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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160709
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】X線検出器、及びX線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20241108BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20241108BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20241108BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20241108BHJP
【FI】
G01T1/20 C
G01T1/20 B
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 D
H01L27/144 K
H01L27/146 D
H01L27/146 C
A61B6/00 300Q
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068668
(22)【出願日】2023-04-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩三
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
4M118
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188CC12
2G188CC15
2G188CC18
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD10
2G188DD42
4C093CA08
4C093EB12
4C093EB17
4C093EB30
4C093FA32
4C093FA53
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA05
4M118CB11
4M118GD04
4M118GD07
(57)【要約】
【課題】ぼやけを抑えた画像が得られるX線検出器を提供する。
【解決手段】X線検出器10は、複数のシンチレータであって、入射したX線を光に変換して出射するシンチレータ2-1,2-2,2-3と、複数のシンチレータと交互に積層された、屈折率が前記シンチレータより低い、複数の低屈折層3-1,3-2,3-3と、交互に積載されたシンチレータ及び低屈折層から出射された光を電気信号に変換する光電変換素子が複数配列された光電変換素子アレイ1と、を備える。シンチレータと低屈折層との少なくとも一方は、出射する光を対応する光電変換素子に向けて集光する集光部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシンチレータであって、個々のシンチレータが入射したX線を光に変換して出射する、複数のシンチレータと、
前記複数のシンチレータと交互に積層された、屈折率が前記シンチレータより低い、複数の低屈折層と、
交互に積載された前記シンチレータ及び前記低屈折層から出射された前記光を電気信号に変換する光電変換素子が複数配列された光電変換素子アレイと、を備え、
前記シンチレータと前記低屈折層との少なくとも一方は、出射する光を対応する前記光電変換素子に向けて集光する集光部を有する
X線検出器。
【請求項2】
前記集光部は、出射方向に向けて凸の凸レンズ形状を有した、前記シンチレータの前記低屈折層との境界面である
請求項1に記載のX線検出器。
【請求項3】
前記集光部は、前記低屈折層の有する、入射方向に向けて凸の凸レンズ形状部分である
請求項1に記載のX線検出器。
【請求項4】
前記シンチレータの入射側に積層され、前記シンチレータ側の第1面から入射した光を反射し、前記第1面の逆側の第2面から入射した光を透過させる半反射層をさらに備える
請求項1に記載のX線検出器。
【請求項5】
前記シンチレータの厚みは、前記シンチレータにおける前記X線の入射位置から前記光の出射位置までの前記光電変換素子の配列方向における距離が前記光電変換素子の前記配列方向の長さ以下となる厚みである
請求項1に記載のX線検出器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のX線検出器を備える
X線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線検出器、及びX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
身体などの対象物にX線を照射し、透過したX線を検出するX線検出器が知られている。そのようなX線検出器はX線撮影装置に用いられ、画像診断などに用いられる。X線撮影装置に用いられるX線検出器は、X線を可視光に変換するシンチレータと、シンチレータから出射された可視光を電気信号に変換する光電変換素子を複数有する光電変換素子アレイと、によってX線強度を電気信号として検出する。
【0003】
このようなX線検出器において得られる画像の解像度を向上させる技術として、特開2009-222578号公報(以下、特許文献1)は、第1主面から入射したX線をそれよりも波長の長い光に変換して、第1主面の反対側の第2主面から光を出射し、第1主面及び第2主面の少なくともいずれかに集光レンズ形状を有するシンチレータと、第2主面側に設けられ、光を電気信号に変換する光電変換素子を有する光電変換素子アレイと、を備えたことを特徴とするX線固体検出器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-222578号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のX線固体検出器では、シンチレータ内部(上部)で光の屈折や散乱が大きすぎた場合、集光レンズ形状を有する面のみでは集光しきれない場合もある。この場合、対象物のエッジ部分はステップ状に輝度が変化せず、グラデーション状に変化することがある。そのため、画像のぼやけが発生してしまう場合がある。そこで、ぼやけを抑えた画像が得られるX線検出器、及びX線撮影装置が望まれる。
【0006】
ある実施の形態に従うと、X線検出器は、複数のシンチレータであって、個々のシンチレータが入射したX線を光に変換して出射する、複数のシンチレータと、複数のシンチレータと交互に積層された、屈折率が前記シンチレータより低い、複数の低屈折層と、交互に積載されたシンチレータ及び低屈折層から出射された光を電気信号に変換する光電変換素子が複数配列された光電変換素子アレイと、を備える。シンチレータと低屈折層との少なくとも一方は、出射する光を対応する光電変換素子に向けて集光する集光部を有する。
【0007】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態に係るX線撮影装置の概略構成図である。
図2図2は、X線撮影装置に搭載されるX線検出器に含まれる光電変換素子アレイの概略構成図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係るX線検出器の概略断面図である。
図4図4は、X線検出器に含まれるシンチレータの層厚を説明するための図である。
図5図5は、変形例に係るX線検出器の概略断面図である。
図6図6は、第2の実施の形態に係るX線撮影装置の概略構成図である。
図7図7は、第2の実施の形態に係るX線検出器の概略断面図である。
図8図8は、第3の実施の形態に係るX線撮影装置の概略構成図である。
図9図9は、第3の実施の形態に係るX線検出器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.X線検出器、及びX線撮影装置の概要>
【0010】
(1)実施の形態に係るX線検出器は、X線検出器は、複数のシンチレータであって、個々のシンチレータが入射したX線を光に変換して出射する、複数のシンチレータと、複数のシンチレータと交互に積層された、屈折率が前記シンチレータより低い、複数の低屈折層と、交互に積載されたシンチレータ及び低屈折層から出射された光を電気信号に変換する光電変換素子が複数配列された光電変換素子アレイと、を備える。シンチレータと低屈折層との少なくとも一方は、出射する光を対応する光電変換素子に向けて集光する集光部を有する。
【0011】
複数のシンチレータが積層されることによって、これら複数のシンチレータの厚みの合計と同じ厚みを有する単一のシンチレータを備えた場合と比較して、光の屈折や散乱をより抑えることができる。
【0012】
複数のシンチレータと複数の低屈折層とが交互に積層され、シンチレータと低屈折層との少なくとも一方が集光部を有することで、シンチレータごとに、屈折や散乱した光が集光部において対応する光電変換素子の方向に集光される。その際、1つのシンチレータでの光の屈折や散乱が小さいため、各集光部において精度よく集光される。これにより、X線検出器を搭載したX線撮影装置ではぼやけが抑制された撮影画像が得られる。
【0013】
(2)(1)に記載のX線検出器において、好ましくは、集光部は、出射方向に向けて凸の凸レンズ形状を有した、シンチレータの低屈折層との境界面である。これにより、シンチレータごとに、光が集光部において対応する光電変換素子の方向に集光される。
【0014】
(3)(1)又は(2)に記載のX線検出器において、好ましくは、集光部は、低屈折層の有する、入射方向に向けて凸の凸レンズ形状部分である。これにより、シンチレータごとに、光が集光部において対応する光電変換素子の方向に集光される。
【0015】
(4)(1)~(3)のいずれか1つに記載のX線検出器であって、好ましくは、シンチレータの入射側に積層され、シンチレータ側の第1面から入射した光を反射し、第1面の逆側の第2面から入射した光を透過させる半反射層をさらに備える。半反射層によって、シンチレータにおいて光電変換素子アレイの逆側に向かう方向に散乱する光が反射層によって反射される。そのため、光電変換素子アレイの逆側に向かう方向に散乱する光がシンチレータに再度、入射し、シンチレータから光電変換素子アレイに向けて出射されるようになる。その結果、X線検出器では、検出感度を向上させることができる。
【0016】
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載のX線検出器において、好ましくは、シンチレータの厚みは、シンチレータにおけるX線の入射位置から光の出射位置までの光電変換素子の配列方向における距離が光電変換素子の配列方向の長さ以下となる厚みである。これにより、各シンチレータによる光の拡散は対応する光電変換素子以内に抑えられ、隣接する光電変換素子には達しない。そのため、かかるX線検出器を搭載したX線撮影装置では、シンチレータによる光の拡散が抑えられる。
【0017】
(6)実施の形態に係るX線撮影装置は、(1)~(5)のいずれか1つに記載のX線検出器を備える。これにより、シンチレータによる光の屈折や散乱が抑えられ、ぼやけが抑制された撮影画像が得られる。
【0018】
<2.X線検出器、及びX線撮影装置の例>
[第1の実施の形態]
[X線撮影装置の構成]
図1は、第1の実施の形態に係るX線撮影装置100の概略構成図である。X線撮影装置100は、X線検出器10と、光源4と、を含む。また、X線撮影装置100は、X線検出器10及び光源4に接続された制御装置5を含む。制御装置5は、プロセッサ51とメモリ52とを含む。制御装置5は図示しない操作部に接続されている。プロセッサ51は、ユーザ操作に従ってメモリ52に記憶されたプログラム521を実行することで、光源4によるX線の照射、及び、X線検出器10による撮像を制御する。
【0019】
光源4は、制御装置5のコントローラによる制御に従ってX線を照射する。照射方向に被写体Sが存在すると、光源4から照射されたX線は被写体Sを透過する。被写体Sを透過したX線は、X線検出器10に入射する。
【0020】
X線検出器10は、光電変換素子アレイ1と、光電変換素子アレイ1の光源4側に配置された複数のシンチレータ2-1,2-2,2-3と、を有する。複数のシンチレータ2-1,2-2,2-3を代表させてシンチレータ2とも称する。なお、以降の説明において、光源4側を上位、その逆側、つまり、光電変換素子アレイ1側を下位とも称する。シンチレータ2-1,2-2,2-3は、上位からこの順に積層されている。
【0021】
シンチレータ2は、検出対象のX線に応じた材料によって構成されている。シンチレータ2の材料は、例えば、Tl:CsI(タリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(酸硫化ガドリニウム)などの単結晶又は多結晶材料などである。そのため、シンチレータ2の屈折率n1は、1.8~2.5程度である。
【0022】
シンチレータ2は、入射したX線を光に変換して出射する。シンチレータ2は、X線をX線より波長の長い光に変換する。シンチレータ2は、X線を、例えば、蛍光、紫外光、可視光、及び赤外光などに変換する。シンチレータ2から出射される光を、以降、シンチレーション光とも称する。
【0023】
X線検出器10は、複数の低屈折層3-1,3-2,3-3を有する。低屈折層3-1,3-2,3-3は、上位からこの順に積層されている。複数の低屈折層3-1,3-2,3-3を代表させて低屈折層3とも称する。
【0024】
X線検出器10は、複数のシンチレータ2の層と複数の低屈折層3との積層を繰り返す構造を有する。すなわち、低屈折層3は、シンチレータ2と交互に積層されている。具体的に、複数の低屈折層3-1,3-2,3-3は、それぞれ、複数のシンチレータ2-1,2-2,2-3の下位に積層されている。この例では、上位からシンチレータ2-1、低屈折層3-1、シンチレータ2-2、低屈折層3-2、シンチレータ2-3、低屈折層3-3の順に積層されている。なお、繰り返される積層構造は3層構造に限定されず、2層であってもよいし、4層以上であってもよい。また、低屈折層3は、複数のシンチレータ2のすべての下位に積層されていなくてもよい。
【0025】
低屈折層3は、シンチレータ2より屈折率が低く、屈折率n2は1.4程度である。低屈折層3は、例えば、アクリル樹脂などによって構成されている。低屈折層3は、上位のシンチレータ2から入射された光を、シンチレータ2より低い屈折率で屈折させて出射する。
【0026】
シンチレータ2と低屈折層3との少なくとも一方は集光部を有する。集光部は、シンチレーション光を対応する光電変換素子14に向けて集光する。対応する光電変換素子14は、光源4から照射されたX線がX線検出器10の最上位のシンチレータ2-1に入射した位置(入射点)からX線の照射方向にある光電変換素子14を指す。集光部については後述する。
【0027】
光電変換素子アレイ1は、積載された複数のシンチレータ2及び低屈折層3の、光源4の反対側に積載されている。言い換えると、光電変換素子アレイ1は、交互に積載されたシンチレータ2及び低屈折層3のうちの最下位の低屈折層3-3の下位に積層されている。光電変換素子アレイ1はセンサとして機能する。
【0028】
図2は、光電変換素子アレイ1の概略構成図である。光電変換素子アレイ1は複数の光電変換素子14を含む。複数の光電変換素子14は、基板11にマトリクス状に配置されている。光電変換素子14は、X線撮像画像を構成する画像の最小単位である1つの画素に対応する。
【0029】
光電変換素子アレイ1は、例えば、フォトダイオードと薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)とを含む。光電変換素子14は、低屈折層3-3を介してシンチレータ2から入射したシンチレーション光を、その光量に応じた電荷に変換する。変換された電荷に応じた信号は、データ信号として光電変換素子14から制御装置5に出力される。
【0030】
[X線撮影装置での撮影方法]
被写体Sは、光源4と、交互に積載されたシンチレータ2及び低屈折層3のうちの最上位のシンチレータ2-1と、の間に置かれる(図1参照)。制御装置5の制御に従って、光源4からX線が照射される。被写体Sが置かれていると、X線は被写体Sに対して照射される。被写体Sを透過したX線は、シンチレータ2においてシンチレーション光に変換される。シンチレータ2から出射されたシンチレーション光は低屈折層3にて屈折し、光電変換素子アレイ1に入射する。制御装置5の制御に従って、光電変換素子アレイ1は入射したシンチレーション光を撮像する。制御装置5は、光電変換素子アレイ1から出力されたデータ信号に基づいて、X線撮像画像を生成する。一例として、プロセッサ51は、画素ごとに、データ信号の電圧値に応じた画素値を設定する。
【0031】
[X線検出器の構成]
図3は、第1の実施の形態に係るX線検出器10の概略断面図である。第1の実施の形態に係るX線検出器10においては、低屈折層3が集光部3aを有する。集光部3aは、一例として、上位に積層されたシンチレータ2に向けて凸の凸レンズ形状部分である。集光部3aは、例えばアクリル系樹脂である。集光部3aは、低屈折層3の集光部3a以外の部分よりも屈折率が大きい。集光部3aの屈折率は、例えば、1.5程度である。集光部3aは、一例として、光電変換素子アレイ1に配列された複数の光電変換素子14それぞれの上位に配置されている。
【0032】
光源4から照射されたX線Aは、X線検出器10の最上位のシンチレータ2-1上面の入射点P1から、シンチレータ2-1に入射する。入射点P1から入射したX線Aは、シンチレータ2-1内でシンチレーション光B1に変換される。シンチレーション光B1はシンチレータ2-1内において屈折率n1に従って屈折し、下位の低屈折層3に入射する。また、シンチレータ2-1に入射したX線Aは、一部は変換されずに低屈折層3に入射する。
【0033】
シンチレータ2-1から入射したシンチレーション光B1は、低屈折層3-1の有する集光部3aによって屈折する(シンチレーション光C1)。これにより、シンチレーション光C1は光電変換素子14Aに向かう方向で、下位のシンチレータ2-2に入射する。
【0034】
シンチレータ2-1において変換されなかったX線Aは、シンチレータ2-2においてシンチレーション光に変換される。変換されたシンチレーション光は、低屈折層3-1から入射されたシンチレーション光C1とともにシンチレーション光B2として、屈折率n1に従って屈折して低屈折層3-2に入射する。シンチレーション光B2は、低屈折層3-2の有する集光部3aによって屈折する(シンチレーション光C2)。これにより、シンチレーション光C2は光電変換素子14Aに向かう方向で、下位のシンチレータ2-3に入射する。
【0035】
シンチレータ2-1,2-2において変換されなかったX線Aは、シンチレータ2-3においてシンチレーション光に変換される。変換されたシンチレーション光は、低屈折層3-2から入射されたシンチレーション光C2とともにシンチレーション光B3として、屈折率n1に従って屈折して低屈折層3-3に入射する。シンチレーション光B3は、低屈折層3-3の有する集光部3aによって屈折する(シンチレーション光C3)。これにより、シンチレーション光C3は光電変換素子14Aに入射する。
【0036】
[実施の形態の効果]
X線検出器10は、複数のシンチレータ2の層と複数の低屈折層3との積層を繰り返す構造を有する。複数のシンチレータ2が積層されることによって、これら複数のシンチレータ2の厚みの合計と同じ厚みを有する単一のシンチレータを備えた場合と比較して、シンチレーション光の屈折や散乱をより抑えることができる。
【0037】
第1の実施の形態に係るX線検出器10は、各低屈折層3が集光部3aを有することで、シンチレータ2ごとに、屈折や散乱したシンチレーション光が、下位に積層された低屈折層3の集光部3aにおいて光電変換素子14Aの方向に集光される。その際、1つのシンチレータ2でのシンチレーション光の屈折や散乱が小さいため、各集光部3aにおいて精度よく集光される。これにより、X線検出器10を搭載したX線撮影装置100ではぼやけが抑制された撮影画像が得られる。
【0038】
[変形例]
図4は、シンチレータ2の層厚Hを説明するための図である。図4では、シンチレータ2-1,2-2,2-3のうちの1つのシンチレータ2について、X線X1,X2,X3が入射し、それぞれ、シンチレータ光に変換されていることが示されている。シンチレータ光L1,L2,L3は、それぞれ、X線X1,X2,X3が変換されたシンチレータ光のうちの最大に拡散したシンチレータ光を表している。X線X1に着目すると、X線X1は点P1(入射点P1)でシンチレータ2に入射し、最大に拡散したシンチレータ光L1は、点P2(出射点P2)から出射する。
【0039】
好ましくは、入射点P1から出射点P2までの光電変換素子14の配列方向における距離Мが、光電変換素子14の配列方向の長さp(以下、画素ピッチとも称する)以下となるように(М≦p)、シンチレータ2それぞれの層厚Hが設定される。
【0040】
距離Мは、シンチレータ2のシンチレーション光の低屈折層3との境界面での臨界角θと、層厚Hとを用いて、М=H/tanθで表される。臨界角θは、θ=arcsin(n2/n1)で得られる。従って、好ましくは、層厚Hは、H≦p×tanθである。
【0041】
例えば、シンチレータ2の屈折率n1を1.8(n1=1.8)、低屈折層3の屈折率n2を1(n2=1)とすると、臨界角θはθ=arcsin(1/1.8)=33.7度となる。画素ピッチpを140μmとすると、シンチレータ2-1,2-2,2-3のそれぞれの層厚Hを82.5μm(=140×tan33.7)以下とすることが好ましい。また例えば、シンチレータ2の屈折率n1を1.8(n1=1.8)、低屈折層3の屈折率n2を1.4(n2=1.4)とすると、臨界角θはθ=arcsin(1.4/1.8)=51.1度となる。画素ピッチpを140μmとすると、シンチレータ2-1,2-2,2-3のそれぞれの層厚Hを124.8μm(=140×tan51.1)以下とすることが好ましい。
【0042】
X線X1が変換され、拡散されたシンチレーション光のうち、低屈折層3との境界面に対して臨界角θ以下で入射するシンチレーション光は、境界面において全反射される。そのため、シンチレーション光L1の入射点P1から出射点P2までの、光電変換素子14の配列方向における距離Lは最大でも隣接する光電変換素子14までの距離となり、シンチレーション光L1が隣接する光電変換素子14には達しない。従って、X線検出器10においてシンチレータ2-1,2-2,2-3それぞれの層厚HがH≦p×tanθであることで、複数のシンチレータ2-1,2-2,2-3では、それぞれ、光の拡散が対応する光電変換素子14A以内に抑えられる。そのため、かかるX線検出器10を搭載したX線撮影装置100では、シンチレータ2による光の拡散が抑えられて対応する光電変換素子14Aに集光され、ぼやけが抑制された撮影画像が得られる。
【0043】
[変形例]
図5は、変形例に係るX線検出器10の概略断面図である。変形例に係るX線検出器10においては、シンチレータ2が集光部2aを有する。集光部2aは、下位に積層された低屈折層3に向けて凸の凸レンズ形状部である。集光部2aは、一例として、シンチレータ2の低屈折層3との境界面に設けられる。
【0044】
変形例に係るX線検出器10においては、入射点P1から入射したX線Aは、シンチレータ2-1内でシンチレーション光B1に変換され、屈折率n1に従って屈折する。シンチレーション光B1は集光部2aで光電変換素子14Aに向かう方向に集光され、下位の低屈折層3に入射する。シンチレータ2-2,シンチレータ2-3でも同様に集光される。
【0045】
これにより、最下位の低屈折層3-3から出射するシンチレーション光C3は光電変換素子14Aに入射する。すなわち、集光部がシンチレータ2に設けられる場合も、低屈折層3に設けられる場合と同様に、シンチレータ2による光の屈折や散乱が抑えられ、撮影画像のぼやけが抑制される。なお、集光部は、シンチレータ2と低屈折層3との両方に設けられてもよい。
【0046】
[第2の実施の形態]
[X線検出器の構成]
図6は、第2の実施の形態に係るX線撮影装置100の概略構成図である。第2の実施の形態に係るX線撮影装置100は、X線検出器10に替えてX線検出器10Aを有する。図7は、第2の実施の形態に係るX線検出器10Aの概略断面図である。図7においては、集光部は省略されている。X線検出器10Aにおいて、集光部は、低屈折層3に含まれてもよいし、シンチレータ2に含まれてもよいし、両方に含まれてもよい。
【0047】
X線検出器10Aは、複数のシンチレータ2-1,2-2,2-3それぞれの入射側、つまり上位に積層された反射層6-1,6-2,6-3を有する。反射層6-1,6-2,6-3を代表させて反射層6とも称する。反射層6は、第1面から入射した光を反射し、第1面の逆側の第2面から入射した光を透過させる、半反射(ハーフミラー)構造を有する。X線検出器10Aにおいては、反射層6-1,6-2,6-3は、それぞれ、第1面をシンチレータ側としてシンチレータ2-1,2-2,2-3の上位側に積層される。なお、反射層6は、低屈折層3と一体構造であってもよい。
【0048】
X線検出器10Aでは、シンチレータ2において光源4に向かう方向に散乱する光が、上位に積層された反射層6によって反射される。そのため、光源4に向かう方向に散乱した光がシンチレータ2に再度、入射する。その結果、シンチレータ2から光源4に向かう方向に散乱する光がシンチレータ2から下位の低屈折層3に向けて出射されるようになる。そのため、X線検出器10Aでは、検出感度を向上させることができる。その結果、X線検出器10Aを搭載したX線撮影装置100では、ぼやけが抑制された撮影画像が得られるとともに、高感度の撮影画像が得られる。
【0049】
[第3の実施の形態]
[X線検出器の構成]
図8は、第3の実施の形態に係るX線撮影装置100の概略構成図である。第3の実施の形態に係るX線撮影装置100は、X線検出器10に替えてX線検出器10Bを有する。図9は、第3の実施の形態に係るX線検出器10Bの概略断面図である。図9においては、集光部は省略されている。X線検出器10Bにおいて、集光部は、低屈折層3に含まれてもよいし、シンチレータ2に含まれてもよいし、両方に含まれてもよい。
【0050】
X線検出器10Bは、最上位に光電変換素子アレイ1が配置され、その下位にシンチレータ2及び低屈折層3が配置される。複数のシンチレータ2-1,2-2,2-3、及び、複数の低屈折層3-1,3-2,3-3は、それぞれ、上位からこの順に積層されている。
【0051】
X線検出器10Bでは、複数の低屈折層3-1,3-2,3-3は、それぞれ、複数のシンチレータ2-1,2-2,2-3の上位に積層されている。この例では、上位から低屈折層3-1、シンチレータ2-1、低屈折層3-2、シンチレータ2-2、低屈折層3-3、シンチレータ2-3の順に積層されている。
【0052】
X線検出器10Bにおいては、被写体Sを透過したX線は、低屈折層3-1を透過してシンチレータ2-1に到達し、シンチレータ2-1においてシンチレーション光に変換される。シンチレーション光は、集光部によって集光されて光電変換素子14Aに入射する。シンチレータ2-1を透過した一部のX線は、同様に、シンチレータ2-2,シンチレータ2-3でシンチレーション光に変換され、集光部によって集光されて光電変換素子14Aに入射する。
【0053】
従って、X線検出器10Bを搭載したX線撮影装置100でも、シンチレータ2による光の屈折や散乱が抑えられ、ぼやけが抑制された撮影画像が得られる。
【0054】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1:光電変換素子アレイ、2,2-1,2-2,2-3:シンチレータ、2a,3a:集光部、3,3-1,3-2,3-3:低屈折層、4:光源、6,6-1,6-2,6-3:反射層、10,10A,10B:X線検出器、14,14A:光電変換素子、100:X線撮影装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシンチレータであって、個々のシンチレータが入射したX線を光に変換して出射する、複数のシンチレータと、
前記複数のシンチレータと交互に積層された、屈折率が前記シンチレータより低い、複数の低屈折層と、
交互に積載された前記シンチレータ及び前記低屈折層から出射された前記光を電気信号に変換する光電変換素子が複数配列された光電変換素子アレイと、を備え、
前記シンチレータと前記低屈折層との少なくとも一方は、出射する光を対応する前記光電変換素子に向けて集光する集光部を有し、
前記シンチレータの入射側に積層され、前記シンチレータ側の第1面から入射した前記X線を変換した光を反射し、前記第1面の逆側の第2面から入射した前記X線を変換した光を透過させる半反射層を、さらに備える
X線検出器。
【請求項2】
複数のシンチレータであって、個々のシンチレータが入射したX線を光に変換して出射する、複数のシンチレータと、
前記複数のシンチレータと交互に積層された、屈折率が前記シンチレータより低い、複数の低屈折層と、
交互に積載された前記シンチレータ及び前記低屈折層から出射された前記光を電気信号に変換する光電変換素子が複数配列された光電変換素子アレイと、を備え、
前記シンチレータと前記低屈折層との少なくとも一方は、出射する光を対応する前記光電変換素子に向けて集光する集光部を有し、
前記シンチレータの厚みは、前記シンチレータにおける前記X線の入射位置から前記光の出射位置までの前記光電変換素子の配列方向における距離が前記光電変換素子の前記配列方向の長さ以下となる厚みである
X線検出器。
【請求項3】
前記集光部は、出射方向に向けて凸の凸レンズ形状を有した、前記シンチレータの前記低屈折層との境界面である
請求項1又は2に記載のX線検出器。
【請求項4】
前記集光部は、前記低屈折層の有する、入射方向に向けて凸の凸レンズ形状部分である
請求項1又は2に記載のX線検出器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のX線検出器を備える
X線撮影装置。