(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160631
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】発育予測装置及び発育予測方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241107BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20241107BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075849
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 貴裕
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】発育ステージの予測精度を向上させること。
【解決手段】発育予測装置4は、作物の発育ステージを予測するステージ予測部6と、基準日から発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、ステージ予測部6にて予測された発育ステージの推移データに対して特定の発育ステージの予測日を示す閾値を定義する定義部7と、を備え、ステージ予測部6は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの推移データが閾値に到達する日を特定の発育ステージとして予測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の発育ステージを予測するステージ予測部と、
基準日から前記発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、前記ステージ予測部にて予測された前記発育ステージの推移データに対して前記特定の発育ステージの予測日を示す閾値を定義する定義部と、
を備え、
前記ステージ予測部は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの推移データが前記閾値に到達する日を前記特定の発育ステージとして予測する発育予測装置。
【請求項2】
前記ステージ予測部は、基準日から作物の発育推移を数値化した推移値を積算して得られる積算値が規定値に到達する日を作物の発育ステージの到達日として予測し、
前記定義部は、前記基準日から前記発育ステージの前記到達日に至るまでの期間内に前記特定の発育ステージが含まれている場合、前記ステージ予測部にて予測された前記基準日から前記発育ステージの前記到達日までの積算値の推移データにおいて、作物の実績データが示す前記特定の発育ステージの到達日に対応する積算値を、前記特定の発育ステージの予測日を示す閾値として定義し、
前記ステージ予測部は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの前記積算値が前記閾値に到達する日を前記特定の発育ステージとして予測し、前記積算値が前記規定値に到達する日を当該次回の発育ステージの到達日として予測する請求項1に記載の発育予測装置。
【請求項3】
前記定義部は、複数品種の作物の実績データがそれぞれ示す前記特定の発育ステージに対応する複数品種の積算値を平均した平均値を、前記閾値として定義する請求項2に記載の発育予測装置。
【請求項4】
前記定義部は、単一品種の作物の実績データが示す前記特定の発育ステージに対応する積算値を、前記閾値として定義する請求項2に記載の発育予測装置。
【請求項5】
前記定義部は、同品種の作物の実績データが示す前記特定の発育ステージに対応する積算値を、前記閾値として定義する請求項2に記載の発育予測装置。
【請求項6】
前記定義部は、指定された圃場の作物の実績データが示す前記特定の発育ステージに対応する積算値を、前記閾値として定義する請求項2に記載の発育予測装置。
【請求項7】
前記基準日から前記発育ステージの前記到達日までの期間は、越冬期間と、前記越冬期間の直後の前記特定の発育ステージとを含む請求項1~6の何れか1項に記載の発育予測装置。
【請求項8】
前記作物は、越冬作物である請求項1~6の何れか1項に記載の発育予測装置。
【請求項9】
前記越冬作物は、麦類、玉葱のいずれかである請求項8に記載の発育予測装置。
【請求項10】
前記特定の発育ステージは、麦類では、茎立期、幼穂形成期、節間伸長開始期、及び、減数分裂期、玉葱では、茎葉伸長期、鱗茎肥大期のいずれかである請求項1~6の何れか1項に記載の発育予測装置。
【請求項11】
ステージ予測部が、作物の発育ステージを予測する第1ステップと、
定義部が、基準日から前記発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージが
含まれている場合、前記ステージ予測部にて予測された前記発育ステージの推移データに対して前記特定の発育ステージの予測日を示す閾値を定義する第2ステップと、
前記ステージ予測部は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの推移データが前記閾値に到達する日を前記特定の発育ステージとして予測する第3ステップと、を備える発育予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物の発育ステージを予測する発育予測装置及び発育予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作物の収量、品質の安定化のためには、作物の生育過程を示す複数の発育ステージ(例えば、出芽期、出穂期、開花期など)を順次に予測し、各発育ステージについて適切な作業(つまり、適期作業)が必要である。特許文献1の作物生育状況分析システムでは、時系列の気象データに基づいて、作物の基準日以降の生育状況を予測して、作物が発育ステージに到達する時期を推定する生育予測部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の生育予測部は、基準日から、日々の平均気温のうちで一定の基準値を超えた分を取り出して合計した有効積算温度値が一定値に到達した日を、一定の生育状況に達した日(つまり、発育ステージの到達日)であると予測している。しかしながら、上記の作物生育状況分析システムでは、発育ステージの予測精度が低いことがある。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、発育ステージの予測精度を向上させることができる発育予測装置及び発育予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
発育予測装置は、作物の発育ステージを予測するステージ予測部と、基準日から前記発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、前記ステージ予測部にて予測された前記発育ステージの推移データに対して前記特定の発育ステージの予測日を示す閾値を定義する定義部と、を備え、前記ステージ予測部は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの推移データが前記閾値に到達する日を前記特定の発育ステージとして予測する。
【0006】
前記ステージ予測部は、基準日から作物の発育推移を数値化した推移値を積算して得られる積算値が規定値に到達する日を作物の発育ステージの到達日として予測し、前記定義部は、前記基準日から前記発育ステージの前記到達日に至るまでの期間内に前記特定の発育ステージが含まれている場合、前記ステージ予測部にて予測された前記基準日から前記発育ステージの前記到達日までの積算値の推移データにおいて、作物の実績データが示す前記特定の発育ステージの到達日に対応する積算値を、前記特定の発育ステージの予測日を示す閾値として定義し、前記ステージ予測部は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの前記積算値が前記閾値に到達する日を前記特定の発育ステージとして予測し、前記積算値が前記規定値に到達する日を当該次回の発育ステージの到達日として予測してもよい。
【0007】
前記定義部は、複数品種の作物の実績データがそれぞれ示す前記特定の発育ステージに対応する複数品種の積算値を平均した平均値を、前記閾値として定義してもよい。
【0008】
前記定義部は、単一品種の作物の実績データが示す前記特定の発育ステージに対応する
積算値を、前記閾値として定義してもよい。
【0009】
前記定義部は、同品種の作物の実績データが示す前記特定の発育ステージに対応する積算値を、前記閾値として定義してもよい。
【0010】
前記定義部は、指定された圃場の作物の実績データが示す前記特定の発育ステージに対応する積算値を、前記閾値として定義してもよい。
【0011】
前記基準日から前記発育ステージの前記到達日までの期間は、越冬期間と、前記越冬期間の直後の前記特定の発育ステージとを含むとしてもよい。
【0012】
前記作物は、越冬作物であってもよい。
【0013】
前記越冬作物は、麦類、玉葱のいずれかであってもよい。
【0014】
前記特定の発育ステージは、麦類では、茎立期、幼穂形成期、節間伸長開始期、及び、減数分裂期、玉葱では、茎葉伸長期、鱗茎肥大期のいずれかであってもよい。
【0015】
発育予測方法は、ステージ予測部が、作物の発育ステージを予測する第1ステップと、定義部が、基準日から前記発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、前記ステージ予測部にて予測された前記発育ステージの推移データに対して前記特定の発育ステージの予測日を示す閾値を定義する第2ステップと、前記ステージ予測部は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの推移データが前記閾値に到達する日を前記特定の発育ステージとして予測する第3ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発育ステージの予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態における発育予測装置を含む農業支援システムを示す図である。
【
図3】麦栽培の主な作業と発育ステージとの関係の一例を示す図である。
【
図4】DVI法による発育予測の処理ブロックの一例を示す図である。
【
図5】本実施形態の発育予測を従前の発育予測と比較して説明する図である。
【
図6A】出穂期について年次間差があることの一例を示す図である。
【
図6B】従前の順次発育予測での茎立期の予測結果の一例を示す図である。
【
図7】従前の順次発育予測について説明する図である。
【
図8A】本実施形態の発育予測について説明する図である。
【
図8B】出穂期を予測するためのDVI値の推移データと閾値及び規定値との関係を示す図である。
【
図9】複数品種の作物(麦類)の茎立期の実績データの一例を示す図である。
【
図10】茎立期のDVI値の分布の一例を示す図である。
【
図12】単一品種の作物の茎立期の実績データの一例を示す図である。
【
図15】発育ステージを予測する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、実施形態における発育予測装置4を含む農業支援システムを示している。
図1では、農業支援システムは、農業支援装置1を備えている。農業支援装置1は、サーバ、パーソナルコンピュータ等の固定コンピュータ、スマートフォン、タブレット、PDA等の携帯端末等である。実施形態では、農業支援装置1は、サーバである。農業支援装置1は、農作業等を支援することができる装置である。農業支援装置1には、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット、PDA等の外部端末10が接続可能である。
【0020】
農業支援装置1は、作業作成部2と、作業記憶部3とを備えている。作業作成部2は、農業支援装置1に設けられた電子・電気回路、当該農業支援装置1のCPU等の演算部に格納されたプログラム等により構成されている。作業記憶部3は、不揮発性のメモリ等の記憶装置である。
【0021】
作業作成部2は、少なくとも農作業、実施予定日及び圃場を含む作業計画を作成する。外部端末10は、管理者、作業者等からの通信接続の指示があると、農業支援装置1と通信可能に接続する。管理者、作業者等が農業支援装置1に第1指令(作業計画を表示させるための指令)を行うと、
図2Aに示すように、作業作成部2は、外部端末10に作業計画画面M1を表示させる。作業計画画面M1は、作業設定部11と、日付設定部12と、圃場設定部13と、時間設定部14とを含んでいる。作業設定部11は、農作業を設定する部分であって、予め登録されている農作業の中から所定の農作業を選択することで、所定の農作業を設定することができる。
【0022】
農作業とは、作物(例えば麦類、又は、玉葱、キャベツ、ブロッコリ等の野菜などの農作物)を栽培するために行う作業であって、作物の発育ステージに応じた作業が含まれている。作物の収量、品質の安定化のためには、各発育ステージについて適切な作業(つまり、適期作業)が必要である。なお、発育ステージは、生育ステージ、発育段階、発育期とも呼ばれる。
【0023】
例えば、
図3に示すように、麦類の農作業としては、播種、除草剤散布、麦踏み、分げつ期追肥、土入れ、穂肥、赤かび病防除、実肥、収穫、乾燥、調整等がある。また、麦の複数の発育ステージとしては、出芽期、分げつ始、分げつ期、茎立期、出穂期、開花期、成熟期などがある。発育ステージに応じて適期作業が割り当てられている。例えば、出芽期であれば、除草剤散布の農作業が必要である。また、分げつ期であれば、麦踏み、分げつ期追肥、土入れ、除草剤散布の農作業が必要である。また、茎立期であれば、穂肥と土入れの農作業が必要である。また、出穂期であれば、実肥、赤かび病防除の農作業が必要である。
【0024】
図2Aに戻って、日付設定部12は、作業設定部11で設定された農作業を実施する実施予定日を設定する部分であって、年、月、日等を入力することにより、実施予定日を設定することができる。圃場設定部13は、農作業を行う圃場を設定する部分であって、例えば、予め登録された圃場マップ上に複数の圃場を表示して、複数の圃場のうち選択された所定の圃場が、農作業を行う圃場として設定される。時間設定部14は、農作業を行う時間帯を設定する部分であって、時刻を入力することにより、時間帯を設定することができる。
【0025】
作業計画画面M1は、農作業を行う作業者を設定する作業者設定部15、農作業を行う機械を設定する機械設定部16、農作業が散布物を散布する作業である場合に前記散布物
の名称を設定する散布物設定部17、散布物の散布量を設定する散布量設定部18を含んでいてもよい。
【0026】
作業計画画面M1に示された登録ボタン19が選択されると、作業作成部2は、作業設定部11、日付設定部12、圃場設定部13、時間設定部14、作業者設定部15、機械設定部16、散布物設定部17、散布量設定部18で設定された情報(内容)を、作業計画として作成する。作業記憶部3は、作業作成部2で作成された作業計画(農作業、実施予定日、圃場、時間帯、作業者、機械、散布物の名称、散布量)を記憶する。上述した実施形態における作業計画は一例であって、限定されない。
【0027】
このように、農業支援装置1の作業作成部2によって作成した作業計画を外部端末10に表示することで、管理者、作業者等は作業計画を確認することができる。例えば、外部端末10が農業支援装置1に接続して、当該農業支援装置1に第2指令(作業確認画面M2を表示させるための指令)を行うと、
図2Bに示すように、当該農業支援装置1は、外部端末10に作業確認画面M2を表示させる。
【0028】
作業確認画面M2は、圃場設定部13と、作業表示部20とを含んでいる。作業表示部20は、圃場設定部13で設定された圃場に対して設定された作業計画を表示する部分である。作業表示部20は、農作業及び実施予定日を時系列で表示する。
図2Bは、麦類の農作業として播種、追肥及び収穫などを示した例を示している。
【0029】
農業支援装置1は、
図1に示すように、発育予測装置4を備えている。発育予測装置4は、圃場の環境を示す環境情報を取得し、取得した環境情報に基づいて作物の状態、即ち、発育ステージを予測する。環境情報とは、圃場の周囲の環境を示す気象情報などである。気象情報は、例えば、風向、風速、気温、湿度、晴れ、曇り、雨、雷、雪、降雨量、降雪量、降水確率、気圧、気圧配置等である。発育ステージとしては、出芽期、分げつ始、分げつ期、茎立期、幼穂形成期、節間伸長開始期、減数分裂期、出穂期、開花期、成熟期、収穫期等がある。
【0030】
まず、発育予測装置4が環境情報から発育ステージを予測することについて、以下に説明する。
【0031】
発育予測装置4は、環境情報取得部5と、ステージ予測部6と、定義部7とを備えている。環境情報取得部5、ステージ予測部6、定義部7は、農業支援装置1に設けられた電子・電気回路、当該農業支援装置1のCPU等の演算部に格納されたプログラム等により構成されている。
【0032】
環境情報取得部5は、作業計画に含まれる圃場における環境情報を取得する。例えば、操作者による外部端末10の操作によって農業支援装置1に対して環境情報の取得指令が行われると、環境情報取得部5は、気象情報を提供する気象情報用サーバ30に接続して、圃場の現在までの気象情報(実績気象情報)と、未来の気象情報(予測気象情報)とを取得する。
【0033】
ステージ予測部6は、作物の発育ステージを予測する。具体的には、ステージ予測部6は、基準日から作物の発育推移を数値化した推移値を積算して得られる積算値が規定値に到達する日を発育ステージの到達日として予測する。例えば、ステージ予測部6は、
図3に示す麦類の各発育ステージを予測する。すなわち、ステージ予測部6は、播種日から出芽期(発育ステージ)の到達日を予測したり、出芽期において次の茎立期(発育ステージ)の到達日を予測したり、茎立期において次の出穂期(発育ステージ)の到達日を予測したり、出穂期において次の開花期(発育ステージ)の到達日を予測したりすることができ
る。
【0034】
図4に示すように、環境情報取得部5は、圃場の現在までの気象データ(気温、日長のデータ)と、未来の気象データ(気温、日長のデータ)とを取得し、ステージ予測部6に出力する。ステージ予測部6は、入力された発育データ(播種日、出穂期など)と、環境情報取得部5からの気象データとに基づいて、パラメータを決定し、発育予測式(
図5に示す式1~式3の何れかのDVR(Development Rate:発育速度)式)を用いて、1日の発育量(DVR値)を算出し、この1日の発育量(DVR値)を積算した発育指数(DVI:Development Index)が規定値に到達する日を予測日(つまり、到達日)として予測する。
【0035】
ここで、
図5を用いて、従前の順次予測方式と本実施形態の発育予測方式とを比較して説明する。まず、従前の順次予測方式は、各発育ステージを順番に予測するものである。詳述すると、従前の順次予測方式では、
図5に示すように、播種日を基準日(積算値=0)とし、1日の発育量(DVR値)を積算した発育指数(DVI)が閾値(=1)に到達する日を出芽期(発育ステージ)の到達日として予測する。続いて、この出芽期の到達日を基準日(積算値=0)とし、1日の発育量(DVR値)を積算した発育指数(DVI)が閾値(=1)に到達する日を茎立期(発育ステージ)の到達日として予測する。続いて、この茎立期の到達日を基準日(積算値=0)とし、1日の発育量(DVR値)を積算した発育指数(DVI)が閾値(=1)に到達する日を出穂期(発育ステージ)の到達日として予測する。
【0036】
従前の順次予測方式を用いて、
図6Aに示すように、品種B16について播種日を3つの年で同日(例えば、11月5日)として出穂期を予測した。具体的には、2009年の作業計画での出穂期の予測日が4月27日であることに対して、2020年では予測日が4月13日となっていた。このため、従前の順次予測方式では、出穂期の予測について、年によって2週間の差が生じていることがわかった。このため、例年通りの作業計画では、各発育ステージについて適切な作業(つまり、適期作業)が困難になってきている。
【0037】
そこで、発明者がその原因などについて鋭意研究したところ、
図6Bに示すように、品種B3の茎立期について年次間差が22日あり、
図7に示すように、茎立期の予測が大きくずれることに起因して出穂期の予測がずれていることがわかった。つまり、特定の発育ステージとしての茎立期の予測を高精度に行う必要があることが分かった。一方、出芽期から出穂期を予測する場合については、年次間差が少ないことも分かった。そこで、発明者は。予測したい発育ステージ(例えば出穂期)を一度通り過ぎ、特定の発育ステージ(例えば茎立期)の発育到達となる閾値pを後から定義することで、年次間差によって発育予測がずれてしまう影響を低減できるという知見を得るに至った。
【0038】
そこで、本実施形態の方式では、出芽期において次の出穂期(発育ステージ)の到達日を予測し、茎立期(発育ステージ)の予測日を示す閾値pを逆算的に設定する定義部7を備えることで、従前の順次予測方式に比べて、より高精度に茎立期を予測できるようにした。
【0039】
本実施形態では、発育予測装置4は、定義部7を備える。定義部7は、基準日から出穂期の発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージ(例えば、茎立期)が含まれている場合、ステージ予測部6にて予測された発育ステージの推移データに対して特定の発育ステージ(例えば、茎立期)の予測日を示す閾値pを定義する。ステージ予測部6は、次回(つまり、来年)の出穂期の発育ステージを予測する場合に、当該次回(つまり、来年)の出穂期の発育ステージの推移データが閾値pに到達する日を特定の発育ステージ(例えば、茎立期)として予測する。つまり、茎立期が予測される。
【0040】
定義部7は、
図8Aに示すように、基準日から発育ステージ(例えば出穂期)の到達日に至るまでの期間内に特定の発育ステージ(例えば茎立期)が含まれている場合、ステージ予測部6にて予測された基準日から発育ステージの到達日までの積算値の推移データにおいて、作物の実績データが示す特定の発育ステージ(例えば茎立期)の到達日に対応する積算値を、特定の発育ステージ(例えば茎立期)の予測日を示す閾値pとして逆算的に定義する。
【0041】
ステージ予測部6は、
図8Aに示す出芽期と出穂期とに基づき、
図5に示す発育予測式(ここでは、気温・日長を用いる式2)のパラメータを決定する。なお、ステージ予測部6は、
図5に示す式1又は式3の発育予測式を用いてもよい。定義部7は、上記の予測式で積算される積算値(DVI値)のうちで、実際の茎立期の到達日であった積算値(DVI値)を閾値pとして定義する。なお、閾値pの定義については後述する。
【0042】
ステージ予測部6は、次回(つまり、翌作)の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの積算値が閾値pに到達する日を特定の発育ステージとして予測し、積算値が規定値に到達する日を当該次回の発育ステージの到達日として予測する。
図8Aに示すように、ステージ予測部6は、翌作以降において該当する閾値pに基づき出穂期予測モデルから茎立期を予測する。
【0043】
図8Bに示すように、ステージ予測部6は、翌作における出穂期の発育予測において、特定の発育ステージ(例えば茎立期)の到達日を示す閾値pが定義部7により逆算的に定義され、翌作における出穂期の到達日を示す規定値を設定しており、翌作における積算値(DVI値)が閾値pに到達する日を茎立期として予測し、規定値に到達する日を出穂期の到達日として予測する。
【0044】
ここで、定義部7による閾値pの定義について説明する。定義部7は、
図9に示すように、複数品種B1~B7の作物の実績データがそれぞれ示す特定の発育ステージの到達日に対応する複数品種B1~B7の積算値(DVI値)を平均した平均値を、閾値pとして定義する。
図9に示すように、麦類の複数品種B1~B7についての実際に茎立期であった日の積算値は、「0.613」、「0.573」、「0.544」、「0.540」、「0.590」、「0.547」、「0.572」であった。これらの積算値の平均値、最大値、最小値、標準偏差、変動係数は、「0.568」、「0.613」、「0.540」、「0.02506」、「4.58%」であった。また、
図10に示す茎立期のDVI値の分布によれば、平均の茎立期のDVI値は「0.58」と推定できる。
図11に示すように、上記麦類の複数品種B1~B7の平均の茎立期のDVI値が「0.540」~「0.613」までの日数が7日程度であった。このため、上記麦類の複数品種B1~B7の平均値である茎立期のDVI値を「0.58」と設定すると、誤差が3日~5日程度で予測できることが分かった。
【0045】
また、
図12に示すように、単一実績しかない品種B11~B17についての実際に茎立期であった日の積算値は、「0.54」、「0.63」、「0.42」、「0.51」、「0.56」、「0.56」、「0.58」であった。これらの積算値の平均値、最大値、最小値、標準偏差、変動係数は、「0.559」、「0.670」、「0.420」、「0.04976」、「8.91%」であった。なお、定義部7は、単一品種の作物の実績データが示す特定の発育ステージの到達日に対応する積算値を、閾値pとして定義してもよい。
【0046】
農業支援装置1は、設定記憶部8を備えている。設定記憶部8は、農業支援装置1に設けられた不揮発性のメモリ等の記憶装置である。
図13に示すように、設定記憶部8には
、発育ステージを求めるための、判定テーブルT10を記憶している。判定テーブルT10は、出穂期の発育ステージと、出穂期の発育ステージについて設定された積算値の特定の発育ステージ(茎立期)の閾値pと、出穂期の発育ステージの到達日を示す規定値との関係を記憶している。例えば、判定テーブルT10には、茎立期を含む出穂期の発育ステージと、茎立期になったことを判定する閾値pと、出穂期の発育ステージの到達日を示す規定値とが含まれている。つまり、定義部7は、判定テーブルT10に記憶されている閾値pを、茎立期になったことを判定する閾値pとして定義する。また、閾値pと規定値とは、閾値p<規定値の関係である。
【0047】
設定記憶部8は、
図9に示す複数品種B1~B7の作物の実績データと、
図12に示す単一実績しかない品種B11~B17の作物の実績データと、を記憶している。
【0048】
図14に示すように、例えば、外部端末10が農業支援装置1に接続して、当該農業支援装置1に第3指令(設定画面M3を表示させるための指令)を行うと、ステージ予測部6は、設定画面M3を表示させる。設定画面M3は、判定テーブルT10の発育ステージと閾値p及び規定値との関係を設定するための画面であり、発育ステージを表示するステージ表示部31Aと、閾値p及び規定値を入力する入力部31Bと、基準日を入力する基準日入力部31Cとを含んでいる。
【0049】
入力部31Bには、特定の発育ステージ(例えば茎立期)について任意の閾値pを入力することができ、入力部31Bに入力する閾値pを変更することによって、特定の発育ステージ(例えば茎立期)の閾値pを定義することができる。また、入力部31Bには、発育ステージ(例えば出穂期)について任意の規定値を入力することができ、入力部31Bに入力する規定値を変更することによって、発育ステージと規定値との関係を変更することができる。基準日入力部31Cには、基準日を入力することができる。例えば、出穂期の発育ステージを予測する場合には、出芽期に到達した日を入力する。設定記憶部8は、入力部31Bに入力された規定値と、基準日入力部31Cに入力された基準日とを対応付けて記憶する。
【0050】
設定画面M3は、発育ステージを入力するための発育ステージ入力部31Dと、入力した発育ステージに対応する任意の農作業を入力するための農作業入力部31Eとを含んでいる。例えば、発育ステージ入力部31Dにおいて、分げつ期を入力した場合、農作業入力部31Eには、分げつ期の農作業として、
図3に示すように、麦踏みと分げつ期追肥と土入れと除草剤散布とを入力することができる。発育ステージ入力部31Dにおいて、茎立期を入力した場合、農作業入力部31Eには、茎立期の農作業として、
図3に示すように、穂肥と土入れと、を入力することができる。発育ステージ入力部31Dにおいて、出穂期を入力した場合、農作業入力部31Eには、出穂期の農作業として、
図3に示すように、赤かび病防除と実肥とを入力することができる。設定記憶部8は、発育ステージ入力部31Dに入力された発育ステージと、農作業入力部31Eに入力された発育ステージに対応する農作業とを対応付けて記憶する。
【0051】
設定画面M3において、設定ボタン32が選択されると、判定テーブルT10における発育ステージと閾値p及び規定値との関係と、基準日と、発育ステージに応じた農作業とが設定される。つまり、ステージ予測部6は、農作業の実施予定日を基準として、当該実施予定日(基準日)と気象情報との関係から発育ステージを予測することができる。ステージ予測部6は、例えば、積算値が閾値pに達した日が、茎立期の到達日であると予測し、作業者は茎立期において穂肥の農作業を行い、積算値が規定値に達した日が、出穂期の到達日であると予測し、作業者は出穂期において実肥の農作業を行う。
【0052】
ここで、発育予測装置4が翌作の発育ステージ(例えば出穂期)を予測する処理につい
て、
図15を用いて説明する。発育予測装置4のステージ予測部6は、予め定められた基準日と、基準日からの気象情報(実績気象情報、予測気象情報)の推移とに基づいて、発育ステージを予測する。
図15に示すように、基準日が例えば11/24である場合、ステージ予測部6は、基準日(例えば11/24)以降の気象情報(実績気象情報、予測気象情報)を環境情報取得部5から取得して参照する(S1)。ステージ予測部6は、参照した気象情報において、所定の項目の値(例えば、温度、日長)を、基準日(11/24)から積算した積算値を求める(S2)。ステージ予測部6は、求めた積算値が特定の発育ステージ(例えば、茎立期)の閾値p、つまり、定義部7が定義した閾値pになったか否かを判断する(S3)。ステージ予測部6は、積算値が閾値pに達していない場合(S3、No)に、S2に戻る。一方、ステージ予測部6は、積算値が閾値pに達した場合(S3、Yes)に、特定の発育ステージ(例えば、茎立期)に到達した日(つまり、茎立期が始まった日)とする(S4)。一方、ステージ予測部6は、積算値が閾値pに達していない場合(S3、No)に、S2に戻る。
【0053】
ステージ予測部6は、所定の発育ステージ(ここでは、出穂期の発育ステージ)の規定値になったか否かを判断する(S5)。ステージ予測部6は、積算値が規定値に達していない場合(S3、No)に、S2に戻る。一方、ステージ予測部6は、積算値が規定値に達した場合(S5、Yes)に、所定の発育ステージ(出穂期の発育ステージ)に到達した日(つまり、出穂期が始まった日)とする(S6)。つまり、ステージ予測部6は、基準日からの気象情報の推移を数値化した推移値に基づいて、特定の発育ステージ(例えば、茎立期)の到達日と、出穂期の発育ステージの到達日とを予測している。
【0054】
上述した実施形態では、作物の発育ステージを予測するステージ予測部6と、基準日から発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、ステージ予測部6にて予測された発育ステージの推移データに対して特定の発育ステージの予測日を示す閾値pを定義する定義部7と、を備え、ステージ予測部6は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの推移データが閾値pに到達する日を特定の発育ステージとして予測する。
【0055】
上記構成によれば、ステージ予測部6は、作物の発育ステージを予測する。このため、発育ステージの到達日を推測するための推移データを取得することができる。定義部7は、基準日から発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、ステージ予測部6にて予測された発育ステージの推移データに対して特定の発育ステージの予測日を示す閾値pを定義する。このため、閾値pをより正確な値とすることができる。ステージ予測部6は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの推移データが新たに定義された閾値pに到達する日を特定の発育ステージとして予測する。このため、発育ステージの到達日までの期間内に含まれている特定の発育ステージの到達日の予測誤差を低減することができる。したがって、発育ステージの予測精度を向上させることができる。
【0056】
また、ステージ予測部6は、基準日から作物の発育推移を数値化した推移値を積算して得られる積算値が規定値に到達する日を作物の発育ステージの到達日として予測し、定義部7は、基準日から発育ステージの到達日に至るまでの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、ステージ予測部6にて予測された基準日から発育ステージの到達日までの積算値の推移データにおいて、作物の実績データが示す特定の発育ステージの到達日に対応する積算値を、特定の発育ステージの予測日を示す閾値pとして定義し、ステージ予測部6は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの積算値が閾値pに到達する日を特定の発育ステージとして予測し、積算値が規定値に到達する日を当該次回の発育ステージの到達日として予測する。
【0057】
上記構成によれば、ステージ予測部6は、基準日から作物の発育推移を数値化した推移値を積算して得られる積算値が規定値に到達する日を作物の発育ステージの到達日として予測する。このため、発育ステージの積算値の推移データを取得することができる。定義部7は、基準日から発育ステージの到達日に至るまでの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、ステージ予測部6にて予測された発育ステージの推移データにおいて、作物の実績データが示す特定の発育ステージの到達日に対応する積算値を、特定の発育ステージの予測日を示す閾値pとして定義する。このため、閾値pをより正確な値とすることができる。ステージ予測部6は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの積算値が閾値pに到達する日を特定の発育ステージとして予測する。このため、発育ステージに含まれている特定の発育ステージの到達日の予測誤差を低減することができる。また、ステージ予測部6は、次回の発育ステージを予測する場合に、積算値が規定値に到達する日を当該次回の発育ステージの到達日として予測する。このため、発育ステージの到達日の予測誤差を低減することができる。したがって、発育ステージの予測精度を向上させることができる。また、従前の各発育ステージを順次に予測する方式を採用しないので、従前の発育ステージ予測による問題が生じない。つまり、特定の発育ステージの予測精度が低いという問題と、特定の発育ステージの予測誤差の影響を受けて発育ステージ全体の予測誤差も大きくなるという問題とを解決することができる。
【0058】
また、定義部7は、複数品種B1~B7の作物の実績データがそれぞれ示す特定の発育ステージに対応する複数品種B1~B7の積算値を平均した平均値を、閾値pとして定義する。
【0059】
上記構成によれば、複数品種B1~B7を網羅する閾値pを定義することができる。また、複数品種B1~B7の実績データに基づいて閾値pに定義しているため、閾値pの信頼度を高めることができる。したがって、新たに発育予測を行う品種の作物の発育ステージの予測誤差を低減することができる。
【0060】
また、上記の発育予測方法によれば、ステージ予測部6が、作物の発育ステージを予測する第1ステップ(
図15のS6)と、定義部7が、基準日から発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、ステージ予測部6にて予測された発育ステージの推移データに対して特定の発育ステージの予測日を示す閾値pを定義する第2ステップ(
図14の入力部31Bに閾値pを定義すること)と、ステージ予測部6は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの推移データが閾値pに到達する日を特定の発育ステージとして予測する第3ステップ(
図15のS4)と、を備える。
【0061】
上記構成によれば、第1ステップでは、ステージ予測部6が、作物の発育ステージを予測する。このため、発育ステージの到達日を推測するための推移データを取得することができる。第2ステップでは、定義部7が、基準日から発育ステージの到達日までの期間内に特定の発育ステージが含まれている場合、ステージ予測部6にて予測された発育ステージの推移データに対して特定の発育ステージの予測日を示す閾値pを定義する。このため、閾値pをより正確な値とすることができる。第3ステップでは、ステージ予測部6は、次回の発育ステージを予測する場合に、当該次回の発育ステージの推移データが閾値pに到達する日を特定の発育ステージとして予測する。このため、発育ステージに含まれている特定の発育ステージの到達日の予測誤差を低減することができる。したがって、発育ステージの予測精度を向上させることができる。
【0062】
なお、定義部7は、単一品種の作物の実績データが示す特定の発育ステージに対応する積算値を、閾値pとして定義してもよい。例えば、単一品種の作物として、
図12に示す品種B15:ゆめちからの実績データ、つまり、「0.56」を閾値pとして定義しても
よい。例えば、
図14に示す入力部31Bに「0.56」を入力することで定義できる。実績データである「0.56」は、品種B15が実際に茎立期であった日の積算値(DVI値)である。
【0063】
上記構成によれば、定義部7は、単一品種の作物の実績データが示す特定の発育ステージに対応する積算値を、閾値pとして定義する。このため、単一品種に特化した閾値pを定義することができる。したがって、単一品種と同じ又は同種類の作物の発育ステージの予測誤差を低減することができる。
【0064】
なお、定義部7は、同品種の作物の実績データが示す特定の発育ステージに対応する積算値を、閾値pとして定義してもよい。例えば、圃場での作物が
図9に示す品種B7:ゆめかおりである場合に、それと同じ品種B7:ゆめかおりの実績データ、つまり、「0.57」を閾値pとして定義してもよい。例えば、
図14に示す入力部31Bに「0.57」を入力することで定義できる。実績データである「0.57」は、品種B7が実際に茎立期であった日の積算値(DVI値)である。
【0065】
上記構成によれば、定義部7は、同品種の作物の実績データが示す特定の発育ステージに対応する積算値を、閾値pとして定義する。このため、同品種に特化した閾値pを定義することができる。したがって、同品種の作物の発育ステージの予測誤差を低減することができる。
【0066】
なお、定義部7は、指定された圃場の作物の実績データが示す特定の発育ステージに対応する積算値を、閾値pとして定義してもよい。設定記憶部8は、圃場設定部13にて設定された圃場と、当該圃場の作物の実績データとを対応付けて記憶しておけばよい。例えば、この実績データは、当該圃場の作物が実際に茎立期であった日の積算値(DVI値)である。例えば、外部端末10にて、圃場を指定すると、設定記憶部8に記憶された圃場の作物の実績データを表示し、この表示された実績データ(積算値)を
図14に示す入力部31Bにて入力することで、閾値pを定義することができる。
【0067】
上記構成によれば、定義部7は、指定された圃場の作物の実績データが示す特定の発育ステージに対応する積算値を、閾値pとして定義する。このため、指定された圃場に特化した閾値pを定義することができる。したがって、指定された圃場と同じ又は近い圃場の作物の発育ステージの予測誤差を低減することができる。
【0068】
なお、外部端末10が農業支援装置1に接続して、当該農業支援装置1に第4指令(一覧確認画面M4を表示させるための指令)を行うと、発育予測装置4は、
図16に示すように、一覧確認画面M4を示すデータを外部端末10に送信する。外部端末10は、受信したデータに基づいて一覧確認画面M4を表示する。一覧確認画面M4は、各圃場と、圃場毎の特定の発育ステージ(例えば茎立期)の閾値pとを一覧表示するための画面である。作業者は、一覧確認画面M4を見ることで、各圃場とその閾値pとの関係を一括して確認することができる。また、一覧確認画面M4には、各圃場と、圃場毎の閾値pと、作物の品種とを合わせて表示させてもよい。この場合には、圃場と閾値pと作物の品種とを纏めて確認することができる。
【0069】
上記実施形態では、越冬作物の一例である麦類の発育ステージの予測誤差を低減することができる。なお、越冬作物としては麦類に限定されない。例えば、玉葱などの越冬作物であってもよい。この場合は、玉葱の発育ステージの予測誤差を低減することができる。
【0070】
また、特定の発育ステージは、麦類では、茎立期としているが、これに限定されない。例えば、特定の発育ステージは、幼穂形成期、節間伸長開始期、及び、減数分裂期のいず
れかであってもよい。また、玉葱では、茎葉伸長期及び鱗茎肥大期のいずれかであってもよい。
【0071】
上記構成によれば、麦類では、茎立期、幼穂形成期、節間伸長開始期、及び、減数分裂期、玉葱では、茎葉伸長期、鱗茎肥大期の到達日の予測誤差を低減することができる。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 :農業支援装置
2 :作業作成部
3 :作業記憶部
4 :発育予測装置
5 :環境情報取得部
6 :ステージ予測部
7 :定義部
8 :設定記憶部
10 :外部端末
30 :気象情報用サーバ
M1 :作業計画画面
M2 :作業確認画面
M3 :設定画面
p :閾値
T10 :判定テーブル