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特開2024-160573移動販売装置及び移動販売装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160573
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】移動販売装置及び移動販売装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/06 20230101AFI20241107BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241107BHJP
【FI】
G06Q30/06
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075717
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上垣 俊平
【テーマコード(参考)】
5H301
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5H301AA03
5H301AA10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH16
5H301KK02
5H301KK19
5H301QQ08
5L030BB21
5L049BB21
(57)【要約】
【課題】販売効率向上を実現させる移動販売装置を提供する。
【解決手段】移動販売装置は、周囲の人を検知して搭載商品の販売対象者かを判定する対象者検知部と、対象者検知部により販売対象者と判定された人との位置関係により異なる販売促進行動を選択する行動選択部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の人を検知して搭載商品の販売対象者かを判定する対象者検知部と、
前記対象者検知部により販売対象者と判定された人との位置関係により異なる販売促進行動を選択する行動選択部と、
を有する移動販売装置。
【請求項2】
前記行動選択部は、前記移動販売装置と前記販売対象者とが、前記移動販売装置の移動経路上で並走可能な場合は並走し、並走しながら前記販売対象者の搭載した商品に対する興味の有無を判定する興味判定部、
を有する請求項1に記載の移動販売装置。
【請求項3】
前記行動選択部は、前記移動販売装置と前記販売対象者とが、前記移動販売装置の移動経路上で並走することが難しく、かつ前記移動販売装置が前記販売対象者の前方を走行している場合、前記移動販売装置の経路上で並走可能な場所を探索し、その位置まで移動した際に停止して行う販売促進行動を選択する請求項1に記載の移動販売装置。
【請求項4】
前記行動選択部は、前記移動販売装置と前記販売対象者とが、前記移動販売装置の移動経路上で並走することが難しく、かつ前記移動販売装置が前記販売対象者の後方を走行している場合、前記移動販売装置が前記販売対象者まで可能な限り接近して停止して行う販売促進行動を選択する請求項1に記載の移動販売装置。
【請求項5】
前記興味判定部は、並走時に前記販売対象者の目線を検出し、検出した目線が搭載している商品に向いているかで前記興味の有無を判定する請求項2に記載の移動販売装置。
【請求項6】
前記興味判定部は、並走時に移動販売ロボットが意図的に減速した際の前記販売対象者の走行速度により、前記興味の有無を判定する請求項2に記載の移動販売装置。
【請求項7】
移動販売装置が、
周囲の人を検知して搭載商品の販売対象者かを判定し、
前記移動販売装置と販売対象者と判定された人との位置関係により異なる販売促進行動を選択する移動販売装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、商品の販売を行う移動販売装置及び移動販売装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律移動ロボットを用いたサービスの実装が進む中、ロボットが商品を搭載して単独で販売を行うサービスが検討されている。特許文献1には、在席中のユーザの在席位置を確認し、ユーザの在席位置に応じて巡回経路を決定し、ユーザの属性に基づいてロボットが搭載する商品を選択する移動店舗管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-93927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された移動店舗管理システムは、登録されたユーザしか利用することができず、また利用可能なエリアが限定されるといった問題がある。特に、不特定多数のユーザが存在する公共空間で利用するといったことが困難である。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するものであり、販売効率の向上を実現させる移動販売装置及び移動販売装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る移動販売装置の一態様は、周囲の人を検知して搭載商品の販売対象者かを判定する対象者検知部と、前記対象者検知部により販売対象者と判定された人との位置関係により異なる販売促進行動を選択する行動選択部と、を有する。
【0007】
また、本開示に係る移動販売装置の制御方法の一態様は、移動販売装置が、周囲の人を検知して搭載商品の販売対象者かを判定し、前記移動販売装置と販売対象者と判定された人との位置関係により異なる販売促進行動を選択する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、販売効率の向上を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施の形態における移動販売ロボットの概要を示す図である。
図2図2は、本実施の形態における移動販売システムのブロック図である。
図3図3は、移動販売ロボットの移動経路と販売エリアを模式的に示す図である。
図4図4は、販売エリア内での販売促進行動を示すフローチャートである。
図5図5は、移動販売ロボットと周囲のユーザとの位置関係の一例を示す図である。
図6図6は、搭載商品のターゲットとなる属性を有したユーザを検知した際のロボットの行動の一例を示す図である。
図7図7は、販売エリア間での販売促進行動を示すフローチャートである。
図8図8は、移動販売ロボットと周囲の人とが並走可能な通路を走行している時の動作を示す図である。
図9図9は、移動販売ロボットと人との並走が難しい通路で移動販売ロボットが先行して走行している時の動作を示す図である。
図10図10は、移動販売ロボットと人との並走が難しい通路で移動販売ロボットが人の後ろを走行している時の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される各構成要素、各構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、各ステップ及び各ステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
図1は、本実施の形態における移動販売ロボット1の概要を示す図である。先ず、本実施の形態における移動販売ロボットの全体構成について説明する。移動販売ロボット1は、車両ベース10と、走行用車輪20と、環境認識センサ30と、ロボットの前面、後面、左側面および右側面の環境画像を取得する4つの画像取得センサ40~43と、商品を搭載する商品搭載ロッカー50と、を有する移動販売装置である。
【0013】
車両ベース10の内部には、図示しない制御ユニットと、通信ユニットと、バッテリとを搭載する。走行用車輪20は、主に複数の動輪で構成される。走行用車輪20は車両ベース10を支えるように設置され、移動販売ロボット1は走行用車輪20の回転により移動することが可能である。
【0014】
走行用車輪20は、車両ベース10に搭載された制御ユニット100からの信号を受けて回転する。走行用車輪20はロボットの重心位置を挟むように構成されることが望ましい。また、走行用車輪20は動輪だけでなく、従輪を追加して構成してもよい。
【0015】
環境認識センサ30は、移動販売ロボット1の前方および側面の環境を認識するためのセンサである。また、移動販売ロボット1が自律走行を行うためには、通常、周囲環境情報から自己位置を認識する必要があるが、環境認識センサ30が測定した情報を用いて制御ユニットがその処理を行う。環境認識センサ30は、例えば、RGBカメラやLRF(Laser Range Finder)である。
【0016】
画像取得センサ40~43は、移動販売ロボット1の四方それぞれの環境画像を取得するセンサである。画像取得センサはRGB画像を取得することが可能であり、移動販売ロボット1の周囲の環境画像を残らず取得できるように設置する。画像取得センサ40~43は、視野角の広いRGBカメラ、もしくは魚眼レンズを有したRGBカメラである。
【0017】
商品搭載ロッカー50は、移動販売ロボット1が販売する商品を搭載するスペースを一つ以上内部に有している。商品搭載ロッカー50は、移動販売ロボットの外部から、搭載した商品が視認できることが望ましい。また、商品搭載ロッカー50に搭載されている商品は、予め移動販売管理システム2に商品情報として保存されている。移動販売ロボット1は、商品搭載ロッカー50の商品搭載スペースが複数ある場合、各スペースに搭載されている商品について把握をしている。
【0018】
商品搭載ロッカー50は、商品搭載スペースとその外部とを仕切る扉があってもよい。その際、搭載された商品を盗難から防止するために、物理的または電子的な制御でロックのON、OFFが行われることが望ましい。但し、移動販売においては商品が移動販売ロボット1の外部から視認できることが望ましいため、扉は部分的にでも透明なパネルで仕切られていることが望ましい。
【0019】
次に、図2を用いて移動販売システム全体の制御系を説明する。図2は、本実施の形態における移動販売システムのブロック図である。移動販売システムは、移動販売ロボット1と、移動販売管理システム2と、操作端末3と、を有している。
【0020】
移動販売ロボット1は、無線通信でデータの送受信が可能な第1通信ユニット110と第2通信ユニット120とを有し、移動販売管理システム2とは第1通信ユニット110を介して、操作端末3とは第2通信ユニット120を介してデータの送受信を行う。
【0021】
移動販売ロボット1と移動販売管理システム2との間の通信は、一般的には無線Wifiおよび公衆無線で行われ、移動販売ロボット1と操作端末3との間の通信は、一般的にはBluetooth(登録商標)通信や無線電力通信などで行われる。
【0022】
次に、移動販売ロボット1の制御系について説明する。移動販売ロボット1は、前述の第1通信ユニット110および第2通信ユニット120の他に、走行関連の制御と、商品搭載ロッカーの扉のロックを制御する商品搭載ロッカーロック機構51の制御とを行う制御ユニット100を有する。
【0023】
制御ユニット100は、プロセッサなどのハードウェアを備え、環境認識センサ30からの信号を取得し、それらの信号データを処理することで周囲環境のマップを作成することが可能である。また、自律走行時に、環境認識センサ30からの信号を処理することで、マップ上のどこに移動販売ロボット1がどのような姿勢で存在するかを推定することが可能である。
【0024】
また、制御ユニット100は、走行用車輪20を制御し、移動販売ロボット1を自律的に走行させることが可能である。その他、制御ユニット100は、画像取得センサ40~43から取得した画像を基に、ロボット周囲に存在する人や物を検知することが可能である。
【0025】
制御ユニット100は、操作端末3からの制御信号を、第2通信ユニット120を介して受け取ることが可能である。制御ユニット100は、操作端末3からの制御信号に基づいて、主に移動販売ロボット1のマニュアル走行制御、商品搭載ロッカーロック機構51のON/OFF制御、移動販売ロボット1の設定等の変更を行うことが可能である。
【0026】
次に、移動販売管理システム2について説明する。移動販売管理システム2は、移動販売ロボット1が稼働するエリアの地図情報と、ロボットが搭載し販売を行う商品情報と、どの時間、どの経路やエリアで販売を行うかといった販売計画情報とをデータとしてハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置に保有している。
【0027】
移動販売管理システム2はサーバ上で稼働し、一般的にはクラウド空間にて管理される。なお、移動販売管理システム2の管理はクラウド空間に限定されず、サーバ上の記憶部やデータベース等で管理してもよい。
【0028】
移動販売ロボット1は、第1通信ユニット110を介して移動販売管理システム2との通信が可能であり、移動販売ロボット1の動作に必要な地図情報201、搭載している商品を把握するための商品情報202、定常的な移動販売行動を行うための販売計画情報203は、移動販売管理システム2より伝達され、移動販売ロボット1に設けられたメモリやハードディスク装置、SSDなどの記憶装置に記憶される。
【0029】
移動販売管理システム2と操作端末3とは通信することが可能であり、移動販売管理システム2の商品情報202や販売計画情報203は、操作端末3より変更することが可能である。
【0030】
次に、移動販売ロボット1の定常的な移動販売行動について図3を用いて説明する。図3は、移動販売ロボット1の移動経路と販売エリアを模式的に示す図である。
【0031】
移動販売ロボット1の販売ポイントは黒丸の301、311、321、331で、移動ポイント先で移動販売行動を行う販売エリアは、実線円の302、312、322、332で、移動販売ロボット1の移動経路は点線の303、313、323、333で示されている。移動販売ロボット1の移動方向は、移動経路303、313、323、333の矢印で示されている。
【0032】
移動販売ロボット1は、移動販売管理システム2の販売計画情報203で定義された移動先ポイントと移動開始時間に従って、定常的な移動販売行動を実施する。その際に必要な移動先ポイントの座標値や移動経路および販売エリアは地図情報201で管理されている。
【0033】
次に、移動販売行動について説明する。移動販売ロボット1は、まず移動ポイント301に存在している。移動販売ロボット1は、販売ポイント301に設定されている販売エリア302の中で販売促進行動を行うことが可能である。通常は、移動販売ロボット1は、販売エリア302より小さい範囲で指定された移動先ポイントにて静止し、周囲のユーザが搭載した商品を購入することが可能な状態へ移行する。
【0034】
その際、移動販売ロボット1は、能動的な動作として行われる発話や搭載した照明による点灯などで購買行動を促すことも可能である。また後述するが、移動販売ロボット1は、販売エリア302内に、搭載した商品のターゲットとなる属性のユーザを検知した際には、そのユーザの位置関係と予測される行動から当該ユーザへ向かって接近し、購買を促すことが可能である。
【0035】
次に、移動販売ロボット1は、販売ポイント301での販売時間が終了したのを確認し、次の販売ポイント311への移動を開始する。その際、移動販売ロボット1は、移動経路303を通って移動を行う。移動販売ロボット1は、移動途中に搭載した商品のターゲットとなる属性のユーザを検知した際には、移動販売ロボット1とそのユーザが存在する場所およびそれぞれの位置関係から当該ユーザへの販売促進行動を適切に選択することが可能である。この処理については、後に詳しく説明する。
【0036】
販売ポイント311での販売時間を終えた移動販売ロボット1は、販売計画情報203の計画に従い、移動経路313を通って販売ポイント321へ移動する。
【0037】
このように、移動販売ロボット1は、販売計画情報203の計画に従って、地図情報201で定義された販売ポイントへ指定時間になったら移動をし、販売ポイントではそのポイントで設定された販売エリア内での販売を実施する。なお、移動販売ロボット1は、販売終了時間になれば、図示していない待機ポイントまで移動をして移動販売を終了する。
【0038】
ここで、販売ポイント、販売エリア、移動経路を図示して説明したが、これらは図3の内容に限定されず、販売ポイント、販売エリア、移動経路はそれぞれ他に複数存在してもよい。例えば、販売エリアを円形で図示したが、円形である必要はなく、地図情報として区切られたエリアであればよい。また、移動経路を直線状に図示したが、これも直線状である必要はなく、通常は次の販売ポイントに移動するのに走行可能な通路であればよく、移動経路の形状は限定されない。
【0039】
次に、移動販売ロボット1が販売エリア302、312、322、332内で行う販売促進行動について図4から図6を用いて説明する。図4は、販売エリア302、312、322、332内での販売促進行動を示すフローチャートである。図5は、移動販売ロボット1と周囲のユーザとの位置関係の一例を示す図である。図6は、搭載商品のターゲットとなる属性を有したユーザを検知した際のロボットの行動の一例を示す図である。
【0040】
図4に示すように、販売ポイントに到着した移動販売ロボット1は、まず搭載商品の情報である商品情報202を移動販売管理システム2より取得する(ステップS1)。次に、移動販売ロボット1は、販売エリア302、312、322、332を定義するため、地図情報201を同様に移動販売管理システム2より取得する(ステップS2)。
【0041】
なお、移動販売ロボット1は、販売ポイント301、311、321、331まで自律走行している場合、事前に地図情報201を取得する必要がある。その際に販売エリア302、312、322、332の情報を取得しているのであれば、この処理を省略できる。
【0042】
次に、移動販売ロボット1は、販売ポイント301、311、321、331上で停止して販売を行う。その際、移動販売ロボット1は、周囲の状況や環境情報を画像認識センサ40~43および環境認識センサ30より取得する(ステップS3)。
【0043】
移動販売ロボット1と周囲の人との位置関係は、図5に示すような状態が想定される。図示したように、移動販売ロボット1の周囲を人が通り過ぎる位置関係で移動販売ロボット1は配置される。なお、図5の黒三角▲は人の目線方向を、白三角△は人の移動方向を示している。
【0044】
次に、移動販売ロボット1は、画像認識センサ40~43より取得したRGB画像より人を検出する(ステップS4)。人の検出には、人の画像での特徴量を用いたパターンマッチング手法やディープラーニングによる物体検出手法を用いることが考えられる。
【0045】
次に、移動販売ロボット1は、検出した人の画像情報からその人の属性を判断する(ステップS5)。属性の判断には、人の検出と同様に、ディープラーニングによる画像解析手法が用いられる。なお、ここで判断する属性は、年齢、性別など、その人固有の属性の他、汗をかいているか否かといったことも含まれる。それら、判断すべき属性は、商品情報202で商品と共に定義されており、移動販売ロボット1は、エリア内販売を開始した際に、取得した商品情報202から判断すべき属性を把握することが可能である。
【0046】
次に、移動販売ロボット1は、その人の属性と商品がターゲットとするユーザの属性とが合致するかを判定する(ステップS6)。それらが合致する場合(ステップS6、YES)、移動販売ロボット1は、当該ユーザを販売対象者と認識して次の行動へ移り、それらが合致しない場合(ステップS6、NO)、環境情報取得にフローが戻る(ステップS3)。
【0047】
次に、移動販売ロボット1が検出した人が販売対象者と判定された場合(ステップS6、YES)、移動販売ロボット1は、その販売対象者の移動行動を一定時間観察する(図6Aの販売対象者400から販売対象者401の移動)。基本的に人は移動中において目標地点まで最短経路を通ることが多いため、移動販売ロボット1は、この一定時間に販売対象者が移動した位置を線形補間する形で図6Aの点線410の移動先を予測する(ステップS7)。そして、移動販売ロボット1は、線形補間で得られた販売対象者の移動先に向かって現在いる場所から移動を開始して接触する位置を算出し、指定ポイント(図6Aの黒丸411)を設定する。
【0048】
次に、移動販売ロボット1は、指定ポイントまで移動する経路(図6Aの点線420)を生成し、移動を開始する(ステップS8)。移動販売ロボット1は、指定ポイントに到着したら停止し(ステップS9)、販売対象者へ販売促進行動を実施する。この時の位置関係は図6Bに示す位置関係となる。
【0049】
ここでの販売促進行動は、発話や照明による点灯、またサイネージ用のディスプレイを搭載している場合は、商品の商品CMや販売促進ムービーを流すといったことが考えられる。移動販売ロボット1は、その状態で待機し、購買行動に移る販売対象者を待ち受ける。この際、一度通り過ぎた販売対象者が戻ってくることも考えられるため、移動販売ロボット1は、販売対象者が通り過ぎても数秒間もしくは販売エリアから販売対象者が退出するまで待機する。
【0050】
指定ポイントで販売促進行動を行っても販売対象者が購買行動を行わない場合(ステップS10、NO)、移動販売ロボット1は、販売ポイント301、311、321、331への走行を開始し(ステップS12)、到着後は停止して待機する。販売対象者が購買行動を実施する場合(ステップS10、YES)、移動販売ロボット1は、それが完了するまでその場で待機する(ステップS11)。購買行動の完了後、移動販売ロボット1は、販売ポイント301、311、321、331への走行を開始し(ステップS12)、到着後は同様に待機状態へ移行する。
【0051】
なお、指定ポイントから販売ポイント301、311、321、331への走行中も移動販売ロボット1は周囲の環境情報を取得し、検出した人が販売対象者と合致するか否かを判定する。その際、移動販売ロボット1は、販売対象者と合致する人を発見した際には、同様に移動位置予測以降の作業を行う。
【0052】
次に、移動販売ロボット1が販売エリア302、312、322、332間の移動経路303、313、323、333を移動中に行う販売促進行動について図7から図10を用いて説明する。図7は、販売エリア302、312、322、332間の移動経路303、313、323、333での販売促進行動を示すフローチャートである。
【0053】
販売エリア302、312、322、332間の移動経路303、313、323、333での販売促進行動も、販売エリア302、312、322、332内の場合と同様に、移動販売ロボット1は、最初に、搭載している商品の情報である商品情報202を取得する(ステップS21)。次に、移動販売ロボット1は、移動経路303、313、323、333の情報を取得するため、地図情報201を同様に移動販売管理システム2より取得する(ステップS22)。地図情報201から移動経路303、313、323、333の情報を取得する点が、販売エリア302、312、322、332内で販売促進行動を行う場合とは異なる。
【0054】
次に、移動販売ロボット1は、移動経路303、313、323、333の走行を実行するか否かを判定する(ステップS23)。移動経路303、313、323、333の走行を実行しない場合とは、移動販売ロボット1が、次の販売ポイント301、311、321、331に到着した場合である。最初の段階では、移動販売ロボット1は、次の販売ポイント301、311、321、331に到着していないため、移動経路303、313、323、333の走行を実行する(ステップS23、YES)。そして、移動販売ロボット1は、移動しながら周囲の環境情報を取得する(ステップS24)。ここから販売対象者を判定するまでの流れは販売エリア302、312、322、332内の場合と同様である(ステップS25~S27)。
【0055】
次の販売ポイント301、311、321、331に移動販売ロボット1が到着し、移動経路303、313、323、333の走行を実行しないと判定された場合(ステップS23、NO)、販売エリア302、312、322、332間移動は終了する。
【0056】
次に、移動販売ロボット1が検出した人の属性が販売対象者の属性と合致せず、その人が販売対象者でなかった場合(ステップS27、NO)、移動販売ロボット1は、経路走行を継続する。移動販売ロボット1が検出した人が販売対象者であった場合(ステップS27、YES)、その販売対象者と移動販売ロボット1との位置関係と周囲の状況から3パターンに行動が分岐する(ステップS28、YES)。
【0057】
先ず、移動販売ロボット1と販売対象者450が経路上で並走可能な場合について説明する。図8は、移動販売ロボットと周囲の人とが並走可能な通路を走行している時の動作を示す図である。図8Aに示すように、移動販売ロボット1は、経路走行中に販売対象者450を発見した場合、販売対象者450に並走可能な位置まで加速する(図8B)。
【0058】
そして、移動販売ロボット1は、販売対象者450と並走を開始すると同時に、販売対象者450の目線検出を実施する。この時、移動販売ロボット1は、販売対象者450が移動販売ロボット1に興味があるかどうかを判定する(ステップS31)。一定時間並走し、販売対象者450が移動販売ロボット1に興味を示さず目線が検出できない場合、移動販売ロボット1は、販売対象者450の興味がないと判定し(ステップS31、NO)、移動経路走行を継続する(ステップS23)。
【0059】
並走している間、一定時間目線が検出でき、かつ移動販売ロボット1の商品方向を向いている場合、移動販売ロボット1は、販売対象者450が商品に興味があると判定する(ステップS31、YES)。この場合、移動販売ロボット1は停止し、販売促進行動を実施する(図8C)。なおこの際、移動販売ロボット1の停止ポイントは、並走する販売対象者450より数メートル程度前に出ていることが望ましい。
【0060】
その後、移動販売ロボット1は、販売対象者450の購買行動があったかどうかを判定する(ステップS32)。販売対象者450の購買行動があった場合(ステップS32、YES)、移動販売ロボット1は、販売対象者450が購入行動を完了するまで待機する(ステップS33)。販売対象者450が移動販売ロボット1を通り過ぎて一定時間待機しても戻ってこない場合、移動販売ロボット1は、販売対象者450の購買行動がなく、購買意志もないと判定して(ステップS32、NO)、経路走行を再開する(ステップS23)。
【0061】
なお、ここでは販売対象者450の商品に対する興味を目線で判定する方法を説明したが、販売対象者450の頭の高さが高過ぎる、あるいは移動販売ロボット1との距離が近すぎるなどの理由で販売対象者450の目が画像取得センサ40~43の画角内に収まらず、目線検出ができない場合が考えられる。その場合は次の方法で販売対象者450の興味の有無を判定する。
【0062】
先ず、移動販売ロボット1は、販売対象者450と並走しながら、意図的に減速し低速走行を実施する。その際、移動販売ロボット1の動きに合わせて販売対象者450が減速し、その後も低速移動を継続する場合、移動販売ロボット1は、販売対象者450が商品に興味があると判定する。移動販売ロボット1の減速に対して販売対象者450の走行速度が変化しない場合、移動販売ロボット1は、販売対象者450が移動販売ロボット1に興味がないと判定する。なお、移動販売ロボット1は、販売対象者450の位置を、画像認識センサ40~43を用いて判定する。
【0063】
また、移動販売ロボット1の減速の度合いについては、急停止すると周囲の通行を妨げるといった問題が考えられるため、通常速度の50%程度までの範囲で抑えることが望ましい。なお、販売対象者450が商品に興味があると判定した場合、移動販売ロボット1は、図8Cの状態へ移行するよう行動し、販売対象者450が商品に興味がないと判定した場合、通常の走行速度まで加速して経路走行を継続する。
【0064】
次に、移動販売ロボットと販売対象者が経路上で並走することが難しく、かつ移動販売ロボット1が販売対象者の前方を走っている場合について説明する。図9は、移動販売ロボット1と人との並走が難しい通路で移動販売ロボット1が先行して走行している時の動作を示す図である。
【0065】
移動販売ロボット1が販売対象者460を後方に発見した後、移動販売ロボット1は、販売対象者460と並走、もしくはすれ違える程度のエリアを地図情報201の移動経路303、313、323、333上から探索する。移動販売ロボット1は、探索により検出されたエリアのうちの最も近いエリアを走行先ポイント(黒丸461)として設定する。
【0066】
そして、移動販売ロボット1は、その走行先ポイントまで移動して停止し(ステップS30)、販売促進行動を実施する(図9B)。販売促進行動を実施しながら、移動販売ロボット1は、販売対象者の行動を待機し(図9C)、図9Dに示すように、販売対象者の購買行動があった場合(ステップS32、YES)、販売対象者450が購入行動を完了するまで停止して待機する(ステップS33)。
【0067】
販売対象者の購買行動がない場合(ステップS32、NO)、移動販売ロボット1は、数秒待機したのち、経路走行を再開する(ステップS23)。なお、移動経路上に販売可能エリアが存在しない場合、移動販売ロボット1は、販売促進行動は実施せず、経路走行を継続する。
【0068】
次に、移動販売ロボット1と販売対象者が経路上で並走することが難しく、かつ移動販売ロボット1が販売対象者の後方を走っている場合について説明する。図10は、移動販売ロボット1と人との並走が難しい通路で移動販売ロボット1が人の後ろを走行している時の動作を示す図である。
【0069】
図10Aに示すように、移動販売ロボット1は、販売対象者470の後方を走行し、かつ販売対象者470を追い越すスペースが経路上に存在しないため、移動販売ロボット1は、可能な限り販売対象者470へ接近したのち停止し(図10B)、即座に販売促進行動を実施する(ステップS29)。この際、移動販売ロボット1は、商品が搭載されている側の側面を販売対象者470へ可能な限り向けた状態で停止する(図10C)。
【0070】
この際の販売促進行動では、音声により商品案内をすることが最も望ましい。図10Dに示すように、停止した後の移動販売ロボット1は、販売対象者470の行動を待機し、販売対象者470の購買行動があった場合(ステップS32、YES)、販売対象者450が購入行動を完了するまで待機する(ステップS33)。
【0071】
販売対象者470が無視して立ち去る場合、もしくは移動販売ロボット1が停止してから数秒待機しても移動販売ロボット1へ接近するといった購買行動へ販売対象者470が移行しない場合(ステップS32、NO)、移動販売ロボット1は、購買意志なしと判定して経路走行を再開する(ステップS23)。
【0072】
このように、移動販売ロボット1が適切な販売対象者を判定し、その販売対象者と周囲環境との関係性から適切な販売促進行動を選択することで、移動販売において効率的に販売機会を増やすことが可能な移動販売ロボット1を実現することができる。
【0073】
上述してきたように、本開示の移動販売ロボット1によれば、移動販売ロボット1が搭載している商品のターゲットとなる販売対象者にのみ能動的に販売促進行動を取ることで、販売効率の向上を実現させることができる。
【0074】
なお、本実施の形態は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示の移動販売装置は、ロボット等の移動販売を行う移動販売装置に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 移動販売ロボット
2 移動販売管理システム
3 操作端末
10 車両ベース
20 走行用車輪
30 環境認識センサ
40 画像取得センサ
50 商品搭載ロッカー
100 制御ユニット
201 地図情報
202 商品情報
203 販売計画情報
301 販売ポイント
302 販売エリア
303 移動経路
400 販売対象者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10