(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160637
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】零売サービス提供システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20241107BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075856
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】520434042
【氏名又は名称】株式会社バシラックス
(74)【代理人】
【識別番号】230116816
【弁護士】
【氏名又は名称】成川 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(72)【発明者】
【氏名】大道 一馬
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】処方箋医薬品以外の医薬品の入手を希望する利用者の待ち時間を大幅に短縮するとともに、医薬品入手のための労力を軽減すること。
【解決手段】本発明は、処方箋医薬品以外の医薬品の零売サービス提供システムであって、零売薬局側に設置された営業管理端末と、利用者が営業管理端末に対して処方箋医薬品以外の医薬品の注文情報を送信する利用者端末とがネットワークを介して送受信可能に接続されており、零売薬局の薬剤師は、注文情報に基づき、注文を受けた医薬品を持参して、利用者に訪問販売する。このシステムでは、利用者は薬局に赴く必要がないため、処方箋医薬品以外の医薬品の入手を希望する利用者の待ち時間が大幅に短縮され、医薬品入手のための労力も軽減される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処方箋医薬品以外の医薬品の零売サービス提供システムであって、
零売薬局側に設置された営業管理端末と、利用者が前記営業管理端末に対して処方箋医薬品以外の医薬品の注文情報を送信する利用者端末とがネットワークを介して送受信可能に接続されており、
前記注文情報に基づき、前記零売薬局の薬剤師が前記医薬品を持参して前記利用者に訪問販売することを特徴とする、
零売サービス提供システム。
【請求項2】
前記注文情報は、前記利用者が希望する前記薬剤師の来訪日時情報を含む、
請求項1に記載の零売サービス提供システム。
【請求項3】
前記利用者は、複数の構成員を有する組織体であり、前記注文情報は、前記複数の構成員ごとの医薬品の個別注文情報を含む、
請求項1に記載の零売サービス提供システム。
【請求項4】
前記営業管理端末は、前記零売薬局の所属する薬剤師のスケジュール管理機能を有し、該スケジュール管理機能により前記注文を受けた医薬品の訪問販売担当の薬剤師を決定する、
請求項1に記載の零売サービス提供システム。
【請求項5】
前記医薬品を持参する薬剤師が操作するモバイル端末をさらに備え、前記薬剤師は、前記モバイル端末に、持参した医薬品以外に服用可能な処方箋医薬品以外の医薬品を表示して前記利用者に提示させることができる、
請求項1~4の何れか1項に記載の零売サービス提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処方箋医薬品以外の医薬品の零売サービス提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第49条第1項には、「薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方箋の交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。」と定められている。したがって、仮に薬剤師等に対してであっても、業務目的の場合を除き、処方箋の交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく「処方せん医薬品」を販売することは禁じられている。
【0003】
一方、医療用医薬品には、処方箋医薬品以外の医薬品も数多く存在する。そして、そのような処方箋医薬品以外の医薬品については、処方箋なしに顧客の必要量だけ分割販売すること(いわゆる「零売」)が認められている。この点については、昭和四五年三月一七日付けの「医薬品を分割販売(零売)するときの表示について」とする厚生省薬事課長文書(薬事第八二号)において、分割販売を行なつた者とは販売業者と解して差しつかえない点が明記されている。その意味では、零売という販売形態は古くからあったと言える。
【0004】
このような零売は、医療用医薬品を処方箋の交付を受けることなく入手できるため、処方箋医薬品以外の医薬品の入手を望む顧客は、処方箋を交付してもらうために病院や医院に赴く必要がない。そのため、病院や医院に行くための時間が取りにくい顧客や病院や医院までに長距離の移動が必要な顧客などにとっては、病院や医院に赴く時間や手間を省くことができるから、薬剤入手までの時間や労力が大幅に短縮・軽減できるといったメリットがある。加えて、医療用医薬品の薬価と一般用医薬品の希望小売価格を同一成分の薬剤において比較すると、多くの場合、医療用医薬品の方が安く設定されているから、顧客にとって経済的なメリットもある。
【0005】
零売によるサービスの提供は、薬局や医薬品販売業者にとってもメリットがある。薬剤師が処方箋に基づいて医療用医薬品を調剤して顧客(患者)に提供する場合、ほとんどの患者は保険医療の範囲での提供を求めるため、販売価格は薬価基準に従う必要性がある。しかし、零売の場合には、販売価格の設定は薬局や医薬品販売業者の裁量で決定することが可能であるため、医療用医薬品を薬価よりも高く、かつ一般用医薬品の価格より安い価格で販売することも可能となり、その「差益」を得ることができるからである。
【0006】
ところで、従来から、顧客(患者)が薬剤を入手するまでの時間を短縮するための方法が提案されている。例えば、特許文献1(特許第6438093号明細書)では、調剤薬局における患者の待ち時間を短縮するための方法が提案されており、特許文献2(特許第6727467号明細書)では、遠隔医療から薬剤入手までのタイムラグを少なくする受渡し方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6438093号明細書
【特許文献2】特許第6727467号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の薬剤受渡し方法は何れも、処方箋の交付を受けた者以に対してのサービス提供方法であるため、対象とされる医薬品はあくまでも処方箋医薬品であって、このような方法を零売に適用しても、零売が潜在的にもつメリットを十分に生かすことができないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑み、その目的とするところは、零売が潜在的にもつメリットを十分に生かしつつ、処方箋医薬品以外の医薬品の入手を希望する顧客(利用者)の入手までの待ち時間を大幅に短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る零売サービス提供システムは、処方箋医薬品以外の医薬品の零売サービス提供システムであって、零売薬局側に設置された営業管理端末と、利用者が前記営業管理端末に対して処方箋医薬品以外の医薬品の注文情報を送信する利用者端末とがネットワークを介して送受信可能に接続されており、前記注文情報に基づき、前記零売薬局の薬剤師が前記医薬品を持参して前記利用者に訪問販売することを特徴とする。
【0011】
好ましい態様では、前記注文情報は、前記利用者が希望する前記薬剤師の来訪日時情報を含む。
【0012】
例えば、前記利用者は、複数の構成員を有する組織体であり、前記注文情報は、前記複数の構成員ごとの医薬品の個別注文情報を含む。
【0013】
ある態様では、前記営業管理端末は、前記零売薬局の所属する薬剤師のスケジュール管理機能を有し、該スケジュール管理機能により前記注文を受けた医薬品の訪問販売担当の薬剤師を決定する。
【0014】
また、前記医薬品を持参する薬剤師が操作するモバイル端末をさらに備え、前記薬剤師は、前記モバイル端末に、持参した医薬品以外に服用可能な処方箋医薬品以外の医薬品を表示して前記利用者に提示させることができる態様としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、処方箋医薬品以外の医薬品の零売サービス提供システムであって、零売薬局側に設置された営業管理端末と、利用者が営業管理端末に対して処方箋医薬品以外の医薬品の注文情報を送信する利用者端末とがネットワークを介して送受信可能に接続されており、零売薬局の薬剤師は、注文情報に基づき、注文を受けた医薬品を持参して、利用者に訪問販売する。このシステムでは、利用者は薬局に赴く必要がないため、処方箋医薬品以外の医薬品の入手を希望する利用者の待ち時間や労力が大幅に短縮・軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の零売サービス提供システムの構成の概略を説明するためのブロック図である。
【
図2】本発明のシステムにおける零売サービス提供の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る零売サービス提供システムの一例の概略を示すブロック図である。
図1に示した零売サービス提供システム100では、零売薬局側には営業管理端末10が、システムの利用者(ユーザ)側には利用者端末20が配置されており、これらの端末がネットワーク30を介して送受信可能に接続されている。なお、この図では、システム100のユーザがA~Cの3者である例が図示されている。各ユーザは、利用者端末20a~cから、営業管理端末10に対して、処方箋医薬品以外の医薬品の注文情報を送信する。このような処方箋医薬品以外の医薬品としては、例えば、PL顆粒、シナール配合錠、アレグラ錠、メジコン錠、ムコダイン錠、アスベリン錠、アンテベート軟膏、メチコバール錠、ヒルドイドソフト軟膏、リンデロンVG軟膏、ロキソニン錠などが例示できる。
【0019】
零売薬局側の営業管理端末10は、上記処方箋医薬品以外の医薬品の注文情報に基づき、当該零売薬局の薬剤師が医薬品を持参して発注者である利用者に訪問販売することとなる。
【0020】
図2は、本発明のシステムにおける零売サービス提供の流れを説明するためのフローチャートであり、処方箋医薬品以外の医薬品の注文から訪問販売までの各ステップを示している。
【0021】
先ず、ユーザ側において注文情報の集計等が行われる(S101)。ここで、ユーザは、例えば企業や役所などであり、学校や大学あるいはマンションの管理組合などであってもよい。そのような組織は通常、多くの構成員を有しているから、その中には処方箋医薬品以外の医薬品を必要とする者が少なくない。なぜなら、処方箋医薬品以外の医薬品は事前に処方箋の交付を受ける必要がない上に、ドラッグストアなどで販売されている一般用医薬品よりも薬としての効き目が高いにもかかわらず安く購入できるからである。したがって、例えば総務部などの部署が窓口となり、本システムを介して処方箋医薬品以外の医薬品の入手を希望する構成員の要望を集計して一括で注文作業を行うこととすれば、注文が効率的になされる。
【0022】
すなわち、本システムにおいては、ユーザは複数の構成員を有する組織体であり、上記注文情報は複数の構成員ごとの医薬品の個別注文情報を含むように構成することができる。例えば、当該ユーザの中に、本システムの利用を希望する構成員が30名いるとすると、各構成員が個別に注文すると30件の注文情報が個別に薬局側の営業管理端末10に送られることとなり、零売薬局側の集計作業の負荷が高まるが、構成員の要望を集計して一括で注文作業を行うこととすれば、零売薬局側の集計作業の負荷が軽くなるだけではなく、ユーザ側としても構成員の健康状態の把握などもでき、福利厚生の観点からもメリットがある。
【0023】
上記注文情報は利用者端末20に入力され、零売薬局側に設置された営業管理端末に送信される(S102)。零売薬局側では、この注文情報の受付がされた後に医薬品の準備が行われる(S103)。なお、上述の注文情報に、ユーザが希望する薬剤師の来訪日時情報を含むようにすると、ユーザと薬局側の双方にとって好都合である。例えば、あるユーザに対しては、毎月の第1月曜日の午後に薬局側が医薬品販売のために訪問するという原則がある場合でも、何らかの事情により、当該月曜の午後の都合が悪くなり午前中に訪問して欲しい場合や、翌週の月曜日の午後に訪問して欲しいといったことも起こり得る。そのような事情を考慮して、注文情報にユーザが希望する薬剤師の来訪日時情報を含むようにすれば、システムを使いやすくすることができる。
【0024】
本システムで取り使う医薬品は処方箋医薬品以外の医薬品であるから、ユーザを訪問して医薬品を販売する担当者は薬剤師である必要がある。この点については、2021年3月18日に、最高裁第1小法廷で「要指導医薬品指定差止請求事件」の判決が出され、その中で、「その販売又は授与をする際に、薬剤師が、あらかじめ、要指導医薬品を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況等を確認しなければならないこととして使用者に関する最大限の情報を収集した上で、適切な指導を行うとともに指導内容の理解を確実に確認する必要があるとすることには、相応の合理性があるというべきである」として対面規制の合理性が認められ、要指導医薬品販売における薬剤師の対面の義務付けが確定している。
【0025】
そこで、注文を受けた薬局側では、ユーザを訪問する担当の薬剤師を決定して指示することとなる(S104)。この場合、営業管理端末10に、零売薬局に所属する薬剤師のスケジュールを管理する機能をもたせ、担当薬剤師を決定するように構成してもよい。そのようなスケジュール管理機能をもたせておけば、所属薬剤師ごとにスケジュールを確認して日程調整する必要がなくなり、業務の効率性が高まる。
【0026】
訪問販売担当の薬剤師は、注文を受けた処方箋医薬品以外の医薬品を持参して、決められた日時にユーザを訪問し、本システムを介して処方箋医薬品以外の医薬品の入手を希望するユーザの構成員に対して、医薬品の説明を行ったうえで引き渡し(S105)および会計(S106)を行う。医薬品の引き渡しをうける構成員は、担当の薬剤師が滞在する時間内であれば、自分の都合のいい時間に医薬品の受け取りが可能であるから、面倒な時間調整が不要であるし、一般の薬局に出向いて医薬品を受け取るための時間や労力も不要である。また、薬局側にとっても、一度の訪問で複数の医薬品の引き渡しが行えるから、業務の効率性が高まる。
【0027】
なお、本システムにおいて、医薬品を持参する薬剤師にモバイル端末を携帯させ、その薬剤師が、当該モバイル端末に、持参した医薬品以外に服用可能な処方箋医薬品以外の医薬品を表示して購入者に提示させるようにしてもよい。医療用医薬品約15,000種類のうちの約半数は処方箋なしで購入が可能である。例えば、ある購入者が以前から、風邪の症状が出た際に処方箋医薬品以外の医薬品であるPL顆粒の入手を希望しその注文をした場合、処方箋医薬品以外の医薬品の中からPL顆粒の同種薬を幾つか表示して購入者に提示させ、当該購入者から同種薬についての説明を求められた場合には、薬剤師が適切な説明を行うようにしてもよい。その説明を受けた購入者が当該同種薬の中からPL顆粒とは異なる医薬品の購入を希望するような場合(購入医薬品の変更希望がある場合)には、次回からその購入希望医薬品を訪問販売するということもあり得る。
【0028】
このように、本発明に係る零売サービス提供システムは、処方箋医薬品以外の医薬品の零売サービス提供システムであって、零売薬局側に設置された営業管理端末と、利用者が前記営業管理端末に対して処方箋医薬品以外の医薬品の注文情報を送信する利用者端末とがネットワークを介して送受信可能に接続されており、前記注文情報に基づき、前記零売薬局の薬剤師が前記医薬品を持参して前記利用者に訪問販売することを特徴とする。
【0029】
好ましい態様では、前記注文情報は、前記利用者が希望する前記薬剤師の来訪日時情報を含む。
【0030】
例えば、前記利用者は、複数の構成員を有する組織体であり、前記注文情報は、前記複数の構成員ごとの医薬品の個別注文情報を含む。
【0031】
ある態様では、前記営業管理端末は、前記零売薬局の所属する薬剤師のスケジュール管理機能を有し、該スケジュール管理機能により前記注文を受けた医薬品の訪問販売担当の薬剤師を決定する。
【0032】
また、前記医薬品を持参する薬剤師が操作するモバイル端末をさらに備え、前記薬剤師は、前記モバイル端末に、持参した医薬品以外に服用可能な処方箋医薬品以外の医薬品を表示して前記利用者に提示させることができる態様としてもよい。
【0033】
上述のように、本発明では、処方箋医薬品以外の医薬品の零売サービス提供システムを、零売薬局側に設置された営業管理端末と、利用者が営業管理端末に対して処方箋医薬品以外の医薬品の注文情報を送信する利用者端末とがネットワークを介して送受信可能に接続されており、零売薬局の薬剤師は、注文情報に基づき、注文を受けた医薬品を持参して、利用者に訪問販売する構成とした。
【0034】
このようなシステムを例えば企業で採用すれば、その従業員は、医療機関を受診せずに、薬局に来客せずに、医療用医薬品を購入できるため、受診のために仕事を休んだり、従来と同じ薬を購入するだけのために長時間待つなどの不都合を回避でき、時間を有効活用できる。また、医療用医薬品は一般用医薬品より主有効成分が多く含まれまた、購入金額もより安価なケースが多いため、より効き目のある薬を安価で購入できるため、従業員の満足度向上にもつながる。このようなメリットは、企業だけではなく、役所や学校や大学あるいはマンションの管理組合などであっても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るシステムでは、利用者(購入者)は病院や医院のみならず、薬局に赴く必要もないため、処方箋医薬品以外の医薬品の入手を希望する利用者の待ち時間が大幅に短縮されるだけでなく、医薬品入手のための労力が軽減される。
【符号の説明】
【0036】
10 営業管理端末
20 利用者端末
30 ネットワーク
100 零売サービス提供システム