IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通テン株式会社の特許一覧

特開2024-160598情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム
<>
  • 特開-情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム 図1
  • 特開-情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム 図2
  • 特開-情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム 図3
  • 特開-情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム 図4
  • 特開-情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム 図5
  • 特開-情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム 図6
  • 特開-情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム 図7
  • 特開-情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム 図8
  • 特開-情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160598
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/246 20170101AFI20241107BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20241107BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G06T7/246
G08G1/00 C
G08G1/01 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075774
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 夏軌
【テーマコード(参考)】
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA20
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC04
5H181EE02
5H181FF22
5H181FF32
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA04
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】移動体の移動を推定する場合の処理負荷を低減する技術を提供する。
【解決手段】制御部が、地図上の領域毎に、取得した移動体の量又は属性に応じた値を付けたヒートマップを時間経過に伴って複数作成することと、複数の前記ヒートマップのうち、時間経過前後の前記ヒートマップを比較し、当該ヒートマップにおける各領域の値に基づいて、時間経過前後で関連している領域を関連領域として抽出することと、時間経過前の前記ヒートマップにおける前記関連領域の位置と時間経過後の前記ヒートマップにおける前記関連領域の位置とに基づいて、移動方向と移動量のうち少なくとも一方を推定することとを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図上の領域毎に、取得した移動体の量と属性の少なくとも一方に応じた値を付けたヒートマップを時間経過に伴って複数作成し、
前記作成した時間経過前後の前記ヒートマップを比較し、当該ヒートマップにおける各領域の値に基づいて、時間経過前後で関連している領域を関連領域として抽出し、
時間経過前後の前記ヒートマップにおける前記関連領域の位置に基づいて、移動方向と移動量の少なくとも一方の移動情報を抽出し 前記移動情報に基づいて、前記移動体の移動を予測すること、
を制御部が実行する情報処理方法。
【請求項2】
前記ヒートマップにおける地図上の領域毎の値は、各領域の色と濃淡の少なくとも一方を表す値である
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記制御部が、
前記関連領域を抽出する際に、同じヒートマップ上の隣接する領域についてグループ化を行い、各領域の値に加え、グループ化後のサイズに基づいて、関連している領域を抽出する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記制御部が、
抽出した前記移動情報に基づいて、前記領域間の移動に係る確率を示す予測モデルを生成する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記制御部が、
前記予測モデルに基づいて、前記移動体の移動を予測する
請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記制御部が、
前記予測の結果を表示装置に表示する
請求項5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記制御部が、
前記移動体が自由に移動可能な敷地と対応する地図上の領域毎に、当該敷地に存在する前記移動体の値を付けたヒートマップを作成する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項8】
移動体の移動の予測に用いる移動情報を抽出する制御部を備え、
前記制御部は、
地図上の領域毎に、取得した移動体の量と属性の少なくとも一方に応じた値を付けたヒートマップを時間経過に伴って複数作成し、
前記作成した時間経過前後の前記ヒートマップを比較し、当該ヒートマップにおける各領域の値に基づいて、時間経過前後で関連している領域を関連領域として抽出し、
時間経過前後の前記ヒートマップにおける前記関連領域の位置に基づいて、移動方向と移動量の少なくとも一方である前記移動情報を抽出する、
情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータに実行させる、移動体の移動の予測に用いる移動情報を抽出する情報処理
プログラムであって、
地図上の領域毎に、取得した移動体の量と属性の少なくとも一方に応じた値を付けたヒートマップを時間経過に伴って複数作成し、
前記作成した時間経過前後の前記ヒートマップを比較し、当該ヒートマップにおける各領域の値に基づいて、時間経過前後で関連している領域を関連領域として抽出し、
時間経過前後の前記ヒートマップにおける前記関連領域の位置に基づいて、移動方向と移動量の少なくとも一方である前記移動情報を抽出する、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
狭い範囲における車両の流れ(交通流)を予測するのであれば、分岐点の車両数を観測し、この観測結果を統計学的手法または確率論に基づいて演算することで、比較的容易に求めることが出来る。例えば、車両は、基本的に道路を走行するため、起こりうる事象が現実的なパターンに抑えられ、比較的容易に予測が可能となる。具体的には、交差点であれば、後退やコースアウト等をレアケースとして除外すると前進、右折、左折の3パターンを予測すればよい。
【0003】
一方で、同じ予測精度で広い範囲の予測を行おうとすると、推定すべき分岐が多すぎるため、計算コストが非常に高くなり、容易に求められるものではない。
【0004】
特許文献1には、第1監視画像を用いて、固定カメラの撮像範囲における群衆の流れを算出し、第2監視画像を用いて、移動カメラの撮像範囲におけるオブジェクトの属性の分布を算出し、移動カメラの撮像範囲に含まれない範囲について属性分布を推定することが記載されている。また、特許文献1では、人流の流れをカメラ画像中の人等の特徴点の時間的な動きをオプティカルフローで検出して推測することや、カメラ画像から推測した人の属性分布を地図上にヒートマップ状に表示する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-89834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
交通流や人流といった複雑な移動の予測を、同じ予測精度で広い範囲で行う場合は、例えば時間をかけてシミュレーションすることが考えられるが、この場合、リアルタイム予測等の用途には適用が難しい。また、所謂スーパーコンピューターのような大規模なコンピュータを用いてシミュレーションすることも考えられるが、大規模なコンピュータを採用できないこともあり、複雑な移動の予測を行う場合の処理負荷を抑える技術が望まれていた。
特許文献1の技術でも、カメラの撮影画像に対して詳細な解析を行って予測を行うため、同じ予測精度で広い範囲の予測を行うとなると、処理量が膨大となってしまうという課題がある。
【0007】
本開示の技術は、移動体の移動を推定する場合の処理負荷を低減する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示の情報処理方法は、
地図上の領域毎に、取得した移動体の量と属性の少なくとも一方に応じた値を付けたヒートマップを時間経過に伴って複数作成し、
前記作成した時間経過前後の前記ヒートマップを比較し、当該ヒートマップにおける各領域の値に基づいて、時間経過前後で関連している領域を関連領域として抽出し、
時間経過前後の前記ヒートマップにおける前記関連領域の位置に基づいて、移動方向と
移動量の少なくとも一方の移動情報を抽出し、
前記移動情報に基づいて、前記移動体の移動を予測すること、
を制御部が実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、移動体の移動を推定する場合の処理負荷を低減する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る移動予測システムの構成を示す図である。
図2図2は、移動予測装置の構成を示す図である。
図3図3は、ヒートマップの色付けをしていない状態の地図(マップ)を示す図である。
図4図4は、ヒートマップの一例を示す図である。
図5図5は、時間経過前後のヒートマップを示す図である。
図6図6は、地点A~地点Eにおける確率密度分布を示す図である。
図7図7は、予測結果の表示例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る予測モデルを生成する処理を示す図である。
図9図9は、図8の処理で生成した予測モデルを用いた予測処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0012】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る移動予測システム10の構成を示す図である。移動予測システム10は、移動体の量や属性を検出するセンサ20と、移動体の移動を予測する移動予測装置30とを有する。移動予測装置30は、情報処理装置の一形態である。本実施形態において、移動体は、例えば、人や車両、人以外の動物である。車両は、例えば、自動車、自転車、シニアカー、車いす等を含む。なお、シニアカーや車いすは、車両に含めず、シニアカーや車いすに乗っている人を移動体としてもよい。また、移動体は、人や車両等によって移動される商品、または、海、湖、若しくは河川の漂流物といった物であってもよい。以下の実施形態では、人の移動(人流)を予測する例を主に説明するが、車両の移動(交通流)や物の移動(物流)を予測する場合も同様である。移動予測システム10は、広い地域における人の移動を予測する場合に、人の量や属性に基づくヒートマップを作成し、時間経過前後のヒートマップを比較して特徴的な移動を抽出し、モデル化して予測に用いる。このように本実施形態の移動予測システム10は、ヒートマップを比較することで人流を把握し、処理負荷を軽減する。本実施形態の技術は、広い地域における移動の予測に適用でき、例えば、施設の敷地内から都市全体や県や国といった広い範囲の予測も、あまり処理負荷を増加させることなく行うことができる。以下、この予測の対象となる地域は、対象地域とも称される。この対象地域は、例えば高速道路のように移動方向や分岐箇所が限定された場所ではなく、移動体が自由に移動可能な敷地であってもよい。
【0013】
<センサ>
センサ20は、対象地域に存在する移動体の量や属性を検出する。センサ20は、例えば、対象地域を撮影するカメラ21であってもよい。カメラ21は、撮影した画像(撮影画像)を移動体情報として移動予測装置30へ送信する。撮影画像を受信した移動予測装置30は、撮影画像を画像解析することにより、撮影画像に写っている人、即ち対象地域(撮影場所)に存在する人の数(量)や属性を求める。ここで撮影画像から求められる属
性とは、歩いている、走っている、杖を持っている、眼鏡をかけている、帽子を被っている、傘をさしている、自転車に乗っている、車いすに乗っている、手を繋いでいる、子供連れである等、画像から判定できる情報である。カメラ21は、街中等に設置された固定カメラでもよいし、車等の移動体に設置したカメラや人が携帯しているスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末に備えられたカメラでもよい。特に、予測したい範囲の情報を漏れなく検出するためには、決まったルートを定期的に走行する路線バスや路面電車等の公共交通機関にカメラ21が設けられると有効である。また、街中等の様々な個所を走行する可能性があるタクシーにカメラが設けられることも有効である。カメラ21が車や人と共に移動する場合、カメラ21又は当該カメラ21と接続した装置が撮影画像と共に撮影した場所を示す位置情報を移動体情報として移動予測装置30へ送信してもよい。
【0014】
また、センサ20は、スマートフォンや、スマートウォッチ、スマートグラス(眼鏡)、タブレット端末など、人が携帯する通信端末22であってもよい。ここで通信端末22から取得される属性とは、例えば、位置情報や、移動履歴、自宅住所、自宅郵便番号などが挙げられる。
【0015】
更に、センサ20は、人が携帯するICタグやバーコードを読み取るリーダー23であってもよい。なお、リーダー23は、例えば、電車やバスの改札機、コンビニや自動販売機のカードリーダ、店舗のポイントカードを読み取る読み取り機などが挙げられる。リーダー23によって取得される属性としては、例えば、人が乗降した駅名、利用した店舗、人のID等が挙げられる。
【0016】
<移動予測装置>
図2は、移動予測装置30の構成を示す図である。移動予測装置30は、接続バス331によって相互に接続された制御部332、メモリ333、入出力IF(インターフェース)334、通信IF335を有するコンピュータである。制御部332は、入力された情報を処理し、処理結果を出力することにより、装置全体の制御等を行う。制御部332は、CPU(Central Processing Unit)や、MPU(Micro-processing unit)とも呼ばれる。制御部332は、単一のプロセッサに限られず、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のチップ内に複数のコアを有したマルチコア構成であってもよい。
【0017】
メモリ333は、主記憶装置と補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、例えば、制御部332の作業領域や、制御部332で処理される情報を一時的に記憶する記憶領域、通信データのバッファ領域として使用される。主記憶装置は、制御部332がプログラムやデータをキャッシュしたり、作業領域を展開したりするための記憶媒体である。主記憶装置は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリを含む。補助記憶装置は、制御部332により実行されるプログラムや、情報処理に用いられるデータ、動作の設定情報などを記憶する記憶媒体である。補助記憶装置は、例えば、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、USBメモリ、メモリカード等である
【0018】
入出力IF334は、移動予測装置30と接続した周辺機器との間でデータの入出力を行うインターフェースである。入出力IF334は、例えば、CDやDVD等の記憶媒体からデータを読み取るディスクドライブ、操作部、表示装置、マイク、スピーカ、センサ等の機器との間でデータの入出力を行う。操作部は、マウスやキーボード、タッチパネル等、オペレータの操作によって移動予測装置30に対する情報が入力される入力部である。表示装置は、処理結果などの情報をオペレータに対して表示出力する出力部である。
【0019】
通信IF335は、通信回線(ネットワーク)を介して他の装置との通信を行うインターフェース(通信モジュール)であり、CCU(Communication Control Unit)とも称す。
【0020】
移動予測装置30では、制御部332が、アプリケーションプログラムを実行することにより、制御部332が、移動体情報取得部301や、ヒートマップ生成部302、領域抽出部303、特徴量推定部304、予測モデル生成部305、移動予測部306、出力制御部307といった各処理部として機能する。即ち、制御部332は、実行するソフトウェアに応じて各処理部として兼用され得る。但し、上記各処理部の一部又は全部が、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用LSI(large scale integration)、論理回路、その他のデジタル回路といったハードウェアで形成されたもので
あってもよい。また、上記各処理部の少なくとも一部にアナログ回路を含む構成としてもよい。制御部332は、一つのプロセッサが複数の処理部として機能する構成であっても、一つの処理部として機能するプロセッサを複数備える構成であってもよい。
【0021】
移動体情報取得部301は、センサ20から移動体の量や属性を示す移動体情報を取得する。移動体情報取得部301は、通信IF335を介して、例えばカメラ21と接続して撮影画像を取得する。また、移動体情報取得部301は、通信IF335を介して、例えば通信端末22やリーダー23と接続して移動体情報を取得する。また、移動体情報取得部301は、移動体情報と共に、情報提供サーバから季節や天候等の条件を取得してもよい。なお、移動体と共に移動するカメラ21や通信端末22から移動体情報を取得する場合、カメラ21の位置や通信端末22の位置を示す位置情報を当該カメラ21や通信端末22から取得することで、どの領域における移動体情報であるかを特定できるようにしている。
【0022】
ヒートマップ生成部302は、移動体情報取得部301で取得した移動体情報に基づいて、対象地域と対応する地図上の領域毎に、取得した移動体の量や属性に応じた値を付けたヒートマップを作成する。図3は、ヒートマップの色付けをしていない状態の地図(マップ)51を示す図である。図3の地図51は、対象地域と対応する座標を有しており、例えば、対象地域の経度・緯度が、地図51のX,Y座標と対応する。また、地図51は、複数の領域52に区分されている。換言すると、地図51は、一つの領域52を一単位(一区分)とし、複数の領域(単位領域)52から構成されている。
【0023】
ここで、ヒートマップは、例えば、二次元の各領域におけるデータ(二次元の行列データ)の個々の値を色や濃淡として表現した可視化グラフである。一般的なヒートマップは、人が見て理解しやすいように各領域の値を色や濃淡で表現しているが、本開示では、ヒートマップをコンピュータによる判断にも用いているので、この際のヒートマップは、色や濃淡で表現する前の個々の値(色や濃淡を示す数値等のデータ値)を、二次元で持たせたもの(二次元の各領域に保持させたもの)も含む。上記のヒートマップの値は、量や属性の情報を示す生データの値に限らず、当該生データの値を所定の段階数(階調数)で示される階調データとするように変換した値であってもよい。この場合、例えば生データのうち近い量や属性の値が一つの階調の値となるように階調化することで階調データを作成する。このように量や属性の情報を示す生データに基づいて、時間的に前後するヒートマップから関連性を判断するよりも、階調データに変換された後のデータに基づいて関連性を判断する方が、判断が容易で処理負荷も軽減できる。特に、量や複数の属性といった複数のデータを1つの階調データ(同じ指標/スケールのデータ)にまとめる形で変換することで、判断(例えば、グループ化や関連性を判断する際の各値が近いのか遠いのかの判断)が容易になる。なお、ヒートマップは、二次元に限らず三次元以上のN次元で示され
るものであってもよい。例えば、複数階層で構成される施設内の移動体の移動を予測する
場合等では、ヒートマップは三次元のデータで構成されるようにしてもよい。また、二次元のヒートマップを各階層分、複数個持つことで階層間の移動を予測してもよい。
【0024】
ヒートマップ生成部302は、地図51上の各領域52に、移動体の量(人数)や属性に応じた値を付けてヒートマップを生成する。図4は、ヒートマップ53の一例を示す図である。ヒートマップ53は、各領域52における値の違いを色の違いで示している。なお、図4では、便宜上、色の違いをハッチングの違いで示している。例えば、人数又は車両数に応じて色の濃淡を表示する。また、属性の値に応じて、色を表示してもよい。例えば、地域住民であれば赤、市内居住者であれば緑、市外居住者であれば青のように色分けして表示する。なお、一つの領域52に属性の異なる複数の人が存在する場合、例えば、地域住民と市外居住者が存在する場合、赤と青を混色して紫とするように表示してもよい。
【0025】
また、RGBコードを用いて色を表示する場合、R,G,Bにそれぞれ属性の値(例えば地域住民,市内居住者,市外居住者)を割り当て、これらの属性を持つ人数を階調の値としたRGBコードで色を表示してもよい。即ち、地域住民の人数が多ければ濃い赤、地域住民の人数が少なければ薄い赤のようになる。なお、RGBに三つの属性を割り当てることに限らず、RGBがそれぞれ8bitの値をとる場合、4bit毎に区切り、六つの属性を割り当ててもよい。また、濃淡の値に対して属性と量の値を割り当て、濃淡のみで属性と量の両方を表すようにしてもよい。なお、ヒートマップの各領域の値は、移動体の量と属性の両方を示すものに限らず、量と属性の少なくとも一方を示す値であればよい。また、ヒートマップの領域毎の値は、各領域の色と濃淡の少なくとも一方を表す値であってもよい。
【0026】
このように単位領域52毎に色付けしたヒートマップ53は、各単位領域52を画素とした画像と見做すことができる。例えば、例えば、125m四方の領域52で区分した12.5km四方の地域のヒートマップ53は、100×100ピクセルの画像と見做すことができる。
【0027】
ヒートマップ生成部302は、所定時間(単位時間)が経過する毎にヒートマップ53を生成する。即ち、ヒートマップ生成部302は、時間経過に伴って、複数のヒートマップ53を生成する。
【0028】
領域抽出部303は、複数のヒートマップ53のうち、時間経過前後のヒートマップ53を比較し、当該ヒートマップ53における各領域52の値に基づいて、時間経過前後で関連している領域52を関連領域として抽出する。図5は、時間経過前後のヒートマップ53を示す図である。図5において、符号531は、時間経過前のヒートマップを示し、符号532は、時間経過後のヒートマップを示す。なお、比較するヒートマップ53は、二つに限らず、三つ以上であってもよい。
【0029】
領域抽出部303は、時間経過前後のヒートマップ53において、領域52の色や濃淡の情報(すなわち、移動体の量又は属性)が類似し、近い距離にある領域52を関連領域として抽出する。この領域の関連付けを行う前に、グルーピングを行うようにしてもよい。このグルーピングでは、1つのヒートマップ53における隣接する領域52の値が類似している場合、これらの領域をグループ化、すなわち、複数の領域を1つの大きな領域にまとめることを行う。そして、時間経過前後のヒートマップ53の関連領域を抽出する際には、各領域の値(色や濃淡)に加え、グループ化後のサイズ(領域の数)や、グループ化後の領域の形状等に基づいて、関連している領域を抽出してもよい。ここで、領域52の値が類似している場合とは、領域52の値が完全に一致している場合の他、同じ属性の人数が近い場合(例えば人数の差が所定値以内の場合)を含んでもよい。例えば、時間経
過前のヒートマップ531において符号533、534が領域52のグループを示している。
【0030】
なお、ヒートマップ53が、色と濃淡とによって移動体の量と属性とを表す場合、領域抽出部303は、色と濃淡の両方が近い領域をグループ化するだけでなく、色と濃淡の一方が近い領域をグループ化するようにしてもよい。例えば、色で属性、濃淡で量が表されている場合、色(属性)が近ければ、濃淡(量)が遠い領域であってもグループ化を行ってもよい。また、量については、閾値以上である場合のみグループ化するようにしてもよい。例えば、移動体の量が閾値以上の領域のうち、移動体の量や属性が近い領域をグループ化してもよい。また、移動体の量が閾値以上の領域であれば、隣接する領域と量の値が近くなくてもグループ化するようにグループ化の条件が設定されてもよい。
【0031】
例えば、時間経過前のヒートマップ531におけるグループ533と時間経過後のヒートマップ532におけるグループ535とは、グループ化後のサイズ及び各領域の値が類似しており、領域抽出部303は、これらグループ533,535を関連領域として抽出する。また、領域抽出部303は、例えば、時間経過前のヒートマップ531における領域536と時間経過後のヒートマップ532における領域537を関連領域として抽出する。なお、領域52の値が類似する場合であっても、時間経過前後のヒートマップ531、532で位置の変化が無い場合や、移動した移動体の量(例えば人数)が所定数未満の場合、これら領域52を関連領域として抽出しなくてもよい。
【0032】
特徴量推定部304は、時間経過前のヒートマップ531における関連領域の位置と時間経過後のヒートマップ532における関連領域の位置とに基づいて、移動方向と移動量のうち少なくとも一方を特徴量として推定する。図5の例では、関連領域(グループ)533の位置と、関連領域(グループ)535の位置とから、矢印541で示す移動ベクトルを推定する。
【0033】
予測モデル生成部305は、抽出した移動方向と移動量(移動距離)のうち少なくとも一方に基づいて、関連領域533,535間の移動に係る確率を示す予測モデルを生成する。例えば予測モデル生成部305は、特徴量推定部304で移動ベクトルを推定した関連領域の位置が、地点A~地点Eであった場合に、単位時間毎に移動体がどの地点へ移動するかを確率変数と見做して予測モデルを生成する。図6は、地点A~地点Eにおける確率密度分布を示す図である。この予測モデルにおける確率密度分布の推定はベイズ推定のほか、混合分布モデル、K-NN法など様々な手法で実現できる。なお、モデル作成する際には、同じ個所(マップの同じ領域)の移動方向と移動量に関するデータを複数集め、その複数のデータ(複数の時点のデータ)に基づいてモデル作成を行ってもよい。例えば、同じ領域から複数の領域(移動先領域)への移動方向や移動量を移動先領域毎に取得し、これら複数の移動先領域毎の情報に基づいてモデル作成を行ってもよい。なお、予測モデルを生成する場合、曜日や時間帯、季節や天候等の条件別にモデルを作成してもよい。
【0034】
移動予測部306は、予測モデルに基づいて、移動体の移動を予測する。例えば、予測モデルの確率変数に、現在の移動体の量や位置を入力し、所定時間後の移動体の量や位置を予測する。例えば、移動予測部306は、予測したい場所や、曜日や時間帯、季節や天候等の条件に基づいて、予測に適した予測モデルを、過去に作成済みの予測モデル群から選択し、選択した予測モデルを用いて現在の移動体の量や位置に基づく予測を行う。
【0035】
また、移動予測部306は、予測モデルを用いずに、過去の移動方向や移動量から所定時間後の位置を予測するようにしてもよい。例えば、所定時間後の位置をリアルタイムに予測する場合、過去の連続するタイミングで、同じ方向・移動量で動いている関連領域(グループ)がある場合には、その関連領域(グループ)は、所定時間後も同じ方向・移動
量で動いている可能性が高いと判断して、所定時間後の位置を予測する。特に、このような予測の行い方は、移動体の移動経路(道等)が明確に設けられていない施設内での移動(移動方向が道の形状の影響を受けない移動)を予測する場合に有効である。
【0036】
出力制御部307は、移動予測部306で予測した予測結果を表示装置等に出力する。図7は、予測結果の表示例を示す図である。図7の例では、予測の対象地域と対応する地図62上に移動ベクトルを示す矢印541と予測結果に基づくメッセージ56を表示させる。なお、メッセージ56は、予測結果に対応するメッセージがデータベースに予め登録され、移動予測部306の予測結果に応じてデータベースから読み出されて出力される。
【0037】
<移動予測方法>
次に移動予測装置30の制御部332が実行する移動予測方法(情報処理方法)について説明する。図8は、本実施形態に係る予測モデルを生成する処理を示す図である。移動予測装置30の電源がONとなった場合や、ユーザによって開始操作が行われた場合に、制御部332は、アプリケーションプログラムに従って図8の処理を実行する。なお、制御部332は、移動予測装置30の電源がOFFとなるまで、又はユーザによって終了操作が行われるまで、図8の処理を繰り返し実行する。
【0038】
ステップS10にて、制御部332は、センサ20から移動体の量や属性を示す移動体情報を取得する。例えば、制御部332は、カメラ21や通信端末22、リーダー23から移動体情報を取得する。
【0039】
ステップS20にて、制御部332は、対象地域と対応する地図上の領域毎に、ステップS10で取得した移動体の量や属性に応じた値を付けたヒートマップを生成し、メモリ333に記憶させる。なお、制御部332は、単位時間毎に図8の処理を繰り返すことで、時間経過に伴って複数のヒートマップを生成する。
【0040】
ステップS30にて、制御部332は、ステップS20で生成した複数のヒートマップのうち、時間経過前後のヒートマップを比較し、当該ヒートマップ53における各単位領域の値に基づいて、時間経過前後で関連している領域を関連領域として抽出する。
【0041】
ステップS40にて、制御部332は、時間経過前のヒートマップにおける関連領域の位置と時間経過後のヒートマップにおける関連領域の位置とに基づいて、移動方向と移動量のうち少なくとも一方を特徴量として推定する。
【0042】
ステップS50にて、制御部332は、推定した移動方向と移動量(移動距離)のうち少なくとも一方に基づいて、関連領域間の移動に係る確率を示す予測モデルを生成する。
【0043】
図9は、図8の処理で生成した予測モデルを用いた予測処理を示す図である。ステップS100にて、制御部332は、センサ20から現在の移動体情報を取得する。また、制御部332は、予測を行う際に条件を用いる場合、現在の季節や天候等の条件を取得する。
【0044】
ステップS110にて、制御部332は、ステップS100で取得した移動体情報を予測モデルに入力して予測結果を求める。なお、予測に条件を用いる場合には、ステップS100で取得した条件を入力する。
【0045】
ステップS120にて、制御部332は、ステップS110で求めた予測結果を出力する。
【0046】
このように移動予測装置30によって予測された結果は、例えば図7のように予測の対象地域と対応する地図62上に移動ベクトルを示す矢印541と予測結果に基づくメッセージ56が表示される。これにより移動予測装置30のユーザが、対象地域でどのような移動が予測されるのかを把握することができる。
【0047】
表示装置に表示されるものは、図7に記載したような予測結果だけでなく、予測途中の図4図5のヒートマップであってもよい。また、図5のように所定時間ごとのヒートマップを並べて表示したり、時間経過やユーザ操作に応じて所定時間ごとのヒートマップを切り替えて表示したりするようにしてもよい。このときグループ化した領域を強調表示してもよい。なお、強調表示は、例えば、グループ化した領域の輝度や色調を変化させることや、点滅させること、グループの外縁に特定色の枠を描画すること等であってもよい。
【0048】
表示装置は、街中や駅構内等の施設内に設けられ、不特定多数の人が見ることが可能なディスプレイであってもよい。また、表示装置は、予測の対象地域に設けられ、対象地域内を移動する人や車両の運転者に対して予測結果等を表示するものであってもよい。
【0049】
移動を予測する装置(移動予測装置30)と、予測結果を表示したり操作したりする装置(管理装置)は、別体で構成され、移動予測装置30と管理装置が通信回線を介して接続されるように構成されてもよい。この場合、移動予測装置30が、予測結果を管理装置へ出力し、管理装置が、当該管理装置に備えられた表示装置に予測結果を表示させる構成や、街中に設置された表示装置に予測結果を表示させてもよい。また、管理装置は、受信した予測結果をオペレータやAIに提示し、当該オペレータやAIによる予測結果に応じた措置(例えば渋滞を緩和する措置)を実行するようにしてもよい。例えば、移動元領域から移動先領域への移動が予測され、移動先領域で渋滞が発生する場合に、移動元領域に設けられた表示装置に移動先領域で渋滞が発生すること(予測結果)を表示することで、移動体に渋滞の回避を促してもよい。
【0050】
また、移動予測装置30は、平面上の移動を予測することに限らず、複数階層で構成される施設内における移動体の移動を予測するようにしてもよい。この場合、移動予測装置30は、例えば、ヒートマップを三次元のデータで構成することや、ヒートマップを各階層分、複数個持つことで、時間的に前後するヒートマップを比較した際に上下方向(階層間)で関連している領域を関連領域として抽出する。そして、移動予測装置30は、この関連領域の位置に基づいて、移動方向と移動量の少なくとも一方の移動情報を抽出し、この移動情報に基づいて、上下方向の移動を予測してもよい。
【0051】
<実施形態の効果>
本実施形態の移動予測装置30は、ヒートマップを時間経過に伴って複数作成することと、作成した時間経過前後のヒートマップを比較し、当該ヒートマップにおける各領域の値に基づいて、時間経過前後で関連している領域を関連領域として抽出する。そして、移動予測装置30は、時間経過前後のヒートマップにおける関連領域の位置に基づいて、移動方向と移動量の少なくとも一方の移動情報を抽出し、当該移動情報に基づいて、移動体の移動を予測する。
【0052】
このように本実施形態の移動予測装置30は、ヒートマップを比較し、時間経過前後で関連している領域の位置に応じて移動方向や移動量を予測するので、各領域において移動する可能性がある全ての方向についてシミュレーションするといった処理が不要になり、処理負荷を軽減できる。このため、特定の経路に依存しない複雑な移動を予測することができる。また、本実施形態の移動予測装置30は、時間経過前後のヒートマップにおける関連領域の位置に基づいて移動方向と移動量の少なくとも一方を予測するので、移動体の導線解析が可能となる。
【0053】
また、ヒートマップを構成する領域の大きさ(解像度)を適切に調整することで、目的に適した予測範囲とリアルタイム性と正確性のバランスを設定できる。
【0054】
移動予測装置30は、関連領域を抽出する際に、同じヒートマップ上の隣接する領域についてグループ化を行い、各領域の値に加え、グループ化後のサイズに基づいて、関連している領域を抽出する。これにより、複数領域に及ぶ移動の傾向を予測することができる。
【0055】
移動予測装置30は、抽出した移動方向と移動量のうち少なくとも一方に基づいて、領域間の移動に係る確率を示す予測モデルを生成する。これにより移動を予測する際の処理負荷を軽減でき、リアルタイム予測が容易となる。
【0056】
移動予測装置30は、予測結果を表示装置に表示する。これにより予測結果を分かり易く提示できる。例えば、地図と重畳して予測結果を表示することで、広範囲の人や車、モノの移動を分かりやすく可視化できる。
【0057】
移動予測装置30は、移動体が自由に移動可能な敷地と対応する地図上の領域毎に、当該敷地に存在する前記移動体の値を付けたヒートマップを作成する。また、移動予測装置30は、都市全体や県や国といった広い地域と対応する地図上の領域毎に、当該地域に存在する移動体の値を付けたヒートマップを作成する。このように特定の経路に依存しない複雑な移動体の移動を予測する場合であっても、本実施形態の移動予測装置は、移動体の量や属性に応じたヒートマップの比較に基づいて予測を行うことにより、容易に予測を行うことができる。
【0058】
<その他>
上述の実施形態は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲で、適宜、構成の付加、省略、置換、組み合わせ、及びその他の変更が可能である。
【0059】
また、本開示の技術は、上述の移動予測方法(情報処理方法)を制御部に実行させるための情報処理プログラムであってもよい。更に、本開示の技術は、当該情報処理プログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に非一時的に記録したものであってもよい。コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0060】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD(Compact Disc)、CD-R/W、DVD(Digital Versatile Disk)、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標) Disc)、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM(リードオンリーメモリ)等がある。
【符号の説明】
【0061】
10:移動予測システム
20:センサ
21:カメラ
22:通信端末
23:リーダー
30:移動予測装置
51:地図
52:領域(単位領域)
53:ヒートマップ
56:メッセージ
62:地図
301:移動体情報取得部
302:ヒートマップ生成部
303:領域抽出部
304:特徴量推定部
305:予測モデル生成部
306:移動予測部
307:出力制御部
331:接続バス
332:制御部
333:メモリ
531,532:ヒートマップ
533~535:グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9