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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160604
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241107BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075791
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 圭
(72)【発明者】
【氏名】秋久 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小田 博志
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】監視カメラによって監視が可能な領域を評価する。
【解決手段】情報処理装置が、所定の空間に存在する構造物に関する構造物情報と、前記構造物の表面素材に関するマテリアル情報と、前記所定の空間を照明する照明光に関する照明光情報と、に基づいて、前記所定の空間に含まれる領域のうち、所定の監視カメラによって監視が可能な領域である監視可能領域の広さを評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間に存在する構造物に関する構造物情報と、
前記構造物の表面素材に関するマテリアル情報と、
前記所定の空間を照明する照明光に関する照明光情報と、
に基づいて、前記所定の空間に含まれる領域のうち、所定の監視カメラによって監視が可能な領域である監視可能領域の広さを評価する制御部
を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記評価の結果に基づいて、前記監視可能領域の広さが所定値以上となる、複数の監視カメラの配置位置を決定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記構造物情報および前記マテリアル情報に基づいて、前記所定の空間を照明する光の反射をシミュレーションし、
反射光の強度が所定値以下である領域を監視可能領域とする、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記照明光情報は、時間帯ごとの前記照明光の変化に関する情報を含み、
前記制御部は、前記時間帯ごとに前記シミュレーションを行った結果に基づいて、前記複数の監視カメラの配置位置を前記時間帯ごとに決定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定の空間内を移動する動的オブジェクトに関するオブジェクト情報をさらに取得し、
前記動的オブジェクトの動きをシミュレーションした結果にさらに基づいて、前記監視可能領域を評価する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラによる監視を最適化するためのシステムが知られている。例えば、特許文献1には、構造物情報に基づいて、監視カメラの監視領域を変更または補正するシステムに関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-225108号公報
【特許文献2】特開2021-010069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、監視カメラによって監視が可能な領域を評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態の一態様は、
所定の空間に存在する構造物に関する構造物情報と、前記構造物の表面素材に関するマテリアル情報と、前記所定の空間を照明する照明光に関する照明光情報と、に基づいて、前記所定の空間に含まれる領域のうち、所定の監視カメラによって監視が可能な領域である監視可能領域の広さを評価する制御部を有する、情報処理装置である。
【0006】
また、他の態様として、上記の情報処理装置が実行する方法、当該方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、監視カメラによって監視が可能な領域を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】監視対象の空間を説明するための概要図。
図2】評価装置1のモジュール構成を説明する図。
図3】記憶部12に記憶されるデータを説明するための図。
図4】第一の実施形態において実行される処理のフローチャート。
図5】第一の実施形態において実行される処理のフローチャート。
図6】第二の実施形態で利用されるオブジェクトデータの一例。
図7】第二の実施形態において実行される処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
商業施設の店内といった、所定の空間内を監視するため、複数の監視カメラを利用することが一般的に行われている。複数の監視カメラによって施設内を監視する場合、死角となる範囲を最小化するように、その配置位置を決定することが好ましい。
【0010】
これに関する技術として、例えば、空間内に配置された構造物の位置に関する情報を利用して、複数の監視カメラのそれぞれが捉えることができる領域を算出し、死角がより少
なくなるような監視カメラの配置位置を決定するシステムがある。これにより、例えば、柱の陰といった、監視が行えない領域が発生することを抑制することができる。
【0011】
しかし、斯様なシステムでは、構造物以外の情報を利用していないため、監視が可能な範囲を適切に推定できないケースが起こりうる。
例えば、監視対象の空間内に、建物の外から環境光(太陽光など)が入射するケースを考える。ここで、太陽光が内部の構造物に反射すると、カメラが捉えた映像にグレア等が発生し、十分な監視が行えない領域が発生する場合がある。
この問題を解決するためには、光の反射を考慮して、監視カメラによる監視可能領域をシミュレーションすることが好ましい。
本開示にかかる情報処理装置は、かかる問題を解決する。
【0012】
一実施形態に係る情報処理装置は、所定の空間に存在する構造物に関する構造物情報と、前記構造物の表面素材に関するマテリアル情報と、前記所定の空間を照明する照明光に関する照明光情報と、に基づいて、前記所定の空間に含まれる領域のうち、所定の監視カメラによって監視が可能な領域である監視可能領域の広さを評価する制御部を有する。
【0013】
所定の空間は、監視対象である空間であって、典型的には室内空間である。
構造物情報は、当該空間内にある、固定された構造物に関する情報である。構造物情報は、例えば、一つ以上の構造物の形状、大きさ、配置位置などに関する情報であってもよい。また、構造物情報は、構造物に設けられた開口部(例えば、窓など)に関する情報を含んでいてもよい。構造物情報は、三次元空間内における、複数の構造物の配置を表したデータであってもよい。
【0014】
マテリアル情報は、構造物情報によって表された構造物の表面素材に関する情報である。マテリアル情報は、例えば、表面素材を識別するための情報や、素材ごとの光の反射率などに関する情報を含んでいてもよい。
【0015】
照明光情報は、所定の空間を照明する照明光に関する情報である。照明光は、太陽光であってもよいし、人工光であってもよい。照明光情報は、照明光の強度や入射角に関する情報を含んでいてもよい。また、照明光が太陽光である場合、照明光情報は、太陽の高度や方角に関する情報を含んでいてもよい。
【0016】
制御部は、前述した三つの情報に基づいて、空間内に配置された複数の監視カメラによる監視可能領域の広さを評価する。監視可能領域とは、監視カメラによって十分な監視が行える領域を指す。監視可能領域は、三次元領域であってもよい。監視可能領域は、監視カメラが撮像可能な領域と必ずしも一致しない。前述したように、物理的に監視カメラが撮像可能な領域(撮像領域と称する)のうち、光の反射によって見えづらくなる領域が発生する場合、そのぶんだけ監視可能領域は狭くなる。
【0017】
制御部は、構造物情報を利用することで、特定の位置からの物理的な死角を判定することができ、ある監視カメラに対応する撮像領域を判定することができる。さらに、制御部は、照明光情報とマテリアル情報を利用することで、例えば、光の反射をシミュレーションすることができる。これにより、反射した照明光に起因して、撮像領域のうちの一部が監視できない状態になる(すなわち、監視可能領域が想定よりも狭くなる)ことを判定することができる。
【0018】
さらに、制御部は、評価の結果に基づいて、複数の監視カメラを配置すべき位置を決定してもよい。例えば、制御部は、監視可能領域の広さが最大になるような監視カメラの配置位置を決定してもよい。
【0019】
また、制御部は、構造物情報およびマテリアル情報に基づいて、所定の空間を照明する光の反射をシミュレーションし、監視カメラから見て反射光の強度が所定値以下である領域を監視可能領域としてもよい。
【0020】
さらに、制御部は、時間帯ごとにシミュレーションを行い、当該シミュレーションの結果に基づいて、複数の監視カメラの配置位置を時間帯ごとに決定してもよい。
【0021】
また、制御部は、所定の空間内を移動する動的オブジェクトに関するオブジェクト情報をさらに取得し、動的オブジェクトの動きをシミュレーションした結果にさらに基づいて、監視可能領域を評価してもよい。
【0022】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0023】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る評価装置の概要について説明する。本実施形態に係る評価装置は、所定の空間内における、監視カメラの最適な配置位置を決定する装置である。
【0024】
最初に、監視カメラの最適な配置位置について説明する。図1は、複数の監視カメラによって監視を行う対象の空間を例示した平面図である。監視を行う対象の空間は、例えば、店舗などの商業施設の内部とすることができる。
【0025】
図1において、ハッチングで示した領域は、壁や柱など、見通しの妨げになる構造物を表す。施設内には、符号103Aおよび103Bで示した柱が存在する。
符号105はガラス張りのウインドウを表し、符号106はガラス張りの出入口を表す。ガラス張りの部分からは、外部の環境光が入射する。この他、店内には、商品を陳列する棚や、レジカウンターが存在する。棚やカウンターも、構造物の一部とすることができる。
【0026】
ここでは、斯様な店舗の内部を、複数の監視カメラによって監視する例を考える。符号101は、店舗の一角に備えられた監視カメラである。監視カメラは、所定の視野角を持っている。ここでは、監視カメラ101は、符号102で示した範囲を撮像可能なものとする。なお、以降の説明において、物理的な障壁なく各カメラが撮像可能な三次元領域を、撮像領域と称する。
斯様な店舗の内部をくまなく監視するためには、複数の監視カメラによる撮像領域が、店舗内の全領域をカバーできるように、監視カメラを配置することが好ましい。
【0027】
しかし、これだけでは、いずれの監視カメラによっても監視できない領域が発生してしまうケースが存在する。
例えば、図1の例において、点線で示した矢印の向きに外部から太陽光が入射するものとする。また、柱103Bの表面が、光の反射率が高い素材からなっているものとする。このような場合、建物の外部から入射した太陽光が柱103Bによって反射し、監視カメラ101のレンズに入射してしまう場合がある。斯様な場合、撮像領域の一部(例えば、図1における領域104)にグレア等が発生してしまい、映像の一部が欠けてしまう(すなわち、監視できない領域が発生する)場合がある。このような場合、領域104を監視するために、別の監視カメラを配置しなければならない。このような現象の発生は、構造物の位置情報のみでは、推測することができない。
【0028】
本実施形態における評価装置1は、構造物の位置情報に加え、光のシミュレーションを
行うことで、複数の監視カメラによる監視領域を評価する。また、評価結果に基づいて、好適な監視カメラの配置位置を決定する。
【0029】
[装置構成]
図2は、評価装置1の構成の一例を示した図である。
評価装置1は、例えば、サーバ装置、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、タブレットコンピュータ、個人情報端末といったコンピュータである。評価装置1は、制御部11、記憶部12、および入出力部13を含んで構成される。
【0030】
評価装置1は、プロセッサ(CPU、GPU等)、主記憶装置(RAM、ROM等)、補助記憶装置(EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等)を有するコンピュータとして構成することができる。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを実行することによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能(ソフトウェアモジュール)を実現することができる。ただし、一部または全部の機能は、例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア回路によってハードウェアモジュールとして実現されてもよい。
【0031】
制御部11は、所定のプログラムを実行することで、評価装置1の各種機能を実現する演算ユニットである。制御部11は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサによって実現することができる。また、制御部11は、RAM、ROM(Read Only Memory)、キャッシュメモリ等を含んで構成されてもよい。
【0032】
制御部11は、データ取得部111、シミュレーション部112、および結果出力部113の3つのソフトウェアモジュールを有して構成される。各ソフトウェアモジュールは、後述する記憶部12に記憶されたプログラムを制御部11(CPU)によって実行することで実現されてもよい。
【0033】
データ取得部111は、所定の空間について、監視カメラの設置位置を評価するためのデータを取得する。本実施形態では、データ取得部111は、対象の空間内に存在する構造物に関するデータ(以下、構造物データ)、当該構造物の表面素材に関するデータ(以下、マテリアルデータ)、および、環境光に関するデータ(以下、環境光データ)を取得する。
【0034】
シミュレーション部112は、データ取得部111が取得したデータに基づいて、複数の監視カメラのそれぞれが監視を行える領域をシミュレーションする。シミュレーションには、環境光のシミュレーションが含まれる。
【0035】
結果出力部113は、シミュレーション部112が行ったシミュレーション結果に基づいて、複数の監視カメラの好適な配置に関する情報を生成し、出力する。
【0036】
記憶部12は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。記憶部12には、制御部11にて実行されるプログラム、当該プログラムが利用するデータ等が記憶される。
【0037】
記憶部12には、データ取得部111によって取得された、構造物データ、マテリアルデータ、および環境光データが記憶される。
【0038】
ここで、構造物データの一例について説明する。図3(A)は、構造物データの一例である。
構造物データは、空間中に存在する構造物の形状や大きさに関するデータである。構造物データは、例えば、構造物ID、種別、位置情報の各フィールドを含んで構成される。構造物IDフィールドには、構造物ごとに割り当てられた識別子が格納される。種別フィールドには、構造物の種別(例えば、柱、壁、窓など)が格納される。位置情報フィールドには、構造物の、空間中における位置に関するデータが格納される。斯様なデータとして、例えば、構造物の三次元モデル、構造物の大きさに関する情報、構造物の配置位置に関する情報などが例示できる。位置情報を参照することで、制御部11は、監視対象の空間中における構造物の位置を特定することができる。
なお、構造物データは、BIM(Building Information Modeling)モデルや、3D-
CADによるモデルであってもよい。また、構造物データは、建物そのものの構造に関するデータを含んでいてもよい。
【0039】
次に、マテリアルデータの一例について説明する。図3(B)は、マテリアルデータの一例である。
マテリアルデータは、構造物データが示す構造物の表面素材に関するデータである。マテリアルデータは、例えば、構造物ID、マテリアルID、特性情報の各フィールドを含んで構成される。構造物IDフィールドには、構造物ごとに割り当てられた識別子が格納される。マテリアルIDフィールドには、表面素材ごとに割り当てられた識別子が格納される。特性情報フィールドには、表面素材の、光の反射特性に関するデータが格納される。斯様なデータとして、例えば、光の反射方向および反射率が例示できる。反射方向は、当該表面素材に光が当たったときにどの方向に光が反射するかを表す。反射率は、入射した光に対してどれくらいの割合が反射するか(素材に吸収されなかった光の割合)を表す。
なお、本例では、構造物データとマテリアルデータを別個のものとしたが、両者は一種類のデータであってもよい。BIMモデル等を利用することで、双方を統合することもできる。
【0040】
次に、環境光データの一例について説明する。図3(C)は、環境光データの一例である。
環境光データは、監視対象の空間を照明する環境光に関するデータである。環境光データは、具体的には、環境光が入射する方向や強さを定義したデータである。環境光データは、例えば、種別、照光条件、方位角、角度の各フィールドを含んで構成される。種別フィールドには、環境光の種別(例えば、太陽光、人工照明光など)が格納される。環境光が、季節や時間帯によって変化する場合、照光条件フィールドに、関連するデータが格納される。例えば、太陽の位置は、一日の間において絶えず変化する。また、太陽の高度は、年間を通して変化する。このような場合、照光条件フィールドに、条件(例えば、日付や時間帯を示すデータ)が格納される。方位角フィールドには、環境光が入射する方位角を示すデータが格納される。角度フィールドには、環境光が入射する角度(例えば、太陽の仰角)を示すデータが格納される。なお、環境光データは、これ以外にも、環境光の特徴に関するデータ(例えば波長など)を含んでもよい。
なお、図3(C)の例では、照光条件ごとに方位角や角度を定義したが、太陽のように連続的に動く光源を定義する場合、これらを数式によって表してもよい。
【0041】
図2に戻って説明を続ける。
入出力部13は、オペレータが行った入力操作を受け付け、オペレータに対して情報を提示する手段である。具体的には、入出力部13は、マウス、キーボード等の入力を行うための装置、及びディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置を含む。入出力装置は、例えば、タッチパネルディスプレイ等により一体的に構成されてもよい。
【0042】
なお、評価装置1の具体的なハードウェア構成は、実施形態に応じて、適宜、構成要素
の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のハードウェアプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA、GPU等で構成されてよい。また、例示したもの以外の入出力装置(例えば、光学ドライブ等)が付加されてもよい。また、評価装置1は、複数台のコンピュータにより構成されてよい。この場合、各コンピュータのハードウェア構成は、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。
【0043】
[フローチャート]
次に、本実施形態に係る評価装置1が実行する処理について説明する。図4は、評価装置1が実行する処理のフローチャートである。図示した処理は、評価装置1のオペレータの操作によって開始される。
【0044】
まず、ステップS11で、データ取得部111が、監視対象の空間に含まれる構造物に関するデータ(構造物データ)を取得する。構造物データは、所定のフォーマットで記述されたファイル等であってもよく、入出力部13を介して取り込まれてもよい。装置のオペレータは、対象の空間について構造物データを生成し、評価装置1にインポートすることができる。
【0045】
次に、ステップS12で、データ取得部111が、構造物の表面素材に関するデータ(マテリアルデータ)を取得する。マテリアルデータは、所定のフォーマットで記述されたファイル等であってもよく、入出力部13を介して取り込まれてもよい。装置のオペレータは、対象の空間に含まれる構造物に対応するマテリアルデータを生成し、評価装置1にインポートすることができる。
【0046】
次に、ステップS13で、データ取得部111が、監視対象の空間を照明する環境光に関するデータ(環境光データ)を取得する。環境光データは、所定のフォーマットで記述されたファイル等であってもよく、入出力部13を介して取り込まれてもよい。装置のオペレータは、対象の空間について環境光データを生成し、評価装置1にインポートすることができる。
なお、環境光が太陽光である場合、環境光データは、日付ごと、および時間ごとの太陽の位置を追跡するためのデータとすることができる。また、環境光が人工の光(例えば、照明装置、発光する看板、ディスプレイ、またはネオンサイン等)である場合、環境光データは、これらの光が発生する時間帯などに関するデータを含んでいてもよい。
【0047】
ステップS14からS18は、仮想空間上に仮想的な監視カメラを配置し、その見え方をシミュレーションするステップである。これらのステップは、シミュレーション部112によって実行される。
【0048】
ステップS14では、複数の仮想的な監視カメラを仮想空間上に仮配置する。監視カメラの台数は、例えば、所定の値を上限とする任意の台数としてもよい。監視カメラの配置位置は、一般的な手法によって決定してもよい。
【0049】
次に、ステップS15で、仮配置された複数の監視カメラによる撮像領域を算出する。本ステップでは、例えば、監視カメラのパラメータ(例えば、画角や焦点距離など)に基づいて、対象の空間において物理的に見える領域を特定する。さらに、本ステップでは、ステップS11で取得された構造物データに基づいて、対象の空間に配置された構造物を考慮して、撮像領域が算出される。撮像領域は、三次元空間上における座標によって特定してもよい。
【0050】
次に、ステップS16で、環境光に関する演算を行い、各監視カメラにおける撮像領域
から、十分な監視が行えない領域を除外し、得られた領域を監視可能領域とする。
本ステップでは、環境光のシミュレーションを実行し、環境光に起因して、ハレーションやグレアといった現象が各監視カメラにおいて発生するか否かを判定する。そして、当該現象によって、十分な監視ができない領域が発生する場合に、当該領域(以下、監視不能領域)を、撮像領域から除外する。残った領域が、監視可能領域である。監視可能領域とは、環境光などの外的要因に影響されずに監視が可能な領域を意味する。
【0051】
図5は、ステップS16において実行される処理をより詳細に示したフローチャートである。
【0052】
まず、ステップS161で、環境光のシミュレーションを実行する。環境光のシミュレーションは、例えば、光線追跡法(レイトレーシング)等によって行ってもよい。例えば、光源から出ている光の量や方向に基づいて、物体の表面などで起こる光の屈折や反射などをシミュレーションする。この際、構造物の表面で光が反射する場合、マテリアルデータを用いて、光の反射角や反射量を演算することができる。
【0053】
次に、ステップS162で、環境光に起因して監視不能領域が発生する監視カメラがあるか否かを判定する。本ステップでは、複数の監視カメラのそれぞれについて、所定の閾値以上の強度で光が入射するか否かを判定する。本ステップでは、例えば、監視カメラが有するレンズの表面に入射する光束(あるいは、単位面積あたりの光束)が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、所定の閾値以上の強度で光が入射する監視カメラがあった場合、当該監視カメラが捉えた映像上に、ハレーションやグレアが発生すると推定することができる。また、ハレーションやグレアが発生することで、対象物が十分に見えない範囲が画像中に発生することが推定できる。
【0054】
監視不能領域が発生する監視カメラがある場合、処理はステップS163へ遷移する。ステップS163では、当該監視カメラの撮像領域から、監視不能領域を除外し、残った領域を監視可能領域とする。監視不能領域が無い場合、撮像領域と監視可能領域は等しくなる。
本ステップでは、例えば、レンズ表面において、光束が所定の強度以上で入射する範囲を特定し、当該範囲に基づいて、監視不能領域を特定してもよい。
【0055】
図4に戻り、説明を続ける。
ステップS17では、結果出力部113が、仮配置された監視カメラの配置について、評価値を算出する。本実施形態では、評価値は、監視対象の空間に含まれる領域のうち、監視可能領域が広いほど大きな値を取る。評価値は、例えば、監視対象の空間の容積に対する、監視可能領域の容積を百分率で表した値であってもよい。評価値は、監視対象の空間に含まれる領域に対する監視可能領域の割合が大きいほど評価が高いことを示す値をとってもよい。
なお、複数の監視カメラによって同一の領域が監視可能である場合、監視可能領域の容積は重複してカウントされないようにしてもよい。
【0056】
また、監視対象の空間は、重み付けされていてもよい。例えば、監視対象の空間内に、重点的に監視すべき領域がある場合、当該領域について、より大きい重みを付したうえで評価値を算出するようにしてもよい。この場合、当該領域を複数の監視カメラによって監視可能である場合、より大きい評価値を付すようにしてもよい。
【0057】
ステップS18では、結果出力部113が、算出された評価値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、算出された評価値が所定の閾値を下回っていた場合、処理はステップS14へ戻り、監視カメラの仮配置が再度実行される。
【0058】
なお、監視カメラの仮配置を複数回実行する場合、それぞれの監視カメラの配置位置を所定値だけずらしながら、考えられる全ての配置パターンを網羅するようにしてもよい。また、監視カメラの複数の配置パターンを予め設定しておき、当該複数の配置パターンに従って監視カメラを仮配置してもよい。配置位置の決定には、最適化計算で採用される様々な手法を用いることができる。
【0059】
ステップS18において、算出された評価値が所定の閾値以上であった場合、処理はステップS19へ遷移し、結果出力部113が、処理結果を出力する。処理結果には、複数の監視カメラの配置位置、撮像領域に関する情報、監視不能領域に関する情報、監視可能領域に関する情報、および算出された評価値などを含ませてもよい。さらに、処理結果には、環境光のシミュレーション結果を含ませてもよい。例えば、所定の時間帯において、太陽光に起因したグレア等が発生する場合、当該時間帯や、監視不可領域に関する情報を、処理結果の一部として出力してもよい。例えば、「夕刻において、夕日が差し込むために見えづらくなる領域が発生するおそれがある」といった情報を出力してもよい。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る評価装置は、所定の空間内に配置された構造物に関する情報と、当該構造物の表面素材に関する情報に基づいて、監視カメラによる監視可能領域を評価する。特に、構造物の表面素材に関する情報を利用して環境光をシミュレーションすることで、光の反射に起因して監視が阻害される事象を精度よく検出することが可能になる。
【0061】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、環境光の反射を考慮して、監視カメラの配置位置を評価した。一方、監視を妨げる要因には、環境光以外のものが考えられる。
例えば、監視を行う対象が商業施設や駐車場である場合、人や自動車の移動によって、監視カメラの視界が一時的に妨げられる場合がある。
【0062】
ここでは、商品を自動的に決済する目的で、店舗内に複数の監視カメラを配置することを考える。店舗の利用者が商品を棚から取ったことを判定するためには、その手元を映像で捉える必要があるが、利用者の数が増えると、人影によって対象者の手元が見えなくなってしまう場合がある。
【0063】
第二の実施形態は、これに対応するため、監視対象の領域内を移動するオブジェクトの動きをシミュレーションし、オブジェクトに起因する監視不可領域(例えば、オブジェクトの影に入ることで見えなくなる領域)を算出したうえで、評価値を補正する。オブジェクトとは、典型的には、人間、自動車、自転車、パーソナルモビリティ等の移動する物体である。オブジェクトは生物であってもよいし、無機物であってもよい。
【0064】
第二の実施形態では、記憶部12は、空間内を移動するオブジェクトに関するデータ(以下、オブジェクトデータ)をさらに記憶するように構成される。
図6は、オブジェクトデータの一例である。
【0065】
オブジェクトデータは、複数の仮想的なオブジェクトを含む。図6の例では、仮想的な人物が3人定義されている。オブジェクトデータは、オブジェクトID、種別、形状データ、時刻情報、および動きデータの各フィールドを含んで構成される。
【0066】
オブジェクトIDフィールドには、仮想的なオブジェクトの識別子が格納される。種別フィールドには、例えば、人、自動車などの、オブジェクトの種別が格納される。形状データフィールドには、オブジェクトの形状や大きさなどに関するデータ(形状データ)が
格納される。オブジェクトが人である場合、形状データは、身長や性別などに関するデータであってもよい。また、オブジェクトが自動車である場合、形状データは、当該自動車の車格、形状、サイズなどに関するデータであってもよい。また、形状データは、三次元モデリングデータであってもよい。
【0067】
時刻情報フィールドには、対応するオブジェクトが、監視対象の領域に出現する時間帯や時刻などに関する情報が格納される。例えば、ある仮想人物について、「平日のランチタイムに訪問する」といった情報を持たせてもよい。
【0068】
動きデータフィールドには、対応するオブジェクトの動きに関するデータが格納される。例えば、監視対象が店舗である場合、動きデータは、来店客の入店から退店までの動き(位置の時系列変化)を定義したデータであってもよい。動きデータは、来店客の典型的な行動パターンに基づいて自動的に生成されたものであってもよい。
【0069】
オブジェクトデータは、評価装置のユーザが用意してもよいし、過去に観測されたオブジェクトの動きに基づいて生成されたものであってもよい。また、オブジェクトデータは、機械学習モデルなどを利用して生成されたものであってもよい。
【0070】
第二の実施形態では、シミュレーション部112が、環境光に関するシミュレーションに加え、オブジェクトの動きをさらにシミュレーション可能に構成される。また、シミュレーション部112は、オブジェクトの動きをシミュレーションした結果に基づいて、評価値(環境光のシミュレーション結果によって得られた評価値)を更新する。これにより、環境光とオブジェクトの動きの双方を考慮して、監視カメラの配置位置を評価することが可能になる。
【0071】
図7は、第二の実施形態において制御部11が実行する処理のフローチャートである。第一の実施形態と同様の処理については、破線で示し、説明は省略する。
【0072】
ステップS13において環境光データの取得後、ステップS13Aで、データ取得部111が、オブジェクトデータを取得する。オブジェクトデータは、所定のフォーマットで記述されたファイル等であってもよく、入出力部13を介して取り込まれてもよい。装置のオペレータは、対象の空間について環境光データを生成し、評価装置1にインポートすることができる。
取得されたオブジェクトデータは、記憶部12に記憶される。
【0073】
ステップS17で評価値が生成されると、シミュレーション部112が、オブジェクトデータに基づいて、仮想空間上に、仮想的なオブジェクトを配置し、その動きをシミュレーションする(ステップS17A)。
【0074】
本ステップでは、シミュレーション部112は、所定の時間幅について、オブジェクトの動きをシミュレーションし、各監視カメラの監視可能領域のうち、オブジェクトによって遮蔽される領域を、タイムステップごと(例えば、1秒ごと)に算出する。例えば、シミュレーション部112は、あるタイムステップにおいて、ある監視カメラの監視可能領域のうちの3%がオブジェクトによって遮蔽されることを算出する。
【0075】
この処理を、全てのタイムステップに対して行うことで、所定の時間幅において、オブジェクトによって遮蔽される領域が全体に対して平均何%発生するかを算出することができる。例えば、オブジェクトが存在しない場合、監視可能領域の100%が監視可能であるのに対し、オブジェクトが存在する場合、監視可能領域の広さが元の値の平均90%に低下するといった結果を得ることができる。
【0076】
結果出力部113は、算出結果を、ステップS17で得られた評価値に対して適用し、評価値の更新を行う。本ステップでは、オブジェクトによって遮蔽される領域が広く、オブジェクトによる遮蔽が発生する時間が長いほど、評価値を低く補正する。評価値を補正する方法には、任意の手法を採用することができる。
ステップS18では、このようにして得られた評価値を利用して判定を行う。
【0077】
第二の実施形態によると、監視対象の空間内を移動するオブジェクトによって発生する遮蔽を考慮して、監視カメラの配置に対する評価値を算出することができる。
【0078】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0079】
また、実施形態の説明では、シミュレーションを行う対象の時間帯を特に限定しなかったが、日付や時間帯を指定したうえでシミュレーションを実行してもよい。また、複数の日付や時間帯について複数のシミュレーションを実行してもよい。この場合、指定された日付や時間帯に対応する環境光データやオブジェクトデータを使用して複数回のシミュレーションを行うことができる。
また、この場合、日付や時間帯ごとに得られた評価値に基づいて、好適な監視カメラの配置位置を、日付や時間帯ごとに出力するようにしてもよい。
【0080】
さらに、評価装置1は、対象の時間帯を、所定のタイムスロット(例えば、30分ごと)に分割し、タイムスロットごとに、最適な監視カメラの配置位置を求めてもよい。
【0081】
また、実施形態の説明では、監視カメラの配置位置という語を、監視カメラが配置される座標といった意味で使用したが、監視カメラの配置位置は、監視カメラの座標および角度(レンズが向いている向き)を含む概念であってもよい。この場合、ステップS14~S18のループで、各監視カメラが向いている方向をさらに変更しながら評価値を算出してもよい。
さらに、監視カメラの台数および配置(座標)が決まっている場合、ステップS14~S18のループで、その向きのみを変更しながら評価値を算出してもよい。すなわち、配置位置とは、向きのみを含む概念であってもよい。
【0082】
また、実施形態の説明では、監視カメラを固定されたカメラとしたが、複数の監視カメラは、動的な配置位置変更が可能なカメラ(例えば、カメラを搭載したモビリティ)であってもよい。この場合、評価装置1は、監視カメラの配置位置を制御する制御装置に対して、好適な監視カメラの位置を指示する指示情報を送信してもよい。
また、複数の監視カメラは、動的に角度(向き)の変更が可能なカメラであってもよい。この場合、評価装置1は、監視カメラの角度を制御する制御装置に対して、角度(向き)を指示する指示情報を送信してもよい。
また、時間帯(タイムスロット)ごとに、監視カメラの好適な配置位置が異なる場合、時間帯ごとに、各監視カメラの配置位置を変更すべく、評価装置1は、前述した指示情報を、監視カメラの制御装置に送信するようにしてもよい。
【0083】
また、実施形態の説明では、シミュレーション部112が、監視カメラの配置位置を自動的に生成したが、監視カメラの配置位置は、評価装置1のオペレータによって指定されてもよい。この場合、座標や向きといった、監視カメラの配置位置に関する条件を、入出
力部13を介して取得し、当該条件下における評価値(またはシミュレーション結果)を出力するようにしてもよい。すなわち、評価装置1は、指定された条件下における監視可能領域の広さを評価する装置として機能してもよい。
【0084】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0085】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0086】
1・・・評価装置
11・・・制御部
12・・・記憶部
13・・・入出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7