(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160695
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンの排出ガスを削減するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F02C 3/30 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
F02C3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024070123
(22)【出願日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】63/499,364
(32)【優先日】2023-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P.447993
(32)【優先日】2024-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラル、ミヒル ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ピンソン、マーク ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】カゾロフスキー、カミル バジリ
(72)【発明者】
【氏名】オレスチザク、パヴェル トマシュ
(57)【要約】
【課題】動力効率を改善しつつ、ガスタービンエンジンの排出ガスを削減するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】発電システム(10)は、圧縮機セクション(14)と、燃焼器セクション(22)と、タービンセクション(28)とを有するガスタービンエンジン(12)を備える。発電システム(10)は、圧縮機セクション(14)に希釈剤(46)を供給する希釈剤供給システム(200)も備える。供給された希釈剤(46)と周囲空気は圧縮機セクション(14)で一緒に圧縮された後で燃焼器セクション(22)に送られる。かかるシステム(200)を用いてガスタービンエンジン(12)の排出ガス性能の向上を促進する方法も提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(12)に希釈剤(46)を供給する方法であって、当該方法が、
前記ガスタービンエンジン(12)の圧縮機セクション(14)に希釈剤(46)を注入するステップと、
周囲空気を前記圧縮機セクション(14)に導くステップと、
前記ガスタービンエンジン(12)の排出性能の向上を促進するため前記圧縮機セクション(14)内で前記希釈剤(46)と前記周囲空気を一緒に圧縮するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記圧縮機セクション(14)に希釈剤(46)を供給するステップが、前記圧縮機セクション(14)に前記希釈剤(46)を供給する前に、空気分離ユニット(40)から前記圧縮機セクション(14)に前記希釈剤(46)を導くことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧縮機セクション(14)に希釈剤(46)を供給するステップが、補助圧縮機を通して希釈剤(46)を導くことなく、空気分離ユニット(40)から前記圧縮機セクション(14)に前記希釈剤(46)を導くことをさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮機セクション(14)に希釈剤(46)を供給するステップが、前記圧縮機セクション(14)に前記希釈剤(46)として窒素(N2)を供給することをさらに含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記圧縮機セクション(14)に希釈剤(46)を供給するステップが、前記圧縮機セクション(14)に前記希釈剤(46)として二酸化炭素(CO2)を供給することをさらに含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧縮機セクション(14)に希釈剤(46)を供給するステップが、マニホールド(112)を用いて前記圧縮機セクション(14)内に前記希釈剤(46)を分配することをさらに含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
当該方法が、
前記ガスタービンエンジン(12)の排出挙動の指標となる信号をコントローラ(126)によって受信するステップであって、前記信号が、排出センサ(122)、温度センサ(120)、酸素センサ(124)、圧力センサ、光学センサ又は排気スタックを通過する排気ガスの組成を測定するために排気スタックに結合したセンサの1以上から受信される、ステップと、
少なくとも前記信号に基づいて前記圧縮機セクション(14)への前記希釈剤(46)の流れを前記コントローラ(126)によって制御するステップと
をさらに含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも前記信号に基づいて制御するステップが、前記ガスタービンエンジン(12)の排出性能の向上を促進するために、前記圧縮機セクション(14)に供給される前記希釈剤(46)の流動パラメータを選択的に調整することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
発電システムであって、当該発電システムが、
ガスタービンエンジン(12)であって、
入口を含む圧縮機セクション(14)、
前記圧縮機セクション(14)の下流側の燃焼器セクション(22)、及び
前記燃焼器セクション(22)の下流側のタービンセクション(28)であって運転中に排気ガス(32)を排出するタービンセクション(28)
を備えるガスタービンエンジン(12)と、
前記圧縮機セクション(14)に希釈剤(46)を供給する希釈剤供給システム(200)と
を備えており、前記希釈剤(46)と周囲空気は圧縮機セクション(14)で一緒に圧縮された後で下流の燃焼器セクション(22)に送られる、発電システム。
【請求項10】
周囲空気を分離して希釈剤(46)を生成するための空気分離ユニット(40)であって、前記圧縮機セクション(14)と流体連通した空気分離ユニット(40)と、
前記空気分離ユニット(40)から前記圧縮機セクション(14)に導かれる前記希釈剤(46)の流動パラメータの制御に用いられる1以上の流れ制御装置(104)と
をさらに備える、請求項9に記載の発電システム。
【請求項11】
前記圧縮機セクション(14)に前記希釈剤(46)を分配するためのマニホールド(112)をさらに備える、請求項9に記載の発電システム。
【請求項12】
前記希釈剤(46)を貯蔵するための貯蔵タンク(204)であって、前記圧縮機セクション(14)と流体連通した貯蔵タンク(204)と、
前記貯蔵タンク(204)から前記圧縮機セクション(14)への前記希釈剤(46)の流動パラメータを選択的に制御する1以上の流れ制御装置(104)と
をさらに備える、請求項9に記載の発電システム。
【請求項13】
前記希釈剤供給システム(200)が、前記圧縮機セクション(14)に前記希釈剤(46)として窒素(N2)を供給する、請求項9に記載の発電システム。
【請求項14】
前記希釈剤供給システム(200)が、前記圧縮機セクション(14)に前記希釈剤(46)として二酸化炭素(CO2)を供給する、請求項9に記載の発電システム。
【請求項15】
前記タービンセクション(28)の下流側に排気ガスリクレーマシステム(34)をさらに備えており、前記排気ガスリクレーマシステム(34)が、前記排気ガス(32)の一部を前記希釈剤(46)として前記圧縮機セクション(22)に再循環させるように構成されている、請求項9に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、一般に、ガスタービンエンジンに関し、特に、排出ガスを低減するためにガスタービンエンジンの圧縮機セクションに希釈剤を供給するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、産業用及び発電用に広く使用されている。従来のガスタービンエンジンは、圧縮機セクションと、圧縮機セクションの下流側の燃焼器セクションと、燃焼器セクションの下流側のタービンセクションとを備える。周囲空気のような作動流体は、圧縮機セクションに流入して圧縮され、燃焼器セクションに入る。圧縮した作動流体を燃料と混合して燃焼器セクションで燃焼させて、燃焼ガスを発生させ、燃焼ガスはタービンセクションで膨張して軸を回転させ、電気を発生させる。
【0003】
少なくとも幾つかの公知のガスタービンエンジンでは、圧縮された作動流体は、燃焼を維持するのに必要な酸素の量よりも過剰量の酸素を含む。その結果、燃焼器セクション内の温度が上昇し、限定されるものではないが、窒素酸化物(以下、NOx)を始めとする各種の不要排出物が生成しかねない。したがって、燃焼器セクションに入る利用可能な酸素を減らすと、作動温度が調整され、NOx発生量が減少する。
【0004】
当技術分野では、燃焼器セクションでの燃焼温度を調整し、NOx発生量を低減するための様々な方法が知られている。公知の方法の1つは、作動流体に希釈剤を供給して、燃焼前に酸素含有量を減少させることを含む。希釈された作動流体は、依然として燃焼を維持するのに十分な酸素を含む。様々な希釈剤、例えば蒸気、窒素ガス(N2)及び/又は二酸化炭素(CO2)を使用し得る。希釈剤を補助圧縮機で加圧してから、加圧した希釈剤を燃焼器セクションに導入してもよい。補助圧縮機はガスタービンエンジンの圧縮機セクションとは別体であるので、補助圧縮機は1以上のエネルギー源を必要とし、ガスタービンエンジンの全体的動力効率を低下させてしまう。
【0005】
そこで、動力効率を改善しつつ、ガスタービンエンジンのNOx排出を低減することが求められている。既存のタービンエンジンハードウェアの実質的な再構成又は再設計を必要とせずに、ガスタービンエンジン内の火炎温度及び/又はNOxのような排出物をさらに低減させることができれば望ましい。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、ガスタービンエンジンに希釈剤を供給する方法を提供する。本方法は、ガスタービンエンジンの圧縮機セクションに希釈剤を注入し、周囲空気を圧縮機セクションに導くことを含む。本方法は、ガスタービンエンジンの排出性能の向上を促進するために、圧縮機セクション内で希釈剤と周囲空気を一緒に圧縮することをさらに含む。
【0007】
別の態様では、発電システムは、ガスタービンエンジンを含む。ガスタービンエンジンは、入口を含む圧縮機セクションと、圧縮機セクションの下流側の燃焼器セクションと、燃焼器セクションの下流側のタービンセクションとを備える。運転中、タービンセクションから排気ガスが排出される。本システムは、圧縮機セクションに希釈剤を供給する希釈剤供給システムをさらに含んでおり、希薄剤と周囲空気を圧縮機セクションで一緒に圧縮してから、下流の燃焼器セクションに送られる。
【0008】
別の態様では、ガスタービンエンジンを提供する。ガスタービンエンジンは、入口を含む圧縮機セクションと、圧縮機セクションの下流側の燃焼器セクションと、燃焼器セクションの下流側のタービンセクションとを備えており、運転中にタービンセクションから排気ガスが排出される。希釈剤制御システムは、圧縮機セクションに希釈剤を供給する希釈剤供給システムを備えており、希釈剤と周囲空気は、圧縮機セクションで一緒に圧縮されてから、下流の燃焼器セクションに送られる。希釈剤供給システムは、圧縮機セクションに供給される希釈剤の流動パラメータを制御するための1以上の流れ制御装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の上記その他の特徴、態様及び利点については、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
【
図1】公知の補助希釈剤圧縮機を用いて希釈剤を圧縮してからガスタービンエンジンの燃焼器セクションに希釈剤を供給する希釈剤供給システムを含む例示的な発電システムの概略図。
【
図2】改善された排出性能を有し、かつガスタービンエンジンの圧縮機セクションに希釈剤を供給するための希釈剤供給システムを備える代替発電システムの概略図。
【
図3】改善された排出性能を有し、かつガスタービンエンジンの圧縮機セクションに希釈剤を供給するための希釈剤供給システムを備える別の代替発電システムの概略図。
【
図4】改善された排出性能を有し、かつガスタービンエンジンの圧縮機セクション及び燃焼器セクションに希釈剤を供給するための希釈剤供給システムを備える別の別の代替発電システムの概略図。
【
図5】
図2~
図4に示す希釈剤供給システムで使用し得る例示的な希釈剤制御システムのブロック図。
【
図6】
図2~
図5に示す希釈剤供給システムを備えたガスタービンエンジンの排出性能を向上させる例示的方法のフローチャート。
【0010】
別途記載されていない限り、本願に添付した図面は、本開示技術の実施形態の特徴を例示するものである。これらの特徴は、本開示技術の1以上の実施形態を包含する多種多様なシステムに適用できると思料される。そのため、図面は、本明細書で開示する実施形態の実施に必要とされる当業者に公知の慣用的特徴をすべて含んでいるわけではない。複数の図面間で同様の特徴は、同様の符号を用いて示してある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の明細書及び特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義されるものとする幾つかの用語が参照される。単数形で記載したものであっても、前後関係から別途明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。さらに、「一実施形態」という場合、記載された特徴を備える追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈すべきではない。さらに、別途明示されていない限り、特定の性質を有する1以上の構成要素を「備える」、「含む」又は「有する」実施形態は、その性質をもたない追加の構成要素を含んでいてもよい。
【0012】
本明細書で用いる「リアルタイム」という用語は、関連する事象が起こる時刻、所定のデータの測定及び収集時刻、データの処理時刻或いは事象及び環境に対するシステム応答の時刻のいずれかをいう。本明細書に記載の実施形態では、これらの活動及び事象は、実質的に瞬時に起こる。
【0013】
本明細書で用いる「プロセッサ」及び「コンピュータ」という用語並びに例えば「処理デバイス」、「計算装置」及び「コントローラ」などの関連用語は、当技術分野でコンピュータと呼ばれる集積回路に限定されず、広く、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路及び/又は他のプログラマブル回路をいい、これらの用語は本明細書では互換的に用いられる。本明細書に記載の実施形態では、メモリとして、限定されるものではないが、ランダムアクセスメモリ(RAM)のようなコンピュータ可読媒体、フラッシュメモリのようなコンピュータ可読不揮発性媒体が挙げられる。或いは、フロッピーディスク、コンパクトディスク-読取専用メモリ(CD-ROM)、光磁気ディスク(MOD)及び/又はデジタル多用途ディスク(DVD)も使用できる。また、本明細書に記載の実施形態では、追加の入力チャネルは、限定されるものではないが、マウス及びキーボードのようなオペレータインターフェースに関連するコンピュータ周辺機器であってもよい。或いは、例えば、限定されるものではないが、スキャナ又はタッチスクリーンを始めとする他のコンピュータ周辺機器も使用し得る。さらに、本明細書に記載の実施形態では、追加の出力チャネルは、限定されるものではないが、オペレータインターフェースモニタを含むことができる。
【0014】
本明細書に記載の実施形態は、発電システムのエネルギー効率を向上させながら、排出物の発生量の低下を促進するために希釈剤を利用する発電システムに関する。特に、燃焼器セクション内の温度が上昇すると、窒素酸化物(NOx)などの各種の不要排出物が発生しかねない。したがって、燃焼器セクションに入る利用可能な酸素を減らして作動温度を下げると、NOxの発生が概ね減少する。本明細書に記載の実施形態は、排出低減によって気候変動を緩和する。作動流体に希釈剤を供給して作動流体の酸素含有量を低下させ、燃焼温度を制御することによって排出ガスを低減する。
【0015】
本明細書に記載の実施形態では、希釈剤は、ガスタービンエンジンの圧縮機セクションに直接供給され、希釈剤は、周囲空気と共に圧縮機セクションによって圧縮され、圧縮された混合物が燃焼器セクションに送られる。補助圧縮機のような別の圧縮機を用いて希釈剤を圧縮することなく、希釈剤は圧縮機セクションに直接導入される。したがって、本明細書に記載の実施形態の少なくとも幾つかでは、ガスタービンエンジンの圧縮機セクションとは別個の、希釈剤を圧縮するための補助圧縮機を駆動するための追加動力は必要とされない。他の実施形態では、希釈剤の少なくとも一部は、圧縮機セクションに直接供給され、別の部分は補助圧縮機に送ってから燃焼器セクションに導入される。圧縮機セクション及び燃焼器セクションに供給される希釈剤の部分の相対比は、発電システムの運転ニーズ及び排出目標に基づいて調整し得る。
【0016】
次に図面を参照すると、
図1は発電システム10の概略を示す。図に示す通り、発電システム10は一般にガスタービンエンジン12を含む。ガスタービンエンジン12は、一般に、作動流体としての周囲空気18を受け入れる入口16を有する圧縮機セクション14を備える。周囲空気18は、圧縮機セクション14を流れるにつれて圧縮される。圧縮作動流体20は、圧縮機セクション14の出口21を通って圧縮機セクション14から出て、圧縮機セクション14の下流側の燃焼器セクション22に送られる。図には燃焼器セクション22は1個しか示していないが、当業者には明らかな通り、ガスタービンエンジン12は、ガスタービンエンジン12の軸方向中心線の周りに環状パターンで配置された複数の燃焼器セクション(例えば燃焼器缶)を含んでいてもよい。燃焼器セクション22は、少なくとも第1段と第2段を含んでいて、中間タービン段(図示せず)で隔てられたステージング式燃焼器であってもよい。或いは、燃焼器セクション22は、同一燃焼器セクション22内の軸方向に隔てられた2以上の燃焼域に燃料が導入される軸方向ステージング式燃焼器(axially staged combustor)であってもよい。
【0017】
燃焼器セクション22と流体連通する燃料供給システム26は、燃料源27から燃焼器セクション22に燃料を供給する。圧縮作動流体20は燃料と混合され、燃焼器セクション22内で可燃性混合物を形成する。可燃性混合物は、燃焼器セクション22の燃焼ゾーン内で点火されて、高温及び高速の燃焼ガス29を発生させる。燃焼ガス29は、燃焼器セクション22を出て、燃焼器セクション22の下流側のタービンセクション28を通って急激に膨張する。燃焼ガス29は、シャフト30に結合した1列以上の回転可能なブレード(図示せず)に運動及び熱エネルギーを与えてシャフト30を回転させ、機械的仕事を生じる。シャフト30は、発電のため又は電力/トルクの抽出のため負荷及び/又は発電機(図示せず)に結合し得る。燃焼ガスは、排気ガス32としてタービンセクション28から流出する。幾つかの実施形態では、排気ガス32は、排気ガス32から不要な燃焼副生成物(例えばNOx)を除去するために、排出制御処理(例えば選択的触媒還元)を経てもよい。
【0018】
例示的な実施形態では、発電システム10は、排気ガスリクレーマ34(本明細書では「EGRシステム34」という)を含む。排気ガス32は、以下でさらに詳しく説明する通り、他の補助的な目的に使用し得る。
【0019】
発電システム10は、周囲空気18を受け取って、周囲空気18を酸素ガス(例えばO
2)及び1以上の副生成物に分離する空気分離ユニット40を含んでいてもよい。空気分離ユニット40の副生成物は、窒素ガス(例えばN
2)などの希釈剤46を含んでいてもよいが、これらは貯蔵してもよいし及び/又は他の用途に使用してもよい。発電システム10では、副生成物は希釈剤供給システム38に使用される。
図1において、希釈剤供給システム38は、希釈剤圧縮機36を含んでいてもよい。希釈剤圧縮機36は、希釈剤46を圧縮してから、圧縮された希釈剤46を燃焼器セクション22に導く。かかる実施形態では、希釈剤圧縮機36は、圧縮機セクション14とは別個の独立した補助圧縮機であり、動力源(図示せず)によって駆動される。例えば、かかる実施形態では、希釈剤圧縮機36は、ガスタービンエンジン12で生成した動力によって駆動され、ガスタービンエンジン12での寄生エネルギー損失を表す。
【0020】
幾つかの実施形態では、発電システム10は、メタン及び酸素からの二酸化炭素及び水素(例えばH2)への変換を促進する燃料改質器42、例えばメタン又は天然ガス改質器を含む。運転中、改質器42は、天然ガス44の流れ(例えば燃料源27から)と空気分離ユニット40で生成した酸素の流れとを受け取る。得られる水素流は燃焼器セクション22に送られ、水素は燃料源として使用することができ、或いは水素は別個の燃料源を補完することができる。燃焼器セクション22への水素の供給は、燃料供給システム26に組み込まれてもよいし、及び/又は水素の供給は燃料供給システム26を補完してもよい。或いは発電システム10は、発電システム10を本明細書に記載の通り機能させることができる適切な燃料供給システムを含んでいてもよい。
【0021】
図2~
図6を参照して説明する例示的な実施形態では、希釈剤46は、限定されるものではないが、酸化剤、水、蒸気、及び/又は窒素(例えばN
2)のような不活性ガス、及び/又は二酸化炭素(CO
2)を含むことができる。本明細書に記載の実施形態では、希釈剤46は、燃焼プロセスを支持する物質及び/又は窒素酸化物(NO
x)などの望ましくない排出物の低減を促進する物質を含むことができる。
【0022】
ここで
図2を参照すると、発電システム10は、圧縮機セクション14と流体連結した例示的な希釈剤供給システム100を含んでおり、希釈剤供給システム100で圧縮機セクション14に希釈剤46を供給することができる。さらに、例示的な実施形態では、希釈剤供給システム100は、希釈剤46を圧縮機セクション14に導く1以上の導管、パイプ、ダクト及び/又はチューブ(本明細書では導管102と総称する)を含んでいる。幾つかの実施形態では、重力を利用して、希釈剤46を導管102を通して圧縮機セクション14に向かって導く。幾つかの実施形態では、空気分離ユニット40は、周囲空気18の圧力よりも大きい圧力及び/又は圧縮機セクション14の入口16における周囲空気18の圧力よりも大きい圧力で窒素を吐出する。この増大した窒素圧によって、窒素は導管102を通って圧縮機セクション14に向かう。
【0023】
代替的及び/又は付加的に、希釈剤供給システム100は、圧縮機セクション14への希釈剤46の移動を制御する1以上の流れ制御装置104を含む。例えば、流れ制御装置104は、圧縮機セクション14に供給される希釈剤46の速度、希釈剤46の質量流量及び/又は希釈剤46の体積の1以上を制御し得る。流れ制御装置104は、1以上のポンプ106及び/又は弁108を含んでいてもよい。加えて、希釈剤供給システム100は、導管102を通って移動する希釈剤46の速度及び/又は質量流量などの希釈剤46の流動パラメータの測定に使用される流量測定装置110(例えば流量計)を含んでいてもよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、希釈剤46は、排気ガス32を(例えば空気分離ユニット40からの窒素と共に)含んでいてもよいし、或いは希釈剤46は完全に排気ガス32又は排気ガスの成分化学種(例えばCO
2)から構成されていてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、希釈剤供給システム100は、タービンセクション28を出る排気ガス32を圧縮機セクション14の入口16に向けて(例えばマニホールド112を介して)循環させる。代替的及び/又は付加的に、希釈剤供給システム100は、希釈剤圧縮機36(
図1)のような補助圧縮機を用いて排気ガス32を圧縮することなく、圧縮機セクション14に排気ガス32を導入してもよい。
【0025】
例示的な実施形態では、希釈剤供給システム100は、圧縮機セクション14の入口16に希釈剤46を分配する1以上の出口114を含むマニホールド112を含む。幾つかの実施形態では、希釈剤供給システム100は、入口16の近傍(例えば入口16から約1m未満、約0.5m未満又は約0.25m未満)で圧縮機セクション14に希釈剤46を供給し得る。幾つかの実施形態では、希釈剤供給システム100は、圧縮機セクション14の上流側の任意の適切な位置に希釈剤46を供給する。希釈剤46は、入口16に入る周囲空気18の流れ方向と略同じ方向(例えば平行)の流れ方向に希釈剤46が圧縮機セクション14の入口16に入るように圧縮機セクション14に導入し得る。こうして、希釈剤46は、圧縮機セクション14に入る周囲空気18と乱流を生じることなく圧縮機セクション14に導入される。
【0026】
幾つかの実施形態では、発電システム10は、圧縮機セクション14の入口16の近傍に配置された空気濾過システム(図示せず)を含む。空気濾過システムは、空気を濾過して周囲空気18中の不純物及び/又はごみを除去してから、濾過した空気を入口16に導入する。かかる実施形態では、希釈剤供給システム100は、希釈剤46を空気濾過システムに導入し得る。例えば、マニホールド112は、希釈剤46を空気濾過システムの入口に分配し得る。
【0027】
代替的及び/又は付加的に、希釈剤供給システム100は圧縮機セクション14の入口16と出口21の間の任意の中間位置に希釈剤46を導入してもよく、圧縮機セクション14で希釈剤46を圧縮してから燃焼器セクション22に送るようにしてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、希釈剤供給システム100は、圧縮機セクション14の出口21の上流側の任意の位置で圧縮機セクション14に希釈剤46を導入し得る。
【0028】
幾つかの実施形態では、希釈剤供給システム100は、希釈剤46を圧縮機セクション14に注入するの1以上のノズル(図示せず)を、圧縮機セクション14の入口16又はその近傍に、又は圧縮機セクション14の出口21の上流側の任意の中間位置に含んでいてもよい。1以上のノズルは、マニホールド112の出口114を含んでいてもよい。代替的な実施形態では、希釈剤46を周囲空気18と混合してから、得られる混合物を入口16に送ってもよい。周囲空気18と希釈剤46(排気ガス32を含んでいてもよいし或いは完全に排気ガス32から構成されたものであってもよい)の混合及び圧縮された流れ25は次いで燃焼器セクション22に供給される。
【0029】
希釈剤供給システム100は、発電システム10の排出性能に関連する状態を検出するための1以上のセンサ118を含んでいてもよい。センサ118は、燃焼器入口温度、バーナ温度、及び/又は燃焼器金属温度のような燃焼器セクション22内の作動温度を測定する温度センサ120を含んでいてもよい。代替的な実施形態では、センサ118は、タービンセクション28の作動パラメータ、例えば、局所的なタービン作動温度、タービン入口温度及び/又はタービン出口温度を検出するために、タービンセクション28に結合してもよい。さらに別の実施形態では、センサ118は、燃焼器セクション22及び/又はタービンセクション28内の作動圧力を測定する圧力センサであってもよい。センサ118は、希釈剤供給システム100を本明細書に記載の通り機能させることができるガスタービンエンジン12の他の作動パラメータの測定値を得るのに用いられる他のセンサであってもよい。例えば、センサ118は、排気ガス32中の1以上の汚染物質(例えばCO及び/又はNOx)のレベルを検出する排出センサ122、及び/又は酸素レベル(例えば作動流体18中の燃焼を支持するために利用可能な酸素)を検出する酸素センサ124を含んでいてもよい。例えば、酸素センサ124は、圧縮機入口16、圧縮機出口21及び/又は燃焼器セクション22に配置し得る。酸素センサ124は、希釈剤供給システム100を本明細書に記載の通り機能させることができる任意の位置に配置し得る。
【0030】
センサ118は、ガスタービンエンジン12の性能に関連する1以上のパラメータを制御するコントローラ126に通信可能に結合し得る。コントローラ126は、以下で説明する通り、流れ制御装置104に通信可能に結合し得る。コントローラ126は、1以上のセンサ118から受信した入力信号に基づいて、流れ制御装置104の調整に使用される1以上の出力信号を送信し得る。コントローラ126は、流量測定装置110にも通信可能に結合し得る。制御装置126は、流量測定装置110から受信した入力信号を、流れ制御装置104に送信される入力信号に対するフィードバック出力信号として使用してもよい。
【0031】
センサ118は、希釈剤供給システム100を本明細書に記載の通り機能させることができる他のセンサを含んでいてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、センサ118は、燃焼器セクション22内の火炎強度を検出する光学センサを含んでいてもよい。光センサは、火炎の強度に応じた信号をコントローラ126に送信する。幾つかの実施形態では、センサ118は、タービンセクション28から出る排気ガス32と相互作用するセンサを含む。例えば、センサ118は、タービンセクション28の下流側の排気ダクト(図示せず)に好適に結合し得る。付加的又は代替的に、センサ118は、選択的触媒還元(SCR)処理システム(図示せず)から出る排気ガス32の温度及び/又は組成の測定値を得るために、排気スタック(図示せず)に結合していてもよい。センサ118は、付加的又は代替的に、排気ガス32中の未燃炭化水素の量を検知してもよい。センサ118は、発電システム10を本明細書に記載の通り機能させることができる排気ガス32の他の測定値を取得してもよい。
【0032】
図3を参照すると、希釈剤供給システム200を含む発電システム10の別の例示的な実施形態が示してある。希釈剤供給システム200は、ある体積の希釈剤46を貯蔵する貯蔵タンク204を含む。貯蔵タンク204は(例えば貯蔵タンク204から圧縮機セクション14に流体を導くのに使用される1以上の導管102を介して)圧縮機セクション14と流体連通して連結される。希釈剤供給システム200は、流れ制御装置104(例えばポンプ106、弁108及び流量測定装置110)を含む。希釈剤供給システム200は、圧縮機セクション14に希釈剤46を供給するためのマニホールド112及び/又は1以上のノズル(図示せず)も含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、貯蔵タンク204は、空気分離ユニット40(
図2)と流体連通しており、希釈剤46は、空気分離ユニット40から貯蔵タンク204に移送されて貯蔵される。例えば、希釈剤46は、流れ制御装置104及び/又は重力を用いて、空気分離ユニット40から導管102を介して貯蔵タンク204に送られ、ガスタービンエンジン12の排出性能に基づいて圧縮機セクション14に希釈剤46を供給することが必要とされるまで貯蔵される。
【0034】
図2及び
図3に示す例示的な実施形態では、希釈剤供給システム100及び200は、
図1に示す発電システム10のように周囲空気18の圧縮とは別個に希釈剤46の圧縮に用いられる補助圧縮機(例えば希釈剤圧縮機36)での圧縮を必要とせずに、発電システム10に希釈剤46を供給する。換言すると、
図2及び
図3の例示的な実施形態では、それ自体の動力源とする及び/又はガスタービンエンジン12から動力を抽出する追加及び/又は別個の圧縮機は存在しない。希釈剤46は圧縮機セクション14に直接供給され、そこで希釈剤46と周囲空気18を圧縮し、得られる混合物を燃焼器セクション22に送る。したがって、本明細書に記載の実施形態は、発電システム10のエネルギー効率を改善しながら、排出性能の改善を促進する。代替的及び/又は付加的に、希釈剤供給システム100及び200は、希釈剤圧縮機36(
図2及び
図3)のような補助圧縮機を用いて排気ガス32を圧縮することなく、圧縮機セクション14に排気ガス32を導入してもよい。例えば、排気ガス32は、(例えば空気分離ユニット40及び/又は貯蔵タンク204から)圧縮機セクション14に供給される別の希釈剤46を補完するために(例えば別の希釈剤46に追加して)使用してもよい。排気ガス32は、圧縮機セクション14に導入する前に希釈剤46と混合してもよいし、或いは排気ガス32と希釈剤46を一緒にマニホールド112に通してもよい。別の例では、排気ガス32を希釈剤46として圧縮機セクション14に単独で供給してもよい。
【0035】
図4は、発電システム10で使用するための別の例示的な希釈剤供給システム300を示す。希釈剤供給システム300は、圧縮機希釈剤流路302と燃焼器希釈剤流路304とを有する。圧縮機希釈剤流路302は、希釈剤46の第1の部分を圧縮機セクション14に供給する。燃焼器希釈剤流路304は、希釈剤46の第2の部分を例えば希釈剤圧縮機36を介して燃焼器セクション22に供給する。第1の部分と第2の部分の相対比は、発電システム10の運転ニーズ及び/又は排出性能に基づいて選択的に調整し得る。幾つかの実施形態では、第1の部分は、第2の部分と比較して希釈剤46の総流量の高い割合を占め、その結果、希釈剤46の過半が圧縮機セクション14に直接供給され、残る少数の希釈剤46は希釈剤圧縮機36に供給された後、圧縮された希釈剤46が燃焼器セクション22に供給される。希釈剤圧縮機36で圧縮されるのは希釈剤46の少数部分だけなので、希釈剤圧縮機36はそれに応じたサイズとすることができ、資本及び運転費用を削減するとともに、ガスタービンエンジン12からの寄生電力損失を低減することができる。
【0036】
希釈剤供給システム300は、圧縮機希釈剤流路302及び燃焼器希釈剤流路304をそれぞれ流れる希釈剤46の第1及び第2の部分の相対量の制御及び/又は調整に使用される1以上の制御弁310(例えばスプリッタ弁及び/又は二方弁)を含んでいてもよい。制御弁310は、コントローラ126と通信可能に結合している。コントローラ126は、センサ118から受信した1以上の信号に基づいて、1以上の信号を制御弁310に送信し得る。希釈剤供給システム300は、圧縮機及び燃焼器希釈剤流路302,304の各々を通る希釈剤46の流れの一方又は両方の流動パラメータを測定する1以上の流量測定装置110を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、圧縮機希釈剤流路302及び燃焼器希釈剤流路304は独立していて別個の経路を有しており、希釈剤流路302及び304は、各々、それらを通過する希釈剤46の流れを制御するための独自の流れ制御装置104を有する。代替的及び/又は付加的に、希釈剤供給システム400は、希釈剤圧縮機36(
図4)のような補助圧縮機を用いて排気ガス32を圧縮することなく、圧縮機セクション14に排気ガス32を導入してもよい。例えば、排気ガス32は、圧縮機セクション14に供給される別の希釈剤46を補完するために(例えば別の希釈剤46に追加して)使用してもよい。排気ガス32は、圧縮機セクション14に導入する前に希釈剤46と混合してもよいし、或いは排気ガス32と希釈剤46を一緒にマニホールド112に通してもよい。別の例では、排気ガス32は、圧縮機セクション14に希釈剤46として単独で供給してもよい。
【0037】
図5は、コントローラ126を含む希釈剤制御システム500の例示的なブロック図を示す。希釈剤制御システム500は、圧縮機セクション14への希釈剤46の供給を制御する。例えば、システム500は、圧縮機セクション14に供給される希釈剤46の供給速度、質量流量及び/又は体積を決定し得る。幾つかの実施形態では、システム500は、発電運転の少なくとも一部の期間、一定の供給速度、一定の質量流量、一定の希釈剤46対周囲空気18比及び/又は一定の希釈剤46対燃料比で希釈剤46を供給する。幾つかの実施形態では、システム500は、燃焼前の較正期間中に希釈剤46の適切な供給を決定してもよく、システム500は、次いで、発電運転の少なくとも一部の期間、決定した希釈剤46の量及び/又は比率を維持してもよい。代替的な実施形態では、システム500は、発電運転の少なくとも一部の期間に希釈剤46の供給を調整してもよい。例えば、システム500は、センサ118で検出される作動パラメータ及び/又は汚染物質発生量に基づいて希釈剤46の供給を調整してもよい。
【0038】
コントローラ126は、メモリ504に通信可能に結合したプロセッサ502を含む。メモリ504は、圧縮機セクション14に供給される希釈剤46を制御するための動作を実行するためにプロセッサ502によってアクセスされる非一時的なコンピュータ可読媒体及びプログラムを含んでいてもよい。コントローラ126は、1以上のセンサ118に通信可能に結合され、センサ118から1以上の入力信号を受信するが、この信号には、ガスタービンエンジン12の排出性能に関する測定値が含まれる。
【0039】
以上で詳しく説明した通り、1以上のセンサ118は、温度センサ120、排出センサ122、酸素センサ124、及び/又はガスタービンエンジン12の排出性能に関連するパラメータを測定するための任意の適切なセンサを含んでいてもよい。コントローラ126は、プロセッサ502を使用して、センサ118から受信した1以上の入力信号を処理し、流れ制御装置104及び/又は制御弁310を調整するために必要な1以上の出力信号を決定する。
【0040】
幾つかの実施形態では、希釈剤制御システム500は、作動流体18中に存在する利用可能な酸素の割合の制御し、もって燃焼温度を制御するために、圧縮機セクション14に供給される希釈剤46の流動パラメータを選択的に調整する。例えば、圧縮機セクション14に供給される希釈剤46の質量流量を増加させると、周囲空気18に対する希釈剤46の相対比が増加して作動流体18中に存在する利用可能な酸素の割合が減少する。
【0041】
幾つかの実施形態では、コントローラ126で実行される動作は、希釈剤46の流動パラメータを調整するための制御アルゴリズムの適用を含んでいてもよい。例えば、一実施形態では、コントローラ126は、流れ制御装置104及び制御弁310に通信可能に結合される。コントローラ126は、圧縮器セクション14に(例えば導管102を介して)導かれる希釈剤46の流動パラメータの調整に資するため、出力信号を流れ制御装置104に送信し得る。同様に、コントローラ126は、希釈剤46の第1の部分と希釈剤46の第2の部分の相対比を調整するために、1以上の出力信号を制御弁310に送信し得る。コントローラ126は、例えばセンサ118から受信した信号に基づいて、第1の部分と第2の部分の相対比を決定し得る。コントローラ126は、発電運転前(例えば較正期間中)に第1の部分と第2の部分の相対比を決定してもよく、しかる後、コントローラ126は、発電プロセスの少なくとも一部の期間、希釈剤46の第1の部分と第2の部分の相対比を維持してもよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、コントローラ126は、ガスタービンエンジン12の運転モデルを含んでいても及び/又は生成してもよい。コントローラ126は、流れ制御装置104及び/又は制御弁310に送信すべき出力信号を生成するために、排出性能パラメータの測定値を運転モデルと比較してもよい。運転モデルは、ガスタービンエンジン12の運転境界及び排出境界を規定し得る。幾つかの実施形態では、コントローラ126は、メモリ504に、発電システム10の排出性能に関連する1以上の閾値を格納し得る。コントローラ126は、入力信号を1以上の所定の閾値と比較し得る。コントローラ126が、入力信号が1以上の閾値に達した及び/又は超えたと決定した場合、コントローラ126は、出力信号を決定し、流れ制御装置104及び/又は制御弁310に送信し得る。
【0043】
幾つかの実施形態では、出力信号は、発電システム10の発電運転前の較正期間中にコントローラ126によって決定し得る。較正中に決定された出力信号は、発電運転中に圧縮機セクション14に供給される希釈剤46の1以上の流動パラメータを設定するのに使用し得る。換言すると、場合によっては、希釈剤46の流動パラメータを制御する出力信号は、発電運転の実施中、コントローラ126によって一定に維持してもよい。
【0044】
図6は、排出性能を向上させるためガスタービンエンジン(例えばガスタービンエンジン12)に供給される希釈剤46を制御する例示的な方法600のフローチャートである。
図2~
図5を参照すると、方法600は、ガスタービンエンジン12の圧縮機セクション14に希釈剤466を供給すること(602)を含む。幾つかの実施形態では、希釈剤46は、空気分離ユニット40から圧縮機セクション14に供給(602)される。幾つかの他の実施形態では、希釈剤46は、貯蔵タンク204から圧縮機セクション14に供給(602)され、貯蔵タンク204は空気分離ユニット40と結合していても結合していなくてもよい。希釈剤46の供給(602)は、流れ制御装置104その他の適切な構造及び装置を用いて、希釈剤46を導管102を通して導いて圧縮機セクション14に供給することを含んでいてもよい。希釈剤46の供給(602)は、マニホールド112を用いて圧縮機セクション14に希釈剤46を分配することを含んでいてもよい。
【0045】
方法600は、圧縮機セクション14で希釈剤46と周囲空気18を一緒に圧縮し、圧縮された混合物を燃焼器セクション22で燃焼させること(604)を含む。方法600は、センサ118を用いて、ガスタービンエンジン12に関連する排出パラメータを検出すること(606)を含んでいてもよい。検出(606)は、排出センサ122を用いて排出レベルを検出すること、温度センサ120を用いて燃焼温度を検出すること及び/又は酸素センサ124を用いて酸素レベルを検出することを含んでいてもよい。
【0046】
方法600は、制御装置126によって、希釈剤46の流動パラメータを制御すること(608)を含む。制御(608)は、流れ制御装置104及び/又は制御弁310に送信すべき1以上の出力信号を決定することを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、制御(608)は、センサ118から受信した1以上の入力信号に少なくとも部分的に基づいて、流れ制御装置104及び/又は制御弁310に送信すべき1以上の出力信号を決定することを含んでいてもよい。コントローラ126による希釈剤46の流動パラメータの制御(608)は、燃焼プロセスの少なくとも一部で希釈剤46の流動パラメータを一定に保つことを含んでいてもよい。
【0047】
幾つかの実施形態では、制御ステップ(608)において、方法600は、圧縮機希釈剤流路302に供給される希釈剤46の第1の部分及び燃焼器希釈剤流路304に供給される希釈剤46の第2の部分(例えば第1の部分と第2の部分の相対比)を決定することを含んでいてもよい。決定は、センサ118から受信した1以上の入力信号に基づいて制御弁310に送信すべき1以上の出力信号を決定することを含んでいてもよい。決定は、発電プロセスの少なくとも一部で圧縮機希釈剤流路302を通る第1の部分と燃焼器希釈剤流路304を通る第2の部分との相対比を維持するために制御弁310に送信される1以上の出力信号を決定することを含んでいてもよい。
【0048】
上述のシステム及び方法は、排出性能を改善するためにガスタービンエンジンの圧縮機セクションに希釈剤を供給することを含む。希釈剤の供給及び排出性能は、ガスタービンエンジンで検出される排出挙動及び/又は電力消費量に応じて希釈剤の流動パラメータを調整することによって制御し得る。したがって、本明細書に記載のシステム及び方法は、ガスタービンエンジンの排出ガス及び電力効率(メガワット)の最適化に資する。少なくとも幾つかの実施形態では、ガスタービンエンジンは、希釈剤を圧縮しておいてから圧縮した希釈剤を燃焼器セクションに供給する補助圧縮機のための追加の電力消費を必要としない。本明細書に記載の実施形態では、希釈剤は圧縮剤セクションに直接供給され、圧縮機セクションで希釈剤と周囲空気を一緒に圧縮してから、圧縮された作動流体を燃焼器セクションに渡す。
【0049】
本明細書に記載のシステム及び方法の例示的な技術的効果としては、限定されるものではないが、(a)補助圧縮機の必要性がないので、電力消費量が抑制され、ガスタービンエンジンの全体的動力効率の改善が促進されること、(b)圧縮機セクションで圧縮された作動流体に希釈剤を供給することによってガスタービンエンジンの排出性能の向上が促進されることが挙げられる。
【0050】
本明細書に記載の方法及びシステムは、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されるものではない。例えば、各システムの構成要素及び/又は各方法のステップは、本明細書に記載された他の構成要素及び/又はステップとは独立かつ別個に利用し得る。例えば、方法及びシステムは、他のタービンシステムと組合せて使用することもでき、本明細書に記載されているようなガスタービンエンジンでの実施だけに限定されるものではない。例示的な実施形態は、他の多くのタービン用途に関して実施及び利用し得る。
【0051】
本開示技術の追加の態様を、以下の実施態様項に示す。
[実施態様項1]
第1の態様では、ガスタービンエンジンに希釈剤を供給する方法を提供するが、本方法は、ガスタービンエンジンの圧縮機セクションに希釈剤を注入するステップと、周囲空気を圧縮機セクションに導くステップと、ガスタービンエンジンの排出性能の向上を促進するため圧縮機セクション内で希釈剤と周囲空気を一緒に圧縮するステップとを含む。
[実施態様項2]
圧縮機セクションに希釈剤を供給するステップが、空気分離ユニットから圧縮機セクションに希釈剤を導くことをさらに含む、実施態様項1に記載の方法。
[実施態様項3]
圧縮機セクションに希釈剤を供給するステップが、補助圧縮機を通して希釈剤を導くことなく、空気分離ユニットから圧縮機セクションに希釈剤を導くことをさらに含む、実施態様項1又は実施態様項2に記載の方法。
[実施態様項4]
圧縮機セクションに希釈剤を供給するステップが、圧縮機セクションに希釈剤として窒素N2を供給することをさらに含む、実施態様項1乃至実施態様項3のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項5]
圧縮機セクションに希釈剤を供給するステップが、圧縮機セクションに希釈剤として二酸化炭素CO2を供給することをさらに含む、実施態様項1乃至実施態様項4のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項6]
圧縮機セクションに希釈剤を供給するステップが、マニホールドを用いて圧縮機セクション内に希釈剤を分配することをさらに含む、実施態様項1乃至実施態様項5のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項7]
当該方法が、ガスタービンエンジンの排出挙動の指標となる信号をコントローラによって受信すること、及び少なくとも信号に基づいて圧縮機セクションへの希釈剤の流れをコントローラによって制御することを含む、実施態様項1乃至実施態様項6のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項8]
信号を受信することが、排出センサ、温度センサ及び酸素センサの1以上からの信号を受信することをさらに含む、実施態様項7に記載の方法。
[実施態様項9]
少なくとも信号に基づいて制御することが、ガスタービンエンジンの排出性能の向上を促進するために、圧縮機セクションに供給される希釈剤の流動パラメータを選択的に調整することを含む、実施態様項7に記載の方法。
[実施態様項10]
本開示の別の態様では、発電システムは、発電システムは、入口を含む圧縮機セクション、圧縮機セクションの下流側の燃焼器セクション、及び燃焼器セクションの下流側のタービンセクションであって運転中に排気ガスを排出するタービンセクションを備えるガスタービンエンジンと、圧縮機セクションに希釈剤を供給する希釈剤供給システムとを備えており、希釈剤と周囲空気は圧縮機セクションで一緒に圧縮された後で下流の燃焼器セクションに送られる。
[実施態様項11]
周囲空気を分離して希釈剤を生成するための空気分離ユニットであって、圧縮機セクションと流体連通した空気分離ユニットと、空気分離ユニットから圧縮機セクションに導かれる希釈剤の流動パラメータの制御に用いられる1以上の流れ制御装置とをさらに備える、実施態様項10に記載の発電システム。
[実施態様項12]
圧縮機セクションに希釈剤を分配するためのマニホールドをさらに備える、実施態様項10又は実施態様項11に記載の発電システム。
[実施態様項13]
希釈剤を貯蔵するための貯蔵タンクであって、圧縮機セクションと流体連通した貯蔵タンクと、貯蔵タンクから圧縮機セクションへの希釈剤の流動パラメータを選択的に制御する1以上の流れ制御装置とをさらに備える、実施態様項10乃至実施態様項12のいずれか1項に記載の発電システム。
[実施態様項14]
希釈剤供給システムが、圧縮機セクションに希釈剤として窒素N2を供給する、実施態様項10乃至実施態様項13のいずれか1項に記載の発電システム。
[実施態様項15]
希釈剤供給システムが、圧縮機セクションに希釈剤として二酸化炭素CO2を供給する、実施態様項10乃至実施態様項14のいずれか1項に記載の発電システム。
[実施態様項16]
タービンセクションの下流側に排気ガスリクレーマシステムをさらに備えており、排気ガスリクレーマシステムが、排気ガスの一部を希釈剤として圧縮機セクションに再循環させるように構成されている、実施態様項10乃至実施態様項15のいずれか1項に記載の発電システム。
[実施態様項17]
さらに別の実施態様では、ガスタービンエンジンは、入口を含む圧縮機セクションと、圧縮機セクションの下流側の燃焼器セクションと、燃焼器セクションの下流側のタービンセクションであって運転中に排気ガスを排出するタービンセクションと、圧縮機セクションに希釈剤を供給する希釈剤供給システムとを備えており、希釈剤と周囲空気は圧縮機セクションで一緒に圧縮された後で下流の燃焼器セクションに送られ、希釈供給システムは、圧縮機セクションに供給される希釈剤の流動パラメータを制御する1以上の流れ制御装置を備える。
[実施態様項18]
排出センサ及び1以上の流れ制御装置と通信可能に結合したコントローラをさらに備えており、コントローラが、圧縮機セクションへの希釈剤としての窒素N2の流れを制御するように構成される、実施態様項17に記載のガスタービンエンジン。
[実施態様項19]
希釈剤供給システムが、圧縮機セクション内に希釈剤を分配するように構成されたマニホールドを備える、実施態様項17又は実施態様項18に記載のガスタービンエンジン。
[実施態様項20]
希釈剤供給システムが、排出センサ、温度センサ及び酸素センサの1以上をさらに備えており、排出センサ、温度センサ及び酸素センサの1以上がコントローラに通信可能に結合されている、実施態様項17乃至実施態様項19のいずれか1項に記載のガスタービンエンジン。
【0052】
本開示の様々な実施形態の特定の特徴が、ある図面には記載され、他の図面には記載されていないこともあるが、これは便宜上のものにすぎない。本開示技術の原理に則して、ある図面に記載された特徴を、他の図面に記載された特徴との組合せとして参照及び/又は特許請求の範囲に記載することができる。
【0053】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、当業者が本発明を実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。システム及び方法の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に生じる他の例を含んでいてもよい。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と非本質的な差しかない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0054】
10 発電システム
12 ガスタービンエンジン
14 圧縮機セクション
18 周囲空気
22 燃焼器セクション
26 燃料供給システム
28 タービンセクション
34 排気ガスリクレーマシステム
40 空気分離ユニット
42 燃料改質器
46 希釈剤
104 流れ制御装置
112 マニホールド
120 温度センサ
122 排出センサ
124 酸素センサ
200 希釈剤供給システム
204 貯蔵タンク
【外国語明細書】