(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160707
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】構造体における回折に基づくひずみ測定及び損傷検出を行うための表面下のパターン化
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
G01B11/16 G
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024128194
(22)【出願日】2024-08-02
(62)【分割の表示】P 2020033033の分割
【原出願日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】16/353,377
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー イー.ジョージソン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス エイチ.グリース
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル エル.ケラー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造コンポーネントにおけるひずみを評価するための非破壊検査技術を提供する。
【解決手段】構造コンポーネント10は、構造コンポーネント10内に溝14の幾何学的パターン12を有し、幾何学的パターン12における各溝は、溝幅を有する。構造コンポーネント10におけるひずみを評価するための方法は、電磁(EM)エネルギーのビーム142を投射し、その際、ビーム142は、構造コンポーネント10を透過して溝14の幾何学的パターン12に到達し、溝14の幾何学的パターン12において反射され又は透過するEMエネルギーの回折ビーム144を形成し、回折ビーム144は、構造コンポーネント10が環境条件に曝されたときに生じるひずみによる溝幅の変化を示す回折波長を有する。さらに、回折ビーム144の回折波長を検出することと、構造コンポーネント10におけるひずみに回折ビーム144の回折波長を関連付けることを含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造コンポーネントのひずみを評価するための検査システムであって、
各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含んでおり且つ前記構造コンポーネント内に配置された第1幾何学的パターンの溝と、
前記第1溝幅に対応する第1波長でEMエネルギーの第1投射ビームを投射する第1EMエネルギー源であって、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが前記構造コンポーネントに投射されると、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントを透過して前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第1組の溝によって回折して、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記第1回折波長が、前記構造コンポーネントが環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第1溝幅の変化を示す、第1EMエネルギー源と、
前記第1EMエネルギー源が前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射するとき、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出するEMエネルギーディテクタと、
前記EMエネルギーディテクタに機能接続されたプロセッサであって、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を前記EMエネルギーディテクタから受信し、前記構造コンポーネントの前記ひずみに前記第1回折波長を関連付けるように構成されているプロセッサと、
を具備する、検査システム。
【請求項2】
前記第1幾何学的パターンの前記溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを反射して、前記構造コンポーネントに前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームを再び透過させ、前記第1EMエネルギー源、及び前記EMエネルギーディテクタは、前記構造コンポーネントから見て同じ側に配置されている、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームは、前記構造コンポーネントを透過して、前記第1幾何学的パターンの前記溝から見て、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームの存在する側の反対側に到達し、前記第1EMエネルギー源、及び前記EMエネルギーディテクタは、前記構造コンポーネントを挟んで互いに反対側に配置されている、請求項1に記載の検査システム。
【請求項4】
前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、前記検査システムは、前記第2溝幅に対応する第2波長でEMエネルギーの第2投射ビームを投射する第2EMエネルギー源を含み、EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに投射されると、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記構造コンポーネントを透過して前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第2組の溝によって回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、
前記第2EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対してEMエネルギーの前記第2投射ビームを投射すると、前記第2組の溝で反射された回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長が、前記EMエネルギーディテクタによって検出され、
前記プロセッサは、回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を前記EMエネルギーディテクタから受信して、前記構造コンポーネントにおける前記ひずみに前記第2回折波長を関連付けるように構成されている、請求項1に記載の検査システム。
【請求項5】
第2幾何学的パターンの溝と、第2EMエネルギー源と、を含み、
前記第2幾何学的パターンの前記溝は、前記構造コンポーネント内において、当該構造コンポーネントの外面から見て、前記第1幾何学的パターンの前記溝とは異なる深さに配置されるとともに、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、
前記第2EMエネルギー源は、前記第2溝幅に対応する第2波長でEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに投射されると、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記構造コンポーネントを透過して前記第2幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第2組の溝によって回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、
前記第2EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対してEMエネルギーの前記第2投射ビームを投射すると、前記第2組の溝で反射された回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長が、前記EMエネルギーディテクタによって検出され、
前記プロセッサは、回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を前記EMエネルギーディテクタから受信して、前記構造コンポーネントにおける前記ひずみに前記第2回折波長を関連付け、
前記第2溝幅は、前記第1溝幅よりも大きく、前記第2波長は、前記第1波長よりも大きく、これによって、EMエネルギーの前記第2投射ビームが、回折せずに前記第1組の溝を通過する、請求項1に記載の検査システム。
【請求項6】
前記第1幾何学的パターンの前記溝は、第1方向に間隔を空けて配置されている前記第1組の溝、及び前記第1方向と非平行な第2方向に間隔を空けて配置されている第2組の溝を有する二次元の幾何学的パターンを含み、
前記第1組の溝は、前記第1溝幅を有し、前記第2組の溝は、前記第1溝幅とは異なる第2溝幅を有し、前記第1EMエネルギー源は、前記第2溝幅に対応する第2波長を有するEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記第2組の溝によって回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記多層構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、前記第1EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対してEMエネルギーの前記第2投射ビームを投射すると、前記第2組の溝で反射された回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長が、前記EMエネルギーディテクタによって検出され、前記プロセッサは、回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を前記EMエネルギーディテクタから受信して、前記構造コンポーネントにおける前記ひずみに前記第2回折波長を関連付けるように構成されている、請求項1に記載の検査システム。
【請求項7】
前記第1EMエネルギー源、及び前記EMエネルギーディテクタを備えるとともに、無線通信により、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を前記プロセッサに送信するポータブル検査装置を含む、請求項1に記載の検査システム。
【請求項8】
構造コンポーネントにおけるひずみを評価するための方法であって、前記構造コンポーネントは、内部に第1幾何学的パターンの溝を有し、前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含み、ひずみを評価するための前記方法は、
前記構造コンポーネントを透過させて前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達させる電磁(EM)エネルギーの第1投射ビームを投射し、その際、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームは、前記第1溝幅に対応する第1波長を有し、前記第1組の溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを回折させて、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記第1回折波長は、前記構造コンポーネントが環境条
件に曝されたときに生じるひずみによる前記第1溝幅の変化を示し、
前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出し、
前記第1幾何学的パターンの前記溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を、前記構造コンポーネントのひずみに関連付ける、ことを含む、方法。
【請求項9】
前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、ひずみを評価するための前記方法は、
前記構造コンポーネントを透過させて前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達させるEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、その際、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記第2溝幅に対応する第2波長を有し、前記第2組の溝は、EMエネルギーの前記第2投射ビームを回折させて、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、
EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第2組の溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を検出し、
前記第2組の溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を、前記構造コンポーネントのひずみに関連付ける、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝される前、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを第1発目のものとして投射し、
前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントに第1発目のものとして投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有するベースライン回折波長を検出し、
前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝された後、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを第2発目のものとして投射し、
前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントに第2発目のものとして投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出し、
前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントに第2発目のものとして投射されると、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長と、前記ベースライン回折波長とを比較して、前記構造コンポーネントの対応する位置におけるひずみの変化を特定する、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記構造コンポーネントは、第2幾何学的パターンの溝を有し、前記第2幾何学的パターンの前記溝は、前記構造コンポーネント内において、当該構造コンポーネントの表面から見て、前記第1幾何学的パターンの前記溝とは異なる深さに配置されるとともに、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、ひずみを評価するための前記方法は、
前記構造コンポーネントを透過させて前記第2幾何学的パターンの前記溝に到達させるEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、その際、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記第2溝幅に対応する第2波長を有し、前記第2組の溝は、EMエネルギーの前記第2投射ビームを回折させて、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、
EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第2幾何学的パターンの前記溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが
有する前記第2回折波長を検出し、
前記第2幾何学的パターンの前記溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を、前記構造コンポーネントのひずみに関連付ける、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1組の溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを反射して、前記構造コンポーネントに前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームを再び透過させ、ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントから見て同じ側において、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射し、前記第1回折波長を検出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームは、前記構造コンポーネントを透過して、前記第1幾何学的パターンの前記溝から見て、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが存在する側の反対側に到達し、ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントの一方側で前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射し、前記構造コンポーネントから見て前記一方側の反対側で前記第1回折波長を検出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記構造コンポーネントにおけるひずみと最小ひずみ値とを比較し、
前記構造コンポーネントにおけるひずみが前記最小ひずみ値よりも大きいと判定した場合、これに応じて、前記構造コンポーネントのさらなる検査を行う、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記構造コンポーネントのひずみから導出されるひずみパターンを生成及び表示し、その際、前記ひずみパターンは、前記構造コンポーネントの検査領域におけるひずみ値のグラフィック表示であり、
前記ひずみパターンが、前記構造コンポーネントの予想ひずみパターンとは異なると判定した場合、これに応じて、前記構造コンポーネントのさらなる検査を行う、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して構造コンポーネントの非破壊検査(NDI)に関し、特に、構造コンポーネント内の幾何学的パターン(geometric patterns)の溝を利用して、不可視の電磁(EM)エネルギーを回折させ、当該溝において反射され又は透過するEMエネルギーの波長の検出可能な変化を作り出すことにより、構造コンポーネントにおけるひずみを示し、これによって、環境条件への曝露により生じる構造コンポーネントのひずみを検出するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商用ビークル、製造装置、又はその他の産業用システムなどの多くの機械システムは、振動、極端な温度、衝撃、及び機械的応力などの、特にエネルギーの高い環境条件に曝される可能性がある。例えば、航空機は、着陸している状態であっても、貨物の積み降ろしにおいて甚大な応力に曝されたり、支持車両や地上支持装置からの衝撃に曝されたりする場合がある。また、飛行中や離着陸時において、貨物が移動したり不適切に固定されていたり、或いは物体と衝突したりして、応力及び衝撃が生じる場合がある。さらに、一部の構造コンポーネントは、高温に曝されると熱応力を受ける可能性がある。例えば、一部の複合材料の場合、熱劣化の影響を受けて、曲げ強度、衝突後の圧縮、層間せん断強度などの、複合材の機械的特性が損なわれるものも存在する。
【0003】
したがって、様々な産業システムにおける選択されたコンポーネントは、一般的に、その動作寿命中、当該コンポーネントに対する定期的な検査及び評価が行われる。構造コンポーネントに対して環境条件の影響が視覚的に検出されない場合でも、当該コンポーネントの一体性が損なわれている可能性がある。したがって、動作中、構造コンポーネントが繰り返し荷重、衝撃、高温などの環境条件に曝された後の、当該構造コンポーネントに対する累積的な影響を示すことが可能な非破壊検査技術が必要とされている。このような表示により、構造コンポーネントの今後の評価、整備、及び/又は交換のスケジューリングを適時行うことができる。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様において、多層構造コンポーネントが開示される。前記多層構造コンポーネントは、第1外層、第2外層、並びに、前記第1外層と前記第2外層との間に設けられた第1パターン層を含みうる。前記第1パターン層は、その第1表面に第1幾何学的パターンの溝を含み、前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含む。前記第1溝幅に対応する第1波長を有するEMエネルギーの第1投射ビームは、前記第1組の溝に当たると回折して、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記第1回折波長は、前記多層構造コンポーネントが環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第1溝幅の変化を示す。前記第1外層、及び前記第2外層のうちの少なくとも一方は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビーム、及び前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームを透過させる外層材料で形成される。
【0005】
本発明の他の態様において、構造コンポーネントにおけるひずみを評価するための検査システムが開示される。前記検査システムは、第1幾何学的パターンの溝と、第1EMエネルギー源とを含みうる。前記第1幾何学的パターンの前記溝は、前記構造コンポーネント内に配置されるとともに、各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含み、前記第1EMエネルギー源は、前記第1溝幅に対応する第1波長で電磁エネルギーの第1投射ビームを投射する。前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが前記構造コンポーネントに投射され
ると、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームは、前記構造コンポーネントを透過して前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第1組の溝によって回折して、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記第1回折波長は、前記構造コンポーネントが環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第1溝幅の変化を示す。前記検査システムは、EMエネルギーディテクタと、プロセッサとをさらに含みうる。前記EMエネルギーディテクタは、前記第1EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射すると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出し、前記プロセッサは、前記EMエネルギーディテクタに機能接続されており、前記EMエネルギーディテクタによって前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を受信して、前記構造コンポーネントの前記ひずみに前記第1回折波長を関連付けるように構成されている。
【0006】
本開示のさらなる態様において、構造コンポーネントにおけるひずみを評価するための方法が開示される。前記構造コンポーネントは、内部に第1幾何学的パターンの溝を有しうる。前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含む。ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントを透過させて前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達させるEMエネルギーの第1投射ビームを投射することを含みうる。前記EMエネルギーの前記第1投射ビームは、前記第1溝幅に対応する第1波長を有し、前記第1組の溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを回折させて、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記第1回折波長は、前記構造コンポーネントが環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第1溝幅の変化を示す。ひずみを評価するための前記方法は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出することと、前記第1幾何学的パターンの前記溝からの、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を、前記構造コンポーネントのひずみに関連付けることと、をさらに含みうる。
【0007】
本願におけるさらなる態様は、特許請求の範囲によって規定されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示による、幾何学的パターンの溝を有する機械システムの構造コンポーネントを示す等角図である。
【
図2】幾何学的パターンの溝を有する
図1の構造コンポーネントを示す部分断面図である。
【
図3】代替の幾何学的パターンの溝を有する構造コンポーネントの代替の実施形態を示す部分断面図である。
【
図4】異なる幾何学的パターンの溝を有する構造コンポーネントのさらなる実施形態を示す部分断面図である。
【
図5】本開示による、複数の層と、複数の幾何学的パターンの溝とを有する機械システムの構造コンポーネントを示す等角図である。
【
図6】複数の幾何学的パターンの溝の例示的な構成を有する、
図5の構造コンポーネントを示す部分断面図である。
【
図7A-7G】本開示による、
図1の構造コンポーネントの幾何学的パターンの溝の実施形態を示す平面図である。
【
図8】本開示による、幾何学的パターンの溝を有するパッチが取り付けられた構造コンポーネントの一部を示す等角図である。
【
図9】本開示による、構造コンポーネントの検査を実施する電子コンポーネント及び制御コンポーネントを示すブロック図である。
【
図10】本開示による、
図1の構造コンポーネントに対する検査システム及び検査方法の例示的な実施態様を示す概略図である。
【
図11】
図1の構造コンポーネントに対する検査システム及び検査方法の例示的な代替の実施態様を示す概略図である。
【
図12】本開示による検査ルーチンの実施形態を示すフロー図である。
【
図13】本開示による検査ルーチンの代替の実施形態を示すフロー図である。
【
図14】本開示による例示的なひずみパターンの表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び
図2には、機械システムの構造コンポーネント10の一部が示されており、当該システムは、本明細書で図示及び説明されているNDIシステム及びNDI方法における用途のために構成されたものである。構造コンポーネント10は、環境条件に曝される可能性のある機械システムにおける任意のコンポーネントであって、当該環境条件においては、構造コンポーネント10に、応力、及びひずみが生じる可能性がある。本開示のNDIシステム及びNDI方法における用途のために、構造コンポーネント10は、当該構造コンポーネント10の内部に形成された溝14の幾何学的パターン12を有する。例示的な実施形態において、構造コンポーネント10は、溝14の幾何学的パターン12が形成された多層構造を有する。構造コンポーネント10は、第1外層16と、第2外層18と、これらの外層16、18の間に設けられた第1パターン層20とを含む。溝14の幾何学的パターン12は、第2外層18に覆われた第1パターン層20の表面に形成されている。このため、幾何学的パターン12は、見えないように隠されており、また、溝14を引っ掻いたり損傷したりする可能性のある外部要素から保護されている。
【0010】
図2には、
図1の構造コンポーネント10の断面が示されている。第1パターン層20は、第1外層16の上に設けられている。第2外層18は、第1パターン層20、及び溝14の幾何学的パターン12の上に重なっている。溝14、及び幾何学的パターン12は、これらに投射された可視スペクトル外のEMエネルギーに応じて、幾何学的パターン12の溝14において反射され又は透過するEMエネルギーの波長において、ひずみの影響を受けやすい検出可能な変化を作り出すように構成されている。反射され又は透過したEMエネルギーは、以下に説明する適切なディテクタによって検出される。また、反射され又は透過したEMエネルギーの波長及び周波数における検出可能な変化は、プロセッサによって特定されるとともに、EMエネルギー波長のベースライン値と比較される。このベースライン値は、構造コンポーネント10が、環境条件によって生じうる応力及びひずみの影響を受けていない場合に予想される値である。
【0011】
例示的な実施形態において、溝14は、対応する波長を有するEMエネルギーが構造コンポーネント10に投射されたときに回折を生じさせるために、溝幅WG及び溝離間距離DGで配置される。投射されるEMエネルギーの波長は、典型的には、外層16,18が、可視範囲のEMエネルギーを視覚的に透過させる材料で形成されない限り、約400nm~750nmの可視範囲外である。適用されるEMエネルギーの回折により、反射され又は透過したEMエネルギーの回折波長において検出可能な変化が生じる。この変化は、構造コンポーネント10のひずみによる溝幅WGの変化に伴って生じる。
【0012】
溝幅WGにより、幾何学的パターン12に適用可能なEMエネルギーの最適なスペクトル範囲が決定される。概して、幾何学的パターン12は、溝幅WGの二倍よりも大きい波長を有するEMエネルギーを回折させない。本開示のシステム及び方法で使用可能な波長、周波数、及び溝幅WGの組み合わせの例は以下の通りである。
【表1】
【0013】
波長と溝幅WGとの組み合わせは、EMエネルギーを使用したときに、幾何学的パターン12が、対応する回折波長を有するEMエネルギーを反射し又は透過させ、且つ、構造コンポーネント10において、溝幅WGを変化させるひずみが生じないような組み合わせが選択される。構造コンポーネント10が、ひずみを生じさせる環境条件に曝されて、当該ひずみによって溝幅WGが増減すると、幾何学的パターン12で反射し又は透過させるEMエネルギーの回折波長が、EMエネルギースペクトルから他の回折波長へと変化する。構造コンポーネント10の構成、幾何学的パターン12、及び構造コンポーネント10が曝される環境条件によって、溝幅WGの変化、及び対応する回折波長の変化は、幾何学的パターン12の全体に亘って一様な場合もあるし、一部の領域においてより大きく、これらの領域では応力及びひずみの集中がより大きいことを示す場合もある。ひずみ量、対応する溝幅WGの変化、及び回折波長は、さらなる検査を必要としなくても許容できる場合があるが、変化の度合いが大きい場合は、構造コンポーネント10のさらなる検査、整備、及び/又は交換が必要な場合もある。当業者であれば、初期の溝幅WG及び波長は、さらなる検査に値するひずみが構造コンポーネント10に生じる前においては溝幅WGが波長の二倍を超えないように設定されると理解するであろう。
【0014】
図1及び2の構造コンポーネント10の実施形態は、外層16,18、及び第1パターン層20が複数の異なる材料で作製されている構成を示している。外層16、18は、例えば、溝14の溝幅WGに対応する波長を有するEMエネルギーを透過させる複合材料で形成されている。一方、第1パターン層20は、EMエネルギーの波長を透過させない材料で形成されている。この構成においては、EMエネルギー源から送信される適切な波長のEMエネルギーが、回折することなく第2外層18を通過し、第1パターン層20の幾何学的パターン12で回折し反射され、回折波長が、適切なEMエネルギーディテクタによって検出される。
【0015】
図1及び2に示されるように、溝14の幾何学的パターン12は、構造コンポーネント10の全範囲に亘って設けられており、第1パターン層20は、構造コンポーネント10の内部において略中央に配置されている。ただし、溝14の幾何学的パターン12の他の構成及び配置も考えられる。例えば、幾何学的パターン12は、構造コンポーネント10において応力集中が高いと予想される領域などの、構造コンポーネント10に対する応力
及びひずみについて最も関連性の高い情報が得られる領域を考慮して配置することができる。このような領域には、配線、配管、導管などを通すための構造コンポーネント10の開口部、コーナー部、及び構造コンポーネント10が機械システムの他のコンポーネントに係合又は接続されたり、構造コンポーネント10を修理するためにパッチが取り付けられたりする部分である接合ラインなどが含まれる。後者の領域においては、接続、及び機械システムの構造的一体性が維持可能な限り、幾何学的パターン12が、他のコンポーネント又はパッチとの接触部分、又はこれに近い位置に配置されるように、層16~20、及び幾何学的パターン12を構成することができる。
【0016】
これに代えて、幾何学的パターンの溝を有する構造コンポーネントは、EMエネルギーを回折させて、回折後のEMエネルギー(「回折EMエネルギー」)を反射し又は透過させるように構成することも可能である。
図3には、第1外層32と、第2外層34と、ワイヤメッシュスクリム(wire mesh scrim)36又は導電性スクリムなどのワイヤメッシュ
で形成された第1パターン層36とで形成された構造コンポーネント30による代替の実施形態が示されている。このワイヤメッシュは、航空機、又は構造コンポーネント30が静電放電に曝されうる他の環境において、落雷に対する防護又は抑制を提供する。ワイヤメッシュスクリム36は、幾何学的パターン38を有しており、第1方向に配向された第1組のワイヤ40と、第2方向(例えば、第1方向に垂直な方向)に配向された第2組のワイヤとを互いに織り合わせることにより形成されている。
図3に示すように、第1組のワイヤ40間のワイヤ離間距離、第2組のワイヤ42間のワイヤ離間距離、及びワイヤ40、42の太さは、幾何学的パターン38における溝幅WG、及び溝離間距離DGを画定している。
【0017】
いくつかの実施形態において、溝幅WG、及び溝離間距離DGは、両方向において同じであってもよい。他の実施形態においては、EMエネルギーの複数の異なる波長が、ワイヤ40、42の各組によって回折するように、第1組のワイヤ40の太さ及び間隔と、第2組のワイヤ42の太さ及び間隔とが異なっていてもよい。この手法を航空機の胴体に用いることにより、例えば、第1組のワイヤ40は、胴体の周りのフープ応力を示すために近赤外線帯域のEMエネルギーを回折させるように構成し、第2組のワイヤ42は、胴体の長手方向における引張応力、圧縮応力、又はねじり応力を示すために、遠赤外線帯域のEMエネルギーを回折させるように構成することができる。ワイヤ40、42の各組の配向は、監視する応力に応じて、互いに対して、本明細書で図示及び説明したような垂直以外の角度を成すように設定することができる。
【0018】
ワイヤ40間、ワイヤ42間の間隔によって幾何学的パターン38の溝を画定することにより、回折EMエネルギーが検出される位置を柔軟に設定することができる。一実施例において、第1外層32は、EMエネルギーを反射させる材料で形成することができ、第2外層34は、EMエネルギーを透過させる材料で形成することができる。この構成では、EMエネルギー源、及びEMエネルギーディテクタは、構造コンポーネント30から見て第2外層34のある側に配置することができる。EMエネルギー源によって送信されたEMエネルギーは、第2外層34を通過し、ワイヤ40、42の各組によって形成された幾何学的パターン38によって回折し、第1外層32で反射されて、EMエネルギーディテクタによって検出される。代替の実施形態において、外層32、34は、両方とも、投射され及び回折したEMエネルギーを透過させる材料で形成されてもよい。この構成では、構造コンポーネント30の一方側を透過したEMエネルギーは、ワイヤ40、42の各組で形成された幾何学的パターン38で回折し、回折EMエネルギーは、構造コンポーネント30の他方側を透過する。このようにすると、構造コンポーネント30を挟んで互いに反対側にEMエネルギー源、及びEMエネルギーディテクタを配置することができる。この構成は、アクセスが制限された検査の場合に有利であろう。EMエネルギーのビームは、到達困難な空間に設けられた適切なサイズの送信機によって生成されてもよいし、当
該空間に手動又は自動で誘導されてもよい。回折EMエネルギーは、構造コンポーネント30のアクセスが容易な側で検出される。もちろん、EMエネルギー源、及びEMエネルギーディテクタのそれぞれの位置は、特定の実施形態の要件に応じて逆にすることも可能である。
【0019】
図4は、本開示による構造コンポーネント50のさらなる代替例を示す。構造コンポーネント50において、第1外層52、及び第2外層54は、第1パターン層56を囲んでおり、当該第1パターン層は、幾何学的パターン60を形成する複数の平行なワイヤ58、又はロッド58で形成されている。ワイヤ58は、上述したような落雷保護に使用することができる。さらに、より頑丈なワイヤ又はロッド58をミニ鉄筋として使用して、構造コンポーネント50の支持を強化することもできる。第1組のワイヤ40と同様に、所望の溝幅WG及び溝離間距離DGを実現するようにワイヤ58のサイズ及び間隔を変化させることによって、使用するEMエネルギー波長を確立することができる。また、外層52、54の材料は、EMエネルギーを反射させるように選択するか、或いは回折EMエネルギーが構造コンポーネント50を透過するように、選択することができる。
【0020】
なお、構造コンポーネント10、30、50、及び本明細書で説明される他の実施形態を実現するために、様々な製造方法を採用することができる。例えば、外層は、周知の製造技術を用いて作製された複合材料であってもよい。パターン層20、36、56は、EMエネルギーを回折させる金属、又は他の材料で形成されてもよく、構造コンポーネント10、30、50の形成において複合材料を配置する際に、適切なタイミングで適切な位置に設けられてもよい。代替のプロセスにおいて、構造コンポーネント10、30、50は、3次元(3D)プリンティングなどの他の付加製造技術を用いて作製されてもよい。3Dプリンタは、適切なタイミングで構造コンポーネント10、30、50の複数の異なる材料を供給するように構成されてもよい。したがって、第1外層16、32、52を形成するために、当該第1外層16、32、52の反射材料、又は透明材料が供給されてもよい。適切なタイミングにおいて、パターン層20、36、56の材料を供給し、当該パターン層20、36、56を形成して幾何学的パターン12、38、60を形成するようにしてもよい。構造コンポーネント30、50の場合、第1外層32、52、又は第2外層34、54の材料を供給して、ワイヤ40、42、58の間の空間を埋めるようにしてもよい。最後に、第2外層18、34、54の材料を追加して、構造コンポーネント30、50の作製を完了する。なお、第1外層32、52、及び第2外層34、54は別個の層として示されているが、当業者であれば、付加製造技術により、ワイヤ40、42、58が埋設されたパターン層36、56を除けば、区別可能な層が存在しない均質な材料の単一構造体として構造コンポーネント30、50を作製可能であると理解するであろう。本開示による構造コンポーネント10、30、50を作製するためのさらなる追加的な方法が、発明者によって想定されている。
【0021】
いくつかの実施形態において、ワイヤ58は、構造コンポーネント50の作製を容易にし且つ作製が完了した後は幾何学的パターン60の溝を形成するように機能する誘導サセプタにより実現することができる。誘導サセプタは、接合ラインに沿って配置することにより、外層52、54間を接合させること、及び接合ラインにおける応力及びひずみを監視する手段を提供することの両方の目的を達成することができる。一実施形態において、上記サセプタは、直径が約0.008インチ~0.010インチであってもよく、ワイヤ中心間の間隔が、ワイヤ直径の約二倍であってもよい。誘導サセプタワイヤは、最初に純樹脂(neat resin)に埋め込まれて、接合ラインに配置されるスクリーンを形成する。次に、ワイヤは、電磁誘導による急速な加熱により熱可塑性構造体を一緒に溶接するために使用される。接合部、及び構造コンポーネントが作製されると、本開示による検査処理により最初に内部ワイヤが検査されて、EMエネルギーに対する当該ワイヤの最初のベースライン回折反応が判定される。次に、構造コンポーネント50が、通常の環境条件に曝さ
れているとき、又は予期せぬ荷重条件下に置かれた後、接合ラインにおける応力及びひずみの変化が定期的にチェックされる。
【0022】
図5及び6には、構造コンポーネント70による代替の実施形態が示されている。構造コンポーネント70は、当該構造コンポーネント内の複数の異なる位置におけるひずみを示すために、様々な深さにおいて溝76、78の複数の幾何学的パターン72、74を有する。構造コンポーネント70は、第1外層80と、第2外層82と、これらの間に設けられた中間層84とを含む。第1外層80と中間層84との間には、上述したパターン層と同様の、第1幾何学的パターン72を有する第1パターン層86が設けられており、中間層84と第2外層82との間には、第2幾何学的パターン74を有する第2パターン層88が設けられている。図示のように、第1幾何学的パターン72は、第1方向に並ぶ複数のワイヤ又はロッド90によって形成されており、第2幾何学的パターン74は、第2方向に配向された複数のワイヤ又はロッド92によって形成されている。
【0023】
この積層構造においては、溝76の第1幾何学的パターン72によって回折するEMエネルギーが、層80、82、84、及び溝78の第2幾何学的パターン74においては回折せずにこれらを透過し、これによって有効なひずみ測定値が得られるように、層80、82、88の材料、溝幅WG、及び溝離間距離DGが選択される。一般に、長い波長を有する低周波数のEMエネルギーは、短い波長を有する高周波数のEMエネルギーよりも構造コンポーネント70のより深い部分に入射する。したがって、図示例においては、溝76の第1幾何学的パターン72は、テラヘルツ、マイクロ波、又は超音波の帯域のEMエネルギーを回折させるように構成されており、第2外層82の表面に近い溝78の第2幾何学的パターン74は、紫外線、又は赤外線の帯域のより高い周波数のEMエネルギーを回折させるように構成されている。この構成において、テラヘルツ、マイクロ波、及び超音波の帯域のEMエネルギーの波長は、第2幾何学的パターン74の溝78の溝幅WGの二倍よりも長いため、当該EMエネルギーは、第1幾何学的パターン72へ向かう途中、回折せずに溝78を透過することができる。いずれのタイプのEMエネルギーについても、構造コンポーネント70の透過度は、構造コンポーネント70に投射されるEMエネルギーの強度を上げることによって強化することができる。代替の実施形態においては、構造コンポーネント70の非積層領域に幾何学的パターン72、74を配置することにより、EMエネルギーが構造コンポーネント70を透過する際、幾何学的パターン72、74のうちの一方に対するEMエネルギーが、幾何学的パターン72、74のうちの他方に衝突しないようにしてもよい。
【0024】
構造コンポーネントのための適切な幾何学的パターンは、構造コンポーネントの特性、構造コンポーネントが遭遇すると予想される環境条件、開発試験の結果、当該技術分野における構造コンポーネントについての知見、及び他の要因によって決定される。
図7A~7Gは、必要に応じて構造コンポーネント内に形成される幾何学的パターン12A~12Gのいくつかの例を示す。
図7Aは、一連の平行な直線状の溝14Aによって形成された一次元の幾何学的パターン12Aの例を示す。直線状の幾何学的パターン12Aは、周方向応力、すなわちフープ応力に曝されるが、軸方向における応力は僅かであるパイプ(図示略)などの円筒状の構造コンポーネントに適している。幾何学的パターン12Aは、円筒状の構造コンポーネントの長手方向軸に対して溝14Aが平行になるように当該構造コンポーネントに巻き付けることができ、これによって、フープ応力によるひずみが、溝14A間の周方向の溝幅WGを広げるようにする。
【0025】
図7Bは、複数の方形又は矩形の溝14Bによって形成された二次元の幾何学的パターン12Bの例を示す。方形又は矩形の溝14Bは、面積の小さい領域から面積の大きい領域まで順に複数の領域を画定しており、同心状に配置されて幾何学的パターン12Bを形成している。矩形の幾何学的パターン12Bは、例えば、貫通する矩形の開口22を有す
る構造コンポーネント10において使用することができる。
図7Cは、面積の小さい領域から面積の大きい領域まで順に複数の領域を画定する複数の同心円状の溝14Cによって形成された代替の二次元の幾何学的パターン12Cの例を示す。円形の幾何学的パターン12Cは、構造コンポーネント10に対する応力が、幾何学的パターン12Cの中心点から径方向外方に向かう場合に、構造コンポーネント10において使用することができる。
図7Dは、構造コンポーネント10から延びる開口又は他のコンポーネントの形状に対応する、より複雑な幾何形状を有する同心状の溝14Dを有する幾何学的パターン12Dのさらなる例を示す。構造コンポーネント10の特定の実施態様におけるニーズに基づいて、さらなる不規則形状が考案される。
【0026】
図7Eは、中心点24から径方向外方に延びる複数の溝14Eを有する、さらなる代替的な二次元の幾何学的パターン12Eの例を示す。幾何学的パターン12Eは、径方向応力よりも周方向応力が大きい場合の幾何学的パターン12Cの代替であってもよい。
図7Fは、複数の平行な曲線溝14Fによって形成される幾何学的パターン12Fを示す。曲線溝14Fは、航空機の翼などの、構造コンポーネント10を通って延在する曲線形状のコンポーネントの輪郭に沿っていてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、構造コンポーネント10は、ひずみ、及び溝幅WGの変化に対する感度がより高いことが望ましい関心領域を有しうる。この場合、溝14間の間隔、溝幅WG、及び構造コンポーネント10の全体の波長を変化させることによって関心領域を区別することができる。
図7Gは、
図7Cの円形の幾何学的パターン12Cの改変例である、幾何学的パターン12Gを示しており、幾何学的パターン12Gが、より注意深く径方向応力を検査すべき中心位置から外方に広がるにつれて、隣接する溝14G間の溝離間距離DGが長くなっている。溝離間距離DGが短く、より多くの溝14Gが集中している領域は、ひずみ、及び溝幅WGの変化に対する感度が高い。このような領域は、溝14Gの溝離間距離DGが長く、当該溝同士が互いに遠く離れて配置された領域と比較して、関心領域に投射されるEMエネルギーについて、反射され又は透過したEMエネルギーの回折波長に対する影響がより大きい。
【0028】
より高機能なひずみインジケータを提供可能な他の代替例として、幾何学的パターン12は、構造コンポーネントに生じる複数の異なるレベル又はタイプのひずみを独立して監視するために、複数の異なる溝幅WGで互いに対して複数の角度を付けて配置された複数の組の溝14を有していてもよい。例えば、幾何学的パターン12C、12Eを組み合わせて、構造コンポーネントにおける単一の幾何学的パターン12にしてもよい。円形の幾何学的パターン12Cは、紫外線域のEMエネルギーに影響する範囲内の溝幅WGで形成してもよく、幾何学的パターン12Eは、中赤外線域のEMエネルギーに影響する範囲内の溝幅WGで、幾何学的パターン12Cに重ねて形成してもよい。検査においては、構造コンポーネントに対して紫外線域のEMエネルギーを投射することにより、径方向のひずみを調べることができ、また、構造コンポーネントに対して中赤外線域のEMエネルギーを投射することにより、周方向のひずみを調べることができる。本明細書において図示及び説明したような代替又は追加の幾何学的パターン12は、特定の実施形態において必要に応じて追加のひずみパターンを検査するために、構造コンポーネントにおいて、様々な溝幅WG、及びこれに対応した波長のEMエネルギーを用いることによって、さらに形成することができる。
【0029】
図8は、構造コンポーネント100の損傷領域に対してパッチ102が取り付けられている実施形態を示す。パッチ102は、損傷領域を覆うのに適した形状を有し、リベット、溶接、接着剤、積層、又は他の適切な取付手段によって構造コンポーネント100に取り付けられる。パッチ102は、例えば、構造コンポーネント100とパッチ102との間の接合ライン、又はこの近くにおいて、
図7Cに示す幾何学的パターン12Cを含む。
パッチ102を取り付けた後、本開示のシステム及び方法によって当該パッチの検査を行うことができる。パッチ102におけるひずみの検出に加えて、上記検査において、構造コンポーネント100に対するパッチ102の取り付けの一体性を評価することも可能である。構造コンポーネント100に対してパッチ102が適切に取り付けられている場合、構造コンポーネント100の応力はパッチ102に伝わり、検査において、これに対応するひずみが現れる。パッチ102が適切に取り付けられておらず、層間剥離などの状況が生じている場合、応力が伝わらず、パッチ102の検査において、当該パッチ102のひずみが予想よりも小さく現れる。このような場合、さらなる検査を行ったり、損傷領域に対してパッチ102を取り付け直したりすることがある。
【0030】
本明細書で図示及び説明される幾何学的パターン12は、構造コンポーネント10のひずみを評価するための検査システム110に組み込むことができる。
図9は、例えば、構造コンポーネント10におけるひずみを特定可能な本開示による検査システム110に組み込み可能な電気コンポーネント及び制御コンポーネントの例示的な配置を示す。コントローラ112は、当該コントローラ112に保存されたソフトウェアを使用して、監視装置及び制御装置から受信した情報を処理し、監視システム110の装置に対してコマンド及び制御信号を出力することが可能である。コントローラ112は、監視システム110に関連する様々な機能を制御及び監視する特定のプログラムを実行するためのプロセッサ114を含みうる。プロセッサ114は、メモリ116と協働するよう当該プロセッサに機能接続されており、当該メモリは、プログラムを保存するための読取専用メモリ(ROM)118と、ROM118に保存されたプログラムの実行に使用される作業メモリ領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)120とを含みうる。なお、プロセッサ114が図示されているが、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)チップ、又は任意の他の集積回路デバイスなどの他の電子コンポーネントを使用することも可能であると想定されている。
【0031】
本明細書における説明は、監視システム110の機能に関するものであるが、コントローラ112は、他のシステムの他の動作態様を制御するように構成されてもよい。さらに、コントローラ112は、監視システム110及び他のシステムの機能が割り振られる複数の制御装置及び処理装置の総称であってもよい。例えば、監視システム110の機能の一部は、当該監視システム110の通信モジュール126によってコントローラ112に機能接続されたコントローラ124を有するリモートコンピューティング装置122によって実行することができる。リモートコンピューティング装置122は、機械システムの検査を実行するために監視システム110を利用する企業の集中ロケーション(centralized location)に配置することができる。コントローラ112、124は、監視システム110の動作を制御するために、必要に応じて情報を送受信するように機能接続されている。本明細書で説明するコントローラ112、124の処理を統合及び分散する他の変形例は、本開示による監視システム110で利用することが想定されている。
【0032】
監視システム110は、例えば、幾何学的パターン12における溝14の溝幅WGに対応する所定波長でEMエネルギーを投射可能な1つ以上のEMエネルギー源128、130をさらに含んでもよい。EMエネルギー源128、130は、プロセッサ114から制御信号を受信し、これによって、EMエネルギー源128、130は、所定波長でEMエネルギーを投射することができる。いくつかの実施形態において、各EMエネルギー源128、130は、1つの波長でEMエネルギーを投射することができる。他の実施形態において、各EMエネルギー源128、130、又は単一のEMエネルギー源は、複数の異なる波長でEMエネルギーを投射することができる。EMエネルギー源128、130は、プロセッサ114に機能接続されるものとして図示及び説明したが、当業者であれば、EMエネルギー源128、130は、検査を実行する作業者による操作の手動制御のためのオン/オフスイッチ、波長選択入力部などの関連する入力装置を有する独立型装置であ
ってもよい。
【0033】
監視システム110はまた、プロセッサ114に機能接続されたEMエネルギーディテクタ132を含みうる。EMエネルギーディテクタ132は、EMエネルギー源128、130からのEMエネルギーが、幾何学的パターン12に投射されたときに、当該幾何学的パターン12において反射され又は透過するEMエネルギーの回折波長を検出可能な任意の装置であってもよい。本明細書で説明される実施形態において、EMエネルギーディテクタ132は、反射され又は透過したEMエネルギーの回折波長を検出可能な光ディテクタであってもよい。例えば、EMエネルギーディテクタ132は、電荷結合デバイス(CCD)カメラ、ビデオカメラ、写真フィルム又は他のEMエネルギー感知装置であってもよい。プロセッサ114によって起動されるか、或いは適切な入力装置によって手動で起動されたとき、EMエネルギーディテクタ132は、回折EMエネルギーを捕捉して、検出された回折EMエネルギーの回折波長の表示をプロセッサ114に送信することができる。プロセッサ114は、回折波長を受信して、当該波長をメモリ116に保存することができる。当業者であれば、回折EMエネルギーの波長又は周波数の検出、及び、回折波長又は回折周波数の変化の特定は、本明細書で説明するシステム及び方法の特定の実施形態で要望されるか、或いは必要とされる代替の機構を用いて実現可能であると理解するであろう。また、そのような代替の機構の使用は、発明者によって想定されている。なお、回折EMエネルギーの回折波長の検出及び分析のための他の機構は、本開示のシステム及び方法において同等の用途に使用することができる。
【0034】
監視システム110は、検査処理を制御するために、オペレータによって調節可能な1つ以上の入力装置134を有しうる。入力装置134は、オペレータから入力コマンドを受信可能なスイッチ、ボタン、キーボード、マウス、タッチスクリーンなどを含みうる。モニタ、スクリーン、タッチスクリーン、スピーカ、プリンタなどの出力装置136は、監視システム110からオペレータに情報を伝達することができる。
【0035】
図10には、監視システム110の例示的な実施形態が示されている。プロセッサ114、EMエネルギー源128、及びEMエネルギーディテクタ132は、検査ワークステーション140に組み込まれている。検査ワークステーション140は、例えば、構造コンポーネント10が一部をなす機械システムのためのメンテナンス設備におけるワークステーションであってもよい。構造コンポーネント10が検査ワークステーション140に配置された状態で、EMエネルギー源128を起動させて、適切な波長でEMエネルギーのビーム142を幾何学的パターン12に投射することができる。投射されたビーム142は、幾何学的パターン12によって回折し及び反射されて、回折EMエネルギーのビーム144が生成される。EMエネルギーディテクタ132は、回折EMエネルギーのビーム144を受信及び検出し、プロセッサ114に対して検出されたEMエネルギーを送信し、当該プロセッサは、EMエネルギーの反射ビーム144についての検出された回折波長又は回折周波数の分析及び対応するひずみ値への関連付けを行う。プロセッサ114は、検出された波長又は周波数をひずみ値に変換するために、当該技術分野で周知のアルゴリズムでプログラムされてもよい。
【0036】
図11は、監視システム110による代替の実施形態を示しており、当該システムにおいては、EMエネルギー源128、及びEMエネルギーディテクタ132が、ポータブル検査装置150のコンポーネントであり、プロセッサ114、及びメモリ116が、中央検査ワークステーション152に配置されている。ポータブル検査装置150は、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、携帯情報端末、又は他のポータブル処理装置であってもよい。ポータブル検査装置150は、通信モジュール154をさらに含みうる。当該通信モジュールは、EMエネルギーディテクタ132から検出された色を送信するために、中央検査ワークステーションにおける通信モジュール126との無線通
信が可能である。
図10で図示及び説明した態様と同様に、EMエネルギーは、EMエネルギー源128から投射され、EMエネルギーディテクタ132によって検出される。
【0037】
図11はまた、構造コンポーネント10から見て、ポータブル検査装置150とは反対側にEMエネルギー源130が配置された実施形態を示す。EMエネルギー源130は、機械システム内の手が届きにくい場所に常設されてもよい。図示のように、EMエネルギー源130は、構造コンポーネント10及び幾何学的パターン12に対して、EMエネルギーのビーム142を投射することができる。EMエネルギーは、幾何学的パターン12において溝14によって回折し、ビーム144となって構造コンポーネント10を透過する。回折EMエネルギーのビーム144は、構造コンポーネント10から見て当該エネルギー源とは反対側のEMエネルギーディテクタ132で受信され、プロセッサ114によって処理される。
【0038】
図12は、監視システム110によって構造コンポーネント10、30、50、70、100に対して実行されうる例示的な検査ルーチン160を示す。ルーチン160は、ブロック162で開始され、当該ブロックにおいて、内部に幾何学的パターン12、12A~12Gのうちの1つ以上を有する溝14、14A~14Gを含む構造コンポーネントが作製(例えば、製造)される。溝14、14A~14Gは、任意の適切な製造技術を用いて構造コンポーネントに形成される。幾何学的パターン12、12A~12Gを有する構造コンポーネントが作製された後、制御はブロック164に移行し、当該ブロックにおいて、EMエネルギー源128が、構造コンポーネント、及び幾何学的パターン12、12A~12Gに対して、対応する波長を有するEMエネルギーのビーム142を投射する。投射されたビーム142におけるEMエネルギーは、溝14、14A~14Gによって回折し、回折波長を有する対応するEMエネルギーが、幾何学的パターン12、12A~12Gにおいて反射され又は透過する。反射され又は透過したEMエネルギーのビーム144は、構造コンポーネントにおけるひずみによって生じる溝幅WGの変化により幾何学的パターン12、12A~12Gの複数の異なる位置で変化する複数の回折波長を有しうる。
【0039】
幾何学的パターン12、12A~12Gに投射されたEMエネルギーのビーム142が回折し、反射され又は透過すると、制御はブロック166に移行し、当該ブロックにおいて、回折EMエネルギーのビーム144が、EMエネルギーディテクタによって検出され、回折波長が検出される。EMエネルギーのビーム144の回折波長は、メモリ116に一時的又は永久的に保存される。
【0040】
回折EMエネルギーのビーム144が検出されると、制御はブロック168に移行し、当該ブロックにおいて、監視システム110は、(複数ある場合の)最後のEMエネルギー波長を有するEMエネルギーが幾何学的パターン12、12A~12Gに投射されたか否かを判定する。上述したように、いくつかの実施形態は、第1波長を有するEMエネルギーの第1ビーム142が投射される、第1溝幅WGを有する第1組の溝14、14A~14Gと、第2波長を有するEMエネルギーの第2ビーム142が投射される、第2溝幅WGを有する第2組の溝14、14A~14Gとを含みうる。これらの実施形態においては、一度につき単一の波長を有するビーム142のみを投射することが必要な場合もある。したがって、ブロック168において、幾何学的パターン12、12A~12Gに対して、様々な波長を有するEMエネルギーのビーム142が投射されなかったと判定された場合、制御はブロック164、166に戻り、当該ブロックにおいて、上述したように、異なる波長のうちの1つを有するEMエネルギーが、EMエネルギー源128、130から幾何学的パターン12、12A~12Gに投射され、当該波長に係る投射ビーム142について、EMエネルギーのビーム144が有する回折波長が検出される。
【0041】
全ての必要な波長を有するEMエネルギーのビーム142が投射され、ブロック168において、回折EMエネルギーのビーム144が検出されると、制御はブロック170に移行し、当該ブロックにおいて、ビーム144の回折波長が、構造コンポーネントのひずみに関連付けられる。上述したように、プロセッサ114は、回折したビーム144におけるEMエネルギーの波長をひずみ値に変換するための、当該技術分野で周知のアルゴリズムでプログラムすることができる。
【0042】
ブロック170において回折EMエネルギーのビーム144に対してひずみ値が計算されると、制御はブロック172に移行し、当該ブロックにおいて、回折EMエネルギーのビーム144が有する回折波長から計算されたひずみ値のいずれかが、所定の最小ひずみ値を超えているか否かが判定される。最小ひずみ値は、これを超えた場合に、さらなる検査又はメンテナンスが必要であることを示す値である。説明したように、構造コンポーネントにおけるひずみのいくつかのレベルは、許容可能である。代替の実施例として、機械システムの使用を開始して環境条件に曝す前に、現在のひずみ値と、構造コンポーネントについて得られたベースラインひずみ値とを比較してもよい。幾何学的パターン12、12A~12Gのベースラインひずみ値は、構造コンポーネントにひずみが生じていない状態、又は構造コンポーネントに既知のひずみが生じている状態において、当該構造コンポーネントにビーム142を投射して、これにより変化するビーム144の回折波長を特定することにより設定される。他の実施形態においては、環境条件への曝露中、ひずみが生じない領域に幾何学的パターン12、12A~12Gの一部を配置して、ひずみが生じない領域に係る回折波長により、検査が実行される際のリアルタイム動的ベースラインを設定してもよい。
【0043】
現在のひずみ値と、ベースライン又は他の予め決定されたひずみ値とを比較して、現在のひずみ値が、最小量又は最小パーセンテージを超えて前回のひずみ値と異なるか否かを判定する。ひずみ値が最小ひずみ値以下であって、さらなる検査が不要な場合、制御はブロック174に移行し、当該ブロックにおいて、構造コンポーネントが環境条件に曝される。この曝露は、機械システムの通常環境における通常使用において行われる。機械システムが開発段階にある場合、環境条件は、試験環境で適用される。ブロック174における曝露の後、制御はブロック164に移行して、当該ブロックにおいて、構造コンポーネントを検査する他のインスタンスが開始される。ブロック172において、ひずみ値が最小ひずみ値よりも大きい場合、構造コンポーネントのさらなる検査、メンテナンス、又は交換が必要な可能性がある。ブロック172において、ひずみ値が最小ひずみ値よりも大きい場合、制御はブロック176に移行して、当該ブロックにおいて、構造コンポーネントのさらなる検査が行われる。
【0044】
図12の検査ルーチン160は、構造コンポーネント10、30、50、70、100のひずみを評価し、さらなる検査、メンテナンス、又は交換が必要になる時期を特定するための定量的プロセスの例である。いくつかの実施形態において、定量的な検査ルーチン160を定性的プロセスで置換又は補足することが適切な場合があり、このプロセスにおいては、検査を実行する検査者の経験を用いて構造コンポーネント10、30、50、70、100におけるひずみパターンを分析し、さらなる検査を必要としうるひずみパターンの異常を特定する。
図13は、監視システム110、及び当該検査システム110を使用する検査者、エンジニア、又は他の検査技術者によって構造コンポーネント10、30、50、70、100に対して実行されうる例示的な定性的検査を示す。検査ルーチン180は、検査ルーチン160と同様に開始し、ブロック162において、溝14、14A~14Gの幾何学的パターン12、12A~12Gを用いて構造コンポーネント10、30、50、70、100が作製され、ブロック164において、構造コンポーネント10、30、50、70、100に対してEMエネルギーのビーム142が投射され、ブロック166において、回折EMエネルギーのビーム144が検出され、ブロック170にお
いて、回折EMエネルギーのビーム144が有する回折波長が、構造コンポーネント10、30、50、70、100のひずみに関連付けられる。
【0045】
検査ルーチン180を実施するために、ブロック164、166、170において検査システム100を改変して、構造コンポーネント10、30、50、70、100の表面にビーム142が投射されるときに、検査される構造コンポーネント10、30、50、70、100に対するビーム142、144の位置を特定するようにしてもよい。例えば、
図10に示す検査ワークステーション140に対して移動する際の構造コンポーネント10、又は構造コンポーネント10の表面を通って移動する際の
図11に示すポータブル検査装置150などの、物体(body)や装置の位置及び移動を特定するために、既知の技術が用いられる。回折EMエネルギーのビーム144の位置情報は、ブロック166において検出された回折波長、及びブロック170において特定された関連ひずみ値とともに、メモリ116に保存されてもよい。
【0046】
回折波長が検出されてひずみ値が特定された後、或いは、監視システム110による構造コンポーネント10、30、50、70、100の検査の進行に合わせて動的に、制御はブロック182に移行し、当該ブロックにおいて、回折波長、ひずみ値、及び構造コンポーネント10、30、50、70、100に対するビームの位置を使用して、検査される構造コンポーネント10、30、50、70、100のひずみパターンが生成及び表示される。
図14は、監視システム110によって取得された情報から導出されるひずみパターン202のディスプレイ200の例を示す。ディスプレイ200は、構造コンポーネント10、30、50、70、100におけるひずみのグラフィック表示を行う任意の適切な視覚表示であってもよい。例えば、ディスプレイ200は、検査者がディスプレイ200を見ることができる検査ワークステーション140、ポータブル検査装置150、中央検査ワークステーション152、又は他の場所に配置された、複数の出力装置136のうちの1つにおけるビデオ表示であってもよい。代替の実施形態において、ディスプレイ200は、適切な場所における複数の出力装置136のうちの1つによるプリント出力であってもよい。さらに、ひずみパターン202を表示するための代替の視覚表示出力装置136が当業者には明らかであり、本願の発明者によって想定されている。
【0047】
ひずみパターン202は、検査された構造コンポーネント10、30、50、70、100の全体に亘るひずみ値の分布を視覚的に示すものである。図示例において、ひずみパターン202の表示は、グレースケールの陰影を利用して、構造コンポーネント10、30、50、70、100におけるひずみ値の位置及び大きさを示している。白、又は明るい灰色の色調は、例えば、ひずみが少ない領域を示し、ひずみ値が増大するにつれて灰色の色調が暗くなってもよい。陰影領域の間の間隔は、構造コンポーネント10、30、50、70、100の全体に亘るひずみ値の変化の度合いを示す。代替の実施形態において、ひずみパターンは、色分けされてもよい。例えば、青は、低ひずみ値に対応してもよく、色スペクトルにおいて、色が、高ひずみ値を示す赤まで段階的に変化してもよい。他の実施形態においては、ひずみパターンは、気圧変化を示す天気図、又は標高変化を示す地形図に似た外観を有する一定のひずみ値の線で示されてもよい。さらなる代替の描写方法も想定されている。
【0048】
グレースケール、又は色スペクトルが使用されるいくつかの実施形態においては、ひずみパターン202の様々な色調や色に対応するひずみ値を示すために、ディスプレイ200に目盛りを追加してもよい。ディスプレイ200は、さらに、最小ひずみ領域204における最小値と、最大ひずみ領域206における最大ひずみ値とを表示してもよい。ディスプレイ200は、構造コンポーネント10、30、50、70、100におけるひずみパターンの位置をより明確に表示するために、構造コンポーネント10、30、50、70、100の撮像画像又はグラフィック表示に重ねて配置されたひずみパターン202を
表示することによって、より質を向上させることができる。
【0049】
ブロック182においてひずみパターン202が生成されてディスプレイ200に表示されると、制御はブロック184に移行し、当該ブロックにおいて、検査者、メンテナンス担当者、又は他の技術者がひずみパターン202を確認して、当該ひずみパターン202が、構造コンポーネント10、30、50、70、100が曝される環境条件において正常なものであるか否かを判定することができる。検査者は、現在の構造コンポーネント、及び/又は他の構造コンポーネントを検査した経験に照らして、ひずみパターン202が、予想される特性を有するか否か、又はひずみパターン202が、さらなる検査が必要となりうる問題を示しているか否かについての評価を行ってもよい。この評価は、上述したタイプの構造コンポーネント10、30、50、70、100について収集したベースライン情報を確認することを含みうる。ベースライン情報は、任意の適切な形式で表示される。いくつかの実施形態において、ベースライン情報は、ベースラインひずみパターンを生成するために使用されてもよい。当該ひずみパターンは、視覚的な比較を行うために、リアルタイムのひずみパターン202の補足としてディスプレイ200に表示される。
【0050】
ブロック184において、検査者が、ひずみパターン202が正常であると判定し、ひずみパターン202に示されるひずみ値が、問題が生じていることを示すひずみ値以下又は未満であって、さらなる検査を必要としない場合、制御はブロック174に移行し、当該ブロックにおいて、上述したように、構造コンポーネントが環境条件に曝される。ブロック174における曝露の後、制御はブロック164に戻って、当該ブロックにおいて、構造コンポーネント10、30、50、70、100を検査する他のインスタンスが開始される。ブロック184において、ひずみパターン202におけるひずみ値が予想とは異なる、すなわち予想よりも大きいか、或いは小さい場合、構造コンポーネント10、30、50、70、100のさらなる検査、メンテナンス、又は交換が必要な可能性がある。ブロック184において、ひずみパターン202が、構造コンポーネント10、30、50、70、100の予想ひずみパターンと比較して正常でない場合、制御はブロック176に移行して、当該ブロックにおいて、構造コンポーネント10、30、50、70、100のさらなる検査が行われる。上述のように、定性的検査ルーチン180は、
図12に示す定量的検査ルーチン160の代替又は補足として実施することができる。
【産業上の利用性】
【0051】
監視システム110、及びルーチン160は、機械システムにおける構造コンポーネントの構造的一体性の評価において幅広い用途を有しうる。例えば、監視システム110、及びルーチン160は、
図8に示す構造コンポーネント100用のパッチ102などの、修理部分における接合品質を保証したり、構造コンポーネント100の交換前の時間の経過に伴う応力及びひずみに関するパッチ102の反応を保証したりするための、修理部分のモニタリングの用途において使用可能である。構造コンポーネント100に対してパッチ102を取り付ける前に、当該パッチ102に関する幾何学的パターン12Cを作製して、構造コンポーネント100とパッチ102との間の接合ラインの近くに配置した場合、ルーチン160に従って接合によるひずみを画像化及び分析して、パッチ102における残留応力、及び構造コンポーネント100に対するパッチ102の接合品質を検出することができる。パッチ102が取り付けられた構造コンポーネント100を環境条件に曝す前のパッチ102のベースライン画像は、パッチ102、及び構造コンポーネント100における初期のひずみを示すことができ、環境条件に構造コンポーネント100を曝した後に定期的に画像化を行うことにより、接合の品質及び一体性を監視して、時間の経過に伴う修理部分の劣化を示すことができる。監視システム110、及びルーチン160から導出されたひずみ値を、構造コンポーネント100におけるパッチ102の有限要素解析(FEA)モデルに入力して解析を行うことにより、パッチ102の性能評価、将来の検査スケジュール、NDIに対するアプローチ、並びに、予測されるメンテナンス及び修
理計画が可能となる。
【0052】
監視システム110、及びルーチン160は、構造試験環境に適用することも可能である。製造者は、通常、現場における適切な性能を保証するために、コンポーネント及び修理部分のサブスケール、ミッドスケール、及びフルスケールの構造試験を行う。このような試験には、静的及び動的な荷重条件が含まれうる。このタイプの構造試験では現在、いくつかの技術が用いられている。例えば、試験中、ひずみゲージは、応力及びひずみを監視するためのポイントセンサ(point sensor)として構造コンポーネントに使用されるが、構造コンポーネントに対する損傷が生じて拡がっていく位置の検出についての当該ひずみゲージの有効性は、構造コンポーネントのどこにひずみゲージが配置されるかによって決まる。デジタル画像相関法(Digital Image Correlation: DIC)は、構造試験においてストリームマッピング(stream mapping)を提供するために使用可能であるが、処理が高価であり、操作において専門知識を必要とし、さらに、表面上に斑点パターンを散布しなければならない。このため、DICは、構造試験においては、使用に関する慎重な検討の後に、使用される。監視システム110、及びルーチン160は、現在用いられている試験技術の代替又は補足として使用してもよく、試験荷重条件適用の全体を通してリアルタイムのひずみパターンを監視及び測定するために使用することができる。検出されたひずみパターンは、解析モデルを関連付けたり、試験対象の構造コンポーネントにおける損傷発生箇所(initial failure locations)の位置を示したりするために使用することがで
きる。修理部分のモニタリングの用途の場合と同様に、FEAツールにひずみ情報を直接提供することにより、リアルタイム、又は荷重レベルの損傷進行情報を提供することができる。損傷の発生及び拡がりに関する情報は、構造コンポーネントの構造モデルを改良したり、構造設計を変更したりするために使用することができる。
【0053】
監視システム110、及びルーチン160は、機械システム、特に航空宇宙システムにおいてより普及しつつある複合材部品の製造処理を改善するために使用することができる。複合材部品の製造開発、定期的な処理監視、及び作製において、複合材部品を作製することによって生じる当該部品内のひずみを特定及び追跡すると有利であろう。内部のひずみは、複合材部品において、幾何学的パターン12、12A~12Gを含んで構成されるひずみインジケータプライ(strain indicator plies)を用いて追跡することができる。ひずみインジケータプライを形成するために、後に幾何学的パターン12、12A~12Gを含むよう構成されるプライ上にスプレーされる追加樹脂層として、或いは、複合材部品の硬化後に除去される剥離可能なプライを形成するアップリケ(applique)として、製造工程において選択されたプライの樹脂に幾何学的パターン12、12A~12Gを施す。パターン付ひずみインジケータプライは、硬化処理により複合材部品に生じる残留応力及びひずみを示す。パターン付ひずみインジケータプライからの情報を用いて、複合材部品の製造処理を修正することにより、反りを減らし、出来栄えを予測して、製造処理が仕様の範囲内であることを確認することができる。
【0054】
監視システム110、及びルーチン160はまた、機械システムにおいてアクセスが制限された領域に配置された構造コンポーネントの構造的健全性を監視する際に使用することも可能である。航空機、及び他の機械システムにおいてアクセスが制限された構造体は、構造的一体性を確保する上で極めて重要であり、これらの構造体には高い荷重が加わる可能性がある。このようなアクセスが制限された構造体の構造的健全性の試験では、コストのかかる分解処理及び再組立処理が必要になる場合がある。製造工程において、アクセスが制限された構造コンポーネント内の高い効果を奏する位置に、溝14、14A~14Gの幾何学的パターン12、12A~12Gの形態でひずみ確認面(strain witness surfaces)を形成することができる。光学ボアスコープ若しくはビデオボアスコープ、又は
小型カメラ、及び拡張機構は、監視システム110におけるEMエネルギー源128又は130、及びEMエネルギーディテクタ132として機能することができ、アクセスが制
限された構造体における幾何学的パターン12、12A~12Gを透過したEMエネルギーが有する回折波長を検出することができ、例えば、回折波長データを分析してコンポーネントの劣化を検出し、ゆっくり拡がる損傷を修理が必要となるに至るまで監視することができる。
図11に関連させて上述したように、EMエネルギー源130及びEMエネルギーディテクタ132のうちのいずれか一方は、手の届きにくい空間内に常設してもよいし、構造コンポーネントを完全に分解する必要がないやり方で、検査中に設置してもよい。EMエネルギー源130及びEMエネルギーディテクタ132のうちの他方は、構造コンポーネントから見て当該一方の反対側に配置して、EMエネルギーの透過ビーム144を検出してもよい。アクセスが可能な場合、EMエネルギー検査は、赤外線サーモグラフィやテラヘルツイメージングなどの他のNDIメソッドと組み合わせることにより、アクセスが制限されたコンポーネントの評価及び配置を改善することができる。監視システム110及びルーチン160についてここに記載した用途、及び上述した用途は例示的なものであって、さらなる追加的な用途が本発明者によって想定されている。
【0055】
さらに、本開示は、以下の付記による例を含む。
【0056】
付記1.第1外層と、第2外層と、前記第1外層と前記第2外層との間に配置された第1パターン層と、を含む多層構造コンポーネントであって、前記第1パターン層は、その第1表面に第1幾何学的パターンの溝を有し、前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含み、前記第1溝幅に対応する第1波長を有する電磁(EM)エネルギーの第1投射ビームは、前記第1組の溝に当たると回折して、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記第1回折波長は、前記多層構造コンポーネントが環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第1溝幅の変化を示し、前記第1外層、及び前記第2外層のうちの少なくとも一方は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビーム、及び前記回折EMエネルギーの第1回折ビームを透過させる外層材料で形成されている、多層構造コンポーネント。
【0057】
付記2.前記第1パターン層は、金属材料で形成されている、付記1に記載の多層構造コンポーネント。
【0058】
付記3.前記第1外層は、前記外層材料で形成され、前記第1パターン層は、前記第1外層を通過する前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを反射して、前記回折EMエネルギーの第1回折ビームに前記第1外層を透過させる、付記1に記載の多層構造コンポーネント。
【0059】
付記4.前記第1外層、及び前記第2外層は、前記外層材料で形成され、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、第1外層を通過して前記第1パターン層に到達すると、前記回折EMエネルギーの第1回折ビームは、前記第2外層を通過して、前記多層構造コンポーネントから出る、付記1に記載の多層構造コンポーネント。
【0060】
付記5.中間層と、第2パターン層と、を含み、前記中間層は、前記第1外層と前記第2外層との間に配置されており、前記第1パターン層は、前記第1外層と前記中間層との間に配置されており、前記第2パターン層は、前記中間層と前記第2外層との間に配置されるとともに、その第2表面に第2幾何学的パターンの溝を有し、前記第2幾何学的パターンの前記溝は、各々が、前記第1溝幅とは異なる第2溝幅を有する第2組の溝を含み、前記第2溝幅に対応する第2波長を有するEMエネルギーの第2投射ビームは、前記第2組の溝に当たると回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記多層構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、前記外層材料は、EMエネルギーの前記第2投射ビーム、及び回折EMエネルギーの第2回折ビームを透過させる、付記1
に記載の多層構造コンポーネント。
【0061】
付記6.前記第2溝幅は、前記第1溝幅よりも大きく、前記第2波長は、前記第1波長よりも大きく、これによって、EMエネルギーの前記第2投射ビームが、回折せずに前記第1幾何学的パターンの前記溝を通過する、付記5に記載の多層構造コンポーネント。
【0062】
付記7.前記溝の前記第1幾何学的パターンは、第2組の溝を有する二次元の幾何学的パターンを含み、前記第2組の溝の各々は、第2溝幅を有するとともに、前記第1組の溝が間隔を空けて配置されている第1方向と非平行な第2方向に間隔を空けて配置されている、付記1に記載の多層構造コンポーネント。
【0063】
付記8.前記第2溝幅は、前記第1溝幅とは異なる幅であり、前記第2溝幅に対応する第2波長を有するEMエネルギーの第2投射ビームは、前記第2組の溝に当たると回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記多層構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、前記外層材料は、EMエネルギーの第2投射ビーム、及び回折EMエネルギーの第2回折ビームを透過させる、付記7に記載の多層構造コンポーネント。
【0064】
付記9.前記第1組の溝におけるそれぞれの溝は、類似した幾何学的形状を有するとともに、面積の小さい領域から面積の大きい領域まで順に複数の領域を画定しており、同心状に配置されて前記第1幾何学的パターンの前記溝を形成している、付記1に起債の多層構造コンポーネント。
【0065】
付記10.前記第1幾何学的パターンの隣接する溝間の溝離間距離は、前記第1幾何学的パターンが中心点から外方に広がるにつれて、大きくなっている、付記9に記載の多層構造コンポーネント。
【0066】
付記11.前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、前記第2溝幅に対応する第2波長を有するEMエネルギーの第2投射ビームは、前記第2組の溝に当たると回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記多層構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、前記外層材料は、前記EMエネルギーの前記第2投射ビーム、及び回折EMエネルギーの前記第2回折ビームを透過させる、付記1に記載の多層構造コンポーネント。
【0067】
付記12.前記第1パターン層は、前記溝の前記第1幾何学的パターンを形成する複数の平行ワイヤを含み、前記溝の前記第1溝幅は、前記複数の平行ワイヤのうちの隣接するワイヤ間のワイヤ離間距離と等しい、付記1に記載の多層構造コンポーネント。
【0068】
付記13.前記第1パターン層は、前記溝の前記第1幾何学的パターンを形成するワイヤメッシュスクリムを含み、前記ワイヤメッシュスクリムは、第1方向に配向された第1組の平行ワイヤと、前記第1方向と非平行な第2方向に配向された第2組の平行ワイヤと、を含み、前記第1溝幅は、前記第1組の平行ワイヤのうちの隣接するワイヤ間の第1ワイヤ離間距離と等しく、前記溝の第2溝幅は、前記第2組の平行ワイヤのうちの隣接するワイヤ間の第2ワイヤ離間距離と等しい、付記1に記載の多層構造コンポーネント。
【0069】
付記14.前記第1組の平行ワイヤは、前記第2組の平行ワイヤと互いに織り合わされている、付記13に記載の多層構造コンポーネント。
【0070】
付記15.前記第1溝幅は、前記第2溝幅とは異なる幅である、付記13に記載の多層構造コンポーネント。
【0071】
付記16.構造コンポーネントのひずみを評価するための検査システムであって、第1幾何学的パターンの溝と、第1電磁(EM)エネルギー源と、EMエネルギーディテクタと、プロセッサと、を含み、前記第1幾何学的パターンの前記溝は、前記構造コンポーネント内に配置されるとともに、各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含み、前記第1EMエネルギー源は、前記第1溝幅に対応する第1波長でEMエネルギーの第1投射ビームを投射し、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが前記構造コンポーネントに投射されると、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームは、前記構造コンポーネントを透過して前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第1組の溝によって回折して、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記第1回折波長は、前記構造コンポーネントが環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第1溝幅の変化を示し、前記EMエネルギーディテクタは、前記第1EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射すると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出し、前記プロセッサは、前記EMエネルギーディテクタに機能接続されており、前記EMエネルギーディテクタによって前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を受信して、前記構造コンポーネントの前記ひずみに前記第1回折波長を関連付けるように構成されている、検査システム。
【0072】
付記17.前記第1幾何学的パターンの前記溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを反射して、前記構造コンポーネントに前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームを再び透過させ、前記第1EMエネルギー源、及び前記EMエネルギーディテクタは、前記構造コンポーネントから見て同じ側に配置されている、付記16に記載の検査システム。
【0073】
付記18.前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームは、前記構造コンポーネントを透過して、前記第1幾何学的パターンの前記溝から見て、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームとは反対側に到達し、前記第1EMエネルギー源、及び前記EMエネルギーディテクタは、前記構造コンポーネントを挟んで互いに反対側に配置されている、付記16に記載の検査システム。
【0074】
付記19.前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、前記検査システムは、前記第2溝幅に対応する第2波長でEMエネルギーの第2投射ビームを投射する第2EMエネルギー源を含み、EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに投射されると、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記構造コンポーネントを透過して前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第2組の溝によって回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、前記第2EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対してEMエネルギーの前記第2投射ビームを投射すると、前記第2組の溝で反射された回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長が、前記EMエネルギーディテクタによって検出され、前記プロセッサは、前記EMエネルギーディテクタによって回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を受信して、前記構造コンポーネントにおける前記ひずみに前記第2回折波長を関連付けるように構成されている、付記16に記載の検査システム。
【0075】
付記20.第2幾何学的パターンの溝と、第2EMエネルギー源と、を含み、前記第2幾何学的パターンの前記溝は、前記構造コンポーネント内において、当該構造コンポーネ
ントの外面から見て、前記第1幾何学的パターンの前記溝とは異なる深さに配置されるとともに、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、前記第2EMエネルギー源は、前記第2溝幅に対応する第2波長でEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに投射されると、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記構造コンポーネントを透過して前記第2幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第2組の溝によって回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、前記第2EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対してEMエネルギーの前記第2投射ビームを投射すると、前記第2組の溝で反射された回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長が、前記EMエネルギーディテクタによって検出され、前記プロセッサは、前記EMエネルギーディテクタによって回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を受信して、前記構造コンポーネントにおける前記ひずみに前記第2回折波長を関連付けるように構成されている、付記16に記載の検査システム。
【0076】
付記21.前記第2溝幅は、前記第1溝幅よりも大きく、前記第2波長は、前記第1波長よりも大きく、これによって、EMエネルギーの前記第2投射ビームが、回折せずに前記第1組の溝を通過する、付記20に記載の検査システム。
【0077】
付記22.前記第1幾何学的パターンの前記溝は、第1方向に間隔を空けて配置されている前記第1組の溝、及び前記第1方向と非平行な第2方向に間隔を空けて配置されている第2組の溝を有する二次元の幾何学的パターンを含む、付記16に記載の検査システム。
【0078】
付記23.前記第1組の溝は、前記第1溝幅を有し、前記第2組の溝は、前記第1溝幅とは異なる第2溝幅を有し、前記第1EMエネルギー源は、前記第2溝幅に対応する第2波長を有するEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記第2組の溝によって回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記多層構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、前記第1EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対してEMエネルギーの前記第2投射ビームを投射すると、前記第2組の溝で反射された回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長が、前記EMエネルギーディテクタによって検出され、前記プロセッサは、前記EMエネルギーディテクタによって回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を受信して、前記構造コンポーネントにおける前記ひずみに前記第2回折波長を関連付けるように構成されている、付記22に記載の検査システム。
【0079】
付記24.前記第1EMエネルギー源、及び前記EMエネルギーディテクタを備えるとともに、無線通信により、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を前記プロセッサに送信するポータブル検査装置を含む、付記16に記載の検査システム。
【0080】
付記25.構造コンポーネントにおけるひずみを評価するための方法であって、前記構造コンポーネントが内部に第1幾何学的パターンの溝を有し、前記第1幾何学的パターンの前記溝の各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含む構成において、ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントを透過させて前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達させる電磁(EM)エネルギーの第1投射ビームを投射することを含み、その際、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームは、前記第1溝幅に対応する第1波長を有し、前記第1組の溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを回折させて、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記第1回折波長は、前記
構造コンポーネントが環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第1溝幅の変化を示し、また前記方法は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出すること、および、前記第1幾何学的パターンの前記溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を前記構造コンポーネントのひずみに関連付けること、を含む。
【0081】
付記26.付記25に記載の方法において、前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントを透過させて前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達させるEMエネルギーの第2投射ビームを投射することを含み、その際、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記第2溝幅に対応する第2波長を有し、前記第2組の溝は、EMエネルギーの前記第2投射ビームを回折させて、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、また前記方法は、EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第2組の溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を検出すること、および、前記第2組の溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を前記構造コンポーネントのひずみに関連付けること、を含む。
【0082】
付記27.付記25に記載の方法において、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝される前、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを第1発目のものとして投射すること、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントに第1発目のものとして投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有するベースライン回折波長を検出すること、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝された後、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを第2発目のものとして投射すること、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントに第2発目のものとして投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出すること、および、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントに第2発目のものとして投射されると、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長と、前記ベースライン回折波長とを比較して、前記構造コンポーネントの対応する位置におけるひずみの変化を特定することを含む。
【0083】
付記28.付記25に記載の方法において、前記構造コンポーネントは、第2幾何学的パターンの溝を有し、前記第2幾何学的パターンの前記溝は、前記構造コンポーネント内において、当該構造コンポーネントの表面から見て、前記第1幾何学的パターンの前記溝とは異なる深さに配置されるとともに、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントを透過させて前記第2幾何学的パターンの前記溝に到達させるEMエネルギーの第2投射ビームを投射することを含み、その際、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記第2溝幅に対応する第2波長を有し、前記第2組の溝は、EMエネルギーの前記第2投射ビームを回折させて、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、また前記方法は、EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第2幾何学的パターンの前記溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を検出すること、および、前記第2幾何学的パターンの前記溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を前記構造コンポーネントのひずみに関連付けること、を含む。
【0084】
付記29.付記25に記載の方法において、前記第1組の溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを反射して、前記構造コンポーネントに前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームを再び透過させ、ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントから見て同じ側において、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射し、前記第1回折波長を検出することを含む。
【0085】
付記30.付記25に記載の方法において、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームは、前記構造コンポーネントを透過して、前記第1幾何学的パターンの前記溝から見て、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが存在する側の反対側に到達し、ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントの一方側で前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射し、前記構造コンポーネントから見て前記一方側の反対側で前記第1回折波長を検出することを含む。
【0086】
付記31.付記25に記載の方法において、前記構造コンポーネントにおけるひずみと最小ひずみ値とを比較し、前記構造コンポーネントにおけるひずみが前記最小ひずみ値よりも大きいと判定した場合、これに応じて、前記構造コンポーネントのさらなる検査を行う。
【0087】
付記32.付記25に記載の方法において、前記構造コンポーネントのひずみから導出されるひずみパターンを生成及び表示することを含み、その際、前記ひずみパターンは、前記構造コンポーネントの検査領域におけるひずみ値のグラフィック表示であり、また前記方法は、前記ひずみパターンが、前記構造コンポーネントの予想ひずみパターンとは異なると判定した場合、これに応じて、前記構造コンポーネントのさらなる検査を行うことを含む。
【0088】
以上、多くの異なる実施形態について詳細な説明を行ってきたが、保護の法的範囲は、本書の最後に記載されている請求の範囲の文言によって規定される。実施形態の詳細な説明は、例示的なものとしてのみ解釈されるべきである。また、可能な実施形態の全てを説明することは、不可能ではないが非現実的であるため、以下においては、可能な実施形態の全てを説明しているわけではない。現在の技術、又は本願の出願日よりも後に開発された技術を用いて多くの代替の実施形態を実現することが可能であるが、これらの実施形態も、保護範囲を規定する請求の範囲に含まれる。
【0089】
また、本書において用語の定義が明確に記載されていない限り、用語の平易又は一般的な意味を超えて当該用語を限定することは、明示的にも暗示的にも意図していない。そのような用語の範囲は、本書の(請求項の文言以外の)セクションにおけるいかなる記載に基づいても限定されない。本書の最後における請求の範囲に記載されている用語が、1つの意味と一致するように言及されている場合、これは、読み手を混乱させないように明瞭化することを目的としているのであって、請求の範囲における用語をその1つの意味に限定することは、暗示的にも明示的にも意図されていない。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造コンポーネントのひずみを評価するための検査システムであって、
各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含んでおり且つ前記構造コンポーネント内に配置された第1幾何学的パターンの溝であって、環境条件に曝されたときに前記構造コンポーネントに生じるひずみが前記第1幾何学的パターンに変化を生じさせ、前記第1溝幅が、前記第1組の溝の少なくとも一部を増加または減少させることができる、第1幾何学的パターンの溝と、
前記第1溝幅に対応する第1波長でEMエネルギーの第1投射ビームを投射する第1EMエネルギー源であって、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが前記構造コンポーネントに投射されると、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントを透過して前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第1組の溝によって回折して、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記構造コンポーネントのひずみによる前記第1溝幅の変化が、前記構造コンポーネントの前記ひずみに対応する前記第1回折波長に変化を生じさせる、第1EMエネルギー源と、
前記第1EMエネルギー源が前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射するとき、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出するEMエネルギーディテクタと、
前記EMエネルギーディテクタに機能接続されたプロセッサであって、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を前記EMエネルギーディテクタから受信し、前記構造コンポーネントの前記ひずみに前記第1回折波長を関連付けるように構成されているプロセッサと、
を具備し、
前記構造コンポーネントは、前記第1幾何学的パターンの溝を形成する複数の平行ワイヤを含み、前記第1溝幅は、前記複数の平行ワイヤのうちの隣接するワイヤ間のワイヤ離間距離と等しい、検査システム。
【請求項2】
前記第1幾何学的パターンの前記溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを反射して、前記構造コンポーネントに前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームを再び透過させ、前記第1EMエネルギー源、及び前記EMエネルギーディテクタは、前記構造コンポーネントから見て同じ側に配置されている、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームは、前記構造コンポーネントを透過して、前記第1幾何学的パターンの前記溝から見て、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームの存在する側の反対側に到達し、前記第1EMエネルギー源、及び前記EMエネルギーディテクタは、前記構造コンポーネントを挟んで互いに反対側に配置されている、請求項1に記載の検査システム。
【請求項4】
前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、前記検査システムは、前記第2溝幅に対応する第2波長でEMエネルギーの第2投射ビームを投射する第2EMエネルギー源を含み、EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに投射されると、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記構造コンポーネントを透過して前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第2組の溝によって回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、
前記第2EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対してEMエネルギーの前記第2投射ビームを投射すると、前記第2組の溝で反射された回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長が、前記EMエネルギーディテクタによって検出され、
前記プロセッサは、回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を前記EMエネルギーディテクタから受信して、前記構造コンポーネントにおける前記ひずみに前記第2回折波長を関連付けるように構成されている、請求項1に記載の検査システム。
【請求項5】
第2幾何学的パターンの溝と、第2EMエネルギー源と、を含み、
前記第2幾何学的パターンの前記溝は、前記構造コンポーネント内において、当該構造コンポーネントの外面から見て、前記第1幾何学的パターンの前記溝とは異なる深さに配置されるとともに、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、
前記第2EMエネルギー源は、前記第2溝幅に対応する第2波長でEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに投射されると、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記構造コンポーネントを透過して前記第2幾何学的パターンの前記溝に到達し、前記第2組の溝によって回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、
前記第2EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対してEMエネルギーの前記第2投射ビームを投射すると、前記第2組の溝で反射された回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長が、前記EMエネルギーディテクタによって検出され、
前記プロセッサは、回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を前記EMエネルギーディテクタから受信して、前記構造コンポーネントにおける前記ひずみに前記第2回折波長を関連付け、
前記第2溝幅は、前記第1溝幅よりも大きく、前記第2波長は、前記第1波長よりも大きく、これによって、EMエネルギーの前記第2投射ビームが、回折せずに前記第1組の溝を通過する、請求項1に記載の検査システム。
【請求項6】
前記第1幾何学的パターンの前記溝は、第1方向に間隔を空けて配置されている前記第1組の溝、及び前記第1方向と非平行な第2方向に間隔を空けて配置されている第2組の溝を有する二次元の幾何学的パターンを含み、
前記第1組の溝は、前記第1溝幅を有し、前記第2組の溝は、前記第1溝幅とは異なる第2溝幅を有し、前記第1EMエネルギー源は、前記第2溝幅に対応する第2波長を有するEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記第2組の溝によって回折して、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、前記第1EMエネルギー源が、前記構造コンポーネントに対してEMエネルギーの前記第2投射ビームを投射すると、前記第2組の溝で反射された回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長が、前記EMエネルギーディテクタによって検出され、前記プロセッサは、回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を前記EMエネルギーディテクタから受信して、前記構造コンポーネントにおける前記ひずみに前記第2回折波長を関連付けるように構成されている、請求項1に記載の検査システム。
【請求項7】
前記第1EMエネルギー源、及び前記EMエネルギーディテクタを備えるとともに、無線通信により、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を前記プロセッサに送信するポータブル検査装置を含む、請求項1に記載の検査システム。
【請求項8】
構造コンポーネントにおけるひずみを評価するための方法であって、前記構造コンポーネントは、内部に第1幾何学的パターンの溝を有し、前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第1溝幅を有する第1組の溝を含み、環境条件に曝されたときに前記構造コンポーネントに生じるひずみが、前記第1幾何学的パターンに変化を生じさせ、前記第1溝幅が、前記第1組の溝の少なくとも一部を増加または減少させることができ、ひずみを評価するための前記方法は、
前記構造コンポーネントを透過させて前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達させる電磁(EM)エネルギーの第1投射ビームを投射し、その際、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームは、前記第1溝幅に対応する第1波長を有し、前記第1組の溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを回折させて、第1回折波長を有する回折EMエネルギーの第1回折ビームを形成し、前記構造コンポーネントのひずみによる前記第1溝幅の変化が、前記構造コンポーネントの前記ひずみに対応する前記第1回折波長に変化を生じさせ、
前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出し、
前記第1幾何学的パターンの前記溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を、前記構造コンポーネントのひずみに関連付ける、ことを含み、
前記構造コンポーネントは、前記第1幾何学的パターンの溝を形成する複数の平行ワイヤを含み、前記第1溝幅は、前記複数の平行ワイヤのうちの隣接するワイヤ間のワイヤ離間距離と等しい、方法。
【請求項9】
前記第1幾何学的パターンの前記溝は、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、ひずみを評価するための前記方法は、
前記構造コンポーネントを透過させて前記第1幾何学的パターンの前記溝に到達させるEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、その際、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記第2溝幅に対応する第2波長を有し、前記第2組の溝は、EMエネルギーの前記第2投射ビームを回折させて、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、
EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第2組の溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を検出し、
前記第2組の溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を、前記構造コンポーネントのひずみに関連付ける、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝される前、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを第1発目のものとして投射し、
前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントに第1発目のものとして投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有するベースライン回折波長を検出し、
前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝された後、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを第2発目のものとして投射し、
前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントに第2発目のものとして投射されると、前記第1組の溝からの前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長を検出し、
前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが、前記構造コンポーネントに第2発目のものとして投射されると、前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームが有する前記第1回折波長と、前記ベースライン回折波長とを比較して、前記構造コンポーネントの対応する位置におけるひずみの変化を特定する、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記構造コンポーネントは、第2幾何学的パターンの溝を有し、前記第2幾何学的パターンの前記溝は、前記構造コンポーネント内において、当該構造コンポーネントの表面から見て、前記第1幾何学的パターンの前記溝とは異なる深さに配置されるとともに、各々が第2溝幅を有する第2組の溝を含み、ひずみを評価するための前記方法は、
前記構造コンポーネントを透過させて前記第2幾何学的パターンの前記溝に到達させるEMエネルギーの第2投射ビームを投射し、その際、EMエネルギーの前記第2投射ビームは、前記第2溝幅に対応する第2波長を有し、前記第2組の溝は、EMエネルギーの前記第2投射ビームを回折させて、第2回折波長を有する回折EMエネルギーの第2回折ビームを形成し、前記第2回折波長は、前記構造コンポーネントが前記環境条件に曝されたときに生じるひずみによる前記第2溝幅の変化を示し、
EMエネルギーの前記第2投射ビームが前記構造コンポーネントに対して投射されると、前記第2幾何学的パターンの前記溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが
有する前記第2回折波長を検出し、
前記第2幾何学的パターンの前記溝からの回折EMエネルギーの前記第2回折ビームが有する前記第2回折波長を、前記構造コンポーネントのひずみに関連付ける、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1組の溝は、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを反射して、前記構造コンポーネントに前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームを再び透過させ、ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントから見て同じ側において、前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射し、前記第1回折波長を検出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記回折EMエネルギーの前記第1回折ビームは、前記構造コンポーネントを透過して、前記第1幾何学的パターンの前記溝から見て、前記EMエネルギーの前記第1投射ビームが存在する側の反対側に到達し、ひずみを評価するための前記方法は、前記構造コンポーネントの一方側で前記構造コンポーネントに対して前記EMエネルギーの前記第1投射ビームを投射し、前記構造コンポーネントから見て前記一方側の反対側で前記第1回折波長を検出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記構造コンポーネントにおけるひずみと最小ひずみ値とを比較し、
前記構造コンポーネントにおけるひずみが前記最小ひずみ値よりも大きいと判定した場合、これに応じて、前記構造コンポーネントのさらなる検査を行う、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記構造コンポーネントのひずみから導出されるひずみパターンを生成及び表示し、その際、前記ひずみパターンは、前記構造コンポーネントの検査領域におけるひずみ値のグラフィック表示であり、
前記ひずみパターンが、前記構造コンポーネントの予想ひずみパターンとは異なると判定した場合、これに応じて、前記構造コンポーネントのさらなる検査を行う、ことを含む、請求項8に記載の方法。
【外国語明細書】