IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホガナス アクチボラグ (パブル)の特許一覧

<>
  • 特開-強磁性粉末組成物 図1
  • 特開-強磁性粉末組成物 図2
  • 特開-強磁性粉末組成物 図3
  • 特開-強磁性粉末組成物 図4
  • 特開-強磁性粉末組成物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016066
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】強磁性粉末組成物
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/147 20060101AFI20240130BHJP
   H01F 3/08 20060101ALI20240130BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240130BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20240130BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20240130BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20240130BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20240130BHJP
   B22F 1/12 20220101ALI20240130BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
H01F1/147 166
H01F3/08
B22F1/00 T
B22F1/00 U
B22F1/102 100
B22F1/16 100
B22F1/00 Y
B22F3/00 B
B22F3/24 B
B22F1/00 R
B22F1/12
C22C38/00 303S
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023180717
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2020566805の分割
【原出願日】2019-05-28
(31)【優先権主張番号】18175161.1
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509020295
【氏名又は名称】ホガナス アクチボラグ (パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェー、チョウ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2kHz以上の周波数、高い抵抗率と低い鉄損が不可欠である5~100kHzで使用する粉末コア、電気絶縁鉄系軟磁性粉末組成物、粉末組成物から得られる軟磁性複合部品およびその製造プロセスを提供する。
【解決手段】粒子Aおよび粒子Bを含む組成物であって、粒子Aのコアが軟磁性鉄系コアであり、粒子BのコアがFe-Si合金から形成され、粒子AおよびBの各コアの表面が、リン含有絶縁層A1およびB1によってそれぞれ被覆され、絶縁コーティング層A1を有する粒子Aが、層A1の上部に追加の層A2を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子Aおよび粒子Bを含む組成物であって、前記粒子AおよびBの各々がコアを含み、前記粒子Aの前記コアが軟磁性鉄系コアであり、前記粒子Bの前記コアがFe-Si合金から形成され、
前記粒子AおよびBの各コアの表面が、リン含有絶縁層A1およびB1によってそれぞれ被覆され、
前記絶縁コーティング層A1を有する前記粒子Aが、前記層A1の上部に追加の層A2を備え、前記層A2が、式(I)の化合物またはその反応生成物から形成され、
M(OR(R 式(I)
(式中、Mが、Si、Ti、AlまたはZr、好ましくはSiまたはTi、さらに好ましくはSiから選択され、
が、4個以下、好ましくは3個以下の炭素原子、好ましくはエチル基またはメチル基を有する直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
が、場合により官能基を含む有機基であり、
x+yが、それぞれOR基およびR基の数を示す整数であり、(x+y)=4という条件で、MがSi、ZrまたはTiである場合、xが1、2および3から選択され、yが1、2および3から選択され、
(x+y)=3という条件で、MがAlである場合、xが1および2から選択され、yが1および2から選択される)
前記粒子Aが、前記層A2に付着しているか前記層A2に組み込まれている粒子Cをさらに含み、前記粒子Cが、3.5以下のモース硬度を有する材料の粒子である組成物。
【請求項2】
前記粒子Bが、前記層B1上に層B2を備え、前記層B2が、式(I)の化合物またはその反応生成物から形成され、
M(OR(R 式(I)
(式中、Mが、Si、Ti、AlまたはZr、好ましくはSiまたはTi、さらに好ましくはSiから選択され、
が、4個以下、好ましくは3個以下の炭素原子、好ましくはエチル基またはメチル基を有する直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
が、場合により官能基を含む有機基であり、
x+yが、それぞれOR基およびR基の数を示す整数であり、(x+y)=4という条件で、MがSi、ZrまたはTiである場合、xが1、2および3から選択され、yが1、2および3から選択され、
(x+y)=3という条件で、MがAlである場合、xが1および2から選択され、yが1および2から選択される)
場合により、前記粒子Bが、前記層B2に付着しているか組み込まれている粒子Cを含有する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粒子Aの前記コア粒子が、3.3~3.7g/ml、好ましくは3.3~3.6g/ml、好ましくは3.35~3.6g/ml、例えば、3.4~3.6g/ml、3.35~3.55g/mlまたは3.4~3.55g/mlの見掛け密度を有し、粒子Bが、3.0~5.5g/ml、好ましくは3.5~5.5g/ml、好ましくは4.0~5.0g/ml、例えば、4.3~4.8g/mlの見掛け密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記粉末組成物が潤滑剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記層A2および/またはB2が、式(I)の化合物から形成されるか、前記層A2および/またはB2が、式(I)の化合物の反応生成物から形成され、1分子中の金属原子Mの数が2~20である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
が、以下の官能基、すなわち、アミン、ジアミン、アミド、イミド、エポキシ、メルカプト、ジスルフィド、クロロアルキル、ヒドロキシル、エチレンオキシド、ウレイド、ウレタン、イソシアナト、アクリラート、グリセリルアクリラート、カルボキシル、カルボニルおよびアルデヒドのうちの1つ以上を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の化合物またはその反応生成物が、前記式(I)の化合物のオリゴマーであり、前記オリゴマーが、アルコキシ末端アミノ-シルセスキオキサン、アミノ-シロキサン、オリゴマー3-アミノプロピル-アルコキシ-シラン、3-アミノプロピル/プロピル-アルコキシ-シラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピル-アルコキシ-シランもしくはN-アミノエチル-3-アミノプロピル/メチル-アルコキシ-シランまたはそれらの混合物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記粒子Cが、ビスマスまたは酸化ビスマス(III)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
粒子AとBとの(A:B)重量比が、95:5~50:50、好ましくは90:10~60:40、最も好ましくは80:20~60:40である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
圧縮され熱処理された部品を製造するための方法であって、
a)請求項1から9のいずれか一項で定義された組成物を提供する工程、
b)ダイ内の一軸プレス運動で、好ましくは400~1200MPaの圧縮圧力で、場合により潤滑剤と混合された前記組成物を圧縮する工程、
c)前記圧縮された部品を前記ダイから排出する工程、および
d)非還元性雰囲気中で800℃までの温度で、前記排出された部品を熱処理する工程を含む方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項で定義された組成物を圧縮することにより、または請求項10に記載の方法により得ることができる部品。
【請求項12】
インダクタコアである、請求項11に記載の部品。
【請求項13】
3,000μΩm以上、好ましくは6,000μΩm以上または10,000μΩm以上の抵抗率ρ;1.1T以上、好ましくは1.2T以上または1.3T以上の飽和磁束密度Bs;10kHzの周波数および0.1Tの誘導で21W/kg以下の鉄損;10000A/mで240A/m以下、好ましくは230A/m以下または220A/m以下の保磁力;ならびに4000A/mで50%以上のDCバイアスを有する、請求項12に記載のインダクタコア。
【請求項14】
軟磁性複合材料の磁気特性、好ましくは鉄損および/またはDCバイアスを改善するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の、コーティング層B1を有する粒子Bに対する
被覆Fe-Si合金粒子の使用。
【請求項15】
前記Fe-Si粒子が、請求項2で定義された層B1および層B2によって被覆される、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁鉄系軟磁性粉末組成物、粉末組成物から得られる軟磁性複合部品、およびその製造プロセスに関する。具体的には、本発明は、高周波で動作する軟磁性部品を製造するための軟磁性粉末組成物に関し、部品は、例えば、パワーエレクトロニクス用のインダクタまたはリアクトルとして使用するのに適している。
【背景技術】
【0002】
軟磁性材料は、インダクタの心材、電気機械のステータおよびロータ、アクチュエータ、センサおよびトランスコアなどの用途に使用される。従来、電気機械のロータおよびステータなどの軟磁性コアは、積み重ねた積層鋼板から作製されている。軟磁性複合(SMC)材料は、通常は鉄系の軟磁性粒子に基づき、各粒子上に電気絶縁コーティングが施されている。SMC部品は、場合により潤滑剤および/または結合剤とともに、従来の粉末冶金(PM)圧縮プロセスを使用して、絶縁粒子を圧縮することによって得られる。粉末冶金技術を使用することにより、積層鋼板を使用するよりも設計の自由度が高く、そのような部品を製造することが可能になる。PMを使用することにより、三次元形状を圧縮プロセスによって得ることができるため、得られた部品は三次元磁束を運ぶことができる。
【0003】
インダクタまたはリアクトルは、部品を通過する電流によって生成される磁場の形でエネルギーを蓄積することができる受動的な電気部品である。エネルギーを蓄積するインダクタの能力、インダクタンス(L)はヘンリー(H)単位で測定される。最も単純なインダクタは、コイルとして巻かれた絶縁ワイヤである。コイルのターンを流れる電流は、コイルの周囲に磁場を生成し、その磁場強度は、コイルの電流およびターン/長さ単位に比例する。変動する電流は、変動する磁場を生成し、変動する磁場は、それを生成した電流の変化に対抗する電圧を誘導する。電流の変化に対抗する電磁力(EMF)は、ボルト(V)単位で測定され、式1によるインダクタンスに関連し、
v(t)=L di(t)/dt 式1
式中、Lはインダクタンス、tは時間、v(t)はインダクタを横切る時変電圧、i(t)は時変電流である。すなわち、1ヘンリーのインダクタンスを有するインダクタは、インダクタを通る電流が1アンペア/秒で変化する際に、1ボルトのEMFを生成する。
【0004】
強磁性または鉄心インダクタでは、コイルのインダクタンスを増加させるために、鉄またはフェライトなどの強磁性またはフェリ磁性材料から作製された磁心が使用される。これらの心材の比較的高い透磁率と、結果として生じる磁場の増加とにより、インダクタンスを著しく増加させることができる。
【0005】
SMC部品の2つの重要な特性は、その透磁率および鉄損特性である。材料の透磁率μは、磁束を運ぶ能力、すなわち磁化する能力の指標である。透磁率は、誘導磁束(Bと示され、ニュートン/アンペア*メートル、N/Am単位、またはボルト*秒/メートル、Vs/m単位で測定される)と磁化力または磁場強度(Hと示され、アンペア/メートル、A/m単位で測定される)との比として定義される。したがって、透磁率は、ボルト*秒/アンペア*メーター、Vs/Amの大きさを有する。通常、透磁率は、自由空間の透磁率μ=4*Π*10-7Vs/Amに対する相対透磁率μ=μ/μとして表される。
【0006】
透磁率は、磁束を運ぶ材料だけでなく、印加される電界およびその周波数にも依存する。技術的なシステムでは、透磁率は最大相対透磁率と呼ばれることが多く、これは、変動する電界の1サイクル中に測定される最大相対透磁率である。
【0007】
電力電子システムでは、様々な高調波などの望ましくない信号をフィルタリングするために、インダクタコアが使用され得る。効率的に機能するために、このような用途のためのインダクタコアは、低い最大相対透磁率を有しなければならず、これは、相対透磁率が、印加される電界に対してさらに線形の特性、すなわち、安定な増分透磁率μΔ(ΔB=μΔ*ΔHに従って定義される)と高い飽和磁束密度とを有することを意味する。これにより、さらに広い電流範囲でインダクタをさらに効率的に動作させることが可能になり、インダクタが「良好なDCバイアス」を有すると表現することもできる。DCバイアスは、特定の印加される電界、例えば4000A/mでの最大増分透磁率の百分率単位で表され得る。さらに、高い飽和磁束密度と組み合わされた低い最大相対透磁率および安定な増分透磁率は、インダクタがさらに高い電流を流すことを可能にし、これはサイズが制限要因である場合にとりわけ有益であるため、さらに小さなインダクタを使用することができる。
【0008】
磁性材料が変動磁場にさらされると、ヒステリシス損失および渦電流損失の両方によってエネルギー損失が発生する。ヒステリシス損失は交流磁場の周波数に比例し、渦電流損失は周波数の2乗に比例する。したがって、高周波では、渦電流損失が最も重要であり、低レベルのヒステリシス損失を維持しながら渦電流損失を低減することが特に必要とされる。
【0009】
ヒステリシス損失(DC損失)は、鉄心部品内に保持された磁力を克服するために必要なエネルギーの消費によってもたらされる。力は、ベース粉末の純度および品質を改善することによって最小限に抑えることができ、最も重要なことには、部品の熱処理(すなわち応力解放)の温度および/または時間を増加させることによって最小限に抑えることができる。渦電流損失(AC損失)は、交流(AC)条件によって引き起こされる磁束の変化に起因する、部品内(バルク渦電流(bulk eddy current))および軟磁性粒子内(粒子内渦電流(in-particle eddy current))の電流の生成によってもたらされる。
【0010】
バルク渦電流を最小限に抑えるためには、部品の高い電気抵抗率が望ましい。AC損失を最小限に抑えるために必要な電気抵抗率のレベルは、用途の種類(動作周波数)と部品のサイズとに依存する。さらに、個々の粉末粒子は、低レベルのヒステリシス損失を維持しながらバルク渦電流を減少させるために、熱的に安定した電気絶縁体、好ましくは650℃超で安定な電気絶縁体により被覆されなければならない。高周波で動作する用途では、粒子内渦電流を比較的小さな体積に制限することができるため、比較的細かい粒径を有する粉末を使用することが望ましい。したがって、高周波で動作する部品にとっては、微粉末と高い電気抵抗率とがさらに重要になる。
【0011】
粒子絶縁がどの程度うまく機能するかにかかわらず、部品内には常に無制限のバルク渦電流が存在し、損失を引き起こす。バルク渦電流損失は、磁束を運ぶ圧縮部の断面積に比例するため、大きな断面積を有する部品は、バルク渦電流損失を制限するために比較的高い電気抵抗率を必要とする。
【0012】
50~150μm、例えば約80μm~約120μmの平均粒径を有し、10~30%が45μm未満である絶縁鉄系軟磁性粉末(100メッシュ粉末)が、200Hzから最大10kHzで動作する部品に使用され得るのに対して、2kHzから最大50kHzの周波数で動作する部品は、通常、約20~約75μm、例えば約30μm~約50μmの平均粒径を有し、50%超が45μm未満である絶縁軟磁性粉末(200メッシュ粉末)に基づく。平均粒径および粒径分布は、好ましくは、用途の要件に従って最適化されるべきである。
【0013】
被覆鉄系粉末を使用した磁心部品の粉末冶金製造の研究は、最終部品の他の特性に悪影響を与えることなく、特定の物理的特性および磁気特性を強化する鉄粉末組成物を開発することに向けられてきた。所望の部品特性には、例えば、拡張された周波数範囲を通る好適な透磁率、高飽和誘導、高機械的強度、および低鉄損が含まれ、これは、磁心の抵抗率を高めることが望ましいことを意味する。
【0014】
抵抗率を改善する方法を探索するために、様々な方法が使用され、提案されてきた。1つの方法は、これらの粒子を圧縮に供する前に、粉末粒子上に電気絶縁コーティングまたはフィルムを提供することに基づく。したがって、様々な種類の電気絶縁コーティングを教示する特許公報が多数存在する。無機コーティングに関して公開された特許の例には、米国特許第6,309,748号、米国特許第6,348,265号および米国特許第6,562,458号がある。有機材料のコーティングは、例えば、米国特許第5,595,609号から知られている。無機材料および有機材料の両方を含むコーティングは、例えば、米国特許第6,372,348号および米国特許第5,063,011号ならびにドイツ特許公開第3,439,397号から知られており、これらの公報によれば、粒子はリン酸鉄層および熱可塑性材料によって囲まれている。欧州特許EP1246209B1号は、金属系粉末の表面が、シリコーン樹脂とベントナイトまたはタルクなど層状構造を有する粘土鉱物の微粒子とからなるコーティングによって被覆されている強磁性金属系粉末を記載している。
【0015】
米国特許第6,756,118B2号は、粉末金属粒子をカプセル化する少なくとも2つの酸化物を含み、少なくとも2つの酸化物が少なくとも1つの共通相を形成する軟磁性粉末金属複合材料を明らかにしている。
【0016】
特許出願JP2002170707A号は、リン含有層によって被覆された合金化鉄粒子を記載しており、合金化元素は、ケイ素、ニッケルまたはアルミニウムであり得る。第2の工程では、被覆された粉末がケイ酸ナトリウムの水溶液と混合され、続いて乾燥される。粉末を成形することによって圧粉磁心が製造され、成形部品を500~1000℃の温度で熱処理する。
【0017】
JP51-089198では、ケイ酸ナトリウムは、鉄粉末の成形と、それに続く成形部品の熱処理とによって圧粉磁心を製造する際の鉄粉末粒子のための結合剤として言及されている。
【0018】
高密度は通常、磁気特性を改善する。具体的には、ヒステリシス損失を低レベルに保ち、高い飽和磁束密度を得るためには、高密度が必要である。したがって、高性能の軟磁性複合部品を得るためには、電気絶縁を損なうことなく、電気絶縁粉末組成物を高圧で圧縮成形することも可能でなければならず、その後、部品表面を損なうことなく、成形装置から部品が容易に排出されるべきである。これは、ひいては、排出力が高すぎてはならないことを意味する。
【0019】
さらに、ヒステリシス損失を低減するためには、圧縮部の応力解放熱処理が必要であり、効果的な応力解放を得るためには、例えば窒素、アルゴンもしくは空気の雰囲気中、または真空中で、300℃を超える温度、かつ絶縁コーティングが損なわれない温度未満で好ましくは熱処理を行うべきである。
【0020】
本発明は、鉄系軟磁性複合粉末に関し、そのコア粒子は、粉末を圧縮してインダクタを製造するのに適した材料特性を与えるように注意深く慎重に選択されたコーティングによって被覆され、場合により、かつ好ましくは、熱処理プロセスが続く。
【0021】
本発明は、比較的高い周波数、すなわち2kHz以上の周波数、特に、比較的高い抵抗率および比較的低い鉄損が不可欠である5~100kHzで使用することを主に意図する粉末コアの必要性を考慮して行われた。好ましくは、飽和磁束密度は、コアの小型化に十分な高さでなければならない。さらに、ダイ壁潤滑および/または1200MPaを超える圧縮圧力を使用して、金属粉末を圧縮することなくコアを製造することが可能であるべきである。
【発明の概要】
【0022】
本発明の1つの目的は、高抵抗率および低鉄損を有する軟磁性部品に圧縮することができる新規の鉄系複合粉末を提供することであり、新規の鉄系複合粉末は、パワーエレクトロニクス用のインダクタコアの製造に使用するのに特に適している。
【0023】
本発明の別の目的は、高強度と、好適な最大透磁率と、高誘導とを有する軟磁性部品に圧縮することができる、電気絶縁鉄系粉末を含む鉄系粉末組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、鉄系粉末の電気絶縁コーティングを劣化させることなくヒステリシス損失を最小限に抑え、バルク渦電流損失を低レベルに保つための手段を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、良好な磁気性能を維持しながら圧縮圧力の低下を可能にするのに十分に高いグリーン強度を有する軟磁性部品に圧縮される、電気絶縁鉄系粉末を含む鉄系粉末組成物を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は、高強度と、高誘導と、低鉄損とを有し、渦電流損失を低レベルに保ちながらヒステリシス損失を最小限に抑える軟磁性部品を製造するための方法を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、十分な機械的強度および許容可能な磁束密度(誘導)と組み合わせて、低鉄損および「良好な」DCバイアスを有する、圧縮され、場合により熱処理された軟磁性鉄系複合インダクタコアを製造するための方法を提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、有機結合剤は、例えば分解に起因して高温熱処理中に問題を引き起こす可能性があることから、有機結合剤の使用を回避することを可能にし、それによって磁束密度を増加させ、鉄損を低減することを可能にする手段を提供することである。
【0029】
本発明のさらなる目的は、軟磁性複合材料の磁気特性を改善するための手段、特に、鉄損および/またはDCバイアスを改善するための手段を提供することである。
【0030】
本発明は、例えば、高い飽和磁束密度を有し、鉄損が低減されたインダクタを製造するために使用することができ、その製造プロセスを大幅に簡略化することができる、鉄系複合粉末と、上記混合物を処理するためのプロセス方法とを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の2つの実施形態の画像表示であり、実施形態1では、粒子Aはコーティング層A1およびA2を有し、粒子Bはコーティング層B1のみを有し、実施形態2では、粒子Bはコーティング層B1およびB2の両方を有する。粒子AおよびBの粒径およびコーティング層厚は異なってもよく、図1は粒子およびそれらのコーティングの真の縮尺を反映していない場合があることに留意されたい。
図2】例で得られたように、50kHzで測定された異なる磁場強度での透磁率の変化から導き出すことができるサンプル1および3のDCバイアスを示す。
図3】0.4重量%の微粒子状潤滑剤を加え、1000MPaで圧縮し、異なるダイ温度および異なる潤滑剤(上部:Lub A、アミドワックス、下部:Lub B、国際公開第2010/062250号による複合潤滑剤)を使用した、例の異なる組成物のグリーン強度を示す。
図4】0.4重量%の微粒子状潤滑剤を加え、1200MPaで圧縮し、異なるダイ温度および異なる潤滑剤(上部:Lub A、下部:Lub B)を使用した、例の異なる組成物のグリーン強度を示す。
図5】ダイ上で80℃で圧縮し、0.4重量%の異なる微粒子状潤滑剤を加えた部品について得られた鉄損を示す。上部:1Tでの低周波(1kHz)鉄損。下部:0.2Tでの高周波(20kHz)鉄損。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明から現れる、上記の目的および/または言及されていないさらなる目的のうちの少なくとも1つを達成するために、本発明は以下を提供する。
【0033】
1.粒子Aおよび粒子Bを含む組成物であって、粒子AおよびBの各々がコアを含み、粒子Aのコアが軟磁性鉄系コアであり、粒子BのコアがFe-Si合金から形成され、
粒子AおよびBの各コアの表面が、リン含有絶縁層A1およびB1によってそれぞれ被覆され、
絶縁コーティング層A1を有する粒子Aが、層A1の上部に追加の層A2を備え、層A2が、式(I)の化合物またはその反応生成物から形成され、
M(OR(R 式(I)
(式中、Mが、Si、Ti、AlまたはZr、好ましくはSiまたはTi、さらに好ましくはSiから選択され、
が、4個以下、好ましくは3個以下の炭素原子、好ましくはエチル基またはメチル基を有する直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
が、場合により官能基を含む有機基であり、
x+yが、それぞれOR基およびR基の数を示す整数であり、(x+y)=4という条件で、MがSi、ZrまたはTiである場合、xが1、2および3から選択され、yが1、2および3から選択され、
(x+y)=3という条件で、MがAlである場合、xが1および2から選択され、yが1および2から選択される)
粒子Aが、層A2に付着しているか層A2に組み込まれている粒子Cをさらに含み、粒子Cが、3.5以下のモース硬度を有する材料の粒子である組成物。
【0034】
2.項目1に記載の組成物であって、粒子Bが、層B1上に層B2を備え、層B2が、式(I)の化合物またはその反応生成物から形成され、
M(OR(R 式(I)
(式中、Mが、Si、Ti、AlまたはZr、好ましくはSiまたはTi、さらに好ましくはSiから選択され、
が、4個以下、好ましくは3個以下の炭素原子、好ましくはエチル基またはメチル基を有する直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
が、場合により官能基を含む有機基であり、
x+yが、それぞれOR基およびR基の数を示す整数であり、(x+y)=4という条件で、MがSi、ZrまたはTiである場合、xが1、2および3から選択され、yが1、2および3から選択され、
(x+y)=3という条件で、MがAlである場合、xが1および2から選択され、yが1および2から選択される)
場合により、粒子Bが、層B2に付着しているか組み込まれている粒子Cを含有する組成物。
【0035】
3.粒子Aのコア粒子が、3.3~3.7g/ml、好ましくは3.3~3.6g/ml、好ましくは3.35~3.6g/ml、例えば、3.4~3.6g/ml、3.35~3.55g/mlまたは3.4~3.55g/mlの見掛け密度を有し、粒子Bが、3.0~5.5g/ml、好ましくは3.5~5.5g/ml、好ましくは4.0~5.0g/ml、例えば、4.3~4.8g/mlの見掛け密度を有する、項目1に記載の組成物。
【0036】
4.上記粉末組成物が潤滑剤をさらに含む、項目1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【0037】
および/またはB2が、式(I)の化合物から形成されるか、層A2および/またはB2が、式(I)の化合物の反応生成物から形成され、1分子中の金属原子Mの数が2~20である。
【0038】
6.Rが、以下の官能基、すなわち、アミン、ジアミン、アミド、イミド、エポキシ、メルカプト、ジスルフィド、クロロアルキル、ヒドロキシル、エチレンオキシド、ウレイド、ウレタン、イソシアナト、アクリラート、グリセリルアクリラート、カルボキシル、カルボニルおよびアルデヒドのうちの1つ以上を含み、アミンおよびジアミンが好ましい、項目1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【0039】
7.式(I)の化合物またはその反応生成物が、式(I)の化合物のオリゴマーであり、オリゴマーが、アルコキシ末端アミノ-シルセスキオキサン、アミノ-シロキサン、オリゴマー3-アミノプロピル-アルコキシ-シラン、3-アミノプロピル/プロピル-アルコキシ-シラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピル-アルコキシ-シランもしくはN-アミノエチル-3-アミノプロピル/メチル-アルコキシ-シランまたはそれらの混合物から選択される、項目1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【0040】
8.粒子Cが、ビスマスまたは酸化ビスマス(III)を含む、項目1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【0041】
9.粒子AとBとの(A:B)重量比が、95:5~50:50、好ましくは90:10~60:40、最も好ましくは80:20~60:40である、項目1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【0042】
10.圧縮され熱処理された部品を製造するための方法であって、
a)項目1から9のいずれか一項で定義された組成物を提供する工程、
b)ダイ内の一軸プレス運動で、好ましくは400~1200MPaの圧縮圧力で、場合により潤滑剤と混合された組成物を圧縮する工程、
c)圧縮された部品をダイから排出する工程、および
d)非還元性雰囲気中で800℃までの温度で、排出された部品を熱処理する工程を含む方法。
【0043】
11.項目1から9のいずれか一項で定義された組成物を圧縮することにより、または項目10に記載の方法により得ることができる部品。
【0044】
12.インダクタコアである、項目11に記載の部品。
【0045】
13.3,000μΩm以上、好ましくは6,000μΩm以上または10,000μΩm以上の抵抗率ρ;1.1T以上、好ましくは1.2T以上または1.3T以上の飽和磁束密度Bs;10kHzの周波数および0.1Tの誘導で21W/kg以下の鉄損;200A/m以下、好ましくは190A/m以下または160A/m以下の保磁力;ならびに4,000A/mで50%以上のDCバイアスを有する、項目12に記載のインダクタコア。
【0046】
14.軟磁性複合材料の磁気特性、好ましくは鉄損および/またはDCバイアスを改善するための、上記で指定された、コーティング層B1を有する粒子Bに対する被覆Fe-Si合金粒子の使用。
【0047】
15.Fe-Si粒子が、項目2で定義された層B1および層B2によって被覆される、項目14に記載の使用。
【0048】
本発明のさらなる実施形態および態様は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0049】
定義
本発明では、別段の指示がない限り、あらゆる物理的パラメータが室温(20℃)および大気圧(10Pa)で測定される。
【0050】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」は、1つおよび複数を示し、必ずしもその参照名詞を単数に限定するものではない。
【0051】
用語「約」は、当該の量または値が、指定された特定の値またはその近傍の何らかの他の値であってよく、一般に、示された値の±5%の範囲内であることを意味する。したがって、例えば、「約100」という句は、100±5の範囲を示す。
【0052】
用語「および/または」は、示された要素のうちのすべてまたは1つのみが存在することを意味する。例えば、「aおよび/またはb」は、「aのみ」、または「bのみ」、または「aとbとを一緒に」を意味する。「aのみ」の場合、この用語は、bが存在しない可能性、すなわち「aのみであり、bではない」も網羅する。
【0053】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は、非排他的かつ非限定的であることを意図している。したがって、特定の成分を含む組成物は、記載されたもの以外の他の成分を含み得る。ただし、この用語には、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」というさらに限定的な意味も含まれる。用語「から本質的になる」は、それぞれの組成物について記載されたもの以外の材料の10重量%以下、好ましくは5%以下の存在を可能にし、他の材料が完全に存在しなくてもよい。
【0054】
測定可能なパラメータが参照される場合は常に、例で使用される方法が使用される。さらに、ISO 13320-1:1999で指定されているような当技術分野の標準的な方法を使用して、レーザ回折により粒径および粒径分布を決定することができる。粒径は、ISO 1497:1983に準拠して、乾式ふるい分けによっても分類することができる。抵抗率は、Smits,F.M.,“Measurements of Sheet Resistivity with the Four-Point Probe” BSTJ,37,p.371(1958)によって説明されているように、4点プローブ測定によって決定することができる。相違がある場合、本発明の例で使用される方法を優先する。
【0055】
本明細書で参照されるすべての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
発明の詳細な説明
第1の態様では、本発明は、
i)鉄系コアと、コアを囲む2つ以上のコーティング層とを各々含む粒子Aであって、2つ以上のコーティング層が、コアの表面に提供され、かつリン系絶縁コーティング層である第1のコーティング層A1と、第1のコーティング層A1上に提供され、かつ以下に記載される第2の層A2とを含む粒子A、ならびに
ii)FeおよびSiを含むかFeおよびSiから本質的になる合金から作製されたコアを各々含む粒子Bであって、FeSiコアの表面が、リン系絶縁層B1と、場合により、層B1上に提供され、かつ以下に記載される第2の層B2とを少なくとも備える粒子B、
を含むか、それらから本質的になるか、それらからなる組成物に関する。
【0057】
粒子AおよびBは、少なくともコアの組成の性質の点で互いに異なる。したがって、粒子Aの軟磁性コアは、粒子Bについて以下に指定されるようなFeおよびSiを含む合金ではない。
【0058】
粒子Aのコアは、好ましくは、不規則な表面を物理的に変化させる粉砕、摩砕または他のプロセスによって7~25%増加した見掛け密度(AD)を有する。ISO 3923-1に準拠して測定される粒子AのADは、3.2~3.7g/ml、好ましくは3.3~3.7g/ml、好ましくは3.3~3.6g/mlの範囲、さらに好ましくは3.3g/ml超~3.6g/ml以下、好ましくは3.35~3.6g/ml、または3.4~3.6g/m、または3.35~3.55g/ml、または3.4~3.55g/mlの範囲であるべきである。
【0059】
別の実施形態では、粉末組成物は潤滑剤を含み得る。
【0060】
本発明はさらに、好ましくは400~1200MPa、さらに好ましくは600~1200MPaの圧縮圧力で、本発明による組成物をダイ内で好ましくは一軸で圧縮すること、および潤滑剤が存在する場合、場合により、加えられた潤滑剤の溶融温度よりも低い温度までダイを予熱すること、得られたグリーン体を排出すること、および場合によりグリーン体を熱処理することを含む、軟磁性複合材料の調製プロセスに関する。本発明による複合部品は、好ましくは、0.01~0.1重量%のリン含有量(P)と、0.02~0.12重量%の加えられたM(好ましくはSi)の含有量と、0.05~0.35重量%の、金属微粒子状化合物または半金属微粒子状化合物Cの形態で加えられたBiの含有量とを有する。
【0061】
続いて、本発明の各構成要素をさらに詳細に説明するが、説明される具体的な実施形態に本発明を限定することを望むものではない。
【0062】
粒子Aのコア
粒子Aの鉄系コア粒子は、水アトマイズ、ガスアトマイズまたはスポンジ鉄粉末から生じるなど、任意の起源のものであり得る。水アトマイズ粒子が好ましい。
【0063】
鉄系軟磁性コアは、純鉄から本質的になる群から選択されてもよく、これは、鉄含有量が90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上であることを意味する。残部は、Si以外の任意の材料または元素であり得る。特に好ましくは、コアは鉄および不可避的不純物からなる。これらは、最大0.1重量%の量で存在し得る。
【0064】
粒子Bのコア
粒子Bのコアは、鉄およびケイ素(Si)を含む鉄合金から作製され、コアは、好ましくはガスアトマイズされる。鉄およびケイ素の他に、他の合金化金属も存在し得るが、その程度はSiよりも低い。Feは、粒子Bのコアを形成する合金の80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上を構成する。
【0065】
残部は、不可避的不純物と、少なくともSiを含む他の合金化金属とによって形成される。Siは、少なくとも1重量%、または粒子Bのコアを形成する合金、好ましくは2.5重量%以上、さらになお好ましくは4重量%以上を形成する。Siの上限は15重量%以下であるが、典型的には10重量%以下のSiが存在する。好ましくは、Si量の上限は、9重量%以下または8重量%以下であるが、7%以下であってもよい。不可避的不純物とFeおよびSi以外の他の元素との量は、典型的には、10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、さらになお好ましくは2重量%以下である。それはまた、1.0または0.1重量%以下の低さであり得、残部はFeおよびSiである。そのような他の合金化元素は、Al、Ni、Coまたはそれらの組合せを含み得る。
【0066】
一実施形態では、粒子Bのコアは、90重量%以上のFeおよび10%以下のSiならびに0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の量の不可避的不純物からなるFe-Si合金から作製される。この実施形態の好ましい態様では、Siの量は4.0~7.0重量%であり、残部は、0.2重量%以下、例えば0.1重量%以下の量のFeおよび不可避的不純物によって形成される。
【0067】
粒子AおよびBの形状
また、ここで驚くべきことに、平滑な粒子表面を有する粒子を粒子Aのコアとして使用すると、本発明による圧縮および熱処理された部品の電気抵抗率をさらに向上させることができることも見出された。そのような好適な形態は、例えば、鉄または鉄系粉末の見掛け密度が7%超もしくは10%超、または12%超もしくは13%超増加して3.2~3.7g/ml、好ましくは3.3g/ml超および3.6g/ml以下、好ましくは3.4~3.6g/ml、または3.35~3.55g/mlの見掛け密度がもたらされることによって明白に示される。
【0068】
所望の見掛け密度を有するそのような粉末は、ガスアトマイズプロセスまたは水アトマイズ粉末から得られてもよい。水アトマイズ粉末が使用される場合、それらは、好ましくは、粉砕、摩砕または他のプロセスに供され、これにより、水アトマイズ粉末の不規則な表面が物理的に変化する。粉末の見掛け密度が約25%または20%を超えて増加しすぎると、それは、約3.7または約3.6g/mlを超える水アトマイズ鉄系粉末の場合、総鉄損が増加することを意味する。
【0069】
コア粒子の形状が、例えば、抵抗率の結果に影響を与えることも見出された。不規則な粒子を使用すると、粒子の不均一性が少なく平滑性が高い形状の場合よりも、見掛け密度および抵抗率が低下する。したがって、本発明によれば、結節性である粒子、すなわち、丸みを帯びた不規則な粒子、または球形もしくはほぼ球形の粒子が好ましい。比較的細かい粒径を有する粉末(100および200メッシュなど)が好ましく使用される高周波で動作する部品では高い抵抗率がさらに重要になるため、これらの粉末では「高AD」がさらに重要になる。
【0070】
粒子の量
本発明の組成物は、粒子AおよびBとともにそれぞれのコーティング層を含有する。組成物の総重量に対する粒子AおよびB(それらのコーティング層を含む)の合計の量は、好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、なお好ましくは95重量%以上、例えば、98重量%以上であり、最大100重量%であり得る。
【0071】
それらのコーティング層を含む粒子Bの量は、粒子AおよびBの総重量に対して、好ましくは5~50重量%、さらに好ましくは10~40重量%である(すなわち、[B]/[B+A]×100=5-50、好ましくは10-40)。それはまた、20~40重量%であり得る。粒子の重量比は、好ましくは95:5~50:50、好ましくは90:10~60:40、最も好ましくは80:20~60:40であり、[A]:[B]として表される。
【0072】
組成物は、それらのコーティング層を含む粒子AおよびBに加えて、場合により、潤滑剤などの添加剤をさらに含有し得る。
【0073】
潤滑剤の量は、組成物の総重量に対して、好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.7重量%未満、または最も好ましくは0.5重量%未満である。
【0074】
粒子のコアのサイズ
粒子AおよびBの粒径は制限されず、また製造された部分の使用目的によって決定されるが、粒子AおよびBのコアの粒径の中央値(重量による)、Dw50は、250ミクロン以下、さらに好ましくは75ミクロン以下、例えば45ミクロン以下である。
【0075】
第1のコーティング層(無機)A1/B1
粒子AおよびBを形成するコアのそれぞれは、第1の無機絶縁層A1およびB1をそれぞれ備える。そのようなコーティングを形成するための方法は、例えば、国際公開第2009/116 938 A1号に記載されている。
【0076】
層A1およびB1はリン系であり、これは、それらが、元素Pとして表され、ESCAまたはXPSなどの通常の方法によって決定される、少なくとも5原子%、好ましくは少なくとも8原子%以上、さらに好ましくは10原子%以上の量のPを含有することを意味する。リンは、好ましくは、ホスファート、ジホスファートまたはポリホスファートの形態で存在し、その場合、カチオンは、好ましくは、プロトン、アルカリ金属および土類アルカリ金属、好ましくはプロトン、ナトリウムおよびカリウムから選択される。
【0077】
この第1のコーティング層A1/B1は、水または有機溶媒のいずれかに溶解したリン酸を用いて、それぞれのコア粒子を処理することによって得られてもよい。水系溶媒では、防錆剤および界面活性剤が場合により加えられる。鉄系粉末粒子を被覆する好ましい方法は、米国特許第6348265号に記載されている。処理は一度行われてもよいが、繰り返されてもよい。リン系コーティング層A1/B1は、好ましくは、ドーパント、防錆剤または界面活性剤などの添加物を含まない。コーティングA1/B1は絶縁コーティングである。場合により、コーティングは、好適な塩基を用いて処理することによって中和され得る。
【0078】
層A1およびB1中の蛍光体の量は、組成物全体の0.01~0.15重量%であり得る。
【0079】
第2のコーティング層A2/B2
粒子Aの第1のリン系無機絶縁層A1上に位置する層A2は、以下の一般式(I)の化合物またはその反応生成物によって形成される層である。本明細書では、用語「反応生成物」は、式(I)の化合物の1つの分子と、式(I)の化合物の別の分子および/または層A1またはB1との反応によって得られる生成物を意味し、反応生成物の例には、その部分的または全体的な縮合物が挙げられる。
M(OR(R 式(I)
【0080】
式(I)では、Mは、Si、Ti、AlまたはZr、好ましくはSiまたはTi、さらに好ましくはSiから選択され、Rは、4個以下、好ましくは3個以下の炭素原子、さらに好ましくはエチル基-Cまたはメチル基-CHを有するアルキル基である。
【0081】
は、場合により官能基を含む有機基であり、好ましくはR2は、1~14個、さらに好ましくは1~8個の炭素原子、なお好ましくは1~6個の炭素原子、例えば1~3個の炭素原子を含む。R基は、直鎖、分岐鎖、環状または芳香族であり得、好ましくは、直鎖または分岐鎖アルキル基である。
【0082】
一実施形態では、R2の任意の官能基が存在し、好ましくは、N、O、S、Pおよびハロゲン原子からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含む群から選択され、N、O、SおよびPが好ましい。そのような基の例には、アミン、ジアミン、アミド、イミド、エポキシ、メルカプト、ジスルフィド、クロロアルキル、ヒドロキシル、エチレンオキシド、ウレイド、ウレタン、イソシアナト、アクリラート、グリセリルアクリラート、カルボキシル、カルボニルおよびアルデヒドが挙げられる。
【0083】
さらに、x+yは、Mの原子価を満たすように選択されたORおよびRの数をそれぞれ示す整数である。MがSi、ZrまたはTiである場合、(x+y)=4であり、MがAlである場合、(x+y)=3である。
(x+y)=4という条件で、MがSi、ZrまたはTiである場合、xは1、2および3から選択され、yは1、2および3から選択されるのに対して、(x+y)=3という条件で、MがAlである場合、xは1および2から選択され、yは1および2から選択される。
【0084】
以下、この層は層A2と呼ばれる。一実施形態では、層A2は、絶縁層A1を有する粒子A上のみに形成されるが、コーティング層B1を有する粒子B上には形成され得ない(「実施形態1」)。別の実施形態(「実施形態2」とも呼ばれる)では、場合により粒子Cとともに、一般式(I)の化合物、またはその部分的もしくは全体的な縮合物などのその反応生成物によって形成される層も、粒子Bの層B1上に存在し、この場合、この層は層B2と呼ばれる(図1を参照)。したがって、層B2の説明および定義は、層A2のものと同じであり、そのような場合、粒子AとBとは、それらの異なるコアによって区別される。層A2およびB2は、式(I))の化合物を用いて、層A1を有する粒子Aと層B1を有する粒子Bとの混合物を処理することによって同じ化合物から同時に形成されてもよいが、それらは、それぞれ層A2およびB2を形成するための式(I)の異なる化合物またはその反応生成物を使用することによって別個に形成されてもよい。
【0085】
層A2および任意の層B2は、式(I)の化合物と粒子Cとから形成され得るが、少なくとも部分的には、式(I)の(ポリ)縮合反応生成物によっても形成され、それにより粒子Cをカプセル化し得る。例えば、式(I)の化合物がトリメトキシアミノプロピルシランである場合、層は、アルコール(この場合はメタノール)の形成下で形成されるその(ポリ)縮合物によって形成され得る。このような反応生成物は、好ましくは、2~50個、さらに好ましくは2~20個の原子Mを1つの分子中に含む。このような(ポリ)縮合反応では、HOR1を放出することによってOR1基が脱離し、M-O-M結合((ポリ)縮合物中の2原子M)が残る。ポリ縮合物中の3M原子の場合、例えば、M-O-M-O-M結合が形成される。ここで、各Mは、出発物質に存在するR基を依然として有する。
【0086】
MがSi、TiまたはZrであり、x=2およびy=2である場合、M-O-M-O-M-O-Mなど、複数のM-O-M結合を有する直鎖状分子が形成される。R2基は残るため、化合物は、(HまたはR)O-M(R-O-(MR-O-(MR-により表され得る。MがSi、TiまたはZrであり、x=3およびy=1である場合、三次元ポリシロキサンネットワークが形成され、各Mは1つの基Rを依然として有する。
【0087】
いずれの場合も、基R1と基R2とは互いに異なっていてもよい。さらに、粒子AおよびBの両方がそれぞれの層A2およびB2を含有する場合、層は、式(I)の同じ化合物またはその反応生成物から形成され得るか、式(I)の異なる化合物またはその反応生成物から形成され得る。
【0088】
縮合物を形成することができるように、縮合反応を開始または触媒することができる微量の水または別の作用物質が有益であり得る。そのような水は、例えば、リン含有コーティングA1またはB1上に存在する物理吸着水の存在下で、その上でコーティング層A2および場合によりB2が形成される粒子上に存在し得る。さらに、リン含有層A1およびB1は、典型的には、プロトンによって完全にまたは部分的に中和され得るPO -基を含むホスファートまたはリン酸に基づく。理論に束縛されることを望まないが、これらの基は、式(I)の化合物と反応してP-O-M結合を形成するなどの反応を開始し得ると考えられている。例えば、リン含有層A1またはB1中のP-OH基は、HO-R1を脱離させ、P-O-M結合を形成し、それにより、層A2(および存在する場合はB2)を層A1またはB2にそれぞれ固定することによって基OR1と反応し得る。コーティング層A2およびB2の形成に関する追加の情報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2009/116938 A1号に見出すことができる。
【0089】
一実施形態では、式(I)の化合物は、トリアルコキシシランおよびジアルコキシシラン、チタナート、アルミナートまたはジルコナートから選択される。一実施形態では、層A2および/またはB2は、シラン、チタナート、アルミナートまたはジルコナートのアルコキシ末端アルキル/アルコキシオリゴマーから選択される式(I)の化合物のオリゴマーを含む。本明細書では、中心原子(好ましくはSi)は、好ましくは、アルキル基上の置換基としてアミン基を含む(すなわち、Rは、アルキルアミンである)。
【0090】
上に示すように、粒子AおよびBの両方は、それぞれ、第1のコーティング層A1およびB1を有する。粒子Aはさらに、層A1上に提供される第2のコーティング層A2を有する。粒子Bは、場合により、層B1上に提供される第2のコーティング層B2を有する。
【0091】
一実施形態では、粒子AおよびBの両方がそれぞれコーティング層A2およびB2を有するのに対して、別の実施形態では、粒子Aのみがコーティング層A2を有する。この場合、コーティング層B2を有しない粒子Bは、最外層として絶縁層B1を有する。そうでなければ、層A2(および存在する場合はB2)は、典型的には、粒子AおよびBの最外層であり、粒子Cは、層A2および場合によりB2に組み込まれるか、付着する。
【0092】
式(I)の化合物はまた、シラン、シロキサンおよびシルセスキオキサンの誘導体、中間体もしくはオリゴマー(MはSiである)、もしくは対応するチタナート、アルミナートまたはジルコナート(MはそれぞれTi、AlおよびZrである)、またはそれらの混合物から選択され得る。
【0093】
一実施形態によれば、層A2および場合によりB2は、式(I)の化合物によって形成される。したがって、層は、式(I)の化合物、および/またはその下にあるリン系絶縁層A1/B1とのそれらの反応生成物を含有する。
【0094】
別の実施形態によれば、層A2および/またはB2は、式(I)自体の化合物の反応生成物、すなわち、式(I)の化合物の1つの分子と式(I)の化合物の別の分子との反応生成物を含有する。ここで、反応生成物の1分子当たりの金属原子数Mは、2以上、好ましくは5以上、50以下、好ましくは20以下である。この反応生成物は、式(I)の2つ以上の化合物のポリ縮合物であり、これらの化合物は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0095】
一実施形態では、層A2および/またはB2は、均質な組成を有し得、これは、層全体が、例えば、式(I)の化合物から、またはそのポリマーにより形成されることを意味する。別の実施形態では、層A2および/またはB2は、異なる組成を有する2つ以上の副層によって形成され得る。例えば、層A2および/またはB2は、2つ以上の副層を含み得る。本明細書では、絶縁リン系絶縁層上の直接の層は、式(I)の化合物のみによって形成され得るが、この層の上部の追加の副層は、式(I)の化合物のオリゴマーまたはポリマーから形成され得る。式(I)の化合物を含む副層とそのオリゴマーまたはポリマーの層との重量比は、任意の値をとり得るが、好ましくは1:0~1:2、さらに好ましくは2:1~1:2である。
【0096】
式(I)の化合物またはその反応生成物が2つ以上存在する場合、その化学的官能性は同じである必要はない。
【0097】
式(I)の化合物は、一実施形態では、トリアルコキシシランおよびジアルコキシシラン、チタナート、アルミナートまたはジルコナートの群から選択され、例には、3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、3-アミノプロピル-メチル-ジエトキシシラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピル-メチル-ジメトキシシラン、1,7-ビス(トリエトキシシリル)-4-アザヘプタン、トリアミノ官能性プロピル-トリメトキシシラン、3-ウレイドプロピル-トリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピル-トリエトキシシラン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-イソシアヌラート、0-(プロパルギルオキシ)-N-(トリエトキシシリルプロピル)-ウレタン、1-アミノメチル-トリエトキシシラン、1-アミノエチル-メチル-ジメトキシシランまたはそれらの混合物が挙げられる。これらの種類の化合物は、Evonik Ind.、Wacker Chemie AG、Dow Corning、Mitsubishi Int.Corp.、Famas Technology Sariなどの企業から商業的に入手してもよい。
【0098】
式(I)の化合物のオリゴマーまたはポリマーは、シラン、チタナート、アルミナートまたはジルコナートのアルコキシ末端アルキル-アルコキシ-オリゴマーから選択され得る。したがって、このオリゴマーは、メトキシ、エトキシもしくはアセトキシ末端アミノ-シルセスキオキサン、アミノ-シロキサン、オリゴマー3-アミノプロピル-メトキシ-シラン、3-アミノプロピル/プロピル-アルコキシ-シラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピル-アルコキシ-シランもしくはN-アミノエチル-3-アミノプロピル/メチル-アルコキシ-シランまたはそれらの混合物から選択され得る。
【0099】
層A2と存在する場合B2との合計量は、特に限定するものではないが、例えば、組成物全体の0.05~0.8重量%、または0.05~0.6重量%、または0.1~0.5重量%、または0.2~0.4重量%、または0.3~0.5重量%であり得る。
【0100】
上記の実施形態のいずれも、3.5以下、好ましくは3.0以下のモース硬度を有する、金属もしくは半金属またはそれらの化合物から作製された粒子Cの添加を含む。粒子Cは、好ましくは、5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、最も好ましくは1μm以下の重量中央値粒径D50を有する。金属微粒子状化合物または半金属微粒子状化合物のモース硬度は、好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。SiO、Al、MgOおよびTiOは研磨性であり、モース硬度が3.5をはるかに超えるため、本発明には含まれない。研磨組成物は、ナノサイズの粒子であっても、電気絶縁コーティングに不可逆的な損傷を引き起こし、加熱処理された部品の排出不良および磁気的および/または機械的特性の悪化をもたらすことがある。
【0101】
粒子Cの材料の例には、以下の群が含まれる。鉛系、インジウム系、ビスマス系、セレン系、ホウ素系、モリブデン系、マンガン系、タングステン系、バナジウム系、アンチモン系、スズ系、亜鉛系、セリウム系化合物およびその1つ以上が使用され得る。それぞれの金属自体が使用されてもよい。
【0102】
粒子Cは、上記の金属の酸化物、水酸化物、水和物、カーボナート、ホスファート、蛍石、硫化物、サルファート、サルファイト、酸塩化物またはそれらの混合物から作製され得る。好ましい実施形態によれば、粒子Cは、ビスマスまたは酸化ビスマス(III)から作製される。
【0103】
粒子Cの他の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、および炭酸塩などのそれらの塩が挙げられる。好ましい例には、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、リチウム、カリウムまたはナトリウムの炭酸塩が挙げられる。
【0104】
粒子Cとしての金属もしくは半金属またはその化合物は、複合材料中に、組成物の最大0.8重量%、例えば、0.05~0.6重量%、さらに好ましくは0.1~0.5重量%または最も好ましくは0.15~0.4重量%の範囲で存在する。
【0105】
粒子Cは、粒子Aおよび/またはBの最外層の少なくとも1つ、すなわち、層A2および/またはB2に付着するか、その中に組み込まれる。一実施形態では、粒子Aの最外層のみが、粒子Cを含有するか、それに組み込まれるか、それに付着する。別の実施形態では、粒子AおよびBの両方が、粒子Cを含有するか、それに組み込まれるか、それに付着する。
【0106】
粒子Cは、例えばホウ素を含む金属または半金属から作製される。これには、それぞれの金属または半金属の化合物(塩など)、および金属または半金属の合金も含まれる。
【0107】
低鉄損が望まれる多くの使用および提案された方法とは対照的に、本発明の特別な利点は、粉末組成物に有機結合剤を使用する必要がなく、粉末組成物が後に圧縮工程で圧縮されることである。したがって、圧粉体の熱処理は、有機結合剤が分解するリスクを伴わず、比較的高い温度で行うことができる。比較的高い熱処理温度はまた、磁束密度を改善し、鉄損を低減する。最終的な熱処理されたコア内に有機材料が存在しないことはまた、有機結合剤の軟化および分解による強度低下のリスクを伴わず、高温の環境でコアを使用することを可能にするため、改善された温度安定性が達成される。
【0108】
それにもかかわらず、上記の実施形態のうちの1つ以上では、組成物に微粒子状潤滑剤が加えられてもよい。微粒子状潤滑剤は、ダイ壁潤滑を適用する必要なく、圧縮を容易にし得る。微粒子状潤滑剤は、一級および二級脂肪酸アミド、トランスアミド(ビスアミド)または脂肪酸アルコールからなる群から選択され得る。微粒子状潤滑剤の潤滑部分は、12~22個の炭素原子を含む飽和または不飽和鎖であり得る。微粒子状潤滑剤は、好ましくは、ステアルアミド、エルカミド、ステアリル-エルカミド、エルシル-ステアルアミド、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、エチレン-ビスステアルアミド(すなわち、EBSまたはアミドワックス)から選択され得る。好ましい潤滑剤は、18個超24個以下の炭素原子を有する少なくとも1つの一級脂肪酸アミドを10~60重量%、および少なくとも1つのビス-アミドを40~90重量%含有するコアを含む微粒子状複合潤滑剤であり、上記潤滑剤粒子はまた、コアに付着した少なくとも1つの金属酸化物のナノ粒子を含む。そのような微粒子状複合潤滑剤の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2010/062250号に開示されており、一実施形態では、この文献に開示される潤滑剤が本発明で使用される。この文献の好ましい潤滑剤はまた、本発明における好ましい潤滑剤である。
【0109】
微粒子状潤滑剤は、組成物の0.1~0.6重量%、または0.2~0.4重量%、または0.3~0.5重量%、または0.2~0.6重量%の量で存在し得る。
【0110】
組成物の調製プロセス
本発明による組成物の調製プロセスは、それぞれが3.2~3.7g/mlの見掛け密度を得るように生成および処理されることが好ましい軟磁性鉄系コア粒子およびFe-Si粒子をリン系化合物により被覆して、リン系絶縁層A1およびB1を得、コア粒子AおよびBの表面を電気的に絶縁したままにすることを含む。コーティングA1およびB1は、鉄系コア粒子とFe-Siコア粒子との混合物上に形成され得るか、コア粒子上に別個に形成され得る。
【0111】
次いで、層A1を有する被覆されたコア粒子Aと、場合により層B1を有する粒子Bとを、a)式(I)の化合物またはその反応生成物、および上記のように3.5未満のモース硬度を有する粒子Cと混合して、コーティング層A2および場合によりB2を形成する。層A1を有する粒子Aと層B1を有する粒子Bとの混合物が使用される場合、層A2およびB2は、それぞれの粒子上に形成される。層A1を有する粒子A上のみに式(I)の化合物から層を形成することが望まれる場合、層A2の形成は、粒子の混合の前に行われる。言うまでもなく、混合前に層A2およびB2を別個に提供することも可能であり、このようにして、異なる組成を有するコーティング層A2およびB2を形成することができる。
【0112】
このプロセスは、場合により、得られた粒子またはそれらの混合物と上記で定義された潤滑剤とを混合することをさらに含む。
【0113】
軟磁性部品の製造プロセス
本発明による軟磁性複合材料の製造プロセスは、少なくとも600MPa、好ましくは1000MPaを超えるが1200MPaを超えない圧縮圧力で、本発明による組成物をダイ内で一軸で圧縮すること、場合により任意で加えられた潤滑剤の溶融温度よりも低い温度までダイを予熱すること、場合により圧縮前に25~100℃に粉末を予熱すること、得られたグリーン体を排出すること、および場合によりグリーン体を熱処理することを含む。本明細書では、ピーク温度は、粒子コーティング層の分解または損傷を回避するために800℃以下であるべきであり、好ましくは750℃以下である。
【0114】
熱処理プロセスは、真空、非還元性、不活性雰囲気(窒素またはアルゴンなど)、または弱酸化性雰囲気、例えば、0.01~3体積%の酸素中であり得る。場合により、熱処理は不活性雰囲気中で行われ、その後、酸化性雰囲気に素早く曝露される。温度は最大800℃であってよいが、好ましくは750℃以下であるか、700℃以下でもある。
【0115】
熱処理条件では、潤滑剤を使用する場合は、可能な限り完全に蒸発させるべきである。これは通常、熱処理サイクルの最初の部分の間に、約150~500℃超、好ましくは約250~500℃超で達成される。さらに高温では、化合物C(金属部品または半金属部品)が式(I)の化合物と反応し、部分的にネットワークを形成し得る。これにより、部品の機械的強度および電気抵抗率がさらに向上し得る。最高温度(好ましくは550~750℃、さらに好ましくは600~750℃、さらになお好ましくは630~700℃、例えば630~670℃の範囲)では、圧縮物は、複合材料の保磁力、ひいてはヒステリシス損失が最小限に抑えられる完全な応力解放に達し得る。
【0116】
本発明に従って製造された圧縮および熱処理された軟磁性複合材料は、好ましくは、部品の0.01~0.15重量%のリンの含有量、部品の0.02~0.12重量%の、ベース粉末に加えられたM(好ましくはSi)の含有量を有し、Biが粒子Cとして、3.5未満のモース硬度を有する金属微粒子または半金属微粒子の形態で加えられる場合、Biの含有量は部品の0.05~0.35重量%であり得る。
【0117】
得られた磁心は、2~100kHz、通常5~100kHzの周波数範囲で、20kHzの周波数および0.1Tの誘導で約41W/kg未満という低い総損失を特徴とし得る。さらに、抵抗率ρ、2000超、好ましくは4000超、最も好ましくは6000μΩm超、および飽和磁束密度Bs1.1超、好ましくは1.2超、最も好ましくは1.3T超。さらに、10000A/mでの保磁力は240A/m未満、好ましくは230A/m未満、最も好ましくは200A/m未満であり、DCバイアスは4000A/mで50%以上であるべきである。
【0118】

例は、特定の実施形態を説明することを意図しており、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。特に明記しない限り、部品の磁気性能および材料強度の評価は、以下の方法で行った。
【0119】
磁気評価用のサンプルを内径45mm、外径55mmおよび高さ5mmのトロイドに圧縮し、材料強度評価のために、SS-EN ISO 3325:2000に準拠したTRSバーを圧縮した。圧縮中、工具ダイを場合により80℃に予熱した。最初の活性化工程が430℃で30分間保持され、その後の緩和工程が675℃で25分間保持される2段階順序で、圧縮された部品の熱処理を行った。両工程は、少量の酸素(2500~7500ppm O、好ましくは量は5000ppm Oであった)を含む窒素中で行った。
【0120】
誘導、Bおよび保磁力の測定では、リングを一次回路のために100ターン、二次回路のために100ターンで「配線」し、ヒステリシスグラフ、Brockhaus MPG 200を用いた磁気特性の測定(1T;50~1000Hzで測定されるDCおよび低周波鉄損)を可能にした。高周波の鉄損測定では、リングを一次回路のために100ターン、二次回路のために20ターンで「配線」し、次いで、Laboratorio Elettrofisico Engineering srl、AMH-200装置を用いて測定した(0.05、0.1および0.2T;2~50kHzで測定)。SS-EN-23995に準拠してグリーンTRSを測定した。
【0121】
例1
例1
鉄含有量が99.5重量%を超え、平均粒径が約45μmの純水アトマイズ鉄粉末。次いで、国際公開第2008/069749号に従ってリン含有溶液を用いて粉末を処理した。1000mlのアセトンに30mlの85重量%のリン酸を溶解することによってコーティング溶液を調製し、次いで、粉末1000グラム当たり30ml~60mlのアセトン溶液を使用した。リン酸溶液と金属粉末とを混合した後、混合物を乾燥させる。場合により、粉末と10ml~40mlのアセトン溶液とを2回目混合し、次いで乾燥させた。
【0122】
次いで、いずれもEvonik Indによって製造された、0.25重量%のアミノアルキル-トリアルコキシシラン(Dynasylan(登録商標)Ameo)、その後アミノアルキル/アルキル-アルコキシシラン(Dynasylan(登録商標)1146)の0.15重量%のオリゴマーとともに、被覆された粉末を撹拌することによってさらに混合して、層A1と2つの副層により形成された追加の層とを有する粒子Aを形成した。組成物と粒子Cとして酸化ビスマス(III)の0.3重量%の微粉末とをさらに混合して、最終的に層A2を形成した。この処理された粉末はAaと呼ばれ、粒子Aの例である。
【0123】
国際公開第2008/069749号に従って、リン含有溶液を用いて、ガスアトマイズしたFe-Si(6.5重量%のSiを含む)を別個に処理して、層B1を有する粒子Bを形成した。アセトン1000mlに85%重量のリン酸30mlを溶解することによってコーティング溶液を調製し、次いで、粉末1000グラム当たり10ml~40mlのアセトン溶液を使用した。リン酸溶液と金属粉末とを混合した後、混合物を乾燥させる。粉末と10ml~40mlのアセトン溶液とを2回目混合し、次いで乾燥させた。この粉末はBaと呼ばれ、粉末Bの例である。
【0124】
次いで、粒子AaおよびBaを含有する2つの粉末をサンプル1、2および3として使用した。ここで、サンプル1は100%Aaであり、サンプル2は100%Baのみであり、サンプル3は70重量%Aaと30重量%Baとの混合物である。圧縮前に、サンプル1、2および3のそれぞれと微粒子状潤滑剤Lubr1(アミドワックス)とを混合した。使用した潤滑剤の量は、組成物の0.4重量%であった。
【0125】
例2
例1から得られたサンプルをいずれも、80℃に予熱した工具ダイを用いて1000MPaで圧縮し、次いで、上記のように圧縮物を熱処理した。
【表1】
【0126】
表1に見られるように、粒子AとBとの混合物の方が低い保磁力を有するため、損失が少なくなる。サンプル3は、>10000の抵抗率;μmax 210;B@10kA/m(1.33T);鉄損@1T 100Hz(8.5W/kg);鉄損@0.1T 10kHz(16W/kg);および鉄損@0.1T 20kHz(33W/kg)を有する。しかし、純ガスアトマイズFe-Si粉末(サンプル2)は、このような低い圧縮圧力では圧縮することはできない。サンプル2の機械的強度は弱すぎ、サンプルが圧縮工具(ダイ)から排出されると破損する。
【0127】
図2に見られるように、4000A/mおよび50kHzで測定された材料のDCバイアスは、Aaに30重量%のBaを加えることによって10%改善される。
【0128】
例3-グリーン強度を増加させる
例1に記載されているように得られた、被覆された粒子AaおよびBaを含有する粉末を、Aa中のBa10~50重量%の範囲で混合した。次いで、圧縮前に、これらの混合物のそれぞれと、微粒子状潤滑剤Lub A(アミドワックス)またはLub B(国際公開第2010/062250号による複合潤滑剤)とを混合した。使用した潤滑剤の量は、組成物の0.4重量%であった。
【0129】
次いで、Lub Aを含有する混合物ではダイ温度60、80℃および室温で、Lub Bを含有する混合物ではダイ温度60、80および100℃で、1000および1200MPaで各組成物を圧縮した。次いで、圧縮された部品を熱処理し、上記のように評価した。
【0130】
図3および図4に見られるように、Lubr2を加えると、圧縮された部品のグリーン強度が大幅に改善される。潤滑剤としてLubr1を使用して得られた機械的強度により、中程度の圧縮圧力(1000~1200MPa)で50重量%という高さのBaを含む材料を処理することが可能になる。
【0131】
例4-混合物中の最適量のFeSi
例1に記載されているように得られた、被覆された粒子AおよびBを含有する粉末を、Aa中のBa10~50重量%の範囲で混合した。次いで、圧縮前に、これらの混合物のそれぞれと、微粒子状潤滑剤Lub AまたはLub Bとを混合した。使用した潤滑剤の量は、組成物の0.4重量%であった。
【0132】
次いで、80℃のダイ温度で800、1000および1200MPaで各組成物を圧縮した。次いで、圧縮された部品を熱処理し、上記のように評価した。
【0133】
図5に見られるように、AaにBaを加えると、特に低周波で鉄損が最初に改善される。ただし、約40重量%のBaを加えると最適な組成になることは明白である。Baの添加量がさらに多いと、純Aaと比較して鉄損の低減はほぼ完全に失われる。
【0134】
例5
この例は、同等の量の水アトマイズFe-Si粉末と比較して、ガスアトマイズFe-Siを使用する利点を示している。
【0135】
水アトマイズによって粉末を生成したという唯一の相違を除いて例1と同様のFe-Si粉末を、例1に記載されたプロセスに従って処理した。この粉末はCaと示した。
【0136】
70%Aaと30%Caとを混合してサンプル4を生成した。圧縮前に、サンプル4と0.4%のLubr1とをさらに混合した。
【0137】
例2に従って、得られたサンプルの圧縮、熱処理および試験を行った。
【0138】
以下の表2は、サンプル1について得られた結果と比較してサンプル4の試験から得られた結果を示している。
【表2】
【0139】
表2は、サンプル3と比較して、サンプル4ではグリーン強度のいくらかの改善が記録されたことを示している。ただし、保磁力@10kA/mおよび鉄損@0.1Tおよび10kHzは悪化した。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子Aおよび粒子Bを含む組成物であって、前記粒子AおよびBの各々がコアを含み、前記粒子Aの前記コアが軟磁性鉄系コアであり、前記粒子Bの前記コアがFe-Si合金から形成され、
前記組成物の総重量に対する粒子AおよびBの合計の量が、85重量%以上であり、
前記粒子AおよびBの各コアの表面が、リン含有絶縁層A1およびB1によってそれぞれ被覆され、
前記リン含有縁層A1を有する前記粒子Aが、前記層A1の上部に追加の層A2を備え、前記層A2が、式(I)の化合物またはその反応生成物から形成され、
M(OR(R 式(I)
(式中、Mが、Si、Ti、AlまたはZrから選択され、
が、4個以下の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
が、場合により官能基を含む有機基であり、
yが、それぞれOR基およびR基の数を示す整数であり、(x+y)=4という条件で、MがSi、ZrまたはTiである場合、xが1、2および3から選択され、yが1、2および3から選択され、
(x+y)=3という条件で、MがAlである場合、xが1および2から選択され、yが1および2から選択される)
前記粒子Aが、前記層A2に付着しているか前記層A2に組み込まれている粒子Cをさらに含み、前記粒子Cが、3.5以下のモース硬度を有する材料の粒子であり、
不可避的不純物とFeおよびSi以外の他の元素との量が、粒子Bのコアの重量に基づき2重量%以下である組成物。
【請求項2】
前記粒子Bが、前記層B1上に層B2を備え、前記層B2が、式(I)の化合物またはその反応生成物から形成され、
M(OR(R 式(I)
(式中、Mが、Si、Ti、AlまたはZrから選択され、
が、4個以下の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
が、場合により官能基を含む有機基であり、
x+yが、それぞれOR基およびR基の数を示す整数であり、(x+y)=4という条件で、MがSi、ZrまたはTiである場合、xが1、2および3から選択され、yが1、2および3から選択され、
(x+y)=3という条件で、MがAlである場合、xが1および2から選択され、yが1および2から選択される)
場合により、前記粒子Bが、前記層B2に付着しているか組み込まれている粒子Cを含有する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粒子Aの前記コアが、3.3~3.7g/mlの見掛け密度を有し、前記粒子Bの前記コアが、3.0~5.5g/mlの見掛け密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記粒子Aの前記コアが、3.3~3.6g/mlの見掛け密度を有し、前記粒子Bの前記コア、3.5~5.5g/mlの見掛け密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記粒子Aの前記コアが、3.35~3.6g/mlの見掛け密度を有し、前記粒子Bの前記コアが、4.0~5.0g/mlの見掛け密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記粒子Aの前記コアが、3.4~3.6g/mlの見掛け密度を有し、前記粒子Bの前記コアが、4.3~4.8g/mlの見掛け密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子Aの前記コアが、3.35~3.55g/mlの見掛け密度を有有する、請求項3から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記粒子Aの前記コアが、3.4~3.55g/mlの見掛け密度を有する、請求項3から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
記組成物が潤滑剤をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記層A2および/またはB2が、式(I)の化合物から形成されるか、前記層A2および/またはB2が、式(I)の化合物の反応生成物から形成され、1分子中の金属原子Mの数が2~20である、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
が、以下の官能基、すなわち、アミン、ジアミン、アミド、イミド、エポキシ、メルカプト、ジスルフィド、クロロアルキル、ヒドロキシル、エチレンオキシド、ウレイド、ウレタン、イソシアナト、アクリラート、グリセリルアクリラート、カルボキシル、カルボニルおよびアルデヒドのうちの1つ以上を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
式(I)の化合物またはその反応生成物が、前記式(I)の化合物のオリゴマーであり、前記オリゴマーが、アルコキシ末端アミノ-シルセスキオキサン、アミノ-シロキサン、オリゴマー3-アミノプロピル-アルコキシ-シラン、3-アミノプロピル/プロピル-アルコキシ-シラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピル-アルコキシ-シランもしくはN-アミノエチル-3-アミノプロピル/メチル-アルコキシ-シランまたはそれらの混合物から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記粒子Cが、ビスマスまたは酸化ビスマス(III)を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
粒子AとBとの(A:B)重量比が、95:5~50:50である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
圧縮され熱処理された部品を製造するための方法であって、
a)請求項1から14のいずれか一項で定義された組成物を提供する工程、
b)ダイ内の一軸プレス運動で、400~1200MPaの圧縮圧力で、前記組成物を圧縮する工程、および
c)前記圧縮された部品を前記ダイから排出する工程を含む方法。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項で定義された組成物を圧縮することにより、または請求項15に記載の方法により得ることができる部品。
【請求項17】
インダクタコアである、請求項16に記載の部品。
【請求項18】
3,000μΩm以上の抵抗率ρ;1.1T以上の飽和磁束密度Bs;10kHzの周波数および0.1Tの誘導で21W/kg以下の鉄損;10000A/mで240A/m以下の保磁力;ならびに4000A/mで50%以上のDCバイアスを有する、請求項17に記載のインダクタコア。
【請求項19】
軟磁性複合材料の磁気特性を改善するための方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を使用する方法
【請求項20】
記粒が、請求項2で定義された層B1および層B2によって被覆される、請求項19に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
本発明は、例えば、高い飽和磁束密度を有し、鉄損が低減されたインダクタを製造するために使用することができ、その製造プロセスを大幅に簡略化することができる、鉄系複合粉末と、上記混合物を処理するためのプロセス方法とを提供する。
なお、下記[1]から[15]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
粒子Aおよび粒子Bを含む組成物であって、前記粒子AおよびBの各々がコアを含み、前記粒子Aの前記コアが軟磁性鉄系コアであり、前記粒子Bの前記コアがFe-Si合金から形成され、
前記粒子AおよびBの各コアの表面が、リン含有絶縁層A1およびB1によってそれぞれ被覆され、
前記絶縁コーティング層A1を有する前記粒子Aが、前記層A1の上部に追加の層A2を備え、前記層A2が、式(I)の化合物またはその反応生成物から形成され、
M(OR (R 式(I)
(式中、Mが、Si、Ti、AlまたはZr、好ましくはSiまたはTi、さらに好ましくはSiから選択され、
が、4個以下、好ましくは3個以下の炭素原子、好ましくはエチル基またはメチル基を有する直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
が、場合により官能基を含む有機基であり、
x+yが、それぞれOR 基およびR 基の数を示す整数であり、(x+y)=4という条件で、MがSi、ZrまたはTiである場合、xが1、2および3から選択され、yが1、2および3から選択され、
(x+y)=3という条件で、MがAlである場合、xが1および2から選択され、yが1および2から選択される)
前記粒子Aが、前記層A2に付着しているか前記層A2に組み込まれている粒子Cをさらに含み、前記粒子Cが、3.5以下のモース硬度を有する材料の粒子である組成物。
[2]
前記粒子Bが、前記層B1上に層B2を備え、前記層B2が、式(I)の化合物またはその反応生成物から形成され、
M(OR (R 式(I)
(式中、Mが、Si、Ti、AlまたはZr、好ましくはSiまたはTi、さらに好ましくはSiから選択され、
が、4個以下、好ましくは3個以下の炭素原子、好ましくはエチル基またはメチル基を有する直鎖または分岐鎖アルキル基であり、
が、場合により官能基を含む有機基であり、
x+yが、それぞれOR 基およびR 基の数を示す整数であり、(x+y)=4という条件で、MがSi、ZrまたはTiである場合、xが1、2および3から選択され、yが1、2および3から選択され、
(x+y)=3という条件で、MがAlである場合、xが1および2から選択され、yが1および2から選択される)
場合により、前記粒子Bが、前記層B2に付着しているか組み込まれている粒子Cを含有する、
[1]に記載の組成物。
[3]
前記粒子Aの前記コア粒子が、3.3~3.7g/ml、好ましくは3.3~3.6g/ml、好ましくは3.35~3.6g/ml、例えば、3.4~3.6g/ml、3.35~3.55g/mlまたは3.4~3.55g/mlの見掛け密度を有し、粒子Bが、3.0~5.5g/ml、好ましくは3.5~5.5g/ml、好ましくは4.0~5.0g/ml、例えば、4.3~4.8g/mlの見掛け密度を有する、[1]に記載の組成物。
[4]
前記粉末組成物が潤滑剤をさらに含む、[1]から[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]
前記層A2および/またはB2が、式(I)の化合物から形成されるか、前記層A2および/またはB2が、式(I)の化合物の反応生成物から形成され、1分子中の金属原子Mの数が2~20である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]
が、以下の官能基、すなわち、アミン、ジアミン、アミド、イミド、エポキシ、メルカプト、ジスルフィド、クロロアルキル、ヒドロキシル、エチレンオキシド、ウレイド、ウレタン、イソシアナト、アクリラート、グリセリルアクリラート、カルボキシル、カルボニルおよびアルデヒドのうちの1つ以上を含む、[1]から[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]
式(I)の化合物またはその反応生成物が、前記式(I)の化合物のオリゴマーであり、前記オリゴマーが、アルコキシ末端アミノ-シルセスキオキサン、アミノ-シロキサン、オリゴマー3-アミノプロピル-アルコキシ-シラン、3-アミノプロピル/プロピル-アルコキシ-シラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピル-アルコキシ-シランもしくはN-アミノエチル-3-アミノプロピル/メチル-アルコキシ-シランまたはそれらの混合物から選択される、[1]から[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]
前記粒子Cが、ビスマスまたは酸化ビスマス(III)を含む、[1]から[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]
粒子AとBとの(A:B)重量比が、95:5~50:50、好ましくは90:10~60:40、最も好ましくは80:20~60:40である、[1から[8のいずれか一項に記載の組成物。
[10]
圧縮され熱処理された部品を製造するための方法であって、
a)[1]から[9]のいずれか一項で定義された組成物を提供する工程、
b)ダイ内の一軸プレス運動で、好ましくは400~1200MPaの圧縮圧力で、場合により潤滑剤と混合された前記組成物を圧縮する工程、
c)前記圧縮された部品を前記ダイから排出する工程、および
d)非還元性雰囲気中で800℃までの温度で、前記排出された部品を熱処理する工程を含む方法。
[11]
[1]から[9]のいずれか一項で定義された組成物を圧縮することにより、または[10]に記載の方法により得ることができる部品。
[12]
インダクタコアである、[11]に記載の部品。
[13]
3,000μΩm以上、好ましくは6,000μΩm以上または10,000μΩm以上の抵抗率ρ;1.1T以上、好ましくは1.2T以上または1.3T以上の飽和磁束密度Bs;10kHzの周波数および0.1Tの誘導で21W/kg以下の鉄損;10000A/mで240A/m以下、好ましくは230A/m以下または220A/m以下の保磁力;ならびに4000A/mで50%以上のDCバイアスを有する、[12]に記載のインダクタコア。
[14]
軟磁性複合材料の磁気特性、好ましくは鉄損および/またはDCバイアスを改善するための、[1]から[8]のいずれか一項に記載の、コーティング層B1を有する粒子Bに対する
被覆Fe-Si合金粒子の使用。
[15]
前記Fe-Si粒子が、[2]で定義された層B1および層B2によって被覆される、[14]に記載の使用。
【外国語明細書】