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特開2024-160582フィルタエレメント及びフィルタ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160582
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】フィルタエレメント及びフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 27/08 20060101AFI20241107BHJP
   B01D 27/06 20060101ALI20241107BHJP
   F01M 11/03 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B01D27/08
B01D27/06
F01M11/03 B
F01M11/03 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075740
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】390041221
【氏名又は名称】日本濾過器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101177
【弁理士】
【氏名又は名称】柏木 慎史
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 智久
(72)【発明者】
【氏名】村野 聡
【テーマコード(参考)】
3G015
4D116
【Fターム(参考)】
3G015BG02
3G015DA04
4D116AA06
4D116AA22
4D116BC03
4D116BC05
4D116BC13
4D116BC77
4D116QA60B
4D116QB17
4D116QB18
4D116QB19
4D116QB32
4D116QB36
4D116VV02
4D116VV03
4D116VV05
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】一か所に集約させた複数のフィルタに対して、フィルタエレメントの交換作業を容易にすること。高いスペース効率を得ること。
【解決手段】フィルタ装置11は、流体の濾過を必要とする機械、例えば車両側に取り付けられる固定ハウジング101に、可動ハウジング201を移動自在に取り付けている。可動ハウジング201は、複数個のフィルタエレメント301を着脱自在に収納する。個々のフィルタエレメント301は、扁平な矩形形状を有しており、一端に一対の流路管331を平行に設け、一対の流路管331同士を並列させた状態で隣接するように可動ハウジング201に収納される。固定ハウジング101は、車両側の流体経路に接続される一対の接続管131を有しており、フィルタエレメント301が有する流路管331は、固定ハウジング101に対する可動ハウジング201の移動によって流路管331に着脱される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平形状を有し、扁平な両面の間に流通する流体を濾過する濾材と、
前記濾材の周囲を取り囲んで保持する両面が開口した矩形の枠体であり、並列配置された流体の導入側と排出側とに対面する隔壁を一片に有する扁平なエレメントフレームと、
前記エレメントフレームの開口した一面を覆う第1のカバー面と、前記隔壁の長手方向の半分の領域に対面する第1のエンド面とを有し、前記第1のエンド面に流体の導入口を設けた第1のエレメントケースと、
前記エレメントフレームの前記一面と反対側の面を覆う第2のカバー面と、前記隔壁の残りの半分の領域に対面する第2のエンド面とを有し、前記第2のエンド面に流体の排出口を設けた第2のエレメントケースと、
前記隔壁と前記第1のエンド面との間に、前記導入口に連絡する前室を生成し、前記隔壁と前記第2のエンド面との間に、前記排出口に連絡する後室を生成し、前記前室と前記後室とを区画する区隔壁と、
前記エレメントフレームの前記一面と前記第1のカバー面との間に、前記前室に連絡する流入室を生成する第1の隔壁と、
前記エレメントフレームの前記反対側の面と前記第2のカバー面との間に、前記後室に連絡する流出室を生成するする第2の隔壁と、
を備えるフィルタエレメント。
【請求項2】
前記区隔壁は、前記前室と前記後室との間をスロープによって区画する、
請求項1に記載のフィルタエレメント。
【請求項3】
前記エレメントケースは、前記区隔壁と前記第1の隔壁と前記第2の隔壁とを有している、
請求項2に記載のフィルタエレメント。
【請求項4】
前記区隔壁と前記第1の隔壁と前記第2の隔壁とは、前記エレメントフレームの枠体から外方に突出するエンドレス形状のリブによって一体に成形されており、
前記第1のエレメントケースは、前記枠体の一方の側部を覆う半筐体形状を有し、
前記第2のエレメントケースは、前記枠体の前記一方の側部と反対側の側部を覆う半筐体形状を有している、
請求項3に記載のフィルタエレメント。
【請求項5】
前記リブと前記第1及び第2のエレメントケースとは、前記エレメントフレームの扁平形状に沿った仮想的な扁平面と平行な接合面同士の接合によって固定されている、
請求項4に記載のフィルタエレメント。
【請求項6】
前記エレメントフレームの枠体と前記第1及び第2のエレメントケースとは、隙間を空けて配置されている、
請求項4に記載のフィルタエレメント。
【請求項7】
前記導入口は、前記第1のエンド面に固定された流路管の形態を有し、
前記排出口は、前記第2のエンド面に固定された流路管の形態を有している、
請求項1に記載のフィルタエレメント。
【請求項8】
固定ハウジングと、
少なくとも二つの請求項1ないし7のいずれか一に記載のフィルタエレメントを隣接させ、前記導入口と前記排出口とを並列させて収納保持する収納部を有し、前記収納部に収納保持された前記フィルタエレメントが有する前記導入口と前記排出口との中心軸の方向に沿って前記固定ハウジングに移動自在に取り付けられた可動ハウジングと、
前記可動ハウジングの移動によって前記導入口と前記排出口とにそれぞれ着脱されるように前記固定ハウジングに設けられ、流体の濾過を要する機械の流体経路に接続される一対の接続管と、
を備えるフィルタ装置。
【請求項9】
前記固定ハウジングと前記可動ハウジングの前記収納部とは、前記フィルタエレメントの両面にそれぞれクリアランスを空けて対面する平坦な収納壁を備える、
請求項8に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとは、前記接続管が前記フィルタエレメントの前記導入口及び前記排出口よりも上方に位置するように組み合わされている、
請求項8に記載のフィルタ装置。
【請求項11】
前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの移動方向は、鉛直方向である、
請求項10に記載のフィルタ装置。
【請求項12】
鉛直方向上の上昇位置と下降位置との間で移動自在に前記可動ハウジングの前面側に取り付けられ、前記固定ハウジングの方向に延びるフックを有する昇降プレートと、
操作部を回転させる操作によって生ずる回転運動を前記昇降プレートの昇降運動に変換する運動方向変換部と、
前記フックが引っ掛けられるように前記固定ハウジングに設けられたキャッチャと、
を備え、
前記キャッチャに前記フックを引っ掛けた前記昇降プレートは、前記下降位置では前記可動ハウジングを上昇させて前記接続管に前記流路管を接続させ、前記上昇位置では前記可動ハウジングを下降させて前記接続管から前記流路管を離脱させる、
請求項11に記載のフィルタ装置。
【請求項13】
前記操作部は、手動による回転操作が可能な操作レバーである、
請求項12に記載のフィルタ装置。
【請求項14】
前記操作部は、工具による回転操作が可能な操作ボルトである、
請求項12に記載のフィルタ装置。
【請求項15】
前記可動ハウジングは、前記接続管から前記流路管が離脱するまで下降した後、前記固定ハウジングに対して回転自在に設けられている、
請求項12に記載のフィルタ装置。
【請求項16】
前記キャッチャは、前記可動ハウジングの回転によって前記フックが抜き差しされる窪み形状を有している、
請求項15に記載のフィルタ装置。
【請求項17】
前記接続管は、前記流路管が離脱したときに流体の漏れ出しを阻止する流出防止機構を有している、
請求項10に記載のフィルタ装置。
【請求項18】
前記流出防止機構は、
前記接続管に接続される前記流路管に押されて前記接続管の開口端を開閉するバルブと、
前記開口端を閉じる方向に前記バルブを付勢する付勢部と、
を備える、
請求項17に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタエレメント及びフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車やトラックなどの車両、建設機械、産業機械、工作機械などの分野では、内燃機関のためのオイル循環システムや燃料供給システム、油圧作業機のための油圧システムなどが組み込まれている。これらのシステムは、いずれもオイルフィルタや燃料フィルタを必要とする。
【0003】
例えばオイル循環システムは、各部を潤滑する潤滑油を循環させるため、潤滑油に堆積していく金属粉やスラッジを濾過するためのオイルフィルタを必要とする。
【0004】
燃料供給システムは、内燃機関に供給する燃料から異物や水分を除去するための燃料フィルタを必要とする。燃料フィルタは、プレフィルタとメインフィルタとを組み合わせて使用することもある。
【0005】
油圧システムは、各部に動力を伝達するための作動油を流通させるため、作動油に堆積していく金属粉やスラッジを濾過するためのオイルフィルタを必要とする。
【0006】
内燃機関を備える上記自動車や建設機械などでは、例えばエンジンルームのような閉塞空間、あるいは外部に露出した開放空間内にフィルタを配置し、フィルタエレメントの定期的な交換を可能にしている。このとき個々のフィルタは、オイル循環システムや燃料供給システムなどのレイアウト設計にしたがった位置に別個に配置されることが一般的である。
【0007】
その一方で複数個又は複数種類のフィルタを一か所に集約し、フィルタエレメントの交換作業の容易化を図るようにした工夫が従来からなされている。
【0008】
例えば特許文献1に紹介されているのは、自動車(ダンプトラック等の作業車両)に搭載された内燃機関に三個のフィルタを並べて取り付けた一例である。「エンジン100の側方には、複数個(実施例では3個)のフィルタ装置1が配設されており、これらフィルタ装置1は、エンジン100に固定設置されたフィルタヘッド1Hと、該フィルタヘッド1Hに装着されたフィルタカートリッジ10とから構成されている」と記載されている(文献1の段落[0025]、図1参照)。
【0009】
特許文献2には、油圧システムに用いるパイロット回路用オイルフィルタ(23)と、内燃機関用のエンジンオイルフィルタ(24)とを一つのブラケット(22)に取り付けるようにした建設機械(油圧ショベル)のフィルタ類装着構造が開示されている(文献2の段落[0013][0017]、図2図4参照)。
【0010】
特許文献3には、三つのフィルタアセンブリ(34、35)を単一のフィルタヘッド(32)に着脱自在に取り付けられるようにした内燃機関用のフィルタシステムが開示されている(文献3の段落[0020]参照)。フィルタヘッド(32)に対する個々のフィルタアセンブリ(34、35)の取り付けは、ねじ込み式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007-117872号公報
【特許文献2】特開2001-323502号公報
【特許文献3】特表2010-524685号公報
【特許文献4】特開昭61-500208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1では、その図1に、エンジンに三個のフィルタが並べて設けられた状態が示されている。しかしながら個々のフィルタの着脱構造については不明である。
【0013】
特許文献2は、ブラケット(22)に固定された本体部(23a、24a)の下部に、内部にフィルタを装着したフィルタケース(23b、24b)を着脱自在に連結する構造であると明記している(文献2の段落[0017]参照)。ただしどのようにしてフィルタケース(23b、24b)を着脱するのかについては、具体的な開示がない。
【0014】
この点特許文献3によれば、フィルタヘッド(32)に対してフィルタアセンブリ(34、35)をねじ込み方式で着脱することが記載されている。
【0015】
こうして見ていくと複数個又は複数種類のフィルタを一か所に集約するところまでは知られているものの、個々のフィルタの着脱構造については特段の明示がなかったり(特許文献1、2)、ねじ込み式という繁雑な作業を強いられる構造であったりすることがわかる(特許文献3)。これではフィルタエレメントの交換作業の容易化を図るという複数のフィルタを一か所に集約させたことの目的が果たされない。
【0016】
別な問題として、特許文献1-3に記載されたフィルタの集約構造は、スペース効率が悪いという課題も有している。これらの三つの文献に記載されているのは、円筒形状のフィルタエレメントである。このため複数個のフィルタエレメントを一か所に集約させたとき、どうしてもデットスペースが増えてしまう。
【0017】
この点、例えば特許文献4に記載されたような扁平形状をした筐体状のフィルタエレメント(オイルフィルタ)を用いれば、複数のフィルタエレメントを一か所に集約させたときのデッドスペースが少なるはずである。しかしながら特許文献4に記載されているのはオイルフィルタの特定の構造に限られている。オイルの濾過を要する機械の流体経路に対して、オイルフィルタをどのように接続するのかについては、一切の記載がない。
【0018】
複数のフィルタエレメントを一か所に集約させたとき、フィルタエレメントの交換作業を容易にしたい。またスペース効率を高めたい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
フィルタエレメントの一態様は、扁平形状を有し、扁平な両面の間に流通する流体を濾過する濾材と、前記濾材の周囲を取り囲んで保持する両面が開口した矩形の枠体であり、並列配置された流体の導入側と排出側とに対面する隔壁を一片に有する扁平なエレメントフレームと、前記エレメントフレームの開口した一面を覆う第1のカバー面と、前記隔壁の長手方向の半分の領域に対面する第1のエンド面とを有し、前記第1のエンド面に流体の導入口を設けた第1のエレメントケースと、前記エレメントフレームの前記一面と反対側の面を覆う第2のカバー面と、前記隔壁の残りの半分の領域に対面する第2のエンド面とを有し、前記第2のエンド面に流体の排出口を設けた第2のエレメントケースと、前記隔壁と前記第1のエンド面との間に、前記導入口に連絡する前室を生成し、前記隔壁と前記第2のエンド面との間に、前記排出口に連絡する後室を生成し、前記前室と前記後室とを区画する区隔壁と、前記エレメントフレームの前記一面と前記第1のカバー面との間に、前記前室に連絡する流入室を生成する第1の隔壁と、前記エレメントフレームの前記反対側の面と前記第2のカバー面との間に、前記後室に連絡する流出室を生成するする第2の隔壁と、を備える。
【0020】
フィルタ装置の一態様は、固定ハウジングと、少なくとも二つの上記フィルタエレメントを隣接させ、前記導入口と前記排出口とを並列させて収納保持する収納部を有し、前記収納部に収納保持された前記フィルタエレメントが有する前記導入口と前記排出口との中心軸の方向に沿って前記固定ハウジングに移動自在に取り付けられた可動ハウジングと、前記可動ハウジングの移動によって前記導入口と前記排出口とにそれぞれ着脱されるように前記固定ハウジングに設けられ、流体の濾過を要する機械の流体経路に接続される一対の接続管と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
フィルタエレメントの交換作業の容易化を図ることができる。複数のフィルタエレメントを一か所に集約させたとき、スペース効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施の形態のフィルタ装置として、固定ハウジングに対して可動ハウジングが開放された状態を示す斜視図である。
図2】フィルタエレメントの一つである燃料プレフィルタを取り外した状態を示す斜視図である。
図3】可動ハウジングの状態遷移として、(A)は可動ハウジングが固定ハウジングに結合している使用状態、(B)は固定ハウジングから可動ハウジングが下降した離脱状態、(C)は可動ハウジングが回転した開放状態を示す側面図である。
図4】可動ハウジングの状態遷移として、(A)は可動ハウジングが固定ハウジングに結合している使用状態、(B)は固定ハウジングから可動ハウジングが下降した離脱状態、(C)は可動ハウジングが回転した開放状態を示す縦断側面図である。
図5】接続管に設けられた流出防止機構の一例として、(A)はフィルタエレメントの流路管が接続管に接続しているときの状態を、(B)は流路管が接続管から離脱したときの状態をそれぞれ示す縦断正面図である。
図6】フィルタエレメントの分解斜視図。
図7】エレメントフレームの斜視図。
図8】(A)は図7中のA矢視図、(B)は図7中のB矢視図。
図9】フィルタエレメントの斜視図。
図10】(A)は図9中、導入口の中心軸Xを含む鉛直面で断面にしたときのA矢視図、(B)は図9中、排出口の中心軸Yを含む鉛直面で断面にしたときのB矢視図。
図11】(A)は図9中、フィルタエレメントを半分に切断する仮想面Zで断面にしたときのC矢視図、(B)は図9中、仮想面Zで断面にしたときのD矢視図。
図12】第2の実施の形態のフィルタ装置として、固定ハウジングに対して可動ハウジングが開放された状態を示す斜視図である。
図13】フィルタエレメントの一つであるオイルフィルタを取り外した状態を示す斜視図である。
図14】(A)は操作レバーを時計方向に回転させて、固定ハウジングから可動ハウジングを下降させた状態、(B)は操作レバーを反時計方向に回転させて、固定ハウジングに対して可動ハウジングを上昇させた状態を示す模式図である。
図15】固定ハウジングと可動ハウジングと連結する嵌合部の分解斜視図である。
図16】嵌合部による固定ハウジングと可動ハウジングとの連結状態を示す模式図である。
図17】可動ハウジングの状態遷移として、(A)は可動ハウジングが固定ハウジングに結合している使用状態、(B)は固定ハウジングから可動ハウジングが下降した離脱状態、(C)は可動ハウジングが半開位置まで回転した半開状態、(D)は可動ハウジングが全開位置まで回転した開放状態を示す側面図である。
図18】嵌合部の別の実施の形態として、嵌合部による固定ハウジングと可動ハウジングとの連結状態を示す模式図である。
図19】可動ハウジングの状態遷移として、(A)は可動ハウジングが固定ハウジングに結合している使用状態、(B)は固定ハウジングから可動ハウジングが下降した離脱状態、(C)は可動ハウジングが半開位置まで回転した半開状態、(D)は可動ハウジングが全開位置まで回転した開放状態を示す側面図である。
図20】第3の実施の形態のフィルタ装置として、固定ハウジングに対して可動ハウジングが開放された状態を示す斜視図である。
図21】フィルタエレメントの一つであるオイルフィルタを取り外した状態を示す斜視図である。
図22】(A)は操作プレートを時計方向に回転させて、固定ハウジングから可動ハウジングを下降させた状態、(B)は操作プレートを反時計方向に回転させて、固定ハウジングに対して可動ハウジングを上昇させた状態を示す模式図である。
図23】(A)は操作プレートを時計方向に回転させる作業の様子、(B)は操作プレートを反時計方向に回転させる作業の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態を図面に基づいて説明する。説明項目はつぎの通りである。
[第1の実施の形態]
1.概要
2.フィルタ装置の構成
(1)概略構造
(2)固定ハウジング
(3)可動ハウジング
(4)フィルタエレメント
(5)収納部
(6)収納壁
(7)流出防止機構
3.フィルタエレメントの構成
(1)エレメントフレーム
(2)エレメントケース
(3)区隔壁
(4)第1の隔壁と第2の隔壁
(5)リブ
(6)まとめ
4.フィルタエレメントの製造方法
(1)インサート成形
(2)接合
5.作用効果
(1)フィルタ装置
(2)フィルタエレメント
[第2の実施の形態]
1.構成
(1)フィルタエレメントの配置位置
(2)昇降補助機構
(3)嵌合部
2.作用効果
3.嵌合部の別の実施の形態
[第3の実施の形態]
1.構成
2.作用効果
[変形例]
【0024】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態を図1ないし図11(A)(B)に基づいて説明する。
1.概要
本実施の形態は、例えば自動車やトラック、ダンプなどの車両、あるいは建設機械などに用いられるフィルタ装置11の一例である。これらの車両や建設機械には内燃機関のためのオイル循環システム及び燃料供給システムが組み込まれ、建設機械には油圧作業機のための油圧システムが組み込まれている(いずれも図示せず)。内燃機関及び油圧作業機は、流体(潤滑油、燃料、作動油)の濾過を要する機械である。上記各システムは、このような機械のための流体経路(図示せず)を備えており、フィルタ装置11は、この流体経路に接続されている。
【0025】
フィルタ装置11は、固定ハウジング101と可動ハウジング201とを組み合わせている。固定ハウジング101は、フィルタ装置11が用いられる車両や建設機械の側に設けられた設置部A(図4(A)~(C)参照)に固定的に取り付けられる。可動ハウジング201は、固定ハウジング101に可動自在に取り付けられている。
【0026】
フィルタ装置11の設置場所は、例えば車両が自動車である場合には、エンジンルーム内のいずこかであることが好適である。車両がトラックやダンプである場合はエンジンルームに限らず、例えば荷台を支持するフレーム構造体などの外部に露出した開放空間にフィルタ装置11を設置してもよい。建設機械の場合には、その種類に応じて好適な設置場所が定められる。
【0027】
2.フィルタ装置の構成
(1)概略構造
本実施の形態のフィルタ装置11の概略構造は、固定ハウジング101に対して可動ハウジング201が開き(図1参照)、内部に収納する三つのフィルタエレメント301の着脱を可能にするというものである(図2参照)。このとき可動ハウジング201は、一旦鉛直方向に下降し(図3(A)(B)、図4(A)(B)参照)、その後作業者から見て前方に回転する(図3(C)、図4(C)参照)。これによって可動ハウジング201は、図1及び図2に示すような開放状態を実現し、フィルタエレメント301の着脱を可能にする。図5(A)(B)に示すように、機械の流体経路に接続する固定ハウジング101は、フィルタエレメント301の離脱によって流体が漏れ出さぬよう、流出防止機構151を備えている。
【0028】
(2)固定ハウジング
固定ハウジング101について説明する。固定ハウジング101は、横に長い矩形形状をしたハウジングであり、背面パネル102と上面パネル103と一対の側面パネル104とによって内部空間を外部から区切っている。固定ハウジング101は下面を開放し、正面側と下面側とを外部に連絡させている。
【0029】
固定ハウジング101の背面には、両側方向に突出するように左右二個ずつの取付片105が設けられている。個々の取付片105には取付孔106が設けられている。固定ハウジング101は、取付孔106に通した図示しない締結ボルトによって、流体の濾過を必要とする機械の設置部Aに固定することができる。
【0030】
固定ハウジング101の上面パネル103には、二個で一組の接続管131が三組設けられている。これらの接続管131は、フィルタ装置11に収納される三つのフィルタエレメント301の数と配置位置とに合わせて三組用意され、いずれも軸方向を鉛直方向に向けて配置されている。
【0031】
もっとも接続管131の軸方向が鉛直方向になるかどうかは、設置部Aに対する固定ハウジング101の取付状態に依存する。設置部Aが鉛直面であり、これに合わせて固定ハウジング101も鉛直に取り付けられる場合には、接続管131も軸方向を鉛直方向に向けて配置される。固定ハウジング101の設置状態が鉛直方向に対して角度をもつ場合には、接続管131も同じ角度で傾斜することになる。
【0032】
固定ハウジング101は、例えば金属などの硬質な材料によって製造されている。
【0033】
(3)可動ハウジング
可動ハウジング201について説明する。可動ハウジング201は、正面パネル202と一対の側面パネル203と底面パネル204(図4(A)~(C)参照)とによって内部空間を外部空間から区切っている。可動ハウジング201は上面を開放し、背面側と上面側とを外部に連絡させ、フィルタエレメント301のための収納部205を内部に形成している。収納部205は、矩形形状をした三つのフィルタエレメント301を隣接させた状態で収納して保持する。
【0034】
固定ハウジング101と可動ハウジング201とは、固定ハウジング101の側面パネルに水平に突出させた片側二つずつのピン107と、可動ハウジング201の側面パネル203に設けた片側二つずつの案内孔206とがなす嵌合部Eによって連結されている。前述した可動ハウジング201の鉛直方向への下降とその後の回転という動作は、嵌合部Eによって実現される。
【0035】
つまり可動ハウジング201の可動域は、可動ハウジング201の移動方向と直交する方向に嵌り合うように固定ハウジング101と可動ハウジング201とに設けられたピン107(凸部)と案内孔206(凹部)とからなる嵌合部Eによって規定されている。嵌合部Eは、ピン107と案内孔206とを直線経路上で変位させる直線案内部E1と、直線案内部E1よりも上方に配置され、可動ハウジング201の回転運動を案内するようにピン107と案内孔206とを屈曲経路上で変位させる回転案内部E2とを有している。
【0036】
より詳しくは、嵌合部Eは、ピン107と案内孔206とを上下二か所に分散させており、操作者から見て、奥側には下方に位置するピン107L及び案内孔206Lを、手前側には上方に位置するピン107U及び案内孔206Uを位置づけている。奥側に位置する案内孔206Lも、手前側に位置する案内孔206Uも、上下方向に長い直線経路を有している(直線案内部E1)。手前側に位置する案内孔206Uは、直線経路の上部に屈曲経路を連絡させている(回転案内部E2)。この屈曲経路は、下側に位置する案内孔206Lの上端にピン107Lが位置するとき(図3(B)(C)参照)、ピン107Lを中心として描かれる弧上に位置付けられている。
【0037】
可動ハウジング201は、側面パネル203の上端部分から一対の固定片207を水平に突出させている。固定ハウジング101の上面パネル103にはボルト孔108が、そして可動ハウジング201の固定片207にはボルトねじ孔208が位置を合わせて設けられ、これらの上面パネル103と固定片207とが締結ボルトBの締め付けによって固定されている。これによって可動ハウジング201は、固定ハウジング101に対して、上下方向から締結ボルトBで固定されている。
【0038】
可動ハウジング201は、例えば金属などの硬質な材料によって製造されている。
【0039】
(4)フィルタエレメント
収納部205に収納される三つのフィルタエレメント301のうち、一つは燃料プレフィルタエレメント301A、別の一つは燃料メインフィルタエレメント301B、さらに別の一つはオイルフィルタエレメント301Cである。これらの三つのフィルタエレメント301はいずれも矩形形状をしており、上面に二個一組の流路管331を有している。二個一組の流路管331は互いに平行に配置され、固定ハウジング101に設けられている接続管131に嵌り合って接続される。
【0040】
個々のフィルタエレメント301に設けられている流路管331のうち一つは流体の導入口331I、別の一つは流体の排出口331Oである(図6図9参照)。そこで固定ハウジング101の接続管131のうち、導入口となる流路管331に接続する接続管131は濾過対象となる流体を流通させる流体流路をなす配管(図示せず)に接続され、排出口となる流路管331に接続する接続管131は濾過後の流体を流通させる流体経路をなす配管(図示せず)に接続される。
【0041】
フィルタエレメント301のケース311及び流路管331は、例えば樹脂を材料として製造されている。
【0042】
(5)収納部
図4(A)~(C)に示すように、可動ハウジング201の収納部205は、流路管331(導入口331I、排出口331O)の中心軸X、Y(図9参照)が鉛直方向を向くようにして、フィルタエレメント301を着脱自在に収納して保持する。中心軸Xは、導入口331Iの中心軸であり、中心軸Yは、排出口331Oの中心軸である。
【0043】
その結果個々のフィルタエレメント301は、接続管131の軸心と流路管331の中心軸X、Yとが一致するように、つまり接続管131と流路管331とが同一の垂直線上に位置付けられるように配置される。このとき可動ハウジング201は、鉛直方向に昇降するので(図4(A)(B)参照)、収納部205に収納保持したフィルタエレメント301が有する流路管331の中心軸X、Yの方向に沿って移動自在である。このため固定ハウジング101に対するフィルタエレメント301の着脱操作に際し、可動ハウジング201を鉛直方向に下降させると、流路管331は接続管131から離脱し、接続管131から抜き取られる(図4(B)参照)。反対に可動ハウジング201を鉛直方向に上昇させると、流路管331は接続管131に接続される(図4(A)参照)。
【0044】
可動ハウジング201の収納部205は、三つのフィルタエレメント301を幅方向に隣接させて収納する。このとき三つのフィルタエレメント301は、それぞれが有している一対の流路管331同士を並列させて収納部205に収納保持される。
【0045】
(6)収納壁
固定ハウジング101と可動ハウジング201の収納部205とは、フィルタエレメントの両面に対面する収納壁102W、202Wを備えている。収納壁102Wは、固定ハウジング101の背面パネル102の内面側に設けられた平坦な壁面である。収納壁202Wは、可動ハウジング201の正面パネル202の内面側に設けられた平坦な壁面である。
【0046】
収納壁102W、202Wは、固定ハウジング101に対して可動ハウジング201が閉じられ、固定ハウジング101と可動ハウジング201の収納部205との間にフィルタエレメント301が収納されたとき、フィルタエレメント301の両面をなすケース311の平坦面311Sに対して、所定のクリアランスCを空けて対面する。
【0047】
所定のクリアランスCは、内部圧力の上昇によってフィルタエレメント301のケース311が膨らもうとするとき、ある程度までの膨らみは許容しつつ、その程度を越えた膨らみを規制し得るように設定されている。固定ハウジング101及び可動ハウジング201は、金属などの硬質な材料によって製造されているので、収納壁102W、202Wは剛性に富み、ケース311の膨らみを規制し得る。
【0048】
一例として、クリアランスCは、0.5~1.5mm程度である。
【0049】
(7)流出防止機構
図5(A)(B)に示すように、固定ハウジング101側の接続管131は、可動ハウジング201側の流路管331との接続部分を二重管構造としており、流路管331の挿入を許容する挿入空間132を形成している。流路管331は挿入空間132に挿入されることで、接続管131に接続される。このとき流路管331は内周面にOリング332を設けており、接続している接続管131との間を密封して流体の漏れを防止する。
【0050】
接続管131から流路管331が抜き取られると、流体経路内の流体が接続管131から漏れ出してしまう。本実施の形態のフィルタ装置11は、このような流体の漏れ出しを防止するために、接続管131に流出防止機構151を内蔵させている。
【0051】
接続管131は、二重構造をなす挿入空間132の裏面側をテーパー面133としている。テーパー面133は、流体の流出方向である接続管131の開口端134に向かうほど先細りになるテーパー形状を有している。そしてテーパー面133にはボールバルブ152(バルブ)が設けられている。このボールバルブ152は接続管131の開口端134の内径よりも大きな外径を有しており、コイルスプリング153(付勢部)によって開口端134を塞ぐ方向に付勢されている。
【0052】
流路管331は、その開口端333に押上ピン334を有している。接続管131に流路管331が接続したとき(図5(A)参照)、押上ピン334がボールバルブ152を押し上げ、接続管131の開口端134を開放する。接続管131から流路管331が離脱して抜き取られると(図5(B)参照)、押上ピン334によるボールバルブ152の押上状態が解除され、コイルスプリング153の付勢力によってテーパー面133に押し付けられたボールバルブ152が接続管131の開口端134を塞ぎ、接続管131からの流体の漏れ出しを防止する。
【0053】
流出防止機構151は、例えば金属などの硬質な材料によって製造されている。
【0054】
3.フィルタエレメントの構成
図6に示すように、フィルタエレメント301のケース311は、エレメントフレーム312の両面に、一対のエレメントケース313を接合させて構成されている。説明の便宜上、一対のエレメントケース313の一方を第1のエレメントケース313A、もう一方を第2のエレメントケース313Bと呼ぶ。図6に示すようにエレメントフレーム312を横に寝かせた状態のとき、第1のエレメントケース313Aは、上方からエレメントフレーム312に接合し、第2のエレメントケース313Bは、下方からエレメントフレーム312に接合する。
【0055】
(1)エレメントフレーム
エレメントフレーム312には、濾材302が収納されている。濾材302は、矩形の扁平形状を有しており、扁平な両面の間に流通する流体を濾過する。例えば図6に示されている状態を例に挙げて説明すると、濾材302は、上面側から流体を導入し、導入した流体を図示しない下面側に流通させる過程で濾過を行なう。
【0056】
図7に示すように、エレメントフレーム312は、周囲を取り囲んで濾材302を保持する両面が開口した矩形の枠体312aである。説明の便宜上、エレメントフレーム312が有する二面の開口面314のうち、図7中の上方に位置する一面を第1の開口面314A、第1の開口面314Aと反対側の面を第2の開口面314Bと呼ぶ。
【0057】
フィルタエレメント301が有する一対の流路管331は、一方が導入口331I、もう一方が排出口331Oになっており、前述したように、互いに並べてられて平行に配置されている。エレメントフレーム312は、矩形の枠体312aを構成する四片の部材のうち、並列配置された流体の導入側(導入口331I)と排出側(排出口331O)とに対面する一片を隔壁315としており、この隔壁315と反対側で対面する別の一片を後隔壁316としている。
【0058】
(2)エレメントケース
図6に示すように、第1のエレメントケース313Aは、エレメントフレーム312の第1の開口面314Aを覆う第1のカバー面317Aと、この第1のカバー面317Aと直角をなす一対の第1のエンド面318Aとを備えている。第1のカバー面317Aの外表面は、ケース311の平坦面311Sとなる。
【0059】
図6中、手前側に位置する一対のうちの一方の第1のエンド面318Aは、隔壁315の長手方向の半分の領域に対面し、外方に突出するように導入口331Iを設けている。導入口331Iをなす流路管331は、第1のエンド面318Aを貫通している。
【0060】
図6中、奥側に位置する一対のうちのもう一方の第1のエンド面318A(図6には示せず、図10(A)参照)は、後隔壁316の長手方向の半分の領域に対面している。
【0061】
第2のエレメントケース313Bは、エレメントフレーム312の第2の開口面314Bを覆う第2のカバー面317Bと、この第2のカバー面317Bと直角をなす一対の第2のエンド面318Bとを備えている。第2のカバー面317Bの外表面は、ケース311の平坦面311Sとなる。
【0062】
図6中、手前側に位置する一対のうちの一方の第2のエンド面318Bは、隔壁315の長手方向の残りの半分の領域に対面し、外方に突出するように排出口331Oを設けている。排出口331Oをなす流路管331は、第2のエンド面318Bを貫通している。
【0063】
図6中、奥側に位置する一対のうちのもう一方の第2のエンド面318Bは、後隔壁316の長手方向の残りの半分の領域に対面している。
【0064】
(3)区隔壁
図6ないし図8(A)(B)に示すように、エレメントフレーム312の隔壁315及び後隔壁316には、区隔壁319が設けられている。区隔壁319は、隔壁315及び後隔壁316から外方、つまり開口面314とは反対側に突出するリブR1によって成形されている。説明の便宜上、隔壁315に設けられている方を区隔壁319F、後隔壁316に設けられている方を区隔壁319Rと呼ぶ。
【0065】
区隔壁319Fは、流路管331の側に前室320と後室321とを生成する。前室320は、エレメントフレーム312の隔壁315と、第1のエレメントケース313Aの第1のエンド面318Aとの間に生成される空間であり、導入口331Iから導入された流体を受け入れる(図10(A)参照)。後室321は、エレメントフレーム312の隔壁315と、第2のエレメントケース313Bの第2のエンド面318Bとの間に生成される空間であり、排出口331Oから排出される直前の流体を受け入れる(図10(B)参照)。区隔壁319Fは、前室320と後室321とを、スロープS1の形態をしたリブR1によって区画する。
【0066】
区隔壁319Rは、流入室322につながった隙間ISと、流出室323につながった隙間ISとを、スロープS1の形態をしたリブR1によって区画する。図10(A)、11(A)(B)に示すように、流入室322は、前室320から流れ込んだ流体を濾材302に導入する流体の導入空間である。図10(B)、11(A)(B)に示すように、流出室323は、濾材302を通り抜けて濾過された流体を後室321に導く流体の排出空間である。
【0067】
(4)第1の隔壁と第2の隔壁
ケース311は、流入室322を生成する第1の隔壁324と、流出室323を生成する第2の隔壁325とを備えている。第1の隔壁324と第2の隔壁325とは、区隔壁319と一体にエレメントフレーム312に成形されている。
【0068】
図6ないし図8(A)(B)に示すように、第1の隔壁324は、二つの区隔壁319F、319Rをつなぐようにして、エレメントフレーム312の一方の側部に回り込んでいる。第2の隔壁325は、二つの区隔壁319F、319Rをつなぐようにして、エレメントフレーム312の反対側の側部に回り込んでいる。図6中、第1の隔壁324がつながっているのは、二つの区隔壁319F、319Rの上端である。第2の隔壁325がつながっているのは、二つの区隔壁319F、319Rの下端である。第1の隔壁324と第2の隔壁325とは、エレメントフレーム312に一体に成形されている。
【0069】
図8(A)(B)に示すように、エレメントフレーム312の第1の開口面314Aの側で、第1の隔壁324は、エレメントフレーム312の端部の位置を濾材302の収納位置よりも長さL1だけかさ上げしている。このためエレメントフレーム312と第1のエレメントケース313Aとの間に第1の隔壁324が介在したとき、流入室322に連絡する部分では、エレメントフレーム312と第1のカバー面317Aとの間に、長さL1の幅をもった流体流路が発生する。
【0070】
図8(A)(B)に示すように、エレメントフレーム312の第2の開口面314Bの側で、第2の隔壁325は、エレメントフレーム312の端部の位置を濾材302の収納位置よりも長さL2だけかさ上げしている。このためエレメントフレーム312と第2のエレメントケース313Bとの間に第2の隔壁325が介在したとき、流出室323に連絡する部分では、エレメントフレーム312と第2のカバー面317Bとの間に、長さL2の幅をもった流体流路が発生する。
【0071】
(5)リブ
図6ないし図8(A)(B)に示すように、区隔壁319(319F、319R)から連続するように、第1の隔壁324及び第2の隔壁325にも、エレメントフレーム312から外方に突出するリブR1が端部に設けられている。区隔壁319と第1の隔壁324と第2の隔壁325とは、エンドレス形状のリブR1によって一体に成形されている。
【0072】
図6に示すように、第1のエレメントケース313Aは、一対の第1のエンド面318A同士をサイド面326Aでつないだ半筐体形状を有しており、第1の開口面314Aの側から、エレメントフレーム312と嵌め合いをなす。一対の第1のエンド面318Aとサイド面326Aとには、エレメントフレーム312に設けられたリブR1に接合するリブR2が設けられている。エレメントフレーム312と嵌め合いをなす関係上、第1のエレメントケース313Aの一対の第1のエンド面318A及びリブR2の一部には、エレメントフレーム312の区隔壁319F、319Rが有するスロープS1に沿うスロープS2の形態が与えられている。
【0073】
第1のエレメントケース313Aは、リブR1に対する第1のカバー面317A及びリブR2の接合によって、エレメントフレーム312に固定される。このときリブR1と第1のエレメントケース313A(第1のカバー面317A及びリブR2)とは、エレメントフレーム312の扁平形状に沿った仮想的な扁平面と平行な接合面同士の接合によって固定される。
【0074】
図6に示すように、第2のエレメントケース313Bは、一対の第2のエンド面318B同士をサイド面326Bでつないだ半筐体形状を有しており、第2の開口面314Bの側から、エレメントフレーム312と嵌め合いをなす。一対の第2のエンド面318Bとサイド面326Bとには、エレメントフレーム312に設けられたリブR1に接合するリブR2が設けられている。エレメントフレーム312と嵌め合いをなす関係上、第2のエレメントケース313Bの一対の第2のエンド面318B及びリブR2の一部には、エレメントフレーム312の区隔壁319F、319Rが有するスロープS1に沿うスロープS2の形態が与えられている。
【0075】
第2のエレメントケース313Bは、リブR1に対する第2のカバー面317B及びリブR2の接合によって、エレメントフレーム312に固定される。このときリブR1と第2のエレメントケース313B(第2のカバー面317B及びリブR2)とは、エレメントフレーム312の扁平形状に沿った仮想的な扁平面と平行な接合面同士の接合によって固定される。
【0076】
図6中、ハッチングで示す箇所は、エレメントフレーム312と一対のエレメントケース313(313A、313B)との間の接合面である。図6からも明らかなように、エレメントフレーム312と一対のエレメントケース313(313A、313B)とは、互いに嵌め込まれる面同士が接触せず、所定の隙間ISを空けて対向配置される(図10(A)(B)、図11(A)(B)参照)。
【0077】
図9に示すように、エレメントフレーム312に対して、第1の開口面314Aの側から第1のエレメントケース313Aが接合し、第2の開口面314Bの側から第2のエレメントケース313Bが接合し、ケース311が構成されている。図9中、符号Xは、導入口331Iの中心軸である。符号Yは、排出口331Oの中心軸である。
【0078】
(6)まとめ
図10(A)は、図9中、導入口331Iの中心軸Xを含む鉛直面で断面にしたときのA矢視図、(B)は、図9中、排出口331Oの中心軸Yを含む鉛直面で断面にしたときのB矢視図である。Oリング332や押上ピン334などの流出防止機構は省略して示している。
【0079】
図10(A)(B)を参照すると、濾材302の収納領域に、流入室322と流出室323とが設けられているのがわかる。
【0080】
図10(A)には、第1のエレメントケース313Aの第1のカバー面317Aと隔壁315との間に、長さL1(図8(A)(B)参照)の幅をもった流体流路が設けられ、前室320と流入室322とが連絡している様子が示されている。また第1のエレメントケース313Aの第1のエンド面318Aと後隔壁316との間には隙間ISが生じており、第1のカバー面317Aと後隔壁316との間は非接触状態で、隙間ISと流入室322との間で流体の流通が可能であることを見てとることができる。
【0081】
図10(B)には、第2のエレメントケース313Bの第2のカバー面317Bと隔壁315との間に、長さL2(図8(A)(B)参照)の幅をもった流体流路が設けられ、後室321と流出室323とが連絡している様子が示されている。また第2のエレメントケース313Bの第2のエンド面318Bと後隔壁316との間には隙間ISが生じており、第2のカバー面317Bと後隔壁316との間も非接触状態で、隙間ISと流出室323との間で流体の流通が可能であることを見てとることができる。
【0082】
図11(A)は、図9中、フィルタエレメント301を半分に切断する仮想面Zで断面にしたときのC矢視図、(B)は、図9中、仮想面Zで断面にしたときのD矢視図である。
【0083】
図11(A)(B)を参照すると、濾材302の収納領域に、流入室322と流出室323とが設けられているのがわかる。また第1のエレメントケース313Aのサイド面326Aとエレメントフレーム312の枠体312aとの間、第2のエレメントケース313Bのサイド面326Bとエレメントフレーム312の枠体312aとの間に、隙間ISが設けられていることを見てとることができる。
【0084】
図11(B)には、前室320と流入室322とが流体流路を介して連絡し、流出室323と後室321とが流体流路を介して連絡している様子が示されている。
【0085】
以上のように構成されたフィルタエレメント301は、導入口331I、前室320、流入室322、濾材302、流出室323、後室321、そして排出口331Oという流体流路を構成する。
【0086】
4.フィルタエレメントの製造方法
フィルタエレメント301は、濾材302を組み込んだエレメントフレーム312と、一対のエレメントケース313(313A、313B)とを予め生成しておき、エレメントフレーム312に対して、一対のエレメントケース313(313A、313B)を接合させることによって製造される。
【0087】
(1)インサート成形
濾材302を組み込んだエレメントフレーム312は、例えばインサート成形によって製造することができる。
【0088】
エレメントフレーム312の材料としては、溶融温度が200~300℃程度の樹脂を用いる。そこで濾材302をインサートした金型(図示せず)を50~100℃程度に温めておき、金型内に溶融した樹脂を射出することによって、濾材302がインサートされたエレメントフレーム312が生成される。
【0089】
(2)接合
エレメントフレーム312と一対のエレメントケース313(313A、313B)との接合は、例えば熱溶着によって実行する。熱溶着は、一例として、振動溶着による。
【0090】
二つの部材、本実施の形態ではエレメントフレーム312とエレメントケース313とを加圧接触させた状態で単一方向の振動を与えると、接触部分に摩擦熱が発生して溶融する。これによってエレメントフレーム312とエレメントケース313とを接合することが可能である。
【0091】
ただし冷えた状態のまま溶融対象物に振動を加えると、バリが発生してしまい、発生したバリが内部空間に残ってしまう可能性がある。そこで本実施の形態では、溶融対象物であるエレメントフレーム312とエレメントケース313とを予め加熱しておき、その後に振動を与える方式で熱溶着を行なう。
【0092】
5.作用効果
(1)フィルタ装置
このような構成において、フィルタエレメント301を交換するに際しては、締結ボルトBを弛めて、固定ハウジング101に対する可動ハウジング201の結合状態を解除する。
【0093】
すると可動ハウジング201は、作業者の引っ張りおろすような操作によって垂直に下降する。この際、可動ハウジング201側の案内孔206は、固定ハウジング101側のピン107を直線案内部E1に案内する(図3(A)(B)参照)。可動ハウジング201が下降する過程で、固定ハウジング101側の接続管131からフィルタエレメント301の流路管331が離脱する(図4(B)参照)。
【0094】
フィルタエレメント301は、固定ハウジング101側の接続管131から流路管331が離脱したために、熱膨張によって高まっている内部の圧力を急激に大気中に放出することがある。本実施の形態では、可動ハウジング201が最下位置まで下降したとき、固定ハウジング101の上面パネル103と可動ハウジング201の正面パネル202との間に隙間Gが生ずるものの、この隙間Gはさほど大きくはない(図3(B)参照)。このため後述する流出防止機構151による接続管131からの流体の漏れ出し防止作用とも相俟って、各所から流体が飛び散るような事態を防止することができる。
【0095】
その後可動ハウジング201を手前側に回転させる。このとき可動ハウジング201の上側の案内孔206Uは、固定ハウジング101側の上側のピン107Uを回転案内部E2に案内するので、可動ハウジング201は下側のピン107Lを中心に回転する。これによって固定ハウジング101との間にフィルタエレメント301の着脱を許容する空間が生成され(図1図2図3(C)、図4(C)参照)、フィルタエレメント301の着脱が可能になる。
【0096】
フィルタエレメント301の交換後は、可動ハウジング201を起立させるように回転させ、上方に押し上げて締結ボルトBで固定ハウジング101に結合する。すると固定ハウジング101側の接続管131にフィルタエレメント301の流路管331が接続される。こうして作業者は、三種類のフィルタエレメント301のうち、所望のフィルタエレメント301の交換作業を行なうことができる。
【0097】
以上説明したように、本実施の形態によれば、締結ボルトBを弛めて固定ハウジング101に対する結合を解除した可動ハウジング201を下降させて回転させるだけで、一か所に集約させた任意のフィルタエレメント301を容易に交換することができる。
【0098】
この際、固定ハウジング101側の接続管131はフィルタエレメント301の流路管331よりも上方に位置するため、可動ハウジング201の下降によって接続管131から流路管331を容易に抜き取ることができる。
【0099】
しかも固定ハウジング101に対して可動ハウジング201は鉛直方向に移動することから、接続管131から離脱する際の流路管331に無理な力がかからない。これを別な面から見ると、過度の注意力や特段の努力を強いることなく、接続管131から流路管331を無理なく抜き取ることが可能である。
【0100】
また接続管131から流路管331が離脱した際、流出防止機構151によって接続管131からの流体の漏れ出しを防止することができる。このため漏れ出す流体をせき止める作業を要することなくフィルタエレメント301の交換作業を行なうことができ、作業性の一層の向上を図ることができる。
【0101】
(2)フィルタエレメント
フィルタ装置11の一方の接続管131から燃料やオイルなどの流体が流れてくると、流体は、導入口331Iから前室320を通って流入室322に導入される。流入室322に導入された流体は濾材302を通過し、濾過されて流出室323に流れ込み、後室321を通って排出口331Oから排出される。排出された濾過済みの流体は、フィルタ装置11のもう一方の接続管131に戻される。
【0102】
このような流体の流路中、前室320と流入室322との間では、流体は、スロープS1、S2を通って流入室322や隙間ISに流れ込む。隙間ISに入り込んだ流体も、スロープS1、S2を通って流入室322に流される。このため濾材302の一面により均一に流体が回りやすくなり、濾材302のライフや濾過効率の向上を図ることができる。また流出室323に流れ出た濾過後の流体も、スロープS1、S2を通って後室321に排出されるため、濾過後の流体を円滑に後室321に排出することが可能である。
【0103】
本実施の形態のフィルタエレメント301は、矩形の扁平形状を有しているため、複数個を並列させたとき、スペース効率に優れ、フィルタ装置11の小型化に貢献する。また濾材302も矩形の扁平筐体をしていることから、ケース311に収納したときのデッドスペースが減少し、この面からもスペース効率の向上が図られる。
【0104】
本実施の形態では、エレメントフレーム312のリブR1と、第1のエレメントケース313A(第1のカバー面317AとリブR2)及び第2のエレメントケース313B(第2のカバー面317BとリブR2)とは、エレメントフレーム312の扁平形状に沿った仮想的な扁平面と平行な接合面同士の接合によって固定されている。このためエレメントフレーム312に対する一対のエレメントケース313(313A、313B)同士の接合作業が容易であり、フィルタエレメント301の製造の容易化が図られる。
【0105】
またエレメントフレーム312の枠体312aと第1のエレメントケース313A及び第2のエレメントケース313Bとは、隙間ISを空けて配置されている。このためエレメントフレーム312に対して、一対のエレメントケース313(313A、313B)を熱溶着によって接合することができ、この面からもフィルタエレメント301の製造の容易化を図ることができる。
【0106】
燃料フィルタ及びオイルフィルタにかかる内圧は、1.5MPa程度の高圧になる場合がある。このため本実施の形態のようにフィルタエレメント301を扁平な矩形形状に構成すると、内圧によって、ケース311に破裂などの破損が発生することが懸念される。
【0107】
この点本実施の形態では、フィルタエレメント301を扁平な矩形形状としながらも、フィルタ装置11に収納した状態で、剛性のある金属製の収納壁102W、202Wによってフィルタエレメント301のケース311の両面を覆うようにしている。これによって濾過流体の熱膨張による内圧の高まりとともに膨れ上がるケース311の無制限な拡張に歯止めをかけ、フィルタエレメント301を破損から護ることができる。
【0108】
このときフィルタ装置11の収納部205に設けた収納壁102W、202Wを平坦な形状にし、0.5~1.5mmという適度なクリアランスCをもってフィルタエレメント301を配置するようにしている(図4(A)~(C)参照)。0.5mmというクリアランスCの下限値の技術的意義は、ケース311を構成する樹脂材料に熱膨張による寸法変化を許容し、樹脂部品にストレスを発生させないことにある。1.5mmというクリアランスCの上限値の技術的意義は、内部圧力によるケース311を構成する樹脂部品の膨らみを一定範囲に制限し、変形破壊を防ぐことにある。
【0109】
こうして本実施の形態によれば、フィルタ装置11の収納部205に設けた収納壁102W、202Wとフィルタエレメント301との間に所定のクリアランスCを設定したことにより、フィルタエレメント301を破裂などの破損から保護することができる。
【0110】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態を図12ないし図17(A)~(D)、図18ないし図19(A)~(D)に基づいて説明する。第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0111】
1.構成
本実施の形態が第1の実施の形態と相違するのは、細部の形態の他に、主につぎの三点である。
(1)フィルタエレメントの配置位置
(2)昇降補助機構
(3)嵌合部
【0112】
(1)フィルタエレメントの配置位置
第1の実施の形態では、フィルタ装置11を正面側から見たとき、可動ハウジング201の収納部205は、左から順に、燃料プレフィルタエレメント301A、燃料メインフィルタエレメント301B、そしてオイルフィルタエレメント301Cを収納する。
【0113】
図12及び図13に示すように、本実施の形態の収納部205は、右から順に、燃料プレフィルタエレメント301A、燃料メインフィルタエレメント301B、そしてオイルフィルタエレメント301Cを収納するように構成されている。
【0114】
可動ハウジング201の収納部205は、収納するフィルタエレメント301の種類、順番、数を適宜設定することが可能である。
【0115】
固定ハウジング101の上面パネル103に設けられている一対の接続管131は、収納部205に収納するフィルタエレメント301が有する一対の流路管331に合わせて大きさや配置間隔を適宜設定している。
【0116】
(2)昇降補助機構
本実施の形態のフィルタ装置11は、可動ハウジング201の昇降作業を支援するための昇降補助機構LMを備えている。
【0117】
図12ないし図14(A)(B)に示すように、昇降補助機構LMは、可動ハウジング201の正面側に昇降プレート251を備えている。昇降プレート251は、上下方向に移動自在に取付られ、上端にフック252を有している。固定ハウジング101には、フック252を引っ掛けることができるキャッチャ171が設けられている。昇降補助機構LMは、フック252をキャッチャ171に引っ掛けた状態で昇降プレート251を上下に移動させることで、可動ハウジング201を昇降させる。以下、詳しく説明する。
【0118】
可動ハウジング201の正面パネル202には、昇降プレート251を保持するプレートホルダ253が固定されている。プレートホルダ253は、鉛直方向上の上昇位置UPと下降位置LPとの間で、昇降プレート251を正面パネル202に沿って移動自在に保持する。図14(A)に示すように、上昇位置UPは、昇降プレート251が上昇した位置である。図14(B)に示すように、下降位置LPは、昇降プレート251が下降した位置である。
【0119】
昇降プレート251は、上昇位置UPに位置するとき、プレートホルダ253から上端部分を突出させ(図14(A)参照)、下降位置LPに位置するとき、昇降プレート251からの突出量を減少させる(図14(B)参照)。こうして突出量を変化させる昇降プレート251の突出部分には、フック252が設けられている。フック252は、昇降プレート251から直角に屈曲し、固定ハウジング101の方向に向けて延びている。
【0120】
図12ないし図14(A)(B)に示すように、プレートホルダ253には、運動方向変換部DCも設けられている。運動方向変換部DCは、操作部としての操作レバー261を回転させることで、回転運動を直線運動に変換して昇降プレート251を昇降させる。
【0121】
運動方向変換部DCの主体をなす操作レバー261は、可動ハウジング201の正面パネル202とプレートホルダ253との間に、固定ピン262によって回転自在に取り付けられている。運動方向変換部DCは、昇降プレート251と操作レバー261とが連結されることによって構成されている。より詳しくは、昇降プレート251の下端には、水平方向に長い長孔254が設けられ、操作レバー261には、その回転中心となる固定ピン262の近傍に連結ピン263が設けられている。長孔254に連結ピン263がはめ込まれることで、昇降プレート251と操作レバー261とが連結されている。
【0122】
図14(A)に示すように、操作レバー261が水平に倒されているとき、連結ピン263は固定ピン262の上方に位置する。これによって昇降プレート251は上方に押し上げられ、上昇位置UPに位置づけられる。
【0123】
図14(B)に示すように、操作レバー261が垂直に起こされているとき、連結ピン263は固定ピン262の下方に位置する。これによって昇降プレート251は下方に引き込まれ、下降位置LPに位置づけられる。
【0124】
水平位置と垂直位置との間で操作レバー261が回転するに際して、連結ピン263の移動軌跡は弧状になる。より詳しくは、図14(A)に示す水平位置及び図14(B)に示す垂直位置に操作レバー261が位置するとき、連結ピン263は、図14(A)(B)中、最も右側に位置づけられる。これに対して水平位置から垂直位置に、垂直位置から水平位置に操作レバー261が回転すると、回転中心(固定ピン262)からのオフセットの影響で、連結ピン263は、図14(A)(B)中、徐々に左側に移動し、再び右側に戻るという軌跡をたどる。昇降プレート251に水平方向に長い長孔254は、このような連結ピン263の弧状の軌跡をたどる移動を許容し、昇降プレート251が鉛直方向に移動することを保証する。
【0125】
本実施の形態の操作レバー261は、操作側の端部にハンドル264を設けている。ハンドル264は、可動ハウジング201の正面パネル202と直交する方向に屈曲した形状を有している。
【0126】
図12ないし図14(A)(B)に示すように、固定ハウジング101には、昇降プレート251のフック252を引っ掛けるためのキャッチャ171が設けられている。キャッチャ171は、固定ハウジング101の上面パネル103の正面端面に設けられ、窪み形状を有している。可動ハウジング201の回転によってフック252が抜き差しされるように、キャッチャ171は、遊びをもってフック252を受け入れている。
【0127】
キャッチャ171にフック252を引っ掛けた昇降プレート251は、下降位置LPでは可動ハウジング201を上昇させ、接続管131に流路管331を接続させる。上昇位置UPでは可動ハウジング201を下降させ、接続管131から流路管331を離脱させる。こうして昇降補助機構LMが構成される。
【0128】
昇降補助機構LMを構成する各部は、例えば金属を材料として製造される。例えば昇降プレート251、プレートホルダ253、及び操作レバー261に金属製の板金を用いれば、昇降プレート251のフック252や操作レバー261のハンドル264等をプレス加工によって容易に製造することができる。
【0129】
(3)嵌合部
図15ないし図17(A)~(D)に示すように、本実施の形態の嵌合部Eは、凸部であるピン107(107L、107U)と凹部である案内孔206(206L、206U)とが第1の実施の形態と反対の関係にある。つまり固定ハウジング101の側面パネル104に案内孔206(206L、206U)が設けられ、可動ハウジング201の側面パネル203にピン107(107L、107U)が設けられている。
【0130】
本実施の形態の案内孔206(206L、206U)は、固定ハウジング101の側面パネル104を貫通しない溝状に形成されている。もちろん案内孔206(206L、206U)は、貫通孔の形態で設けられていてもよい。
【0131】
本実施の形態のピン107(107L、107U)は、可動ハウジング201の側面パネル203に設けられたピンねじ孔203aに外側からねじ込まれ、側面パネル203の内側に突出している。
【0132】
本実施の形態の嵌合部Eが第1の実施の形態と相違する点がもう一つある。可動ハウジング201の回転を案内する上側の案内孔206Uに設けられた回転案内部E2に、第1の段差211と第2の段差212とが設けられている点である。
【0133】
第1の段差211は、最下位置まで下降した可動ハウジング201の回転を規制するように、回転案内部E2内でのピン107Uの移動を規制する。このとき一例として、第1の段差211は、最下位置まで下降した可動ハウジング201が回転方向に微動しないように、遊びなくピン107Uの移動を規制する。
【0134】
もっとも実施に際しては、第1の段差211は、若干の回転を許容するようにピン107Uの移動を規制するように構成されていてもよい。
【0135】
第2の段差212は、回転途中の可動ハウジング201の回転を規制するように、回転案内部E2内でのピン107Uの移動を規制する。
【0136】
このとき第2の段差212は、回転案内部E2内に複数設けられ、回転途中の可動ハウジング201の回転を二度以上規制するように構成されていてもよい。
【0137】
2.作用効果
このような構成において、フィルタエレメント301を交換するに際しては、締結ボルトBを弛めて、固定ハウジング101に対する可動ハウジング201の結合状態を解除する。
【0138】
このとき昇降補助機構LMは、図14(B)に示されているように、操作レバー261を垂直に起立した状態にある。このため昇降プレート251のフック252が固定ハウジング101側のキャッチャ171に差し込まれ、下降位置LPに位置する昇降プレート251によって、可動ハウジング201の下降動作が規制されている。
【0139】
そこで図14(A)に示すように、操作レバー261のハンドル264を掴み、垂直に起立している操作レバー261を時計方向に回転させる。すると昇降プレート251が上昇位置UPに向けて移動し、フック252がキャッチャ171内の天井面を押すことで、可動ハウジング201が下降する。この際、固定ハウジング101側の案内孔206は、可動ハウジング201側のピン107を直線案内部E1に案内し、可動ハウジング201を鉛直方向に下降させる(図17(A)(B)参照)。可動ハウジング201が下降する過程で、固定ハウジング101側の接続管131からフィルタエレメント301の流路管331が離脱する(第1の実施の形態の図4(B)参照)。
【0140】
フィルタエレメント301は、固定ハウジング101側の接続管131から流路管331が離脱したために、熱膨張によって高まっている内部の圧力を急激に大気中に放出することがある。
【0141】
本実施の形態では、可動ハウジング201が最下位置まで下降したとき、固定ハウジング101の上面パネル103と可動ハウジング201の正面パネル202との間に隙間Gが生ずるものの、この隙間Gはさほど大きくはない(図14(B)参照)。このため流出防止機構151による接続管131からの流体の漏れ出し防止作用とも相俟って、各所から流体が飛び散るような事態を防止することができる。
【0142】
フィルタエレメント301は、熱膨張による内圧の高まりによって、膨らもうとする。とりわけ本実施の形態のように、ケース311が平べったい矩形形状をしたフィルタエレメント301の場合、膨らもうとする現象は、面積の広い正面側と背面側の部分に顕著に現れる。このようなフィルタエレメント301の膨らみは、締結ボルトBによって結合され、互いに閉じられた固定ハウジング101と可動ハウジング201との内部では、両ハウジング101、201の剛性によって抑制されている。ところが固定ハウジング101側の接続管131から流路管331が離脱し、可動ハウジング201とともに下降したフィルタエレメント301は、可動ハウジング201を開く方向に回転させようとする。
【0143】
本実施の形態では、可動ハウジング201が最下位置まで下降したとき、回転案内部E2内に設けられた第1の段差211がピン107Uの移動を規制し、可動ハウジング201は回転を抑制する(図17(B)参照)。したがって下降した可動ハウジング201が不意に開いてしまうというような望ましくない事態の発生を防止することができる。
【0144】
このような第1の段差211による可動ハウジング201の開放防止作用は、最下位置まで下降した可動ハウジング201が微動しないように、遊びなくピン107Uの移動を規制する構成にすることで、より一層確実性を増す。
【0145】
その後、最下位置まで下降した可動ハウジング201を手前側に回転させる。この際、可動ハウジング201の上側のピン107Uは、第1の段差211を乗り越え、固定ハウジング101の上側の案内孔206U内を案内されるので、可動ハウジング201は、下側のピン107Lを中心に回転する。回転した可動ハウジング201は、上側のピン107Uの移動を第2の段差212によって規制され、半開状態で停止する(図17(C)参照)。
【0146】
こうして可動ハウジング201をいきなり全開状態にするのではなく、半開状態で一旦停止させることによって、フィルタエレメント301に加わる衝撃が緩和される。その結果、流路管331からの流体の飛び出しを抑制することができる。
【0147】
その後、半開位置で停止した可動ハウジング201をさらに手前側に回転する。すると上側のピン107Uが第2の段差212を乗り越え、可動ハウジング201は全開位置まで開く(図12~7、図17(D)参照)。これによって固定ハウジング101との間にフィルタエレメント301の着脱を許容する空間が生成され、フィルタエレメント301の着脱が可能になる。
【0148】
フィルタエレメント301の交換後は、上側のピン107Uが第2の段差212と第1の段差211とを順に乗り越えるように、可動ハウジング201を起立状態まで回転させる(図17(B)参照)。すると固定ハウジング101のキャッチャ171に、昇降プレート251のフック252が差し込まれて嵌り合う。
【0149】
その後、操作レバー261のハンドル264を掴み、水平に寝ている操作レバー261を反時計方向に回転させる。これによって昇降プレート251が下降位置LPに向けて移動し、フック252がキャッチャ171内の底面に引っ掛かることで、可動ハウジング201が上昇する。この際、固定ハウジング101側の案内孔206は、可動ハウジング201側のピン107を直線案内部E1に案内し、可動ハウジング201を鉛直方向に上昇させる(図17(A)(B)参照)。可動ハウジング201が上昇する過程で、固定ハウジング101側の接続管131は、フィルタエレメント301の流路管331に接続される。
【0150】
垂直に起立する位置まで操作レバー261を回転させた後(図14(B)参照)、締結ボルトBで固定ハウジング101に可動ハウジング201を結合すれば、フィルタエレメント301の交換作業が完了する。こうして作業者は、三種類のフィルタエレメント301のうち、所望のフィルタエレメント301の交換作業を行なうことができる。
【0151】
以上説明したように、本実施の形態によれば、締結ボルトBを弛めて固定ハウジング101に対する結合を解除した可動ハウジング201を下降させて回転させるだけで、一か所に集約させた任意のフィルタエレメント301を容易に交換することができる。
【0152】
3.嵌合部の別の実施の形態
図18ないし図19(A)~(D)に基づいて、嵌合部Eの別の実施の形態について説明する。
【0153】
図15ないし図17(A)~(D)に示す本実施の形態の嵌合部Eでは、固定ハウジング101の側面パネル104に案内孔206(206L、206U)を設け、可動ハウジング201の側面パネル203にピン107(107L、107U)を設けている。嵌合部Eの別の実施の形態としては、第1の実施の形態と同様に、可動ハウジング201の側面パネル203に案内孔206(206L、206U)を設け、固定ハウジング101の側面パネル104にピン107(107L、107U)を設けてるようにしてもよい。
【0154】
別の実施の形態の案内孔206(206L、206U)は、可動ハウジング201の側面パネル203を貫通しない溝状に形成されている。もちろん案内孔206(206L、206U)は、貫通孔の形態で設けられていてもよい。
【0155】
本実施の形態のピン107(107L、107U)は、一例として、固定ハウジング101の側面パネル104に設けられたピンねじ孔(図示せず)に内側からねじ込まれ、側面パネル104の外側に突出している。
【0156】
二つの案内孔206L、206Uが直線案内部E1を形成すること、上側の案内孔206Uが回転案内部E2を形成すること、そして回転案内部E2が第1の段差211と第2の段差212とを有していることについては、図15ないし図17(A)~(D)に示す本実施の形態の嵌合部Eと同様である。したがってそれらの各部の作用効果についても同様である。
【0157】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態を図20ないし図23(A)(B)に基づいて説明する。第1及び第2の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0158】
1.構成
本実施の形態が第1の実施の形態と相違するのは、細部の形態の他に、主につぎの三点である。
(1)フィルタエレメントの配置位置
(2)昇降補助機構
(3)嵌合部
このうち(1)(3)の点については、第2の実施の形態と共通している。そこで以下では、第2の実施の形態とも相違する(2)の昇降補助機構LMについて説明する。
【0159】
本実施の形態のフィルタ装置11も、第2の実施の形態と同様に、可動ハウジング201の昇降作業を支援するための昇降補助機構LMを備えている。
【0160】
図20ないし図23(A)(B)に示すように、昇降補助機構LMは、可動ハウジング201の正面側に昇降プレート251を備えている。昇降プレート251は、上下方向に移動自在に取付られ、上端にフック252を有している。固定ハウジング101には、フック252を引っ掛けることができるキャッチャ171が設けられている。昇降補助機構LMは、フック252をキャッチャ171に引っ掛けた状態で昇降プレート251を上下に移動させることで、可動ハウジング201を昇降させる。以下、詳しく説明する。
【0161】
可動ハウジング201の正面パネル202には、昇降プレート251を保持するプレートホルダ253が設けられている。プレートホルダ253は、鉛直方向上の上昇位置UPと下降位置LPとの間で、昇降プレート251を正面パネル202に沿って移動自在に保持する。図22(A)に示すように、上昇位置UPは、昇降プレート251が上昇した位置である。図22(B)に示すように、下降位置LPは、昇降プレート251が下降した位置である。
【0162】
図12ないし図14(A)(B)と図20なし図23(A)(B)とを比較すれば明らかなように、本実施の形態の昇降プレート251は、第2の実施の形態の昇降プレート251よりも長さが短い。その分プレートホルダ253も、第2の実施の形態よりも小型化されている。
【0163】
昇降プレート251は、上昇位置UPに位置するとき、プレートホルダ253から上端部分を突出させ(図22(A)参照)、下降位置LPに位置するとき、昇降プレート251からの上端部分の突出量を減少させる(図22(B)参照)。こうして突出量を変化させる昇降プレート251の突出部分には、フック252が設けられている。フック252は、昇降プレート251から直角に屈曲し、固定ハウジング101の方向に向けて延びている。
【0164】
図20ないし図23(A)(B)に示すように、プレートホルダ253には、運動方向変換部DCも設けられている。運動方向変換部DCは、操作部としての操作ボルト271を回転させることで、回転運動を直線運動に変換して昇降プレート251を昇降させる。
【0165】
運動方向変換部DCの主体をなすのは、操作ボルト271と一体で回転する操作プレート272である。操作プレート272は、可動ハウジング201の正面パネル202から前方方向に突出するように正面パネル202と一体に設けられたプレートホルダ253の裏面側に、操作ボルト271によって回転自在に取り付けられている。運動方向変換部DCは、昇降プレート251と操作プレート272とが連結されることによって構成されている。より詳しくは、昇降プレート251の下端には、水平方向に長い長孔254が設けられ、操作プレート272には、連結ピン263が設けられている。長孔254に連結ピン263がはめ込まれることで、昇降プレート251と操作プレート272とが連結されている。
【0166】
前述したように、プレートホルダ253は正面パネル202と一体に設けられている。このため運動方向変換部DCの機構部品をプレートホルダ253内に収納するための構造が必要になる。そこで本実施の形態では、可動ハウジング201が有する正面パネル202のうち、プレートホルダ253に覆われた部分に切欠き(図示せず)を設け、昇降プレート251及びプレートホルダ253を除いた運動方向変換部DCの機構部品をユニット化して、プレートホルダ253の裏面側から切欠き部分に着脱自在に取り付けている。
【0167】
図23(A)に示すように、操作プレート272が最大限まで時計方向に回転しているとき、連結ピン263は、操作プレート272の回転中心となる操作ボルト271の軸心の上方に位置する。これによって昇降プレート251は上方に押し上げられ、上昇位置UPに位置づけられる。以下説明の便宜上、操作プレート272が時計方向に最大限に回転した位置を「時計方向端」と呼ぶ。
【0168】
図23(B)に示すように、操作プレート272が最大限まで反時計方向に回転しているとき、連結ピン263は、操作プレート272の回転中心となる操作ボルト271の軸心の下方に位置する。これによって昇降プレート251は下方に引き込まれ、下降位置LPに位置づけられる。以下説明の都合上、操作プレート272が反時計方向に最大限に回転した位置を「反時計方向端」と呼ぶ。
【0169】
時計方向端と反時計方向端との間で操作プレート272が回転するに際して、連結ピン263の移動軌跡は弧状になる。より詳しくは、図23(A)に示す時計方向端及び図23(B)に示す反時計方向端に操作プレート272が位置するとき、連結ピン263は、図23(A)(B)中、最も右側に位置づけられる。これに対して時計方向端から反時計方向端に、反時計方向端から時計方向端に操作プレート272が回転すると、回転中心からのオフセットの影響で、連結ピン263は、図23(A)(B)中、徐々に左側に移動し、再び右側に戻るという軌跡をたどる。昇降プレート251に水平方向に長い長孔254は、このような連結ピン263の弧状の軌跡をたどる移動を許容し、昇降プレート251が鉛直方向に移動することを保証する。
【0170】
図20ないし図23(A)(B)に示すように、固定ハウジング101には、昇降プレート251のフック252を引っ掛けるためのキャッチャ171が設けられている。キャッチャ171は、固定ハウジング101の上面パネル103の正面端面に設けられ、窪み形状を有している。可動ハウジング201の回転によってフック252が抜き差しされるように、キャッチャ171は、遊びをもってフック252を受け入れている。
【0171】
キャッチャ171にフック252を引っ掛けた昇降プレート251は、下降位置LPでは可動ハウジング201を上昇させ、接続管131に流路管331を接続させる。上昇位置UPでは可動ハウジング201を下降させ、接続管131から流路管331を離脱させる。こうして昇降補助機構LMが構成される。
【0172】
昇降補助機構LMを構成する各部は、例えば金属を材料として製造される。例えば昇降プレート251に金属製の板金を用いれば、昇降プレート251のフック252等をプレス加工によって容易に製造することができる。
【0173】
2.作用効果
このような構成において、フィルタエレメント301を交換するに際しては、締結ボルトBを弛めて、固定ハウジング101に対する可動ハウジング201の結合状態を解除する。
【0174】
このとき昇降補助機構LMは、図23(B)に示されているように、操作プレート272が反時計方向端に位置する状態にある。このため昇降プレート251のフック252が固定ハウジング101側のキャッチャ171に差し込まれ、下降位置LPに位置する昇降プレート251によって、可動ハウジング201の下降動作が規制されている。
【0175】
そこで図23(A)に示すように、レンチWによって操作ボルト271を時計方向に回転させる。すると昇降プレート251が上昇位置UPに向けて移動し、フック252がキャッチャ171内の天井面を押すことで、可動ハウジング201が下降する。この際、固定ハウジング101側の案内孔206は、可動ハウジング201側のピン107を直線案内部E1に案内し、可動ハウジング201を鉛直方向に下降させる(第2の実施の形態の図17(A)(B)参照)。可動ハウジング201が下降する過程で、固定ハウジング101側の接続管131からフィルタエレメント301の流路管331が離脱する(第1の実施の形態の図4(B)参照)。
【0176】
最下位置まで下降した可動ハウジング201を回転させ、所望のフィルタエレメント301を交換するまでの作用効果については、第2の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0177】
フィルタエレメント301の交換後は、上側のピン107Uが第2の段差212と第1の段差211とを順に乗り越えるように、可動ハウジング201を起立状態まで回転させる(第2の実施の形態の図17(B)参照)。すると固定ハウジング101のキャッチャ171に、昇降プレート251のフック252が差し込まれて嵌り合う。
【0178】
その後、操作ボルト271にレンチWをセットし、時計方向端に位置する操作プレート272を反時計方向端まで回転させるために、レンチWで操作ボルト271を反時計方向に回転させる。これによって昇降プレート251が下降位置LPに向けて移動し、フック252がキャッチャ171内の底面に引っ掛かることで、可動ハウジング201が上昇する。この際、固定ハウジング101側の案内孔206は、可動ハウジング201側のピン107を直線案内部E1に案内し、可動ハウジング201を鉛直方向に上昇させる(第2の実施の形態の図17(A)(B)参照)。可動ハウジング201が上昇する過程で、固定ハウジング101側の接続管131は、フィルタエレメント301の流路管331に接続される。
【0179】
操作プレート272が反時計方向端に位置づけられるまでレンチWで操作ボルト271を回転させた後(図23(B)参照)、締結ボルトBで固定ハウジング101に可動ハウジング201を結合すれば、フィルタエレメント301の交換作業が完了する。こうして作業者は、三種類のフィルタエレメント301のうち、所望のフィルタエレメント301の交換作業を行なうことができる。
【0180】
以上説明したように、本実施の形態によれば、締結ボルトBを弛めて固定ハウジング101に対する結合を解除した可動ハウジング201を下降させて回転させるだけで、一か所に集約させた任意のフィルタエレメント301を容易に交換することができる。
【0181】
[変形例]
実施に際しては、各種の変更や変形が可能である。
【0182】
例えばフィルタ装置11に集約することができるフィルタエレメント301の種類は、上記した三種類のみならず、他の種類のフィルタエレメント301であってもよい。フィルタ装置11に収納することができるフィルタエレメント301の数も三つに限らず、二つ、あるいは四つ以上であってもよい。
【0183】
フィルタエレメント301は、上記実施の形態のように個々に分離独立していても、その全部又は一部が互いに連結されていたり、あるいは互いに一体に形成されていたりしてもよい。上記実施の形態を例に挙げるならば、一例として燃料プレフィルタエレメント301Aと燃料メインフィルタエレメント301Bとについては連結させたり一体化させたりしておき、オイルフィルタエレメント301Cのみを分離独立させることができる。
【0184】
もちろんフィルタエレメント301に関する上記各種の態様は一例にすぎない。可動ハウジング201の収納部205は、種類や個数、独立した態様になっているか否かなど、フィルタエレメント301に関するあらゆるバリエーションに対応し得るように、各種の変形や変更を受け入れる。
【0185】
本実施の形態では、可動ハウジング201を下降させたのちに回転させ、これによって大きな専有スペースを必要とすることなくフィルタエレメント301の交換作業を可能にする例を示した。これに対してフィルタ装置11の設置空間に余裕があれば、例えばフィルタエレメント301の高さ以上の範囲で可動ハウジング201を下降させるという手法によっても、フィルタエレメント301の交換作業に必要な空間を生じさせることができる。
【0186】
本実施の形態では、第1の隔壁324と第2の隔壁325とをエレメントフレーム312に一体に成形した構成例を示したが、実施に際しては、必ずしもこのような構成である必要はない。第1の隔壁324と第2の隔壁325とのいずれか一方又は両方は、例えばエレメントケース313(313A、313B)に一体成形するようにしてもよいし、第1の隔壁324と第2の隔壁325との一部はエレメントフレーム312に一体成形し、残りの一部はエレメントケース313(313A、313B)に一体成形するようにしてもよい。あるいは第1の隔壁324と第2の隔壁325とのいずれか一方又は両方は、単独の部材として用意しておき、エレメントフレーム312とエレメントケース313(313A、313B)との間に介在させて接合するようにしてもよい。
【0187】
本実施の形態では、矩形の濾材302を用いる例を示したが、濾材302は、必ずしも矩形である必要はない。例えば角が曲線状に丸められたような形態や、中央部分がくびれたような形態であってもよい。また濾材302は、必ずしもエレメントフレーム312にインサート成形されている必要はなく、エレメントフレーム312内に後から組み込まれるように構成されていてもよい。
【0188】
実施に際しては、その他あらゆる変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0189】
11 フィルタ装置
101 固定ハウジング
102 背面パネル
102W 収納壁
103 上面パネル
104 側面パネル
105 取付片
106 取付孔
107、107L、107U ピン(凸部)
108 ボルト孔
131 接続管
132 挿入空間
133 テーパー面
134 開口端
151 流出防止機構
152 ボールバルブ(バルブ)
153 コイルスプリング(付勢部)
171 キャッチャ
201 可動ハウジング
202 正面パネル
202W 収納壁
203 側面パネル
203a ピンねじ孔
204 底面パネル
205 収納部
206、206L、206U 案内孔(凹部)
207 固定片
208 ボルトねじ孔
211 第1の段差
212 第2の段差
251 昇降プレート
252 フック
253 プレートホルダ
254 長孔
261 操作レバー(操作部)
262 固定ピン
263 連結ピン
264 ハンドル
271 操作ボルト(操作部)
272 操作プレート
301 フィルタエレメント
301A 燃料プレフィルタエレメント(燃料フィルタエレメント)
301B 燃料メインフィルタエレメント(燃料フィルタエレメント)
301C オイルフィルタエレメント
302 濾材
311 ケース
311S 平坦面
312 エレメントフレーム
312a 枠体
313 エレメントケース
313A 第1のエレメントケース
313B 第2のエレメントケース
314 開口面
314A 第1の開口面
314B 第2の開口面
315 隔壁
316 後隔壁
317A 第1のカバー面
317B 第2のカバー面
318A 第1のエンド面
318B 第2のエンド面
319、319F、319R 区隔壁
320 前室
321 後室
322 流入室
323 流出室
324 第1の隔壁
325 第2の隔壁
331 流路管
331I 導入口
331O 排出口
331 流路管
332 Oリング
333 開口端
334 押上ピン
A 設置部
B ボルト
C クリアランス
DC 運動方向変換部
E 嵌合部
E1 直線案内部
E2 回転案内部
G 隙間
IS 隙間
LM 昇降補助機構
LP 下降位置
R1 リブ
R2 リブ
S スロープ
UP 上昇位置
W レンチ
X 中心軸
Y 中心軸
Z 仮想面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23