(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160699
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】時計用ムーブメント、及びそのようなムーブメントの為のモジュール
(51)【国際特許分類】
G04B 33/10 20060101AFI20241107BHJP
G04B 1/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G04B33/10 Z
G04B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074123
(22)【出願日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】23170924.7
(32)【優先日】2023-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522286159
【氏名又は名称】フレクサス メカニズムス アイピー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Flexous Mechanisms IP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】ジェフレ,エオラ ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルラー,ロビン フランセス ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヨヴィッチ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ダニング,ヘラルド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モノリシックコンプライアント機構を備えた時計用ムーブメントを提供する。
【解決手段】時計用ムーブメント1であって、ムーブメント1は、ムーブメント1の機能又は機能の少なくとも一部の為のコンプライアント機構、好ましくはモノリシックコンプライアント機構3、を備えている第1の層2と、エネルギーストレージ16と、機能又は機能の一部を実行する為に、エネルギーストレージ16からコンプライアント機構3にエネルギーを伝達する為の及び/又はコンプライアント機構3からエネルギーストレージ16にエネルギーを伝達する為の歯車列17を備えている第2の層15とを備えており、ここで、第1の層2は、ムーブメント1の更なる機能又は更なる機能の少なくとも一部の為の更なるコンプライアント機構20、30、40を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用ムーブメント(1)であって、前記ムーブメントは、該ムーブメントの機能又は機能の少なくとも一部の為のコンプライアント機構、好ましくはモノリシックコンプライアント機構(3)、を備えている第1の層(2)と、エネルギーストレージ(16)と、前記機能又は前記機能の一部を実行する為に前記エネルギーストレージから前記コンプライアント機構にエネルギーを伝達する為の及び/又は前記コンプライアント機構から前記エネルギーストレージにエネルギーを伝達する為の歯車列(17)を備えている第2の層(15)とを備えており、ここで、前記第1の層(2)は、前記ムーブメントの更なる機能又は更なる機能の少なくとも一部の為の更なるコンプライアント機構(20,30,40)を備えていることを特徴とする、前記ムーブメント(1)。
【請求項2】
前記更なるコンプライアント機構(20,30,40)が、前記更なる機能を実行する為に前記エネルギーストレージ(16)から前記更なるコンプライアント機構(20,30,40)にエネルギーを伝達する為の及び/又は前記更なるコンプライアント機構(40)から前記エネルギーストレージ(16)にエネルギーを伝達する為の前記歯車列(17)に接続されている又は該歯車列(17)に接続可能である、請求項1に記載のムーブメント(1)。
【請求項3】
前記第1の層(2)がフレームを提供し、及び前記コンプライアント機構(3;20,30,40)のうちの2以上が前記フレームによって及び/又は前記フレーム内で支持されている、請求項1又は2に記載のムーブメント(1)。
【請求項4】
前記コンプライアント機構(3;20,30,40)のうちの2以上が、弾性リンクによって前記フレームにおいて支持されている、請求項3に記載のムーブメント(1)。
【請求項5】
前記層内の、前記コンプライアント機構(3;20,30,40)のうちの2以上及び存在する場合には前記フレーム及び/又は弾性リンクがモノリシックであり、好ましくは、シリコン、ベリリウム銅又は鋼から作られる、請求項1~4のいずれか1項に記載のムーブメント(1)。
【請求項6】
前記第2の層(15)における前記歯車列(17)が、慣用的な歯車(17)及び/又は慣用的なぜんまい(16)を備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載のムーブメント(1)。
【請求項7】
前記歯車(17)及び/又はぜんまい(16)が、慣用的な軸受におけるブリッジ又はプレートによって少なくとも片側で支持されており、及び/又は前記第1の層(3)が開口部(50)を備えており、並びに、前記慣用的な歯車及び/又は慣用的なぜんまいを支持するブリッジ又はプレートが、前記開口部に少なくとも部分的に収容されている、請求項6に記載のムーブメント(1)。
【請求項8】
前記歯車(17)及び/又はぜんまい(16)が、前記第1の層(3)によって一方の側で支持されており、及び更なる層によって他の側で支持されており、ここで、両方の層が、前記歯車(17)及び/又はぜんまい(16)の1以上のシャフトの為の、1以上の凹部、又は開口部、例えば、軸受要素を備えられている開口部、又は軸受として機能する丸いエッチングされた凹部若しくは穴を備えている、請求項1~6のいずれか1項に記載のムーブメント(1)。
【請求項9】
前記第1の層における前記コンプライアント機構が、振動子(3)、アンカー、自動巻き(40)、手巻き、モーションインバータ(30A)、クリック機構(30B)、キーレスワークス(30)、スタート/ストップ、リセット機構、クロノグラフ(20)又はフライバッククロノグラフ、スプリットセコンドクロノグラフ、ムーンフェイズ、レトログラード、アニュアルカレンダー、永久カレンダー及びミニットレペティション(minute repetition)の繰り返しのうちの少なくとも2つを備えている、請求項1~8のいずれか1項に記載のムーブメント(1)。
【請求項10】
前記コンプライアント機構(3;20,30,40)うちの少なくとも1つが、前記第1の層においてモジュール式に嵌め込まれている、請求項1~9のいずれか1項に記載のムーブメント(1)。
【請求項11】
前記第1の層及び存在する場合には前記更なる層が、1000μm未満、好ましくは800μm未満、好ましくは700μm未満、好ましくは600μm未満、例えば300μm~550μmの範囲、例えば250μm~500μmの範囲、の厚さを有し、及び/又は前記1以上の層がモノリシックである、請求項1~10のいずれか1項に記載のムーブメント(1)。
【請求項12】
1つの前記層が2以上のコンプライアント機構を備えており、及び存在する場合には前記更なる層が、反応性イオンエッチング、例えばRIE又はDRIE、によって形成され、及び好ましくは、シリコン、ベリリウム銅又は鋼から作られている、請求項1~11のいずれか1項に記載のムーブメント(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のムーブメント(1)の為のモジュール(3)であって、前記ムーブメントの機能の少なくとも一部の為のコンプライアント機構、好ましくはモノリシックコンプライアント機構(3)、と、請求項1~12のいずれか1項に記載の第1の層の前記複数の要素のうちの1以上とを備えている、前記モジュール(3)。
【請求項14】
衝撃保護、好ましくは面外ストッパとして機能する更なる層、を備えている、請求項1~12のいずれか1項に記載のムーブメント(1)。
【請求項15】
請求項1~12及び14のいずれか1項に記載のムーブメント又は請求項13に記載のモジュールを備えている腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用ムーブメントであって、該ムーブメントは、該時計用ムーブメントの機能の少なくとも一部の為のコンプライアント機構(compliant mechanism)、例えばモノリシックコンプライアント機構(monolithic compliant mechanism)、例えば、振動子(oscillator)、又はアンカー(anchor)、若しくはアンカー歯(anchor teeth)、又は振動子とアンカー若しくはアンカー歯若しくは自動巻き(automatic winding)の組み合わせ、を備えている第1の層と、エネルギーストレージと、例えばぜんまい、並びに、該機能(の該一部)を実行する為に該エネルギーストレージから該コンプライアント機構にエネルギーを伝達する為の及び/又は該コンプライアント機構から該エネルギーストレージにエネルギーを伝達する為の(後者が手巻き又は自動巻きを伴う場合)歯車列を備えている第2の層とを備えているところの該ムーブメントに関する。本発明はまた、コンプライアント(フレキシブル)機構技術を備えている時計ムーブメントの為のモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的に、機械式時計は、剛性のリンク(rigid links)、軸(axes)及び軸受(bearings)を介して相互に作用する多くの小さな可動部品で構成されている。力と運動が柔軟な要素を介して伝達されるコンプライアント機構技術を取り入れることにより、摩耗が大幅に減られ、及び組み立てを簡素化することができる。
【0003】
蘭国特許発明第NL2024076号明細書は、1以上の振動塊(vibratory mass)を備えた振動子を備えている機械式時計であって、ここで、各振動塊は少なくとも1つの曲げ部材(flexural member)に接続されているところの上記の機械式時計に関する。該時計は更に、がんぎ車(escape wheel)と、該振動塊に連結されたアンカー歯とを備えており、該アンカー歯は該がんぎ車と協働し、及び該アンカー歯は該少なくとも1つの曲げ部材に設けられている。
【0004】
国際公開第WO2018/100122号は、時計用の装置に関し、ベースと、慣性調整器官(inertial regulating organ)とを備えており、該慣性調整器官(inertial regulating organ)は、該慣性調整器官を該ベースに接続する弾性サスペンション手段によって、該ベースに相対的に回転するように取り付けられている。該装置は、エネルギーストレージデバイスによって押圧されるように意図されたエネルギー分配部材と係合するように適合されたアンカーを備えており、ここで、該アンカーは、該エネルギー分配部材を規則的に且つ交互にブロックし及び解放するように該調節部材によって制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改良された時計用ムーブメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の為に、第1の層は、該ムーブメントの更なる機能又は更なる機能の少なくとも一部の為の更なるコンプライアント機構を備えている。
【0007】
1つの実施態様において、該更なるコンプライアント機構は、該更なる機能を実行する為に該エネルギーストレージから該更なるコンプライアント機構にエネルギー、例えばトルク及び回転、を伝達する為の及び/又は該更なるコンプライアント機構から該エネルギーストレージにエネルギーを伝達する為の該歯車列に接続されている又は該歯車列に接続可能である、すなわち接続されることができる及び/又は接続解除されることができるように構成される。
【0008】
本発明により、2以上のコンプライアント機構の面内アライメント(in-plane alignment)を大幅に向上されることができ、例えばより正確であり、及び/又は該ムーブメントの異なる層にある部品、例えば1以上のシャフト、上に又は該部品を超えてより正確に適合する。また、該ムーブメント内の個々の部品の数が更に低減されることができ、及び/又は該ムーブメントの組み立てが簡素化されることができる。
【0009】
1つの実施態様において、該第1の層はフレームを提供し、及び該コンプライアント機構のうちの2以上が、好ましくは弾性リンク(フレクシャ(flexure)としてまた知られている)によって、該フレームによって及び/又は該フレーム内で支持されている。
【0010】
1つの例において、該第1の層が、内側に延在するフレクシャ、例えば2又は4の内側に延在するフレクシャ、を有する開口部と、これらのフレクシャによって該開口部内に及び該フレームから吊り下げられた振動子塊(oscillator mass)とを備えている。該振動子塊は、更なるフレクシャによって相互接続された2以上の塊部(mass section)を備えていることができ、これらのフレクシャは該フレームに直接的に接続されていない。また、該フレクシャのうちの2つにはアンカー歯が設けられていることができ、一方、該歯車列における該歯車の1つのシャフト上に取り付けられたがんぎ車は、該振動子塊が振動するときにこれらの歯ががんぎ車(の歯)を交互に保持及び解放するように、該アンカー歯の間に配置されている。該振動子を少なくとも部分的に取り囲む場所(ground)又はフレーム(該振動子塊を吊り下げる中央の場所又はフレームとは対照的)があるそのような内側と外側との構成は、単一の層において2以上の機能(の部分)を提供することを容易にする。
【0011】
面内アライメントを更に改善し且つ改善された面外アライメントを追加する為に、1つの実施態様において、該層内の、該コンプライアント機構のうちの2以上及び存在する場合には該フレーム及び/又は弾性リンクは、モノリシック、すなわち、例えば、同じウェハ内に、定義された、典型的にはエッチングされた、単一のピースから作られ、好ましくは、シリコン、ベリリウム銅又は鋼から作られる。
【0012】
従って、許容誤差の積み重ね(tolerance stacking)が回避され、該コンプライアント機構と該コンプライアント機構の構成要素との間の許容誤差は、実質的にゼロ、例えば50nm(ナノメートル)±1nmであることができ、及び/又は、該コンプライアント機構を備えているモノリシック層を製造する為に使用されたウェハーステッパーの許容誤差と実質的に等しくすることができる。
【0013】
原理的には、該層内の全ての接触と相互作用とにより、精度及び効率が向上し、摩耗が減少し、及び/又は生産の間、再現性及び歩留まりが向上するという点で恩恵を受ける。
【0014】
1つの実施態様において、該第2の層における該歯車列が、慣用的な歯車及び/又は慣用的なぜんまいを備えており、すなわち、該歯車及び/又はぜんまいは全て金属である。別の実施態様において、該歯車はシリコンからエッチングされている。
【0015】
1つの実施態様において、該歯車及び/又はぜんまいが、該歯車及び/又はぜんまいの回転軸(pivot)(シャフト(shaft)又はスタッフ(staffs)としてまた言及される)の為の慣用的な軸受、例えば「宝石」(jewels)、特にはルビー、におけるブリッジ(bridge)又はプレート(plate)によって少なくとも片側で支持されている。
【0016】
該歯車列は、エネルギーストレージ、典型的には(渦巻き)ぜんまいから脱進機(escapement)にトルクを伝達する。該歯車の大部分又は各々は、回転軸上のホイール(wheel)とピニオン(pinion)とを備えており、及び該歯車は運動/回転を増幅するように配置されている。増幅歯車列において、出力が入力よりも速く回転する。より具体的には、該歯車列はまた、時間を時、分、秒という有用なセグメントに分割する為の役割を担っている。その有用性だけでなく、歯車列はその一定の動きの故に、視覚的に魅力的であり、気持ちのよいものである。
【0017】
1つの実施態様において、該第1の層は開口部を備えており、並びに、該慣用的な歯車及び/又は慣用的なぜんまいの一方の側を支持するブリッジ又はプレートが少なくとも部分的に該開口部に収容されており、慣用的な歯車及び/又はぜんまいと、例えば2以上の機能を含むモノリシック層、とのコンパクトなハイブリッド構成を提供する。
【0018】
別の実施態様において、該歯車及び/又はぜんまいは、該第1の層、好ましくはモノリシック層、によって一方の側で支持されており、及び更なる層、例えば、好ましくはモノリシック層、によって他の側で支持されており、ここで、両方の層が、該歯車及び/又はぜんまいの1以上の回転軸の為の、1以上の凹部、又は開口部、例えば、軸受要素を備えられている開口部、又は軸受として機能する丸いエッチングされた凹部若しくは穴を備えている。
【0019】
従って、該ムーブメントは、ウルトラフラット(ultraflat)であることができ、及び3つの層、例えば、慣用的なぜんまい及び2つのモノリシック層の間に挟まれた歯車列、を備えていることができ又は該3つの層から本質的に構成されていることができ、ここで、1つのモノリシック層は2以上のコンプライアント機構を定義し、並びに他のモノリシック層は、該歯車列中の該ぜんまい及び/又は歯車の為の軸受、及び任意的に更に、1以上の更なるコンプライアント機構、例えば、1つの層において振動子に加えてがんぎ車及びクロノグラフ、並びに他の層において自動巻き(automatic winding)及び/又はキーレスワークス(keyless works)、を提供する。別の例において、他の(「下部」)モノリシック層はまた、時計ケースの裏蓋(case back)(の一部)として機能し、及び洗練されたものにおいては、透明材料、例えばサファイアガラス、から作られ、シースルーの裏蓋を提供する。
【0020】
これらの措置により、2.0mm未満の全高(裏蓋、ムーブメント及びガラス/サファイアを含む)を有する時計、又3.0mm未満の全高を有するクロノグラフ時計が潜在的に可能である。
【0021】
1つの実施態様において、該第1の層における該コンプライアント機構は、下記のうちの少なくとも2つを備えている:振動子、特には、振動塊上及び/又はフレクシャ上にアンカー歯を有し、がんぎ車と協働して脱進機を形成する振動子、アンカー、自動巻き、手巻き、モーションインバータ(motion invertor)、クリック機構、キーレスワークス(典型的には、モーションインバータとクリック機構との組み合わせたもの)スタート/ストップ、及び/又はリセット機構、例えば、クロノグラフ(chronograph)若しくはフライバッククロノグラフ(flyback chronograph)又はスプリットセコンドクロノグラフ(split-seconds chronograph)のリセット機構、クロノグラフ若しくはフライバッククロノグラフ又はスプリットセコンドクロノグラフ、ムーンフェイズ(moon phase)、レトログラード(retrograde)、アニュアルカレンダー(annual calendar)、永久カレンダー(perpetual calendar)、及びミニットレペティション(minute repetition)。
【0022】
1つの実施態様において、該コンプライアント機構のうちの少なくとも1つが、該第1の層においてモジュール式に嵌め込まれている、例えば、形状に合わせて嵌め込まれている又は力で嵌め込まれている、例えばクランプされている又はプレスされている。とりわけ、モジュール式に嵌め込まれた機構により、交換及び調整が比較的簡単に行うことができる。
【0023】
1つの実施態様において、該第1の層は2以上のコンプライアント機構を備えており、及び存在する場合には、1以上のコンプライアント機構を備えている該更なる層が、1000μm未満、好ましくは800μm未満、好ましくは700μm未満、好ましくは600μm未満、例えば100μm~550μmの範囲、例えば250μm~500μmの範囲の厚さを有し、及び/又は該1以上の層がモノリシックである。
【0024】
1つの実施態様において、1つの該層が2以上のコンプライアント機構を備えており、及び存在する場合には該更なる(下部)層が、レーザー切断又はエッチング、特には反応性イオンエッチング、例えばRIE又はDRIE、によって形成され、及び好ましくは、シリコン、ベリリウム銅又は鋼から作られている。
【0025】
本発明はまた、上記で説明されたムーブメントの為のモジュール、特には、上記で定義された厚さを有する層、例えばプレート、であって、該モジュールは、該ムーブメントの機能の為のコンプライアント機構、好ましくはモノリシックコンプライアント機構、すなわち単一のピースから作られたコンプライアント機構、と、任意的に、上記に記載された該第1の層の他の要素とを備えているところの上記モジュールに関する。
【0026】
本発明はまた、上記に記載された時計ムーブメントであって、該歯車列が、該がんぎ車にトルク及びエネルギーを伝達する為に、センターホイール(center wheel)、第3のホイール(third wheel)及び第4のホイール(fourth wheel)を備えているところの上記の時計ムーブメント、並びにそのようなムーブメントを備えている腕時計に関する。
【0027】
以下では、本発明の実施態様が示されている添付図面を参照しながら、本発明が更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明に従うムーブメントの平面図である。
【
図2】
図2は、
図1において示されたムーブメントの透視図である。
【
図3】
図3は、衝撃保護層を備えられている、
図1及び
図2に示されているムーブメントの透視図である。
【0029】
図1は、時計用ムーブメント1を示し、該ムーブメントは、第1の層2、例えばシリコン、例えば111シリコン、から作られた第1の層2を備えており、それは、2以上のコンプライアント機構、好ましくはモノリシック機構、を支持するフレームを提供する。この例において、該第1の層は振動子3を備えている。より具体的には、該第1の層は、内側に延在するフレクシャ6、例えば4つの内側に延在するフレクシャ、を備えた開口部5と、更なるフレクシャ8によって相互接続された2以上、例えば2つ、の塊部を備えている振動子塊7とを備えている。該フレクシャのうちの2つにはアンカー歯10が設けられており、一方、別の層中の歯車列(後述されている)における歯車のうちの1つのシャフト上に取り付けられたがんぎ車11は、振動子塊が振動するときにこれらの歯ががんぎ車(の歯)を交互に保持及び解放するように、アンカー歯の間に配置されている。該振動子は、15ヘルツ(Hz)以上、好ましくは25ヘルツ以上、好ましくは35ヘルツ以上、の固有振動数(natural frequency)を有しうる。極端な例において、該固有振動数は100Hz以上であることができる。
【0030】
該ムーブメント1は、エネルギーストレージ、例えば、香箱(barrel)内のぜんまい、を備えている第2の層15と、該エネルギーストレージから該コンプライアント機構にエネルギーを伝達して機能、例えば振動、を実行する為の歯車列17とを備えている。
【0031】
より具体的には、図示されている例は、慣用的な歯車17と慣用的なぜんまい16とを備えており、すなわち、該歯車及びぜんまいは全て金属製である。該歯車及びぜんまいは古典的な方法で、回転軸の場合には慣用的な軸受け、例えば「宝石」、特にルビー、におけるブリッジ又はプレートによって両側で支持されている。
【0032】
該第1の層は、該更なる機能を実行する為に該エネルギーストレージから該更なるコンプライアント機構にエネルギー、例えばトルク及び回転、を伝達する為の及び/又は該更なるコンプライアント機構から該エネルギーストレージにエネルギーを伝達する為の該歯車列に接続されている又は該歯車列に接続可能である。この例において、該第1の層は、i)スタート/ストップ機構21A及び21Bとリセット機構22とを有するクロノグラフ20、ii)モーションインバータ30Aとクリック機構30Bとを備えているキーレスワークス30(その幾つかの好適な例が欧州特許第EP4158426号に記載されている)、並びに、iii)自動巻き機構40を備えている。
【0033】
クロノグラフの好適な例が、欧州特許出願第22210664.3号において記載されている。
図1~3において示されている例は、少なくとも2つの安定位置を有し及びブレーキ機構23に作動的に接続されて、該ブレーキ機構を第1の位置と第2の位置との間で移動させるスタート/ストップ機構21A及び21Bを備えており、ここで、該コントローラ機構は好ましくは、(人間の)使用者がコントローラを作動させることを可能にするプッシャ24に接続されている。該ブレーキ機構は、該クロノグラフの文字盤側の秒針に接続され、この例において単一の点又は頂点を有するカム25に向かって移動可能であり及び該カムから離れて移動可能である2以上のブレーキ要素を有し、それらは夫々停止位置と開始位置を定義する。該ブレーキ要素が該カムに向かって移動した場合に、該カムに面するブレーキ要素の表面は滑らかな内面を持つリングを形成し、そして、該カムを所定の位置に保持する。該リングは、360°回転するカム上の点又は頂点の任意の位置でインジケータを制動し、そして、選択された位置にインジケータを維持する。リセットの間、複数のブレーキ要素が該カムから離れ、リセット要素、例えば弾力的且つ並進移動可能に取り付けられたピン26、が該カムと相互作用してインジケータをデフォルト位置にリセットする為の通路を提供する。
【0034】
自動巻き機構40は、2つのフレクシャ42によって該第1の層から吊り下げられた、好ましくはモノリシックに吊り下げられた、慣性錘(inertial weight)41を備えており、該錘の振動をゼンマイの巻上げに変換する為のラチェット機構(ratchet mechanism)43が備えられている。
【0035】
更に、図示されている例において、該第1の層は開口部50を備えており、該慣用的な歯車及びぜんまいの一方の側を支持するブリッジ又はプレートが該開口部内に少なくとも部分的に収容され、慣用的な歯車及び/又はぜんまいと、例えば2以上の機能を含むモノリシック層とのコンパクトなハイブリッド構成を提供する。
【0036】
本発明は、記載された実施態様に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で変形されることが可能である。例えば、
図3において示されているように、衝撃保護は、この場合には、該第1の層上に取り付けられ、該第1の層内の少なくとも一部のコンプライアントな構成要素の為の面外ストッパとして機能するところの更なる層である。該衝撃保護の目的は、衝撃を受けたときに、該第1の層内の例えばシリコンの塊が移動面に対して垂直な方向に変位できる距離を制限することである。
【外国語明細書】