(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160590
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】樹脂膜形成フィルム、樹脂膜形成用シートおよび樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/66 20060101AFI20241107BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241107BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241107BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20241107BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241107BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20241107BHJP
【FI】
C08G59/66
H01L21/78 M
C08J5/18 CFC
B32B27/38
B32B27/18 Z
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075752
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑耶
(72)【発明者】
【氏名】有光 晃二
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J036
5F063
【Fターム(参考)】
4F071AA33X
4F071AA42
4F071AA42X
4F071AB26
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4F100JL14B
4J036AA02
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4J036JA01
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4J036JA15
5F063AA18
5F063BA20
5F063EE22
5F063EE25
5F063EE29
(57)【要約】
【課題】酸素による重合阻害が発生しない樹脂膜形成フィルム、これを備える樹脂膜形成用シート、並びに、樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法を提供すること。
【解決手段】硬化後に樹脂膜となる樹脂膜形成フィルムであって、
前記樹脂膜形成フィルムが、エポキシ樹脂と、チオール基を有する化合物と、光塩基発生剤と、を含む樹脂膜形成フィルムである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化後に樹脂膜となる樹脂膜形成フィルムであって、
前記樹脂膜形成フィルムが、エポキシ樹脂と、チオール基を有する化合物と、光塩基発生剤と、を含む樹脂膜形成フィルム。
【請求項2】
前記樹脂膜形成フィルムが主面としてA面およびB面を有しており、
前記A面が酸素に接触している状態におけるエネルギー線照射後の前記A面のプローブタック値をT2とした時に、T2が0.01N以下である請求項1に記載の樹脂膜形成フィルム。
【請求項3】
前記樹脂膜形成フィルムが主面としてA面およびB面を有しており、
エネルギー線照射前の前記B面のプローブタック値をT1とし、前記A面が酸素に接触している状態におけるエネルギー線照射後の前記A面のプローブタック値をT2とした時に、下記に示すプローブタック値の変数Xが99.0%以上である請求項1または請求項2に記載の樹脂膜形成フィルム。
プローブタック値の変数X(%)=100×(T1-T2)/T1
【請求項4】
前記光塩基発生剤が非イオン型である請求項1または2に記載の樹脂膜形成フィルム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の樹脂膜形成フィルムと、前記樹脂膜形成フィルムの前記A面および前記B面の少なくとも一方の主面に剥離可能に配置された剥離フィルムと、を有する樹脂膜形成用シート。
【請求項6】
請求項1または2に記載の樹脂膜形成フィルムをワークの裏面に貼付する工程と、
貼付された樹脂膜形成フィルムを硬化して、ワークの裏面に樹脂膜を形成し、樹脂膜付きワークを得る工程と、
前記樹脂膜付きワークを個片化し、複数の樹脂膜付きワーク個片化物を得る工程と、を有する樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の樹脂膜形成用シートが備える樹脂膜形成フィルムをワークの裏面に貼付する工程と、
貼付された樹脂膜形成フィルムを硬化して、ワークの裏面に樹脂膜を形成し、樹脂膜付きワークを得る工程と、
前記樹脂膜付きワークを個片化し、複数の樹脂膜付きワーク個片化物を得る工程と、を有する樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法。
【請求項8】
エネルギー線の照射により、樹脂膜形成フィルムを硬化する請求項6に記載の樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法。
【請求項9】
エネルギー線の照射により、樹脂膜形成フィルムを硬化する請求項7に記載の樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂膜形成フィルム、樹脂膜形成用シートおよび樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法に関する。特に、半導体ウエハ等のワークまたはワークを加工して得られる半導体チップ等のワーク個片化物を保護するために好適に使用される樹脂膜形成フィルム、当該樹脂膜形成フィルムを備える樹脂膜形成用シート、並びに、樹脂膜が形成された半導体チップ等のワーク個片化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フリップチップボンディングと呼ばれる実装法により半導体装置を製造することが行われている。この実装法では、バンプ等の凸状電極が形成された回路面を有する半導体チップを実装する際に、半導体チップの回路面と基板のチップ搭載面とが対向するように半導体チップを反転(フェイスダウン)させて、半導体チップの回路面と基板のチップ搭載面とをワイヤレスで接合している。したがって、半導体チップの回路面とは反対側の面(回路が形成されていない面。以降、裏面とも言う。)は外部に露出する。
【0003】
半導体チップの裏面が外部に露出していると、その後の工程において搬送時等の衝撃に起因する割れや欠け等のチッピングが生じる恐れがある。そこで、このようなチッピングから半導体チップを保護するために、半導体チップの裏面には、有機材料から構成される硬質の樹脂膜が形成されることが多い。
【0004】
また、半導体チップは、その裏面に貼付された樹脂膜により、基板の回路形成面に接着される場合がある。このような樹脂膜を形成して接着するための樹脂膜形成フィルムはダイボンディングフィルムと呼ばれる。ダイボンディングにより半導体チップがダイボンディングフィルムを介して基板上に配置される。その後、必要に応じて、この半導体チップ上にさらに別の半導体チップが1個以上積層され、ワイヤボンディングを行った後、全体が樹脂により封止され、半導体パッケージが作製される。
【0005】
このような樹脂膜は、その前駆体である未硬化の樹脂フィルム(以降、樹脂膜形成フィルムとも言う。)を硬化させることにより形成される。樹脂膜形成フィルムは半導体ウエハの裏面に貼付され、樹脂膜形成フィルムの硬化前または硬化後に、半導体ウエハと樹脂膜形成フィルムまたは樹脂膜とがダイシングされて複数の小片に分割され(個片化され)、樹脂膜形成フィルムはその後に硬化させて樹脂膜を形成することができる。分割された小片は、裏面に樹脂膜を有する半導体チップ(樹脂膜付き半導体チップ)である。
【0006】
樹脂膜形成フィルムの硬化は、加熱により行われることが一般的であるが、紫外線等のエネルギー線の照射により行われることがあった。特許文献1は、エネルギー線硬化性成分と、光重合開始剤と、を含むエネルギー線硬化型チップ保護用フィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、エネルギー線の照射により、光重合開始剤からラジカルを発生し、このラジカルにより、アクリレートモノマー等のエネルギー線硬化性成分が重合して硬化する(ラジカル重合)。
【0009】
しかしながら、樹脂膜形成フィルムへのエネルギー線の照射が、樹脂膜形成フィルムが空気に曝露された状態で行われる場合、空気中に露出している樹脂膜形成フィルムの表面において、酸素による重合阻害が発生し、特に樹脂膜形成フィルムの表面が十分に硬化しないという問題があった。
【0010】
硬化が不十分である場合、硬化後の樹脂膜形成フィルム、すなわち、樹脂膜の表面におけるタックが、意図した程度に低減されず、残ってしまう。具体的には、樹脂膜形成フィルムが空気に曝露されない状態でエネルギー線の照射が行われる場合のタックと同程度までは、タックを低減することができず、残ってしまう。その結果、樹脂膜が形成されたウエハを次工程に搬送する際に、樹脂膜に搬送装置または搬送用部品を接触させてその後引き離す操作を行っても、樹脂膜が貼り付いたままで引き離せず、搬送不良が発生するという問題があった。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、酸素による重合阻害が発生しない樹脂膜形成フィルム、これを備える樹脂膜形成用シート、並びに、樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様は、以下の通りである。
【0013】
[1]硬化後に樹脂膜となる樹脂膜形成フィルムであって、樹脂膜形成フィルムが、エポキシ樹脂と、チオール基を有する化合物と、光塩基発生剤と、を含む樹脂膜形成フィルムである。
【0014】
[2]樹脂膜形成フィルムが主面としてA面およびB面を有しており、
A面が酸素に接触している状態におけるエネルギー線照射後のA面のプローブタック値をT2とした時に、T2が0.01N以下である[1]に記載の樹脂膜形成フィルムである。
【0015】
[3]樹脂膜形成フィルムが主面としてA面およびB面を有しており、
エネルギー線照射前のB面のプローブタック値をT1とし、A面が酸素に接触している状態におけるエネルギー線照射後のA面のプローブタック値をT2とした時に、下記に示すプローブタック値の変数Xが99.0%以上である[1]または[2]に記載の樹脂膜形成フィルムである。
プローブタック値の変数X(%)=100×(T1-T2)/T1
【0016】
[4]光塩基発生剤が非イオン型である[1]から[3]のいずれかに記載の樹脂膜形成フィルムである。
【0017】
[5][1]から[4]のいずれかに記載の樹脂膜形成フィルムと、樹脂膜形成フィルムのA面およびB面の少なくとも一方の主面に剥離可能に配置された剥離フィルムと、を有する樹脂膜形成用シートである。
【0018】
[6][1]から[4]のいずれかに記載の樹脂膜形成フィルム、または、[5]に記載の樹脂膜形成用シートが備える樹脂膜形成フィルムを、ワークの裏面に貼付する工程と、
貼付された樹脂膜形成フィルムを硬化して、ワークの裏面に樹脂膜を形成し、樹脂膜付きワークを得る工程と、
樹脂膜付きワークを個片化し、複数の樹脂膜付きワーク個片化物を得る工程と、を有する樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法である。
【0019】
[7]エネルギー線の照射により、樹脂膜形成フィルムを硬化する[6]に記載の樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、酸素による重合阻害が発生しない樹脂膜形成フィルム、これを備える樹脂膜形成用シート、並びに、樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る樹脂膜形成用シートの一例の断面模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムが裏面に貼付されたワーク(ウエハ)の一例の断面模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムが裏面に貼付されたワーク(ウエハ)において、当該樹脂膜形成フィルムの主面(A面)にエネルギー線を照射することを説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムが硬化されて得られる樹脂膜がワーク(ウエハ)の裏面に形成された樹脂膜付きワーク(ウエハ)の一例の断面模式図である。
【
図5】
図5は、樹脂膜付きワーク(ウエハ)を個片化して樹脂膜付きワーク個片化物(チップ)の集合体を得ることを説明するための断面模式図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る樹脂膜形成用複合シートの一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、図面を用いて詳細に説明する。まず、本明細書で使用する主な用語を説明する。
【0023】
ワークとは、本実施形態に係る樹脂膜形成用シートが備える樹脂膜形成フィルムが貼付されて、その後、個片化される板状体を言う。樹脂膜形成フィルムはワークの裏面に貼付される。ワークとしては、円形(ただし、オリエンテーションフラットを有する場合を含む)のウエハ、角形のパネルレベルパッケージおよびモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)等が挙げられ、その中でも本発明の効果が得られ易い観点から、ウエハが好ましい。ウエハとしては、例えばシリコンウエハ、ガリウム砒素ウエハ、炭化ケイ素ウエハ、窒化ガリウムウエハ、インジウム燐ウエハなどの半導体ウエハや、ガラスウエハ、タンタル酸リチウムウエハ、ニオブ酸リチウムウエハなどの絶縁体ウエハであってもよく、また、ファンアウトパッケージ等の作製に用いる樹脂と半導体から成る再構成ウエハであってもよい。本発明の効果が得られ易い観点から、ウエハとしては、半導体ウエハまたは絶縁体ウエハが好ましく、半導体ウエハがより好ましい。
【0024】
ワークの個片化は、ワークを回路毎に分割し、ワーク個片化物を得ることを言う。例えば、ワークがウエハである場合には、ワーク個片化物はチップであり、ワークがパネルレベルパッケージまたはモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)である場合には、ワーク個片化物は半導体パッケージである。
【0025】
ワークの「表面」は、回路、電極等が形成された面を指し、ワークの「裏面」は、回路等が形成されていない面を指す。電極としては、バンプ等の凸状電極であってもよい。
【0026】
「主面」とは、板状体を構成する面のうち、他の面よりも面積が大きい面を言う。通常、板状体は2つの主面とそれ以外の側面とを有しており、2つの主面は対向する。ワークにおいては、「表面」および「裏面」が主面である。
【0027】
「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0028】
「エネルギー線」は、紫外線、電子線等を指し、好ましくは紫外線である。
【0029】
「重量平均分子量」は、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8120GPC」に、高速カラム「TSK guard column HXL-H」、「TSK Gel GMHXL」、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用い、カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
【0030】
剥離フィルムは、樹脂膜形成フィルムを剥離可能に支持するフィルムである。フィルムとは、厚みを限定するものではなく、シートを含む概念で用いる。
【0031】
樹脂膜形成フィルム用組成物等の組成物に関する説明における質量比は、有効成分(固形分)に基づいており、特段の説明が無い限り、溶媒は算入しない。
【0032】
(1.樹脂膜形成用シート)
本実施形態に係る樹脂膜形成用シート1は、
図1に示す構成を有している。樹脂膜形成フィルム10は対向する2つの主面を有している。本実施形態では、主面10aをA面とし、主面10bをB面とする。A面10a上に、樹脂膜形成フィルム10を支持する第1剥離フィルム21が配置され、B面10b上に樹脂膜形成フィルム10を支持する第2剥離フィルム22が配置されている。後述するが、本実施形態では、A面はエネルギー線が照射される主面であり、B面はワークに貼付される主面である。
【0033】
また、樹脂膜形成用シートは、短手方向の長さに対する長手方向の長さが非常に長い長尺シートの形態であってもよい。また、このような長尺シートが巻き取られたシートロールの形態であってもよい。
【0034】
さらに、樹脂膜形成用シートは、ワークに貼付されるべき樹脂膜形成フィルムが所定の閉じた形状を有するように抜き加工された樹脂膜形成用シートであってもよい。所定の閉じた形状は特に制限されないが、貼付されることとなるワークと略同形状であることが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る樹脂膜形成用シートは、ワークを個片化する前に、当該ワークの裏面に樹脂膜形成フィルムを貼付し、樹脂膜形成フィルムを硬化して、当該ワークの裏面に樹脂膜を形成するために用いられる。樹脂膜が形成されたワーク(樹脂膜付きワーク)は公知の手段(たとえば、ブレードダイシング、ステルスダイシング(登録商標)等)により個片化され、ワーク個片化物としての樹脂膜付きチップが得られる。
【0036】
(2.樹脂膜形成フィルム)
本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムは、ワークに貼付され樹脂膜を形成する。樹脂膜としては、ワークまたはワーク個片化物を保護するための保護膜、ワーク個片化物を基板等に接着するための接着膜等が例示される。また、樹脂膜形成フィルムは、後述する樹脂膜形成フィルム用組成物を含む塗布剤を用いて、たとえば、剥離フィルム上に形成される。
【0037】
樹脂膜形成フィルムは、常温(23℃)で粘着性を有するか、加熱により粘着性を発揮することが好ましい。これにより、樹脂膜形成フィルムにワークを重ね合わせるときに両者を貼合できる。したがって、樹脂膜形成フィルムを硬化させる前に位置決めを確実に行うことができる。
【0038】
樹脂膜形成フィルムは1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。樹脂膜形成フィルムが複数層を有する場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層を構成する層の組み合わせは特に制限されない。
【0039】
本実施形態では、樹脂膜形成フィルムは1層(単層)であることが好ましい。1層の樹脂膜形成フィルムは厚みに関して高い精度が得られるため生産が容易である。また、樹脂膜形成フィルムが複数層から構成されると、層間の密着性および各層の伸縮性を考慮する必要があり、これらに起因して被着体からの剥離が発生するリスクがある。樹脂膜形成フィルムが1層である場合には、上記のリスクを低減でき、設計の自由度も高まる。また、温度変化が発生する工程(リフロー処理時や装置の使用時)で、層間の熱伸縮性の違いから層間剥離が発生するリスクも低減できる。
【0040】
本実施形態では、樹脂膜は、本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムを硬化することにより得られる。すなわち、本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムは硬化性である。硬化性樹脂膜形成フィルムにワークを重ね合わせた後、樹脂膜形成フィルムを硬化させることにより、樹脂膜をワークに強固に接着でき、耐久性を有する樹脂膜を形成できる。
【0041】
樹脂膜は、樹脂膜形成フィルムの硬化物であり、樹脂膜形成フィルムとは異なる。硬化物としては、たとえば、熱硬化物、エネルギー線硬化物が例示される。本実施形態では、樹脂膜は少なくともエネルギー線硬化物であることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムは、少なくともエネルギー線硬化性であることが好ましい。したがって、本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性であることに加えて、熱硬化性であってもよい。
【0042】
樹脂膜形成フィルムがエネルギー線硬化性である場合、ラジカル重合を利用して樹脂膜形成フィルムを硬化させることが一般的である。しかしながら、酸素が存在している環境、たとえば、空気中では、ラジカル重合は酸素により阻害されてしまい、重合が不十分となることが知られている。これは、空気と接触している樹脂膜形成フィルムの表面(たとえば、主面)において顕著であり、その結果、当該表面がべたつき、意図しない程度のタックが残ってしまう。意図しない程度のタックが残った表面は、たとえば他の部材等に貼り付きやすく、かつ他の部材等から引き離しにくい。
【0043】
したがって、樹脂膜形成フィルムが保護膜形成フィルムである場合、エネルギー線照射により保護膜が形成されたワークを次工程に搬送する際に、たとえば、構成部材に保護膜の表面を吸着させて保護膜付きワークを搬送する搬送装置を利用する場合、構成部材を当該表面から離脱させる操作を行っても当該構成部材から保護膜の表面が離れず、搬送不良が発生することがある。
【0044】
そこで、本実施形態では、酸素による重合阻害が発生しない組成を有する樹脂膜形成フィルムとしている。さらにそれにより、エネルギー線照射後に残存するタックに起因する搬送不良等をより抑制することができる。
【0045】
本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムは、エネルギー線照射前後のタックに関して、以下に示す物性を有していることが好ましい。
【0046】
本実施形態では、樹脂膜形成フィルムの主面が酸素に接触している状態で、当該主面にエネルギー線を照射した後における当該主面のプローブタックをT2とする。すなわち、T2は、酸素に接触している樹脂膜形成フィルムのA面にエネルギー線を照射して、照射後の当該A面(樹脂膜のA面)のプローブタック値である。T2は0.01N以下であることが好ましく、0.00Nであることがより好ましい。
【0047】
T2が上記の範囲内であることにより、エネルギー線照射後の樹脂膜形成フィルム(樹脂膜)は、次工程に搬送される際に、樹脂膜のA面に搬送装置等が接触しても、搬送装置等からより容易に引き離すことができる。その結果、搬送時の不良の発生をより抑制することができる。
【0048】
また、エネルギー線を照射する前におけるB面のプローブタックをT1とする。すなわち、A面と対向する主面であるB面のエネルギー線照射前のプローブタック値をT1とする。樹脂膜形成フィルムをワークの裏面に貼付しやすいことから、T1は0.10N以上であることが好ましく、0.5N以上であることがより好ましく、1N以上であることがさらに好ましく、2N以上であることが特に好ましい。
【0049】
本実施形態では、下記に示すように、T1およびT2を用いて表されるプローブタック値の変数Xが90%以上であることが好ましく、99.0%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましく、100.0%であることが特に好ましい。
プローブタック値の変数X(%)=100×(T1-T2)/T1
【0050】
エネルギー線照射前後におけるプローブタックの関係を示すプローブタック値の変数Xが上記の範囲内であることにより、樹脂膜形成フィルムのB面をワークの裏面により貼付しやすく、エネルギー線照射後の樹脂膜形成フィルム(樹脂膜)は、次工程に搬送される際に、樹脂膜のA面に搬送装置等が接触しても、搬送装置等からより容易に引き離すことができる。その結果、搬送時の不良の発生をより抑制することができる。
【0051】
また、樹脂膜形成フィルムのA面が酸素に接触していない状態におけるエネルギー線照射後のA面のプローブタックをT3とする。すなわち、T3は、酸素に接触していない樹脂膜形成フィルムのA面にエネルギー線を照射して、照射後の当該A面(樹脂膜のA面)のプローブタック値である。
【0052】
本実施形態では、意図しないタックの程度に相当する、プローブタック(T2)とプローブタック(T3)との差(T2-T3)が、0.01N以下であることが好ましく、0.00Nであることがより好ましい。
【0053】
なお、樹脂膜形成フィルムのA面が酸素に接触している状態とは、当該A面が酸素または酸素を含む気体に曝露されている状態をいう。具体的には、空気に曝露されている状態をいう。また、樹脂膜形成フィルムのA面が酸素に接触していない状態とは、当該A面が酸素または酸素を含む気体に曝露されていない状態をいう。たとえば、窒素ガスに曝露されている状態をいう。また、プローブタックの測定方法は、実施例において詳細に説明する。
【0054】
樹脂膜形成フィルムの厚みは、特に制限されないが、好ましくは100μm以下、80μm以下、60μm以下、45μm以下である。また、樹脂膜形成フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上、10μm以上、13μm以上である。樹脂膜形成フィルムの厚みは、上記の上限値および下限値から任意に選択して設定することができる。樹脂膜形成フィルムの厚みが上記範囲にあると、得られる樹脂膜の性能がより良好になる。
【0055】
なお、樹脂膜形成フィルムの厚みは、樹脂膜形成フィルム全体の厚みを意味する。たとえば、複数層から構成される樹脂膜形成フィルムの厚みは、樹脂膜形成フィルムを構成するすべての層の合計の厚みを意味する。
【0056】
(2.1.樹脂膜形成フィルム用組成物)
本実施形態では、樹脂膜形成フィルムは、樹脂膜形成フィルムを構成する組成物(樹脂膜形成フィルム用組成物)を用いて形成される。樹脂膜形成フィルム用組成物は、少なくとも、硬化性成分(B)としてのエポキシ樹脂と、チオール基を有する化合物(C)と、光塩基発生剤(D)と、を含有する樹脂組成物である。
【0057】
(2.2.硬化性成分)
硬化性成分(B)は、樹脂膜形成フィルムを硬化させて、硬化物としての樹脂膜を形成する。上述したように、樹脂膜はエネルギー線硬化物であることが好ましいので、硬化性成分としては、少なくともエネルギー線硬化性成分を含む成分を用いることができる。
【0058】
本実施形態では、硬化性成分(B)はエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂としては、後述するチオール基を有する化合物により硬化するものであればよい。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-ジシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等のように、分子内の炭素-炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドを挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0059】
上記のエポキシ樹脂の分子量(式量)は、好ましくは、300以上50000未満、300以上10000未満、300以上5000未満、300以上3000未満である。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、50~5000g/eqであることが好ましく、100~2000g/eqであることがより好ましく、150~1000g/eqであることがさらに好ましい。
【0060】
樹脂膜形成フィルム用組成物(固形分換算)の総重量を100質量部とした時の硬化性成分(B)の含有量は、好ましくは、3~50質量部、6~35質量部、8~20質量部である。硬化性成分を上記の割合で配合することにより、プローブタック値の変数Xを高くしやすく、硬化後の樹脂膜形成フィルム(樹脂膜)のプローブタック(T2)をより小さくしやすく、また、T2-T3をより小さくしやすい。
【0061】
(2.3.チオール基を有する化合物)
本実施形態では、硬化性成分(B)としてのエポキシ樹脂を硬化させる助剤(硬化剤)として、チオール基(-SH)を有する化合物(C)を用いる。
【0062】
チオール基を有する化合物は、塩基により水素が引き抜かれて(すなわち、脱プロトン化して)活性化する。脱プロトン化することにより、硬化性成分であるエポキシ樹脂との硬化反応が十分に進行する。
【0063】
チオール基を有する化合物としては、下記の構造式1~3で表される化合物が例示される。
【0064】
【化1】
構造式1中、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立にチオール基を有する1価の基、又は水素原子を示し、X
1、X
2、X
3及びX
4のうち2個以上はチオール基を有する1価の基である。
【0065】
【化2】
構造式2中、X
5、X
6及びX
7は、それぞれ独立にチオール基を有する1価の基、又は水素原子を示し、X
5、X
6及びX
7のうち2個以上はチオール基を有する1価の基である。
【0066】
【化3】
構造式3中、X
8及びX
9は、それぞれ独立にチオール基を有する1価の基を示し、R
1はアルキレン基を示す。R
1は、炭素数2~10のアルキレン基であってもよい。
【0067】
本実施形態では、チオール基を有する化合物は、2個以上のチオール基を有する化合物であることがより好ましく、3個以上のチオール基を有する化合物であることがさらに好ましく、4個以上のチオール基を有する化合物であることが特に好ましい。
【0068】
また、チオール基は1級チオール基、2級チオール基および3級チオール基のいずれであってもよいが、本実施形態では、1級チオール基または2級チオール基であることが好ましく、2級チオール基であることがより好ましい。
【0069】
構造式1~3において、チオール基を有する基が2級チオール基である場合、式4で表される基であってもよく、チオール基を有する基が1級チオール基である場合、式5または6で表される基であってもよい。
【0070】
【化4】
式4中、R
2はアルキレン基を示す。式5中、R
3はアルキレン基を示す。式6中、R
4はアルキレン基を示す。R
2は、炭素数1~8のアルキレン基であってもよい。R
3及びR
4は、炭素数2~10のアルキレン基であってもよい。
【0071】
2個以上のチオール基を有し、1級チオール基を含む化合物としては、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、4,4'-チオビスベンゼンチオール、4,4'-ビフェニルジチオール、1,5-ジメルカプトナフタレン、4,5-ビス(メルカプトメチル)-オルト-キシレン、1,3,5-ベンゼントリチオール、1,4-ブタンジオールビス(チオグリコレート)、ジチオエチスリトール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、3,7-ジチア-1,9-ノナンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリトリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリトリトールトリ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールトリ(3-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールエタン(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタン(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタン(3-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトイソブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトプロピルオキシ)ブタン、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、及びテトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
【0072】
2個以上のチオール基を有し、2級チオール基を含む化合物としては、下記の構造式7に示すペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、下記の構造式8に示す1,3,5-トリス(2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、下記の構造式9に示す1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリ(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタン(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)等が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、チオール基を有する化合物としては、硬化反応性がより良好であり、樹脂膜形成フィルムの保管安定性も比較的優れることから、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)が好ましい。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
樹脂膜形成フィルム用組成物(固形分換算)の総重量を100質量部とした時のチオール基を有する化合物(C)の含有量は、好ましくは1~20質量部、2.5~15質量部、4~12質量部、5~10質量部である。チオール基を有する化合物(C)の含有量を上記の範囲内とすることにより、プローブタック値の変数Xを高くしやすく、硬化後の樹脂膜形成フィルム(樹脂膜)のプローブタック(T2)をより小さくしやすく、また、T2-T3をより小さくしやすい。
【0078】
(2.4.光塩基発生剤)
本実施形態では、チオール基を有する化合物(C)の脱プロトン化を制御する触媒として、樹脂膜形成フィルム用組成物は光塩基発生剤(D)を含有する。光塩基発生剤は、光アニオン重合開始剤(Photo base generator)とも呼ばれ、エネルギー線の照射により、塩基を発生する化合物である。発生した塩基により上述したチオール基を有する化合物(C)の水素が引き抜かれ、当該チオール基を有する化合物の脱プロトン化が進行する。塩基の発生をエネルギー線の照射により制御できるため、上述したチオール基を有する化合物(C)を、保存安定性に優れた潜在性硬化剤とすることができる。また、樹脂膜の形成に、ラジカル重合を利用する場合には、光塩基発生剤は、塩基に加えて、ラジカルを発生してもよい。
【0079】
光塩基発生剤としては、分子構造中にイオン結合を有する光塩基発生剤(イオン型光塩基発生剤)であってもよいし、分子構造中にイオン結合を有していない光塩基発生剤(非イオン型光塩基発生剤)であってもよい。本実施形態では、光塩基発生剤を含む樹脂膜形成フィルムの保存安定性の観点から、非イオン型光塩基発生剤が好ましい。
【0080】
イオン型光塩基発生剤としては、カルボン酸塩、ボレートアニオンを含む塩、第4級アンモニウム塩、カルバメート等を分子構造中に含む化合物が例示される。このような化合物としては、(8E)-8-エチルイデン-4-メトキシ-5,6,7,8テトラヒドロナフタレン-1-カルボン酸1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン、1,2-ジソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピネート、1,2-ジシクロヘキシルー4,4,5,5-テトラメチルジグアジウムn-ブチルトリフェニルボレート、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン等が例示される。
【0081】
非イオン型光塩基発生剤としては、下記一般式(α1)で表される光塩基発生剤などが挙げられる。
【0082】
【化8】
式(α1)中、nは0~4の整数を表す。Rα
11は炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~18のアシル基、炭素数7~18のアロイル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のアルキルチオ基、水酸基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を表す。Rα
12は水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~18のアシル基、炭素数7~18のアロイル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のアルキルチオ基、水酸基またはハロゲン原子を表す。Xα
1はアミノ基を表す。
【0083】
式(α1)中、nは通常0~4の整数を表し、1~2の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。また、nが2の場合のR1の置換位置は、式(α1)中に明記されているベンゼン環上の-CHRα12-との結合位置を1位、-NO2との結合位置を2位とした場合の4位及び5位であることが好ましい。
【0084】
式(α1)中、Rα11は炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~18のアシル基、炭素数7~18のアロイル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のアルキルチオ基、水酸基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、Rα11が複数ある場合は、互いに異なっていてもよい。
【0085】
式(α1)のRα11が表す炭素数1~18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基及びn-ドデシル基等が挙げられ、炭素数2~6のアルキル基であることが好ましい。
【0086】
式(α1)のRα11が表す炭素数2~18のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、1-ブテニル基、iso-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2,2-ジシアノビニル基、2-シアノ-2-メチルカルボキシルビニル基及び2-シアノ-2-メチルスルホンビニル基等が挙げられる。
【0087】
式(α1)のRα11が表す炭素数2~18のアルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基及び1-ブチニル基等が挙げられる。
【0088】
式(α1)のRα11が表す炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基及びトリル基等が挙げられ、炭素数6~10のアリール基であることが好ましい。
【0089】
式(α1)のRα11が表す炭素数1~18のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、iso-プロピルカルボニル基、n-ブチルカルボニル基、n-ペンチルカルボニル基、iso-ペンチルカルボニル基、neo-ペンチルカルボニル基、2-メチルブチルカルボニル基及びニトロベンジルカルボニル基等が挙げられる。
【0090】
式(α1)のRα11が表す炭素数7~18のアロイル基としては、ベンゾイル基、トルオイル基、ナフトイル基及びフタロイル基等が挙げられる。
【0091】
式(α1)のRα11が表す炭素数1~18のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、iso-ペントキシ基、neo-ペントキシ基、n-ヘキシルオキシ基及びn-ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0092】
式(α1)のRα11が表す炭素数1~18のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、iso-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、iso-ペンチルチオ基、2-メチルブチルチオ基、1-メチルブチルチオ基、neo-ペンチルチオ基、1,2-ジメチルプロピルチオ基及び1,1-ジメチルプロピルチオ基等が挙げられる。
【0093】
式(α1)のRα11が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0094】
式(α1)におけるRα11としては炭素数1~18のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~10のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。Rα11が複数ある場合は、少なくとも一つのRα11がアルコキシル基であることが好ましく、すべてのRα11がアルコキシル基であることがより好ましい。
【0095】
式(α1)中、Rα12は水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~18のアシル基、炭素数7~18のアロイル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のアルキルチオ基、水酸基またはハロゲン原子を表す。
【0096】
式(α1)のRα12が表す炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~18のアシル基、炭素数7~18のアロイル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のアルキルチオ基及びハロゲン原子としては、式(α1)のRα11が表す炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~18のアシル基、炭素数7~18のアロイル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のアルキルチオ基及びハロゲン原子と同じものが挙げられる。
【0097】
式(α1)におけるRα12としては、水素原子または炭素数1~18のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0098】
式(α1)中、Xα1はアミノ基を表す。式(α1)におけるXα1が表すアミノ基は、置換アミノ基及び非置換アミノ基(NH2基)のいずれであってもよく、また該置換アミノ基はモノ置換アミノ基及びジ置換アミノ基の何れであってもよい。
【0099】
式(α1)で表される化合物の具体例としては、下記化合物(α1-1)~(α1-7)が挙げられる。
【0100】
【0101】
また、非イオン型光塩基発生剤としては、材料としての安定性とエネルギー線の照射による塩基の発生効率がより良好なことから、下記一般式(α2)で表されるクマル酸型の光塩基発生剤なども挙げられる。
【0102】
【化10】
一般式(α2)中、Rα
21及びRα
22は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。Rα
21及びRα
22は、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。但し、Rα
21及びRα
22の少なくとも1つは有機基である。Rα
23及びRα
24はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。Rα
25、Rα
26、Rα
27及びRα
28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。Rα
25、Rα
26、Rα
27及びRα
28は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。Rα
29は、水素原子又は有機基である。
【0103】
一般式(α2)中、Rα21及びRα22は、発生する塩基の塩基性の観点から、ともにアルキル基であるか、または、互いに結合した環状構造のアルキレン鎖を形成するものであることが好ましく、互いに結合した環状構造のアルキレン鎖を形成するものであることがもっとも好ましい。前記アルキル基またはアルキレン鎖を構成する炭素原子数は1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。
【0104】
一般式(α2)中、Rα23及びRα24は、水素原子、又はアルキル基であることが好ましく、ともに水素原子であることがもっとも好ましい。前記アルキル基は、炭素原子数が1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。
【0105】
一般式(α2)中、Rα25、Rα26、Rα27及びRα28は水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましく、すべて水素原子であることがもっとも好ましい。前記アルキル基は、炭素原子数が1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。前記アルコキシ基は、炭素原子数が1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。
【0106】
一般式(α2)中、Rα29は、水素原子、又はエネルギー線の照射及び/又は加熱により脱保護可能な保護基である有機基が好ましく、水素原子であることがもっとも好ましい。
【0107】
一般式(α2)で表されるクマル酸型の化合物としては、以下の化合物(α2-1)であることが好ましい。
【0108】
【0109】
また、非イオン型光塩基発生剤としては、下記一般式で表されるウレタン化合物(α3)-1も好ましい。
【0110】
【0111】
また、非イオン型光塩基発生剤としては、オキシムエステル化合物も好ましい。オキシムエステル化合物としては、光照射により塩基性物質を生成する化合物をいずれも使用することができる。また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する化合物も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式(α4)で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0112】
【化13】
一般式(α4)中、Xα
4は、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Yα
4、Zα
4はそれぞれ、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arα
4は、結合か、炭素数1~10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5-ピロール-ジイル、4,4'-スチルベン-ジイル、4,2'-スチレン-ジイルを表し、nは0か1の整数である。
【0113】
特に、前記一般式(α4)中、Xα4、Yα4が、それぞれメチル基又はエチル基であり、Zα4はメチル基又はフェニル基であり、nは0であり、Arα4は、結合か、フェニレン、ナフチレン、チオフェン又はチエニレンであることが好ましい。
【0114】
また、好ましいカルバゾールオキシムエステル化合物として、下記一般式(α5)で表すことができる化合物を挙げることもできる。
【0115】
【化14】
一般式(α5)中、Rα
51は、炭素原子数1~4のアルキル基、または、ニトロ基、ハロゲン原子もしくは炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。Rα
52は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、または、炭素原子数1~4のアルキル基もしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表す。Rα
53は、酸素原子または硫黄原子で連結されていてもよく、フェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基を表す。Rα
54は、ニトロ基、または、Xα
5-C(=O)-で表されるアシル基を表す。Xα
5は、炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアリール基、チエニル基、モルホリノ基、チオフェニル基、または、下記式で示される構造を表す。
【0116】
【0117】
上述した非イオン型光塩基発生剤の中でも、上記の一般式(α2)で表されるクマル酸型の光塩基発生剤が好ましく、(α2-1)に示す化合物であることがより好ましい。
【0118】
樹脂膜形成フィルム用組成物(固形分換算)の総重量を100質量部とした時の光塩基発生剤(D)の含有量は、好ましくは0.1~2質量部、0.2~1.5質量部、0.3~1質量部、0.4~0.7質量部である。光塩基発生剤を上記の割合で配合することにより、プローブタック値の変数Xを高くしやすく、硬化後の樹脂膜形成フィルム(樹脂膜)のプローブタック(T2)をより小さくしやすく、また、T2-T3をより小さくしやすい。
【0119】
なお、光塩基発生剤は、たとえば特開2009-80452号公報、特開2011-52214号公報、特開2021-177210号公報、特開2019-45735号公報等に記載の例を参考にして、縮合物として合成することができる。
【0120】
(2.5.重合体成分)
本実施形態では、樹脂膜形成フィルム用組成物は、上述した硬化性成分(B)、チオール基を有する化合物(C)および光塩基発生剤(D)に加えて、重合性成分を含むことが好ましい。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。重合体成分は、樹脂膜形成フィルムに、フィルム形成性(造膜性)を持たせつつ、適度なタックを与え、ワークへの樹脂膜形成フィルムの均一な貼り付けを確実にする。重合体成分の重量平均分子量は、通常は5万~200万、好ましくは10万~150万、特に好ましくは20万~100万の範囲にある。このような重合体成分としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が用いられ、特にアクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0121】
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体から導かれる構成単位とからなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0122】
本実施形態では、ワークへの接着性や粘着物性をコントロールするために、アクリル酸ヒドロキシエチル等を用いてアクリル樹脂に水酸基を導入することが好ましい。
【0123】
アクリル樹脂のガラス転移温度は好ましくは-70℃~40℃、-60℃~30℃、-50℃~25℃、-40℃~20℃、-35℃~15℃である。アクリル樹脂のガラス転移温度を上記の範囲内とすることにより、樹脂膜形成フィルムのタックを適度に高くすると共に、樹脂膜形成フィルムのワークとの粘着力を向上し、樹脂膜のワークとの接着力が適度に向上することがより容易となる。
【0124】
アクリル樹脂がm種(mは2以上の整数である。)の構成単位を有している場合、当該アクリル樹脂のガラス転移温度は以下のようにして算出することができる。すなわち、アクリル樹脂中の構成単位を誘導するm種のモノマーに対して、それぞれ1からmまでのいずれかの重複しない番号を順次割り当てて、「モノマーm」と名付けた場合、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、以下に示すFoxの式を用いて算出できる。
【0125】
【数1】
(式中、Tgはアクリル樹脂のガラス転移温度であり;mは2以上の整数であり;Tgkはモノマーmのホモポリマーのガラス転移温度であり;Wkはアクリル樹脂における、モノマーmから誘導された構成単位mの質量分率であり、ただし、Wkは下記式を満たす。)
【0126】
【数2】
(式中、m及びWkは、前記と同じである。)。
【0127】
Tgkとしては、高分子データ・ハンドブック、粘着ハンドブック又はPolymer Handbook等に記載されている値を使用できる。例えば、メチルアクリレートのホモポリマーのTgkは10℃、n-ブチルアクリレートのホモポリマーのTgkは-54℃、メチルメタクリレートのホモポリマーのTgkは105℃、2-ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーのTgkは-15℃、グリシジルメタクリレートのホモポリマーのTgkは41℃、2-エチルヘキシルアクリレートのホモポリマーのTgkは-70℃、エチルアクリレートのホモポリマーのTgkは-24℃、4-アクリロイルモルホリンのホモポリマーのTgkは145℃である。
【0128】
樹脂膜形成フィルム用組成物の総重量を100質量部とした時の重合体成分(A)の含有量は、好ましくは5~60質量部、8~50質量部、10~40質量部、12~30質量部である。重合体成分の含有量を上記の範囲内とすることにより、樹脂膜形成フィルムの粘着性の制御がより容易となり、樹脂膜形成フィルムのプローブタック(T1)を上述の範囲とすることがより容易となる。
【0129】
(2.6.充填材)
樹脂膜形成フィルムが充填材(E)を含有することにより、樹脂膜形成フィルムを樹脂膜化して得られる樹脂膜は、熱膨張係数の調整がより容易となり、この熱膨張係数をワーク(たとえば、半導体ウエハ)の熱膨張係数に近づけることで、樹脂膜形成フィルムを用いて得られた樹脂膜付きワーク個片化物の接着信頼性がより向上する。また、樹脂膜形成フィルムが充填材(E)を含有することにより、硬質な樹脂膜が得られ、さらに樹脂膜の吸湿率を低減でき、樹脂膜付きワーク個片化物の接着信頼性がさらに向上する。
【0130】
充填材(E)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、高温での形状安定性の観点から無機充填材であることが好ましい。
【0131】
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、シリカおよび表面改質されたシリカが好ましい。表面改質されたシリカは、カップリング剤により表面改質されていることが好ましく、シランカップリング剤により表面改質されていることがより好ましい。
【0132】
充填材の平均粒径は、好ましくは、0.02~10μm、0.05~5μm、0.10~3μmである。
【0133】
充填材の平均粒径の範囲を上記の範囲とすることにより、樹脂膜形成フィルム用組成物の取り扱い性が良好になる。その結果、樹脂膜形成フィルム用組成物および樹脂膜形成フィルムの品質が安定しやすい。
【0134】
なお、本明細書において「平均粒径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
【0135】
樹脂膜形成フィルム用組成物の総重量を100質量部とした時の充填材の含有量は、好ましくは15~80質量部、30~75質量部、40~70質量部、50~70質量部である。
【0136】
充填材の含有量の下限値を上記の値とすることにより、樹脂膜形成フィルムを用いて得られた樹脂膜付きワーク個片化物の接着信頼性がより向上する。また、充填材の含有量の上限値を上記の値とすることにより、樹脂膜形成フィルムのプローブタック(T1)を上述の範囲とすることがより容易となると共に、樹脂膜形成フィルムのワークとの粘着力を向上し、樹脂膜のワークとの接着力が適度に向上する。
【0137】
(2.7.着色剤)
樹脂膜形成フィルムは、着色剤(F)を含有することが好ましい。これにより、チップ等のワーク個片化物の裏面が隠蔽されるため、電子機器内で発生する種々の電磁波を遮断し、チップ等のワーク個片化物の誤作動を低減できる。
【0138】
着色剤(F)としては、例えば、有機系顔料、有機系染料、無機系顔料など公知のものを使用できる。本実施形態では、無機系顔料が好ましい。
【0139】
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。これらの中でも、特にカーボンブラックを使用することが好ましい。カーボンブラックによれば、広い波長範囲の電磁波を遮断できる。
【0140】
樹脂膜形成フィルム中における着色剤の配合量は、樹脂膜形成フィルムの厚さによっても異なるが、例えば樹脂膜形成フィルムの厚さが25μmの場合は、樹脂膜形成フィルム用組成物の総重量を100質量部とした時の着色剤の含有量は、好ましくは0.01~10質量部、0.03~7質量部、0.05~4質量部である。
【0141】
着色剤(特にカーボンブラック)の平均粒径は、好ましくは1~500nm、3~100nm、5~50nmである。着色剤の平均粒径が上記の範囲内にあると、光線透過率を所望の範囲に制御し易い。
【0142】
(2.8.その他の添加剤)
樹脂膜形成フィルム用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、その他の添加剤として、たとえば、カップリング剤、架橋剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、粘着付与剤、剥離剤等を含有していてもよい。
【0143】
(3.剥離フィルム)
剥離フィルムは、樹脂膜形成フィルムを剥離可能に支持できるフィルムである。
剥離フィルムは1層(単層)または2層以上の基材から構成されていてもよいし、剥離性を制御する観点から、基材の表面が剥離処理されていてもよい。すなわち、基材の表面が改質されていてもよいし、基材の表面に基材に由来しない材料(剥離剤層)が形成されていてもよい。
【0144】
基材としては、樹脂膜形成フィルムがワークに貼付されるまで樹脂膜形成フィルムを支持できる材料であれば特に限定されず、通常は樹脂系の材料を主材とするフィルム(以下「樹脂フィルム」という。)から構成される。
【0145】
樹脂フィルムの具体例として、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。本実施形態では、環境安全性、コスト等の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0146】
上記の樹脂フィルムは、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。
【0147】
剥離剤層は、基材の一方の面に、剥離剤層用組成物を含む塗布剤を塗布した後、その塗膜を乾燥および硬化させることにより得られる。剥離剤層用組成物は、基材に樹脂膜形成フィルムとの剥離性を付与できる材料であれば特に制限されない。本実施形態では、剥離剤層用組成物は、たとえば、アルキッド系離型剤、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、不飽和ポリエステル系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、ワックス系離型剤が好ましく、その中でも、シリコーン系離型剤が好ましい。剥離剤層の厚みは、特に制限されないが、30nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0148】
剥離フィルムの厚みは、特に制限されないが、好ましくは15~100μm、さらに好ましくは25~80μm、より好ましくは35~60μmである。
【0149】
なお、
図1に示すように樹脂膜形成フィルム10の両方の主面(A面10a,B面10b)に剥離フィルム21,22が形成されている場合は、一方の剥離フィルムの剥離力を大きくして重剥離型剥離フィルムとし、他方の剥離フィルムの剥離力を小さくして軽剥離型剥離フィルムとすることが好ましい。さらに、軽剥離型剥離フィルム側の面がワークに貼付される主面(B面)であり、重剥離型剥離フィルム側の面がエネルギー線が照射される主面(A面)であることが好ましい。なお、前記剥離力は、例えば、23℃、相対湿度50%の環境下において、剥離速度300mm/分、剥離角度180°で測ったものを採用できる。
【0150】
(4.樹脂膜形成フィルムおよび樹脂膜形成用シートの製造方法)
樹脂膜形成フィルムの製造方法は特に限定はされない。当該フィルムは、上述した樹脂膜形成フィルム用組成物、または、当該樹脂膜形成フィルム用組成物を溶媒により希釈して得られる組成物(前記2つの組成物を「塗布剤」と称す。)を用いて製造される。塗布剤は、樹脂膜形成フィルム用組成物を構成する成分を公知の方法により混合して調製される。
【0151】
得られる塗布剤を、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機を用いて、第1剥離フィルム21の剥離面に塗布して、必要に応じて乾燥させて、第1剥離フィルム21上に樹脂膜形成フィルムを形成する。
【0152】
次に、第1剥離フィルム21上に形成された樹脂膜形成フィルムの露出面に、さらに、第2剥離フィルム22の剥離面を貼り合わせすることにより、
図1に示す樹脂膜形成用シート1が得られる。
【0153】
(5.樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂膜形成フィルムを用いた樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法の一例として、樹脂膜形成フィルムが貼付されたワークを個片化して得られる樹脂膜付きワーク個片化物を得る方法について説明する。
【0154】
本実施形態に係る樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法は、少なくとも以下の工程1から工程3を有する。
工程1:上述した樹脂膜形成フィルムをワークの裏面に貼付する工程
工程2:貼付された樹脂膜形成フィルムを硬化して、ワークの裏面に樹脂膜を形成し、樹脂膜付きワークを得る工程
工程3:当該樹脂膜付きワークを個片化し、複数の樹脂膜付きワーク個片化物を得る工程
【0155】
本実施形態では、工程2において、エネルギー線の照射により樹脂膜形成フィルムを硬化させることが好ましい。
【0156】
上記の工程1から工程3を有し、工程2において、エネルギー線の照射により樹脂膜形成フィルムを硬化させる、樹脂膜付きワーク個片化物の製造方法を図を用いて説明する。以下では、樹脂膜形成用シートが保護膜形成用シート、樹脂膜形成フィルムが保護膜形成フィルム、樹脂膜が保護膜、ワークがウエハ、ワーク個片化物がチップ、第1剥離フィルムが重剥離型剥離フィルム、第2剥離フィルムが軽剥離型剥離フィルムである場合について説明する。
【0157】
(工程1)
図1に示す樹脂膜形成用シート(保護膜形成用シート)1は、保護膜形成用シートが巻回されたシートロールとして保管され、使用時に当該シートロールから繰り出されて、保護膜形成フィルムが所定の形状に切断されたシートである。当該所定の形状は、貼付されることとなるワーク6と略同形状であってもよい。
【0158】
保護膜形成用シート1から、第2剥離フィルム22を剥離して、
図2に示すように、保護膜形成フィルム10のB面10bをワーク6(ウエハ)の裏面6bに貼付する。すなわち、B面10bは、ワークに貼付される主面である。上述したように、ワークに貼付されるB面のプローブタック(T1)が上記の範囲内であることにより、エネルギー線照射前には、保護膜形成フィルム10がワーク6に良好に貼り付き固定される。
【0159】
(工程2)
貼付後、
図3に示すように、第1剥離フィルム21を剥離して、保護膜形成フィルム10のA面10aを露出する。露出した保護膜形成フィルム10のA面10aに対して、エネルギー線照射源80からエネルギー線ERを照射する。これにより、保護膜形成フィルム10は硬化して保護膜11を形成し、
図4に示すように、保護膜付きウエハ100が得られる。エネルギー線の照度および光量は、保護膜形成フィルムが十分硬化できる条件とすればよい。本実施形態では、たとえば、エネルギー線の照度は、30~280mW/cm
2、エネルギー線の光量は、500~5000mJ/cm
2とすればよい。
【0160】
工程2は空気下において行われるため、第1剥離フィルムを剥離することにより、保護膜形成フィルムのA面10aは酸素と接触する。しかしながら、保護膜形成フィルムは上述した組成を有しているので、保護膜形成フィルムのA面10aが酸素と接触した状態で、当該A面10aに対してエネルギー線を照射しても、酸素による重合阻害が発生しない。したがって、当該A面10aも十分に硬化し、硬化後の保護膜形成フィルム(保護膜)のA面11aのタックを、意図した程度に低減することができる。さらに、当該タックを上述した搬送不良が発生しない程度に低減しやすい。
【0161】
(工程3)
得られた保護膜付きウエハを搬送した後、
図5に示すように、当該保護膜付きウエハおよびリングフレーム7を公知のダイシングシート80上に貼付し、保護膜付きウエハを公知のダイシング方法によりダイシングして、保護膜11を有するチップ(保護膜付きチップ100a)を得る。また、必要に応じて、保護膜に対して、レーザーマーキング等を行ってもよい。
【0162】
得られた保護膜付きチップは吸着コレット等によりピックアップして回収される。ピックアップされた保護膜付きチップは次工程に搬送してもよいし、トレイ、テープ等に一時的に収納保管して、所定の期間後に次工程に搬送してもよい。次工程に搬送された保護膜付きチップ100aは基板に実装される。
【0163】
(6.変形例)
上述した実施形態では、光塩基発生剤に対してエネルギー線を照射し、塩基を発生させる光塩基発生剤を用いて、硬化反応を制御したが、エネルギー線照射に加えて、加熱することにより、塩基を発生させる光塩基発生剤を用いてもよい。特に、100~200℃での加熱により、塩基を発生できるイオン型光塩基発生剤が好ましい。また、エネルギー線照射に追加して加熱することにより、エネルギー線照射で放出された塩基によるチオール基の脱プロトン化、及び硬化反応をより促進させてもよい。その際の加熱温度は50~200℃が好ましい。
【0164】
このような光塩基発生剤を用いることにより、用途等に応じて、エネルギー線照射による硬化反応と、加熱による硬化反応と、を選択して、樹脂膜形成フィルムを適切に硬化することができる。
【0165】
また、上述した実施形態では、樹脂膜形成フィルムが保護膜形成フィルムである場合について説明したが、樹脂膜形成フィルムが、ダイボンディングフィルムのような接着膜形成フィルムであってもよい。たとえば、光塩基発生剤を含む樹脂膜形成フィルム付きワークの樹脂膜形成フィルム側に、公知のダイシングシートを貼付して、公知のダイシング方法により個片化した後に、エネルギー線を照射して樹脂膜形成フィルムを硬化させた場合、各樹脂膜形成フィルム付きワーク個片化物においてダイシングによる切断面に位置する樹脂膜形成フィルムは空気に露出することになるが、酸素による重合阻害は発生しない。したがって、当該切断面に位置する空気に露出された樹脂膜形成フィルムであっても、エネルギー照射後に意図した程度にタックを低減できる。それによって、たとえば、ピックアップしてダイシングシートから剥がす際に、エネルギー線硬化が不十分な樹脂膜形成フィルムの残渣物がダイシングシート上に残るリスクを低減できる。樹脂膜形成フィルムが、接着膜形成フィルムである場合、樹脂膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性であることに加えて、接着性を高めるために熱硬化性であることが好ましい。これにより、たとえば回路基板とワーク個片化物とを、熱硬化を用いて、より強固に接着しやすい。
【0166】
また、上述した実施形態では、樹脂膜形成フィルムを含む構成体として、
図1に示す樹脂膜形成用シート1について説明したが、樹脂膜形成フィルムを含む構成体としては、樹脂膜形成フィルムと、樹脂膜形成フィルムを支持する支持シートと、を有する樹脂膜形成用複合シートであってもよい。支持シートは、剥離フィルム以外であって、樹脂膜形成フィルムを支持できる構成を有していればよい。ここでは、支持シートは、基材および粘着剤層を有する粘着シートであることが好ましい。
【0167】
粘着シートの基材は、ワークの加工、例えばウエハのダイシング等に適するものであれば、公知の材料を用いることができる。通常は樹脂系の材料を主材とするフィルム(樹脂フィルム)から構成される。
【0168】
粘着シートが備える粘着剤層は、非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよい。非エネルギー線硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用できる。エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。
【0169】
図6に、樹脂膜形成用複合シート2の構成の一例を示す。樹脂膜形成用複合シート2は、基材41の一方の面に粘着剤層42が積層されてなる粘着シート4と、粘着シート4の粘着剤層42上にA面10aが接するように積層された樹脂膜形成フィルム10と、樹脂膜形成フィルム10のB面10b上に配置された剥離フィルム23と、を備える構成を有している。さらに、樹脂膜形成フィルム10の周縁部上に治具用粘着剤層(図示せず)が配置されていてもよい。治具用粘着剤層は、樹脂膜形成用複合シートをリングフレーム等の治具に接着するための層である。
【0170】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例0171】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0172】
(樹脂膜形成用シートの作製)
樹脂膜形成用シートを、下記の樹脂膜形成フィルム用組成物を含む塗布剤を用いて以下のように作製した。
【0173】
(樹脂膜形成フィルム用組成物を含む塗布剤)
次の各成分を表1に示す配合比(固形分換算)で混合し、固形分濃度が50質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、樹脂膜形成フィルム用組成物を含む塗布剤を調製した。
【0174】
(A)重合体成分
(A-1):n-ブチルアクリレート10質量部、メチルアクリレート70質量部、グリシジルメタクリレート5質量部および2-ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:40万、ガラス転移温度:-1℃)
(A-2):n-ブチルアクリレート33質量部、メチルアクリレート27質量部、4-アクリロイルモルホリン25質量部および2-ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:70万、ガラス転移温度:2℃)
(B)エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER828、23℃・1atmで液状、分子量370、軟化点93℃、エポキシ当量184~194g/eq)
(C)チオール基を有する化合物:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(レゾナック社製、カレンズMT(登録商標)PE1)
(D)光塩基発生剤:非イオン型光塩基発生剤(以下の化学構造を有する化合物、E)-N-cyclohexyl-N-((E)-(cyclohexylimino)(piperidin-1-yl)methyl)-3-(2-hydroxyphenyl)acrylamide)
【化16】
(E)充填材:シリカフィラー(溶融石英フィラー、平均粒子径8μm)
(F)着色剤
(F-1)黒色顔料(フタロシアニン系青色色素(Pigment Blue 15:3)32質量部と、イソインドリノン系黄色色素(Pigment Yellow 139)18質量部と、アントラキノン系赤色色素(Pigment Red 177)50質量部とを混合し、前記3種の色素の合計量/スチレンアクリル樹脂量=1/3(質量比)となるように顔料化して得られた顔料。)
(F-2)カーボンブラック(三菱ケミカル社製、MA-600B、平均粒径20nm)
(G)エネルギー線硬化性化合物
(G-1)ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製、A-9300-1CL、3官能紫外線硬化性化合物)
(G-2)ウレタンアクリレート(KJケミカルズ社製、Quick cure 8100EA70)
(H)光ラジカル開始剤
(H-1)2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(IGM Resins社製、Omnirad(登録商標)127D)
(H-2)2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン(IGM Resins社製、Omnirad(登録商標)369)
(I)紫外線吸収剤:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製、Tinuvin(登録商標)479)。
【0175】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1剥離フィルム(リンテック社製、SP-PET382150、厚さ38μm)と、PETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2剥離フィルム(リンテック社製、SP-PET381031、厚さ38μm)とを用意した。
【0176】
第1剥離フィルムの剥離面上に、上記で調製した樹脂膜形成フィルム用組成物を含む塗布剤を、最終的に得られる樹脂膜形成フィルムの厚さが25μmとなるように、ナイフコーターにて塗布した後、オーブンを用いて120℃で2分間乾燥させて、樹脂膜形成フィルムを形成した。次いで、樹脂膜形成フィルムに第2剥離フィルムの剥離面を重ねて両者を貼り合わせ、第1剥離フィルムと、樹脂膜形成フィルム(厚さ:25μm)と、第2剥離フィルムと、からなる実施例1、2および比較例1、2の樹脂膜形成用シートを得た。
【0177】
【0178】
得られた樹脂膜形成用シートを用いて、下記の測定および評価を行った。
【0179】
(硬化前の樹脂膜形成フィルムのB面のプローブタック(T1))
実施例および比較例で得られた樹脂膜形成用シートを10mm×10mmのサイズに切り出し、第2剥離フィルム(軽剥離型剥離フィルム)を剥離して、露出した樹脂膜形成フィルムのB面(
図1では、B面10b)をプローブタックテスターの治具(20g)に貼付して試験片とした。23℃、相対湿度50%の環境下において、プローブタックテスター(テスター産業社製、TE-6001)を用いて、接触速度が1mm/秒、接触時間が1秒、引き剥がし速度が1mm/秒の条件で、プローブタックテスターのプローブ(プローブ径:5.05mmφ)を樹脂膜形成フィルムの第2剥離フィルム側のB面(
図1では、B面10b)に接触させてから引き剥がすことにより、硬化前の樹脂膜形成フィルムのB面のプローブタックを測定した。この測定を、試験片を変更して7回測定した。7つの測定値のうち、最大値および最小値を除外した5つの測定値の平均値をT1とした。結果を表1に示す。
【0180】
(樹脂膜形成フィルムのA面が酸素に接触している状態におけるエネルギー線照射後のA面のプローブタック(T2))
実施例および比較例で得られた樹脂膜形成用シートを25mm×25mmのサイズに切り出し、第2剥離フィルム(軽剥離型剥離フィルム)を剥離して、露出した樹脂膜形成フィルムのB面(
図1では、B面10b)に、厚みが38μmで25mm×25mmサイズの良接着PET(東洋紡社製、PET38A-4100)の良接着面を熱ラミネート(70℃,1m/min)して、PETフィルム/樹脂膜形成フィルム/第1剥離フィルムの構成を有する積層体サンプルとした。
【0181】
当該積層体サンプルを、10mm×10mmのサイズに切り出し、第1剥離フィルム(重剥離型剥離フィルム)を剥離して、樹脂膜形成フィルムのA面(
図1では、A面10a)を露出させた。紫外線照射装置(CCS社製、HLDL-120U6-NWPSC)を用いて、照度が100mW/cm
2、光量が2000mJ/cm
2の条件で、空気下で、露出した樹脂膜形成フィルムのA面に紫外線を照射して、樹脂膜形成フィルムを硬化させ、樹脂膜とした。エネルギー線照射後、樹脂膜を2時間静置した。2時間静置後の樹脂膜のA面を、プローブタックテスターの治具(20g)に貼付した。23℃、相対湿度50%の環境下において、プローブタックテスター(テスター産業社製、TE-6001)を用いて、接触速度が1mm/秒、接触時間が1秒、引き剥がし速度が1mm/秒の条件で、プローブタックテスターのプローブ(プローブ径:5.05mmφ)を樹脂膜のA面に接触させてから引き剥がすことにより、A面にエネルギー線を照射した後におけるA面のプローブタックを測定した。この測定を、試験片を変更して7回測定した。7つの測定値のうち、最大値および最小値を除外した5つの測定値の平均値をT2とした。結果を表1に示す。なお、樹脂膜がプローブタックテスターの治具(20g)に十分に貼り付かない場合には、粘着性を有する5μm厚のアクリル樹脂を用いて貼り付けて測定に用いたが、プローブタックテスターのプローブは、樹脂膜にのみ接触させたため、T2への影響はない。
【0182】
算出したT1およびT2から、下記に示すプローブタック値の変数Xを算出した。結果を表1に示す。
プローブタック値の変数X(%)=100×(T1-T2)/T1
【0183】
(樹脂膜形成フィルムのA面が酸素に接触していない状態におけるエネルギー線照射後のA面のプローブタック(T3))
空気下ではなく、空気を窒素ガスで置換した窒素雰囲気下で紫外線照射を行った以外は、上記のT2の測定方法と同じ方法により、樹脂膜のA面のプローブタックを測定し、T3を算出した。結果を表1に示す。なお、比較例2については、プローブタック値の変数Xが上述した好適な範囲とならなかったことに伴い、プローブタック(T3)の評価は実施しなかった。
【0184】
算出したT2およびT3から、下記に示すプローブタック(T2)とプローブタック(T3)との差を算出した。結果を表1に示す。
プローブタック(T2)とプローブタック(T3)との差=T2-T3
【0185】
表1より、樹脂膜形成フィルムが上述した成分を含む場合に、プローブタック(T2)とプローブタック(T3)との差が上述した範囲内となり、樹脂膜形成フィルムのA面が酸素に接触している状態で、A面にエネルギー線を照射した後であっても、意図しない程度のタックが残らないことが確認できた。