(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160583
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】極柱、電池、組電池及び組電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/553 20210101AFI20241107BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20241107BHJP
H01M 50/597 20210101ALI20241107BHJP
【FI】
H01M50/553
H01M50/176 101
H01M50/597
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075741
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】草野 聡
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011EE01
5H043AA19
5H043BA12
5H043CA04
5H043DA07
5H043FA40
5H043GA36
5H043HA11D
5H043JA09D
5H043LA02D
5H043LA21D
5H043LA22D
(57)【要約】
【課題】化成処理後においても極性を判別することができる極柱、電池、組電池及び組電池の製造方法を提供する。
【解決手段】正極端子3は、極柱本体30と、極柱本体30に設けられ、正極の極性を判別可能な判別部32と、を備え、判別部32は、極柱本体30の延在方向に沿って極柱本体30を先端側から見た場合において、極柱本体30の中心Cと外縁30cとの間の直線距離L1の1/2以上の距離L2が中心Cから離れた外縁位置Pに設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極柱本体と、
前記極柱本体に設けられ、正極又は負極の極性を判別可能な判別部と、を備え、
前記判別部は、前記極柱本体の延在方向に沿って前記極柱本体を先端側から見た場合において、前記極柱本体の中心と外縁との間の直線距離の1/2以上の距離が前記中心から離れた外縁位置に設けられている、極柱。
【請求項2】
前記判別部は、前記外縁位置において、少なくとも二つ設けられている、請求項1に記載の極柱。
【請求項3】
前記極柱本体の前記先端には、前記極柱本体の側面から前記極柱本体の端面に向かって先細りとなるテーパー部が設けられており、
前記判別部は、少なくとも前記テーパー部に配置されている、請求項1又は2に記載の極柱。
【請求項4】
前記判別部は、前記外縁位置において、前記極柱本体の側面に配置されている、請求項1又は2に記載の極柱。
【請求項5】
請求項1に記載の極柱と、
前記極柱と接続される電極群と、を備える、電池。
【請求項6】
正極、負極及びセパレータをそれぞれ複数含んで構成される電極群と、
前記電極群が収容されるケースと、
前記電極群の複数の前記正極に接続される正極極柱と、
前記電極群の複数の前記負極に接続される負極極柱と、を備え、化成処理後の電池であって、
前記正極極柱及び/又は前記負極極柱には、正極又は負極の極性を判別可能な判別部及び溶接痕が設けられている、電池。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電池を複数備える、組電池。
【請求項8】
化成処理後の複数の電池を備え、複数の前記電池が接続部材によって接続される組電池の製造方法であって、
複数の前記電池のそれぞれは、
正極、負極及びセパレータをそれぞれ複数含んで構成される電極群と、
前記電極群が収容されるケースと、
前記電極群の複数の前記正極に接続される正極極柱と、
前記電極群の複数の前記負極に接続される負極極柱と、を備え、
前記正極極柱及び/又は前記負極極柱には、正極又は負極の極性を判別可能な判別部及び溶接痕が設けられており、
前記正極極柱及び/又は前記負極極柱の前記判別部によって前記極性を判別し、一の前記電池の前記正極極柱及び/又は前記負極極柱と、他の前記電池の前記正極極柱及び/又は前記負極極柱とを前記接続部材によって接続する、組電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極柱、電池、組電池及び組電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極、負極及びセパレータをそれぞれ複数含んで構成される電極群と、電極群が収容されるケースと、電極群の複数の正極に正極連結部材を介して接続される正極極柱と、電極群の複数の負極に負極連結部材を介して接続される負極極柱と、を備えている。電池を複数含んで構成される組電池では、例えば、複数の電池が接続部材によって直列に接続される(例えば、特許文献1参照)。この構成では、一の電池の正極極柱に接続部材の一端部が溶接されると共に、他の電池の負極極柱に接続部材の他端部が溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組電池を製造する際には、上記のように、電池の極柱同士を接続部材によって接続する。このとき、作業者による目視や、カメラによって撮像された画像の画像処理によって極柱の極性を判別し、連結部材を極柱に溶接する。そのため、正極極柱及び/負極極柱の端面(上面)には、極性を判別可能なマーク(+、-等)が設けられている。
【0005】
ここで、組電池を製造する前の電池の製造工程では、化成処理が行われる。化成処理では、複数の電池を接続部材で電気的に接続して通電する。接続部材は、極柱との接続を安定させると共に、極柱との電気的な接続を確実なものとするために、極柱の端面に溶接によって固定される。化成処理後、接続部材は極柱から取り外されるが、溶接によって極柱に設けられたマークが見えなくなり得る。そのため、組電池を製造するときに、極柱の極性の判別がし難くなるため、作業性が低下し得る。
【0006】
本発明の一側面は、化成処理後においても極性を判別することができる極柱、電池、組電池及び組電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一側面に係る極柱は、極柱本体と、極柱本体に設けられ、正極又は負極の極性を判別可能な判別部と、を備え、判別部は、極柱本体の延在方向に沿って極柱本体を先端側から見た場合において、極柱本体の中心と外縁との間の直線距離の1/2以上の距離が中心から離れた外縁位置に設けられている。
【0008】
化成処理の準備として接続部材を極柱に溶接する際には、接続部材と極柱とを確実に接続するために、通常、極柱本体の端面の最も広い領域、すなわち極柱本体の中心を含む領域に接続部材が溶接され得る。つまり、溶接部は、極柱本体の端面において中心を含む領域に形成される。そこで、本発明の一側面に係る極柱では、判別部は、極柱本体の延在方向に沿って極柱本体を先端側から見た場合において、極柱本体の中心と外縁との間の直線距離の1/2以上の距離が中心から離れた外縁位置に設けられている。これにより、極柱本体の中心を含む領域に溶接部が形成されたとしても、外縁位置には溶接部が形成され難いため、外縁位置に設けられた判別部が溶接によって見えなくなることを回避することができる。そのため、化成処理の後に接続部材が取り外された場合であっても、極柱本体において判別部を確認することができる。したがって、化成処理後においても極性を判別することができる。
【0009】
(2)判別部は、外縁位置において、少なくとも二つ設けられていている、(1)に記載の極柱。この構成では、例えば、一つの判別部が溶接によって見えなくなったとしても、もう一つの判別部を確認することができる。したがって、化成処理の後に接続部材が取り外された場合であっても、極柱本体において判別部を確認することができる。
【0010】
(3)極柱本体の先端には、極柱本体の側面から極柱本体の端面に向かって先細りとなるテーパー部が設けられており、判別部は、少なくともテーパー部に配置されている、(1)又は(2)に記載の極柱。この構成では、溶接部が端面に形成されるため、テーパー部には溶接部が形成され難い。そのため、テーパー部に判別部を配置することによって、判別部が溶接によって見えなくなることを回避することができる。
【0011】
(4)判別部は、外縁位置において、極柱本体の側面に配置されている、(1)又は(2)に記載の極柱。極柱本体の側面には溶接部が形成され難い。そのため、側面に判別部を配置することによって、判別部が溶接によって見えなくなることを回避することができる。
【0012】
(5)本発明の一側面に係る電池は、(1)~(4)のいずれか一項に記載の極柱と、極柱と接続される電極群と、を備える。
【0013】
本発明の一側面に係る電池は、上記極柱を備えている。したがって、電池では、化成処理後においても極柱の極性を判別することができる。
【0014】
(6)本発明の一側面に係る電池は、正極、負極及びセパレータをそれぞれ複数含んで構成される電極群と、電極群が収容されるケースと、電極群の複数の正極に接続される正極極柱と、電極群の複数の負極に接続される負極極柱と、を備え、化成処理後の電池であって、正極極柱及び/又は負極極柱には、正極又は負極の極性を判別可能な判別部及び溶接痕が設けられている。
【0015】
本発明の一側面に係る電池では、正極極柱及び/又は負極極柱には、正極又は負極の極性を判別可能な判別部及び溶接痕が設けられている。したがって、化成処理後の電池であっても、正極極性及び/又は負極極性において判別部を確認することによって、極性を判別することができる。したがって、化成処理後においても極性を判別することができる。
【0016】
(7)本発明の一側面に係る組電池は、(5)又は(6)の電池を複数備える。
【0017】
本発明の一側面に係る組電池では、上記(5)又は上記(6)の電池を複数備えている。そのため、判別部を確認することによって、極性を判別することができる。したがって、化成処理後においても極性を判別することができる。
【0018】
(8)本発明の一側面に係る組電池の製造方法は、化成処理後の複数の電池を備え、複数の電池が接続部材によって接続される組電池の製造方法であって、複数の電池のそれぞれは、正極、負極及びセパレータをそれぞれ複数含んで構成される電極群と、電極群が収容されるケースと、電極群の複数の正極に接続される正極極柱と、電極群の複数の負極に接続される負極極柱と、を備え、正極極柱及び/又は負極極柱には、正極又は負極の極性を判別可能な判別部及び溶接痕が設けられており、正極極柱及び/又は負極極柱の判別部によって極性を判別し、一の電池の正極極柱及び/又は負極極柱と、他の電池の正極極柱及び/又は負極極柱とを接続部材によって接続する。
【0019】
本発明の一側面に係る組電池の製造方法では、化成処理後の複数の電池において、正極極柱及び/又は負極極柱には、正極又は負極の極性を判別可能な判別部及び溶接痕が設けられている。そのため、判別部を確認することによって、極性を判別することができる。したがって、化成処理後においても極性を判別することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一側面によれば、化成処理後においても極性を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る組電池を示す概略平面図である。
【
図2】
図2は、蓄電池を示す概略分解斜視図である。
【
図6】
図6は、化成処理後に接続部材が取りはずれた正極端子を示す図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、他の実施形態に係る電池の正極端子を上から見た図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、他の実施形態に係る電池の正極端子を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
図1は、一実施形態に係る組電池を示す概略平面図である。
図1に示される組電池100は、同種類の単電池を複数有するパック電池であり、例えば自動車のバッテリー、停電時等に利用されるバックアップ用電源、及び、電動フォークリフト等の電動車(もしくは電気車)の主電源等に用いられる。組電池100は、電池群110と、組電池用箱120と、を有する。
【0024】
電池群110は、組電池用箱120に収容される複数の電池1によって構成される。本実施形態では、合計24個の電池1によって構成される。電池群110は、複数の電池1に加えて、複数の接続部材130と、外部装置に接続するための端子131,132と、を有する。複数の接続部材130のそれぞれは、隣り合う電池1同士を電気的に接続するための部材である。接続部材130は、例えば、隣り合う電池1の両方に接続される導電部(図示省略)と、当該導電部を保護する保護部(図示省略)と、を有する。
【0025】
本実施形態では、複数の接続部材130を用いることによって、電池群110に含まれる複数の電池1は、互いに直列接続される。すなわち、接続部材130は、一方の電池1の負極端子4(正極端子3)と、他方の電池1の正極端子3(負極端子4)とを接続する。なお、複数の電池1は、互いに並列接続されてもよい。また、電池群110には、直列接続と並列接続との両方がなされてもよい。
【0026】
図2は、電池1を示す概略分解斜視図である。電池1は、例えば、制御弁式鉛蓄電池であり得る。電池1は、電極群2と、正極端子3と、負極端子4と、制御弁5と、ケース6と、を備える。
【0027】
電極群2は、複数の極板の集合体であり、複数の正極10と、複数の負極12と、複数のセパレータ14と、を有する。電極群2では、正極10と負極12とが交互に配置されている。隣り合う正極10と負極12との間には、セパレータ14が配置されている。このため、正極10、セパレータ14及び負極12は、所定方向において順に重なる。本実施形態では、電極群2において、正極10、負極12及びセパレータ14の配列方向(以下、単に「配列方向」と称することもある)の端部には、負極12が配置されている。正極10と、負極12と、セパレータ14との集合体は、電池用電極群とも呼称される。電極群2及び電解液がケース6に収容されるとき、電解液は、正極10とセパレータ14との隙間、セパレータ14の内部等に存在する。なお、上記配列方向は、第一方向Xに相当する。また、以下では、第一方向Xに直交する方向を、第二方向Y及び第三方向Zとする。
【0028】
正極10は、電池1における正極板であり、正極端子3と電気的に接続されている。各正極10と正極端子3とは、正極ストラップ16によって電気的に接続されている。図示しないが、正極10は、例えば、集電体と正極材とを有する。負極12は、電池1における負極板であり、負極端子4と電気的に接続されている。各負極12と負極端子4とは、負極ストラップ18によって電気的に接続されている。負極12は、例えば、集電体と負極材とを有する。セパレータ14は、正極10と負極12との短絡を防止するための電池用部材である。セパレータ14は、正極10と負極12との間を電気的には絶縁する一方でイオンを透過させ、且つ、正極10側における酸化性及び負極12側における還元性に対する耐性を備えるものであれば、特に制限されない。各セパレータ14は、袋形状を有し、対応する負極12の主要部を覆ってもよい。
【0029】
集電体の構成材料は、導電性材料であればよい。集電体の構成材料の例は、鉛-カルシウム-錫系合金、鉛-アンチモン-ヒ素系合金等の鉛合金である。正極材は、例えば、化成後の正極活性物を含む。負極材は、例えば、海綿状鉛等の負極活物質を含む。セパレータ14の材料(材質)の例には、ガラス繊維、樹脂、無機物等が含まれる。
【0030】
ケース6は、本体部20と、第三方向Z(積層方向)において本体部20に重なる蓋部22と、を有する。本体部20は、有底筒状に形成されている。本体部20は、例えばポリプロピレン等の材料で形成されている。本体部20は、電極群2及び電解液を収容する収容空間Sを有する。本体部20は、四つの側面部と底部とにより構成されている。底部と側面部とによって形成される角部は、丸まっている。
【0031】
蓋部22は、本体部20の開口部を覆う部材であり、本体部20と同様にポリプロピレン等の材料で形成される。なお、
図2には、制御弁5が取り外された状態の蓋部22が示されている。蓋部22には、正極端子3が挿入されるブッシュ22Aと、負極端子4が挿入されるブッシュ22Bと、が設けられている。ブッシュ22Aの周囲には、正極端子3であることを示すマーク「+」が表示されていてもよい。ブッシュ22Bの周囲には、負極端子であることを示すマーク「-」が表示されていてもよい。
【0032】
正極端子3と負極端子4とのそれぞれは、電極群2と外部装置とを電気的に接続するための端子である。正極端子3及び負極端子4のそれぞれは、鉛を主成分としても形成されてもよいし、鉛のみから形成されてもよい。正極端子3は、蓋部22のブッシュ22Aに固定されている。正極端子3は、座16Aを介して、正極ストラップ16に接続されている。座16Aは、例えば、略三角形状を呈している。負極端子4は、蓋部22のブッシュ22Bに固定されている。負極端子4は、座18Aを介して、負極ストラップ18に接続されている。なお、座16Aは、正極端子3の一部であってもよい。座18Aは、負極端子4の一部であってもよい。
【0033】
続いて、正極端子3について詳細に説明する。
図3は、正極端子3を示す斜視図である。
図4は、正極端子3を上から見た図である。
図5は、正極端子3を横から見た図である。
【0034】
図3及び
図4に示されるように、正極端子(極柱)3は、極柱本体30と、判別部32と、を有している。極柱本体30は、例えば、円柱状を呈している。極柱本体30は、第三方向Zにおいて延在している。極柱本体30の基端部には、座16Aが接続されている。極柱本体30の先端には、極柱本体30の側面30aから極柱本体30の端面30bに向かって先細りとなるテーパー部34が設けられている。テーパー部34において、側面30aと端面30bとを接続する面は平坦面であってもよいし、湾曲面(凸面、凹面)であってもよい。
【0035】
本実施形態では、判別部32は、正極の極性を判別可能な部材である。すなわち、判別部32は、正極端子3の極性が正極であることを示す部材である。判別部32は、極柱本体30と一体に形成されている。本実施形態では、判別部32は、鉛を主成分として形成されている。
図4に示されるように、判別部32は、極柱本体30の延在方向に沿って極柱本体30を先端側から見た場合において、極柱本体30の中心Cと外縁30cとの間の直線距離L1の1/2以上の距離L2が中心Cから離れた外縁位置Pに設けられている。外縁位置Pは、
図4において破線で示す円よりも外側の部分である。
【0036】
極柱本体30の中心Cは、公知の方法によって求めることができる。極柱本体30の外形が円形状である場合には、例えば、極柱本体30の円周上の二点(A,B)を直線で結んで直線ABとすると共に、円周上の二点(C,D)を直線で結んで直線CDとする。直線CDは、直線ABと平行で且つ同じ長さとする。続いて、点Aと点Dとを直線で結ぶと共に、点Bと点Cとを直線で結び、二つの直線が交差する部分を円の中心Cとして求める。その他、円の中心を求め得る様々な方法(例えば、画像処理等)によって、円の中心を求めることができる。
【0037】
本実施形態では、判別部32は、極柱本体30の延在方向に沿って極柱本体30を先端側から見た場合において、十字状を呈している。すなわち、判別部32は、正極(プラス)であることを示している。判別部32の中央部は、極柱本体30の中心Cに位置している。判別部32は、第一部分32Aと、第二部分32Bと、を有している。第一部分32Aと第二部分32Bとは、所定の角度(例えば90°)成すように交差している。第一部分32A及び第二部分32Bのそれぞれの端は、極柱本体30の側面30aまで延在している。すなわち、第一部分32A及び第二部分32Bのそれぞれは、端面30bとテーパー部34とにわたって設けられている。判別部32は、外縁位置Pにおいて、少なくとも二つ設けられている。本実施形態では、判別部32は、外縁位置Pにおいて、四つ設けられている。
【0038】
本実施形態では、
図3及び
図5に示されるように、判別部32は、端面30b及びテーパー部34から突出して設けられている。判別部32は、外縁位置Pに設けられていればよく、例えば、溝状に形成されていてもよい。
【0039】
続いて、組電池100の製造方法について説明する。最初に、上記電池1の化成処理を行う。化成処理では、複数の電池1を接続部材で電気的に接続して通電する。具体的には、一の電池1の正極端子3と他の電池1の負極端子4とを接続部材によって接続する。正極端子3及び負極端子4と接続部材との接合は、溶接によって行う。溶接の際には、正極端子3の場合には、極柱本体30の端面30bの最も広い領域、すなわち極柱本体30の中心Cを含む領域に接続部材を溶接する。極柱本体30の端面30bに溶接部が形成されるように、正極端子3に接続部材を溶接する。
【0040】
複数の電池1を接続部材によって接続した後、通電を行う。所定時間の通電により、電池1の化成処理が完了する。化成処理の完了後、電池1から接続部材を外す。
図6は、化成処理後に接続部材が取り外された正極端子3を示す図である。
図6に示されるように、化成処理後の正極端子3の極柱本体30の端面30bには、溶接痕Wが形成されている。溶接痕Wが形成された部分には、判別部32が設けられていない。溶接痕Wが形成されていない部分には、判別部32が設けられている。正極端子3では、溶接痕Wが形成されている場合であっても、判別部32を確認することができる。
【0041】
続いて、化成処理後の電池1を組電池用箱120に収容する。電池1を組電池用箱120に収容する際、正極端子3の判別部32によって極性を判別して、電池1の向きを決定する。組電池用箱120内において、複数の電池1を直列に接続する場合には、隣り合う電池1において、一方の電池1の正極端子3と他方の電池1の負極端子4とが隣り合うように位置する必要がある。そのため、正極端子3の判別部32によって極性を判別して、電池1の向きを決定する。
【0042】
電池1を組電池用箱120に収容した後、電池1同士を接続部材130によって接続する。具体的には、正極端子3の判別部32によって極性を判別し、一の電池1の正極端子3と、他の電池1の負極端子4とを接続部材130によって接続(溶接)する。以上により、組電池100が製造される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る電池1において、正極端子3は、極柱本体30と、極柱本体30に設けられ、正極の極性を判別可能な判別部32と、を備えている。判別部32は、極柱本体30の延在方向に沿って極柱本体30を先端側から見た場合において、外縁位置Pに設けられている。
【0044】
化成処理の準備として接続部材を極柱に溶接する際には、接続部材と正極端子3及び負極端子4とを確実に接続するために、極柱本体の端面の最も広い領域、すなわち極柱本体の中心を含む領域に接続部材が溶接され得る。つまり、溶接部は、極柱本体の端面において中心を含む領域に形成される。そこで、正極端子3では、判別部32は、外縁位置Pに設けられている。これにより、極柱本体30の中心を含む領域に溶接部が形成されたとしても、外縁位置Pには溶接部が形成され難いため、外縁位置Pに設けられた判別部32が溶接によって見えなくなることを回避することができる。そのため、化成処理の後に接続部材が取り外された場合であっても、極柱本体30において判別部32を確認することができる。したがって、化成処理後においても極性を判別することができる。
【0045】
本実施形態では、正極端子3に判別部32を設けている。そのため、判別部32によって正極端子3の極性を判別することができれば、負極端子4の極性も判別することができる。
【0046】
本実施形態に係る電池1では、判別部32は、外縁位置Pにおいて、少なくとも二つ設けられていている。この構成では、例えば、一つの判別部が溶接によって見えなくなったとしても、もう一つの判別部を確認することができる。したがって、化成処理の後に接続部材が取り外された場合であっても、極柱本体30において判別部32を確認することができる。
【0047】
本実施形態に係る電池1では、正極端子3の極柱本体30の先端には、テーパー部34が設けられている。判別部32は、少なくともテーパー部34に配置されている。この構成では、溶接部が端面30bに形成されるため、テーパー部34には溶接部が形成され難い。そのため、テーパー部34に判別部32を配置することによって、判別部32が溶接によって見えなくなることを回避することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0049】
上記実施形態では、判別部32が十字状を呈している形態を一例に説明した。しかし、判別部は、極柱本体30の延在方向に沿って極柱本体30を先端側から見た場合において、外縁位置Pに設けられていればよい。例えば、
図7(a)に示されるように、判別部32は、端面30bとテーパー部34とにわたって設けられる直線状の形状を呈していてもよい。
図7(b)に示されるように、判別部32は、複数設けられていてもよい。
図8(a)に示されるように、判別部32は、テーパー部34にのみ設けられていてもよい。
図8(b)に示されるように、判別部32は、極柱本体30の側面30aに設けられていてもよい。
【0050】
上記実施形態では、正極端子3の極柱本体30が円柱状を呈している形態を一例に説明した。しかし、正極端子3の極柱本体の形状は、角柱状、三角柱状等であってもよい。この場合、極柱本体の中心は、極柱本体の外形に応じて設定されればよい。例えば、極柱本体の外形が矩形状である場合には、対角を結ぶ二つの直線が交差する部分を中心として設定することができる。
【0051】
上記実施形態では、正極端子3の極柱本体30にテーパー部34が設けられている形態を一例に説明した。しかし、テーパー部は設けられていなくてもよい。
【0052】
上記実施形態では、正極端子3が判別部32を備える形態を一例に説明した。しかし、負極端子4が負極の極性を判別可能な判別部を備えていてもよい。また、正極端子3及び負極端子4のそれぞれが、判別部を備えていてもよい。
【0053】
上記実施形態では、電池1が制御弁式鉛蓄電池である形態を一例に説明した。しかし、蓄電池の種類はこれに限定されない。例えば、蓄電池は、リチウムイオン電池等であってもよい。リチウムイオン電池の場合は、化成処理は、初期充電を意味する。
【符号の説明】
【0054】
1…電池、2…電極群、3…正極端子(極柱)、6…ケース、10…正極、12…負極、14…セパレータ、30…極柱本体、30a…側面、30b…端面、30c…外縁、32…判別部、34…テーパー部、100…組電池、130…接続部材、C…中心、L1…直線距離、L2…距離、P…外縁位置、W…溶接痕。