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  • 特開-エンコーダディスクの反射低減構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160727
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】エンコーダディスクの反射低減構造
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
G01D5/347 110C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075949
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】常盤 大樹
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA10
2F103CA01
2F103CA02
2F103EA20
2F103EB01
2F103EB11
2F103EB33
(57)【要約】
【課題】従来のエンコーダのエンコーダ信号の精度を向上させる手段を提供する。
【解決手段】エンコーダディスクの反射低減構造は、透明板1の一面1aに設けられ、複数の第1回転マスク8Aにより形成された複数の第1回転スリット2と、透明板1の他面1bに設けられ、複数の第2回転マスク8Bにより形成された複数の第1回転スリット2に対向する複数の第2回転スリット3と、第1回転スリット2に光4aを照射するための光源4と、光4aを受光する受光部5に設けられた固定スリット9と、を備え、光源4から第1回転スリット2へ照射された光4aは、第1回転スリット2、第2回転スリット3及び固定スリット9を経て受光部5で受光することができる構造である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板(1)の一面(1a)に設けられ、複数の第1回転マスク(8A)により形成された複数の第1回転スリット(2)と、
前記透明板(1)の他面(1b)に設けられ、複数の第2回転マスク(8B)により形成された複数の前記第1回転スリット(2)に対向する複数の第2回転スリット(3)と、
前記第1回転スリット(2)に光(4a)を照射するための光源(4)と、
前記光(4a)を受光する受光部(5)に設けられた固定スリット(9)と、を備え、
前記光源(4)から前記第1回転スリット(2)へ照射された前記光(4a)は、前記第1回転スリット(2)、前記第2回転スリット(3)及び前記固定スリット(9)を経て前記受光部(5)で受光することができるようにした構造からなることを特徴とするエンコーダディスクの反射低減構造。
【請求項2】
前記第1、第2回転マスク(8A,8B)は、酸化クロム又は窒化クロム等の入射光を減衰する特性のある単層又は複合層よりなることを特徴とする請求項1記載のエンコーダディスクの反射低減構造。
【請求項3】
前記第2回転マスク(8B)の前記透明板(1)に非接触である第2低反射層(8Ab)により、乱反射を吸収することを特徴とする請求項2記載のエンコーダディスクの反射低減構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダディスクの反射低減構造に関し、特に、透明板の両面に、第1、第2回転マスクによって回転スリットを形成することにより、光源からの光が、第1回転スリットを経ると共に、第2回転スリット及び固定スリットから受光部に到達し、エンコーダディスクの反射を低減するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のエンコーダディスクとしては、特許文献1として、代表的な第1従来構成である周知の構造として、図示していないが、透明板の片面に、光が透過する「明」と光が透過しない「暗」が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-083612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエンコーダディスクの反射低減構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の図示しない第1従来構成の場合、透明板の片面にのみ回転スリットが形成されているため、反対面には回転スリットは形成されていなかった。
このため、透明板の回転スリットが形成されていない面にて光が反射し(反射光)、意図しない光が受光部へ照射され、受光されることにより、出力信号のS/N比悪化の要因となっていた。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、透明板の両面に回転スリットを形成することにより、光源からの光が、第1回転スリットを経ると共に、第2回転スリット及び固定スリットから受光部に到達する。この経路を通る光以外の反射光や外部光を低減するための構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるエンコーダディスクの反射低減構造は、透明板の一面に設けられ、複数の第1回転マスクにより形成された複数の第1回転スリットと、前記透明板の他面に設けられ、複数の第2回転マスクにより形成された複数の前記第1回転スリットに対向する複数の第2回転スリットと、前記第1回転スリットに光を照射するための光源と、前記光を受光する受光部に設けられた固定スリットと、を備え、前記光源から前記第1回転スリットへ照射された前記光は、前記第1回転スリット、前記第2回転スリット及び前記固定スリットを経て前記受光部で受光することができるようにした構造であり、また、前記第1、第2回転マスクは、酸化クロム又は窒化クロム等の入射光を減衰する特性のある単層又は複合層よりなる構造であり、また、前記第2回転マスクの前記透明板に非接触である第2低反射層により、乱反射を吸収する構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるエンコーダディスクの反射低減構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、固定スリットからの反射、外部光の反射を、ディスクの回転スリットを両面とすることにより、透明板の回転スリットの形成されていない面にて、光が反射し(反射光)、意図しない光が受光部へ照射され検知されることを低減できる。
【0008】
さらに、詳細には、透明板の一面に設けられ、複数の第1回転マスクにより形成された複数の第1回転スリットと、前記透明板の他面に設けられ、複数の第2回転マスクにより形成された複数の前記第1回転スリットに対向する複数の第2回転スリットと、前記第1回転スリットに光を照射するための光源と、前記光を受光する受光部に設けられた固定スリットと、を備え、前記光源から前記第1回転スリットへ照射された前記光は、前記第1回転スリット、前記第2回転スリット及び前記固定スリットを経て前記受光部で受光することができ、外部光の内部への入光が透明板の他面側の各第2回転マスクにより外部光を減衰させることにより、S/N比の良好なエンコーダ信号を得ることである。
また、前記第1、第2回転マスクは、酸化クロム又は窒化クロム等の入射光を減衰する特性のある単層又は複合層よりなることにより、光源からの光の導光が低反射層となり、乱光も減少して、減衰レベル及び反射レベルを低減して、光の質を向上できる。
また、前記第2回転マスクの前記透明板に非接触である第2低反射層により、乱反射を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態によるエンコーダディスクの反射低減構造を示す全体の概略断面図である。
図2図1の受光部の拡大平面図である。
図3図1の要部の拡大図である。
図4図3の他例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によるエンコーダディスクの反射低減構造は、透明板の両面に回転スリットを形成することにより、光源からの光が、第1回転スリット、第2回転スリット及び固定スリットから受光部に到達し、反射を低減させている。
【実施例0011】
以下、図面と共に本発明によるエンコーダディスクの反射低減構造の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号10で示されるものは、周知のエンコーダディスクであり、前記エンコーダディスク10は、図示しない回転軸に対して同軸配置されている。
前記エンコーダディスク10の構造の中で、最も重要な部品である円板状の透明板1の一面1aには、所定の角度間隔毎に遮光性の多数の第1回転マスク8Aが、周知のエッチング等によって形成されている。
【0012】
前記各第1回転マスク8A間には、第1回転スリット2が形成され、前記透明板1の他面1bには、前記各第1回転スリット2と同位置で、かつ、同位相の状態で第2回転スリット3及び第2回転マスク8Bが前記エッチングの手法によって形成されている。
従って、前記透明板1の一面1a及び他面1bには、前記第1、第2回転マスク8A、8Bが回転方向Rに沿って同位相で形成されている。
【0013】
前記エンコーダディスク10の中心軸線Pに沿う位置(すなわち、中心軸線Pを同一とする位置)には、受光部5を有する固定受光体20が設けられ、前記固定受光体20の表面には、固定スリット9を有する固定マスク6Aが設けられている。
【0014】
図2は、前記受光部5を示す平面図であり、前記受光部5の表面には、複数の固定マスク6Aがエッチング処理によって形成され、その中央には固定スリット9が形成され、第1回転スリット2を通過した光源4からの光4aは、図3で示されるように、第2回転スリット3から一部又は外部光7が第1回転マスク8A側に入射するが、その殆どが前記第2回転マスク8Bに反射して減衰し、前述の固定スリット9から受光部5側へ到達することのないようにした構造である。
【0015】
尚、前述の場合、図1の第1、第2回転スリット2、3は、透明板1を挟んで互いに前記中心軸線Pに沿って対向しており、さらに、前記各第1回転マスク8Aは、各第2回転マスク8Bに対し前記中心軸線Pに沿って対向配置されている。
【0016】
次に、図4は本発明によるエンコーダディスクの反射低減構造の第1、第2回転マスク8A、8Bの他の実施の形態を示している。
すなわち、透明板1に対し、その一面1aには、複数の前記第1回転マスク8Aが第1回転スリット2の分だけ回転方向Rに離間して形成され、複数層からなると共に、前記透明板1の一面1a側から図4の上方に向けて第1層A、第2層B、第3層Cが形成されている。
また、前記透明板1に対し、その他面1bには、複数の前記第2回転マスク8Bが前記第2回転スリット3分だけ回転方向Rに離間して形成され複数層からなると共に、前記透明板1の他面1b側から図4の下方に向けて第1層Aa、第2層Ba、第3層Caが形成されている。
【0017】
前記各第1回転マスク8Aは、複数の第1低反射層8Aaで構成され、前記第2回転マスク8Bは、複数の第2低反射層8Abで構成され、前記第1、第2低反射層8Aa,8Abは、一例として、酸化クロム、窒化クロムの単層又は複合層で構成されている。
第2層Bは第一遮光層として機能し、第2層Baは第二遮光層として機能し、これらは一例として、単体クロムで構成されている。
従って、前述の図4の構成によれば、例えば、外部から入光した外部光7があった場合でも、各マスク8A、8Bの構成材料が異なる層状であるため、種々の光の成分の遮光に寄与することができる。
【0018】
本発明によるエンコーダディスクの反射低減構造の特徴は次の通りである。
すなわち、透明板1の一面1aに設けられ、複数の第1回転マスク8Aにより形成された複数の第1回転スリット2と、前記透明板1の他面1bに設けられ、複数の第2回転マスク8Bにより形成された複数の前記第1回転スリット2に対向する複数の第2回転スリット3と、前記第1回転スリット2に光4aを照射するための光源4と、前記光4aを受光する受光部5に設けられた固定スリット9と、を備え、前記光源4から前記第1回転スリット2へ照射された前記光4aは、前記第1回転スリット2、前記第2回転スリット3及び前記固定スリット9を経て前記受光部5で受光することができると共に、さらに、前記第2回転マスク8Bの中の前記透明板1に非接触である第2低反射層8Abにより、乱反射を吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によるエンコーダディスクの反射低減構造は、透明板の両面に回転スリットを形成し、透明板の回転スリットを光源の光が抜け出る先に位置する固定受光体の固定スリットを抜けて、反射や乱反射の影響を受けることなく、S/N比の高い光信号を得ることができ、エンコーダの出力信号の短形波を高精度形状とし、高精度のエンコーダ信号を得ることができ、電気/機械装置等の高精度稼働を行うことができる。
【符号の説明】
【0020】
1 透明板
1a 一面
1b 他面
2 第1回転スリット
3 第2回転スリット
4 光源
4A 反射光
4a 光
5 受光部
6A 固定マスク
7 外部光
8A 第1回転マスク
8Aa 第1低反射層
8Ab 第2低反射層
8B 第2回転マスク
9 固定スリット
10 エンコーダディスク
20 固定受光体
A 第1層
Aa 第1層
B 第2層(第1遮光層)
Ba 第2層(第2遮光層)
C 第3層
Ca 第3層
P 中心軸線
R 回転方向
図1
図2
図3
図4