(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160597
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】車両制御装置、及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
F02N 11/08 20060101AFI20241107BHJP
F02N 15/00 20060101ALI20241107BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20241107BHJP
【FI】
F02N11/08 U
F02N15/00 F
B60R25/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075773
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】中尾 太一
(57)【要約】
【課題】ユーザの始動操作に対する車両の応答性を向上できる車両制御装置、及び車両制御方法を提供する。
【解決手段】車両制御装置5は、車両2の走行駆動源4の不正な始動を制限するイモビライザ機能を有する。認証制御部6は、ユーザによる走行駆動源4の始動操作が検出された場合に、無線による電子キー3との認証成立を少なくとも1つの解除条件として、イモビライザ機能の解除を実行する。同時解除部22は、認証制御部6によるイモビライザ機能の解除と、イモビライザ機能とは別に車両2に設けられた防犯機能の解除と、を同時に実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行駆動源の不正な始動を制限するイモビライザ機能を有する車両制御装置であって、
ユーザによる前記走行駆動源の始動操作が検出された場合に、無線による電子キーとの認証成立を少なくとも1つの解除条件として、前記イモビライザ機能の解除を実行する認証制御部と、
前記認証制御部による前記イモビライザ機能の解除と、前記イモビライザ機能とは別に前記車両に設けられた防犯機能の解除と、を同時に実行させる同時解除部と、を備えた車両制御装置。
【請求項2】
前記防犯機能は、前記車両のステアリング操作を制限するステアリングロック機能である、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記同時解除部は、同時解除が完了すると、前記走行駆動源を制御する駆動源制御部に始動を許可するための始動要求を出力する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記同時解除部は、複数の従属制御部を統括制御する統括制御部に設けられ、
前記複数の従属制御部は、前記認証制御部と、前記防犯機能を制御する防犯機能制御部とを含み、
前記統括制御部は、前記認証制御部及び前記防犯機能制御部とCAN通信によって接続されている、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記イモビライザ機能の解除は、前記認証制御部が前記電子キーの認証を実行し、そして、前記電子キーの認証が成立する場合にイモビライザ解除要求を出力する一連の処理を含み、
前記防犯機能の解除は、前記一連の処理の少なくとも一部に同期される、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記認証制御部が実行する認証は、ユーザが前記車両に乗車するときに実行される第1認証と、前記始動操作が行われたときに実行されるとともに前記第1認証よりも上位が付与された第2認証と、を含み、
前記認証制御部は、前記第2認証が成立した場合に、前記イモビライザ機能を解除する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
車両の走行駆動源の不正な始動を制限するイモビライザ機能を用いた車両制御方法であって、
ユーザによる前記走行駆動源の始動操作が検出された場合に、無線による電子キーとの認証成立を少なくとも1つの解除条件として実行される前記イモビライザ機能の解除と、前記イモビライザ機能とは別に前記車両に設けられた防犯機能の解除と、を同時に実行させる、車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、エンジン始動操作時に多機関照合の処理とシステムチェックの処理とを時間的に並列して行うエンジン始動装置が周知である。多機関照合は、例えば、ハンズフリーシステムに係るECU(Electronic Control Unit)の相互チェックである。システムチェックは、例えば、重要保安部品を取り扱うECUの自己診断である。多機関照合の処理とシステムチェックの処理とを並列に実行した場合、エンジン始動操作からエンジンが始動するまでに要する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多機関照合は、例えば、複数の照合を含む場合がある。この場合、システムチェックに要する時間に関係なく、多機関照合に係る時間が長くなってしまうので、エンジン始動操作から実際にエンジンが始動するまでに要する時間が長くなる可能性があった。なお、この課題は、多機関照合とシステムチェックと並列で処理するシステムに限らず、システムチェックを行わずに多機関照合のみ行うシステムでも同様である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する車両制御装置は、車両の走行駆動源の不正な始動を制限するイモビライザ機能を有する装置であって、ユーザによる前記走行駆動源の始動操作が検出された場合に、無線による電子キーとの認証成立を少なくとも1つの解除条件として、前記イモビライザ機能の解除を実行する認証制御部と、前記認証制御部による前記イモビライザ機能の解除と、前記イモビライザ機能とは別に前記車両に設けられた防犯機能の解除と、を同時に実行させる同時解除部と、を備えた。
【0006】
前記課題を解決する車両制御方法は、車両の走行駆動源の不正な始動を制限するイモビライザ機能を用いた方法であって、ユーザによる前記走行駆動源の始動操作が検出された場合に、無線による電子キーとの認証成立を少なくとも1つの解除条件として実行される前記イモビライザ機能の解除と、前記イモビライザ機能とは別に前記車両に設けられた防犯機能の解除と、を同時に実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ユーザの始動操作に対する車両の応答性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る車両制御装置の構成図である。
【
図3】イモビライザ照合を簡易的に示す説明図である。
【
図6】従来システムの処理の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態を説明する。
(電子キーシステム1)
図1に示すように、車両2は、電子キー3を無線によって認証する電子キーシステム1を備える。電子キーシステム1は、例えば、スマートシステム、及びワイヤレスキーシステムを含む。スマートシステムは、電子キー3からの通信に応じて電子キー3を認証することにより、車両2の動作を許可又は実行する。スマートシステムの場合、電子キー3が自動で無線認証されるため、電子キー3を自ら操作する必要がない。ワイヤレスキーシステムは、例えば、電子キー3の遠隔操作によって車両2を操作する。
【0010】
電子キーシステム1は、例えば、イモビライザーシステムを含む。イモビライザーシステムは、例えば、車両2の走行駆動源4の不正な始動を制限するイモビライザ機能を有する。イモビライザーシステムは、例えば、短距離無線通信によって電子キー3の認証を実行するとともに、電子キー3との認証が成立すれば、走行駆動源4の始動を許可又は実行する。イモビライザ機能は、例えば、電子キーシステム1の認証成立を解除条件の1つとする。
【0011】
電子キー3は、電子キーシステム1によって認証される認証情報Dkを有する。認証情報Dkは、例えば、スマートシステムやワイヤレスキーシステムで使用される第1認証情報Dk1と、イモビライザーシステムで使用される第2認証情報Dk2と、を含む。第1認証情報Dk1は、例えば、IDコードや暗号鍵を含む。第2認証情報Dk2は、例えば、トランスポンダICに書き込まれたコード情報である。電子キーシステム1は、第1認証情報Dk1及び第2認証情報Dk2の少なくとも一方の認証成立を、車両操作の許可条件とする。
【0012】
車両2は、エンジン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車、水素自動車のいずれでもよい。車両2は、自家用車、シェアリングカー、レンタカーのいずれでもよい。走行駆動源4は、例えば、ガソリンエンジン、モータ、水素エンジン、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。電子キー3は、車両専用キーであってもよいし、外部から配信された認証情報Dkを登録した高機能携帯電話等のモバイル端末であってもよい。
【0013】
(車両制御装置5)
図1に示す通り、車両2は、電子キーシステム1において車両2の動作を制御する車両制御装置5を備える。車両制御装置5は、無線によって電子キー3を認証する認証制御部6を有する。認証制御部6は、例えば、電子キー3を認証する照合ECUである。認証制御部6は、車両2に登録された電子キー3の認証情報Dk(第1認証情報Dk1、第2認証情報Dk2)をメモリ(図示略)に記憶する。認証制御部6は、車両2に設けられた通信部7によって、電子キー3と無線通信する。
【0014】
通信部7は、例えば、電子キー3と近距離無線通信する第1通信モジュール8を含む。近距離無線通信は、例えば、PAN(Personal Area Network)通信を含む。近距離無線通信は、例えば、LF(Low Frequency)-UHF(Ultra High Frequency)の双方向通信を含む。通信部7は、例えば、電子キー3と短距離無線通信する第2通信モジュール9を含む。短距離無線通信は、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)を含む。認証制御部6は、例えば、近距離無線通信によって電子キー3の第1認証情報Dk1の認証を実行する。認証制御部6は、例えば、短距離無線通信によって電子キー3の第2認証情報Dk2の認証を実行する。
【0015】
(車両制御装置5の周辺構成)
図1に示す通り、車両2は、統括制御部11、防犯機能制御部12、及び駆動源制御部13を備える。統括制御部11は、車両2に設けられた複数の従属制御部14を統括的に制御する。従属制御部14としては、例えば、前述の認証制御部6、防犯機能制御部12、及び駆動源制御部13などがある。統括制御部11は、例えば、車両2に搭載された各種ECUを統合して制御するセントラルECU(Electronic Control Unit)である。統括制御部11は、ユーザ操作に基づいて各種ECUを制御することにより、車両2を動作させる。
【0016】
防犯機能制御部12は、例えば、車両2に設けられた電装品の電源を管理するボディコントロールモジュールである。本例の場合、防犯機能は、例えば、車両2のステアリング操作を制限するステアリングロック機能である。この場合、防犯機能制御部12は、ステアリング操作を制限するためのステアリングロック装置15の動作を制御する。
【0017】
駆動源制御部13は、例えば、エンジン車の場合、走行駆動源4としてのエンジンの動作を制御するエンジンECUである。駆動源制御部13は、統括制御部11からの指令に基づいて、車両2の前進及び後進の動力を与える走行駆動源4を制御する。
【0018】
認証制御部6及び統括制御部11は、車両2の第1通信線17によって接続されている。第1通信線17は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信によって通信を実行するCAN通信線17aである。統括制御部11及び防犯機能制御部12は、車両2の第2通信線18によって接続されている。第2通信線18は、第1通信線17と同様に、例えば、CAN通信線18aである。
【0019】
(スマートシステムによるキー認証)
図2に示すように、認証制御部6は、スマートシステムの動作として、第1通信モジュール8の送信部19から、電子キー3を起動するためのウェイク信号Swkを周期的に送信する。送信部19は、例えば、LF帯の電波を送信する。送信部19は、車外に位置する電子キー3と通信する車外用と、車内に位置する電子キー3と通信する車内用と、がある。電子キー3は、このウェイク信号Swkを受信すると起動し、そして、認証制御部6との認証、すなわちスマート照合を開始する。
【0020】
スマート照合の場合、電子キー3に登録された第1認証情報Dk1の認証が実行される。このとき、電子キー3は、UHF帯の電波で信号を送信する通信によって、認証制御部6に第1認証情報Dk1を認証させる。認証制御部6は、電子キー3からの電波を第1通信モジュール8の受信部20で受信することにより、第1認証情報Dk1の認証を実行する。
【0021】
認証制御部6は、第1認証情報Dk1の正当性が確認できた場合に、第1認証情報Dk1の認証、すなわちスマート照合が成立したと判定する。車外用の送信部19から送信された電波によって開始されたスマート照合が成立、すなわち車外スマート照合が成立すると、車両ドアの施解錠が許可又は実行される。車内用の送信部19から送信された電波によって開始されたスマート照合が成立、すなわち車内スマート照合が成立すると、走行駆動源4の始動を許可するために必要な条件が成立する。
【0022】
(イモビライザーシステムによるキー認証)
図3に示すように、例えば、電子キー3の電池が切れたときに走行駆動源4を始動させるためには、車内に設置された第2通信モジュール9に電子キー3をかざす。第2通信モジュール9は、例えば、運転席の始動スイッチ(例えば、エンジンスイッチ)に内蔵されている。電子キー3が第2通信モジュール9に十分に接近すると、短距離無線通信による電子キー3の認証、すなわち、イモビライザ照合が開始される。
【0023】
イモビライザ照合の場合、電子キー3に登録された第2認証情報Dk2の認証が実行される。このとき、電子キー3は、短距離無線通信によって、認証制御部6に第2認証情報Dk2を認証させる。認証制御部6は、第2認証情報Dk2の正当性が確認できた場合に、第2認証情報Dk2の認証、すなわちイモビライザ照合が成立したと判定する。イモビライザ照合が成立すると、走行駆動源4の始動を許可するために必要な条件が成立する。
【0024】
(ユーザ操作から走行駆動源4が始動するまでの応答性の改善)
図1に示す通り、車両制御装置5は、イモビライザ機能の解除(イモビライザ解除)を他の防犯機能の解除と同時に実行する同時解除機能を備える。本例の場合、同時解除機能は、イモビライザ機能の解除とステアリングロック機能の解除とを同時に実行する。イモビライザ機能の解除は、例えば、認証制御部6が上位のECU(本例は、統括制御部11)に対し、車両駐車時に設定されたイモビライザ機能の解除を要求して解除させる動作である。
【0025】
本例の場合、認証制御部6は、例えば、ユーザによる走行駆動源4の始動操作が検出された場合に、無線による電子キー3との認証成立を少なくとも1つの解除条件として、イモビライザ機能の解除を実行する。ユーザによる走行駆動源4の始動操作は、例えば、車両2のブレーキペダルを踏み込みながら運転席の始動スイッチ(例えば、エンジンスイッチ)を押す操作である。
【0026】
車両制御装置5は、認証制御部6によるイモビライザ機能の解除と、イモビライザ機能とは別に車両2に設けられた防犯機能の解除と、を同時に実行させる同時解除部22を備える。同時解除部22は、例えば、統括制御部11に設けられている。同時解除する防犯機能は、例えば、ステアリングロック機能である。同時解除部22は、ユーザによる車両2の始動操作を検出した場合、認証制御部6の認証と、防犯機能の解除と、を同時に実行させる。同時解除部22は、同時解除が完了すると、駆動源制御部13に始動を許可するための始動要求Stを出力する。
【0027】
次に、本実施形態の車両制御装置5(車両制御方法)の作用について説明する。
(同時解除の手順)
図4に示すように、統括制御部11は、ユーザが車両2に乗車したことを検出した場合、認証制御部6に電子キー3の無線認証を実行させる(時刻t1)。ユーザの車内への乗車は、例えば、車両ドアの開閉を検出するスイッチやセンサ等によって検出される。本例の場合、統括制御部11は、ユーザが車両2に乗車したことを検出した場合、下位が付与された「第1認証」の認証実行要求(第1認証実行要求Sa1)を認証制御部6に出力する。
【0028】
下位が付与された第1認証は、電子キー3の認証が成立してもイモビライザ機能の解除は実行されない認証である。第1認証は、例えば、ユーザが車両2に乗車するときに実行される。第1認証は、例えば、車内に位置する電子キー3を照合する車内スマート照合である。
【0029】
認証制御部6は、第1認証実行要求Sa1を入力すると、キー認証として、電子キー3とスマート照合を実行する。具体的には、認証制御部6は、乗車したユーザが所持する電子キー3とスマート照合が成立するか否かを確認する。認証制御部6は、第1認証実行要求Sa1に基づいたスマート照合が成立すると、第1認証完了通知Sa2を統括制御部11に出力する。なお、認証制御部6は、第1認証が成立しても、未だイモビライザ機能の解除を実行しない。
【0030】
統括制御部11は、認証制御部6から第1認証完了通知Sa2を入力すると、例えば、車両電源のIGオン状態までの操作を許可する。すなわち、第1認証が成立した場合、例えば、走行駆動源4を除く他の車載機器の利用が許可される。これにより、例えば、車載カーナビゲーション装置、車載オーディオ装置、パワーウィンドウ装置などの各種車載装置の利用が可能となる。
【0031】
統括制御部11は、ユーザが走行駆動源4の始動操作を実行したことを検出した場合、認証制御部6に電子キー3の無線認証を実行させる(時刻t2)。本例の場合、同時解除部22は、イモビライザ機能の解除とステアリングロック機能の解除とを同時に実行させる。具体的には、同時解除部22は、認証制御部6に電子キー3のキー認証を実行させるとともに、防犯機能制御部12に防犯機能の解除を実行させる。
【0032】
本例の場合、同時解除部22は、同時解除の処理として、上位が付与された「第2認証」の認証実行要求(第2認証実行要求Sb1)を認証制御部6に出力する。第2認証は、例えば、走行駆動源4の始動操作が行われたときに実行されるとともに第1認証よりも上位が付与されている。第2認証は、第1認証と同じであってもよいし、第1認証と異なる処理内容を含んでいてもよい。第2認証は、例えば、車内スマート照合であってもよいし、イモビライザ照合であってもよい。
【0033】
認証制御部6は、統括制御部11から第2認証実行要求Sb1を入力すると、キー認証として、例えば、電子キー3とスマート照合を実行する。具体的には、認証制御部6は、走行駆動源4を始動操作したユーザが所持する電子キー3とスマート照合が成立するか否かを確認する。認証制御部6は、第2認証実行要求Sb1に基づいたスマート照合が成立すると、第2認証完了通知Sb2を統括制御部11に出力する。
【0034】
このとき、認証制御部6は、統括制御部11において有効とされているイモビライザ機能の解除を要求するイモビライザ解除要求Scを、第2認証完了通知Sb2に含めて統括制御部11に出力する。すなわち、認証制御部6は、第2認証が成立した場合に、イモビライザ機能を解除する。
【0035】
また、同時解除部22は、ユーザが走行駆動源4を始動操作したとき、同時解除の処理として、解除要求(ステアリングロック解除要求Sd1)を防犯機能制御部12に出力する。このように、ステアリングロック機能の解除は、例えば、ユーザが走行駆動源4を始動操作したときに実行される。以上のように、防犯機能制御部12へのステアリングロック解除要求Sd1の出力は、例えば、認証制御部6への第2認証実行要求Sb1の出力と同時に実行される。
【0036】
防犯機能制御部12は、統括制御部11からステアリングロック解除要求Sd1を入力すると、ステアリングロック機能の解除を実行する。これにより、ステアリングロックがロック状態からアンロック状態に切り替えられる。そして、防犯機能制御部12は、ステアリングロック機能が解除されたことを検出すると、ステアリングロック解除通知Sd2を統括制御部11に出力する。
【0037】
統括制御部11は、認証制御部6からイモビライザ解除要求Scを入力するとともに、防犯機能制御部12からステアリングロック解除通知Sd2を入力すると、駆動源制御部13に始動要求St(
図1参照)を出力する。具体的には、統括制御部11は、認証制御部6から入力したイモビライザ解除要求Scに基づいてイモビライザ機能を解除する。そして、統括制御部11は、イモビライザ機能の解除と、第2認証完了通知Sb2の入力と、ステアリングロック解除通知Sd2の入力とに基づき、駆動源制御部13に始動要求Stを出力することにより、走行駆動源4を始動させる。以上により、走行駆動源4が始動状態に切り替えられる。
【0038】
なお、本例の場合、イモビライザ機能の解除は、認証制御部6が電子キー3の認証を実行し、そして、電子キー3の認証が成立する場合にイモビライザ解除要求Scを出力する一連の処理を含むこととする。なお、本例の場合、イモビライザ機能の解除は、例えば、認証制御部6がイモビライザ解除要求Scを統括制御部11に出力する動作としている。そして、ステアリングロック機能の解除は、イモビライザ機能解除の一連の処理の少なくとも一部に同期されていればよい。
【0039】
また、イモビライザ機能の解除は、ステアリングロック機能の解除の動作として、以下に示す(i)~(iii)の少なくとも1つの動作と重複していればよい。
(i)統括制御部11がステアリングロック解除要求Sd1を防犯機能制御部12に出力する動作。
(ii)防犯機能制御部12がステアリングロック解除要求Sd1に基づいてステアリングロックを解除する動作。
(iii)防犯機能制御部12がステアリングロック解除通知Sd2を統括制御部11に出力する動作。
【0040】
(従来システム30とその問題点)
図5に示すように、従来システム30の場合、電子キー3を無線認証する照合用ECU31に、ステアリングロック装置32及びエンジン用ECU33が接続されている。照合用ECU31は、例えば、前述のスマート照合やイモビライザ照合などのキー認証を実行する。エンジン用ECU33は、例えば、走行駆動源4であるエンジンの動作を制御する。照合用ECU31は、例えば、ステアリングロック装置32とLIN(Local Interconnect Network)通信によって通信を実行する。
【0041】
図6に示すように、照合用ECU31は、所定のユーザ操作を検出したとき、電子キー3の正当性を無線により確認するキー認証(本例は、スマート照合)を実行する(ステップ101)。照合用ECU31は、キー認証が成立に移行後、ステアリングロック装置32の解除を実行する(ステップ102)。すなわち、照合用ECU31は、LIN通信によって解除要求をステアリングロック装置32に出力することにより、ステアリングロック装置32をアンロックする。
【0042】
照合用ECU31は、ステアリングロック装置32の解除後、エンジン用ECU33に設定されているイモビライザ機能の解除を実行する(ステップ103)。具体的には、照合用ECU31は、イモビライザ機能の解除要求をエンジン用ECU33に出力することにより、エンジン用ECU33に設定されているイモビライザ機能を解除する。エンジン用ECU33は、イモビライザ機能が解除されると、エンジンを始動させる(ステップ104)。
【0043】
以上のように、従来システム30の場合、キー認証、ステアリングロック解除、イモビライザ解除、及びエンジン始動が順番に実施される。このように、従来システム30の場合は、各動作を1つずつ順にしか実施することができないため、ユーザ操作してから走行駆動源4が始動するまでに時間を要する。よって、ユーザ操作から走行駆動源4が始動するまでの応答性がよくないという懸念があった。
【0044】
一方、
図4に示す通り、本例の場合は、イモビライザ機能の解除と防犯機能の解除とを同時に実行するので、これら機能の解除を別々に実行する場合に比べて、処理にかかる時間を短くすることが可能となる。よって、ユーザ操作から走行駆動源4が始動するまでの応答性を高めることが可能となる。
【0045】
(実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)車両制御装置5は、車両2の走行駆動源4の不正な始動を制限するイモビライザ機能を有する。車両制御装置5が備える認証制御部6は、ユーザによる走行駆動源4の始動操作が検出された場合に、無線による電子キー3との認証成立を少なくとも1つの解除条件として、イモビライザ機能の解除を実行する。車両制御装置5が備える同時解除部22は、認証制御部6によるイモビライザ機能の解除と、イモビライザ機能とは別に車両2に設けられた防犯機能の解除と、を同時に実行させる。
【0046】
本構成によれば、イモビライザ機能の解除と防犯機能の解除とが同時に実行されるので、これら解除を順番に実行する場合に比べて、処理に要する時間を短くすることが可能となる。よって、ユーザの始動操作に対する車両2の応答性を向上できる。
【0047】
(2)防犯機能は、車両2のステアリング操作を制限するステアリングロック機能である。この構成によれば、ステアリングロック機能の解除とイモビライザ機能の解除とが並行して処理されるので、これら機能の解除に要する総時間を短縮できる。
【0048】
(3)同時解除部22は、同時解除が完了すると、走行駆動源4を制御する駆動源制御部13に始動を許可するための始動要求Stを出力する。この構成によれば、同時解除が完了したタイミングで始動要求Stが駆動源制御部13に出力されるので、走行駆動源4を直ちに始動させることができる。
【0049】
(4)同時解除部22は、複数の従属制御部14を統括制御する統括制御部11に設けられている。複数の従属制御部14は、認証制御部6と、防犯機能を制御する防犯機能制御部12とを含む。統括制御部11は、認証制御部6及び防犯機能制御部12とCAN通信によって接続されている。この構成によれば、認証制御部6及び統括制御部11の通信と、統括制御部11及び防犯機能制御部12の通信とは、データの送信順序に制約がないCAN通信を用いて実行される。よって、認証制御部6及び統括制御部11の間の通信速度と、統括制御部11及び防犯機能制御部12の間の通信速度とが、共に速くなるので、応答性の向上に一層寄与する。
【0050】
(5)イモビライザ機能の解除は、認証制御部6が電子キー3の認証を実行し、そして、電子キー3の認証が成立する場合にイモビライザ解除要求Scを出力する一連の処理を含む。防犯機能の解除は、イモビライザ機能の解除の一連の処理の少なくとも一部に同期される。この構成によれば、防犯機能の解除は、認証制御部6が実行するイモビライザ機能の解除の一連の処理のいずれかの時間帯に同期させればよい。よって、同期を簡素に実現できる。
【0051】
(6)認証制御部6が実行する認証は、ユーザが車両2に乗車するときに実行される第1認証と、始動操作が行われたときに実行されるとともに第1認証よりも上位が付与された第2認証と、を含む。認証制御部6は、第2認証が成立した場合に、イモビライザ機能を解除する。この構成によれば、ユーザ乗車時に実施される第1認証よりも上位が付与された第2認証が成立しないと、イモビライザ機能が解除されない。よって、イモビライザ機能の不正な解除を抑制できる。
【0052】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・始動操作におけるスイッチ操作は、車両2に設けられた始動スイッチを押す操作に限定されない。例えば、車内のタッチパネルに始動スイッチが表示される場合、このスイッチ操作は、タッチパネルに表示された始動スイッチをタッチ操作することでもよい。或いは、モバイル端末のタッチパネルに表示された始動スイッチをタッチ操作することでもよい。
【0054】
・同時解除部22は、統括制御部11に設けられることに限定されない。例えば、防犯機能制御部12であるボディコントロールモジュールが統括制御部11の機能を含む構成の場合、防犯機能制御部12に同時解除部22を設けてもよい。このように、同時解除部22は、車両2に搭載された種々のECUに設けることができる。
【0055】
・同時解除部22は、同時解除が完了しても直ぐに始動要求Stを駆動源制御部13に出力せず、その後に入力するトリガに基づいて、始動要求Stを駆動源制御部13に出力してもよい。
【0056】
・第1認証は、例えば、ユーザが乗車するタイミングで行われる認証に限らず、ユーザが乗車する前に行われる認証であってもよい。この場合の第1認証は、車外スマート照合である。
【0057】
・イモビライザ機能の解除条件は、例えば、始動操作を行う前に実施された過去のキー認証(車内スマート照合、車外スマート照合のいずれも可)の成立結果を用いてもよい。
・イモビライザ機能の解除条件は、例えば、電子キー3の認証成立のみとしてもよい。
【0058】
・イモビライザ機能の解除条件は、例えば、第1認証及び第2認証の両方が成立することを含んでもよい。
・イモビライザ機能の解除条件に含めるキー認証の成立は、例えば、第1認証のみの成立としてもよいし、第2認証のみの成立としてもよい。
【0059】
・始動操作に対する車両2の応答動作は、走行駆動源4の始動に限らず、例えば、他の車載機器の動作開始としてもよい。
・防犯機能は、ステアリングロック機能に限らず、車両2の不正使用防止に係る機能であればよい。
【0060】
・認証制御部6と統括制御部11との通信、及び、統括制御部11と防犯機能制御部12との通信は、CAN通信以外の通信によって実行されてもよい。
・本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0061】
・同時解除部22は、[1]コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサによって構成されてもよいし、[2]そのようなプロセッサと、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路との組み合わせによって構成されてもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード、又は指令を格納している。メモリ(コンピュータ可読媒体)は、汎用、又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。或いは、上記プロセッサを含むコンピュータに代えて、各種処理の全てを実行する1つ以上の専用のハードウェア回路によって構成された処理回路が用いられてもよい。
【0062】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0063】
2…車両、3…電子キー、4…走行駆動源、5…車両制御装置、6…認証制御部、11…統括制御部、12…防犯機能制御部、14…従属制御部、22…同時解除部、St…始動要求、Sc…イモビライザ解除要求。