回路40がそれぞれ異なる位置で係るアノード電極Anに接続される。すなわち、1つのアノード電極Anには、複数のセグメント回路40が接続される。係るアノード電極Anには、アクティブエリアAA内で電位が均一でない状態が発生し得るので、複数のセグメント回路40の各々を介してEC材料15への印加電圧を制御する技術的意義が成立する。
【0055】
また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0056】
1 デバイス
15 EC材料
40 セグメント回路
70 オペアンプ
73 正電源接続部
81 第1コンタクト
82 第2コンタクト
111 基部
121 第1基部
An アノード電極
Ca カソード電極
E1 第1配線
E2 第2配線
M1 導体層
Vs 透光性導体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11