IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧 ▶ コンクリートコーリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コンクリート床版の切断方法 図1
  • 特開-コンクリート床版の切断方法 図2
  • 特開-コンクリート床版の切断方法 図3
  • 特開-コンクリート床版の切断方法 図4
  • 特開-コンクリート床版の切断方法 図5
  • 特開-コンクリート床版の切断方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160596
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】コンクリート床版の切断方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075770
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391059414
【氏名又は名称】コンクリートコーリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 英一
(72)【発明者】
【氏名】奥山 信博
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 伸明
(72)【発明者】
【氏名】尾田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉本 高
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】中山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小澤 純
(72)【発明者】
【氏名】永山 貴光
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】切断装置の設置や撤去に係る手間や時間を軽減できるコンクリート床版の切断方法を提供する。
【解決手段】桁軸方向に直交する桁軸直交方向に間隔をあけて配置された鋼桁21の上に接合されたコンクリート床版22における鋼桁21の直上となる桁上床版24を、鋼桁21の上面よりも上方の切断高さにおいて循環回転するワイヤーソー5で切断する第1切断工程と、桁上床版24と桁軸直交方向に隣接し桁軸直交方向に隣り合う鋼桁21の間の直上となる桁間床版25を、切断高さから下端までワイヤーソー5で切断する第2切断工程と、を有し、第1切断工程では、ワイヤーソー5を桁上床版24の桁軸直交方向の一方側から他方側に向かって桁間床版25に達するまで移動させ、第2切断工程は、第1切断工程において桁間床版25に達したワイヤーソー5を桁間床版25の下方まで移動させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁軸方向に直交する桁軸直交方向に間隔をあけて配置された鋼桁の上に接合されたコンクリート床版における前記鋼桁の直上となる桁上床版を、前記鋼桁の上面よりも上方の切断高さにおいて循環回転するワイヤーソーで切断する第1切断工程と、
前記桁上床版と前記桁軸直交方向に隣接し前記桁軸直交方向に隣り合う前記鋼桁の間の直上となる桁間床版を、前記切断高さから下端まで前記ワイヤーソーで切断する第2切断工程と、を有し、
前記第1切断工程では、前記ワイヤーソーを前記桁上床版の前記桁軸直交方向の一方側から他方側に向かって前記桁間床版に達するまで移動させ、
前記第2切断工程は、前記第1切断工程において前記桁間床版に達した前記ワイヤーソーを前記桁間床版の下方まで移動させるコンクリート床版の切断方法。
【請求項2】
前記第1切断工程の前に、前記コンクリート床版における前記桁上床版と前記桁間床版との境界部に前記コンクリート床版の上面から前記切断高さまで達する上下方向に延びる確認孔を設ける確認孔形成工程を有し、
前記第1切断工程において前記ワイヤーソーが前記確認孔を横切った後に、前記第2切断工程を行う請求項1に記載のコンクリート床版の切断方法。
【請求項3】
前記コンクリート床版は、前記鋼桁との接続部にハンチ部を有し、
前記桁間床版の下面には、前記桁上床版との境界部から前記桁上床版と離れる側に向かって漸次上側に向かう前記ハンチ部の傾斜面が形成され、
前記第2切断工程では、前記ワイヤーソーを前記桁間床版における前記桁上床版側の端部から前記桁上床版と離れる側に向かって漸次下側に向かう斜め方向に移動させ、前記傾斜面を切断するようにして前記桁間床版を切断する請求項1または2に記載のコンクリート床版の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床版の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼桁とコンクリート床版とがずれ止めで接合されて一体化した合成桁では、コンクリート床版を交換する際にジャッキアップによってコンクリート床版を鋼桁から剥離させて撤去することができない。このため、既設の合成桁のコンクリート床版を撤去する際には、コンクリート床版における鋼桁の直上の部分(桁上床版)をループ状のワイヤーソーを備える切断装置で切断して鋼桁から切り離している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-31868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤーソーを水平方向に移動させて桁上床版を切断する場合、鋼桁の上面よりも上方の位置において切断を行うため、鋼桁と干渉しない位置においてコンクリート床版を下端まで切断する必要がある。このため、コンクリート床版をロードカッターなどの切断装置で上下方向に切断する必要がある。すなわち、コンクリート床版の切断には、ワイヤーソーを備える切断装置およびロードカッターなどの切断装置の両方が必要となり、設置や撤去に係る手間や時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、切断装置の設置や撤去に係る手間や時間を軽減できるコンクリート床版の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート床版の切断方法は、桁軸方向に直交する桁軸直交方向に間隔をあけて配置された鋼桁の上に接合されたコンクリート床版における前記鋼桁の直上となる桁上床版を、前記鋼桁の上面よりも上方の切断高さにおいて循環回転するワイヤーソーで切断する第1切断工程と、前記桁上床版と前記桁軸直交方向に隣接し前記桁軸直交方向に隣り合う前記鋼桁の間の直上となる桁間床版を、前記切断高さから下端まで前記ワイヤーソーで切断する第2切断工程と、を有し、前記第1切断工程では、前記ワイヤーソーを前記桁上床版の前記桁軸直交方向の一方側から他方側に向かって前記桁間床版に達するまで移動させ、前記第2切断工程は、前記第1切断工程において前記桁間床版に達した前記ワイヤーソーを前記桁間床版の下方まで移動させる。
【0007】
本発明では、ワイヤーソーを桁軸直交方向に移動させて桁上床版を切断する第1切断工程を行い、連続してワイヤーソーを桁間床版において下方に移動させて切断する第2切断工程を行っている。このため、コンクリート床版を切断する際に、コンクリート床版を水平方向に切断する装置および上下方向に切断する装置の両方を設置する必要が無く、切断装置の設置や撤去に係る手間や時間を軽減できる。
【0008】
また、本発明に係るコンクリート床版の切断方法では、前記第1切断工程の前に、前記コンクリート床版における前記桁上床版と前記桁間床版との境界部に前記コンクリート床版の上面から前記切断高さまで達する上下方向に延びる確認孔を設ける確認孔形成工程を有し、前記第1切断工程において前記ワイヤーソーが前記確認孔を横切った後に、前記第2切断工程を行ってもよい。
【0009】
第2切断工程を行う際に、ワイヤーソーが鋼桁に接触すると鋼桁が損傷する虞がある。このため、第2切断工程は、第1切断工程でワイヤーソーが桁間床版まで移動した後に行う必要がある。第1切断工程において、確認孔の内部を上方から見てワイヤーソーが確認孔を横切ったことを確認できると、ワイヤーソーが桁間床版に移動していることになる。このため、ワイヤーソーが確認孔を横切った後に第2切断工程を行えば、ワイヤーソーが鋼桁に接触することを防止できる。
【0010】
また、本発明に係るコンクリート床版の切断方法では、前記コンクリート床版は、前記鋼桁との接続部にハンチ部を有し、前記桁間床版の下面には、前記桁上床版との境界部から前記桁上床版と離れる側に向かって漸次上側に向かう前記ハンチ部の傾斜面が形成され、前記第2切断工程では、前記ワイヤーソーを前記桁間床版における前記桁上床版側の端部から前記桁上床版と離れる側に向かって漸次下側に向かう斜め方向に移動させ、前記傾斜面を切断するようにして前記桁間床版を切断してもよい。
【0011】
コンクリート床版にハンチ部が設けられている場合、ハンチ部全体を桁軸直交方向に切断すれば、コンクリート床版を鋼桁から切り離すことができるが、第2切断工程において、ワイヤーソーを斜め下方に移動させ、ハンチ部の傾斜面を切断するように桁間床版を切断することにより、切断距離を短くすることができる。
例として、図6に示すように、桁上床版24と桁間床版25との境界部からハンチ部221の傾斜面221bに達するまで桁軸直交方向に切断した場合の切断長さaよりも、桁上床版24と桁間床版25との境界部からハンチ部221の傾斜面221bに達するまで斜め方向に切断した場合の切断長さbの方が短くなる(b<a)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、切断装置の設置や撤去に係る手間や時間を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コンクリート床版に設置された切断装置の側面図である。
図2】コンクリート床版に設置された切断装置の平面図である。
図3】合成桁の鉛直断面図である。
図4】第1切断工程においてワイヤーソーが引寄せられた状態の切断装置の側面図である。
図5】第1切断工程においてワイヤーソーが引寄せられた状態の切断装置の平面図である。
図6】第2切断工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態によるコンクリート床版の切断方法について、図1図6に基づいて説明する。
本実施形態によるコンクリート床版の切断方法は、図1および図2に示すように、鋼桁21とコンクリート床版22とが接合されて一体化した合成桁2からコンクリート床版22を切断装置1で切断して切離す方法である。
図3に示すように、合成桁2は、間隔をあけて平行に配列された複数の鋼桁21の上にコンクリート床版22が接合されている。鋼桁21の上面には、複数の鋼桁21とコンクリート床版22とを一体化させるずれ止め23が接合されている。
合成桁2が延びる方向、すなわち鋼桁21が延びる方向を桁軸方向(図の矢印Aの方向)と表記する。本実施形態では、桁軸方向は、略水平方向である。桁軸方向に直交する水平方向を桁軸直交方向(図の矢印Bの方向)と表記する。
【0015】
鋼桁21は、I形鋼などで桁軸直交方向に間隔をあけて複数設けられている。
コンクリート床版22は、鋼桁21の直上となる部分に下方に突出するハンチ部221が設けられている。ハンチ部221の下面が鋼桁21の上面と接合されている。ハンチ部221は、下方に向かって漸次桁軸直交方向の寸法が小さくなっている。コンクリート床版22における鋼桁21の直上で鋼桁21と接合されている部分を桁上床版24と表記する。コンクリート床版22における鋼桁21とは上下方向に重ならず鋼桁21に直接接合されていない部分を桁間床版25と表記する。桁上床版24と桁間床版25とは、桁軸直交方向に交互に配列されている。
桁間床版25の下面における桁上床版24との境界からその近傍位置221aとの間には、桁上床版24との境界部から桁上床版24と離れる側に向かって漸次上側に向かうハンチ部221の傾斜面221bが形成されている(図6参照)。
【0016】
本実施形態では、図2に示す桁軸方向の所定のスパン26毎に切断装置1で桁上床版24を切断して鋼桁21から切り離すことを想定している。桁軸直交方向に隣り合う2つの桁上床版24,24それぞれをその間の桁間床版25と繋がったまま鋼桁21から切り離し、これらの桁上床版24、24とその間の桁間床版25とを繋がったまま一体に撤去する。このため、従来のように桁上床版24を鋼桁21から切り離す前にコンクリート床版22から桁間床版25だけを切り離して撤去することは行わない。
【0017】
桁上床版24を鋼桁21から切り離す際には、桁軸方向の所定のスパン26毎に、切断装置1のワイヤーソー5で、桁上床版24を桁軸直交方向一方側から他方側に向かって切断する。桁上床版24を切断する際の上記の桁軸方向の所定のスパン26とは、切断装置1が一度に切断可能な桁軸方向のスパンである。
桁上床版24を切断するワイヤーソー5が鋼桁21を損傷しないように、桁上床版24は、鋼桁21の上面よりも上方の切断位置27(図2および図4参照)で切断される。切断位置27の高さが特許請求の範囲の切断高さに相当する。桁上床版24における切断位置27よりも下側の部分28は、ウォータージェット装置などで斫って撤去される。切断位置27は、例えば、鋼桁21の上面よりも2cm上方の位置とする。切断位置27は、ずれ止め23が設けられている高さである。本実施形態の切断装置1は、コンクリート床版22とともにずれ止め23も切断可能である。
【0018】
切断装置1でコンクリート床版22を切断するにあたって、コンクリート床版22に一対のコア孔222,222と、一対の桁軸直交方向スリット223,223と、桁軸方向スリット224と、を形成する。一対のコア孔222,222には、切断装置1の第1自在プーリー61および第2自在プーリー62が設置される。一対の桁軸直交方向スリット223,223および桁軸方向スリット224には、切断装置1のワイヤーソー5が設置される。
【0019】
図1および図2に示すように、一対のコア孔222,222は、それぞれ桁間床版25を上下方向に貫通する孔である。一対のコア孔222,222は、桁軸方向に間隔をあけて配置される。一対のコア孔222,222は、コンクリート床版22における切断対象領域の桁軸直交方向の他方側に位置する桁間床版25に形成される。コア孔222は、コンクリート床版22の上方から形成される。コア孔222,222は、上方から切断装置1の第1自在プーリー61および第2自在プーリー62が挿入される。
【0020】
一対の桁軸直交方向スリット223,223は、それぞれ桁軸直交方向に延びる溝部である。一対の桁軸直交方向スリット223,223は、コンクリート床版22の桁軸直交方向全体にわたって形成される。一対の桁軸直交方向スリット223,223における桁間床版25に形成されている部分は、桁間床版25を上下方向に貫通している。一対の桁軸直交方向スリット223,223における桁上床版24に形成されている部分は、桁上床版24を上下方向に貫通せず上方に開口する溝部である。一対の桁軸直交方向スリット223,223における桁上床版24に形成されている部分の底部は、切断位置27よりも下方に位置している。コア孔222と桁軸直交方向スリット223とは、連続している。
【0021】
桁軸方向スリット224は、コンクリート床版22の下端から切断位置27の高さに至る下方に開口する桁軸方向に延びる溝部である。桁軸方向スリット224は、一対の桁軸直交方向スリット223,223の間に位置し、一対の桁軸直交方向スリット223,223それぞれと接続されている。本実施形態では、桁軸方向スリット224は、コンクリート床版22における切断対象領域の桁軸直交方向の一方側に位置するハンチ部221に形成されている。桁軸方向スリット224は、コンクリート床版22の下方から形成される。
【0022】
図1および図2に示すように、切断装置1は、切断部3と、集塵部4と、を有する。切断部3は、コンクリート床版22を切断する。集塵部4は、切断部3がコンクリート床版22を切断した際に発生した粉塵を収集する。図2では、集塵部4は、上蓋部44のみ示している。
【0023】
切断部3は、ループ状のワイヤーソー5と、ワイヤーソー5が巻き掛けられる複数のプーリー6と、複数のプーリー6を支持するプーリー支持部31と、プーリー6を回転させてワイヤーソー5を駆動させる駆動部32と、を有する。切断装置1は、回転するワイヤーソー5を水平方向に引き寄せてコンクリート床版22を水平に切断可能であるとともに、上方から下方に移動させてコンクリート床版22を切断可能である。
切断装置1がコンクリート床版22を切断する際にワイヤーソー5を引き寄せる水平方向を前後方向と表記する。前後方向に直交する水平方向の幅方向と表記する。本実施形態では、切断装置1は、幅方向が桁軸方向(図の矢印Aの方向)となり、前後方向が桁軸直交方向(図の矢印Bの方向)となる向きでコンクリート床版22を切断する。
【0024】
プーリー支持部31は、コンクリート床版22の上に設置される。
複数のプーリー6には、一対の自在プーリー61,62(コア孔設置プーリー)と、駆動プーリー63と、昇降プーリーと、複数の補助プーリーと、が含まれる。テンションプーリーおよび複数の補助プーリーは不図示である。
駆動プーリー63、昇降プーリーおよび複数の補助プーリーは、それぞれの回転軸が前後方向に延びる向きで、前後方向を向く同一の鉛直面内に配置される。
駆動プーリー63は、駆動部32と接続されている。駆動プーリー63は、駆動部32の動力によって回転し、ワイヤーソー5を循環回転させる。昇降プーリーは、プーリー支持部31上下方向に移動可能に支持されている。昇降プーリーは、上下方向に移動することによって、ワイヤーソー5の切断部分51を移動させる。切断部分51については後述する。複数の補助プーリーは、ワイヤーソー5が循環回転する軌跡上に適宜配置設けられている。
【0025】
一対の自在プーリー61,62は、プーリー支持部31の幅方向の両端部311,312の下方に設けられている。本実施形態では、プーリー支持部31の幅方向の両端部311,312に、自在プーリー61,62を支持する一対の自在プーリー支持部材33,34が設けられている。一対の自在プーリー支持部材33,34は、棒状の部材である。一対の自在プーリー支持部材33,34は、軸線331,341が上下方向に延びる姿勢に設置されている。
第1自在プーリー支持部材33と第2自在プーリー支持部材34とは、幅方向に間隔をあけて配置されている。駆動プーリー63および複数の補助プーリーは、一対の自在プーリー支持部材33,34の間の領域であるプーリー支持部31の幅方向の中間部分313に設けられている。一対の自在プーリー支持部材33,34のうちのプーリー支持部31の幅方向の一方側の端部311に設けられた一方を第1自在プーリー支持部材33と表記し、プーリー支持部31の幅方向の他方側の端部312に設けられた他方を第2自在プーリー支持部材34と表記する。
【0026】
一対の自在プーリー61,62のうちの一方の第1自在プーリー61は、第1自在プーリー支持部材33の下端部に第1自在プーリー支持部材33の軸線331回りに回転可能に取り付けられている。第1自在プーリー61の回転軸65は、水平方向に延びている。第1自在プーリー61の回転軸65と、第1自在プーリー支持部材33の軸線331とは、交差していない。
一対の自在プーリー61,62のうちの他方の第2自在プーリー62は、第2自在プーリー支持部材34の下端部に第2自在プーリー支持部材34の軸線341回りに回転可能に取り付けられている。第2自在プーリー62の回転軸65は、水平方向に延びている。第2自在プーリー62の回転軸65と、第2自在プーリー支持部材34の軸線341とは、交差していない。
第1自在プーリー61と第2自在プーリー62とは、同じ高さに配置される。第1自在プーリー61および第2自在プーリー62は、駆動プーリー63、昇降プーリーおよび補助プーリーよりも下方に配置されている。上述しているように、第1自在プーリー61および第2自在プーリー62は、それぞれコア孔222に設置されている。
【0027】
ワイヤーソー5は、駆動プーリー63の回転によって送り出され、第1自在プーリー61、第2自在プーリー62をこの順に通過して駆動プーリー63に戻る循環回転を行う。昇降プーリーおよび補助プーリーは、駆動プーリー63と第1自在プーリー61との間、第2自在プーリー62と駆動プーリー63との間に適宜設けられている。
ワイヤーソー5は、第1自在プーリー61と第2自在プーリー62との間においてコンクリート床版22を切断する。循環回転するワイヤーソー5における第1自在プーリー61と第2自在プーリー62との間の部分を切断部分51と表記する。
【0028】
ワイヤーソー5は、切断部分51が第1自在プーリー61および第2自在プーリー62よりも前方に引き出されて、コンクリート床版22における切断対象となる部分に巻き掛けられる。ワイヤーソー5が循環回転するとともに、昇降プーリーの昇降によって切断部分51を後方に引っ張ることによって、切断部分51が前側から後側に移動し、コンクリート床版22が切断される。
図2に示すように、切断部分51は、上下方向から見て後方に開口するC字形状である。切断部分51は、第1自在プーリー61および第2自在プーリー62それぞれから前方に延びて、第1自在プーリー61および第2自在プーリー62よりも前方において幅方向に延びている。切断部分51は、主に第1自在プーリー61および第2自在プーリー62よりも前方において幅方向に延びている部分がコンクリート床版22を切断する。
【0029】
図1および図2に示すように、切断部分51が第1自在プーリー61および第2自在プーリー62よりも前側に延びている場合は、第1自在プーリー61および第2自在プーリー62は、回転軸65が第1自在プーリー支持部材33および第2自在プーリー支持部材34の軸線331,341よりも前方において幅方向に延びている姿勢である。
図4および図5に示すように、切断部分51が後方に移動し第1自在プーリー61と第2自在プーリー62との間に位置する場合は、第1自在プーリー61および第2自在プーリー62は、それぞれ第1自在プーリー支持部材33および第2自在プーリー支持部材34の軸線331,341回りに回転し、それぞれの前端が互いに近づくとともに後方に移動した姿勢になる。第1自在プーリー61および第2自在プーリー62が第1自在プーリー支持部材33および第2自在プーリー支持部材34の軸線331,341回りに回転可能であることにより、切断部分51をより後方に引き寄せることができる。図4では、ワイヤーソー5によって切断された箇所を符号225で示している。
【0030】
第1自在プーリー61および第2自在プーリー62は、それぞれプーリー支持部31に対して昇降可能である。第1自在プーリー支持部材33および第2自在プーリー支持部材34がプーリー支持部31に対して昇降することによって第1自在プーリー61および第2自在プーリー62がプーリー支持部31に対して昇降する。このため、第1自在プーリー61および第2自在プーリー62を下降させることによってコンクリート床版22を切り下げ可能である。
【0031】
コンクリート床版22を切断するコンクリート床版の切断方法について説明する。
まず、コンクリート床版22に一対のコア孔222,222を形成するコア孔形成工程と、一対の桁軸直交方向スリット223,223を形成する桁軸直交方向スリット形成工程と、桁軸方向スリット224を形成する桁軸方向スリット形成工程を行う。
本実施形態では、これらの工程と前後して、コンクリート床版22における桁上床版24と桁間床版25との境界部にコンクリート床版22の上面から切断位置27まで達する上下方向に延びる確認孔29を設ける確認孔形成工程を行う。確認孔29は、例えば、直径が25mmから50mm程度の丸孔である。確認孔29は、切断を行う領域の桁軸方向の中央近傍において鋼桁21のフランジ端部を確認可能な位置に形成する。なお、確認孔29は、桁軸方向に間隔をあけて複数形成してもよい。
【0032】
続いて、コンクリート床版22に切断装置1を設置する。一対のコア孔222,222には、第1自在プーリー61および第2自在プーリー62を設置する。一対の桁軸直交方向スリット223,223および桁軸方向スリット224には、切断装置1のワイヤーソー5を設置する。桁軸方向スリット224には、ワイヤーソー5が垂れる等により正しい位置が保てないことを防止するため、ワイヤーソー5を設置後、木材等の間詰材を設置してもよい。
続いて、切断部3で桁上床版24を水平方向に切断する第1切断工程を行い、その後、連続して桁上床版24を切り下げる第2切断工程を行う。
【0033】
第1切断工程では、駆動プーリー63を駆動させるとともに、昇降プーリーを昇降させて、ワイヤーソー5の切断部分51をプーリー支持部31側に引き寄せる。これにより、切断部分51が桁軸直交方向の一方側から他方側に移動し、コンクリート床版22の桁上床版24が上下に切断される。
確認孔29の内部を上方から確認し、ワイヤーソー5の切断部分51が確認孔29を横切ったことが確認できると、ワイヤーソー5は、桁上床版24から桁間床版25に移動したことが確認できる。ワイヤーソー5の切断部分51は、確認孔29を横切った直後は、桁間床版25におけるハンチ部221の傾斜面221bの上方に位置している。
ワイヤーソー5は、確認孔29の内部を確認して桁上床版24から桁間床版25に移動したことが確認出来たら、第2切断工程を開始する。
【0034】
第2切断工程では、第1自在プーリー61および第2自在プーリー62を下方に移動させる。これにより、ワイヤーソー5の切断部分51が下方に向かって漸次桁軸直交方向の他方側に向かう斜め方向に移動する。更に第1自在プーリー61および第2自在プーリー62を下方に移動させることにより、ワイヤーソー5の切断部分51がハンチ部221の傾斜面221bを切断するようにして桁間床版25の下方に移動してコンクリート床版22を切断する(切り下げる)。これにより、コンクリート床版22が鋼桁21から切り離される。
【0035】
図1に示す集塵部4は、一対のコア孔222,222それぞれからコンクリート床版22を切断する際に生じる粉塵を吸引する。集塵部4は、一対のコア孔222,222それぞれに対して取り付けられている。集塵部4は、コア孔222,222の内部の粉塵を吸引する。
集塵部4は、吸引機能を有する集塵機41と、集塵機41と接続されたホース42と、ホース42の先端部に設けられた吸引ノズル43と、コア孔222の上側の開口端部222aを塞ぐ上蓋部44と、コア孔222の下側の開口端部222bを塞ぐ下蓋部45と、一対の桁軸直交方向スリット223,223それぞれの上端部分223aを塞ぐ塞ぎ材46と、を有する。本実施形態では、1つのコア孔222に対して、集塵機41、ホース42および吸引ノズル43が2組設けられている。
【0036】
上蓋部44および下蓋部45には、それぞれ上下方向に貫通し、吸引ノズル43を挿入可能なノズル挿入孔441,451が形成されている。上蓋部44のノズル挿入孔441に挿入された吸引ノズル43、および下蓋部45のノズル挿入孔451に挿入された吸引ノズル43の先端部は、それぞれコア孔222の内部に配置されている。上蓋部44には、第1自在プーリー支持部材33または第2自在プーリー支持部材34が挿入される支持部材挿入孔442が形成されている。第1自在プーリー61および第2自在プーリー62は、上蓋部44の下側に配置されている。
コア孔222の上側に上蓋部44が設けられ、コア孔222の下側に下蓋部45が設けられていることによって、コア孔222の内部の粉塵がコア孔222の上方および下方に漏出することが防止される。
上蓋部44および下蓋部45は、ノズル挿入孔441,451や支持部材挿入孔442が形成されている部分で分割された複数の分割板材で構成されていてもよい。このようにすることにより、吸引ノズル43や自在プーリー支持部材33,34を挟むように両側から上蓋部44や下蓋部45の分割板材を設置すれば、吸引ノズル43や自在プーリー支持部材33,34がノズル挿入孔441,451や支持部材挿入孔442を貫通した状態にできる。
【0037】
塞ぎ材46は、例えば、ゴムパッキンなどで桁軸直交方向スリット223の上端部分に挿し込まれている。塞ぎ材46は、桁軸直交方向スリット223の長さ方向(桁軸直交方向)全体にわたって設けられている。
桁軸直交方向スリット223の上端部分に塞ぎ材46が設けられていることによって、桁軸直交方向スリット223の内部の粉塵が桁軸直交方向スリット223の上方に漏出することが防止される。
【0038】
本実施形態による切断方法では、切断部3でコンクリート床版22を切断する第1切断工程および第2切断工程を行う際に、集塵部4でコア孔222の内部の粉塵を収集する集塵工程を行う。
集塵工程は、集塵機41を駆動させコア孔222の内部の空気を吸引する。集塵機41でコア孔222の内部の空気を吸引することによって、切断工程で生じた粉塵も集塵機41に吸引される。集塵機41でコア孔222の内部の空気を吸引することによって、コア孔222と連続している桁軸直交方向スリット223の内部粉塵もコア孔222を介して集塵機41に吸引される。
【0039】
次に、本実施形態によるコンクリート床版の切断方法の作用・効果について説明する。
本実施形態によるコンクリート床版の切断方法では、ワイヤーソー5を桁軸直交方向に移動させて桁上床版24を切断する第1切断工程を行い、連続してワイヤーソー5を桁間床版25において下方に移動させて切断する第2切断工程を行っている。このため、コンクリート床版22を切断する際に、コンクリート床版22を水平方向に切断する装置および上下方向に切断する装置の両方を設置する必要が無く、切断装置の設置や撤去に係る手間や時間を軽減できる。
【0040】
本実施形態によるコンクリート床版の切断方法では、コンクリート床版22における桁上床版24と桁間床版25との境界部にコンクリート床版22の上面から切断位置27の高さまで達する上下方向に延びる確認孔29を設けている。
第2切断工程を行う際に、ワイヤーソー5が鋼桁21に接触すると鋼桁21が損傷する虞がある。このため、第2切断工程は、第1切断工程でワイヤーソー5が桁間床版25まで移動した後に行う必要がある。第1切断工程において、確認孔29の内部を上方から見てワイヤーソー5が確認孔29を横切ったことを確認できると、ワイヤーソー5が桁間床版25に移動していることになる。このため、ワイヤーソー5が確認孔29を横切った後に第2切断工程を行えば、ワイヤーソー5が鋼桁21に接触することを防止できる。
【0041】
本実施形態によるコンクリート床版の切断方法では、第2切断工程では、ワイヤーソー5を斜め方向に移動させ、ハンチ部221の傾斜面221bを切断するようにして桁間床版25を切断している。
コンクリート床版22にハンチ部221が設けられている場合、ハンチ部221全体を桁軸直交方向に切断すれば、コンクリート床版22を鋼桁21から切り離すことができる。本実施形態では、第2切断工程において、ワイヤーソー5を斜め下方に移動させ、ハンチ部221の傾斜面221bを切断するように桁間床版25を切断することにより、切断距離を短くすることができる。図6に示すように、桁上床版24と桁間床版25との境界部からハンチ部221の傾斜面221bに達するまで桁軸直交方向に切断した場合の切断長さaよりも、上記の第2切断工程のように、桁上床版24と桁間床版25との境界部からハンチ部221の傾斜面221bに達するまで斜め方向に切断した場合の切断長さbの方が短くなる(b<a)。
【0042】
以上、本発明によるコンクリート床版の切断方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、コンクリート床版22にハンチ部221が設けられているが、ハンチ部221が設けられていなくてもよい。
上記の実施形態では、切断装置1に集塵部4が設けられているが、集塵部4は、設けられていなくてもよい。
【0043】
上記の実施形態では、コア孔222は、コンクリート床版22を上下方向に貫通しているが、貫通せずに上方に開口する凹部状であってもよい。このような場合は、集塵部4は、コア孔222の上側のみを塞ぐ蓋部と、この蓋部からコア孔222に挿入される吸引ノズル43と、吸引ノズル43と接続されるホース42および集塵機41を有する構成であってもよい。
【0044】
上記の実施形態では、複数の鋼桁21に接合されたずれ止め23をコンクリート床版22とともに切断しているが、ずれ止め23を避けるようにしてコンクリート床版22を切断してもよい。
【0045】
上記の実施形態では、コア孔222に設置されるプーリーは、自在プーリー支持部材33,34の軸線35回りに回転可能な自在プーリー61,62であるが、自在プーリー支持部材33,34の軸線35回りに回転しないプーリーであってもよい。
【0046】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。
本実施形態に係るコンクリート床版の切断方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「12.つくる責任 つかう責任」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0047】
2 合成桁
5 ワイヤーソー
21 鋼桁
22 コンクリート床版
24 桁上床版
25 桁間床版
27 切断位置(切断高さ)
29 確認孔
221 ハンチ部
221b 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6