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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160713
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】EMS装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075907
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】519220490
【氏名又は名称】株式会社おせっかい倶楽部
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】森谷 敏夫
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ05
4C053JJ24
(57)【要約】
【課題】同時に収縮できる筋肉の量を従来よりも増やすことができるEMS装置を提供する。
【課題を解決するための手段】パルス発生装置と、正極と、負極と、を備えたEMS装置であって、前記パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を前記正極に出力し、前記パルス発生装置は、マイナスの第2パルス信号を前記負極に出力し、前記第1パルス信号と前記第2パルス信号は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であるEMS装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス発生装置と、正極と、負極と、を備えたEMS装置であって、
前記パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を前記正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第2パルス信号を前記負極に出力し、
前記第1パルス信号と前記第2パルス信号は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であるEMS装置。
【請求項2】
パルス発生装置と、正極と、負極と、を備えたEMS装置であって、
前記パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を前記正極に出力し、
前記第1パルス信号と前記第2パルス信号は、同一の波形成分と固有の波形成分をそれぞれ有し、
前記第1パルス信号に固有の波形成分と前記第2パルス信号に固有の波形成分は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であるEMS装置。
【請求項3】
パルス発生装置と、第1正極と、第1負極と、第2正極と、第2負極と、を備えたEMS装置であって、
前記パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を前記第1正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第2パルス信号を前記第1負極に出力し、
前記パルス発生装置は、プラスの第3パルス信号を前記第2正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第4パルス信号を前記第2負極に出力し、
前記第1パルス信号と前記第2パルス信号は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であり、
前記第3パルス信号と前記第4パルス信号は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であるEMS装置。
【請求項4】
パルス発生装置と、第1正極と、第1負極と、第2正極と、第2負極と、を備えたEMS装置であって、
前記パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を前記第1正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第2パルス信号を前記第1負極に出力し、
前記パルス発生装置は、プラスの第3パルス信号を前記第2正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第4パルス信号を前記第2負極に出力し、
前記第1パルス信号と前記第2パルス信号は、同一の波形成分と固有の波形成分をそれぞれ有し、
前記第3パルス信号と前記第4パルス信号は、同一の波形成分と固有の波形成分をそれぞれ有し、
前記第1パルス信号に固有の波形成分と前記第2パルス信号に固有の波形成分は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であり、
前記第3パルス信号に固有の波形成分と前記第4パルス信号に固有の波形成分は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であるEMS装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EMS装置に関する。EMSは、Electrical Muscle Stimulationの略である。
【背景技術】
【0002】
従来のEMS装置では、負極をグランドとして正極にプラスの電圧を印加する、あるいは、正極をグランドとして負極にマイナスの電圧を印加していた(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-153565号公報
【特許文献2】特開2020-168110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EMS装置は、脳から発せられる筋肉を収縮させるための信号(つまり神経信号)を模したパルス信号を人体に印加することで、筋肉に繋がる神経線維を刺激する装置である。この刺激が神経線維を経由して筋肉に伝達されることにより、筋肉は収縮する。以下、筋肉の収縮を「筋収縮」ということがある。
【0005】
神経線維には電流を流す方向に決まりがあり、通常は脳から筋肉へ向けた一方方向にしか電流は流れない。神経線維に対して、電流が流れる方向とは逆の方向に電圧を印加しても、神経線維に電流は流れず、筋収縮を誘発させることはできない。筋収縮を誘発させるためには、EMS装置によって人体に流れる電流の方向を、神経線維が電流を流す方向に一致させる必要がある。
【0006】
神経線維は筋肉内で枝分かれし、最終的には筋線維と結合している。つまり、脳から末端につながる筋線維まで、神経線維はすべて順行性、すなわち、神経線維の方向と電流の向きが一致している状態である。しかしながらEMS装置は、体外から電圧を印加し、筋収縮を発生させるため、仮に収縮させたい筋肉の近傍で電圧を印加したとしても、筋肉内で枝分かれしている神経線維が存在するため、一部の神経線維では逆行性、すなわち、神経線維の方向と電流の向きが逆になってしまう。このため、すべての筋線維を収縮させることはできない。これは、EMSによって生じる電流の方向と、神経線維の方向が一致する確率が、枝分かれのため低下することに起因しており、結果として、同一の筋肉内において、一部の筋線維が収縮しないという状況を生じさせる。
【0007】
以上の理由で、一つの方向(つまり、正極(プラスのパルス信号)→負極(グランド)の方向、あるいは負極(マイナスのパルス信号)→正極(グランド)の方向)にのみ電流を流す従来のEMS装置では、同時に収縮させることができる筋肉の量が限定的であった。例えば、上記の例でいうと、EMS装置の刺激電流の向きが、神経線維の一部では、順行性であるが、それ以外では逆行性となるため、一度の刺激で筋肉全体を収縮させることはできない。仮に、電極の正負を入れ替えることで順行性の神経線維と逆行性の神経線維を交互に刺激できたとしても、筋肉全体を同時に収縮させることはできなかった。
【0008】
本発明は、以上を鑑みたものであり、同時に収縮できる筋肉の量を従来よりも増やすことができるEMS装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次の一実施形態を含む。
【0010】
パルス発生装置と、正極と、負極と、を備えたEMS装置であって、
前記パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を前記正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第2パルス信号を前記負極に出力し、
前記第1パルス信号と前記第2パルス信号は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であるEMS装置。
【0011】
パルス発生装置と、正極と、負極と、を備えたEMS装置であって、
前記パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を前記正極に出力し、
前記第1パルス信号と前記第2パルス信号は、同一の波形成分と固有の波形成分をそれぞれ有し、
前記第1パルス信号に固有の波形成分と前記第2パルス信号に固有の波形成分は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であるEMS装置。
【0012】
パルス発生装置と、第1正極と、第1負極と、第2正極と、第2負極と、を備えたEMS装置であって、
前記パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を前記第1正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第2パルス信号を前記第1負極に出力し、
前記パルス発生装置は、プラスの第3パルス信号を前記第2正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第4パルス信号を前記第2負極に出力し、
前記第1パルス信号と前記第2パルス信号は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であり、
前記第3パルス信号と前記第4パルス信号は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であるEMS装置。
【0013】
パルス発生装置と、第1正極と、第1負極と、第2正極と、第2負極と、を備えたEMS装置であって、
前記パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を前記第1正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第2パルス信号を前記第1負極に出力し、
前記パルス発生装置は、プラスの第3パルス信号を前記第2正極に出力し、
前記パルス発生装置は、マイナスの第4パルス信号を前記第2負極に出力し、
前記第1パルス信号と前記第2パルス信号は、同一の波形成分と固有の波形成分をそれぞれ有し、
前記第3パルス信号と前記第4パルス信号は、同一の波形成分と固有の波形成分をそれぞれ有し、
前記第1パルス信号に固有の波形成分と前記第2パルス信号に固有の波形成分は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であり、
前記第3パルス信号に固有の波形成分と前記第4パルス信号に固有の波形成分は、0Vを境とした逆位相のパルス信号であるEMS装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、正極と負極に0Vを境にした逆位相のパルス信号が出力されるため、人体に同時に流れる電流の方向が複雑になる。同時に流れる電流の方向が複雑であればあるほど、神経線維が電流を流す方向に電流が流れる確率が高まる。このため、従来のEMS装置では同時に電流を流すことができなかった神経線維に同時に電流を流すことが可能となり、同時に収縮できる筋肉の量を従来よりも増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係るEMS装置が出力する第1、第2パルス信号の一例を説明する図である。
図2】実施形態2に係るEMS装置が出力する第1乃至第4パルス信号の一例を説明する図である。
図3】パルス信号を構成する、同一の波形成分と固有の波形成分の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1に係るEMS装置]
図1は、実施形態1に係るEMS装置が出力する第1、第2パルス信号の一例を説明する図である。図1に示すように、実施形態1に係るEMS装置は、パルス発生装置と、正極と、負極と、を備えたEMS装置であって、パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を正極に出力し、パルス発生装置は、マイナスの第2パルス信号を負極に出力し、第1パルス信号と第2パルス信号は、0Vを境にした逆位相のパルス信号であるEMS装置である。
【0017】
(正極、負極)
正極及び負極は人体に装着される電極である。正極及び負極には、EMS装置の電極として公知のものを用いることができる。
【0018】
正極は例えば腹部に装着され、負極は例えば膝上に装着される。ただし、電極の装着箇所は特に限定されるものではない。実施形態1によれば、正極と負極に0Vを境にした逆位相のパルス信号が印加されるため、例えば足が床について接地されているとすると、膝上と腹部の間だけではなく、膝上と足の間にも電位差が生じ、電流が流れる。このため、負極がグランド、または正極がグランドとされる場合と比較して、同時により多くの神経線維に電流を流すことが可能であり、同時により多くの筋肉を収縮させることができる。
【0019】
(パルス発生装置)
パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を正極に出力し、マイナスの第2パルス信号を負極に出力する。これにより、第1パルス信号に応じた電圧が正極から人体に印加され、第2パルス信号に応じた電圧が負極から人体に印加される。
【0020】
(第1パルス信号、第2パルス信号)
プラスの第1パルス信号とは第1パルス信号の極性がプラスであること、換言すれば、第1パルス信号の振幅が0Vよりもプラス側に振れていることをいう。マイナスの第2パルス信号とは第2パルス信号の極性がマイナスであること、換言すれば、第2パルス信号の振幅が0Vよりもマイナス側に振れていることをいう。
【0021】
第1、第2パルス信号の振幅は神経線維の刺激に適した大きさであり、例えば0Vより大きく50V以下であることが好ましく、10V以上30V以下であることがより好ましい。
【0022】
第1、第2パルス信号の周波数は神経線維の刺激に適した数値であり、例えば1Hz以上100Hz以下であることが好ましく、2Hz以上70Hz以下であることがより好ましい。
【0023】
第1、第2パルス信号のパルス幅は神経線維の刺激に適した長さであり、例えば3μ秒以上400μ秒以下であることが好ましく、5μ秒以上300μ秒以下であることがより好ましい。
【0024】
第1パルス信号と第2パルス信号は、0Vを境とした逆位相のパルス信号である。これにより、正極と負極の間に刺激電位差が生じる。正極と負極から互いに逆位相のパルス信号に応じた電圧を印加するため、人体に同時に流れる電流の方向が複雑になる。
【0025】
パルス発生装置は、例えば、パルス源生成装置、増幅器、及び反転増幅器を用いて構成することができる。パルス源生成装置は、第1、第2パルス信号の元になる信号を出力する装置である。パルス源生成装置には発振器やマイクロプロセッサなどを用いることができる。増幅器にはオペアンプやトランジスタなどを用いることができる。反転増幅器はオペアンプやトランジスタなどを用いることができる。パルス源生成装置がその内部に十分な大きさの刺激電圧を出力するための増幅回路や反転増幅回路を備えている場合、パルス発生装置は、増幅器や反転増幅器を用いることなく構成することができる。また、パルス源生成装置からプラスとマイナスの両方の信号を出力することができる場合、パルス発生装置は、パルス源生成装置に加えて、増幅器のみ、あるいは反転増幅器のみで構成することもできる。その一方、増幅器と反転増幅器の両方を用いる場合は、パルス源生成装置として、プラスの信号のみを出力する装置やマイナスの信号のみを出力する装置を用いることができる。
【0026】
以上説明した実施形態1に係るEMS装置によれば、正極と負極に0Vを境にした逆位相のパルス信号がそれぞれ出力されるため、人体に同時に流れる電流の方向が複雑になる。同時に流れる電流の方向が複雑であればあるほど、神経線維が電流を流す方向(順行性の方向)に電流が流れる確率が高まる。このため、従来のEMS装置では順行性の電流とならなかった神経線維にも順行性の電流を流すことが可能となり、同時に収縮できる筋肉の量を従来よりも増やすことができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、負極をグランドとして正極にプラスの電圧(例えば50Vとする。)のみ印加する場合と比較して、あるいは正極をグランドとして負極にマイナスの電圧(例えば-50Vとする。)のみを印加する場合と比較して、正極と負極の間の電位差が大きくなり(上記の例でいうと、例えば100V=50V-(-50V)となり、それぞれの場合と比較して電位差が2倍になる。)、神経線維をより強く刺激することができる。このように、本実施形態によれば、プラスの電圧とマイナスの電圧を正極と負極からそれぞれ独立して印加することで、より大きな刺激電位差を生じさせることが可能であり、より強い筋収縮が可能になる。
【0028】
プラスの電圧とマイナスの電圧を正極に対して同時に印加しても、あるいはプラスの電圧とマイナスの電圧を負極に対して同時に印加しても、両電圧が打ち消し合って刺激電位が0になり、人体に効果的な刺激を与えることができない。本実施形態では、プラスの電圧とマイナスの電圧を正極と負極からそれぞれ独立して印加するため、つまり、プラスの電圧を正極に印加する一方でマイナスの電圧を負極に印加するため、プラスの電圧とマイナスの電圧が、打ち消し合うのではなく、むしろ刺激電位差を大きくするように機能する。
【0029】
[実施形態2に係るEMS装置]
図2は、実施形態2に係るEMS装置が出力する第1乃至第4パルス信号の一例を説明する図である。図2に示すように、実施形態2に係るEMS装置は、パルス発生装置と、第1正極と、第1負極と、第2正極と、第2負極と、を備えたEMS装置であって、パルス発生装置は、プラスの第1パルス信号を第1正極に出力し、パルス発生装置は、マイナスの第2パルス信号を第1負極に出力し、パルス発生装置は、プラスの第3パルス信号を第2正極に出力し、パルス発生装置は、マイナスの第4パルス信号を第2負極に出力し、第1パルス信号と第2パルス信号は、0Vを境にした逆位相のパルス信号であり、第3パルス信号と第4パルス信号は、0Vを境にした逆位相のパルス信号であるEMS装置である。
【0030】
(第1正極、第2正極)
第1、第2正極は、実施形態1の正極と同様に構成することができる。第1正極は例えば腹部の右側に装着され、第2正極は例えば腹部の左側に装着することができる。第1、第2正極を人体の同一部位に装着する場合、第1正極と第2正極が電気的に結合していても良いし、例えば左右で分割するなど、電気的に独立していてもよい。
【0031】
(第1負極、第2負極)
第1、第2負極は、実施形態1の負極と同様に構成することができる。第1負極は例えば右膝上に装着され、第2負極は例えば左膝上に装着することができる。第1、第2負極を人体の同一部位に装着する場合、第1負極と第2負極が電気的に結合していても良いし、例えば左右で分割するなど、電気的に独立していてもよい。
【0032】
(パルス発生装置)
パルス発生装置は、実施形態1のパルス発生装置と同様に構成することができる。
【0033】
(第1パルス信号、第3パルス信号)
第1パルス信号、第3パルス信号は、実施形態1の第1パルス信号と同様に構成することができる。
【0034】
(第2パルス信号、第4パルス信号)
第2パルス信号、第4パルス信号は、実施形態1の第2パルス信号と同様に構成することができる。
【0035】
第1パルス信号と第2パルス信号は、0Vを境にした逆位相のパルス信号である。これにより、第1正極と第1負極の間に刺激電位差が生じる。第1正極と第1負極から互いに逆位相のパルス信号に応じた電圧を印加するため、人体に同時に流れる電流の方向が複雑になる。
【0036】
また、第3パルス信号と第4パルス信号は、0Vを境にした逆位相のパルス信号である。これにより、第2正極と第2負極の間に刺激電位差が生じる。第2正極と第2負極から互いに逆位相のパルス信号に応じた電圧を印加するため、人体に同時に流れる電流の方向が複雑になる。
【0037】
位相が異なるほかは、第2パルス信号は第1パルス信号と同じ特性を有するものとする。例えば、第1、第2パルス信号は同じ周波数とパルス幅を有する。ただし、振幅の大きさは同じであっても良いし、異なっていてもよい。また、位相が異なるほかは、第4パルス信号は第3パルス信号と同じ特性を有するものとする。例えば、第3、第4パルス信号は同じ周波数とパルス幅を有する。ただし、振幅の大きさは同じであっても良いし、異なっていてもよい。
【0038】
第3パルス信号と第1パルス信号は、異なる特性(例:周波数、振幅、及びパルス幅)を有してもよいが、同じ特性(例:周波数、振幅、及びパルス幅)を有してもよい。また、第4パルス信号と第2パルス信号は、異なる特性(例:周波数、振幅、及びパルス幅)を有してもよいが、同じ特性(例:周波数、振幅、及びパルス幅)を有してもよい。
【0039】
パルス発生装置は、例えば、パルス源生成装置、増幅器、及び反転増幅器を用いて構成することができる。パルス源生成装置は、第1、第2、第3、第4パルス信号の元になる信号を出力する装置である。パルス源生成装置には発振器やマイクロプロセッサなどを用いることができる。増幅器にはオペアンプやトランジスタなどを用いることができる。反転増幅器はオペアンプやトランジスタなどを用いることができる。パルス源生成装置がその内部に十分な大きさの刺激電圧を出力するための増幅回路や反転増幅回路を備えている場合、パルス発生装置は、増幅器や反転増幅器を用いることなく構成することができる。また、パルス源生成装置からプラスとマイナスの両方の信号を出力することができる場合、パルス発生装置は、パルス源生成装置に加えて、増幅器のみ、あるいは反転増幅器のみで構成することもできる。その一方、増幅器と反転増幅器の両方を用いる場合は、パルス源生成装置として、プラスの信号のみを出力する装置やマイナスの信号のみを出力する装置を用いることができる。
【0040】
以上説明した実施形態2に係るEMS装置によれば、第1正極と第1負極の間だけではなく、第2正極と第2負極の間にも刺激電位差が生じるので、実施形態1に係るEMS装置と比較して、より一層、人体に同時に流れる電流の方向が複雑になる。
【0041】
以上説明した実施形態1、2では、例えばプラス50Vの電圧とマイナス50Vの電圧を別々に発生させ正極と負極に同時に出力することで、正極と負極の間、あるいは第1正極と第1負極の間及び第2正極と第2負極の間それぞれに、100V程度の電位差を発生させることができる。このため、負極をグランドとして正極にプラス100Vの電圧を印加する場合や、正極をグランドとして負極にマイナス100Vの電圧を印加する場合と比較して、個々の部品の耐圧を下げることができるので、部品点数が増えるデメリットを上回る、部品単価の削減が期待できる。
【0042】
以上説明した実施形態1、2において、「0Vを境にした逆位相」とは、0Vを境にして振幅が逆になっていることをいう。第1、第2パルス信号、ならびに第3、第4パルス信号は同じ周波数とパルス幅を有する。ただし、振幅の大きさは同じであっても良いし、異なっていてもよい。
【0043】
第1パルス信号と第2パルス信号が「0Vを境にした逆位相」のパルス信号であるかどうか、ならびに、第3パルス信号と第4パルス信号が「0Vを境にした逆位相」のパルス信号であるかどうかは、第1パルス信号と第2パルス信号から同一の波形成分を除去した場合に残る固有の波形成分、ならびに、第3パルス信号と第4パルス信号から同一の波形成分を除去した場合に残る固有の波形成分に基づき判断する。以下に、図3に示す第1パルス信号と第2パルス信号の例を用いて、この点を詳細に説明する。第3パルス信号と第4パルス信号についても同様である。
【0044】
図3は、パルス信号を構成する、同一の波形成分と固有の波形成分の一例を説明する図である。例えば、図3(a)のパルス信号(第1パルス信号)が正極に印加され、図3(d)のパルス信号(第2パルス信号)が負極に印加されているものとする。両パルス信号は一見すると逆位相の関係を満たしていないように思われる。しかし、図3(a)のパルス信号は図3(b)のパルス信号と図3(c)のパルス信号に分解することが可能であり、図3(d)のパルス信号は図3(e)のパルス信号と図3(f)のパルス信号に分解することが可能であり、図3(b)のパルス信号と図3(e)のパルス信号は同一の波形である。したがって、図3(a)のパルス信号と図3(d)のパルス信号が逆位相の関係を満たしているかどうかは、図3(a)のパルス信号と図3(d)のパルス信号から、図3(b)のパルス信号と図3(e)のパルス信号をそれぞれ除いた場合に残る、図3(c)のパルス信号と図3(f)のパルス信号の比較に基づき判断される。図3に示す例では、図3(c)のパルス信号と図3(f)のパルス信号は「0Vを境にした逆位相」の関係にあるため、図3(a)のパルス信号と図3(d)のパルス信号は「0Vを境にした逆位相」の関係にあるといえる。したがって、図3(a)のパルス信号(第1パルス信号)が正極に印加され、図3(d)のパルス信号(第2パルス信号)が負極に印加される例において、正極に印加される図3(a)のパルス信号(第1パルス信号)と負極に印加される図3(d)のパルス信号(第2パルス信号)は、「0Vを境とした逆位相」のパルス信号である。また、図3(c)のパルス信号がプラスのパルス信号であるのに対し、図3(f)のパルス信号はマイナスのパルス信号であるから、図3(a)のパルス信号(第1パルス信号)が正極に印加され、図3(d)のパルス信号(第2パルス信号)が負極に印加される例においては、正極にはプラスの電圧が印加され、負極にはマイナスの電圧が印加されている。
【0045】
このように、第1パルス信号と第2パルス信号が「0Vを境にした逆位相」のパルス信号であるかどうかは、第1パルス信号と第2パルス信号から同一の波形成分を除去して判断するものとする。図1図2においては、理解を容易にするため、第1パルス信号と第2パルス信号が同一の波形成分を含まない場合について説明したが、上記のとおり、第1パルス信号と第2パルス信号は同一の波形成分を含んでいてもよく、この場合、「0Vを境にした逆位相」であるかどうかは、両パルス信号から同一の波形成分を除去して判断するものする。第1パルス信号と第2パルス信号が同一波形を含んでいる場合、正極と負極の電位差は相対的に0とみなすことができるため、同一の波形成分を含んでいない場合と同様の効果を実質的に実現できる。なお、「同一の波形成分」であるかは周波数、パルス幅、及び振幅が同一かどうかにより判断する。これら3つのうち1つが同じでない場合は同一の波形成分とはいわない。ただし、ここでいう「同一」は厳密に同じである場合に限られるものではない。厳密には違いがあるがその違いが人体に感知できない程度である場合はここでいう「同一」に含まる。その程度の違いであれば、本実施形態の効果を実質的に奏することができるからである。
【0046】
以上の説明は一例を示すものであり、これらの説明によって特許請求の範囲に記載された構成は何ら限定されるものではない。上記の説明と異なる形態であっても、特許請求の範囲に記載された構成を備える形態であれば、本発明の効果を奏するものであり、本発明に含まれる。
図1
図2
図3