IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 福島工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-カート棚式の食品加工装置 図1
  • 特開-カート棚式の食品加工装置 図2
  • 特開-カート棚式の食品加工装置 図3
  • 特開-カート棚式の食品加工装置 図4
  • 特開-カート棚式の食品加工装置 図5
  • 特開-カート棚式の食品加工装置 図6
  • 特開-カート棚式の食品加工装置 図7
  • 特開-カート棚式の食品加工装置 図8
  • 特開-カート棚式の食品加工装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160611
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】カート棚式の食品加工装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/02 20060101AFI20241107BHJP
   A47B 31/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A47B31/02 Z
A47B31/02 A
A47B31/02 D
A47B31/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075811
(22)【出願日】2023-05-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年11月22日から令和5年4月14日の間に複数の納入先へ納品
(71)【出願人】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】岸本 和也
(57)【要約】
【課題】洗浄構造を備える食品加工装置において、コーキング剤を用いることなく、部材締結用の孔から断熱材が充填される内部空間へ洗浄水が侵入することを防ぐ。
【解決手段】装置本体1を構成する内箱13は、収納庫3の底面を構成する内底壁44と、内底壁44の前縁に接合されて、収納庫3の下側の開口縁を構成する底枠45とからなり、底枠45は、上方側の表枠体46と、表枠体46の下方に配される裏枠体47とからなる。表枠体46には、貫通孔66が形成されており、該貫通孔66には、底枠45に前壁35を固定するための締結具68が挿通されている。表枠体46と裏枠体47との間には、貫通孔66を介して底枠45内に侵入した洗浄水の落下を許す枠内空間59が形成されている。そして、枠内空間59と収納庫3の庫内空間Aとの間に、当該枠内空間59に侵入した洗浄水を庫内空間Aに排出するための排水路60が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口を有する収納庫(3)を備えた装置本体(1)と、収納庫(3)の開口を開閉するドア(22)と、収納庫(3)に洗浄水を送給する洗浄構造(5)とを備え、装置本体(1)に出し入れされるカート(2)の食品トレイ(31)上の食品に対して冷却処理或いは加熱処理を行うカート棚式の食品加工装置であって、
収納庫(3)の前方下端には、トレイ収納部(30)を収納庫(3)に収容した状態において、トレイ収納部(30)を支持するフレーム部(29)の一部を受け入れる切欠(36)が形成されており、収納室(3)の前方下端の左右には、当該切欠(36)を区画する前壁(35・35)が配設されており、
装置本体(1)は、前側に開口を有する四角箱状の外箱(12)と、外箱(12)の内部に間隔をあけて収容される前側に開口を有する四角箱状の内箱(13)と、両箱(12・13)の四周縁どうしを接合する四角枠状の化粧枠(14)と、両箱(12・13)で囲まれる内部空間に充填される断熱材(15)とからなり、
内箱(13)は、収納庫(3)の底面を構成する内底壁(44)と、内底壁(44)の前縁に接合されて、収納庫(3)の下側の開口縁を構成する底枠(45)とからなり、
底枠(45)は、上方側の表枠体(46)と、表枠体(46)の下方に配される裏枠体(47)とからなり、
表枠体(46)には、貫通孔(66)が形成されており、該貫通孔(66)には、底枠(45)に前壁(35)を固定するための締結具(68)が挿通されており、
表枠体(46)と裏枠体(47)との間には、貫通孔(66)を介して底枠(45)内に侵入した洗浄水の落下を許す枠内空間(59)が形成されており、
枠内空間(59)と収納庫(3)の庫内空間(A)との間に、当該枠内空間(59)に侵入した洗浄水を庫内空間(A)に排出するための排水路(60)が形成されていることを特徴とするカート棚式の食品加工装置。
【請求項2】
表枠体(46)は、左右横長の板体からなり貫通孔(66)が形成される締結板(50)と、締結板(50)の後端から下向きに連設される表背板(51)とを備え、
裏枠体(47)は、左右横長の板体からなり締結板(50)に接合される接合板(53)と、接合板(53)の後端から下向きに連設される縦板(54)と、縦板(54)の下端から後向きに連設される水受板(55)と、水受板(55)の後端から下向きに連設される裏背板(56)とを備え、
表枠体(46)の締結板(50)に対して裏枠体(47)の水受板(55)は上下方向に所定間隔を置いて配されており、これら締結板(50)と水受板(55)との間に枠内空間(59)が形成されており、
排水路(60)が、裏背板(56)と表背板(51)との間に形成された隙間(E)で構成されている、請求項1に記載のカート棚式の食品加工装置。
【請求項3】
裏背板(56)と向かい合う表背板(51)に、庫内空間(A)と隙間(E)とを連通する排水孔(80)が前後貫通状に形成されている、請求項2に記載のカート棚式の食品加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一群の食品トレイが搭載されたカートを収納した状態で、食品トレイ上の食品に対して冷却処理或いは加熱処理を行うカート棚式の食品加工装置に関し、なかでも収納庫の内部を洗浄するための洗浄構造を備える食品加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の食品加工装置は、本出願人による特許文献1に公知である。特許文献1の急速冷却庫(食品加工装置)は、縦長の冷却庫本体と、冷却庫本体に対して出し入れされるカートと、冷却庫本体の収納庫に収容された食品に対して冷気を供給する冷却ユニット(処理空気供給装置)と、収納庫に洗浄水を送給する洗浄構造などを備えている。冷却庫本体は、外箱と、当該外箱と間隔をあけて収容される内箱と、これら外箱と内箱との縁部どうしを接合する四角枠状の化粧枠と、両箱で囲まれる内部空間に充填される断熱材とで構成される。
【0003】
冷却庫本体の前面の開口は、支柱状のピラーで相対的に大きな右開口と、相対的に小さな左開口に区画されている。両開口の前面にはそれぞれドアが設けられており、両ドアは観音開き状に開閉できる。カートは開放された右開口を介して収納庫に出し入れされる。右開口の下縁には、カートの進入時にフレーム部の通過を許す切欠が設けられている。この切欠は、右開口の下縁左右に配設される前壁により区画される。前壁の前面には、収納庫内の冷気の流出を防ぐための封止パッキンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-17493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の急速冷却庫では、ピラー及び前壁は、冷却庫本体の完成後に、収納庫の開口の縁部内面、具体的には内箱を構成する上下の壁面の前端部分にビスなどの締結具により固定されるため、内箱の壁面には、締結具を挿通するための部材締結用の孔を形成する必要がある。しかし、収納庫の洗浄時には、洗浄構造から収納庫に洗浄水が送給されるため、内箱の下側の壁面に孔が形成されていると、締結具との隙間を介して孔から断熱材が充填される内部空間へ洗浄水が侵入するおそれがある。内部空間に洗浄水が侵入すると、溜まった洗浄水によって断熱材が劣化し断熱性能の低下を招くおそれがある。一方、外箱の下壁に配管用の配管孔が形成されている場合には、配管孔から床面に水漏れするおそれがある。断熱材が充填される内部空間への洗浄水の侵入は、装置本体の組立時に、部材締結用の孔と締結具との隙間をコーキング剤で封止して防水処理を施すことで防ぐことができる。しかし、コーキング剤の塗布は作業者の熟練度によって一様な防水性能が発揮され難く、また、コーキング剤の劣化によって防水性が低下することも懸念される。
【0006】
本発明は、以上のような従来の食品加工装置の抱える問題を解決するためになされたものであり、洗浄構造を備える食品加工装置において、コーキング剤を用いることなく、部材締結用の孔から断熱材が充填される内部空間へ洗浄水が侵入することを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前面に開口を有する収納庫3を備えた装置本体1と、収納庫3の開口を開閉するドア22と、収納庫3に洗浄水を送給する洗浄構造5とを備え、装置本体1に出し入れされるカート2の食品トレイ31上の食品に対して冷却処理或いは加熱処理を行うカート棚式の食品加工装置を対象とする。収納庫3の前方下端には、トレイ収納部30を収納庫3に収容した状態において、トレイ収納部30を支持するフレーム部29の一部を受け入れる切欠36が形成されており、収納室3の前方下端の左右には、当該切欠36を区画する前壁35・35が配設されている。装置本体1は、前側に開口を有する四角箱状の外箱12と、外箱12の内部に間隔をあけて収容される前側に開口を有する四角箱状の内箱13と、両箱12・13の四周縁どうしを接合する四角枠状の化粧枠14と、両箱12・13で囲まれる内部空間に充填される断熱材15とからなる。内箱13は、収納庫3の底面を構成する内底壁44と、内底壁44の前縁に接合されて、収納庫3の下側の開口縁を構成する底枠45とからなり、底枠45は、上方側の表枠体46と、表枠体46の下方に配される裏枠体47とからなる。表枠体46には、貫通孔66が形成されており、該貫通孔66には、底枠45に前壁35を固定するための締結具68が挿通されている。表枠体46と裏枠体47との間には、貫通孔66を介して底壁45内に侵入した洗浄水の落下を許す枠内空間59が形成されている。そして、枠内空間59と収納庫3の庫内空間Aとの間に、当該枠内空間59に侵入した洗浄水を庫内空間Aに排出するための排水路60が形成されていることを特徴とする。
【0008】
表枠体46は、左右横長の板体からなり貫通孔66が形成される締結板50と、締結板50の後端から下向きに連設される表背板51とを備え、裏枠体47は、左右横長の板体からなり締結板50に接合される接合板53と、接合板53の後端から下向きに連設される縦板54と、縦板54の下端から後向きに連設される水受板55と、水受板55の後端から下向きに連設される裏背板56とを備える。表枠体46の締結板50に対して裏枠体47の水受板55は上下方向に所定間隔を置いて配されており、これら締結板50と水受板55との間に枠内空間59が形成されている。排水路60は、裏背板56と表背板51との間に形成された隙間Eで構成されている。
【0009】
裏背板56と向かい合う表背板51に、庫内空間Aと隙間Eとを連通する排水孔80が前後貫通状に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のように、底枠45を構成する表枠体46と裏枠体47との間に枠内空間59が形成されていると、表枠体46の貫通孔66を介して底枠45内に洗浄水が侵入した場合であっても、当該洗浄水を枠内空間59で受け止めることができるので、断熱材15が充填される内部空間へ洗浄水が侵入することを防ぐことができる。さらに本発明のように、枠内空間59と収納庫3の庫内空間Aとの間に、当該枠内空間59に侵入した洗浄水を庫内空間Aに排出するための排水路60が形成されていると、枠内空間59内から庫内空間Aに向けて洗浄水を排出することができるので、この点でも断熱材15が充填される内部空間へ洗浄水が侵入することを防ぐことができる。以上より、本発明によれば、洗浄構造5を備える食品加工装置において、コーキング剤を用いることなく、部材締結用の貫通孔66から断熱材15が充填される内部空間へ洗浄水が侵入することを防ぐことができる。
【0011】
枠内空間59を形成する水受板55の前側に縦板54が形成されていると、水受板55で受け止めた洗浄水の前側への流動を縦板54で堰き止めて後側へ流動させることができる。また、排水路60が、裏背板56と表背板51との間に形成された隙間Eで構成されていると、排水路60の構造が複雑化することを抑えることができるので、排水路60を設けたことに伴って、食品加工装置の製造コストが上昇することを抑えることができる。
【0012】
裏背板56と向かい合う表背板51に、庫内空間Aと隙間Eとを連通する排水孔80が前後貫通状に形成されていると、排水路60の下端が、庫内空間Aに溜まった洗浄水で水没した場合でも、排水路60を流れる洗浄水を、排水孔80を介して庫内空間Aに排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るカート棚式の食品加工装置の要部の縦断側面図である。
図2】食品加工装置の正面図である。
図3】食品加工装置とカートの関係を示す縦断側面図である。
図4】装置本体の分解斜視図である。
図5】切欠部分を示す正面図である。
図6】要部の縦断側面図であって、シャッターが後方にある状態を示している。
図7図5におけるA-A線断面図である。
図8】内底壁と底枠の分解斜視図である。
図9】内底壁に底枠を接合した状態を示す縦断側面図であり、図7におけるB-B線位置に相当する断面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態) 図1から図9に本発明に係るカート棚式の食品加工装置を急速冷却庫(ブラストチラー)に適用した実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、図1から図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2及び図3において、急速冷却庫は、縦長の冷却庫本体(装置本体)1を基体として、冷却庫本体1に対して出し入れされるカート2と、冷却庫本体1の収納庫3の庫内空間Aに冷気を供給する冷却ユニット4と、収納庫3に洗浄水を送給する洗浄構造5とを備えている。この急速冷却庫は、カート2に搭載されて収納庫3に収納された食品に対して粗熱取り、急速冷却、あるいは急速凍結などの冷却処理を行うことができる。
【0015】
冷却ユニット4は、冷却庫本体1の外部に設けられる外部ユニット4aと、収納庫3の庫内空間Aの内部左方に配される内部ユニット4bとで構成されている。外部ユニット4aは、圧縮機、凝縮器、及びこれら圧縮機及び凝縮器を冷却する冷却ファンなどを備え、内部ユニット4bは、蒸発器及び送風ファンを備えている。外部ユニット4aの圧縮機及び凝縮器と、内部ユニット4bの蒸発器とは、冷媒配管でループ状に接続されている。収納庫3の庫内空間Aの空気は、送風ファンの駆動により庫内空間Aを循環し、蒸発器を通過する間の熱交換によって冷却される。
【0016】
図2において洗浄構造5は、収納庫3の天面に設けられて収納庫3の庫内空間Aに向かって洗浄水を噴射するスプリンクラー6と、冷却庫本体1の下方に配されて洗浄水を貯留する貯水タンク7と、貯水タンク7内の洗浄水を、洗浄水送給路を介してスプリンクラー6へ加圧送給する送給ポンプ8などを備えている。スプリンクラー6は、洗浄水の噴出反力で垂直軸回りに回転しながら洗浄水を噴射する。収納庫3の底面には集水口9が設けられており、集水口9と貯水タンク7とは配管で接続される。スプリンクラー6から噴射された洗浄水は、集水口9から貯水タンク7へ流下され、再び送給ポンプ8によりスプリンクラー6へ加圧送給される。貯水タンク7には、外部から洗浄水を供給するための給水路と給水弁とが接続されている。また、貯水タンク7は、洗浄に使用された洗浄水を排出するための排水路と排水弁とを備えている。
【0017】
冷却庫本体1は縦長に形成されており、前面が開口する断熱箱体からなる。図3及び図4に示すように、冷却庫本体1を構成する断熱箱体は、前側に開口を有する四角箱状の外箱12と、外箱12の内部に間隔をあけて収容される前側に開口を有する四角箱状の内箱13と、両箱12・13の四周縁どうしを接合する四角枠状の化粧枠14と、両箱12・13で囲まれる内部空間に充填される断熱材15とで構成されている。化粧枠14は、外箱12の開口の四周縁に形成される四角枠状の外箱端枠16と、内箱13の開口の四周縁に形成される四角枠状の内箱端枠17とを接合して、両箱12・13を一体的に構成する。
【0018】
図2に示すように、冷却庫本体1の前面の開口は、収納庫3の開口縁に設けられる支柱状のピラー21で、相対的に大きな右開口と相対的に小さな左開口とに区分されており、これら開口はドア22で開閉される。ドア22は、右開口の前面を覆う右ドア22aと、左開口の前面を覆う左ドア22bとで構成されており、両ドア22a・22bは観音開き状に開閉できる。各ドア22a・22bは、中空の外郭体の内部に断熱材が充填された断熱ドアで構成されている。
【0019】
左ドア22bは、ロック構造で閉状態に保持されており、ロック構造を解除することにより解放することができる。一方、右ドア22aは、同ドア22aの揺動先端に設けられたラッチレバー23が、左ドア22bの前面右縁に固定されたラッチ受け24に係合することにより、閉状態に保持される。閉じ状態の右ドア22aは、ラッチレバー23を操作して、同レバー23とラッチ受け24との係合を解除することにより開放することができる。カート2は、右ドア22aを開放した状態において冷却庫本体1に出し入れすることができる。また、両ドア22a・22bを開放することにより、冷却ユニット4を構成する内部ユニット4bにアクセスすることができる。図2において、符号25は、左ドア22bの前面に設けられた操作パネルを示す。操作パネル25には、モード選択ボタンやスタートボタンなどの各種の操作ボタンが配されており、これらの操作ボタンを操作することにより、先の冷却ユニット4や洗浄構造5を作動させることができる。
【0020】
図3においてカート2は、4個のキャスターを備える平面視で四角枠状の基台部28と、基台部28の上面前部に固定される、縦横の枠部からなる横臥L字状のフレーム部29と、フレーム部29の横枠部の上面に固定されるトレイ収容部30とで構成される。トレイ収容部30は多段状の棚で形成されており、棚の各段に一群の食品トレイ31が前後に出し入れ可能な状態で載置される。フレーム部29の縦枠部の後面には、左右横長の金属板製の閉塞板32が固定されており、閉塞板32の左右端はフレーム部29の外側へ張り出されており、閉塞板32の上端はフレーム部29の上縁より上方へ張り出されている。
【0021】
図5に示すように、収納庫3の前方下端、具体的には収納庫3の右開口における下側の開口縁の両隅部には、左右一対の前壁35・35が配設されている。この一対の前壁35・35の間には、フレーム部29の一部を受け入れる切欠36が区画されている。カート2のトレイ収容部30を収納庫3に収容する際には、フレーム部29の横枠部が切欠36を通過して収納庫3の庫内空間Aへ進入する。各前壁35の前面の上縁および切欠36の周縁に沿って、収納庫3の冷気の流出を防ぐ封止パッキン37が固定されている。図5において、符号38は冷却庫本体1の下面に固定されて、押し込み移動されるカート2を案内する前後に長いガイド枠であり、これらガイド枠38に沿って基台部28を押し込み操作することにより、カート2のトレイ収容部30を適正姿勢で収納庫3の庫内空間Aに収容できる。カート2のトレイ収容部30を収納庫3の庫内空間Aに収容したとき、基台部28は、冷却庫本体1の下面と床面との間の空間に収容される。
【0022】
図2及び図3に示すように、右ドア22aの裏面には、四角枠状にドアパッキン39が固定されており、このドアパッキン39は、収納庫3の開口上周縁、開口右周縁、ピラー21、及び前壁35の上縁部分の封止パッキン37に密着して、切欠36部分を除く収納庫3の右開口の大半を封止する。右ドア22aの裏面下側にはフレーム収容部40が設けられており、このフレーム収容部40には、前後変位可能にシャッター41が設けられている。カート2を収容せず右ドア22aを閉じたときには、シャッター41は後方に変位しており、シャッター41の後面が切欠36の周縁の封止パッキン37に密着することにより、ドアパッキン39で封止されていない切欠36部分がシャッター41で封止される(図6参照)。
【0023】
図6において二点鎖線で示すように、トレイ収容部30が収納庫3の庫内空間Aに収容された状態においては、収納庫3からはみ出たカート2のフレーム部29の縦枠部が、フレーム収容部40の内部に受け入れられるようになっている。このときシャッター41は、フレーム部29と当接して前方に変位し、右ドア22aとフレーム部29との間の空間に位置する。カート2を収容して右ドア22aを閉じたときには、閉塞板32の後面が切欠36の周縁の封止パッキン37に密着することにより、ドアパッキン39で封止されていない切欠36部分が閉塞板32で封止される。
【0024】
図1及び図4に示すように、内箱13は、収納庫3の底面を構成する内底壁44と、収納庫3の下側の開口縁を構成する底枠45とを備えている。内底壁44は偏平な四角皿状に形成されており、内底壁44の前後方向中央部の左寄りには、洗浄構造5の集水口9が設けられている。底枠45は、内底壁44の左右方向全幅にわたって設けられており、上方側に配される表枠体46と、表枠体46の下方に配される裏枠体47とで構成されている。底枠45の上面には、ピラー21の下端及び前壁35が固定される。
【0025】
図1及び図8に示すように、表枠体46は、左右横長の板体からなる水平な締結板50と、締結板50の後端から下向きに連設される垂直な表背板51と、締結板50の前端から上向きに連設される垂直な堰板52とを備えている。堰板52は、洗浄構造5から送給され底枠45上に流下した洗浄水を堰き止めて、洗浄水が底枠45の前縁よりも前側に流出することを阻止する。
【0026】
裏枠体47は、左右横長の板体からなり締結板50に接合される水平な接合板53と、接合板53の後端から斜め下向きに連設される縦板54と、縦板54の下端から後向きに連設される水平な水受板55と、水受板55の後端から下向きに連設される垂直な裏背板56と、接合板53の前端から下向きに連設される垂直な連結板57と、裏枠体47の左右端に設けられ、縦板54及び水受板55に連設される左右一対の側板58・58とを備えている。連結板57は、化粧枠14が接合される内箱端枠17の下側の端枠部分を構成している。各側板58の上縁と接合板53の上端面とは、面一状に形成されている。
【0027】
図1に示すように、表枠体46と裏枠体47とは、堰板52の前面と連結板57の前面とが面一状になるとともに、表背板51が後側、裏背板56が前側に位置して向かい合う状態で配される。この状態で締結板50と接合板53とがスポット溶接等で接合されることにより、表裏の枠体46・47は一体的に構成される。底枠45の前面は、収納庫3の右開口に対応する部分(ピラー21よりも右側部分)が、残る部分に比べて、封止パッキン37の厚みの分だけ後方に凹んでいる(図5参照)。
【0028】
表枠体46の締結板50と裏枠体47の水受板55とは所定間隔を置いて配されており、これら締結板50と水受板55との間(表枠体46と裏枠体47との間)に、後述する貫通孔66を介して底枠45内に侵入した洗浄水の落下を許す枠内空間59が形成されている。枠内空間59の前後は縦板54及び表背板51により閉塞され、枠内空間59の左右は一対の側板58・58で閉塞されている。枠内空間59の後端に位置して、前後に向かい合う状態で配される表背板51と裏背板56とは、隙間Eが形成された状態で配される。この隙間Eは、その上端が枠内空間59に連通され、下端が内底壁44の上面に臨んで収納庫3の庫内空間Aにおいて開放されている(図1参照)。
【0029】
図7に示すように、各前壁35は、底枠45に固定されるブラケット62と、ブラケット62を覆うように設けられるカバーブロック63とで構成されている。ブラケット62は、下、前、及び左右のブラケット壁を備える部分箱状に形成されており、その下ブラケット壁62aが表枠体46に締結されて底枠45に固定される(図8参照)。具体的には、図1に示すように、枠内空間59には、内面に雌ねじが形成された4個の締結孔64を有する締結ブロック65が配されており、各締結孔64と正対する締結板50には、上下に貫通して枠内空間59に連通する貫通孔66が形成されている。この貫通孔66が部材締結用の孔を構成する。下ブラケット壁62aには、締結孔64に対応してねじ通孔67が形成されており、ねじ通孔67及び貫通孔66を介して、締結孔64に上方から固定ビス(締結具)68をねじ込むことにより、表枠体46に下ブラケット壁62aが締結され、ブラケット62は底枠45に固定される。
【0030】
図5及び図7に示すように、カバーブロック63は、上、前後、及び左右のカバー壁を備える下側に開口を有する四角箱状に形成されており、その前カバー壁63aがブラケット62の前ブラケット壁62bに締結される。図7において符号69は、ブラケット62にカバーブロック63を固定するための固定ビスを示す。前カバー壁63aに形成されたねじ通孔を介して前ブラケット壁62bに前方から固定ビス69をねじ込むことにより、前ブラケット壁62bに前カバー壁63aが締結され、カバーブロック63はブラケット62に固定される。
【0031】
ピラー21は、収納庫3の上下の開口縁に固定されたピラー固定枠70に連結され冷却庫本体1に支柱状に設けられる。図8に示すように、下側のピラー固定枠70は、下、前、及び左右の枠壁を備える部分箱状に形成されており、その下枠壁70aが表枠体46に締結される。具体的には、下枠壁70aには、3個のねじ通孔71が形成されており、ピラー21の固定位置に対応する締結板50には、上下に貫通して枠内空間59に連通する貫通孔66が形成されている。ねじ通孔71及び貫通孔66を介して固定ビス72及び不図示のナットからなる締結体で下枠壁70aと表枠体46とを締結することにより、ピラー固定枠70は底枠45に固定される。上側のピラー固定枠70は、下側のピラー固定枠70の上下勝手違いの構成であり、内箱13の天壁の前縁に固定される。ピラー21は、これら収納庫3の上下の開口縁に固定されたピラー固定枠70の前側に固定構造で固定される(図7参照)。
【0032】
図9において符号74は内底壁44と底枠45とを接合するリベットを示し、符号75は、締結ブロック65を裏枠体47に固定するためのリベットを示す。リベット74は、左右方向の等間隔置きに複数設けられており、内底壁44の前端上部から前向きに連設された接合壁76と、底枠45の水受板55の後端寄りとがこれらリベット74で締結されることにより、内底壁44と底枠45とが一体的に接合される。内底壁44と底枠45とが接合された状態において、裏枠体47の裏背板56の前面は、内底壁44の内側面に密着する(図1参照)。締結ブロック65は、その左右端から外向きに連設される接合板77を備えており、水受板55に接合板77がリベット75で締結されることにより、締結ブロック65は底枠45に固定される。
【0033】
表枠体46においては、ねじ締結による固定方法を用い、裏枠体47においては、かしめ締結による固定方法を用いる。これは、ピラー21及び前壁35は、冷却庫本体1の形成後に組み付けられるものであり、また、急速冷却庫のメンテナンスにおいて分解し取り外すことがあるため、着脱可能なねじ締結からなる固定方法を採ることで、組み付け或いは分解の作業を簡便に行うことができることに拠る。一方、内底壁44と底枠45、及び裏枠体47と締結ブロック65とは、冷却庫本体1の形成時に組み付けられるものであり、一度組み付ければ分解することはない。また、かしめ締結であるリベット74・75による締結では、リベット74・75と、このリベット74・75が挿通される貫通孔との間には、隙間は形成され難いため、締結部分の防水性に優れている。これらのことから裏枠体47ではかしめ締結からなる固定方法を採用している。本実施形態では、万が一リベット74・75による締結部分に隙間が形成された場合に備えて、断熱材15が充填される内部空間側のリベット頭部を止水テープ78で被覆して防水処理を施している。
【0034】
洗浄構造5の駆動時、収納庫3に送給された洗浄水が底枠45上を流れる際、貫通孔66を介して洗浄水が枠内空間59に侵入(落下)することがある。貫通孔66から枠内空間59に洗浄水が侵入すると、洗浄水は水受板55で受け止められ、当該受け止められた洗浄水は、前側への流動が縦板54で堰き止められているため、水受板55で後側へ流動され隙間Eからなる排水路60へ流入する。排水路60へ流入した洗浄水は、この排水路60の下端から庫内空間A(内底壁44)に排水される。したがって、貫通孔66を介して洗浄水が枠内空間59に侵入したとしても、断熱材15が充填される内部空間へ洗浄水が侵入することを防ぐことができる。
【0035】
図1及び図8に示すように、裏背板56と向かい合う表背板51には、収納庫3の庫内空間Aと隙間Eとを連通する排水孔80が前後貫通状に形成されている。排水路60へ流入し流下する洗浄水は、排水孔80からも内底壁44へ排水される。排水孔80を設けることにより、集水口9から貯水タンク7への洗浄水の流下が滞り、排水路60の下端が内底壁44に貯留された洗浄水に水没した場合でも、排水路60の洗浄水を排水孔80から庫内空間Aに排水することができる。急速冷却庫の仕様によっては、内底壁44の前側の隅部にコーキング剤が塗布され、排水路60の下端がコーキング剤で塞がれることがある。この場合でも排水孔80を設けることにより、排水路60に流入した洗浄水を排水孔80から排水することができる。なお、水受板55は、洗浄水の排水路60への流動案内を促進させるため、後方に向かって僅かに下り傾斜するように形成することが望ましい。
【0036】
以上のように、本実施形態の急速冷却庫においては、底枠45を構成する表枠体46と裏枠体47との間に枠内空間59を形成したので、表枠体46の貫通孔66を介して底枠45内に洗浄水が侵入した場合であっても、当該洗浄水を枠内空間59で受け止めて、断熱材15が充填される内部空間へ洗浄水が侵入することを防ぐことができる。さらに本実施形態のように、枠内空間59と収納庫3の庫内空間Aとの間に、当該枠内空間59に侵入した洗浄水を庫内空間Aに排出するための排水路60を形成したので、枠内空間59内から庫内空間Aに向けて洗浄水を排出することができ、この点でも断熱材15が充填される内部空間へ洗浄水が侵入することを防ぐことができる。以上より、本実施形態によれば、洗浄構造5を備える食品加工装置において、コーキング剤を用いることなく、部材締結用の貫通孔66から断熱材15が充填される内部空間へ洗浄水が侵入することを防ぐことができる。
【0037】
枠内空間59を形成する水受板55の前側に縦板54を形成したので、水受板55で受け止めた洗浄水の前側への流動を縦板54で堰き止めて後側へ流動させることができる。また、排水路60を、裏背板56と表背板51との間に形成された隙間Eで構成したので、排水路60の構造が複雑化することを抑えて、排水路60を設けたことに伴って、食品加工装置の製造コストが上昇することを抑えることができる。
【0038】
本発明に係る食品加工装置は、実施形態で説明した急速冷却庫に限られず、食品に対して加熱処理を行う加熱庫等にも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 装置本体(冷却庫本体)
2 カート
3 収納庫
5 洗浄構造
12 外箱
13 内箱
14 化粧枠
15 断熱材
22 ドア
29 フレーム部
30 トレイ収納部
35 前壁
36 切欠
44 内底壁
45 底枠
46 表枠体
47 裏枠体
50 締結板
51 表背板
53 接合板
54 縦板
55 水受板
56 裏背板
59 枠内空間
60 排水路
66 貫通孔
68 締結具(固定ビス)
80 排水孔
A 収納庫の庫内空間
E 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9