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特開2024-160724データ取得システム及びデータ取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160724
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】データ取得システム及びデータ取得方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/92 20060101AFI20241108BHJP
   H04N 5/77 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H04N5/92 010
H04N5/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075940
(22)【出願日】2023-05-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】515067262
【氏名又は名称】学校法人名古屋電気学園
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】山本 義幸
(57)【要約】
【課題】時系列データを構成する複数のデータに関連付けられる取得時刻について、その精度をより高めることができるデータ取得システムなどを提供する。
【解決手段】データ取得システム1は、動画データとGNSS信号に基づく位置情報及び時刻情報とを取得するとともに、スライダ5により変化する前記位置情報に係る情報及び前記時刻情報が関連付けられてなる時刻基準データを取得する。また、データ取得システム1は、時刻基準データにおける前記位置情報に係る情報に対し相関性を有する情報と、動画データを構成する画像データを特定するための情報とが関連付けられてなる特定用データを作成する。そして、時刻基準データ及び特定用データを利用して、複数の画像データの取得時刻に対応する、前記時刻情報に基づく推定時刻を特定されるとともに、これら複数の画像データのそれぞれに対し前記推定時刻が関連付けられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、当該データの取得時刻に係る時刻情報が関連付けられてなる時刻情報付き時系列データを取得するためのデータ取得システムであって、
前記時系列データを取得する時系列データ取得手段と、
衛星からのGNSS信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信したGNSS信号に基づく、前記受信手段の位置情報と、当該位置情報の示す位置に前記受信手段が存在しているときの時刻情報とを取得する位置時刻情報取得手段と、
前記位置時刻情報取得手段により取得される前記位置情報に変化を生じさせる位置変化発生手段と、
前記位置変化発生手段により変化する前記位置情報に係る情報と、前記位置時刻情報取得手段により取得される前記時刻情報とが関連付けられてなる時刻基準データを取得する時刻基準データ取得手段と、
前記時系列データ取得手段により取得される前記時系列データに対し、前記時刻基準データにおける前記位置情報に係る情報に対し相関性を有する情報と、前記時系列データを構成する複数のデータを特定するための情報とが関連付けられてなる特定用データを作成可能な情報を含ませる特定用データ付与手段と、
前記特定用データを作成可能な情報を含む前記時系列データから、前記特定用データを作成する特定用データ作成手段と、
前記時刻基準データ取得手段により取得された前記時刻基準データと、前記特定用データ作成手段により作成された前記特定用データとを利用して、前記時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する、前記位置時刻情報取得手段により取得された前記時刻情報に基づく推定時刻を特定する対応時刻特定手段と、
前記時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、前記対応時刻特定手段により特定された前記推定時刻が関連付けられてなる前記時刻情報付き時系列データを取得する時刻情報付き時系列データ取得手段とを備えることを特徴とするデータ取得システム。
【請求項2】
前記位置変化発生手段、及び、前記特定用データ付与手段は、前記時系列データ取得手段及び前記受信手段をそれぞれ同一の態様にて同時に移動させることが可能な移動手段によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデータ取得システム。
【請求項3】
前記時系列データ取得手段は、前記時系列データとして、複数の画像データからなる動画データを取得可能な撮像手段によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデータ取得システム。
【請求項4】
前記特定用データ作成手段は、前記画像データ中における特徴点を抽出するとともに、前記特定用データとして、抽出した特徴点の変位を示すデータを作成するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のデータ取得システム。
【請求項5】
前記時系列データ取得手段は、前記時系列データとして、データの取得対象の位置に係る複数のデータからなる変位関連データを取得可能な変位関連データ計測手段によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のデータ取得システム。
【請求項6】
前記位置変化発生手段、及び、前記特定用データ付与手段は、前記時刻基準データ及び前記特定用データのそれぞれとして、複数のピークを有する波形データを生じさせることが可能なものであり、
前記対応時刻特定手段は、前記波形データにおけるピークを用いて、前記時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する前記推定時刻を特定することを特徴とする請求項1に記載のデータ取得システム。
【請求項7】
前記対応時刻特定手段は、前記時刻基準データ及び前記特定用データに基づき、前記時系列データを構成する複数のデータを特定するための情報と、前記位置時刻情報取得手段により取得された前記時刻情報との関係を示す回帰式を得るとともに、当該回帰式を用いて、前記時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する前記推定時刻を特定することを特徴とする請求項1に記載のデータ取得システム。
【請求項8】
時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、当該データの取得時刻に係る時刻情報が関連付けられてなる時刻情報付き時系列データを取得するためのデータ取得方法であって、
所定の時系列データ取得手段を用いて、前記時系列データを取得する時系列データ取得工程と、
衛星からのGNSS信号を受信可能な受信手段を用いて当該GNSS信号を受信する受信工程と、
前記受信工程において前記受信手段が受信したGNSS信号に基づく、前記受信手段の位置情報と、当該位置情報の示す位置に前記受信手段が存在しているときの時刻情報とを取得する位置時刻情報取得工程と、
前記位置時刻情報取得工程により取得される前記位置情報に変化を生じさせる位置変化発生工程と、
前記位置変化発生工程により変化する前記位置情報に係る情報と、前記位置時刻情報取得工程により取得された前記時刻情報とが関連付けられてなる時刻基準データを取得する時刻基準データ取得工程と、
前記時系列データ取得工程により取得される前記時系列データに対し、前記時刻基準データにおける前記位置情報に係る情報に対し相関性を有する情報と、前記時系列データを構成する複数のデータを特定するための情報とが関連付けられてなる特定用データを作成可能な情報を含ませる特定用データ付与工程と、
前記特定用データを作成可能な情報を含む前記時系列データから、前記特定用データを作成する特定用データ作成工程と、
前記時刻基準データ取得工程により取得された前記時刻基準データと、前記特定用データ作成工程により作成された前記特定用データとを利用して、前記時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する、前記位置時刻情報取得工程により取得された前記時刻情報に基づく推定時刻を特定する対応時刻特定工程と、
前記時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、前記対応時刻特定工程により特定された前記推定時刻が関連付けられてなる前記時刻情報付き時系列データを取得する時刻情報付き時系列データ取得工程とを含むことを特徴とするデータ取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し時刻情報が関連付けられてなる時刻情報付き時系列データを取得するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラや各種センサなどを用いて、複数の画像データからなる動画データや、複数の数値データからなる数値遷移データなどの時系列データを取得・保持(保存)することが広く行われている。取得・保持された時系列データは、インフラ設備(例えば、橋梁や道路など)の維持管理や環境評価、防災等、様々な場面で活用されている。
【0003】
ところで、時系列データを構成する複数のデータ(上述の画像データや数値データなど)に対し、当該データの取得時刻を関連付けることで、時系列データの価値をより高めることが可能となる。この点、従前から、時系列データを取得する手段(カメラなど)内に時計機能を設け、当該時計機能を利用して、時系列データを構成する複数のデータ(画像データ)に対し、当該データの取得時刻を関連付けることが行われている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-51278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多くの場合、時計機能における時刻は手動で設定されるものであり、また、時計機能の内部において時刻ずれが生じることがある。そのため、実際の取得時刻に対し、データに関連付けられた取得時刻が比較的大きくずれたものとなり得る。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、時系列データを構成する複数のデータに関連付けられる取得時刻について、その精度をより高めることができるデータ取得システムなどを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0008】
手段1.時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、当該データの取得時刻に係る時刻情報が関連付けられてなる時刻情報付き時系列データを取得するためのデータ取得システムであって、
前記時系列データを取得する時系列データ取得手段と、
衛星からのGNSS信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信したGNSS信号に基づく、前記受信手段の位置情報と、当該位置情報の示す位置に前記受信手段が存在しているときの時刻情報とを取得する位置時刻情報取得手段と、
前記位置時刻情報取得手段により取得される前記位置情報に変化を生じさせる位置変化発生手段と、
前記位置変化発生手段により変化する前記位置情報に係る情報と、前記位置時刻情報取得手段により取得される前記時刻情報とが関連付けられてなる時刻基準データを取得する時刻基準データ取得手段と、
前記時系列データ取得手段により取得される前記時系列データに対し、前記時刻基準データにおける前記位置情報に係る情報に対し相関性を有する情報と、前記時系列データを構成する複数のデータを特定するための情報とが関連付けられてなる特定用データを作成可能な情報を含ませる特定用データ付与手段と、
前記特定用データを作成可能な情報を含む前記時系列データから、前記特定用データを作成する特定用データ作成手段と、
前記時刻基準データ取得手段により取得された前記時刻基準データと、前記特定用データ作成手段により作成された前記特定用データとを利用して、前記時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する、前記位置時刻情報取得手段により取得された前記時刻情報に基づく推定時刻を特定する対応時刻特定手段と、
前記時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、前記対応時刻特定手段により特定された前記推定時刻が関連付けられてなる前記時刻情報付き時系列データを取得する時刻情報付き時系列データ取得手段とを備えることを特徴とするデータ取得システム。
【0009】
上記手段1によれば、位置時刻情報取得手段によって、GNSS信号に基づく位置情報と時刻情報とが取得されるところ、位置変化発生手段によって、当該位置時刻情報取得手段により取得される位置情報に変化を生じさせる。そして、位置変化発生手段により変化する位置情報に係る情報と時刻情報とが関連付けられることで、時刻基準データが取得される。時刻基準データは、GNSS信号に基づいた精度の高い時刻情報を有するとともに、その精度の高い時刻情報と変化する位置情報とが関連付けられたものとなる。
【0010】
一方、時系列データ取得手段によって時系列データが取得されるところ、特定用データ付与手段によって、時系列データ取得手段により取得される時系列データは、時刻基準データにおける位置情報に対し相関性を有する情報と、時系列データを構成する複数のデータを特定するための情報(例えばフレーム番号など)とが関連付けられてなる特定用データを作成可能な情報を含むものとなる。そして、特定用データを作成可能な情報を含む時系列データから、特定用データが作成される。特定用データは、時刻基準データの位置情報に対し相関性を有するもの(例えば、時刻基準データの位置情報と同一の態様で変化するものや、時刻基準データの位置情報のうちの複数の特徴部分のそれぞれに対応するような複数の特徴対応部分を有するもの等)となる。従って、時刻基準データ及び特定用データのそれぞれは、いわば共通の目印を有するものとなる。
【0011】
そして、対応時刻特定手段によって、時刻基準データ及び特定用データを利用して、時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する、位置時刻情報取得手段により取得された時刻情報に基づく推定時刻が特定される。すなわち、時刻基準データ及び特定用データに設けられた共通の目印を利用することで、これら複数のデータの取得時刻に対応する時刻として、位置時刻情報取得手段により得られた精度の高い時刻情報に基づく、当該時刻情報と同様に精度の高い推定時刻が特定される。そして最終的に、これら複数のデータのそれぞれに対し、特定された推定時刻が関連付けられてなる時刻情報付き時系列データが得られる。
【0012】
このように上記手段1によれば、時刻基準データ及び特定用データに設けられた共通の目印を利用することで、時系列データを構成する複数のデータに対し、精度の高い推定時刻が関連付けられた時刻情報付き時系列データを得ることができる。従って、時系列データを構成する複数のデータに関連付けられる取得時刻について、その精度をより高めることが可能となる。
【0013】
また、上記手段1によれば、精度の高い推定時刻が関連付けられた時刻情報付き時系列データを取得するにあたって、時系列データ取得手段に対し、精度の高い時刻情報を取得するためのモジュールを組み込む等の改造を施す必要がない。そのため、例えば、時系列データ取得手段として、特別な装置ではなく、一般的な市販の装置(市販のカメラなど)を利用することができる。従って、汎用性の向上や低コスト化などを図ることができる。
【0014】
手段2.前記位置変化発生手段、及び、前記特定用データ付与手段は、前記時系列データ取得手段及び前記受信手段をそれぞれ同一の態様にて同時に移動させることが可能な移動手段によって構成されていることを特徴とする手段1に記載のデータ取得システム。
【0015】
上記手段2によれば、位置変化発生手段及び特定用データ付与手段は、時系列データ取得手段及び受信手段をそれぞれ同一の態様にて同時に移動させることが可能な移動手段(例えば往復移動可能なスライダなど)によって構成されている。従って、時刻基準データ及び特定用データとして、それぞれ同一の態様で変化する、相関性のより高いものを得ることができる。
【0016】
また、位置変化発生手段及び特定用データ付与手段を共通の手段(つまり移動手段)によって構成することができるから、コストの低減や使い勝手をより高めることができる。
【0017】
手段3.前記時系列データ取得手段は、前記時系列データとして、複数の画像データからなる動画データを取得可能な撮像手段によって構成されていることを特徴とする手段1に記載のデータ取得システム。
【0018】
上記手段3によれば、時系列データ取得手段は撮像手段(例えばカメラ)によって構成されている。そのため、動画データを構成する各画像データの取得時刻として高精度の時刻を得ることができる。
【0019】
手段4.前記特定用データ作成手段は、前記画像データ中における特徴点を抽出するとともに、前記特定用データとして、抽出した特徴点の変位を示すデータを作成するように構成されていることを特徴とする手段3に記載のデータ取得システム。
【0020】
上記手段4によれば、動画データ(複数の画像データ)から特定用データを比較的容易に作成することができる。従って、特定用データの作成に係る処理負担を十分に低く抑えることができる。
【0021】
手段5.前記時系列データ取得手段は、前記時系列データとして、データの取得対象の位置に係る複数のデータからなる変位関連データを取得可能な変位関連データ計測手段によって構成されていることを特徴とする手段1に記載のデータ取得システム。
【0022】
尚、「変位関連データ」は、変位データであってもよいし、変位と関連する要素を示すデータ(例えば、加速度データや速度データ)であってもよい。
【0023】
上記手段5によれば、時系列データ取得手段は変位関連データ計測手段(例えば、加速度センサや変位センサなど)によって構成されている。従って、変位関連データを構成する複数のデータの取得時刻として高精度の時刻を得ることができる。
【0024】
手段6.前記位置変化発生手段、及び、前記特定用データ付与手段は、前記時刻基準データ及び前記特定用データのそれぞれとして、複数のピークを有する波形データを生じさせることが可能なものであり、
前記対応時刻特定手段は、前記波形データにおけるピークを用いて、前記時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する前記推定時刻を特定することを特徴とする手段1に記載のデータ取得システム。
【0025】
上記手段6によれば、波形データのピークを利用するため、時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する推定時刻をより正確に特定することができる。これにより、時系列データを構成する複数のデータに関連付けられる取得時刻について、その精度を一層高めることができる。
【0026】
手段7.前記対応時刻特定手段は、前記時刻基準データ及び前記特定用データに基づき、前記時系列データを構成する複数のデータを特定するための情報と、前記位置時刻情報取得手段により取得された前記時刻情報との関係を示す回帰式を得るとともに、当該回帰式を用いて、前記時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する前記推定時刻を特定することを特徴とする手段1に記載のデータ取得システム。
【0027】
上記手段7によれば、時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する推定時刻として、より高精度の時刻をより容易に得ることができる。
【0028】
手段8.時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、当該データの取得時刻に係る時刻情報が関連付けられてなる時刻情報付き時系列データを取得するためのデータ取得方法であって、
所定の時系列データ取得手段を用いて、前記時系列データを取得する時系列データ取得工程と、
衛星からのGNSS信号を受信可能な受信手段を用いて当該GNSS信号を受信する受信工程と、
前記受信工程において前記受信手段が受信したGNSS信号に基づく、前記受信手段の位置情報と、当該位置情報の示す位置に前記受信手段が存在しているときの時刻情報とを取得する位置時刻情報取得工程と、
前記位置時刻情報取得工程により取得される前記位置情報に変化を生じさせる位置変化発生工程と、
前記位置変化発生工程により変化する前記位置情報に係る情報と、前記位置時刻情報取得工程により取得された前記時刻情報とが関連付けられてなる時刻基準データを取得する時刻基準データ取得工程と、
前記時系列データ取得工程により取得される前記時系列データに対し、前記時刻基準データにおける前記位置情報に係る情報に対し相関性を有する情報と、前記時系列データを構成する複数のデータを特定するための情報とが関連付けられてなる特定用データを作成可能な情報を含ませる特定用データ付与工程と、
前記特定用データを作成可能な情報を含む前記時系列データから、前記特定用データを作成する特定用データ作成工程と、
前記時刻基準データ取得工程により取得された前記時刻基準データと、前記特定用データ作成工程により作成された前記特定用データとを利用して、前記時系列データを構成する複数のデータの取得時刻に対応する、前記位置時刻情報取得工程により取得された前記時刻情報に基づく推定時刻を特定する対応時刻特定工程と、
前記時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、前記対応時刻特定工程により特定された前記推定時刻が関連付けられてなる前記時刻情報付き時系列データを取得する時刻情報付き時系列データ取得工程とを含むことを特徴とするデータ取得方法。
【0029】
上記手段8によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0030】
尚、上記各手段に係る技術事項を適宜組み合わせてもよい。例えば、上記手段2に係る技術事項に対し、上記手段3に係る技術事項を組み合わせてもよい。また、上記手段8に係る技術事項に対し、上記手段2~7のうちの少なくとも1つに係る技術事項を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】データ取得システムの概略構成を示すためのブロック図である。
図2】カメラにより得られた動画データの一例を示す表図である。
図3】スライダや、当該スライダに設置されるカメラ等を示す斜視模式図である。
図4】スライダによって往復移動するカメラ等を示す正面模式図である。
図5】位置時刻情報記憶部に記憶される情報の一例を示す表図である。
図6】時刻基準データの一例を示す表図である。
図7】時刻基準データの一例を示すグラフである。
図8】画像データにおける特徴点などを示す模式図である。
図9】特定用データの候補の一例を示す表図である。
図10】特定用データの一例を示すグラフである。
図11】時刻情報付き時系列データの一例を示す表図である。
図12】データ取得システムを使用して、時刻情報付き時系列データを取得する方法の一例について説明するための説明図である。
図13】時刻情報付き時系列データを取得するために行う工程を簡略化して説明するための説明図である。
図14】地図情報レベルと水平位置の標準偏差との関係を示す表図である。
図15】別の実施形態において、特定用データ付与手段としての衝撃発生部などを示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。データ取得システム1は、時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、当該データの取得時刻に係る時刻情報が関連付けられてなる時刻情報付き時系列データを取得するためのものである。
【0033】
図1に示すように、データ取得システム1は、カメラ2、GNSSアンテナ3、GNSS受信機4、スライダ5及び制御装置6を備えている。本実施形態においては、カメラ2が「時系列データ取得手段」及び「撮像手段」を構成し、同様に、GNSSアンテナ3が「受信手段」を、GNSS受信機4が「位置時刻情報取得手段」を、スライダ5が「位置変化発生手段」、「特定用データ付与手段」及び「移動手段」を、それぞれ構成する。
【0034】
カメラ2は、集光手段としてのレンズ、当該レンズを通った光を電気信号に変換する撮像素子及び当該撮像素子から入力された画像データを記憶する画像メモリ(それぞれ不図示)などを備えてなる一般的な市販のビデオカメラである。カメラ2により、時系列データとして、複数の画像データを有する動画データが取得される。取得された動画データ(時系列データ)は、カメラ2内の前記画像メモリに保存された上で、有線又は無線によって、カメラ2から制御装置6へと送ることが可能である。
【0035】
また、取得された動画データ(時系列データ)は、複数の画像データ〔Frame(Image)〕と、これら画像データを特定するための情報であるフレーム番号(Frame No.)とが関連付けられたものである(図2参照)。さらに、本実施形態において、動画データ(時系列データ)には、カメラ2内の時計機能(カメラ2の内部クロック)に基づく、各画像データの取得時刻を大まかに示す内部時刻(internal time)が付与されている。但し、時刻が手動設定されるなどの理由からカメラ2内の時計機能が示す時刻はさほど正確ではない可能性があり、そのため、動画データに付与される内部時刻もさほど正確ではないことが多々ある。尚、動画データは、内部時刻が付与されていないものであってもよい。
【0036】
加えて、本実施形態におけるカメラ2は、動作用のバッテリ(不図示)を備えたものであり、単独(給電不要)で動作可能なものである。従って、カメラ2の持ち運びや設置は極めて容易である。カメラ2としては、例えば、GoPro(登録商標)社製の「GoPro 9」(商品名)などを利用することができる。本実施形態では、カメラ2により動画データを取得する工程が「時系列データ取得工程」に相当する。
【0037】
GNSSアンテナ3は、GPS衛星等の測位用衛星から送信されるGNSS信号を受信するためのアンテナである。尚、GNSSアンテナ3としては、例えば、u-blox社製の「ANN-MB-00」(商品名)などを利用することができる。本実施形態では、GNSSアンテナ3によってGNSS信号を受信する工程が「受信工程」に相当する。
【0038】
GNSS受信機4は、GNSSアンテナ3と接続されており、当該GNSSアンテナ3が受信したGNSS信号に基づき、GNSSアンテナ3の位置情報と、当該位置情報の示す位置にGNSSアンテナ3が位置しているときの時刻情報とを取得する。取得された位置情報及び時刻情報は、制御装置6へと送られる。位置情報としては、緯度及び経度に係る情報が取得され、時刻情報としては、協定世界時(UTC)が取得される。
【0039】
尚、本実施形態におけるGNSSアンテナ3及びGNSS受信機4は、2周波のGNSS受信システムを構成するものであり、1周波のGNSS受信システムと比べて、良好な測位精度を有するものである。
【0040】
また、本実施形態におけるGNSS受信機4は、ネットワーク型RTK(Real-Time-Kinematic)測位を利用して位置情報を取得する。本実施形態において、取得される位置情報に関する水平方向の位置精度は数cmである。GNSS受信機4としては、例えば、CORE社製の「Cohac∞QZNEO」(商品名)などを利用することができる。本実施形態では、GNSS受信機4により位置情報及び時刻情報を取得する工程が「位置時刻情報取得工程」に相当する。
【0041】
スライダ5は、GNSS受信機4により取得される位置情報に変化を生じさせるとともに、カメラ2により取得される動画データ(時系列データ)に対し、後述する特定用データを作成可能な情報を含ませるための装置である。スライダ5は、回転可能な一対のローラ、これらローラのうちの少なくとも一方を回転させるための駆動源、当該駆動源の動作を制御することで前記各ローラの回転を制御する制御手段(それぞれ不図示)を備えている。また、スライダ5は、図3に示すように、前記一対のローラに掛装された環状のベルト51を備えており、前記制御手段により前記ローラの回転方向が制御されることで、ベルト51の上面が左右に往復移動可能となっている。
【0042】
さらに、ベルト51の上面には、カメラ2などを設置するための台座部52が固定されている。カメラ2は、台座部52に対し着脱容易に構成されている。スライダ5としては、例えば、Zeapon社製の「Micro2Plus」(商品名)などを利用することができる。
【0043】
本実施形態において、スライダ5は、台座部52にカメラ2が設置されるとともに、カメラ2上にGNSSアンテナ3が取付けられた状態で、ベルト51の上面が左右に一定周期で往復移動するようにして動作する。このようにスライダ5が動作することによって、GNSSアンテナ3及びカメラ2をそれぞれ同一の態様にて同時に往復移動させることができる(図4参照)。その結果、GNSS受信機4により取得される位置情報に所定態様の変化を生じさせることができ、また、カメラ2により撮像された動画データ(時系列データ)において、画像データ中の撮像対象物の位置に、前記所定態様に相関する変化を生じさせることができる。
【0044】
尚、本実施形態において、スライダ5は、ベルト51の上面が例えば振幅54cm、周期40秒程度で往復移動するように動作制御される。本実施形態では、スライダ5によってGNSSアンテナ3及びカメラ2を往復移動させる工程が、「位置変化発生工程」及び「特定用データ付与工程」に相当する。
【0045】
制御装置6は、GNSS受信機4により得られた時刻情報及び位置情報、並びに、カメラ2により得られた時系列データ(動画データ)を用いて、時刻情報付き時系列データを得るためのものである。制御装置6は、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種プログラムや固定値データ等を記憶するROM(Read Only Memory)、各種演算処理の実行に際して各種データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)、情報を記憶するための記憶装置及びこれらの周辺回路等を含んだコンピュータなどからなる。
【0046】
制御装置6は、位置時刻情報記憶部61、時刻基準データ取得部62、動画データ記憶部63、特定用データ作成部64、対応時刻特定部65及び最終データ取得部66を備えている。本実施形態では、時刻基準データ取得部62が「時刻基準データ取得手段」を構成し、同様に、特定用データ作成部64が「特定用データ作成手段」を、対応時刻特定部65が「対応時刻特定手段」を、最終データ取得部66が「時刻情報付き時系列データ作成手段」を、それぞれ構成する。尚、時刻基準データ取得部62、特定用データ作成部64及び最終データ取得部66による各種機能は、上記CPU、ROM、RAMなどの各種ハードウェアと前記記憶装置に予め記憶されたソフトウェアとが協働することで実現される。
【0047】
位置時刻情報記憶部61は、GNSS受信機4から送られた位置情報及び時刻情報を関連付けて記憶する。記憶される情報には、スライダ5によってGNSSアンテナ3を往復移動させているときに得られた位置情報及び時刻情報が含まれる。本実施形態では、少なくとも、位置情報としての経度(longitude)及び緯度(latitude)と、時刻情報(time)と、位置情報及び時刻情報を特定するためのインデックス番号(time_idx)とが関連付けられて記憶される(図5参照)。
【0048】
時刻基準データ取得部62は、GNSS受信機4により得られたGNSSアンテナ3の位置情報のうちの特にスライダ5の往復移動により変化する位置情報(「往復移動時位置情報」という)に係る情報と、GNSS受信機4により取得された位置情報とが関連付けられてなる基準時刻データを取得する。
【0049】
基準時刻データを取得するにあたって、時刻基準データ取得部62は、まず、上述の往復移動時位置情報に係る情報を得る。より詳しくは、時刻基準データ取得部62は、位置時刻情報記憶部61に記憶された情報の中から、スライダ5によってGNSSアンテナ3を往復移動させているときに得られた位置情報を抽出する。位置情報の抽出は、例えば、予め取得(入力)された、スライダ5(ベルト51)の移動開始や移動終了についての大まかな時刻などを用いて行われる。
【0050】
次いで、時刻基準データ取得部62は、抽出した位置情報(経度及び緯度)を平面直角座標に変換する。その上で、時刻基準データ取得部62は、前記往復移動時位置情報に係る情報として、予め設定した所定の基準座標に対する、変換した位置情報(経度及び緯度)についてのL2ノルム(ユークリッドノルム)を算出する。
【0051】
そして、時刻基準データ取得部62は、算出したL2ノルム〔dist(L2 Norm)〕と、算出したL2ノルムの元となった位置情報に対応する時刻情報(time)とを関連付けることで、基準時刻データを取得する(図6参照)。時刻基準データは、時刻情報(time)に対し、L2ノルムが周期的に変化する波形データとなる(図7参照)。尚、本実施形態における基準時刻データは、上記インデックス番号(time_idx)が付与されているが、インデックス番号が付与されていないものであってもよい。
【0052】
動画データ記憶部63は、カメラ2により得られた動画データ(時系列データ)を記憶する。本実施形態では、カメラ2内に記憶された、取得済みの動画データがコピーされること等によって、動画データ記憶部63に動画データが記憶される。記憶される動画データには、スライダ5によってカメラ2を往復移動させているときに得られたデータが含まれている。尚、カメラ2による動画データの取得と並行して、当該動画データが動画データ記憶部63に記憶されるように構成してもよい。
【0053】
特定用データ作成部64は、動画データ記憶部63に記憶された動画データ(時系列データ)から、特定用データを作成する。特定用データとは、時刻基準データにおける位置情報に係る情報(つまり、上述のL2ノルム)に対し相関性を有する情報と、動画データ(時系列データ)を構成する複数の画像データを特定するための情報(本実施形態では、フレーム番号)とが関連付けられてなるデータである。
【0054】
特定用データを作成するにあたり、特定用データ作成部64は、まず、動画データ記憶部63に記憶された情報の中から、スライダ5によってカメラ2を往復移動させているときに得られた動画データ(時系列データ)を抽出する。動画データの抽出は、例えば、予め取得(入力)された、スライダ5(ベルト51)の移動開始や移動終了についての大まかな時刻などを用いて行われる。
【0055】
次いで、特定用データ作成部64は、例えば、Shi-Tomasiのコーナー検出手法などにより、各画像データにおける特徴点SP(図8参照)を抽出する。特徴点SPは、複数抽出され得る。
【0056】
さらに、特定用データ作成部64は、特定用データとして、抽出した特徴点SPの変位を示すデータを作成する。すなわち、特定用データ作成部64は、まず、画像データ上の所定の基準座標に対する特徴点SPが示す座標のL2ノルムを、特徴点SPごとに算出する。次いで、特定用データ作成部64は、各特徴点SPについてのL2ノルム(dist1,d-ist2,dist3…)と、算出したL2ノルムの元となった画像データに対応するフレーム番号(F-rame No.)とを関連付けることで、特定用データの候補を作成する(図9参照)。図9では、特定用データの候補として、dist1及びFrame No.が関連付けられたもの、dist2及びF-rame No.が関連付けられたもの、及び、dist3及びFrame No.が関連付けられたものを示している。特徴点SPが複数抽出された場合には、特定用データの候補が複数作成される。スライダ5の往復移動に伴い、通常、作成された特定用データの候補は、フレーム番号に対し、L2ノルムが周期的に変化する波形データとなる。
【0057】
その上で、特定用データ作成部64は、作成した特定用データの候補の中から「所定の条件」を満たす1のデータを選択することで、最終的に1の特定用データを作成する。但し、作成された特定用データの候補が1つのみであれば、当該候補が特定用データとなる。カメラ2はGNSSアンテナ3の移動態様と同態様で移動するため、特定用データは、時刻基準データと同態様で変化する波形データとなる(図10参照)。つまり、時刻基準データ及び特定用データは、それぞれ共通の目印(ピーク)を有するものとなる。尚、前記「所定の条件」としては、波形データの振幅がほぼ一定であるか否かなどの条件を採用することができる。本実施形態では、特定用データ作成部64によって特定用データを作成する工程が「特定用データ作成工程」に相当する。尚、複数の特定用データの候補の中から複数のデータを選択することで、特定用データを複数作成してもよい。
【0058】
対応時刻特定部65は、時刻基準データ及び特定用データを利用して、動画データ(時系列データ)を構成する複数の画像データの取得時刻に対応する、GNSS受信機4により取得された時刻情報に基づく推定時刻を特定する。より詳しくは、対応時刻特定部65は、まず、時刻基準データ及び特定用データにおけるそれぞれのピークを検出する。ピーク検出は、例えば、プログラミング言語pythonのscipyモジュールにおけるsignal.ar-grelmax関数などを用いて行うことができる。尚、ピーク検出にあたっては、例えばローパスフィルタなどを利用することで、時刻基準データや特定用データにおける高周波成分などのノイズ部分を除去してもよい。
【0059】
その上で、対応時刻特定部65は、時刻基準データ及び特定用データの各ピークに基づき、動画データ(時系列データ)を構成する複数の画像データを特定するための情報(フレーム番号)と、GNSS受信機4により取得された時刻情報との関係を示す回帰式を得る。
【0060】
回帰式を得るにあたり、対応時刻特定部65は、まず、検出した時刻基準データ及び特定用データの各ピークを目印として、特定用データの各ピークにおけるフレーム番号と、当該フレーム番号に対応する、時刻基準データの各ピークにおける時刻情報とが組となったペアデータ(Frame No.,time)を複数作成する。その上で、対応時刻特定部65は、作成した複数のペアデータに対する回帰分析を行うことで、フレーム番号と時刻情報との関係を示す回帰式を取得する。本実施形態において、対応時刻特定部65は、単回帰式〔y=f(x)〕を取得する。yは時刻情報を示し、xはフレーム番号を示す。尚、特定用データを複数作成した場合には、複数の単回帰式が取得され得る。
【0061】
次いで、対応時刻特定部65は、取得した単回帰式を用いて、複数の画像データのそれぞれについて、画像データの取得時刻に対応する推定時刻を特定する。すなわち、対応時刻特定部65は、フレーム番号(x)を単回帰式〔y=f(x)〕に代入して取得した時刻情報(y)を前記推定時刻として特定することを、動画データを構成する全ての画像データを対象として行う。これにより、全ての画像データごとに、画像データの取得時刻に対応する前記推定時刻が特定される。
【0062】
尚、複数の単回帰式を取得した場合には、各単回帰式から得られた複数の時刻情報の平均値や中央値などを前記推定時刻として用いてもよい。本実施形態では、対応時刻特定部65によって前記推定時刻を特定する工程が「対応時刻特定工程」に相当する。
【0063】
最終データ取得部66は、動画データ(時系列データ)を構成する複数の画像データ〔Frame(Image)〕のそれぞれに対し、対応時刻特定部65により特定された前記推定時刻(Estimated time)が関連付けられてなる時刻情報付き時系列データ(図11参照)を取得する。
【0064】
時刻情報付き時系列データを取得するにあたり、最終データ取得部66は、動画データ記憶部63に記憶された動画データにおける内部時刻(カメラ2の時計機能により得られた時刻)を対応時刻特定部65により特定された前記推定時刻に修正する(置き換える)補正処理を、全ての画像データを対象として行う。これにより、時刻情報付き時系列データが取得される。尚、最終データ取得部66は、内部時刻を修正することなく、動画データを構成する各画像データに対し、対応時刻特定部65により特定された前記推定時刻を関連付けることで時刻情報付き時系列データを取得してもよい。本実施形態では、最終データ取得部66によって時刻情報付き時系列データを取得する工程が「時刻情報付き時系列データ取得工程」に相当する。
【0065】
次いで、上述したデータ取得システム1の使用例について説明する。尚、データ取得システム1の使用に先立ち、GNSSアンテナ3及びGNSS受信機4(GNSS受信システム)の起動後、GNSSアンテナ3を屋外環境に一定時間置くことで、GNSS受信機4によってFix解を得るための初期化処理が予め行われる。初期化処理は、停止状態のスライダ5に対しGNSSアンテナ3を設置した状態で行ってもよい。
【0066】
図12に示すように、時刻情報付き時系列データを取得するにあたっては、まず、時系列データ取得工程S1、受信工程S2及び位置時刻情報取得工程S3が並行して行われる。時系列データ取得工程S1は、カメラ2によって動画データを取得する工程であり、受信工程S2は、GNSSアンテナ3を用いてGNSS信号を受信する工程である。また、位置時刻情報取得工程S3は、GNSS受信機4を用いて、GNSSアンテナ3により受信されたGNSS信号に基づく、GNSSアンテナ3の位置情報と、当該位置情報の示す位置にGNSSアンテナ3が存在しているときの時刻情報とを取得する工程である。
【0067】
そして、これら工程S1,S2,S3が行われつつ、第一位置変化発生工程S41が実行される。第一位置変化発生工程S41は、スライダ5に対しカメラ2及びGNSSアンテナ3が設置された状態で、該スライダ5(ベルト51)を往復移動させる工程である。
【0068】
第一位置変化発生工程S41を所定時間t1(例えば5分間)継続した後、スライダ5を停止させた上で、カメラ2をスライダ5から取外すとともに、カメラ2により狙いの対象を撮像する。例えば、スライダ5から取り外したカメラ2を車両に設置し、所定経路に沿って当該車両を走行させながら、カメラ2により、狙いの対象としての道路やその周囲環境を所定時間(例えば40分間)撮像する。
【0069】
道路などの撮像後、時系列データ取得工程S1や受信工程S2などを行いつつ(つまり、カメラ2やGNSS受信システムを停止させることなく)、第二位置変化発生工程S42が実行される。第二位置変化発生工程S42は、第一位置変化発生工程S41と同様に、スライダ5に対しカメラ2及びGNSSアンテナ3が設置された状態で、当該スライダ5(前記ベルト51)を往復移動させる工程である。これら位置変化発生工程S41,S42により、GNSS受信機4により取得される位置情報に一定の変化を生じさせることができ、また、カメラ2により取得される動画データ(時系列データ)に、上述の特定用データ(当該位置情報に対し相関性を有するデータ)を作成可能な情報を含ませることができる。本実施形態において、両位置変化発生工程S41,S42は、「位置変化発生工程」及び「特定用データ付与工程」に相当する。
【0070】
第二位置変化発生工程S42を所定時間t2(例えば5分間)継続した後、スライダ5を停止させた上で、カメラ2をスライダ5から取外すとともに、カメラ2により得られた動画データ(時系列データ)を、動画データ記憶部63に記憶させる。尚、位置時刻情報取得工程S3を行うことで、位置時刻情報記憶部61には、時刻情報や位置情報が既に記憶された状態となっている。
【0071】
動画データ記憶部63に動画データが記憶されると、制御装置6によって、時刻基準データ取得工程S51、特定用データ作成工程S52、対応時刻特定工程S53及び最終データ取得工程S54が行われる。本実施形態では、最終データ取得工程S54が「時刻情報付き時系列データ取得工程」に相当する。
【0072】
時刻基準データ取得工程S51では、時刻基準データ取得部62によって、両位置変化発生工程S41,S42の実行中に得られた位置情報及び時刻情報に基づき、これら情報が関連付けられてなる時刻基準データが取得される。
【0073】
また、特定用データ作成工程S52では、特定用データ作成部64によって、カメラ2により得られた動画データ(時系列データ)のうちの両位置変化発生工程S41,S42の実行中に得られたものに基づき、特定用データが作成される
さらに、対応時刻特定工程S53では、対応時刻特定部65によって、上記工程S51,S52にて取得又は作成された時刻基準データ及び特定用データを利用して単回帰式〔y=f(x)〕が求められる。その上で、当該単回帰式を用いて、動画データを構成する複数の画像データの取得時期に対応する、前記推定時刻が特定される。
【0074】
そして、最終データ取得工程S54において、最終データ取得部66により、動画データを構成する画像データのそれぞれに対し、対応時刻特定部65により特定された前記推定時刻が関連付けられることで、時刻情報付き時系列データが取得される。
【0075】
このように、データ取得システム1は、図13に示すように、次述するステップA~Eの工程を実行することによって、時刻情報付き時系列データを取得する。
【0076】
ステップA:カメラ2及びGNSSアンテナ3を往復移動させることで、時刻基準データ及び特定用データに、それぞれ共通の目印(ピーク)が設けられるようにする工程
ステップB:カメラ2により取得された動画データ(時系列データ)に基づき、特定用データを取得する工程
ステップC:GNSS受信機4により取得された位置情報及び時刻情報に基づき、時刻基準データを作成する工程
ステップD:時刻基準データ及び特定用データに基づき、フレーム番号と、GNSS受信機4により取得された時刻情報との関係を示す単回帰式を得る工程
ステップE:動画データ(時系列データ)を構成する画像データのそれぞれに対し、単回帰式によって特定された推定時刻を関連付けることで、時刻情報付き時系列データを取得する工程
尚、上記の使用例により得られた前記推定時刻を正確な時刻と比較したところ、両時刻の二乗平均誤差は約49msとなった。従って、非常に精度の高い推定時刻を得ることができるといえる。尚、正確な時刻は、例えば、時刻情報提供サービスなどで提供される協定世界時(UTC)の時刻をカメラ2で撮像して得た動画データに基づく、画像データのフレーム番号と画像データに映った当該時刻との関係を示す単回帰式により得ることができる。
【0077】
また、上述の時刻誤差に基づけば、位置情報の誤差は、車両を40km/hで走行させたときには約0.54mとなり、車両を60km/hで走行させたときには約0.81mとなる。国土地理院が示す、数値地形図データの地図表現精度を示す地図情報レベル(the map information level)と水平位置の標準偏差(the standard deviation of horizontal position)との関係(図14参照)によれば、この位置情報の誤差は、地図情報レベル1000,2500における水平位置の標準偏差の範囲内に収まる。従って、撮影位置の推定精度についても十分に高いものになるといえる。
【0078】
以上詳述したように、本実施形態によれば、時刻基準データ及び特定用データに設けられた共通の目印(ピーク)を利用することで、複数の画像データの取得時刻に対応する時刻として、GNSS受信機4により得られた精度の高い時刻情報に基づく、当該時刻情報と同様に精度の高い前記推定時刻が特定される。従って、動画データ(時系列データ)を構成する複数の画像データに対し、精度の高い推定時刻が関連付けられた時刻情報付き時系列データを得ることができる。その結果、動画データ(時系列データ)を構成する複数の画像データに関連付けられる取得時刻について、その精度をより高めることが可能となる。
【0079】
また、精度の高い推定時刻が関連付けられた時刻情報付き時系列データを取得するにあたって、カメラ2に対し、精度の高い時刻情報を取得するためのモジュールを組み込む等の改造を施す必要がない。そのため、本実施形態のように、特別なカメラではなく、一般的な市販のカメラ2を利用することができる。従って、汎用性の向上や低コスト化などを図ることができる。
【0080】
加えて、データ取得システム1は、携帯電話の電波が届かない地帯(不感地帯)であっても利用することができる。従って、データ取得システム1は、不感地帯における災害の状況確認や災害からの復旧などを行うときに特に有効なものである。
【0081】
さらに、スライダ5によりカメラ2及びGNSSアンテナ3をそれぞれ同一の態様にて同時に移動させるため、時刻基準データ及び特定用データとして、それぞれ同一の態様で変化する、相関性のより高いものを得ることができる。
【0082】
加えて、「位置変化発生手段」及び「特定用データ付与手段」は共通の手段(つまりスライダ5)によって構成されているから、コストの低減や使い勝手をより高めることができる。
【0083】
併せて、特定用データ作成部64は、画像データ中における特徴点SPを抽出するとともに、特定用データとして、抽出した特徴点SPの変位を示すデータを作成する。そのため、動画データ(複数の画像データ)から特定用データを比較的容易に作成することができる。これにより、特定用データの作成に係る処理負担を十分に低く抑えることができる。
【0084】
また、前記推定時刻の特定にあたって波形データのピークを利用するため、前記推定時刻をより正確に特定することができる。これにより、動画データ(時系列データ)を構成する複数のデータに関連付けられる取得時刻について、その精度を一層高めることができる。
【0085】
さらに、前記単回帰式を用いて、動画データ(時系列データ)を構成する複数のデータの取得時刻に対応する前記推定時刻が特定される。そのため、動画データ(時系列データ)を構成する複数のデータの取得時刻に対応する推定時刻として、より高精度の時刻をより容易に得ることができる。
【0086】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0087】
(a)上記実施形態では、「時系列データ取得手段」としてカメラ2を挙げているが、「時系列データ取得手段」は時系列データを取得可能なものであればよく、カメラ2に限定される訳ではない。
【0088】
従って、例えば、「時系列データ取得手段」を、データの取得対象の位置に係る複数のデータからなる変位関連データを取得可能な加速度センサや変位計測センサによって構成してもよい。このような場合においても、変位関連データを構成する複数のデータの取得時刻として高精度の時刻を得ることができる。尚、加速度センサや変位計測センサは「変位関連データ計測手段」に相当する。また、「変位関連データ」は、変位データであってもよいし、変位と関連する要素を示すデータ(例えば、加速度データや速度データ)であってもよい。
【0089】
さらに、例えば、「時系列データ取得手段」として、電流センサ、磁気センサ、測距センサ、近接センサ、照度センサ、圧力センサ、角速度センサ、衝撃センサなどを用いてもよい。
【0090】
(b)上記実施形態では、スライダ5によって「位置変化発生手段」及び「特定用データ付与手段」が構成されているが、スライダ5以外の、GNSSアンテナ3やカメラ2を移動させるための装置によって「位置変化発生手段」や「特定用データ付与手段」を構成してもよい。例えばGNSSアンテナ3などを円弧状の経路に沿って左右に振る装置によって「位置変化発生手段」を構成してもよい。尚、この装置は「移動手段」にも相当する。
【0091】
(c)上記実施形態では、カメラ2をスライダ5によって移動させることで、動画データ(時系列データ)に対し特定用データを作成可能な情報を含めるように構成されているが、固定したカメラ2によってスライダ5によって移動するもの(例えばGNSSアンテナ3など)を撮像することで、動画データに対し特定用データを作成可能な情報を含めるように構成してもよい。
【0092】
(d)上記実施形態では、「特定用データ付与手段」としてのスライダ5によって、カメラ2により得られる動画データ(時系列データ)に特定用データを作成可能な情報を含めるように構成されている。しかしながら、「特定用データ付与手段」は、「時系列データ取得手段」により取得されるデータに変化を与え、時系列データに対し、時刻基準データにおける位置情報に係る情報に対し相関性を有する情報を含ませることが可能なものであればよく、スライダ5に限定されるものではない。
【0093】
従って、例えば、図15に示すように、「時系列データ取得手段」として加速度センサ21を用いる場合、スライダ5に設置されたGNSSアンテナ3が往復移動範囲における両端に到達するタイミングで加速度センサ21に対し衝撃を加えるための衝撃発生部71によって「特定用データ付与手段」を構成してもよい。この構成では、時系列データを構成する複数のデータ(加速度データなど)は、時刻基準データのピークに当たる位置にて急激に変化するものとなる。そのため、時系列データは、時刻基準データにおける位置情報に係る情報(つまりピーク位置)に対し相関性を有する情報を含むものとなり、ひいてはこの情報を利用することで、前記複数のデータ(加速度データなど)の取得時期として、GNSS信号に基づく精度の高い前記推定時刻を得ることができる。尚、加速度センサを用いる場合、“時系列データを構成する複数のデータを特定するための情報”とは、上記実施形態におけるフレーム番号と同様に、各データを特定するために付された番号などをいう。
【0094】
また、「時系列データ取得手段」として加速度センサを用いる場合には、当該加速度センサを速度(加速度)を変化させつつ移動させる装置によって「特定用データ付与手段」を構成してもよい。この場合において、加速度センサを往復移動させるときには、往動時と復動時とで異なる速度(加速度)変化がなされるようにしてもよいし、複数回の往復動作時のうちの所定タイミングの往復動作時のみに速度(加速度)変化がなされるようにしてもよい。
【0095】
さらに、「特定用データ付与手段」として、「時系列データ取得手段」により取得されるデータの種別に合わせて、変位、電流、磁気、電磁波、音波、光などを生じさせるものを適宜採用してもよい。
【0096】
(e)上記実施形態においては、データ取得システム1の使用例として、カメラ2を車両に設置して、道路やその周囲環境を撮像する態様を挙げているが、データ取得システム1の使用態様はこれに限定されるものではない。従って、例えば、カメラ2を一定ポイントに配置した上で、カメラ2によって橋梁や橋梁を通過する車両などを撮像するようにしてもよい。この場合には、動画データに基づき、橋梁にて生じる振動の遷移や、当該振動の大小と通過車両との関連性などを取得することができる。
【0097】
また、カメラ2によって山などの自然環境の状態を撮像するようにしてもよい。この場合、動画データに基づき、地表面の移動などに係る情報を得ることができる。
【0098】
さらに、「時系列データ取得手段」として加速度センサや変位計測センサを用いる場合には、加速度センサ等によって、橋梁などの構造物における変位を計測するようにしてもよい。この場合には、取得された時系列データに基づき、構造物の検査などを行うことができる。
【0099】
加えて、上記の使用例では、動画データを取得した後に、当該動画データに対し推定時刻を関連付けているが、動画データを取得する工程と、取得済みの動画データに対し推定時刻を関連付ける工程とを並行して行うようにしてもよい。
【0100】
(f)上記の使用例では、2回の位置変化発生工程S41,S42を行うこととしているが、位置変化発生工程を1回又は3回以上行うこととしてもよい。
【0101】
(g)上記実施形態において、時刻基準データ及び特定用データは、同態様で変化し、周期性を有する波形データとされているが、周期性を有する必要はなく、また、波形データである必要もない。時刻基準データ及び特定用データは、これらの特徴箇所(つまり共通の目印)を利用して、両データの時間的な対応関係を把握可能なものであれば足りる。
【0102】
(h)上記実施形態において、対応時刻特定部65は、時刻基準データ及び特定用データのピークを利用して前記推定時刻を特定しているが、必ずしもピークを利用する必要はない。従って、対応時刻特定部65は、時刻基準データ及び特定用データの各変化態様に係る相関性を利用した手法(例えば2つの波形データの類似度を用いた手法など)により前記推定時刻を特定することとしてもよい。尚、この場合には、人工知能(AI)を利用して、両データの相関性を把握するようにしてもよい。
【0103】
(i)上記実施形態では、推定時刻を特定するために単回帰式を得ているが、推定時刻はGNSS受信機4により得られた精度の高い時刻情報に基づくものであればよく、必ずしも単回帰式を得る必要はない。従って、場合によっては(例えば、単位時間当たりに得られる時系列データの数が、単位時間当たりにGNSS受信機4により取得される時刻情報の数以下である場合には)、推定時刻として、GNSS受信機4により得られた時刻情報をそのまま用いてもよい。
【0104】
(j)上記実施形態では挙げていないが、時刻精度をより高めるために1PPS(UTCに同期した正確なタイムパルス)を利用してもよい。
【0105】
(k)上記実施形態のカメラ2のように、時系列データ取得手段として、時系列データを取得しつつ移動可能なものを用いる場合には、時刻情報付き時系列データとして、時系列データを構成する複数のデータのそれぞれに対し、当該複数のデータのそれぞれの取得位置に対応する推定位置が関連付けられてなるデータを取得可能に構成してもよい。前記推定位置は、GNSS受信機4により取得された位置情報に基づき推定した位置をいう。前記推定位置は、例えば、GNSS受信機4により得られた位置情報及び時刻情報が組となったペアデータを複数作成し、作成した複数のペアデータに対する回帰分析を行うことで得られた回帰モデルを用いることにより取得可能である。尚、場合によっては、前記推定位置として、GNSS受信機4により得られた位置情報をそのまま用いてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…データ取得システム、2…カメラ(時系列データ取得手段、撮像手段)、3…GNSSアンテナ(受信手段)、4…GNSS受信機(位置時刻情報取得手段)、5…スライダ(位置変化発生手段、特定用データ付与手段、移動手段)、21…加速度センサ(時系列データ取得手段)、62…時刻基準データ取得部(時刻基準データ取得手段)、64…特定用データ作成部(特定用データ作成手段)、65…対応時刻特定部(対応時刻特定手段)、66…最終データ取得部(時刻情報付き時系列データ取得手段)、71…衝撃発生部(特定用データ付与手段)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15