(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160587
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20241107BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075749
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石倉 真璃絵
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC19
3D131BC33
3D131BC35
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB13W
3D131EB18W
3D131EB23V
3D131EB23W
3D131EB24V
3D131EB24W
3D131EB42W
3D131EB62V
3D131EB62X
3D131EB64V
3D131EB64W
3D131EB81V
3D131EB81W
3D131EB99W
3D131EC01X
3D131EC12V
3D131EC12W
(57)【要約】
【課題】転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とを達成できる、重荷重用タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2はトレッド6を備える。トレッド6は複数の周方向主溝12を有する。複数の周方向主溝12は周方向細溝38を含む。周方向細溝38は胴部30とテーパー部32と拡幅部34とを含む。トレッド4が路面と接地すると、周方向細溝38の一対の壁面24が胴部30において互いに接触する。タイヤ2の子午線断面における周方向細溝38の輪郭線において、テーパー部32から胴部30に移行する部分である外側移行部40はテーパー部32の輪郭線及び胴部30の輪郭線に接する円弧で表され、胴部30から拡幅部34に移行する部分である内側移行部42は、胴部30の輪郭線及び拡幅部34の輪郭線に接する円弧で表される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備え、前記トレッドが、路面と接地するトレッド面を有する、タイヤであって、
前記トレッドが複数の周方向主溝を有し、
複数の前記周方向主溝が、前記トレッドに、軸方向に並ぶ複数の陸部を構成し、
複数の前記周方向主溝が周方向細溝を含み、
前記周方向細溝が、胴部と、前記胴部の外側に位置し、前記周方向細溝の溝口を含むテーパー部と、前記胴部の内側に位置し、前記周方向細溝の溝底を含む拡幅部とを含み、
前記胴部がストレートにのび、
前記トレッドが路面と接地すると、前記周方向細溝が有する一対の壁面が前記胴部において互いに接触し、
前記テーパー部が、前記溝口から前記胴部に向かって先細りであり、
前記拡幅部が、前記胴部の溝幅よりも広い溝幅を有し、その最大溝幅を示す位置から胴部に向かって先細りであり、
前記タイヤの子午線断面における前記周方向細溝の輪郭線において、前記テーパー部から前記胴部に移行する部分を外側移行部とし、前記胴部から前記拡幅部に移行する部分を内側移行部としたとき、
前記外側移行部が、前記テーパー部の輪郭線と前記胴部の輪郭線との両方と接する円弧で表され、
前記内側移行部が、前記胴部の輪郭線と前記拡幅部の輪郭線との両方と接する円弧で表され、
前記内側移行部を表す円弧の半径が、前記外側移行部を表す円弧の半径よりも大きい、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記内側移行部を表す円弧の半径が、前記拡幅部の前記最大溝幅よりも大きい、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記拡幅部のうち、前記最大溝幅を示す位置及び前記溝底、を含む部分が、溝底部であり、
前記タイヤの子午線断面における前記周方向細溝の輪郭線において、前記溝底部が円弧で表され、
前記内側移行部を表す円弧の半径が、前記溝底部を表す円弧の半径の3倍以上である、
請求項2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記胴部の溝幅の、前記拡幅部の最大溝幅に対する比が0.1以上0.4以下である、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記溝口から前記拡幅部の前記最大溝幅を示す位置までの溝深さの、前記周方向細溝の溝深さに対する比が0.6以上0.9以下である、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記テーパー部の溝深さの、前記周方向細溝の溝深さに対する比が0.05以上0.3以下である、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記複数の陸部のうち、赤道を含む陸部又は前記赤道に最も近い陸部がクラウン陸部であり、前記クラウン陸部に最も近い陸部がミドル陸部であり、
前記複数の前記周方向主溝のうち、前記トレッド面の第一端側のミドル陸部と第二端側のミドル陸部との間に位置する周方向主溝が前記周方向細溝であり、
前記周方向細溝の前記テーパー部が、前記溝口が広い幅広部と、前記溝口が狭い幅狭部とを含み、
前記幅広部と前記幅狭部とが周方向において交互に配置される、
請求項1から6のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項8】
隣り合う2本の周方向細溝において前記トレッド面の第一端側の周方向細溝の幅広部が、その第二端側の周方向細溝の幅狭部と軸方向において重複する、
請求項7に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッドは、軸方向に並列した複数の周方向主溝を有する。複数の周方向主溝は複数の陸部をトレッドに構成する。
陸部は路面と接地すると変形する。陸部の変形はタイヤの転がり抵抗に影響する。環境への影響が考慮され、転がり抵抗の低減がタイヤには強く求められている。
狭い溝幅を有する胴部を周方向主溝に設けることで、トレッドが路面と接地した時に陸部同士が互いに支え合うことができ、陸部の変形が抑制される。
タイヤの転がり抵抗を低減するために、胴部を有する周方向主溝、すなわち周方向細溝の採用が検討されている(例えば、下記の特許文献1)。
周方向細溝は、例えば、濡れた路面での走行性能(以下、ウェット性能とも呼ばれる。)にも影響する。諸性能への影響を考慮しながら、周方向細溝の改良が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とを達成できる、重荷重用タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る重荷重用タイヤはトレッドを備える。前記トレッドは、路面と接地するトレッド面を有する。前記トレッドは複数の周方向主溝を有する。複数の前記周方向主溝は、前記トレッドに、軸方向に並ぶ複数の陸部を構成する。複数の前記周方向主溝は周方向細溝を含む。前記周方向細溝は、胴部と、前記胴部の外側に位置し、前記周方向細溝の溝口を含むテーパー部と、前記胴部の内側に位置し、前記周方向細溝の溝底を含む拡幅部とを含む。前記胴部はストレートにのびる。前記トレッドが路面と接地すると、前記周方向細溝が有する一対の壁面が前記胴部において互いに接触する。前記テーパー部は、前記溝口から前記胴部に向かって先細りである。前記拡幅部は、前記胴部の溝幅よりも広い溝幅を有し、その最大溝幅を示す位置から胴部に向かって先細りである。前記タイヤの子午線断面における前記周方向細溝の輪郭線において、前記テーパー部から前記胴部に移行する部分を外側移行部とし、前記胴部から前記拡幅部に移行する部分を内側移行部としたとき、前記外側移行部は、前記テーパー部の輪郭線と前記胴部の輪郭線との両方と接する円弧で表され、前記内側移行部は、前記胴部の輪郭線と前記拡幅部の輪郭線との両方と接する円弧で表される。前記内側移行部を表す円弧の半径は、前記外側移行部を表す円弧の半径よりも大きい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とを達成できる、重荷重用タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤのトレッドを示す展開図である。
【
図2】トレッドに設けられる溝を説明する図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面の一部を示す断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線に沿った断面の一部を示す断面図である。
【
図5】
図1のV-V線に沿った断面の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0009】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内側には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0010】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態とも呼ばれる。
【0011】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0012】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0013】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0014】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0015】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
【0016】
[本発明の基礎となった知見]
本発明者らの鋭意検討によれば、タイヤの転がり抵抗を低減する技術に関して、以下の事情が明らかになっている。
前述したように、トレッドに周方向細溝を設けることで、トレッドが路面と接地した時に陸部の変形が抑制され、見かけ上、陸部の剛性が高まる。タイヤは転がり抵抗を低減でき、耐摩耗性を向上できる。
胴部よりも広い溝幅を有する拡幅部を胴部の内側にさらに設けることで、摩耗により胴部が消失した後、拡幅部がウェット性能の向上に貢献できる。
胴部及び拡幅部を有する周方向細溝を採用することで、タイヤは、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しながら、ウェット性能の向上を図れる見込みがある。
ところで、旋回時のように、タイヤに対して横向きの力が作用すると、周方向細溝の溝口、言い換えれば、陸部のエッジには応力が集中する。応力の集中の程度によっては、陸部のエッジが欠けたり、もげたりするというような損傷が生じる恐れがある。
このような事態を想定して、周方向細溝の溝口にテーパー部を設ける等の対策が施される。しかしトレッドは摩耗する。これにより、テーパー部、胴部そして拡幅部が順にトレッド面に露出する。
本発明者は、摩耗による陸部エッジの形状変化と、欠け、もげ等の損傷リスクとの関係について検討したところ、テーパー部から胴部に切り替わるタイミング、そして胴部から拡幅部に切り替わるタイミングにおいて、損傷リスクが高まることを見出し、以下に説明する発明を完成するに至っている。
【0017】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係る重荷重用タイヤは、トレッドを備え、前記トレッドが、路面と接地するトレッド面を有する、タイヤであって、前記トレッドが複数の周方向主溝を有し、複数の前記周方向主溝が、前記トレッドに、軸方向に並ぶ複数の陸部を構成し、複数の前記周方向主溝が周方向細溝を含み、前記周方向細溝が、胴部と、前記胴部の外側に位置し、前記周方向細溝の溝口を含むテーパー部と、前記胴部の内側に位置し、前記周方向細溝の溝底を含む拡幅部とを含み、前記胴部がストレートにのび、前記タイヤが路面と接地すると、前記周方向細溝が有する一対の壁面が前記胴部において互いに接触し、前記テーパー部が、前記溝口から前記胴部に向かって先細りであり、前記拡幅部が、前記胴部の溝幅よりも広い溝幅を有し、その最大溝幅を示す位置から胴部に向かって先細りであり、前記タイヤの子午線断面における前記周方向細溝の輪郭線において、前記テーパー部から前記胴部に移行する部分を外側移行部とし、前記胴部から前記拡幅部に移行する部分を内側移行部としたとき、前記外側移行部が、前記テーパー部の輪郭線と前記胴部の輪郭線との両方と接する円弧で表され、前記内側移行部が、前記胴部の輪郭線と前記拡幅部の輪郭線との両方と接する円弧で表され、前記内側移行部を表す円弧の半径が、前記外側移行部を表す円弧の半径よりも大きい。
【0018】
このようにタイヤを整えることにより、タイヤは、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とを達成できる。
【0019】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記内側移行部を表す円弧の半径が、前記拡幅部の前記最大溝幅よりも大きい。
【0020】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成2]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記拡幅部のうち、前記最大溝幅を示す位置及び前記溝底、を含む部分が、溝底部であり、前記タイヤの子午線断面における前記周方向細溝の輪郭線において、前記溝底部が円弧で表され、前記内側移行部を表す円弧の半径が、前記溝底部を表す円弧の半径の3倍以上である。
【0021】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記胴部の溝幅の、前記拡幅部の最大溝幅に対する比が0.1以上0.4以下である。
【0022】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記溝口から前記拡幅部の前記最大溝幅を示す位置までの溝深さの、前記周方向細溝の溝深さに対する比が0.6以上0.9以下である。
【0023】
[構成6]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成5]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記テーパー部の溝深さの、前記周方向細溝の溝深さに対する比が0.05以上0.3以下である。
【0024】
[構成7]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成6]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記複数の陸部のうち、赤道を含む陸部又は前記赤道に最も近い陸部がクラウン陸部であり、前記クラウン陸部に最も近い陸部がミドル陸部であり、前記複数の前記周方向主溝のうち、前記トレッド面の第一端側のミドル陸部と第二端側のミドル陸部との間に位置する周方向主溝が前記周方向細溝であり、前記周方向細溝の前記テーパー部が、前記溝口が広い幅広部と、前記溝口が狭い幅狭部とを含み、前記幅広部と前記幅狭部とが周方向において交互に配置される。
【0025】
[構成8]
好ましくは、前述の[構成7]に記載の重荷重用タイヤにおいて、隣り合う2本の周方向細溝において前記トレッド面の第一端側の周方向細溝の幅広部が、その第二端側の周方向細溝の幅狭部と軸方向において重複する。
【0026】
[本発明の実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2は重荷重用タイヤである。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。
図1において周方向にのびる一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0027】
図1はトレッド4を示す。タイヤ2はトレッド4を備える。トレッド4はタイヤ2のトレッド部に含まれる。トレッド4は架橋ゴムからなる。
トレッド4はトレッド面6において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面6を有する。トレッド面6と赤道面との交線が赤道である。
この明細書において、トレッド面6は、特に言及がない限り、走行履歴のない未使用タイヤ2のトレッド面を意味する。
【0028】
図1はトレッド面6の展開図である。
図1において、符号TEで示される位置はトレッド面6の端である。
図1に示されたトレッド面6では、赤道面の左側に位置するトレッド面6の端TEが第一端TE1であり、赤道面の右側に位置する端TEが第二端TE2である。
図1において符号TWで示される長さは、トレッド面6の幅である。トレッド面6の幅TWは、第一端TE1から第二端TE2までの軸方向距離である。
【0029】
本発明においては、外観上、明瞭なエッジとしてトレッド面6の端TEを識別できない場合、接地面の軸方向外端(接地端とも呼ばれる。)に対応するトレッド面6上の位置が、トレッド面6の端TEとして特定される。接地面は、正規状態のタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で、タイヤ2の正規荷重に相当する荷重をタイヤ2に負荷して、平面からなる路面にタイヤ2を接触させて得られる。
【0030】
トレッド4には溝8が刻まれる。これにより、トレッドパターンがに構成される。
図1はこのタイヤ2のトレッドパターンを示す。トレッド面6のうち溝8以外の部分は陸面10とも呼ばれる。
【0031】
図2は、トレッド4に刻まれる溝8の一例を示す。
図2は溝8の断面を示す。
図2に基づいて溝8の主たる構成が説明される。
図2において紙面上側がタイヤ2の径方向外側に対応し、下側がタイヤ2の径方向内側に対応する。
【0032】
溝8は、溝口8Mを含む一対の壁面8Wと、溝底8Tを含む底面8Bとを有する。一対の壁面8Wはそれぞれ、溝口8Mと底面8Bとの間を架け渡す。
溝8の溝幅は、一対の壁面8Wである第一壁面8Wと第二壁面8Wとの間の距離、すなわち壁面間距離で表される。
図2において両矢印WGで示される長さは、溝口8Mにおける溝8の溝幅である。溝幅WGは、溝口8Mを構成する一対のエッジ8Eである第一エッジ8Eから第二エッジ8Eまでの最短距離で表される。
溝口8Mのエッジ8Eが面取りされ、溝8の溝口8Mにテーパー加工が施されている場合は、特に言及がない限り、壁面8Wの輪郭線の延長線と、陸面10の輪郭線の延長線との交点を仮想的にエッジとして、溝口8Mにおける溝幅WGが得られる。
両矢印DGで示される長さは、溝8の溝深さである。溝8の溝深さDGは、左右のエッジ8Eを結ぶ線分から溝8の溝底8Tまでの最短距離で表される。溝深さを表す線分DGは、溝底8Tを通る、左右のエッジ8Eを結ぶ線分の法線に含まれる。この法線の方向が、溝8の深さ方向である。
溝8の位置、溝幅WG、溝深さDG等は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0033】
溝底8Tは、溝8の断面において最も深い位置である。溝口8Mを構成する左右のエッジ8Eを結ぶ線分の法線に沿って、この線分から底面8Bまでの距離が計測される。この線分から底面8Bまでの距離が最大となる位置が、溝底8Tである。
図2に示された底面8Bは曲面である。底面8Bが平面を含み、この平面が溝底8Tを含んでもよい。この場合、平面の幅中心が溝底8Tとして用いられる。
【0034】
溝口8Mにおいて1.0mm未満の溝幅WGを有する溝8はサイプとも呼ばれる。サイプ以外の溝8は普通溝とも呼ばれ、その溝口8Mにおいて1.0mm以上の溝幅WGを有する。
サイプが、溝口8Mと溝底8Tとの間に、1.0mm以上の溝幅を有する部分(以下、普通溝相当部分)を含んでいてもよい。この場合、トレッド4が摩耗して普通溝相当部分が露出することで、サイプが普通溝に切り替わる。
普通溝が、溝口8Mと溝底8Tとの間に、1.0mm未満の溝幅を有する部分(サイプ相当部分)を含んでいてもよい。この場合、トレッド4が摩耗してサイプ相当部分が露出することで、普通溝がサイプに切り替わる。
【0035】
このタイヤ2のトレッドパターンは、周方向主溝12を含む。周方向主溝は前述の普通溝である。周方向主溝12は、周方向に連続してのび、10mm以上の溝深さを有する。
【0036】
このタイヤ2のトレッド4は複数の周方向主溝12を有する。これにより、軸方向に並ぶ複数の陸部14がトレッド4に構成される。複数の周方向主溝12は、トレッド4に複数の陸部14を構成する。
このタイヤ2のトレッド4には複数の周方向主溝12が刻まれるが、赤道からトレッド面6の第一端TE1までのゾーン(以下、第一ゾーンとも呼ばれる。)に刻まれる周方向主溝12の本数は、赤道から第二端TE2までのゾーン(以下、第一ゾーンとも呼ばれる。)に刻まれる周方向主溝12の本数と同じである。言い換えれば、第一ゾーン及び第二ゾーンのそれぞれに同数の周方向主溝12が配置される。第一ゾーン及び第二ゾーンのそれぞれに同数の陸部14が構成される。
【0037】
図1に示されたトレッド4には4本の周方向主溝12が刻まれる。これにより、軸方向に並ぶ5本の陸部14がトレッド4に構成される。4本の周方向主溝12は、トレッド4(具体的には、トレッド4のトレッド面6を含む部分)を5本の陸部14に区分する。
【0038】
4本の周方向主溝12のうち、赤道に最も近い周方向主溝12がセンター周方向主溝12cである。センター周方向主溝12cは周方向にストレートにのびる。センター周方向主溝12cに最も近い周方向主溝12がミドル周方向主溝12mである。ミドル周方向主溝12mも周方向にストレートにのびる。
図1に示されたトレッド4は、一対のセンター周方向主溝12cと、センター周方向主溝12cの軸方向外側に位置する一対のミドル周方向主溝12mとを備える。
図示されないが、トレッド4に5本以上の周方向主溝12が刻まれ、トレッド4が赤道を含む周方向主溝12を有している場合、この赤道を含む周方向主溝12がセンター周方向主溝12cである。
軸方向において最も外側に位置する周方向主溝12はショルダー周方向主溝12sとも呼ばれる。
図1に示されたトレッド4のミドル周方向主溝12mは、ショルダー周方向主溝12sでもある。
【0039】
5本の陸部14のうち、赤道を含む陸部14がクラウン陸部14cである。クラウン陸部14cに最も近い陸部14がミドル陸部14mである。ミドル陸部14mはクラウン陸部14cの次に赤道に近い陸部14である。
図1に示されるように、ミドル陸部14mの軸方向外側に位置する陸部14は、軸方向において最も外側に位置する陸部14であり、トレッド面6の端TEを含む。このタイヤ2では、トレッド面6の端TEを含む陸部14はショルダー陸部14sである。
図示されないが、トレッド4に6本以上の周方向主溝12が刻まれ、ミドル陸部14mとショルダー陸部14sとの間に、1又は2以上の陸部14が設けられてもよい。
ショルダー陸部14sに最も近い周方向主溝12が、前述のショルダー周方向主溝12sである。
【0040】
図1に示されたトレッド4は、クラウン陸部14cと、クラウン陸部14cの軸方向外側に位置する一対のミドル陸部14mと、ミドル陸部14mの軸方向外側に位置する一対のショルダー陸部14sとを有する。
トレッド4が赤道を含む周方向主溝12を有する場合、赤道に最も近い陸部14がクラウン陸部14cである。
【0041】
陸部14の頂面、すなわち陸面10はトレッド面6の一部をなす。周方向主溝12の溝口12Mを構成する一対のエッジ12Eはそれぞれ、陸面10と周方向主溝12との境界である。エッジ12Eは陸部14のエッジでもある。
【0042】
陸部14の幅は、陸部14の第一端TE1側エッジ12Eから第二端TE2側エッジ12Eまでの軸方向距離で表される。トレッド面6の端TEを含むショルダー陸部14sの幅は、トレッド面6の端TEからショルダー陸部14sの赤道側エッジ12Eまでの軸方向距離で表される。陸部14の幅が周方向において変化する場合は、最大幅を用いて陸部14の幅が表される。
【0043】
図1において符号Wcで示される長さはクラウン陸部14cの幅である。符号Wmで示される長さはミドル陸部14mの幅である。符号Wsで示される長さはショルダー陸部14sの幅である。
【0044】
陸部14の幅は、グリップ性能と、ウェット性能とを考慮して適宜決められる。
図1に示されたトレッド4では、クラウン陸部14cの幅Wcの、トレッド面6の幅TWに対する比(Wc/TW)は、0.10以上0.20以下であるのが好ましい。ミドル陸部14mの幅Wmの、トレッド面6の幅TWに対する比(Wm/TW)は、0.10以上0.20以下であるのが好ましい。ショルダー陸部14sの幅Wsの、トレッド面6の幅TWに対する比(Ws/TW)は、0.10以上0.25以下であるのが好ましい。
【0045】
図1に示されたトレッド4では、クラウン陸部14c及びミドル陸部14mに横溝16が刻まれる。横溝16の溝幅は0.5mm以上3.5mm以下である。横溝16は周方向主溝12よりも浅い。横溝16の溝深さの、周方向主溝12の溝深さに対する比は、0.12以上0.32以下であるのが好ましい。
【0046】
クラウン陸部14cには、クラウン横溝16cが刻まれる。クラウン横溝16cはクラウン陸部14cを横断する。クラウン横溝16cは、第一端TE1側のセンター周方向主溝12c(以下、第一センター周方向主溝12c1とも呼ばれる。)と、第二端TE2側のセンター周方向主溝12c(以下、第二センター周方向主溝12c2とも呼ばれる。)との間を架け渡す。
クラウン陸部14cに複数のクラウン横溝16cを刻むことで、周方向に並ぶ複数のブロック18(以下、クラウンブロック18cとも呼ばれる。)が構成される。
詳述しないが、クラウン陸部14cにおけるクラウン横溝16cのピッチは、タイヤ2の仕様に応じて適宜設定される。
【0047】
ミドル陸部14mには、複数のミドル横溝16mが刻まれる。
ミドル横溝16mはミドル陸部14mを横断する。ミドル横溝16mは、センター周方向主溝12cとミドル周方向主溝12mとの間を架け渡す。
ミドル横溝16mはクラウン横溝16cの溝深さと同じ溝深さを有する。ミドル横溝16mがクラウン横溝16cよりも浅くてもよく、深くてもよい。
ミドル陸部14mに複数のミドル横溝16mを刻むことで、周方向に並ぶ複数のブロック18(以下、ミドルブロック18mとも呼ばれる。)が構成される。
ミドル陸部14mにおけるミドル横溝16mのピッチは、クラウン陸部14cにおけるクラウン横溝16cのピッチと同じである。
【0048】
ミドル陸部14mは、ミドル横溝16mに加え、縦溝20(以下、ミドル縦溝20mとも呼ばれる。)を有する。ミドル陸部14mはミドル横溝16mとミドル縦溝20mとを有する。ミドル縦溝20mはミドル陸部14mを縦断する。ミドル縦溝20mは周方向に連続してのびる。ミドル縦溝20mの溝幅は1.0mm以上4.0mm以下である。ミドル縦溝20mは周方向主溝12よりも浅い。ミドル縦溝20mの溝深さの、周方向主溝12の溝深さに対する比は、0.12以上0.32以下であるのが好ましい。
【0049】
前述したように、ミドル陸部14mは複数のミドルブロック18mを含む。ミドル縦溝20mは、ミドルブロック18mに2つのミドルサブブロック22mを構成する。
【0050】
図1に示されるように、ショルダー陸部14sには、クラウン陸部14c及びミドル陸部14mのように横溝16は刻まれていない。ショルダー陸部14sに複数の横溝16が刻まれてもよい。ショルダー陸部14sには、ミドル陸部14mのように縦溝20も刻まれていない。ショルダー陸部14sに縦溝20が刻まれてもよい。
【0051】
図3は、
図1のIII-III線に沿った、ミドル周方向主溝12mの断面図である。
図1においてIII-III線は軸方向にのびる。このIII-III線は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)に含まれる。
図3は、このタイヤ2の子午線断面におけるミドル周方向主溝12mの断面形状を示す。
図3において紙面左側が、トレッド面6の端TE側(詳細には、トレッド面6の第一端TE1側)である。このミドル周方向主溝12mの断面を用いて周方向主溝12の構成が説明される。
【0052】
周方向主溝12は、溝口12Mを含む一対の壁面24と、溝底12Tを含む底面26とを有する。一対の壁面24はそれぞれ、溝口12Mと底面26との間を架け渡す。
一対の壁面24のうち、トレッド面6の第一端TE1側の壁面24は第一壁面24aとも呼ばれ、トレッド面6の第二端TE2側の壁面24は第二壁面24bとも呼ばれる。
図3に示されたミドル周方向主溝12mはその全体が第一ゾーンに位置する。トレッド面6の端TE側の第一壁面24aは外側壁面24sとも呼ばれ、第二壁面24bは内側壁面24uとも呼ばれる。周方向主溝12が全体として第二ゾーンに位置する場合は、第一壁面24aが内側壁面24uであり、第二壁面24bが外側壁面24sである。
【0053】
本発明においては、周方向主溝12の中でも、トレッド4が路面と接地しても一対の壁面24が互いに接触することがない溝は、周方向太溝とも呼ばれる。
図3に示されたミドル周方向主溝12mの一対の壁面24は、トレッド4が路面と接地しても接触することがない。このミドル周方向主溝12mは周方向太溝28である。
【0054】
図3において実線LMは、溝底12Tを通る、左右のエッジ12Eを結ぶ線分の法線である。
図3に示されたミドル周方向主溝12mの断面形状は、法線LMに対して非対称である。
【0055】
両矢印WGmで示される長さは、ミドル周方向主溝12mの溝口12Mでの溝幅である。両矢印DGmで示される長さは、ミドル周方向主溝12mの溝深さである。
ミドル周方向主溝12mの溝幅WGmは、例えば、トレッド面6の幅TWの4.0%以上10.0%以下であるのが好ましい。ミドル周方向主溝12mの溝深さDGmは、例えば、10mm以上21mm以下であるのが好ましい。タイヤ2が良好なウェット性能を発揮できる観点から、溝深さDGmは13mm以上18mm以下であるのがより好ましい。
【0056】
図4は、
図1のIV-IV線に沿った、センター周方向主溝12cの断面図である。
図1においてIV-IV線は軸方向にのびる。このIV-IV線は子午線断面に含まれる。
図4は、このタイヤ2の子午線断面におけるセンター周方向主溝12cの断面形状を示す。
図4において紙面左側が、トレッド面6の端TE側(詳細には、トレッド面6の第一端TE1側)である。紙面右側は、赤道面側であり、トレッド面6の第二端TE2側でもある。
【0057】
図4において実線LCは、溝底12Tを通る、左右のエッジ12Eを結ぶ線分の法線である。
図4に示されたセンター周方向主溝12cの断面形状は、法線LCに対して対称である。
【0058】
センター周方向主溝12cは、胴部30と、テーパー部32と、拡幅部34とを含む。
胴部30はセンター周方向主溝12cの深さ方向にストレートにのびる。
図4に示されたセンター周方向主溝12cの断面形状において、胴部30の輪郭は直線で表される。
図4において両矢印WMで示される長さは、胴部30の溝幅を表す。
テーパー部32は胴部30の径方向外側に位置する。テーパー部32は溝口12Mを含む。テーパー部32は溝口12Mから胴部30に向かって先細りである。溝口12Mでのテーパー部32の溝幅は、胴部30の溝幅WMよりも広い。
図4に示されたセンター周方向主溝12cの断面形状において、テーパー部32の輪郭は、直線で表される。このテーパー部32の輪郭が1又は2以上の円弧で表されてもよく、直線及び円弧を組み合わせて表されてもよい。
拡幅部34は胴部30の径方向内側に位置する。拡幅部34は底面26を含む。拡幅部34は胴部30の溝幅WMよりも広い溝幅を有する。
図4において両矢印WXで示される長さは、拡幅部34の最大溝幅を表す。符号PXで示される位置は、拡幅部34が最大溝幅WXを示す位置である。拡幅部34は、その最大溝幅WXを示す位置PXから胴部30に向かって先細りである。拡幅部34は、その最大溝幅WXを示す位置PXから溝底12Tに向かって先細りである。
拡幅部34のうち、最大溝幅位置PXと溝底12Tとを含む部分は、溝底部36とも呼ばれる。拡幅部34は溝底部36を含み、溝底部36は前述の底面26を含む。
【0059】
図4に示されたセンター周方向主溝12cの断面形状において、拡幅部34のうち、少なくとも溝底部36の輪郭は単一の円弧で表される。この場合、溝底部36以外の輪郭は、直線又は円弧を含む滑らかな線で表される。拡幅部34全体が単一の円弧で表されてもよい。
【0060】
センター周方向主溝12cの溝口12Mにはテーパー部32が設けられ、テーパー部32の内側にはストレートにのびる胴部30が設けられる。このセンター周方向主溝12cの溝口12Mでの溝幅は、胴部30の溝幅WMで表される。
センター周方向主溝12cはサイプではない。胴部30の溝幅WMは1.0mm以上である。そして、この溝幅WMは、トレッド4が路面と接地するとセンター周方向主溝12cの一対の壁面24が互いに接触できるように設定される。つまり、このセンター周方向主溝12cの一対の壁面24は、トレッド4が路面と接地すると胴部30において接触する。
【0061】
本発明においては、周方向主溝12の中でも、トレッド4が路面と接地したとき、一対の壁面24が互いに接触することがある溝は、周方向細溝とも呼ばれる。
センター周方向主溝12cは周方向細溝38である。
【0062】
このタイヤ2のトレッド4に刻まれる複数の周方向主溝12は、周方向細溝38を含む。前述したように、トレッド4が路面と接地すると、周方向細溝38が有する一対の壁面24が胴部30において互いに接触する。
【0063】
このタイヤ2では、トレッド4が路面に接地した際に、陸部14同士が接触し互いに支え合うことができる。陸部14の変形が抑制されるので、このタイヤ2は転がり抵抗を低減でき、耐摩耗性を向上できる。
【0064】
周方向細溝38は、胴部30の内側に拡幅部34を有する。摩耗により、胴部30が消失すると、拡幅部34が露出する。拡幅部34は、胴部30の溝幅WMよりも広い溝幅を有するので、周方向細溝38の溝容積の増加に貢献できる。拡幅部34を有する周方向細溝38は、この拡幅部34を有さない周方向細溝に比して、路面とトレッド面6との間に存在する水を効果的に排出できる。摩耗により陸部14の剛性は見かけ上高まるものの、拡幅部が剛性の急な高まりを抑制するので、トレッド4が摩耗しても、このタイヤ2は、良好なウェット性能と、低い転がり抵抗を維持できる。
このタイヤ2は、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、ウェット性能の向上を図ることができる。
【0065】
ところで、前述したように、周方向細溝38は、溝口12Mから溝底12Tに向かって、テーパー部32、胴部30及び拡幅部34を有する。摩耗により、テーパー部32、胴部30及び拡幅部34が順に露出する。
【0066】
本発明者は、摩耗による陸部14のエッジ12Eの形状変化と、欠け、もげ等の損傷リスクとの関係について検討したところ、テーパー部32から胴部30に切り替わるタイミング、そして胴部30から拡幅部34に切り替わるタイミングにおいて、陸部エッジの損傷リスクが高まることを見出し、本発明のタイヤ2を完成するに至っている。以下に、陸部エッジの損傷リスクを低減するための技術が詳述される。
【0067】
図4において、符号B1、B2、B3及びB4は、周方向細溝38の輪郭線における特定の位置を表わす。位置B1はテーパー部32に含まれる。位置B2及びB3は胴部30に含まれる。位置B4は拡幅部34に含まれる。輪郭線のうち、位置B1から位置B2までの部分がテーパー部32から胴部30に移行する部分であり、外側移行部40と呼ばれる。位置B3から位置B4までの部分が胴部30から拡幅部34に移行する部分であり、内側移行部42と呼ばれる。
【0068】
このタイヤ2では、外側移行部40及び内側移行部42のそれぞれは単一の円弧で表される。言い換えれば、外側移行部40及び内側移行部42の輪郭線はともに円弧である。
【0069】
図4において矢印Rsは外側移行部40の輪郭を表す円弧(以下、外側円弧)の半径である。外側円弧は、位置B1においてテーパー部32の輪郭線と接し、位置B2において胴部30の輪郭線と接する。前述したように、胴部30の輪郭線は直線である。図示されないが、外側円弧の中心は、位置B2において胴部30の輪郭線に垂直に交わる直線上に位置する。
【0070】
図4において符号LB1で示される直線は、位置B1でのテーパー部32の輪郭線の延長線である。符号LB2で示される直線は、位置B2での胴部30の輪郭線の延長線である。符号P12で示される位置は、延長線LB1と延長線LB2との交点である。交点P12は、仮想的に設定されるテーパー部32と胴部30との境界位置(以下、仮想境界位置)である。
【0071】
図4において矢印Ruは内側移行部42の輪郭を表す円弧(以下、内側円弧)の半径である。内側円弧は、位置B3において胴部30の輪郭線と接し、位置B4において拡幅部34の輪郭線と接する。前述したように、胴部30の輪郭線は直線である。図示されないが、内側円弧の中心は、位置B3において胴部30の輪郭線に垂直に交わる直線上に位置する。
【0072】
図4において符号LB3で示される直線は、位置B3での胴部30の輪郭線の延長線である。符号LB4で示される直線は、位置B4での拡幅部34の輪郭線の延長線である。符号P34で示される位置は、延長線LB3と延長線LB4との交点である。交点P34は、仮想的に設定される胴部30と拡幅部34との境界位置(以下、仮想境界位置)である。
【0073】
前述したように、胴部30の輪郭線は直線である。胴部30は、周方向細溝38の中で、最も狭い溝幅WMを有する部分である。周方向細溝38の輪郭線において、最も狭い溝幅WMを有する部分が胴部30として特定される。この特定により、位置B2及びB3が求められる。
位置B2において胴部30の輪郭線に直交する直線を描き、この直線上に中心を有し、位置B2を通る円弧が描かれる。半径を変えながら円弧を描くことで、位置B2を基準として周方向細溝38の輪郭線との重複長さが最大となる円弧が求められる。この円弧で表される部分が外側移行部40であり、この円弧の端が位置B1として特定される。
位置B3において胴部30の輪郭線に直交する直線を描き、この直線上に中心を有し、位置B3を通る円弧が描かれる。半径を変えながら円弧を描くことで、位置B3を基準として周方向細溝38の輪郭線との重複長さが最大となる円弧が求められる。この円弧で表される部分が内側移行部42であり、この円弧の端が位置B4として特定される。
【0074】
このタイヤ2では、その子午線断面における周方向細溝38の輪郭線において、テーパー部32から胴部30に移行する部分を外側移行部40とし、胴部30から拡幅部34に移行する部分を内側移行部42としたとき、外側移行部40はテーパー部32の輪郭線と胴部30の輪郭線との両方と接する円弧で表される。そして、内側移行部42は、胴部30の輪郭線と拡幅部34の輪郭線との両方と接する円弧で表される。
【0075】
前述したように、このタイヤ2の周方向細溝38はテーパー部32を含む。テーパー部32では、トレッド4が摩耗しても、トレッド面と壁面24とがなす角度は鈍角である。陸部14のエッジにおいて欠け、もげ等の損傷は生じにくい。テーパー部32の溝幅は胴部30の溝幅よりも広いので、テーパー部32が、路面とトレッド面との間に存在する水の排出を促す。このタイヤ2は良好なウェット性能を発揮できる。
トレッド4がさらに摩耗すると、トレッド面に露出する部分はテーパー部32から胴部30に移行していく。
前述したように、テーパー部32から胴部30への移行部分である外側移行部40の輪郭は、単一の円弧で表される。外側移行部40では、陸部14のエッジに作用する力が効果的に分散される。外側移行部40が設けられていない場合に比べて、陸部エッジの損傷リスクが低減される。
トレッド4がさらに摩耗すると、トレッド面に露出する部分は、胴部30から拡幅部34に移行していく。
前述したように、胴部30から拡幅部34への移行部分である内側移行部42の輪郭は、単一の円弧で表される。内側移行部42では、内側移行部42が設けられていない場合に比べて、溝幅が徐々に広がる。トレッド4が摩耗しても、トレッド面と壁面24とがなす角度が、内側移行部42が設けられていない場合のそれに比べて大きく維持される。陸部エッジの剛性が適切に維持されるので、陸部エッジの損傷リスクが低減される。
【0076】
しかもこのタイヤ2の内側移行部42を表す円弧の半径Ruは、外側移行部40を表す円弧の半径Rsよりも大きい。
内側移行部42を表す円弧が大きな半径Ruを有するので、周方向細溝38の露出部分が胴部30から拡幅部34に移行する過程において、陸部エッジの剛性が適切に維持される。このタイヤ2は、陸部エッジの損傷リスクを効果的に低減できる。
これに対して外側移行部40を表す円弧が小さな半径Rsを有するので、タイヤ2は、周方向細溝38に占める胴部30の領域を効果的に拡大できる。小さな半径Rsを有する円弧で表される外側移行部40は、転がり抵抗の低減及び耐摩耗性の向上に効果的に貢献できる。
【0077】
前述したように、このタイヤ2は、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、ウェット性能の向上を図ることができる。このタイヤ2は、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とを達成できる。
【0078】
このタイヤ2では、内側移行部42を表す円弧の半径Ruは拡幅部34の最大溝幅WXよりも大きい。これにより、周方向細溝38の露出部分が胴部30から拡幅部34に移行する際の溝幅が徐々に広げられる。トレッド4が摩耗していく過程における、トレッド面と壁面24とがなす角度を、このタイヤ2はより大きく維持できる。陸部エッジの剛性が適切に維持されるので、陸部エッジの損傷リスクが低減される。この観点から、内側移行部42を表す円弧の半径Ruは拡幅部34の最大溝幅WXよりも大きいのが好ましい。
【0079】
前述したように、タイヤ2の子午線断面における周方向細溝38の輪郭線において、溝底部36は単一の円弧で表される。
図4において矢印Rbは溝底部36を表す円弧の半径である。
このタイヤ2では、内側移行部42を表す円弧の半径Ruは、溝底部36を表す円弧の半径Rbの3倍以上であるのが好ましい。言い換えれば、半径Ruの半径Rbに対する比(Ru/Rb)は3以上であるのが好ましい。これにより、周方向細溝38の露出部分が胴部30から拡幅部34に移行する際の溝幅が徐々に広げられる。トレッド4が摩耗していく過程における、トレッド面と壁面24とがなす角度を、このタイヤ2はより大きく維持できる。陸部エッジの剛性が適切に維持されるので、陸部エッジの損傷リスクが低減される。この観点から、比(Ru/Rb)は5以上であるのがより好ましい。拡幅部34がその機能を十分に発揮できる観点から、比(Ru/Rb)は20.0以下であるのが好ましい。
【0080】
前述したように、このタイヤ2の内側移行部42を表す円弧の半径Ruは、外側移行部40を表す円弧の半径Rsよりも大きい。転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクを効果的に低減できる観点から、内側移行部42を表す円弧の半径Ruの、外側移行部40を表す円弧の半径Rsに対する比(Ru/Rs)は2.0以上20.0以下であるのがより好ましい。
【0081】
拡幅部34の最大溝幅WXの、胴部30の溝幅WMに対する比(WX/WM)は2.5以上10.0以下であるのが好ましい。
比(WX/WM)は2.5以上に設定されることにより、露出した拡幅部34が路面とトレッド面6との間に存在する水の排出に効果的に貢献できる。トレッド4が摩耗しても、このタイヤ2は良好なウェット性能を維持できる。この観点から、比(WX/WM)は3.0以上であるのがより好ましい。
比(WX/WM)が10.0以下に設定されることにより、拡幅部34によるトレッド4の剛性への影響が抑制される。トレッド4の剛性が過剰に低まることが抑制されるので、周方向細溝38が転がり抵抗の低減と耐摩耗性の向上とに効果的に貢献できる。内側移行部42における溝幅の急な変化も抑制されるので、この内側移行部42には応力が集中しにくい。このタイヤ2は内側移行部42でのクラックの発生も抑制できる。この観点から、比(WX/WM)は5.0以下であるのがより好ましい。
【0082】
図4において両矢印d1で示される長さは、周方向細溝38の溝深さである。溝深さd1は、左右のエッジ12Eを結ぶ線分から溝底12Tまでの長さによって表される。
両矢印d2で示される長さは、溝口12Mから拡幅部34の最大溝幅位置PXまでの溝深さ(最大溝幅位置PXでの溝深さとも呼ばれる。)である。溝深さd2は、左右のエッジ12Eを結ぶ線分から最大溝幅位置PXまでの長さによって表される。
両矢印d3で示される長さは、テーパー部32の溝深さである。溝深さd3は、左右のエッジ12Eを結ぶ線分から仮想境界位置P12までの長さによって表される。
溝深さd1、d2及びd3は、前述の溝底12Tを通る、左右のエッジ12Eを結ぶ線分の法線LCに沿って計測される。
【0083】
溝口12Mから拡幅部34の最大溝幅MXを示す位置PXまでの溝深さd2の、周方向細溝38の溝深さd1に対する比(d2/d1)は0.6以上0.9以下であるのが好ましい。
比(d2/d1)が0.6以上に設定されることにより、このタイヤ2は、適正な大きさを有する拡幅部34を構成しながら、十分な長さを有する胴部30を構成できる。このタイヤ2は、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、ウェット性能の向上を図ることができる。この観点から、比(d2/d1)は0.7以上であるのがより好ましい。
比(d2/d1)が0.9以下に設定されることにより、拡幅部が適正な位置に設けられる。露出した拡幅部34が水の排出に効果的に貢献できる。トレッド4が摩耗しても、このタイヤ2は良好なウェット性能を維持できる。この観点から、比(d2/d1)は0.8以下であるのがより好ましい。
【0084】
テーパー部32の溝深さd3の、周方向細溝38の溝深さd1に対する比(d3/d1)は0.05以上0.3以下であるのが好ましい。
比(d3/d1)が0.05以上に設定されることにより、適正な大きさを有するテーパー部32が構成される。テーパー部32が、水の排出と陸部14のエッジ12Eの損傷リスクの低減とに貢献できる。このタイヤ2は良好なウェット性能を発揮できる。この観点から、比(d3/d1)は0.1以上であるのがより好ましい。
比(d3/d1)が0.3以下に設定されることにより、適正な大きさでテーパー部32が構成される。このタイヤ2は、陸部14の変形を抑制することに貢献できる胴部30を構成できる。この胴部30は転がり抵抗及び耐摩耗性の向上に貢献できる。この観点から、比(d3/d1)は0.2以下であるのがより好ましい。
【0085】
このタイヤ2の周方向細溝38の溝深さd1は、周方向太溝28の溝深さDGmと同じある、又は、周方向細溝38は、周方向太溝28よりも浅い。前述したように、周方向細溝38はその溝底12T側に拡幅部34を有する。摩耗により周方向太溝28の溝容積は減るが、拡幅部34が露出することで、拡幅部34が低減した溝容積を補うことに効果的に貢献できる。このタイヤ2は、摩耗によるウェット性能の低下を効果的に抑制できる。
この観点から、周方向細溝38の溝深さd1は、周方向太溝28の溝深さDGmと同じある、又は、周方向細溝38は、周方向太溝28よりも浅いのが好ましい。言い換えれば、周方向細溝38の溝深さd1の、周方向太溝28の溝深さDGmに対する比(d1/DGm)は1.0以下であるのが好ましい。
拡幅部34が適正な位置に配置され、低減した溝容積を補うことに効果的に貢献できる観点から、比(d1/DGm)は0.75以上であるのが好ましい。
【0086】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4には、4本の周方向主溝12が刻まれる。
4本の周方向主溝12のうち、2本の周方向主溝12、具体的には、2本のセンター周方向主溝が、トレッド面6の第一端TE1側のミドル陸部14m(以下、第一ミドル陸部14m1)と第二端TE2側のミドル陸部14m(以下、第二ミドル陸部14m21)との間に位置する。前述したように、センター周方向主溝12cは周方向細溝38である。
【0087】
図1から明らかなように、このタイヤ2の周方向細溝38のテーパー部32には、溝口12Mでの溝幅WGcが広い部分(以下、幅広部44)と、溝口12Mでの溝幅WGcが狭い部分(以下、幅狭部46)とが設けられる。
図1に示されるように、IV-IV線は幅広部44と交差する。前述の
図4に示された周方向細溝38のテーパー部32は、溝口12Mが広い幅広部44である。
【0088】
図5は、
図1のV-V線に沿った、周方向細溝38の断面図である。
図1においてV-V線は幅狭部46と交差する。V-V線は、軸方向にのび、子午線断面に含まれる。
図5に示された周方向細溝38のテーパー部32は、溝口12Mが狭い幅狭部46である。
図5に示された周方向細溝38の断面形状の構成は、テーパー部32を幅狭部46としたことを除いて、
図4に示された周方向細溝38の断面形状の構成と同じである。
【0089】
幅広部44の壁面24は、幅狭部46の壁面24の壁面24よりも大きく傾斜する。幅広部44は、陸部エッジの損傷リスクの低減に貢献できる。幅広部44は大きな溝容積を有するので、ウェット性能の向上に貢献できる。
これに対して幅狭部46は幅広部44に比べて小さな溝容積を有する。しかし幅狭部46は陸部14のボリュームを増加させるので、陸部14の剛性を高めることに貢献できる。幅狭部46は転がり抵抗の低減と耐摩耗性の向上とに貢献できる。
【0090】
このタイヤ2の周方向細溝38のテーパー部32は、溝口12Mが広い幅広部44と、溝口12Mが狭い幅狭部46とを含む。幅広部44と幅狭部46とは、周方向において交互に配置される。
【0091】
図4において両矢印WGwは、幅広部44の溝口12Mでの溝幅である。矢印Rswは、幅広部44から胴部30への移行部分としての外側移行部40の輪郭を表す円弧の半径である。半径Rswは、幅広部44の溝幅WGwと、胴部30の溝幅WMとを考慮して適宜設定される。
図5において両矢印WGnは、幅狭部46の溝口12Mでの溝幅である。矢印Rsnは、幅狭部46から胴部30への移行部分としての外側移行部40の輪郭を表す円弧の半径である。半径Rsnは、幅狭部46の溝幅WGnと、胴部30の溝幅WMとを考慮して適宜設定される。
【0092】
このタイヤ2では、幅広部44から胴部30への移行部分としての外側移行部40の輪郭を表す円弧の半径Rswと、幅狭部46から胴部30への移行部分としての外側移行部40の輪郭を表す円弧の半径Rsnとは同じである。このタイヤ2は、周方向において並んで配置される幅広部44と幅狭部46とを滑らかに繋げることができるので、幅広部44と幅狭部46との境界部分への応力集中を効果的に抑制できる。この観点から、幅広部44から胴部30への移行部分としての外側移行部40の輪郭を表す円弧の半径Rswと、幅狭部46から胴部30への移行部分としての外側移行部40の輪郭を表す円弧の半径Rsnとは同じであるのが好ましい。本発明においては、半径Rswと半径Rsnとが同じであるとは、半径Rswの半径Rsnに対する比(Rsw/Rsn)が0.95以上1.05以下であることを意味する。
【0093】
このタイヤ2は、周方向細溝38の全周にわたりテーパー部32を幅広部44で構成したタイヤに比べて、幅広部44による転がり抵抗や耐摩耗性への影響を抑制できる。
このタイヤ2は、周方向細溝38の全周にわたりテーパー部32を幅狭部46で構成したタイヤに比べて、幅狭部46による陸部エッジの損傷リスクやウェット性能への影響を抑制できる。
このタイヤ2は、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とを効果的に図ることができる。この観点から、周方向細溝38のテーパー部32は、溝口12Mが広い幅広部44と、溝口12Mが狭い幅狭部46とを含み、幅広部44と幅狭部46とは周方向において交互に配置されるのが好ましい。
【0094】
幅広部44と幅狭部46とを含むテーパー部32が、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とを図ることに効果的に貢献できる観点から、幅狭部46の溝幅WGnの、幅広部44の溝幅WGwに対する比(WGn/WGw)は0.3以上0.7以下であるのが好ましい。
【0095】
クラウン部分の剛性を効果的に高めることができ、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とをより効果的に図ることができる観点から、第一ミドル陸部14m1と第二ミドル陸部14m2との間に位置する周方向主溝12が全て周方向細溝38であるのがより好ましい。この場合、全ての周方向細溝38のテーパー部32が幅広部44と幅狭部46とを有するのがさらに好ましい。
【0096】
第一端TE1側の周方向細溝38と第二端TE2側の周方向細溝38とは、隣り合う2本の周方向細溝38である。
図1に示されるように、第一端TE1側の周方向細溝38の幅広部44は、第二端TE2側の周方向細溝38の幅狭部46と軸方向において重複する。隣り合う2本の周方向細溝38において幅広部44と幅狭部46とが軸方向において重複するように配置されることで、トレッド4全体の剛性が平準化される。これにより、剛性差に起因する偏摩耗の発生が抑制される。このタイヤ2は耐摩耗性の向上を図ることができる。この観点から、隣り合う2本の周方向細溝38においてトレッド面6の第一端TE1側の周方向細溝38の幅広部44が、その第二端TE2側の周方向細溝38の幅狭部46と軸方向において重複するのが好ましい。
【0097】
前述したように、ミドル周方向主溝12mは周方向太溝28である。
図3に示されるように、周方向太溝28の内側壁面24uは、溝口12Mにおけるトレッド面6の法線に対して傾斜する。
図3において角度θuは、内側壁面24uの傾斜角である。
【0098】
周方向太溝28の溝口12Mを構成する一対のエッジ12Eのうち赤道側に位置するエッジ12Euは、ミドル陸部14mの頂面のエッジでもある。
前述したように、このタイヤ2は、左右のミドル陸部14mの間に、狭い溝幅を有する胴部30を備えた周方向細溝38が配置される。ミドル陸部14mは、クラウン陸部14cに寄せて配置される。そのため、ミドル陸部14mのエッジ12Euには応力が集中しやすく、欠け等の損傷が生じることが懸念される。
【0099】
しかしこのタイヤ2では、前述したように、周方向太溝28の内側壁面24uは、溝口12Mにおけるトレッド面6の法線に対して傾斜する。エッジ12Euへの応力集中が抑制される。このタイヤ2は、ミドル陸部14mのエッジ12Euにおいて損傷が生じることを効果的に抑制できる。この観点から、周方向太溝28の内側壁面24uは、溝口12Mにおけるトレッド面6の法線に対して傾斜するのが好ましい。この場合、内側壁面24uの傾斜角θuは10度以上であるのがより好ましく、15度以上であるのがさらに好ましい。周方向太溝28の溝容積とミドル陸部14mの体積とをバランスよく整えることができる観点から、傾斜角θuは25度以下であるのが好ましく、20度以下であるのがより好ましい。
【0100】
図2に示されるように、周方向太溝28の外側壁面24sも、溝口12Mにおけるトレッド面6の法線に対して傾斜する。
図3において角度θsは、外側壁面24sの傾斜角である。
【0101】
図3に示されるように、外側壁面24sの傾斜角θsは内側壁面24uの傾斜角θuよりも小さい。これによりタイヤ2は、ショルダー陸部14sの頂面の面積を確保できる。ショルダー陸部14sの剛性が維持され、耐摩耗性の低下が抑制される。この観点から、外側壁面24sは内側壁面24uの傾斜角θuよりも小さい傾斜角θsを有するのが好ましい。
【0102】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とを達成できる、重荷重用タイヤが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明された、転がり抵抗の増加と耐摩耗性の低下とを抑制しつつ、陸部エッジの損傷リスクの低減とウェット性能の向上とを達成できる技術は、種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0104】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・トレッド面
12、12c、12c1、12c2、12m、12s・・・周方向主溝
14、14c、14m、14s・・・陸部
16、16m、16c・・・横溝
20、20m・・・縦溝
24、24a、24b、24s、24u・・・周方向主溝12の壁面
28・・・周方向太溝
30・・・胴部
32・・・テーパー部
34・・・拡幅部
36・・・拡幅部34の溝底部
38・・・周方向細溝
40・・・外側移行部
42・・・内側移行部
44・・・幅広部
46・・・幅狭部