(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160668
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】3次元コンピューターグラフィックスにおける画像の合成を行う画像処理装置、画像処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 15/20 20110101AFI20241107BHJP
G06T 15/40 20110101ALI20241107BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20241107BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G06T15/20
G06T15/40
G06T19/00 A
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023084209
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】520123641
【氏名又は名称】北畑 慶
(72)【発明者】
【氏名】北畑 慶
【テーマコード(参考)】
5B050
5B080
5E555
【Fターム(参考)】
5B050AA08
5B050AA09
5B050AA10
5B050BA09
5B050CA00
5B050EA26
5B050FA02
5B080AA00
5B080CA00
5B080FA00
5B080GA00
5E555AA27
5E555BA08
5E555BB08
5E555BC08
5E555BE16
5E555BE17
5E555CA42
5E555CB47
5E555DB57
5E555DC09
5E555DC10
5E555DC43
5E555EA12
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】3次元仮想空間上では、描画されるすべてのオブジェクトに同一の投影手法が適用される。この時、特定のオブジェクトのみを他の投影手法で描画しても、他オブジェクトとの投影方法と異なるために背景や影といった描画に違和感が生じてしまう。そこで、3次元仮想空間上で特定のオブジェクトのみを別の投影手法で描画し、背景や影といった環境に違和感なく合成することを課題とする。
【解決手段】3次元仮想空間上に表示される物体の背景合成を行うための装置およびプログラムを提案する。任意の数のオブジェクトに対して、平行投影する仮想カメラと対象オブジェクトに対応する前景と後景の透視投影する仮想カメラを作成し、対象となるオブジェクトに対して作成された平行投影する仮想カメラと背景用の透視投影する仮想カメラで描画するオブジェクトの割り当てを行い、描画順と投影パラメータを設定し、対象オブジェクトと周囲の環境を合成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元コンピューターグラフィックスの1つ又は複数のオブジェクトの合成を行う画像処理装置であって、
前記1つ又は複数のオブジェクトのうち、少なくとも1つの任意のオブジェクトである対象オブジェクトについて、該対象オブジェクトを平行投影する平行投影仮想カメラを設定する平行投影仮想カメラ設定部と、
前記対象オブジェクトに対応する前記背景のうち該対象オブジェクトよりも相対的に前方に位置する前景オブジェクトについて、その前景オブジェクトを透視投影する前景透視投影仮想カメラを設定する前景透視投影仮想カメラ設定部と、
前記対象オブジェクトに対応する前記背景のうち該対象オブジェクトよりも相対的に後方に位置する後景オブジェクトについて、その後景オブジェクトを透視投影する後景透視投影仮想カメラを設定する後景透視投影仮想カメラ設定部と、
オブジェクトのそれぞれについて、前記対象オブジェクトについて設定した前記平行投影仮想カメラにて描画する第1オブジェクトと、前記前景透視投影仮想カメラ及び/若しくは前記後景透視投影仮想カメラで描画する第2オブジェクトと、についての割り当てを行う割当部、個々のオブジェクトについてオブジェクトの描画順を設定する描画順設定部、個々のオブジェクトについて投影パラメータを設定するパラメータ設定部、及び個々のオブジェクトを合成する合成部、を備える主処理部と、を有する、
画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記主処理部は、
前記対象オブジェクトに対して設定される前記平行投影仮想カメラの描画設定、並びに/又は、前記背景に対して設定される前記前景投影透視投影仮想カメラ及び/若しくは前記後景投影透視仮想カメラの描画設定について、前記対象オブジェクトの任意の位置と、所望の視点に対応する位置に設定される透視投影仮想カメラである仮想メインカメラとの距離によって、それらの描画設定を動的に変化させる処理を行う第1処理部を有する、
画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記主処理部は、
前記描画順設定部が、個々のオブジェクトについて、前記仮想メインカメラからの距離が遠い順に描画順を設定し、
前記合成部が、前記仮想メインカメラの画角に基づき、投影対象の任意の平行投影面の大きさを算出して合成処理を行う、ように前記描画順設定部及び前記合成部を制御する第2処理部を有する、
画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記平行投影カメラを、前記対象オブジェクトに対して設定される仮想メインカメラとして設定し、前記平行投影面の大きさから前記前景透視投影仮想カメラ及び前記後景透視投影仮想カメラの画角を算出し、前記平行投影面において、前記対象オブジェクトを平行投影にて描画し、前記対象オブジェクトに対応する背景を透視投影で描画する処理を行う第3処理部を有する、
画像処理装置。
【請求項5】
3次元コンピューターグラフィックスの1つ又は複数のオブジェクトの合成を行う画像処理システムであって、
前記1つ又は複数のオブジェクトのうち、少なくとも1つの任意のオブジェクトである対象オブジェクトについて、該対象オブジェクトを平行投影する平行投影仮想カメラを設定する平行投影仮想カメラ設定部と、
前記対象オブジェクトに対応する前記背景のうち該対象オブジェクトよりも相対的に前方に位置する前景オブジェクトについて、その前景オブジェクトを透視投影する前景透視投影仮想カメラを設定する前景透視投影仮想カメラ設定部と、
前記対象オブジェクトに対応する前記背景のうち該対象オブジェクトよりも相対的に後方に位置する後景オブジェクトについて、その後景オブジェクトを透視投影する後景透視投影仮想カメラを設定する後景透視投影仮想カメラ設定部と、
オブジェクトのそれぞれについて、前記対象オブジェクトについて設定された前記平行投影仮想カメラで描画する第1オブジェクトと、前記前景透視投影仮想カメラ及び/若しくは前記後景透視投影仮想カメラで描画する第2オブジェクトと、についての割り当てを行う割当部、個々のオブジェクトについてオブジェクトの描画順を設定する描画順設定部、個々のオブジェクトについて投影パラメータを設定するパラメータ設定部、及び個々のオブジェクトを合成する合成部、を備える主処理部と、を有する、
画像処理システム。
【請求項6】
コンピュータに、3次元コンピューターグラフィックスの1つ又は複数のオブジェクトの合成を行う画像処理装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記1つ又は複数のオブジェクトのうち、少なくとも1つの任意のオブジェクトである対象オブジェクトについて、該対象オブジェクトを平行投影する平行投影仮想カメラを設定する平行投影仮想カメラ設定部と、
前記対象オブジェクトに対応する前記背景のうち該対象オブジェクトよりも相対的に前方に位置する前景オブジェクトについて、その前景オブジェクトを透視投影する前景透視投影仮想カメラを設定する前景透視投影仮想カメラ設定部と、
前記対象オブジェクトに対応する前記背景のうち該対象オブジェクトよりも相対的に後方に位置する後景オブジェクトについて、その後景オブジェクトを透視投影する後景透視投影仮想カメラを設定する後景透視投影仮想カメラ設定部と、
オブジェクトのそれぞれについて、前記対象オブジェクトについて設定された前記平行投影仮想カメラで描画する第1オブジェクトと、前記前景透視投影仮想カメラ及び/若しくは前記後景透視投影仮想カメラで描画する第2オブジェクトと、についての割り当てを行う割当部、個々のオブジェクトについてオブジェクトの描画順を設定する描画順設定部、個々のオブジェクトについて投影パラメータを設定するパラメータ設定部、及び個々のオブジェクトを合成する合成部、を備える主処理部と、として機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元コンピューターグラフィックス(以下3DCG)にて表現される、仮想空間上での画像合成の表現技法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
映画、ゲーム、アニメなどのあらゆる分野において、3DCG(3DCG:3次元コンピューターグラフィックス、以降3DCGはコンピュータやネットワーク上に構築される仮想空間における3DCGアニメーションを指す)が利用され得る。この種の技術においては、一例では、一つの仮想カメラにて仮想空間が描画される。加えて、複数の仮想カメラを用い、個々の仮想カメラ毎に投影方法及び/又は描画方法を適宜変更する技術も知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、複数の仮想カメラを用い、個々の仮想カメラに応じて、平行投影を行うことが可能な撮影範囲、及び透視投影を行うことが可能な撮影範囲、を設定して、被写体(オブジェクト)との距離に応じて投影方式を切り替えることが可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の技術では、オブジェクトとの距離に応じて投影方式を切り替えるように構成されている。距離に応じて平行投影と透視投影とを切り替えた場合において、オブジェクトの特性に関わらず距離のみに基づき全てのオブジェクトにその設定された投影方式が適用され得る。ここで、オブジェクトを透視投影で投影した場合、透視投影に起因する歪みが生じたり奥行き感に変化が生じたりする。そして、これによってオブジェクトが立体的に見える。換言すれば、透視投影では、オブジェクトの投影に遠近法が適用されるため、現実のオブジェクトを実際の人の目で見る場合と同様の視覚効果が得られる。
オブジェクトを平行投影した場合、透視投影におけるような歪みや奥行き感は生じず、このためオブジェクト間の距離感は分からなくなる。つまり、平行投影では、遠近法は適用されない。一方、個々のオブジェクト自体は歪み等なく認識できるようになる。なお、平行投影は、例えば図面などの描画に用いられ得る。
透視投影の特徴と平行投影の特徴との違いに応じて、特定のオブジェクトと、周囲の背景や影といった環境とを違和感なく合成する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、3次元コンピューターグラフィックスの1つ又は複数のオブジェクトの合成を行う画像処理装置である。
該画像処理装置は、平行投影仮想カメラ設定部と、前景透視投影仮想カメラ設定部と、後景透視投影仮想カメラ設定部と、主処理部と、を有する。
平行投影仮想カメラ設定部は、前記1つ又は複数のオブジェクトのうち、少なくとも1つの任意のオブジェクトである対象オブジェクトについて、該対象オブジェクトを平行投影する平行投影仮想カメラを設定する。
前景透視投影仮想カメラ設定部は、前記対象オブジェクトに対応する前記背景のうち該対象オブジェクトよりも相対的に前方に位置する前景オブジェクトについて、その前景オブジェクトを透視投影する前景透視投影仮想カメラを設定する。
後景透視投影仮想カメラ設定部は、前記対象オブジェクトに対応する前記背景のうち該対象オブジェクトよりも相対的に後方に位置する後景オブジェクトについて、その後景オブジェクトを透視投影する後景透視投影仮想カメラを設定する。
主処理部は、割当部と、描画順設定部と、パラメータ設定部と、合成部と、を備える。
割当部は、オブジェクトのそれぞれについて、前記対象オブジェクトについて設定した前記平行投影仮想カメラにて描画する第1オブジェクトと、前記前景透視投影仮想カメラ及び/若しくは前記後景透視投影仮想カメラで描画する第2オブジェクトと、についての割り当てを行う。
描画順設定部は、個々のオブジェクトについてオブジェクトの描画順を設定する。
パラメータ設定部は、個々のオブジェクトについて投影パラメータを設定する。
合成部は、個々のオブジェクトを合成する。
以下、3次元コンピューターグラフィックスを3DCGとも記載する。
【0007】
また、本開示の画像処理装置では、前記主処理部は、前記対象オブジェクトに対して設定される前記平行投影仮想カメラの描画設定、並びに/又は、前記背景に対して設定される前記前景投影透視投影仮想カメラ及び/若しくは前記後景投影透視仮想カメラの描画設定について、前記対象オブジェクトの任意の位置と、所望の視点に対応する位置に設定される透視投影仮想カメラである仮想メインカメラとの距離によって、それらの描画設定を動的に変化させる処理を行う第1処理部を有する。
また、本開示の画像処理装置では、前記主処理部は、前記描画順設定部が、個々のオブジェクトについて、前記仮想メインカメラからの距離が遠い順に描画順を設定し、前記合成部が、前記仮想メインカメラの画角に基づき、投影対象の任意の平行投影面の大きさを算出して合成処理を行う、ように前記描画順設定部及び前記合成部を制御する第2処理部を有する。
また、本開示の画像処理装置では、前記平行投影カメラを、前記対象オブジェクトに対して設定される仮想メインカメラとして設定し、前記平行投影面の大きさから前記前景透視投影仮想カメラ及び前記後景透視投影仮想カメラの画角を算出し、前記平行投影面において、前記対象オブジェクトを平行投影にて描画し、前記対象オブジェクトに対応する背景を透視投影で描画する処理を行う第3処理部を有する。
ここで、仮想メインカメラの透視投影の画角に基づき、各対象オブジェクトに対応する仮想平行投影カメラの平行投影面の大きさを変更し、作成した仮想カメラにて、描画する画像の合成を行ってもよい。
【0008】
また、本開示では、仮想メインカメラに平行投影を用いて、その平行投影面の大きさから背景を投影している透視投影の画角を算出してもよい
また、本開示の一態様は、上記の手法を行う画像処理システムであってもよく、また、コンピュータに上記の手法を実行させるプログラムであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の3DCGにおける画像処理装置、画像処理システム及びプログラムによれば、3DCGにおける仮想空間上において対象オブジェクトを平行投影で描画しつつ、透視投影されている周辺(背景画像)を合成することができる。これにより、人の視覚上、自然で違和感のない視覚効果を得ることが可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【
図1】本開示における仮想空間上の仮想カメラ及び描画対象のオブジェクトの配置の一例を表した図である。
【
図2】本開示の一実施形態の画像処理装置の構成を表すブロック図である。
【
図3】本開示の画像処理装置のシーン設定部での対象オブジェクトの位置、及び作成した仮想カメラを表した説明図である。
【
図4】本開示の画像処理装置の仮想カメラ合成部における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の画像処理装置の仮想カメラ合成部における画像の描画順の例を表した説明図である。
【
図6】本開示の画像処理装置の仮想カメラ合成部における仮想透視投影カメラから仮想平行投影カメラの投影面の大きさを計算する処理の一例を表した説明図である。
【
図7】本開示の画像処理装置の仮想カメラ合成部における投影結果の一例を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。本開示において、アニメーションデータとは、3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)オブジェクト及び仮想カメラにおけるアニメーションの値を指す。
図1に示すように、仮想空間上に、メインとなる透視投影仮想カメラ(以下、仮想メインカメラとも称する)と、描画対象となるオブジェクト(
図1:A1 Object1,A2 Object2)とが存在する仮想空間を例として説明する。仮想空間とは、コンピュータやネットワーク上に構築される仮想空間であり、3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)上の仮想空間である。仮想空間上の光源は、
図1の仮想メインカメラの位置からオブジェクト方向に斜めに地面を照らす向きを持つ平行光源である。
【0011】
図2は本開示の一例の画像処理装置1の概要図である。画像処理装置1は、シーン設定部3と、仮想カメラ合成部5とを備える。以下、それぞれの構成について詳細に説明する。
【0012】
シーン設定部3では、仮想空間上の1つ又は複数のオブジェクトのうち、ユーザーにより指定される、平行投影したいオブジェクトである対象オブジェクトを決定する。そして、その対象オブジェクトを描画する仮想カメラの作成と初期設定とを行う。この仮想カメラは、仮想メインカメラである場合もあり得る。
図3は、シーン設定部3で作成された仮想カメラの配置図である。
図3に記載されているA1 Object1、A2 Object2は
図1のものと同一であるとする。
【0013】
図3のA1 Object1、A2 Object2を投影の対象(つまり、対象オブジェクト)とし、それぞれの対象オブジェクトに対して、その対象オブジェクトを平行投影で描画する仮想カメラ(平行投影仮想カメラ)、前景を透視投影で描画する仮想カメラ(前景透視投影仮想カメラ)、及び後景を透視投影で描画する仮想カメラ(後景透視投影仮想カメラ)を作成する。なお、以下において、平行投影仮想カメラ、前景透視投影仮想カメラ、及び後景透視投影仮想カメラを合わせて、単に「仮想カメラ」と称する場合がある。
図3に示されるように、A1 Object1(対象オブジェクト)に対して、その対象オブジェクトを平行投影する平行投影仮想カメラ(C1)、前景を透視投影で描画する前景透視投影仮想カメラ(B1)、及び後景を透視投影で描画する後景透視投影仮想カメラ(B2)を作成する。
対象オブジェクトA2 Object2(対象オブジェクト)に対しては、その対象オブジェクトを平行投影する平行投影仮想カメラ(C2)、前景を描画する透視投影する前景透視投影仮想カメラ(B2)、及び後景を描画する後景透視投影仮想カメラ(B3)を作成する。
図3において、仮想メインカメラの位置と作成した透視投影仮想カメラの位置とは同一である。平行投影用の平行投影仮想カメラでは対象オブジェクトのみの描画を行う。前景透視投影仮想カメラでは対象オブジェクトと仮想メインカメラとの間に対応する区間を描画する。後景透視投影仮想カメラでは対象オブジェクトの後景となる範囲を描画する。換言すれば、前景透視投影仮想カメラでは、背景のうち対象オブジェクトよりも相対的に前方に位置する前景を描画する。後景透視投影仮想カメラでは、背景のうち対象オブジェクトよりも相対的に後方に位置する後景を描画する。作成する仮想カメラ(平行投影仮想カメラ、前景透視投影仮想カメラ、及び後景透視投影仮想カメラ)については、仮想メインカメラに追従するように設定する。この際、仮想メインカメラと同じ位置、向きである必要はない。
【0014】
対象オブジェクトが複数ある場合は、全ての対象オブジェクトに対して透視投影する前景透視投影仮想カメラ及び後景透視投影仮想カメラを設定する必要はなく、どちらか一方を設定するだけでも良い。例えば、
図3では、A1 Object1に対応する後景透視投影仮想カメラ(B2)と、A2 Object2に対応する前景透視投影仮想カメラ(B2)との投影範囲が同一となり得る(いずれも、(B2)となり得る)。このため、何れか一方については設定を省略してもよい(換言すれば、設定を省略することが可能となり得る)。
【0015】
ここで、対象オブジェクトの影のみを描画する仮想プロジェクターを別途設定してもよい。仮想プロジェクターは、任意の位置から、対象オブジェクトに対応する影の描画を行う。この場合、光源の設定に対応して、描画する影の向きや濃さ等が決定される。具体的には、光源の照射方向に応じて、影の向きが決定される。また、光源の光の強度に応じて、影の濃さが決定される。
【0016】
図3の仮想カメラ合成部5では、仮想空間上の環境に合わせて、仮想カメラの設定を動的に変化させて、各仮想カメラで生成した画像の合成を行う。
図4は、仮想カメラ合成部5における処理の一例を示すフローチャートである。
【0017】
図4に示すように、画像処理装置1は、まず、仮想メインカメラのアニメーションを実行する(ステップS101)。
次に、仮想メインカメラと対象オブジェクトとの間の距離の計算を行う(ステップS102)。
そして、ステップS103で計算した値に対して仮想カメラに対応するオブジェクトの割り当てを行う(ステップS103)。
次に、作成した仮想カメラによる描画順及び描画のパラメータの設定を行う(ステップS104)。
そして、再生を停止するかどうかを判定する(ステップS105)。再生を続けると判定した場合は(ステップS105=NO)、ステップS101からの処理を繰り返し同様に行う。再生停止すると判定した場合は(ステップS105=YES)、処理を終了する。
【0018】
ステップS101では、より具体的には、仮想メインカメラのアニメーションを再生する。アニメーションの再生に関する値(パラメータ)としては、仮想メインカメラの回転、位置、透視投影の画角、が含まれても良い。つまり、仮想メインカメラが回転してもよく、また、仮想メインカメラの位置、透視投影の画角、が変化してもよい。なお、シーン設定部3で設定した仮想カメラについては、仮想メインカメラのアニメーションに追従するように設定する。
【0019】
ステップS102では、仮想メインカメラと、平行投影の対象となっている対象オブジェクトにおける、基準となる位置(以下、基準位置とも記載する)との距離の計算を行う。対象オブジェクトにおける基準位置はユーザーが任意に決定することができる。基準位置はアニメーションのフレームごとに変化させてもよい。対象オブジェクトと仮想メインカメラとの距離は、直線距離でなくてもよく、例えば、デプスや対象オブジェクトから仮想メインカメラ平面への垂線距離でも良い。
【0020】
ステップS103では、対象オブジェクトについて、各仮想カメラに対応する対象オブジェクトの割り当てを再度行う。設定した前景透視投影仮想カメラ及び後景透視投影仮想カメラについて、使用しない仮想カメラについては対象オブジェクトを描画しないように設定をする。また、対象オブジェクト間で距離が近い(距離が所定距離以下)、と判定される対象オブジェクトについては、同一の仮想カメラで描画するように設定する。この場合、使用しない仮想カメラは対象オブジェクトを描画しないようにする。
【0021】
ステップS104では、仮想カメラによる描画順の設定と描画のパラメータの設定とを行う。描画順については、ステップS102での計算に基づき、仮想メインカメラとの距離が大きい対象オブジェクトから順に描画をするように設定する。
図5はステップS104で設定された描画順を示す。最初に、
図3においてB3で示される透視投影仮想カメラでは、D3で示される背景オブジェクトと、A2で示される対象オブジェクトの影であるF2の影とを描画する。
次に、
図3においてC2で示される平行投影仮想カメラにてA2で示される対象オブジェクトを描画し、次に
図3においてB2で示される透視投影仮想カメラにてD2で示される背景オブジェクトとA1で示される対象オブジェクトの影であるF1の影とを描画する。
次に、
図3においてC1で示される平行投影仮想カメラにてA1で示される対象オブジェクトを描画し、最後に、
図3においてB1で示される透視投影仮想カメラにてD1で示される背景オブジェクトを描画する。
【0022】
ステップS104のパラメータ設定では、透視投影する仮想メインカメラの画角から平行投影する仮想カメラの投影面の大きさを計算する。
図6は、透視投影の画角から平行投影の仮想カメラの大きさを求める場合の一例である。
θは仮想メインカメラの画角、線分ORの長さであるdは対象となる対象オブジェクトまでの距離、線分QPの長さであるhは求める平行投影面の大きさを表す。θとdとからhを求め、平行投影仮想カメラに設定をする。ステップS104の処理はそれぞれの平行投影仮想カメラで行う。
また、ステップS102で計算した距離に基づき描画範囲である視錐台の前面の位置と後面の位置とについて変更する処理や、デプスデータ等によって透視投影する仮想カメラの描画範囲を変更する処理を行う。背景についての描画範囲については、仮想カメラごとに重複している範囲があってもよい。
【0023】
最終的には、
図7に示されるように、A1,A2で示される対象オブジェクトは平行投影されるが、A1,A2で示される対象オブジェクトを含めて遠近法が適用されているように描画され、透視投影で描画された影や背景と違和感無く自然に合成され得る。
【0024】
仮想カメラ合成部5の処理において、アニメーションを再生しない場合でも、アニメーションの値を取得することができれば、そのアニメーションの値に基づき事前に処理を行い、処理結果が保存されてもよい。
【0025】
上記実施形態では、仮想メインカメラについては透視投影を行うカメラとし、透視投影の画角から平行投影の平行面の大きさを算出してオブジェクトを合成したが、同様の処理過程の中で仮想メインカメラについては平行投影を行うカメラとし、平行投影の大きさから透視投影の画角を算出し、オブジェクトの合成を行ってもよい。
【0026】
シーン設定部3及び仮想カメラ合成部5は、1以上のコンピュータが、所定のプログラムを実行することにより実現される。また、コンピュータを、シーン設定部3及び仮想カメラ合成部5として機能させる方法、プログラム、及びそのプログラムを記録した記録媒体も、本開示の実施形態に含まれる。
【0027】
上記実施形態では例として人型オブジェクトを図面で用いたが、本開示は人型オブジェクトに限らずあらゆるオブジェクトに適用できる。具体的には、アニメーションが付されたオブジェクトについてアニメーションデータを取得できれば、本開示を適用し得る。また、上記実施形態では対象オブジェクトは2つであったが、対象オブジェクトの数は任意であり、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【0028】
また、仮想空間上でアニメーション化が可能なオブジェクトであれば、テレビ等のディスプレイのみならず、VRをはじめとしたヘッドマウントディスプレイに適用したり、スマートフォンにおけるARにも適用し得る。また、Webカメラで撮影した映像を仮想空間上で合成するような、あらゆる表示デバイス上で本開示は有用であり、上記効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
従来の仮想空間上での描画においては、全てのオブジェクトが同じ投影方法で描画されてしまう。本開示では、対象となるオブジェクトは平行投影にて描画し、背景は透視投影にて描画する。平行投影されるオブジェクトを、透視投影される背景(周囲の環境)と合成することで、違和感の無い自然な画像を描画することができる。さらに具体的には、視点となる仮想メインカメラからの距離が遠い順に描画順を設定することで、遠近法を用いて描画したような視覚効果を得られる。すなわち、本開示では、平行投影及び透視投影の両方のメリットを享受しつつ遠近法が適用されたような違和感の無い自然な描画を実現し得る。仮想空間上で表示され得るオブジェクトであれば、あらゆる表示デバイス上で本開示は有用であり効果を奏する。
【符号の説明】
1 アニメーションの背景合成装置
3 シーン設定部
5 仮想カメラ合成部