(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160572
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】施工計画作成支援システム、施工計画作成システム、施工方法、施工計画作成支援方法、及び、施工計画作成方法
(51)【国際特許分類】
C10B 29/02 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
C10B29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075716
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】境田 道隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏
(72)【発明者】
【氏名】寺川 一平
(57)【要約】
【課題】コークス炉の築炉において、大ブロックを積み付けるに際し、事前に、ブロック搬送途中の他ブロックや他設備との干渉を防止し、かつ、大ブロックの積み付けの施工時間を短縮する。
【解決手段】部品データベース1と、施工データベース2と、設計システム3と、を有し、設計システム3においては、各ブロックのうち対象となるブロックの搬入動線が決定されるに際し、施工データベース2に格納されたブロックの積み順に従って対象となるブロックよりも積み順が前であるブロックが築造された状態において、対象となるブロックの搬入動線が、施工データベース2に格納された搬入時のブロック動線可動範囲と安全上具備すべき条件を満たす範囲内で設定され、設定された各ブロックの搬入動線で各ブロックを搬入するに際してのブロックの積み付け施工時間の評価に基づき、各ブロックの搬入動線を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロックを積み付けるための施工計画作成を支援する施工計画作成支援システムであって、
各ブロックの形状及びブロックを築造した状態の形状の一方又は両方を格納する部品データベースと、
安全上具備すべき条件、各ブロックの積み順、ブロック搬入時のブロック動線可動範囲及び資材搬入動線のいずれか一又は二以上を格納する施工データベースと、
前記部品データベース及び前記施工データベースに基づき、各ブロックの搬入動線が決定される設計システムと、を有し、
前記設計システムにおいては、各ブロックのうち対象となるブロックの搬入動線が決定されるに際し、前記施工データベースに格納された各ブロックの積み順に従って前記対象となるブロックよりも積み順が前であるブロックが築造された状態において、前記対象となるブロックの搬入動線が、前記施工データベースに格納されたブロック搬入時のブロック動線可動範囲と安全上具備すべき条件を満たす範囲内で設定され、設定された各ブロックの搬入動線で各ブロックを搬入するに際して、ブロックの積み付け施工時間を評価し、前記積み付け施工時間が短くなる前記各ブロックの搬入動線が決定されることを特徴とする施工計画作成支援システム。
【請求項2】
前記施工データベースは、安全上具備すべき条件を格納しており、かつ、さらに作業員の動線可動範囲を格納し、
前記設計システムにおいては、各ブロックの搬入動線に基づき、前記施工データベースに格納された安全上具備すべき条件、作業員の動線可動範囲を満たす範囲内で、作業員の動線が決定されることを特徴とする請求項1に記載の施工計画作成支援システム。
【請求項3】
前記部品データベースは各ブロックの形状を格納しており又は前記施工データベースは各ブロックの積み順を格納しており、
前記設計システムは、前記部品データベースに格納された各ブロックの形状及び前記施工データベース中に格納された各ブロックの積み順の一方又は両方を修正し、
修正された結果に応じて、再度前記設計システムによって前記部品データベース及び前記施工データベースに基づき、各ブロックの搬入動線を修正し、
修正された各ブロックの搬入動線と修正前の各ブロックの搬入動線について、ブロックの積み付け施工時間を評価し、前記積み付け施工時間がより短くなるブロックの搬入動線が決定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の施工計画作成支援システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の施工計画作成支援システムを用いて施工計画を作成する施工計画作成システムであって、
前記施工計画は、各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置、各ブロックの形状、各ブロックの積み順及び作業員の動線のいずれか一つ又は二つ以上を含む、
施工計画作成システム。
【請求項5】
コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロックを積み付けるための施工方法であって、
請求項1又は請求項2記載の施工計画作成支援システムにより決定された各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置データ、各ブロックの形状のうち一つ又は二つ以上がタグに記録され、
前記タグは前記各ブロック自体又は前記各ブロックが載置されるパレットに付与される、
施工方法。
【請求項6】
コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロックを積み付けるための施工方法であって、
請求項3に記載の施工計画作成支援システムにより決定された各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置データ、各ブロックの形状のうち一つ又は二つ以上がタグに記録され、
前記タグは前記各ブロック自体又は前記各ブロックを載置するパレットに付与される、
施工方法。
【請求項7】
コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロックを積み付けるための施工計画作成を支援する施工計画作成支援方法であって、
各ブロックの形状及びブロックを築造した状態の形状の一方又は両方を格納する部品データベースと、
安全上具備すべき条件、各ブロックの積み順、ブロック搬入時のブロック動線可動範囲及び資材搬入動線のいずれか一又は二以上を格納する施工データベースと、
前記部品データベース及び前記施工データベースに基づき、各ブロックの搬入動線が決定される設計システムと、を用い、
前記設計システムにおいては、各ブロックのうち対象となるブロックの搬入動線が決定されるに際し、前記施工データベースに格納された各ブロックの積み順に従って前記対象となるブロックよりも積み順が前であるブロックが築造された状態において、前記対象となるブロックの搬入動線が、前記施工データベースに格納されたブロック搬入時のブロック動線可動範囲と安全上具備すべき条件を満たす範囲内で設定され、設定された各ブロックの搬入動線で各ブロックを搬入するに際して、ブロックの積み付け施工時間を評価し、前記積み付け施工時間が短くなる前記各ブロックの搬入動線が決定されることを特徴とする施工計画作成支援方法。
【請求項8】
前記施工データベースは、安全上具備すべき条件を格納しており、かつ、さらに作業員の動線可動範囲を格納し、
前記設計システムにおいては、各ブロックの搬入動線に基づき、前記施工データベースに格納された安全上具備すべき条件、作業員の動線可動範囲を満たす範囲内で、作業員の動線が決定されることを特徴とする請求項7に記載の施工計画作成支援方法。
【請求項9】
前記部品データベースは各ブロックの形状を格納しており又は前記施工データベースは各ブロックの積み順を格納しており、
前記設計システムは、前記部品データベースに格納された各ブロックの形状及び前記施工データベース中に格納された各ブロックの積み順の一方又は両方の修正を行い、修正された結果に応じて、再度前記設計システムによって前記部品データベース及び前記施工データベースに基づき、各ブロックの搬入動線を修正し、修正された各ブロックの搬入動線と修正前の各ブロックの搬入動線について、ブロックの積み付け施工時間を評価し、前記積み付け施工時間がより短くなるブロックの搬入動線が決定されることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の施工計画作成支援方法。
【請求項10】
請求項7又は請求項8に記載の施工計画作成支援方法を用いて施工計画を作成する施工計画作成方法であって、
前記施工計画は、各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置、各ブロックの形状、各ブロックの積み順及び作業員の動線のいずれか一つ又は二つ以上を含む、
施工計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工計画作成支援システム、施工計画作成システム、施工方法、施工計画作成支援方法、及び、施工計画作成方法に関するものであって、特に、コークス炉の築炉において、大ブロックを積み付けるための、施工計画作成支援システム、施工計画作成システム、施工方法、施工計画作成支援方法、及び、施工計画作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製銑用コークスを製造する室炉式コークス炉においては、炭化室と燃焼室とが炉団長方向(炉幅方向)に交互に配置され、炭化室と燃焼室の上部には炉頂部、下部には蓄熱室が配列されている。燃焼室と蓄熱室との間の部分は蛇腹部ともいわれる。蓄熱室の下部にはソールフリューが配置されている。通常、炭化室の寸法は、炉高4~7.5m余、炉幅350~550mm、炉長13~17m程度である。燃焼室は炉長方向に配列された燃焼室フリュー列からなる。炭化室と燃焼室との隔壁および燃焼室フリュー同士の隔壁、炉頂部、蛇腹部、蓄熱室、ソールフリューは、いずれも耐火物煉瓦の煉瓦積み構造で形成される。例えば、炭化室を64室有する室炉式コークス炉(以下単に「コークス炉」という。)においては、上記耐火物煉瓦を合計で200万個用いて構成されている。
【0003】
既存のコークス炉は、現在、全国的に、20年~30年の稼働期間を経て老朽化してきており、新たなコークス炉を建設する必要が迫ってきている。
【0004】
コークス炉の建設は、従来、築炉工が耐火物煉瓦を手積みすることで行っている。手積みによる建設では、耐火物煉瓦の一つ一つにコテでモルタルを塗り、これを積み上げるという作業を繰り返し行う必要がある。さらに、コークス炉に使用される耐火物煉瓦は、一つあたり十数kgの重さがあり、これを積み上げる作業は極めて重労働といえる。
【0005】
また、コークス炉は、様々な形状、大きさの多種類の耐火物煉瓦を複雑に組み合わせる必要があり、据付精度については、±2mm以内に抑える必要がある。そのためには、熟練した築炉工が大人数必要であるが、熟練した築炉工は高齢化し、大人数を確保することが難しくなってきている。
【0006】
このような事情に対し、工期短縮による必要な築炉工の人数削減を目的とし、予め、築炉現場から離れた作業しやすい広い場所で、複数の耐火物煉瓦を所定の大きさまで積み付けてモルタルにより一体化した大ブロックとし、この大ブロックを築炉現場で組み込んでコークス炉を積み付ける、プレハブ工法が知られている。プレハブ工法でブロックを形成するシステム及び方法として、特許文献1には、積み台座の上に定型耐火物を積み上げてブロックを作成する、コークス炉定型耐火物積みシステム、コークス炉定型耐火物積み方法が開示されている。
【0007】
また、プレハブ工法で耐火物煉瓦を積み上げてブロック化するのではなく、粒状の耐火物組成物に水を加えて混練し、型枠に流し込んで、乾燥させることで耐火物の大ブロックを形成する、プレキャスト工法(プレキャスト大ブロック工法ともいう。)も公知である(特許文献2)。
【0008】
プレハブ工法、あるいは、プレキャスト工法は、一つあたりの耐火物のブロックが大ブロックになったことにより、築炉現場で積み付けるブロック数が減少し、狭い築炉現場での作業が短縮されるため、作業効率が良く、築炉期間が短くなるとされている。特に、プレキャスト工法は、積み付けるブロック数そのものが減少するため、作業効率がよい。
【0009】
一般的なコークス炉建設では、同形状のある程度の量の煉瓦を梱包(約1ton)したパレット単位で築炉現場へ移送運搬し、築炉現場で開梱(人力)→配列(人力)→築造(人力)する。取扱う煉瓦が大ブロックと比較して軽量なため、現場での不具合発生時(煉瓦割れ、配列ミスなど)にも人の手で短時間での対応が可能である。
【0010】
一方、プレキャスト大ブロック工法では、一般的なコークス炉建設で用いられる人の手で積める軽量な煉瓦とは異なり、プレキャストした大ブロック(大型耐火物製のブロック)が最大1tonあるいはそれ以上もある重量物であり、人で取扱うことが不可能であるため、人手によらないクレーン等の移送運搬や築炉専用の装置が必要となる。このプレキャストした大ブロックも、一つずつパレットと呼ばれる敷物に載せて扱われる。
【0011】
プレキャスト大ブロック工法では、「いかに決められた部位へ、決められたプレキャスト大ブロックを間違いなく、早く」築造するかが重要であり、これを管理することが求められている。
【0012】
特許文献2には、耐火物の大ブロックを積み付けるコークス炉の築炉方法であって、各々の大ブロックを構築すべき位置データ、大ブロックの形状データが記録されたタグを、当該大ブロック自体、または、その大ブロックを載置するパレットに付与しておき、タグの記録が、読み取られて高機能クレーンへ送られ、高機能クレーンは、前記記録に基づいて、パレットに載せた大ブロックを移送し、築炉現場の所定の場所に積み付けることを特徴とするコークス炉の築炉方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2017-14448号公報
【特許文献2】特開2019-218421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
プレキャスト大ブロック工法では、プレキャスト大ブロックが重量物であるため、人で取扱うことが不可能であり、特許文献2に記載のようにクレーンによって取り扱われる。また、現場でストックできる数も限られる。そのため、積み付けたときの大ブロック同士の干渉や、ブロック搬送途中の他ブロックや他設備との干渉が現場で発見された場合、現地での大ブロックの形状を修正する場合は作業負荷が非常に大きい。
【0015】
また、ブロック築造作業では一つ一つのブロック運搬の前後で作業者によるモルタル施工などの手作業が発生する。加えて、プレキャストブロックは築造作業中にクレーンにより運搬されるが、安全確保の観点からブロック運搬中は作業者の退避が必要であり、人や資機材の動線を考慮したブロックの積み順を計画することが工期短縮に不可欠である。
【0016】
本発明は、コークス炉の築炉において、大ブロックを積み付けるに際し、事前に、大ブロックの積み付けの施工時間を短くできるよう、大ブロックを積み付ける際の最適な搬入動線に決定することができる、施工計画作成支援システム、施工計画作成システム、施工方法、施工計画作成支援方法、及び、施工計画作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
[1]コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロックを積み付けるための施工計画作成を支援する施工計画作成支援システムであって、
各ブロックの形状及びブロックを築造した状態の形状の一方又は両方を格納する部品データベースと、
安全上具備すべき条件、各ブロックの積み順、ブロック搬入時のブロック動線可動範囲及び資材搬入動線のいずれか一又は二以上を格納する施工データベースと、
前記部品データベース及び前記施工データベースに基づき、各ブロックの搬入動線が決定される設計システムと、を有し、
前記設計システムにおいては、各ブロックのうち対象となるブロックの搬入動線が決定されるに際し、前記施工データベースに格納された各ブロックの積み順に従って前記対象となるブロックよりも積み順が前であるブロックが築造された状態において、前記対象となるブロックの搬入動線が、前記施工データベースに格納されたブロック搬入時のブロック動線可動範囲と安全上具備すべき条件を満たす範囲内で設定され、設定された各ブロックの搬入動線で各ブロックを搬入するに際して、ブロックの積み付け施工時間を評価し、前記積み付け施工時間が短くなる前記各ブロックの搬入動線が決定されることを特徴とする施工計画作成支援システム。
[2]前記施工データベースは、安全上具備すべき条件を格納しており、かつ、さらに作業員の動線可動範囲を格納し、
前記設計システムにおいては、各ブロックの搬入動線に基づき、前記施工データベースに格納された安全上具備すべき条件、作業員の動線可動範囲を満たす範囲内で、作業員の動線が決定されることを特徴とする[1]に記載の施工計画作成支援システム。
[3]前記部品データベースは各ブロックの形状を格納しており又は前記施工データベースは各ブロックの積み順を格納しており、前記設計システムは、前記部品データベースに格納された各ブロックの形状及び前記施工データベース中に格納された各ブロックの積み順の一方又は両方を修正し、
修正された結果に応じて、再度前記設計システムによって前記部品データベース及び前記施工データベースに基づき、各ブロックの搬入動線を修正し、
修正された各ブロックの搬入動線と修正前の各ブロックの搬入動線について、ブロックの積み付け施工時間を評価し、前記積み付け施工時間がより短くなるブロックの搬入動線が決定されることを特徴とする[1]又は[2]に記載の施工計画作成支援システム。
【0018】
[4][1]~[3]記載の施工計画作成支援システムを用いて施工計画を作成する施工計画作成システムであって、
前記施工計画は、各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置、各ブロックの形状、各ブロックの積み順及び作業員の動線のいずれか一つ又は二つ以上を含む、
施工計画作成システム。
【0019】
[5]コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロックを積み付けるための施工方法であって、
[1]~[3]記載の施工計画作成支援システムにより決定された各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置データ、各ブロックの形状のうち一つ又は二つ以上がタグに記録され、
前記タグは前記各ブロック自体又は前記各ブロックが載置されるパレットに付与される、
施工方法。
【0020】
[7]コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロックを積み付けるための施工計画作成を支援する施工計画作成支援方法であって、
各ブロックの形状及びブロックを築造した状態の形状の一方又は両方を格納する部品データベースと、
安全上具備すべき条件、各ブロックの積み順、ブロック搬入時のブロック動線可動範囲及び資材搬入動線のいずれか一又は二以上を格納する施工データベースと、
前記部品データベース及び前記施工データベースに基づき、各ブロックの搬入動線が決定される設計システムと、を用い、
前記設計システムにおいては、各ブロックのうち対象となるブロックの搬入動線が決定されるに際し、前記施工データベースに格納された各ブロックの積み順に従って対象となるブロックよりも積み順が前であるブロックが築造された状態において、前記対象となるブロックの搬入動線が、前記施工データベースに格納されたブロック搬入時のブロック動線可動範囲と安全上具備すべき条件を満たす範囲内で設定され、設定された各ブロックの搬入動線で各ブロックを搬入するに際して、ブロックの積み付け施工時間を評価し、前記積み付け施工時間が短くなる前記各ブロックの搬入動線が決定されることを特徴とする施工計画作成支援方法。
[8]前記施工データベースは、安全上具備すべき条件を格納しており、かつ、さらに作業員の動線可動範囲を格納し、
前記設計システムにおいては、各ブロックの搬入動線に基づき、前記施工データベースに格納された安全上具備すべき条件、作業員の動線可動範囲を満たす範囲内で、作業員の動線が決定されることを特徴とする[7]に記載の施工計画作成支援方法。
[9]前記部品データベースは各ブロックの形状を格納しており又は前記施工データベースは各ブロックの積み順を格納しており、前記設計システムは、前記部品データベースに格納された各ブロックの形状及び前記施工データベース中に格納された各ブロックの積み順の一方又は両方の修正を行い、修正された結果に応じて、再度前記設計システムによって前記部品データベース及び前記施工データベースに基づき、各ブロックの搬入動線を修正し、修正された各ブロックの搬入動線と修正前の各ブロックの搬入動線について、ブロックの積み付け施工時間を評価し、前記積み付け施工時間がより短くなるブロックの搬入動線が決定されることを特徴とする[7]又は[8]に記載の施工計画作成支援方法。
【0021】
[10][7]~[9]のいずれか1つに記載の施工計画作成支援方法を用いて施工計画を作成する施工計画作成方法であって、
前記施工計画は、各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置、各ブロックの形状、各ブロックの積み順及び作業員の動線のいずれか一つ又は二つ以上を含む、
施工計画作成方法。
【0022】
[11]コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロックを積み付けるための施工方法であって、
[7]~[9]のいずれか1つに記載の施工計画作成支援方法により決定された各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置データ、各ブロックの形状のうち一つ又は二つ以上がタグに記録され、
前記タグは前記各ブロック自体又は前記各ブロックを載置するパレットに付与される、
施工方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、コークス炉の築炉において、大ブロックを積み付けるに際し、事前に、大ブロックの積み付けの施工時間を短くできるよう、大ブロックを積み付ける際の最適な搬入動線に決定することができる、施工計画作成支援システム、施工計画作成システム、施工方法、施工計画作成支援方法、及び、施工計画作成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の施工計画作成支援システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】クレーンの搬入動線について、本発明例と比較例を対比した図であり、(A)は平面図、(B)は側面断面図、(C)は正面図である。
【
図3】コークス炉炉団のブロック積みの途中状況を示す側面図である。
【
図4】コークス炉炉団のブロック積みの途中状況を示す平面図である。
【
図5】コークス炉炉団のブロック積みの途中状況を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施形態に係る施工計画作成支援システムは、
図1に示すように、部品データベース1と、施工データベース2と、部品データベース1及び施工データベース2に基づき、ブロックの搬入動線が決定される設計システム3とを有する。さらに好ましくは、マンマシンインターフェースのための入出力端末4を有する。
【0026】
以下、クレーンの搬入動線21について説明する
図2をも参酌しつつ、各ブロックの搬入動線を最適化する方法について説明を行う。
【0027】
部品データベース1は、各ブロック11の形状、ブロック11を築造した状態の形状を格納する。予め、各ブロックの形状を3次元で設計し、設計した各ブロックを築造した状態の形状を構築し、これらを部品データベース1に格納する。また部品データベース1は必要に応じて、コークス炉のブロック以外の構造物である金物、保護板、バックステー等の形状データを格納する。ブロック11を築造した状態の形状は、あらかじめブロック同士の干渉が起こらないよう設定されている。
【0028】
施工データベース2は、ブロック11の積み順、ブロック搬入時のブロック動線可動範囲23、安全上具備すべき条件を格納する。また施工データベース2は必要に応じて、資材搬入動線等を格納する。
【0029】
施工データベース2には、ブロックの積み順が格納されている。ブロックの積み順は、ブロック搬入動線21を決定しようとする対象となるブロック11Aよりも積み順が前であるブロックが築造された状態を、当該格納されたブロック11の積み順、及びブロックを築造した状態の形状(部品データベース1に格納されている)に従って、決定することができる。また、ブロックの積み順は複数通り考えられる。複数の積み順については、
図3~5を用いて後述する。
【0030】
施工データベース2には、ブロック搬入時のブロック動線可動範囲23が格納されている。ブロック搬入時のブロック動線可動範囲23は、ブロックを建屋内に搬入する際して対象となるブロック11Aを積み付け位置まで移動させる動線として設定可能な範囲である。
図2の場合、ブロック11は、コークス炉の建屋13の外側の置き場15に載置されており、この置き場15からコークス炉の建屋13内のブロックを積み付ける位置14までの移動には、クレーン12が用いられる。置き場15から建屋内に搬入する搬入口16は限定されているので、ブロック11の置き場15の位置、コークス炉建屋13の配置、建屋13へのブロック11の搬入口16の配置などに基づいて、ブロック搬入時のブロック動線可動範囲23が決定され、施工データベース2に格納される。ブロック動線可動範囲23の一例が
図2(B)に二点鎖線で示されている。
【0031】
また、施工データベース2には、対象となるブロックを搬入するに際して安全上具備すべき条件が格納されている。この安全上具備すべき条件とは、クレーンで吊り上げたブロックの吊り上げ許容範囲22及び吊り上げ許容範囲22内での高さ制限などが含まれる。クレーンで吊り上げたブロックの吊り上げ許容範囲22は、現時点でのコークス炉へのブロックの積み付け状態(築造済みブロック構造17)において、積み付けたブロック表面からの距離として確保すべき範囲が例示される。より具体的には、例えば、積み付けたブロックの上面からの高さとして確保すべき範囲が例示される。ブロックがまだ配置されておらず床面が露出している領域については、露出している床面からの高さとして確保すべき範囲が定められる。クレーンで吊り上げたブロックの吊り上げ許容範囲22の高さの下限は、例えば、ブロックの掴み位置のズレ、炉内設置物の想定違いを考慮し、対象となるブロック11Aの下端が炉内設置物上端の1m上となるように決定される。対象となるブロックの吊り上げ許容範囲22を考慮することにより、積み付けの際にブロック同士やブロックと他設備が接触することを防ぐことができる。また、クレーンで吊り上げたブロックの吊り上げ許容範囲22の高さの上限は、例えば建屋に接触しない高さとすることができる。一方、ブロックの搬入動線は吊り上げ許容範囲22内で極力低い高さとすべきである。積み付けたブロックの上や露出している床面では作業員による作業が行われているので、クレーンから積み荷が落下する事故に際しての被害を最小限に食い止めるためである。吊り上げ許容範囲22の下限の一例が
図2(B)に二点鎖線で示されている。
【0032】
施工データベース2は、さらに作業員の動線可動範囲を格納すると好ましい。各ブロックの搬入動線21を用いての当該作業員の動線可動範囲の決定については、別途後述する。
【0033】
設計システム3においては、部品データベース1及び施工データベース2に基づき、ブロックの搬入動線21が決定される。以下、詳述する。
【0034】
設計システム3においては、各ブロック11のうち対象となるブロック11Aの搬入動線21が決定されるに際し、施工データベース2に格納されたブロックの積み順に従って対象となるブロック11Aよりも積み順が前であるブロックが築造された状態が、築造済みブロック構造17として明示される。築造済みブロック構造17において、対象となるブロックの搬入動線21が、施工データベース2に格納されたブロック搬入時のブロック動線可動範囲23と安全上具備すべき条件を満たす範囲内で設定される。このとき、ブロックの搬入動線21が複数考えられる場合には、ブロックの搬入動線21は複数設定される。また、設定されたブロックの搬入動線21でブロック11Aを搬入するに際してのブロックと設備間の干渉の有無を評価し、各ブロックの積み付けに要する施工時間を算出する。
【0035】
設計システム3の要素として好ましくは、デジタルモックアップ(DMU)を用いることができる。DMUとしては、例えば富士通株式会社の「COLMINA デジタル生産準備 VPS」等を使用することができる。DMUは、3次元の仮想空間に部品や機構を表現し、対象となるブロックと隣接するブロックとの関係、対象となるブロックとコークス炉の建屋構造や築造済みブロック構造との関係について、対象となるブロックをクレーンで移動するに際しての干渉の有無、対象となるブロックを目的位置に設置した際の干渉の有無を評価することができる。また、対象となるブロックを搬入し、積み付けを行った場合に要する施工時間を、決定し評価することができる。
【0036】
図2は、対象となるブロック11Aを、コークス炉炉外の置き場15から、炉内の積み付ける位置14までクレーン12で移動する搬入動線21について示している。対象となるブロック11Aは、置き場15においてクレーン12に玉掛けされ、搬入口16を経由して、積み付ける位置14に運ばれる。
図2(B)には、ブロック搬入時のブロック動線可動範囲23が二点鎖線で示され、また、安全上具備すべき条件として、クレーンで吊り上げたブロックの吊り上げ許容範囲22の高さ下限位置が、同じく二点鎖線とハッチングで示されている。なお、
図2(B)において、ブロックの吊り上げ許容範囲22についてはブロックの下端位置を基準にしている一方、搬入動線21についてはブロックの上端位置を基準にしている。
【0037】
図2中に、本発明を適用しない比較例の場合の搬入動線21Xが、太い一点鎖線で示されている。置き場15から搬入口16までは最短距離の直線で移動し、搬入口16から炉内に入った以降についても、最短距離の直線で積み付ける位置14の直上まで移動している。
【0038】
本発明の施工計画作成支援システムの施工データベース2には、安全上具備すべき条件として、吊り上げ許容範囲22の高さ下限位置が格納されている。下限位置は、築造済みブロック構造17の上面から1.0mの高さに設定されている。築造済みブロック構造17の上面では作業員が作業を行っており、上面から1.0mの高さに高さ下限が設定されていれば、作業員の作業が損なわれることがない。また、安全上具備すべき条件として、当該吊り上げ許容範囲22内で極力低い高さとすべきことが設定されている。そこで、本実施形態を適用して対象となるブロック11Aの搬入動線が決定される結果として、
図2に示すように、ブロック搬入時のブロック動線可動範囲と安全上具備すべき条件を満たす範囲内で、ブロックの搬入動線21Aが決定される(太い実線(隠れ部は太い鎖線))。
【0039】
比較例の搬入動線21Xは、築造済みブロック構造17の上面よりもはるかに高い高さを移動しており、これでは、クレーンから積み荷が落下する事故に際しての被害が大きくなる。それに対して上記本発明例の搬入動線21Aにおいては、築造済みブロック構造17の上面から1.0mの高さぎりぎりを移動するので、作業員の作業が損なわれることがなく、また作業員は積み荷の接近を確実に認識して待避することができるので、クレーンから積み荷が落下する事故に際しての被害を最小化できる。
【0040】
設計システム3において決定された各ブロックの搬入動線21、及び当該決定されたブロックの搬入動線でブロックを搬入するに際してのブロックと設備間の干渉の有無の評価結果及び各ブロックの積み付けに要する施工時間の結果は、施工データベース2に格納される。
【0041】
本実施形態で好ましくは、施工データベースは、さらに作業員の動線可動範囲を格納する。作業員の動線可動範囲とは、例えば搬入中のブロックから平面上3m以上の退避距離をとった範囲が例示される。設計システム3においては、上記のように決定された対象となるブロックの搬入動線21に基づき、施工データベース2に格納された安全上具備すべき条件、及び上記作業員の動線可動範囲を満たす範囲内で、作業員の動線が決定される。ブロック積み付け作業中は、ブロック周囲で作業員が作業を行うが、次のブロック搬入時には搬入中のブロックから3mの退避距離をとったエリア(作業員の動線可動範囲)に作業員は退避する。その後ブロックが積み付け位置に停止したことを確認し、作業員はブロック周囲に移動し、積み付け作業を開始する。
【0042】
設計システム3によって各ブロックの搬入動線21を設定した後に、各ブロックの形状及びブロックの積み順の一方又は両方を修正することにより、さらにブロックの搬入動線21の候補を増やすことができる。
【0043】
施工計画作成支援システムに係る実施形態では、設計システム3は、部品データベースに格納された各ブロックの形状及び施工データベース中に格納されたブロックの積み順の一方又は両方を修正する。入出力端末4を用いて設計者に修正を促すことができる。修正を促された設計者は、部品データベース1に格納された各ブロックの形状及び施工データベース2中に格納されたブロックの積み順の一方又は両方を修正した上で、入出力端末4を通じて修正したデータを設計システム3に入力し、設計システム3は修正したデータを部品データベース1及び施工データベース2に格納する。部品データベースに格納された各ブロックの形状及び施工データベース中に格納されたブロックの積み順の一方又は両方の修正は、設計システム3が行うこともできる。
【0044】
施工計画作成支援方法に係る実施形態では、設計システム3は、部品データベースに格納された各ブロックの形状及び施工データベース中に格納されたブロックの積み順の一方又は両方の修正を行う。設計者は、部品データベース1に格納された各ブロックの形状、施工データベース2中に格納されたブロックの積み順の一方又は両方を修正した上で、入出力端末4を通じて修正したデータを設計システム3に入力し、設計システム3は修正したデータを部品データベース1及び施工データベース2に格納する。部品データベースに格納された各ブロックの形状及び施工データベース中に格納されたブロックの積み順の一方又は両方の修正は、設計システム3が行うこともできる。
【0045】
ブロックの形状を修正することにより、ブロックの型数を減らすことができる。ブロックの型数を減らすことができれば、ブロックを搬入するパレットを減らし、施工計画を単純化してブロックの積み付けに要する施工時間を短縮することができる。また、ブロックの積み順を修正することにより、治具の交換時間を短縮することができる。治具の交換時間を短縮することができれば、ブロックの積み付けに要する施工時間を短縮することができる。あるいは、ブロックの形状及びブロックの積み順の両方を修正することもできる。
【0046】
ブロックの形状及びブロックの積み順一方又は両方を修正することにより、ブロックと設備間の干渉があった場合は、ブロックの形状を修正し、ブロックの積み順を変更し、又はブロックの積み順とブロック形状の両方を変更することにより、干渉の回避を図る。
【0047】
以上の準備を行った上で、再度設計システム3によって部品データベース1及び施工データベース2に基づき、ブロック11の搬入動線21が設定され、設定されたブロックの搬入動線21でブロック11を搬入するに際してのブロックの積み付けに要する施工時間を再度評価する。再評価の結果ブロックの積み付けに要する施工時間を短縮することができていれば、好適な施工計画を作成することが可能となる。
【0048】
対象となるブロック11Aの搬入動線21が複数考えられる場合には、施工時間が最も短縮される搬入動線を選択する。施工時間は、デジタルモックアップを用いて試算することができる。または、対象となるブロック11Aの搬入動線21として、安全上の問題が最も少ない搬入動線を選択することができる。
【0049】
ブロック11の形状が複数考えられる場合には、ブロックの型数が最も少なくなるブロック形状を選択することができ、このブロック形状に対応するブロックの搬入動線21を選択することができる。
【0050】
以上、各ブロックの搬入動線を最適化する方法について説明を行った。本発明では、コークス炉炉団の一部又は全部について、施工時間を最も短縮化することのできるブロックの積み順を検討できる。例えば、
図3~
図5に示すように、コークス炉のソールフリュー部のブロックを配置するに際し、ブロックを炉長方向に積んでいく場合(
図4参照)と、ブロックを炉団長方向に積んでいく場合(
図5参照)について、各ブロックの搬入動線と施工時間を、本発明を適用して解明し、炉団のソールフリュー部全体のブロックを積み付けるに際しての合計施工時間を算出し、合計施工時間が最も短くなる積み順及び搬入動線を選択することができる。
【0051】
本実施形態の施工計画作成システムは、上記本実施形態の施工計画作成支援システムを用いて施工計画を作成する。当該施工計画は、各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置、各ブロックの形状、各ブロックの積み順及び作業員の動線のいずれか一つ又は二つ以上を含むものである。
【0052】
コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロック11を積み付けるための本実施形態の施工方法について説明する。上記本実施形態の施工計画作成支援システムにより決定された各ブロックの搬入動線、各ブロックの位置データ、各ブロックの形状のうち一つ又は二つ以上が、タグ18に記録される。タグ18は各ブロック11自体又は各ブロック11を載置するパレットに付与される。
【0053】
ブロック11の搬入にはクレーン12が用いられる。本実施の形態で好ましくは、特許文献2に記載されたような高機能クレーンを用いる。高機能クレーンは、炉幅方向、炉長方向、炉高方向の三方向全てに自在にブロック11を移送できるクレーン12である。そして高機能クレーンは、絶対番地(所定の座標)での組み位置設定制御機能を有しており、ブロックの積み付け精度の確保を享受できる。クレーン12として高機能クレーンを用いると共に、タグ18に記録されたデータを読み込み、その通りにブロック11を搬送することができる。タグ18に記録する方法としては、ICチップなどを用いることができる。記録媒体が紙なら、QRコード(登録商標)などの二次元コード、バーコードなどを利用すれば良い。
【0054】
本実施形態の施工計画作成支援方法、施工計画作成方法は、前記施工計画作成支援システム、施工計画作成システムと同じ、部品データベースと施工データベースと、当該部品データベースと施工データベースに基づきブロックの搬入動線が決定される設計システムを用い、コークス炉の築炉において、大型耐火物製のブロックを積み付けるための施工計画作成を支援する施工計画作成支援方法であり、同じく施工計画作成方法である。
【実施例0055】
図3~
図5を用いて、コークス炉のソールフリュー部のブロックを積み付けるに際し、本実施形態の施工計画作成支援システムを用い、施工時間を最短とすることのできるブロックの効率的な積み順を決定する場合を例にとって説明する。
【0056】
対象とする炉団は、炉団長方向42にブロック11がN列配置され、炉長方向41にはブロックが1番からM番まで配置されている。
図3は、炉団長方向42に見た側面図であり、紙面の左右が炉長方向41である。
図4、
図5は平面図であって、紙面の上下が炉団長方向42、紙面の左右が炉長方向41であり、炉団長方向42にはI-1列からI+1列までの3列を図示している。
図4、
図5において、クレーンで配置する対象となるブロック11Aをドットハッチングで示している。
【0057】
配置するブロック11としては、炉長方向41の両端に配置されるバックステーに接する端部ブロック31及び炉長方向41の端部ブロック31ではさまれた部分に配置される途中ブロック32の二種類がある。クレーン12にブロック11を吊り上げて移動するに際し、端部ブロック31の吊り上げには端部用治具33を用い、途中ブロック32の吊り上げには途中用治具34を用いる。端部用治具33と途中用治具34相互の交換時には、所要の交換時間を要する。
【0058】
炉長方向41のブロック相互間の接合面においては、ガスなどのリーク防止のため、ダボ36が設けられる。
図3(A)において、炉長方向41のJ番の途中ブロック32が対象となるブロック11Aであり、炉長方向41の両側の端面にダボ36が設けられ、接合する相手ブロック(例えばJ-1番の途中ブロック32)のダボ36とかみ合うことができる。J番の途中ブロック32はこのようなダボ36を有しているので、配置に際しては、
図3(A)に示すように、対象となるブロック11Aをクレーン12で下降した後、J-1番の途中ブロック32に向けて炉長方向41に水平に移動することが必要となる。
【0059】
ただし、J=2番からJ=M番までのすべてのブロックについて、水平移動を行うだけのスペースが存在しない。そこで、
図3(B)(C)に見られる方法を採用する。
図3(B)にあるように、M-2番までのブロックは、それ以前に設置されたブロックとの間にダボ36が配置され、水平移動を織り交ぜて相手との接合を行う。次に、M番の端部ブロック31を対象となるブロック11Aとして設置する(
図3(B))。このとき、M-2番の途中ブロック32とM番の端部ブロック31との間の間隔を正確に調整する。その結果、次にM-1番の途中ブロック32を正確に配置することができる(
図3(C))。ただし、M-1番の途中ブロック32を対象となるブロック11Aとして配置する時にはブロックの水平移動はできないので、M-1番とM-2番との間、M-1段とM番との間の接合面については、
図3(C)にあるように、ダボではなく凹凸接合部37を設けている。
【0060】
次に、炉長方向41と炉団長方向42のブロックの積み順の検討を行う。
【0061】
図4は、ブロックを炉長方向41に積んでいく場合の説明図である。
図4中の白抜き矢印が積み順の方向を示す。
図4(A)では、炉団長方向42のI-1列は配置が完了しており、I列については炉長方向41のJ-1番まで配置が完了し、J番の途中ブロック32が配置対象となるブロック11Aである時点を示している。クレーンには図示しない途中用治具が設置されている。
図4(B)は、I列のM-2番の途中ブロック32まで配置が完了し、そこで治具を途中用治具34から端部用治具33に変更し(図示せず)、M番の端部ブロック31を対象となるブロック11Aとして配置している。このあと引き続き、I+1列の1番の端部ブロック31を配置しておくと良い。次いで、治具を端部用治具33から途中用治具34に交換し(図示せず)、
図4(C)に示すように、I列のM-1番の途中ブロック32を対象となるブロック11Aとして落とし込んで配置する。
【0062】
図5は、ブロックを炉団長方向42に積んでいく場合の説明図である。
図5中の白抜き矢印が積み順の方向を示す。まず、炉長方向1番の端部ブロック31を、炉団長方向42に1列から2列、3列と順に配置し、N列までの配置を完了する。ここで治具を交換し、炉長方向2番の途中ブロック32を同じように1列からN列まで配置する。
図5(A)の段階では、1番からJ-1番までは1列からN列までの配置が完了し、J番については、1列からI-1列までの配置が完了し、J番のI列の途中ブロック32を対象となるブロック11Aとして配置している。
図5(B)においては、炉長方向M-2番までは炉団長方向のすべてのブロックの配置が完了し、治具を交換した上で、M番の端部ブロックを、1列からI-1列まで完了し、現在M番のI列を対象となるブロック11Aとして配置しているところである。M番の炉団長方向42すべての配置を完了した後、治具を交換し、
図5(C)にあるように、炉長方向M-1番の途中ブロックについて、炉団長方向に順に配置を行う。
図5(C)は、炉長方向M-1番のI-1列まで配置が完了し、M-1番のI列の途中ブロック32を対象となるブロック11Aとして配置しているところである。水平移動できないので、落とし込みによって設置している。
【0063】
ブロックの配置順については、上記のように、
図4に示す炉長方向41に積んでいく方法と、
図5に示す炉団長方向42に積んでいく方法の2つが案出された。次に、それぞれの方法について、本発明の施工計画作成支援システムを適用して、ブロックの接合作業時間、ブロックの搬送時間、人の退避時間及び治具の交換時間のトータルのブロックの積み付け施工時間を算出し、施工時間の短い方が効率的な積み順であるとして、最適な積み順の選択を行う。
【0064】
積み付ける各ブロックの搬送時間については、前述の、
図2を用いた搬入動線の最適化を行う際に、最適な場合の搬送時間が判明しているので、そのデータを用いることができる。ブロックの接合作業時間については、接合する相手方との接合面がダボ36を有する場合(この場合は設置の最終段階で水平移動の工程が入る)と、ダボを有しない場合(この場合は垂直の落とし込みのみ)のそれぞれについて、事前に実績に基づいて定めておくことができる。また、治具の交換時間についても、事前に与えておくことができる。
【0065】
人の退避時間については、実際の作業時間を計測した上で事前に定めても良いし、あるいは本発明の施工計画作成支援システムを適用して算出することとしても良い。
【0066】
以上の準備が整ったところで、
図4に示す炉長方向41に積んでいく方法と、
図5に示す炉団長方向42に積んでいく方法のそれぞれについて、本発明の施工計画作成支援システムを適用して搬入動線を設定し、この搬入動線でブロックを搬入した場合のトータルのブロックの積み付け施工時間を算出した。その結果、炉長方向41に積んでいく方法よりも、炉団長方向42に積んでいく方法の方がブロックの積み付け施工時間は短くなるという結果が得られた。この結果に基づき、ブロックの積み付け施工時間を短縮できる搬入動線を設定する際に、炉団長方向42への築造を最適な積み順として採用することができた。