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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016071
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】マルチ表面弾性波ネブライザー
(51)【国際特許分類】
   B05B 17/06 20060101AFI20240130BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B05B17/06
A61M11/00 300A
【審査請求】有
【請求項の数】47
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023181258
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2020554279の分割
【原出願日】2019-04-05
(31)【優先権主張番号】2018901131
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】506018639
【氏名又は名称】ロイヤル・メルボルン・インスティテュート・オブ・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】ROYAL MELBOURNE INSTITUTE OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】アマリン、マクドネル
(72)【発明者】
【氏名】アムガド、レスク
(72)【発明者】
【氏名】レスリー、ヨー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エンドユーザが確実且つ簡単に使用できる実用的で商業的に実現可能なネブライザーを提供する。
【解決手段】ハウジングと、ハウジング内に収容される少なくとも1つの圧電基板2であって、基板内に音波エネルギーを生成するための少なくとも1つの電気音響変換器が配置される変換器表面2aと、反対側の非変換器表面2bと、を有する圧電基板と、変換器表面および前記被変換器表面のうちの少なくとも一方に液体4を供給するための液体供給システムと、を含む液滴を噴霧するためのネブライザーであって、液体供給システムは、液体を収容するための容器3と、基板に接触して液体を容器から基板に供給するための少なくとも1つの比較的剛性のある供給導管6と、を含む、ネブライザー。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容される少なくとも1つの圧電基板であって、前記基板内に音波エネルギーを生成するための少なくとも1つの電気音響変換器が配置される変換器表面と、反対側の非変換器表面と、を有する圧電基板と、
前記変換器表面および前記非変換器表面のうちの少なくとも一方に液体を供給するための液体供給システムと、
を含む、液滴を噴霧するためのネブライザーであって、
前記液体供給システムは、前記液体を収容するための容器と、前記基板に接触して前記液体を前記容器から前記基板に供給するための少なくとも1つの比較的剛性のある供給導管と、を含む、
ネブライザー。
【請求項2】
前記供給導管は、尖端または針の形態にある、
請求項1に記載のネブライザー。
【請求項3】
前記供給導管は、音響反射材料から形成される、
請求項1または2に記載のネブライザー。
【請求項4】
前記液体は、前記容器から前記供給導管を介して重力供給される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項5】
前記液体は、前記容器から能動ポンプシステムを介して移送される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項6】
前記能動ポンプシステムは、シリンジまたは蠕動ポンプである、
請求項5に記載のネブライザー。
【請求項7】
前記液体供給システムは、当該システムから安定した液体の流れを提供するための流量調節器を更に含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載ネブライザー。
【請求項8】
前記流量調節器は、液体が通過可能な液体出口通路と、前記容器に接続された空気入口通路と、を含む、
請求項7に記載のネブライザー。
【請求項9】
前記流量調節器に接続された内部チャンバを更に含み、
前記内部チャンバは、前記供給導管の周囲先端部が収容される周囲開口を有し、
液体が毛管作用により前記周囲開口と前記供給導管の前記周囲先端部との間を通過可能である、
請求項8に記載のネブライザー。
【請求項10】
前記基板は、前記基板の前記供給導管に対する接触を制御するように変位可能なマウントに支持される、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項11】
前記マウントは、その一端部に設けられた旋回支持部と、弾性部材に支持された対向端部と、を含む、
請求項10に記載のネブライザー。
【請求項12】
前記マウントは、カンチレバーに支持される、
請求項10に記載のネブライザー。
【請求項13】
前記噴霧される液滴のサイズを制御するための制御手段を更に含む、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項14】
前記制御手段は、変換器表面のうちの少なくとも一方と略平行に隣接する関係で配置された少なくとも1つのバッフルを含む、
請求項13に記載のネブライザー。
【請求項15】
前記バッフルは、少なくとも1つの前記基板表面から平行に隣接する関係で配置されたハウジング内壁により提供される、
請求項14に記載のネブライザー。
【請求項16】
前記ハウジングは、入口開口を更に含み、
前記容器は、前記入口開口に収容可能な首部を含む、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項17】
平行に隣接した関係において離間して配置された少なくとも2つの前記基板を含む、
請求項1乃至16のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項18】
前記液滴サイズ制御手段は、隣接する前記基板表面の間に供給される前記液体のメニスカスの厚さを制御するように前記基板同士の間隔を予め設定することで、前記噴霧される液滴のサイズを制御することを含む、
請求項17に記載のネブライザー。
【請求項19】
前記液滴サイズ制御手段は、隣接する前記基板表面の間に供給される前記液体のメニスカスの厚さを制御するように前記ハウジングの内壁からの前記基板の間隔を予め設定することで、前記噴霧される液滴のサイズを制御することを含む、
請求項17または請求項18に記載のネブライザー。
【請求項20】
前記圧電基板および電気音響変換器は、前記少なくとも1つの基板上の液体質量を検知するようにも使用される、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項21】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容される少なくとも1つの圧電基板であって、前記基板内に音波エネルギーを生成するための少なくとも1つの電気音響変換器が配置される変換器表面と、反対側の非変換器表面と、を有する圧電基板と、
前記少なくとも1つの圧電基板の前記外周表面の少なくとも一部と接触する柔軟性材料と、
前記変換器表面および前記非変換器表面のうちの少なくとも一方に液体を供給するための液体供給システムと、
を含む、液滴を噴霧するためのネブライザーであって、
前記液体供給システムは、前記液体を収容するための容器と、前記液体を前記容器から前記基板に供給するための少なくとも1つの供給導管と、を含む、
ネブライザー。
【請求項22】
前記柔軟性材料は、粘着テープ、シリコーンゴム、および熱ペースト、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、
請求項21に記載のネブライザー。
【請求項23】
前記柔軟性材料は、基板の前記遠位端部の前記外周の少なくとも一部に接触する、
請求項21または22に記載のネブライザー。
【請求項24】
前記少なくとも1つの供給導管は、前記基板と接触する比較的剛性のある供給導管である、
請求項21乃至23のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項25】
前記少なくとも1つの供給導管は、尖端、針、芯、マイクロチャネル、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、
請求項21乃至23のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項26】
前記変換器表面、前記非変換器表面、またはこれらの組み合わせの少なくとも一部は、パターニングされる、
請求項1乃至25のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項27】
前記音波エネルギーは、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面を伝搬する表面弾性波(SAW)を含む、
請求項1乃至26のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項28】
前記音波エネルギーは、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面と前記非変換器表面との間で反射する表面反射バルク波(SRBW)を含む、
請求項1乃至27のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項29】
前記音波エネルギーは、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面において伝搬する表面弾性波(SAW)と、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面と前記非変換器表面との間で反射する表面反射バルク波(SRBW)との組み合わせを含む、
請求項1乃至28のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項30】
前記表面弾性波(SAW)は、定在波、進行波、およびこれらの組み合わせを含む、
請求項27または29のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項31】
前記表面反射バルク波(SRBW)は、定在波、進行波、およびこれらの組み合わせを含む、
請求項28または29のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項32】
前記電気音響変換器は、インターデジタル変換器(IDT)である、
請求項1乃至31のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項33】
前記少なくとも1つの圧電基板は、前記変換器表面を伝搬する前記SAWの波長の厚さ、またはそれに近い厚さを有する、
請求項1乃至32のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項34】
前記少なくとも1つの圧電基板は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)から形成される、
請求項1乃至33のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項35】
前記非変換器表面の少なくとも一部は、少なくとも1つの金属から構成されるコーティングを更に含む、
請求項1乃至34のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項36】
前記変換器表面の少なくとも一部は、前記基板の前記遠位端部に、少なくとも1つの金属から構成されるコーティングを更に含む、
請求項1乃至35のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項37】
前記コーティングは、チタン、金、アルミニウム、クロム、またはこれらの組み合わせから構成される、
請求項35または請求項36に記載のネブライザー。
【請求項38】
前記液体は、前記変換器表面、前記非変換器表面、または前記変換器表面および前記非変換器表面の両方から噴霧される、
請求項1乃至37のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項39】
前記液体は、噴霧されて0.1乃至100μmの範囲のサイズを有する液滴を形成する、
請求項1乃至38のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項40】
前記液体は、最大10ml/分の噴霧量で噴霧される、
請求項1乃至39のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項41】
前記マウントは、前記基板が載置される棚を含み、
前記棚は、基板に沿った液体クリープを防止するための単数または複数の間隙を含む、
請求項10乃至12のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項42】
前記ハウジングは、前記少なくとも1つの電気音響変換器に接続された外部電気接点と、一体型液体供給システムと、を有するカートリッジハウジングの形態にある、
請求項1乃至41のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項43】
請求項1乃至42のいずれか一項に記載のネブライザーを使用して液体を噴霧する方法。
【請求項44】
液体を噴霧して0.1乃至100μmの範囲のサイズを有する液滴を形成する工程を含む、請求項43に記載の液体を噴霧する方法。
【請求項45】
最大10ml/分の体積噴霧量で液体を噴霧する工程を含む、
請求項43に記載の液体を噴霧する方法。
【請求項46】
液体を噴霧して幾何標準偏差(GSD)が10μmより小さい(<10μm)液滴を形成する工程を含む、
請求項43に記載の液体を噴霧する方法。
【請求項47】
前記液体が、医薬品、DNA、RNAi、ペプチド、タンパク質および細胞等の機能的または治療性物質、または香料、化粧品、殺虫剤、塗料または防腐剤等の非治療性物質を含む、
請求項43乃至46のいずれか一項に記載の液体を噴霧する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して液体を小さな空中飛沫にして噴霧するためのネブライザー、特に音波エネルギーを使用して液体を噴霧するネブライザーを対象とする。
【背景技術】
【0002】
液体を噴霧するために表面弾性波(SAW)を使用することは、1990年代から提案されてきた。黒澤他、「表面弾性波アトマイザー」、Sensors and Actuators A:Physical、1995、50、69-74を参照されたい。以後、SAWネブライザーは、活性剤の投与を含む種々の分野での用途が見出されている。吸入療法は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および、閉塞性気管支炎、肺気腫、嚢胞性線維症等の気流制限に関連する他の症状に対する最も一般的な治療法である。様々な応用分野において、SAW噴霧プラットフォームの性能を改善すべく広範な研究開発が行われている。これらには、質量分析のインターフェースのための高速ドロップイオン化(「S.R.Heron他、質量分析用のマイクロ流体インターフェースとしてのペプチドの表面弾性波噴霧」、Analytical Chemisry、2010、82、3985-3989を参照)、ナノ粒子合成(「J.R.Friend他、表面弾性波噴霧による高分子ナノ粒子の蒸発自己組織化支援合成」、Nanotechnology、2008、19、1253010を参照)、および肺送達(A.E.Rajapaksa他、表面弾性波噴霧によるエアロゾル化プラスミドDNAワクチンの効果的な肺送達、Respiratory Research、2014、15、1を参照)が含まれる。
【0003】
このような継続的な努力にもかかわらず、現在の最先端技術は、実用的且つ商業的に使用できるプラットフォームの転換に関する問題に対処するための研究室環境を超えるほど進歩していない。研究者が見落としがちなこれらの問題は、面倒で複雑な流体チップと容器のインターフェース、貧弱な流量、および(多くの場合、供給される量の大部分を占める)大きな液滴の疑似噴射を含み、結局のところ次善のネブライザーしか製造されていない。このようなネブライザーは、エンドユーザが確実且つ簡単に使用できる実用的で商業的に実現可能なプラットフォームではなく、特定の研究所の用途に適合するようにオーダーメードされ、専門のユーザしか扱えないものである。
【0004】
このようなSAW噴霧プラットフォームを使用する際の特定の課題は、使用される液体およびそれらの装置への供給を取り巻く問題に関する。一般的なアプローチは、圧電基板の変換器表面に配置された芯を使用して液体を供給することである。典型的にはインターデジタル変換器(IDT)の形態にある電気音響変換器が圧電基板にフォトリソグラフィー技術により適用されることにより、SAWが変換器の表面を伝播可能となる。供給芯を使用する構成は、例えばUS8991722(モナシュ大学)に示されている。
【0005】
しかしながら、特に音響エネルギーがチップに集中する場合、変換器の表面で芯を使用することは、SAWの減衰、インターフェース材料の加熱、装置上での液体の空間的位置に応じた性能の感度という望ましくない結果をもたらす。また、複雑な多段階形状を有する後続液膜が噴霧中に装置に存在することで、10μmより大きく(>10μm)最大で100μmサイズの大きな疑似液滴が生成されることが多い。これは、深部肺沈着のために1μm程度の液滴を必要とする肺への薬物送達用途にとって特に望ましくない。
【0006】
上述の問題の少なくとも一部を回避するために提案された1つの構成が、国際公開番号2014/132228号(RMIT大学)に示されている。ここでは、供給芯を圧電基板の周縁部に接触させることで、芯および供給された液体が変換器の表面と接触していることに関連するエネルギーロスが最小化されている。正確に言えば、周縁部のSAWと供給された液体との相互作用により薄い液体層が形成され、この液体層からの噴霧化が可能となっている。
【0007】
提案されている別のアプローチは、液体を噴霧するために、SAWではなく、圧電基板の本体内で生成された従来のバルク音波(BAW)を使用することである。US6679436(オムロン)には、この目的のために従来のバルク波を使用する噴霧器が記載されている。SAWプラットフォームが使用されているが、SAWは噴霧のために使用されるのではなく、液体を検知する(すなわち、液体が存在するかどうかを検知する)ために使用されている。その代わりに、液体が圧電基板の非変換器表面に適用され、基板内で生成されたバルク波が液体を噴霧するために使用される。
【0008】
従来技術のSAWおよびBAWのプラットフォームに関連する問題は、このようなプラットフォームで生じ得る比較的少ない噴霧量である。典型的には、SAWプラットフォームは、約0.1ml/分の噴霧量しか有さず、このようなプラットフォームの潜在的な用途が大幅に制限されている。
【0009】
SAWを使用する噴霧プラットフォームが最も効率的な波のタイプであると一般的に考えられているが、近年の研究によれば、SAWと表面反射バルク波(SRBW)との組合せが優れた液体噴霧を提供することが示されている(「Amgad R.Rezk他、ハイブリッド共鳴音響(HYDRA)、Advanced Materials、2016、1970-1975」を参照)。SRBWは、圧電基板の変換器表面上のSAWが、変換器表面と、基板の反対側の非変換器表面であって基板表面に対して平行に隣接する関係に配置された非変換器表面と、の間で内部反射するときに生成される。したがって、SRBWは、SAWと同一の周波数で生成される。このため、SAWおよびSRBWの両方を組み合わせたハイブリッド音波が、それらの相互関係性により生成されるとともに、変換器表面および非変換器表面の両方に出現する。SRBWの生成は、基板の厚さが生成されたSAWの波長、またはそれに近いときに最適化される。
【0010】
国際公開番号WO2016/179664号(RMIT大学)には、液体を噴霧するためにSAWとSRBWとを組み合わせたハイブリッド音波を使用した噴霧プラットフォームが記載されている。液体は、芯を使用して、または基板の縁部を液体の容器に直接浸漬させることで、圧電基板の側面または端縁部に供給され得る。次いで、ハイブリッド音波(すなわち、SAWとSRBW)が、基板のIDT表面および非IDT表面の両方に液体の薄膜をなすように作用する。しかしながら、SAWとSRBWとを組み合わせた噴霧プラットフォームは、SAWのみの噴霧プラットフォームに見られるものと同様の懸念を依然として有している。なぜならば、上述の実施形態のうちの1つにおいて、基板と接触する芯が使用されているからである。
【0011】
また、これらおよび他のSAWネブライザーシステムは、性能の信頼性、再現性、効率性、および液滴分布に関して問題がある。特に、単結晶チップを利用するシステムは、過熱や焦電故障により故障しやすい。また一部の構成においては、常にチップが液体サンプルと接触している必要がある。このような装置の性能の信頼性と効率性を改善する余地がある。更に、種々の医薬品有効成分(API)の投与のために、液滴サイズ、液滴分布の幾何標準偏差(GSD)、安定化期間(すなわち、使用時間)、体積噴霧率、微粒子画分を含むがこれらに限定されない適切な操作パラメータを達成することは、依然として重要な課題である。
【0012】
上述の背景技術の説明は、本発明の文脈を説明するために含まれている。明細書のいずれか一項の請求項の優先日に背景技術が知られている、または一般知識の一部であると認めるものとしてみなされるべきではない。
【0013】
「音波エネルギー」という用語は、本明細書において、進行および定在表面弾性波(SAW)、表面反射バルク波(SRBW)を含むバルク音波(BAW)、およびこれらの波の組み合わせ、特にSAWとSRBWとの組み合わせを指すために使用される。
【0014】
「液体」という用語は、本明細書において、純粋な液体、あるいは、医薬品、プラスミドDNA、ペプチド、香料等の機能性または治療性物質を含む液体混合物を指すために使用される。
【0015】
従来技術の音響ネブライザーに関する単数または複数の欠点に対処する、または少なくとも代替手段を提供する音響ネブライザーが必要とされている。
【発明の概要】
【0016】
このことを念頭において、本発明の一態様によれば、提供されるネブライザーは、
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容される少なくとも1つの圧電基板であって、前記基板内に音波エネルギーを生成するための少なくとも1つの電気音響変換器が配置される変換器表面と、反対側の非変換器表面と、を有する圧電基板と、
前記変換器表面および前記非変換器表面のうちの少なくとも一方に液体を供給するための液体供給システムと、
を含み、
前記液体供給システムは、前記液体を収容するための容器と、前記基板に接触して前記液体を前記容器から前記基板に供給するための少なくとも1つの比較的剛性のある供給導管と、を含む。
【0017】
前記供給導管は、尖端または針の形態にあり得る。また、好ましくは、前記供給導管は、音響反射材料から形成され得る。
【0018】
前記液体は、前記容器から前記供給導管を介して重力供給され得る。あるいは、前記液体は、前記容器から、例えばシリンジまたは蠕動ポンプである能動ポンプシステムを介して前記基板に移送され得る。
【0019】
前記液体供給システムは、当該システムから安定した液体の流れを提供するための流量調節器を更に含み得る。前記流量調節器は、液体が通過可能な液体出口通路と、前記容器に接続された空気入口通路と、を含み得る。
【0020】
内部チャンバが、前記流量調節器に接続され得る。前記内部チャンバは、前記供給導管の周囲先端部が収容される周囲開口を有し、液体が毛管作用により前記周囲開口と前記供給導管の前記周囲先端部との間を通過可能である。
【0021】
前記基板は、前記基板の前記供給導管に対する接触を制御するように変位可能なマウントに支持され得る。前記マウントは、例えば、その一端部に設けられた旋回支持部と、弾性部材に支持された対向端部と、を含み得る。あるいは、前記マウントは、カンチレバーに支持され得る。
【0022】
本発明の別の態様によれば、提供される液滴を噴霧するためのネブライザーは、
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容される少なくとも1つの圧電基板であって、前記基板内に音波エネルギーを生成するための少なくとも1つの電気音響変換器が配置される変換器表面と、反対側の非変換器表面と、を有する圧電基板と、
前記少なくとも1つの圧電基板の前記外周表面の少なくとも一部と接触する柔軟性材料と、
前記変換器表面および前記非変換器表面のうちの少なくとも一方に液体を供給するための液体供給システムと、
を含み、
前記液体供給システムは、前記液体を収容するための容器と、前記液体を前記容器から前記基板に供給するための少なくとも1つの供給導管と、を含む。
【0023】
前記柔軟性材料は、粘着テープ、シリコーンゴム、および熱ペースト、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0024】
前記ネブライザーは、前記噴霧される液滴のサイズを制御するための制御手段を更に含み得る。前記制御手段は、変換器表面のうちの少なくとも一方と略平行に隣接する関係で配置された少なくとも1つのバッフルを含み得る。前記基板は、ハウジング内で支持され得る。前記液滴サイズ制御手段として含まれる前記(単数または複数の)バッフルは、少なくとも一方の前記基板表面から平行に隣接する関係で配置されたハウジング内壁により提供され得る。別の実施形態において、前記噴霧される液滴のサイズを制御するための制御手段は、代替的に、能動な基板バッフル作用により提供され得る。
【0025】
前記ハウジングは、入口開口を更に含み得る。前記容器は、前記入口開口に収容可能な首部を含み得る。これにより、前記容器内に保持された前記液体を、前記少なくとも1つの基板に重力供給することが可能になる。
【0026】
本発明によるネブライザーは、平行に隣接した関係において離間して配置された少なくとも2つの前記基板を含み得る。前記液滴サイズ制御手段は、隣接する前記基板表面の間に供給される前記液体のメニスカスの厚さを制御するように前記基板同士の間隔を予め設定することで、噴霧される前記液滴のサイズを制御することをさらに含み得る。あるいは、前記液滴サイズ制御手段は、隣接する前記基板表面と内壁との間に供給される前記液体のメニスカスの厚さを制御するように前記ハウジングの内壁からの前記基板の間隔を予め設定することで、噴霧される前記液滴のサイズを制御することを含み得る。
【0027】
生成された音波エネルギーは、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面を伝搬する表面弾性波(SAW)を含み得る。前記音波エネルギーは、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面と前記非変換器表面との間で反射する表面反射バルク波(SRBW)を含み得る。一実施形態において、前記音波エネルギーは、表面弾性波(SAW)と表面反射バルク波(SRBW)との組み合わせを含み得る。前記表面弾性波(SAW)は、定在波、進行波、およびこれらの組み合わせを含み得る。前記表面反射バルク波(SRBW)は、定在波、進行波、およびこれらの組み合わせを含み得る。上述のように、SRBWは、圧電基板の変換器表面上のSAWが、変換器表面と、基板の反対側の非変換器表面であって、基板表面に対して平行に隣接する関係に配置された非変換器表面(すなわち、基板の他方の側面)との間で内部反射するときに生成される。したがって、SRBWは、SAWと同一の周波数で生成される。SAWおよびSRBWの両方を組み合わせたハイブリッド音波が、それらの相互関係性により生成され得るとともに、変換器表面および非変換器表面の両方に出現する。
【0028】
上述のように、液体供給システムは、変換器表面および非変換器表面のうちの少なくとも一方に液体を供給し得る。このことと、音波が変換器表面および反対側の非変換器表面の両方に出現し得るという事実と、を鑑みて、液体サンプルが、前記変換器表面、前記非変換器表面、または前記変換器表面および前記非変換器表面の両方から噴霧され得るということを理解されたい。一実施形態において、液体は、変換器表面から噴霧される。別の実施形態において、液体は非変換器表面から噴霧される。別の実施形態において、液体は、変換器表面および反対側の非変換器表面の両方から噴霧される。
【0029】
本発明による圧電基板および電気音響変換器は、好適には、前記少なくとも1つの基板上の液体質量を検知するようにも使用される。表面波すなわちSAWを検知に使用するUS6679436(オムロン)とは異なり、本発明においては、同一基板上で生成されるバルク波すなわちBAWを検知に使用する。
【0030】
本発明によるネブライザー用の電気音響変換器は、インターデジタル変換器(IDT)であり得る。また、前記少なくとも1つの圧電基板は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)から形成され得る。
【0031】
一実施形態において、前記非変換器表面の少なくとも一部は、少なくとも1つの金属から構成されるコーティングを更に含み得る。一実施形態において、前記基板の前記遠位端部における前記変換器表面の少なくとも一部は、少なくとも1つの金属から構成されるコーティングを更に含み得る。前記少なくとも1つの金属は、チタン、金、アルミニウム、クロム、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0032】
前記圧電基板は、前記変換器表面を伝搬する前記SAWの波長の厚さ、またはそれに近い厚さを有する。これにより、前記基板内でのSRBWの生成が最適化される。
【0033】
本発明によるネブライザーにおいて、前記液体は、噴霧されて0.1乃至100μmの範囲のサイズを有する液滴を形成し得る。更に、前記液体は、最大10.0ml/分の噴霧量で噴霧され得る。
【0034】
前記マウントは、前記基板が載置される棚を含み得る。前記棚は、前記基板に沿った液体クリープを防止するための単数または複数の間隙を含む。
【0035】
本発明によるネブライザーの好適な実施形態によれば、前記ハウジングは、前記少なくとも1つの電気音響変換器に接続された外部電気接点と、一体型液体供給システムと、を有するカートリッジの形態にあり得る。
【0036】
本発明の別の態様において、上述のネブライザーを使用して液体を噴霧する方法が提供される。
【0037】
前記方法は、液体を噴霧して0.1乃至100μmの範囲のサイズを有する液滴を形成する工程を含み得る。1乃至5μmの小さい液滴サイズは、治療性物質を吸入する用途に理想的である。しかしながら、香料、化粧品、殺虫剤、塗料または防腐剤を含む他の用途に必要な場合、10μmを超える大きいサイズの液滴が形成され得ることを理解されたい。
【0038】
前記方法は、最大10.0ml/分の噴霧量で液体を噴霧する工程を含み得る。
【0039】
好適には、前記方法は、医薬品、プラスミドDNA、RNAi、ペプチド、タンパク質および細胞等の機能的または治療性物質、または香料、化粧品、殺虫剤、塗料または防腐剤等の非治療性物質を含む液体を噴霧する工程を含み得る。
【0040】
本発明によるネブライザーにおける流体の送達及び噴霧を目的として変換器表面および非変換器表面の両方を使用することによれば、はるかに多い噴霧量(典型的なSAW噴霧量である0.1-0.2ml/分と比較して1ml/分以上)が提供されるだけでなく、音波エネルギーが、流体伝達のために従前の噴霧構成物(ガラス、芯、PDMS等)において典型的に使用される材料であって、典型的に音響マッチング特性に乏しい材料と結合したときに生じる、音波エネルギーの粘性消失による望ましくない加熱も回避される。加えて、本発明によるネブライザーの好適な構成により、好適には化学物質及び感度のあるサンプルの電気音響変換器との接触を減少させる。このことは、電極によって生成される強力な電界からいかなる感度のある生物的なサンプルをも保護するのと同様に、強力な化学物質から変換器の電極を保護するという利点を有する。
【0041】
本発明によるネブライザーの好適な実施形態を示す添付図面を参照して本発明を更に説明することが都合がよいであろう。他の実施形態も可能であるため、添付図面の特殊性は、本発明の前述の説明の一般性に代わるものとして理解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1a】本発明の一実施形態によるネブライザーの側断面図。
図1b】一実施形態による尖端または針を構成する液体送達システムの拡大図。
図1c】本発明の一実施形態によるネブライザーの側面の詳細図。
図1d】本発明によるネブライザーの別の実施形態の詳細な側断面図。
図1e】本発明によるネブライザーの別の実施形態の側断面図。
図2】本発明によるネブライザー用の圧電基板を保持するプラットフォームの斜視図。
図3a】本発明によるネブライザーの変換器表面の直交図。
図3b】基板の外周表面を強調した、上述のネブライザーの別の実施形態の変換器表面の直交図。上述のように、柔軟性吸収材料が、図3bで強調された基板表面の外周表面の少なくとも一部と接触していてもよい。
図3c】変換器表面の遠位端部およびパターニングに適した領域上のコーティングを強調した、上述のネブライザーの別の実施形態の変換器表面の直交図。
図3d】上述のネブライザーの非変換器表面が部分的にコーティングされている、上述のネブライザーの代表例の図。
図3e】基板の変換器表面の遠位端部上のコーティングを強調した、上述のネブライザーの別の実施形態の変換器表面の直交図。
図4a】本発明によるネブライザーの別の実施形態の側断面図。
図4b】本発明によるネブライザーの別の実施形態の側断面図。
図5a】バッフルを有さない本発明によるネブライザーの噴射された液滴のサイズ分布のグラフ。
図5b】バッフルを有する本発明によるネブライザーの噴射された液滴のサイズ分布のグラフ。
図6】周波数の関数としてのHumalog(インスリン薬)の質感検知を示すグラフ。
図7】基板の非変換器表面がチタンおよび金でコーティングされている、本発明の一実施形態によるネブライザーの噴霧分布データを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0043】
まず、図1aおよび図1cを参照すると、本発明によるネブライザーの第1の好適な実施形態が示されている。ネブライザーは、圧電基板2を支持するマウント1を有している。圧電基板2は、インターデジタル変換器(IDT)の形態にある電気音響変換器(図示せず)が配置される変換器表面2aを有している。基板2は、変換器表面2aに対して平行に隣接する関係に配置された非変換器表面2bを更に有している。
【0044】
ネブライザーは、更に液体容器3を有している。液体容器3内に、ネブライザーにより噴霧されることになる液体4が収容されている。容器3は、ねじ付き首部3aを有するボトルまたはバイアルの形態であり得る。ねじ付き首部3aは、ハウジング(図示せず)に設けたねじ付き入口開口5にねじ込まれ得る。ネブライザーは、図1aおよび図1cにおいてその使用状態で示されている。使用状態において、液体4は、容器3から尖端または針6の形態にある比較的剛性のある供給導管を介して、重力供給され得る。液体メニスカス7が、変換器表面2a上において尖端または針6の端部に形成されている(図1b)。RF電力が、電気接点8を介してIDTに提供される。これにより、変換器表面2aで表面弾性波(SAW)が生成され、次いで変換器表面2aと非変換器表面2bとの間で反射する表面反射バルク波(SRBW)が生成される。SAWと組み合わせたSRBWの独自のハイブリッド波構成により、液体4が液体メニスカス7から変換器表面2aを超えて引き出される。変換器表面2aの端部で液体4の蓄積が発生した場合、音波エネルギーが液体4を基板2の端部近傍に引き寄せ基板2の非変換器表面2bに向ける。液体4は、非変換器表面2bでも噴霧され得る。重力供給する仕組みにより、液体は連続的な自己調整された流れとなって針または尖端6を満たす。
【0045】
更に詳述すると、本発明の尖端または針6における供給ポンプ、重力供給または毛管作用は、単にこれを満たすように作用する。次いで、図1bに示すように、液体4は音波により基板2の表面に引き出される。したがって、液体送達システム、すなわち尖端または針6が基板2と接触していることが好適である。これは国際公開番号WO2012/096378号(パナソニック株式会社)における基板にエッチングされた供給チャネルへの毛管駆動による液体送達と対照的である。音波が液体を尖端または針6から基板2に引き出すことにより、噴霧される量の液体だけが装置に引き出されるため、液体のあふれが回避される。
【0046】
尖端または針6の材料の選択は、好適には、音響反射材料を含むべきである。音響吸収材料は、基板2上の音波エネルギーを吸収して減衰させる傾向を有する。このような材料には、金属、ポリマー、またはセラミック材料が含まれ得る。
【0047】
ハウジングは、少なくとも1つのバッフル9を更に有している。バッフル9は、例えば、ハウジングの壁から形成され、変換器表面2aから離間するとともに、変換器表面2aに対して略平行に隣接する関係に配置され得る。初期のネブライザーの設計においては、メッシュを使用して噴霧された液滴のサイズ均一性を制御および維持しようとしていた。しかしながら、このようなメッシュは目詰まりしやすい。これに対し、バッフル9は、液滴のサイズ均一性を制御するもっと簡単な手段を提供する。10μm乃至100μmのオーダーのサイズを有する大きめの液滴11は、小さめの液滴より大きな運動量で基板表面2aから噴射される。これは、音波エネルギーが液体4に結合する角度(レイリー角度として知られる)のためである。これにより、液滴は同一の角度で噴霧されるように噴射される。このような大きい液滴11は、次いでバッフル9の表面に衝突し、基板表面2aに再び向かう。ここで、液滴11は、容器3からの既存の液体供給物に再供給される。したがって、戻ってきた液滴11の一部であった液体は、再び噴霧される。一方、およそ1μmのオーダーのサイズを有する小さめの液滴10は、運動量が著しく小さいためバッフル9の表面に到達しない。代わりに、小さい液滴10は、ネブライザーからの気流に乗せられる。同様の液滴サイズ制御プロセスが、非変換器表面2bと、この非変換器表面2bに隣接する対応するバッフル表面9との間でも生じる。
【0048】
図1dは、ネブライザー内に積層構成で支持された少なくとも2つの圧電基板12、13を利用する、本発明によるネブライザーの別の実施形態を示す。3つ以上の圧電基板を、ネブライザー内において平行且つ隣接する位置に積層してもよい。各圧電基板12、13は、図1aおよび図1cに示した実施形態と同様の構成であり、各基板12、13の変換器表面12a、13aに電気音響変換器が配置されている。これにより、音波エネルギーが各基板内で生成され、各基板12、13の基板表面12a、13a、および平行に隣接する非基板表面12b、13bの両方に供給された噴霧液体が引き出され得る。また、ハウジングは、下方バッフル9aを有している。下方バッフル9aは、下方の基板13の変換器表面13aに対して平行に隣接して配置され、上述のように液滴サイズ制御を支援する。上方の基板12の非基板表面12bと当該表面に対向するバッフル9bとの間において、同様の効果が生じる。本実施形態において、2つの基板12、13の変換器表面12a、13a、および非変換器表面12b、13bの配置は重要ではなく、これらの表面は、それらが互いに平行且つ隣接している限り入れ替えてもよい。それでもやはり、このような構成により液滴サイズの均一性を制御するための更なる手段が提供される。同様に、液体は、2つの基板12、13の間の隙間空間14で、下方基板13の変換器表面13aと下方バッフル表面9aとの間で、そして上方基板12の非変換器表面12bと上方バッフル表面9bとの間でトラップされる。液体メニスカス7の厚さは、液滴サイズを制御する上で重要なパラメータである。したがって、各基板12、13とバッフル表面9a、9bとの間の相対間隔を調整することにより、メニスカスの厚さを制御することができ、これにより噴霧される液滴のサイズの均一性が提供される。したがって、このような構成により、上述の間隔を調節することで液滴サイズを制御することができる。複数の間隔を有することで、複数の液滴サイズを得ることも想定される。
【0049】
図1eは、ネブライザー内に積層構成で支持された少なくとも2つの圧電基板12、13を利用する、本発明によるネブライザーの別の実施形態を示す。図1dに記載の実施形態と同様に、液体は、2つの基板12、13の間の隙間空間14でトラップされる。図1dとは異なり、液体メニスカス7は、基板12および13の両方と接触している必要はない。更に、尖端または針6は、一実施形態において、液体6を送達するために、一方の基板12の表面と直接接触していてもよい。別の実施形態において、尖端または針6は、基板12の表面と接触していなくてもよいが、液体6が基板12の表面に接触して送達されるように配置され得る。少なくとも2つの圧電基板12、13は、同一であっても異なっていてもよいことが想定される。例えば、単数または複数の基板が、ネブライザーの出力パラメータの更なる制御を提供するために、以下に詳述するようにパターニングされてもよい。
【0050】
更に、例えば図1dおよび図1eの構成を参照すると、噴霧が生じ得る複数の基板表面が存在しているため、より高い噴霧量が提供され得る。隣接する基板表面は、能動的なバッフルとしても機能し得る。能動的なバッフルでは、一方の基板表面から噴射された大きい疑似液滴が隣接する基板の表面に集められ、より小さな液滴が生成されるまで再噴霧される。このアプローチは、ハウジングの内壁により提供される受動的な物理的バッフルではなく、能動的な基板バッフル作用とみなされ得る。このシステムは、前述の技術を使用して定在波または定在波の領域を促進することで向上され得る。
【0051】
また、同一の圧電基板2、12、13およびIDTは、検知機能を採用するように、基板の基本的な厚さモード(BAW)に対応する低い周波数(500μm厚さの基板に対しておよそ3.5MHz)でトリガされ得る。検知に厚さモードを使用する理由は、使用される単結晶が、当然に10乃至10のオーダーの高品質係数Qを有しているからである。単結晶としては、128YXニオブ酸リチウム圧電結晶を例示して挙げるがこれに限定されない。したがって、このようなプラットフォームは、効率的な噴霧、および10ngまでの検知限界を有する効率的な質量検知の両方を同時に実施することができる。両機能は、異なるマイクロ流体機能に対して異なる電極パターンを組み込んだ他の既知の装置と異なり、同一の電極パターンにより達成され得る。したがって、本発明によるネブライザーには、噴霧中に残留質量を検知する機能を追加することができる。この目的は、ユーザに投与された実際の用量を、送達された総用量から差し引くことにより測定することである。
【0052】
図1aおよび図1cの上述の実施形態において、液体4は、尖端または針6に重力供給される。尖端または針6は、変換器表面2aの端部を押すことで、液体4を変換器表面2aに接触させ、ここで液体4は液滴10、11に霧化され得る。尖端または針6の間の堅牢な接触は、予圧されるとともに変位下で一定の圧力を及ぼす尖端または針6に向かってマウント1を変位させることにより達成される(図示せず)。一実施形態において、予圧力は、例えば、マウント1をカンチレバーに固定することにより、または、ハウジング(図示せず)に固定されたピボット15とばね16の形態にある弾性部材との配置構成を有するようにマウント1を構成することにより、達成される。尖端または針6を基板2に押圧することにより生じるマウント1の変位により、尖端または針6の端部と変換器表面2aとが一定の圧力で接触し得るとともに、メニスカス7が形成されて持続され得る。このメニスカス7は、シールされた容器3の圧力に等しい圧力を提供する。これにより、液体は容器3から基板上に自由に流れることがない。マウント1が変位して圧力を加えるという能力は、剛性のある尖端または針6が効果的に基板との直接接触に使用され得ることを意味する。図1bを参照すると、尖端または針が音波エネルギーと共鳴し、音波エネルギーが液体4を尖端または針6から基板表面2を超えて引き出すことが可能となっている。液体4の噴霧中に、液体4の減少によりメニスカス7は小さくなる。次いで発生する負圧が、尖端または針6を通って更なる液体4を引き出し、メニスカス7が補充される。尖端または針6を通って液体4の流出を理由として容器3の相対圧力が十分に低い場合、気泡が入口孔17を介して容器3に入り圧力のバランスを取るとともに、液体4が尖端または針6により引き出され得る。このプロセスは、容器3が空になるまで継続する。複数の尖端または針を使用して流量を増加させ、システムの信頼性を高め得ることが想定される。一方で、圧力開放弁を使用して、変換器表面2aへの制御された液体の流れを提供することも想定される。更に、基板2の端部をメニスカスに浸水させて、近接して配置されたオリフィスにより液体を提供することが想定される。あるいは、シリンジまたは蠕動ポンプ等の能動ポンプシステムを使用して、液体を基板表面2aに能動的に供給し得ることが想定される。高い表面張力および/または高い粘度を有する液体を変換器表面2aに送達する必要がある状況下では、能動ポンプシステムが好適な場合がある。
【0053】
また、流量調節器19が、上述の重力供給システム、隣接オリフィス、または能動ポンプシステムと組み合わせて使用され得る。流量調節器19が万年筆と同様の態様において機能することも想定される。このような構成は、容器3内の流体が流量調節器19を介して内部チャンバ18に流入する図1aに示されている。流量調節器19は、液体4が通過可能な液体出口通路20と、容器3に接続された空気入口通路21と、を有している。したがって、流量調節器19は、液体4の安定した供給を提供し、これにより容器3の外部および内部の空気圧が平衡を保つ。流量調節器19がなければ、液体4は入口通路21を通って侵入する気泡が解放されることにより妨害されるであろう。液体4は、内部チャンバ18に送達される。内部チャンバ18は、尖端または針6に接続するとともに、尖端または針6が収容される周囲開口22を有している。したがって、尖端または針6は、常に液体4で濡れた状態にある。
【0054】
基板2の電気接触端部は、基板2に損傷を与え得る局所的な加熱を放散させるように、マウント1に対して押圧されて直接接触している。このような押圧は、例えば、広い電気接点8が埋め込まれた接点カンチレバー23を介して圧力を加えることで達成され得る。また、広い電気接点8は、噴霧中に発生する高電圧下での電気接点8と基板2との損傷をもたらすアーク放電を軽減する。接点カンチレバー23ベースへの圧力は、例えば、磁力効果を介して、またはスクリュー24を使用してばねワッシャ25を押下することにより加えることができる。あるいは、圧力を、ばね負荷された電気接点を介して加えてもよい。更に、導電性材料を電気接点の代わりにIDTに直接接合し得ることが想定される。マウント1に組み込まれ得るヒートシンク表面(図示せず)を、尖端または針6を平行基板2に対して押圧し、噴霧中にヒートシンクと接触させたままにして基板2を冷却することにより利用することも可能である。また、ヒートシンクは、基板2の噴霧端部と接触して少量の過剰な液体を保持する形状を特徴とし得る。これにより、噴霧が行われている間のシステムの堅牢性が向上する。マウント1は、金属等の導電性材料から作製されてもよい。これにより、過剰な焦電性誘導電荷を即時に放電することができる。このため、基板2を通過する損傷をもたらすアーク放電が起こる危険が減少し、基板2の寿命が長くなる。
【0055】
図2を参照すると、マウント1は、幅狭の棚26上の側縁部に沿って基板2を保持している。これにより、マウント1と基板2との間に何らかの濡れが生じた場合でも、音波エネルギーは基板2に沿って進む際に減衰することがない。マウント1の幅狭の棚26に沿って間隙27も設けられている。間隙27は、液体4が基板2の接点とマウント1との間において基板2をクリープすることを防止する。
【0056】
図3(a)を参照すると、変換器表面2aは、シールド28、主IDTバー30における屈曲部29、および電気接点端部32の反射バー31等の表面特徴部を有している。反射バー31は、音波エネルギーの進行を妨害するとともに、電気接点端部32に潜在的に損傷をもたらす音波エネルギーの反射および吸収を促進する。反射した音波エネルギーは、基板2の噴霧端部33での液体の噴霧を支援する。露出表面34が、噴霧液とIDT35との接触を軽減するように、装置の主IDTバー30の端部と噴霧端部33との間に存在している。
【0057】
別の実施形態において、上述のネブライザーは、基板の外周表面の少なくとも一部と接触する柔軟性吸収性材料を更に備え得る。例えば、基板の外周表面は、図3(b)におけるハッシュ領域40として強調されている。柔軟性吸収性材料は、図3(b)において強調された外周表面40の少なくとも一部と接触し得ることを理解されたい。驚くべきことに、チップの耐久性は、基板の外周表面の少なくとも一部と接触する柔軟性材料を追加することによって向上し得ることが見出された。理論に拘束されることを望まないが、柔軟性材料を追加することにより、チップ内および/またはチップ上の過剰な振動が分散または低減する可能性があると考えられる。更に、柔軟性材料を追加することにより、基板内および/または基板上における過熱または局所的な過熱が防止され得ると考えられる。これにより、基板の障害率が低下し、損傷や障害のないネブライザーから信頼性および使用の向上が提供される。例えば、好適な柔軟性材料は、ペースト、テープ、または柔軟性のある固体を含み得る。一実施形態において、柔軟性材料は粘着テープである。一実施形態において、柔軟性材料はシリコーンゴムである。一実施形態において、柔軟性材料は熱ペーストである。一実施形態において、柔軟性材料は、チップの外周と接触しているハウジングの一部を含む。
【0058】
一実施形態において、柔軟性吸収性材料は、基板の遠位端部の外周の少なくとも一部と接触していてもよい。一実施形態において、柔軟性吸収材料は、基板の外周の表面の単数または複数の辺の少なくとも一部と接触していてもよい。一実施形態において、柔軟性吸収材料は、基板の単数または複数の辺の一部、および遠位端部の一部と接触していてもよい。特に、外周表面の少なくとも一部の周囲における配置により、基板の噴霧領域における音響放射が噴霧を達成するのに十分となることが可能とされる。
【0059】
基板の非変換器側の少なくとも一部をコーティングすると、波の反射および定在波比(SWR)が変化し得ることが更に見出された。一実施形態において、コーティングは、単数または複数の金属から構成され得る。一実施形態において、コーティングは、チタン、金、アルミニウム、クロム、およびそれらの組み合わせから形成される。本件発明者は、驚くべきことに、基板の非変換器表面の少なくとも一部を、単数または複数の金属でコーティングすることにより、過熱を低減し得ることを見出した。また、本件発明者は、驚くべきことに、基板の非変換器表面の少なくとも一部をコーティングすることにより、SAW、SRBWおよびそれらの組み合わせにおける定在波および進行波成分の調整(チューニング)をある程度制御する、および/または可能とすることを見出した。驚くべきことに、全体コーティングまたは部分コーティングが、基板上および基板内に存在する進行波および定在波成分に影響を与えることが見出された。代表例を図3(d)に示す。すなわち、基板の非変換器表面43が、部分的にコーティング42されている。定在波比は、コーティングの硬度、厚さ、および/または粗さ等のパラメータを調整することで更に変更することができる。定在波比を1と無限大との間で調整することにより、基板の安定性および噴霧量が向上することが観察されている。例として、噴霧分布データを図7に示す。ここでは、非変換器基板表面が、チタンおよび金でコーティングされた。コーティングの結果、幾何標準偏差(GSD)による測定のように、全体的な液滴分布がより狭くなった。比較として、コーティングされないチップを使用した場合、噴霧流体の液滴分布において2つの別個のピークが典型的に観察される。これは、本システム内で定在波成分より進行波成分が促進されるか優先されることに起因すると考えられる。逆に、チップがコーティングされている場合、進行波成分よりも定在波成分が促進されるか優先されることが観察される。進行波成分と定在波成分との比率を変更することにより、液滴サイズや幾何標準偏差等を含むパラメータを制御または調整することができる。さらに、これらのパラメータが、以下に記載されている。単数または複数の実施の形態において、上述のネブライザーは、進行波成分、定在波成分及び/又はこれらの組み合わせを利用し得る。単数または複数の更なる実施形態において、上述のネブライザーは、SAWの定在波成分、SRBWの定在波成分、SAWの進行波成分、SRBWの進行波成分、配列、およびそれらの組み合わせを利用し得る。
【0060】
非変換器表面に適用されるコーティングの他に、本件発明者は、驚くべきことに、基板の変換器表面の少なくとも一部を、単数または複数の金属でコーティングすることで過熱が低減され得ることを見出した。特に本件発明者は、変換器表面の少なくとも一部が、基板の遠位端部にコーティングを更に有する場合、過熱または焦電障害によるチップ障害が低減され、またはなくなり、より効率的で堅牢なシステムが提供されることを見出だした。一実施形態において、変換器表面上のコーティングは、単数または複数の金属から構成され得る。一実施形態において、コーティングは、チタン、金、およびそれらの組み合わせを含む生体適合性金属から形成される。代表例を図3(c)および図3(e)に示す。すなわち、基板の変換器表面全体が、コーティング41を有している(図3c)。そして、基板の変換器表面の少なくとも一部が、基板の遠位端にコーティング44を有している(図3e)。
【0061】
別の実施形態において、上述のネブライザーは、基板表面の一部に、導電性材料のパターニングを更に備え得る。本明細書で使用される場合、「パターニングする」や「パターニングされた」という用語およびそれらの変化形は、所与の基板上に幾何学的パターンを転写するフォトリソグラフィー等の技術を指す。このような技術は、チップ業界でのパターニングに典型的に使用される。一般に、コーティング、特に上述の金属コーティングが適用され、次いで表面がリソグラフィーまたは他の手段によってパターニングされる。一実施形態において、変換器基板表面がパターニングされる。別の実施形態において、非変換器基板表面がパターニングされる。驚くべきことに、(基板の変換器表面の機能領域以外の領域に)パターニングを追加することで、局所的な過熱および/または焦電性誘導電荷の放散または低減が支援され得ることが見出された。これに代えて、またはこれに加えて、基板の非変換器表面をパターニングしてもよいことを更に理解されたい。図3(c)は、基板の変換器表面の(主IDTバー30、IDT35、シールド28、屈曲部29、反射バー31を含む)機能領域を強調している。パターニングに適した基板の変換器表面の領域のうちの1つは、図3(c)で灰色で強調されたコーティングされた表面41を含む。当業者には、このようなパターニングが、装置がネブライザーとして機能することを依然として可能にするチップの表面の任意の領域に配置され得ることを理解するであろう。
【0062】
また、定在波比の調整は、複数組のIDTを結果として生じる波が相互作用するように配置することによっても達成され得ることが見出された。一例として、IDTをパターニングすることにより、破壊的な音波を中断させ得るとともに、例えば望ましくない過熱を低減させることで結果としてのチップの信頼性を向上させ得ることが想定される。更に、一実施形態において、定在波または進行波のいずれかが促進される別個の領域が提供されるように基板をパターニングまたはコーティングしてもよい。このような構成は、噴霧された液体の出力パラメータの範囲において更なる同調性を提供することが想定される。
【0063】
針または尖端を利用する実施形態を説明したが、少なくとも1つの供給導管が芯またはマイクロチャネルを含み得る更に別の実施形態が想定される。特定の供給導管の選択は、導管がネブライザーシステムの他の特徴部と組み合わされてどのように動作するかによってある程度変わり得る。
【0064】
図4aおよび図4bは、本発明によるネブライザーの別の好適な実施形態を示す。この構成では、基板2および他の主要な構成要素が、単独の一体型ハウジングまたはカートリッジ36に一体化されている。カートリッジ36は、ネブライザーの適切な電気システムおよびフローチャンバ(図示せず)を特徴とする外部ハウジングと相互作用し得るとともに、使用後に廃棄可能な一回または複数回の投与カートリッジ36として使用され得る。容器3は、カートリッジ36内のキャビティから形成することができる。容器の一面は、押し下げることができる変形可能なブリスタまたはボタン37であり得る。これは、容器の内部の液体を変位させて針または尖端6に液体を注入するように機能し得る、または液体4の全量を基板2上に堆積させてメニスカス7を形成し得る。液体4を変位させる別の手段、例えばシリンジ・プランジャも可能である。図4aは、ブリスタ37が押し下げられて液体4が堆積する前のシステムを示す。また、図4bは、ブリスタ37が押し下げられて液体4の堆積が生じた後のシステムを示す。RF電力が、基板2と接触している広い電気接点8に接続された露出ばね接点38を介して基板に供給され得る。露出ばね接点38により、カートリッジ36は、適切なネブライザーの電気システムおよびフローチャンバ(図示せず)を収容可能な外部体と相互作用することができる。基板2を取り囲む周囲の平行表面は、バッフル表面9として機能して液滴サイズを制御するとともに過剰な液体4を再循環させる。カートリッジは、液体4が噴霧される前に、またはカートリッジ36がネブライザーの外部体と相互作用する際に破壊され得る、または除去され得るシール39によって保護され得る。このカートリッジには、図1a、図1c、図1d、図1e、図2、および図3a、図3b、図3cまたは図3dに記載され示された特徴部が任意に組み合わせて組み込まれ得る。
【0065】
呈示された回路は、高周波数(10MHz)で動作する小型の手持ち回路である。代替的な無線周波数(RF)回路は嵩張るため小型化できないという障壁を克服できる主な理由は、回路の単純性にある。一般的なRF回路では、最も重要な部品がデジタルデータおよびプログラミングに共通して直感的に依存してターゲット周波数を追跡し、センサ駆動装置、電源ボタン等の種々の付属部品をトリガする。このようなRF回路とは異なり、当回路は、回路にかかる負荷の性質とは無関係に、堅牢で安定した一定の単一の周波数を利用する。また、当回路は、ユーザの呼吸パターンを検知してネブライザーを駆動すること、および/またはトリガボタンにより動作することができる。当回路は、回路全体についてアナログデータ転送と作動のみを維持する。
【0066】
当回路は、小型でコンパクトでありながら、1-ボタンを連続的に押すか切り替えること、または、2-ユーザの吸入を介して「スマート」トリガすること、のいずれかによる、デュアルトリガ方法を提供する。トリガ時間は予め決められているため、長過ぎるユーザの吸入に適合する。したがって、正確な投与時間、および既知の投与量が可能となる。
【0067】
RFドメインで動作するアナログデータ転送を利用する上述の反直感的な回路設計アプローチにより、回路を小型の11.1V(3セル)リチウムポリマー電池で駆動することができるようになった。
【0068】
図5aは、バッフル9を使用することなく噴射された液滴サイズ分布を示す。グラフは、液滴の大部分が10μm乃至100μmの範囲のサイズを有することを示している。図5bは、バッフル9を使用した場合に噴射された液滴サイズの分布を示す。このグラフは、10μm乃至100μmのサイズの大きな液滴が最少とされていることを示している。
【0069】
検知のために、光学的に平坦な単結晶基板は、10乃至10のオーダーの大きい品質係数Qを有するバルク(例えばラム)波共鳴を可能にする。したがって、基板の表面に対する非常に小さな質量負荷が、検知可能な周波数シフトを生成するため、10ngの感度までのサンプルの質量検知が可能となる。これを、Humalog(インスリン薬)の質量検知を示す図6のグラフに示す。グラフは、100ngの感度で、質量の増加に伴う線形周波数シフトを示している。
【0070】
SAWネブライザーは、活性剤の投与を含む、様々な分野での用途が見出だされている。吸入薬は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および、閉塞性気管支炎、肺気腫、嚢胞性線維症等の気流制限に関連する他の症状に対する最も一般的な治療法である。例えば、コルチコステロイド、気管支拡張剤、およびβ2作動薬は、典型的には、喘息、COPD、およびその他の呼吸器疾患の治療を目的として吸入により投与される。上述のネブライザーは、可能な活性剤の範囲と組み合わせて使用され得ることが想定される。適切な活性剤には、コルチコステロイド(フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、およびシクレソニド等)、気管支拡張剤(サルメテロールまたはアルブテロール、ホルモテロール、ビランテロール、レバルブテロール、およびイプラトロピウム等)が含まれるがこれらに限定されない。例えば、サルブタモールまたはベントリンとも呼ばれるアルブテロールは、肺の中気道および大気道を開くβ2作動薬および短期気管支拡張剤である。イプラトロピウム臭化物とも呼ばれるイプラトロピウムは、ムスカリン拮抗薬(抗コリン作用薬の一種)であり、肺の中気道および大気道を開く。BUDとも呼ばれるブデソニドは、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の長期管理に使用されるコルチコステロイドの一種である。一実施形態において、上述のネブライザーは、アルブテロールの送達に適している。一実施形態において、上述のネブライザーは、イプラトロピウムの送達に適している。一実施形態において、上述のネブライザーは、ブデソニドの送達に適している。
【0071】
上述のネブライザーは、活性剤を信頼性高く、効率的かつ正確に送達することを有利に提供する。結果として噴霧された液体は、単数または複数のパラメータにより特徴付けられ得る。各活性剤は異なる物理化学的特性を有することを理解されたい。更に、上述のネブライザーの種々のパラメータは、液滴サイズ(ミクロン)、幾何標準偏差(GSD)、体積噴霧量、安定化期間(すなわち使用時間)、投与されたAPIの割合、軌道ロス、および微粒子画分を含む所与の活性剤の送達に対して最適化され得ることを理解されたい。
【0072】
一態様において、上述のネブライザーは、噴霧液体の液滴サイズの制御を提供する。特に、噴霧液体の液滴サイズは、所与の活性剤に対して最適化され得る。一実施形態において、上述のネブライザーは、液滴サイズが0.1乃至100μmの範囲、好適には0.1乃至10μmの範囲、好適には0.5乃至7.5μmの範囲、より好適には1乃至5μmの範囲、更に好適には2乃至4μmの範囲にある噴霧液体を提供する。一実施形態において、上述のネブライザーは、液滴サイズが10μmより小さい(<10μm)、好適には8μmより小さい(<8μm)、好適には6μmより小さい(<6μm)、好適には5μmより小さい(<5μm)、好適には3μmより小さい(<3μm)噴霧液体を提供する。
【0073】
一態様において、上述のネブライザーは、噴霧液体の液滴の幾何標準偏差(GSD)の制御を提供する。特に、噴霧液体のGSDは、所与の活性剤に対して最適化され得る。一実施形態において、上述のネブライザーは、GSDが10μmより小さい(<10μm)、好適には8μmより小さい(<8μm)、好適には6μmより小さい(<6μm)、好適には5μmより小さい(<5μm)、好適には3μmより小さい(<3μm)、好適には2.5μmより小さい(<2.5μm)、好適には2.1μmより小さい(<2.1μm)噴霧液体を提供する。
一態様において、上述のネブライザーは、安定化期間(すなわち使用時間)の制御を提供する。有利には、上述のネブライザーは、安定化期間(すなわち使用時間)を短縮する。安定化期間が短い、すなわち短縮されることで、使用の遅延時間が短縮され、効率が向上し、サンプルロスまたは流体ロスが減少し、活性剤の投与量と投与の精度が向上する。特に、安定化期間は、所与の活性剤に対して最適化され得る。一実施形態において、上述のネブライザーは、1秒より短い(<1秒)、好適には0.5秒より短い(<0.5秒)、好適には0.25秒より短い(<0.25秒)、好適には0.1秒より短い(<0.1秒)、好適には0.05秒より短い(<0.05秒)、好適には0.03秒より短い(<0.03秒)、好適には0.02秒より短い(<0.02秒)、好適には0.01秒より短い(<0.01秒)安定化期間を提供する。
【0074】
一態様において、上述のネブライザーは、噴霧液体の体積噴霧量の制御を提供する。特に、噴霧液体の体積噴霧量は、所与の活性剤に対して最適化され得る。一実施形態において、上述のネブライザーは、体積噴霧量が0.1乃至10mL/分の範囲にある、好適には0.15乃至7.5mL/分の範囲にある、好適には0.2乃至5mL/分の範囲にある噴霧液体を提供する。一実施形態において、上述のネブライザーは、体積噴霧量が0.1mL/分より多い(>0.1mL/分)、好適には0.25mL/分より多い(>0.25mL/分)、好適には0.3mL/分より多い(>0.3mL/分)、好適には0.35mL/分より多い(>0.35mL/分)、好適には0.4mL/分より多い(>0.4mL/分)、好適には0.45mL/分より多い(>0.45mL/分)、好適には0.5mL/分より多い(>0.5mL/分)、好適には0.55mL/分より多い(>0.55mL/分)、好適には0.6mL/分より多い(>0.6mL/分)、好適には0.65mL/分より多い(>0.65mL/分)、好適には0.7mL/分より多い(>0.7mL/分)、好適には0.75mL/分より多い(>0.75mL/分)噴霧液体を提供する。
【0075】
一態様において、上述のネブライザーは、噴霧液体において投与されるAPIの割合の制御を提供する。特に、投与されるAPIの割合は、所与の活性の物理化学的特性に依存し得るが、上述のシステムを用いて所与の活性剤に対して最適化され得る。一実施形態において、上述のネブライザーは、投与されるAPIの割合が60%より多い(>60%)、好適には65%より多い(>65%)、好適には70%より多い(>70%)、好適には75%より多い(>75%)、好適には80%より多い(>80%)、好適には85%より多い(>85%)、好適には90%より多い(>90%)、好適には95%より多い(>95%)、好適には97%より多い(>97%)、好適には98%より多い(>98%)、好適には99%より多い(>99%)噴霧液体を提供する。
【0076】
一態様において、上述のネブライザーは、噴霧液体における軌道ロスの制御を提供する。特に、軌道ロスは、所与の活性剤に対して最適化され得る。一実施形態において、上述のネブライザーは、軌道ロスが20%より少ない(<20%)、好適には軌道ロスが15%より少ない(<15%)、好適には軌道ロスが10%より少ない(<10%)、好適には軌道ロスが9%より少ない(<9%)、好適には軌道ロスが8%より少ない(<8%)、好適には軌道ロスが7%より少ない(<7%)、好適には軌道ロスが6%より少ない(<6%)、好適には軌道ロスが5%より少ない(<5%)噴霧液体を提供する。
【0077】
一態様において、上述のネブライザーは、噴霧液体の微粒子画分の制御を提供する。微粒子画分は、一般に略等張の噴霧エアロゾルの吸入中に肺に沈着する質量の尺度として理解される。種々の微粒子の定義で吸入されたエアロゾルの量が、略等張の噴霧エアロゾルの肺および肺胞領域に沈着するエアロゾルの量と比較される。液滴ステージ1-7は、肺深部組織を蓄積またはターゲットとする形態において65%の薬物を有することが認められている。微粒子画分は、所与の活性の物理化学的特性に依存し得るが、上述のシステムを用いて所与の活性剤に対して最適化され得る。一実施形態において、上述のネブライザーは、液滴ステージ1-7において微粒子画分が20%より多い(>20%)、好適には30%より多い(>30%)、好適には35%より多い(>35%)、好適には40%より多い(>40%)、好適には45%より多い(>45%)、好適には50%より多い(>50%)、好適には55%より多い(>55%)、好適には60%より多い(>60%)、好適には65%より多い(>65%)、好適には70%より多い(>70%)、好適には75%より多い(>75%)微粒子画分を提供する。
【0078】
上述の活性剤の他に、上述のネブライザーは、デリケートな分子および粒子(例えば、DNA、RNAi、ペプチド、タンパク質および細胞)を含む流体またはサンプルを、それらを変性させることなく、最初から最後まで多い噴霧(典型的には毎分1ml超)を維持しつつ噴霧することに適している。これまでの従来技術のネブライザーは、毎分0.1乃至0.4mlに制限されているため、典型的には数十分から1時間の長い吸入時間が必要である。したがって、従来のネブライザーの実際的な取り込みは制限されてきた。本発明のネブライザーにより達成可能な大きい噴霧量により、投与時間が大幅に短縮され得る。
【0079】
本発明によるネブライザーは、テクネチウム-99mDTPAエアロゾル([99mTc]DTPAエアロゾル)を使用する吸入による肺への活性剤の送達の効率性を測定するヒト臨床試験の対象となっている。最初の結果は、上述のネブライザーシステムが、噴霧された活性剤のターゲット組織への効果的な送達を提供することを示している。
【0080】
【表1】
【0081】
当業者に明らかであると見なされ得る変形例および変更例は、添付の特許請求の範囲において請求される本発明の範囲に含まれる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容される少なくとも1つの圧電基板であって、前記基板内に音波エネルギーを生成するための少なくとも1つの電気音響変換器が配置される変換器表面と、反対側の非変換器表面と、を有する圧電基板と、
前記変換器表面および前記非変換器表面のうちの少なくとも一方に液体を供給するための液体供給システムと、
を含む、液滴を噴霧するためのネブライザーであって、
前記液体供給システムは、前記液体を収容するための容器と、前記基板に接触して前記液体を前記容器から前記基板に供給するための少なくとも1つの剛性のある供給導管と、を含み、
前記液体供給システムは、前記基板への前記液体の供給が前記液体供給システムから液体を引き寄せる前記基板内で発生する音波エネルギーによって調整されるように前記液体の供給を準備するように構成され、前記基板に接触する芯を備えない、
ネブライザー。
【請求項2】
前記供給導管は、尖端または針の形態にある、
請求項1に記載のネブライザー。
【請求項3】
前記供給導管は、音響反射材料から形成される、
請求項1または2に記載のネブライザー。
【請求項4】
前記液体は、前記容器から前記供給導管を介して重力供給される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項5】
前記液体は、前記容器から能動ポンプシステムを介して移送される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項6】
前記能動ポンプシステムは、シリンジまたは蠕動ポンプである、
請求項5に記載のネブライザー。
【請求項7】
前記液体供給システムは、当該システムから安定した液体の流れを提供するための流量調節器を更に含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載ネブライザー。
【請求項8】
前記流量調節器は、液体が通過可能な液体出口通路と、前記容器に接続された空気入口通路と、を含む、
請求項7に記載のネブライザー。
【請求項9】
前記流量調節器に接続された内部チャンバを更に含み、
前記内部チャンバは、前記供給導管の周囲先端部が収容される周囲開口を有し、
液体が毛管作用により前記周囲開口と前記供給導管の前記周囲先端部との間を通過可能である、
請求項8に記載のネブライザー。
【請求項10】
前記基板は、前記基板の前記供給導管に対する接触を制御するように変位可能なマウントに支持される、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項11】
前記マウントは、その一端部に設けられた旋回支持部と、弾性部材に支持された対向端部と、を含む、
請求項10に記載のネブライザー。
【請求項12】
前記マウントは、カンチレバーに支持される、
請求項10に記載のネブライザー。
【請求項13】
前記噴霧される液滴のサイズを制御するための制御手段を更に含む、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項14】
前記制御手段は、変換器表面のうちの少なくとも一方と略平行に隣接する関係で配置された少なくとも1つのバッフルを含む、
請求項13に記載のネブライザー。
【請求項15】
前記バッフルは、少なくとも1つの前記基板表面から平行に隣接する関係で配置されたハウジング内壁により提供される、
請求項14に記載のネブライザー。
【請求項16】
前記ハウジングは、入口開口を更に含み、
前記容器は、前記入口開口に収容可能な首部を含む、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項17】
平行に隣接した関係において離間して配置された少なくとも2つの前記基板を含む、
請求項1乃至16のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項18】
前記液滴サイズ制御手段は、隣接する前記基板表面の間に供給される前記液体のメニスカスの厚さを制御するように前記基板同士の間隔を予め設定することで、前記噴霧される液滴のサイズを制御することを含む、
請求項17に記載のネブライザー。
【請求項19】
前記液滴サイズ制御手段は、隣接する前記基板表面の間に供給される前記液体のメニスカスの厚さを制御するように前記ハウジングの内壁からの前記基板の間隔を予め設定することで、前記噴霧される液滴のサイズを制御することを含む、
請求項17または請求項18に記載のネブライザー。
【請求項20】
前記圧電基板および電気音響変換器は、前記少なくとも1つの基板上の液体質量を検知するようにも使用される、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項21】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容される少なくとも1つの圧電基板であって、前記基板内に音波エネルギーを生成するための少なくとも1つの電気音響変換器が配置される変換器表面と、反対側の非変換器表面と、を有する圧電基板と、
前記少なくとも1つの圧電基板の前記外周表面の少なくとも一部と接触する柔軟性材料と、
前記変換器表面および前記非変換器表面のうちの少なくとも一方に液体を供給するための液体供給システムと、
を含む、液滴を噴霧するためのネブライザーであって、
前記液体供給システムは、前記液体を収容するための容器と、前記液体を前記容器から前記基板に供給するための少なくとも1つの供給導管と、を含み、
前記液体供給システムは、前記基板への前記液体の供給が前記液体供給システムから液体を引き寄せる前記基板内で発生する音波エネルギーによって調整されるように前記液体の供給を準備するように構成され、前記基板に接触する芯を備えない、
ネブライザー。
【請求項22】
前記柔軟性材料は、粘着テープ、シリコーンゴム、および熱ペースト、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、
請求項21に記載のネブライザー。
【請求項23】
前記柔軟性材料は、基板の前記遠位端部の前記外周の少なくとも一部に接触する、
請求項21または22に記載のネブライザー。
【請求項24】
前記少なくとも1つの供給導管は、前記基板と接触する比較的剛性のある供給導管である、
請求項21乃至23のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項25】
前記少なくとも1つの供給導管は、尖端、針、芯、マイクロチャネル、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、
請求項21乃至23のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項26】
前記変換器表面、前記非変換器表面、またはこれらの組み合わせの少なくとも一部は、パターニングされる、
請求項1乃至25のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項27】
前記音波エネルギーは、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面を伝搬する表面弾性波(SAW)を含む、
請求項1乃至26のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項28】
前記音波エネルギーは、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面と前記非変換器表面との間で反射する表面反射バルク波(SRBW)を含む、
請求項1乃至27のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項29】
前記音波エネルギーは、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面において伝搬する表面弾性波(SAW)と、前記少なくとも1つの基板の前記変換器表面と前記非変換器表面との間で反射する表面反射バルク波(SRBW)との組み合わせを含む、
請求項1乃至28のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項30】
前記表面弾性波(SAW)は、定在波、進行波、およびこれらの組み合わせを含む、
請求項27または29のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項31】
前記表面反射バルク波(SRBW)は、定在波、進行波、およびこれらの組み合わせを含む、
請求項28または29のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項32】
前記電気音響変換器は、インターデジタル変換器(IDT)である、
請求項1乃至31のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項33】
前記少なくとも1つの圧電基板は、前記変換器表面を伝搬する前記SAWの波長の厚さ、またはそれに近い厚さを有する、
請求項1乃至32のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項34】
前記少なくとも1つの圧電基板は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)から形成される、
請求項1乃至33のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項35】
前記非変換器表面の少なくとも一部は、少なくとも1つの金属から構成されるコーティングを更に含む、
請求項1乃至34のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項36】
前記変換器表面の少なくとも一部は、前記基板の前記遠位端部に、少なくとも1つの金属から構成されるコーティングを更に含む、
請求項1乃至35のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項37】
前記コーティングは、チタン、金、アルミニウム、クロム、またはこれらの組み合わせから構成される、
請求項35または請求項36に記載のネブライザー。
【請求項38】
前記液体は、前記変換器表面、前記非変換器表面、または前記変換器表面および前記非変換器表面の両方から噴霧される、
請求項1乃至37のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項39】
前記液体は、噴霧されて0.1乃至100μmの範囲のサイズを有する液滴を形成する、
請求項1乃至38のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項40】
前記液体は、最大10ml/分の噴霧量で噴霧される、
請求項1乃至39のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項41】
前記マウントは、前記基板が載置される棚を含み、
前記棚は、基板に沿った液体クリープを防止するための単数または複数の間隙を含む、
請求項10乃至12のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項42】
前記ハウジングは、前記少なくとも1つの電気音響変換器に接続された外部電気接点と、一体型液体供給システムと、を有するカートリッジハウジングの形態にある、
請求項1乃至41のいずれか一項に記載のネブライザー。
【請求項43】
請求項1乃至42のいずれか一項に記載のネブライザーを使用して液体を噴霧する方法。
【請求項44】
液体を噴霧して0.1乃至100μmの範囲のサイズを有する液滴を形成する工程を含む、請求項43に記載の液体を噴霧する方法。
【請求項45】
最大10ml/分の体積噴霧量で液体を噴霧する工程を含む、
請求項43に記載の液体を噴霧する方法。
【請求項46】
液体を噴霧して幾何標準偏差(GSD)が10μmより小さい(<10μm)液滴を形成する工程を含む、
請求項43に記載の液体を噴霧する方法。
【請求項47】
前記液体が、医薬品、DNA、RNAi、ペプチド、タンパク質および細胞等の機能的または治療性物質、または香料、化粧品、殺虫剤、塗料または防腐剤等の非治療性物質を含む、
請求項43乃至46のいずれか一項に記載の液体を噴霧する方法。
【外国語明細書】