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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160744
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】工作機械の操作システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/409 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
G05B19/409 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076029
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】林 孝洋
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB02
3C269AB31
3C269BB07
3C269CC02
3C269CC13
3C269EF02
3C269GG01
3C269QC01
3C269QD02
3C269QE01
3C269QE10
3C269QE15
3C269QE17
3C269QE22
3C269QE26
(57)【要約】
【課題】制御軸を間違うことなく手動操作できるようにした工作機械の操作システムを提供すること。
【解決手段】各々の駆動モータによって所定方向の移動や回転を出力する複数の加工装置と、前記駆動モータによる所定方向の移動や回転を制御軸として前記加工装置を駆動制御する制御装置と、所定の操作を行うための押しボタンやタッチパネル式のモニタを備えた操作表示装置と、を有する工作機械であって、前記工作機械が前記操作表示装置の操作によって前記加工装置の駆動モータを手動で操作可能にする手動操作モードに切り換えられた場合に、前記操作表示装置のモニタには前記加工装置の制御軸に対応した操作表示マークが示され、手動操作の対象として選択された前記制御軸の前記操作表示マークが特定表示となるものである工作機械の操作システム。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の駆動モータによって所定方向の移動や回転を出力する複数の加工装置と、前記駆動モータによる所定方向の移動や回転を制御軸として前記加工装置を駆動制御する制御装置と、所定の操作を行うための押しボタンやタッチパネル式のモニタを備えた操作表示装置と、を有する工作機械であって、
前記工作機械が前記操作表示装置の操作によって前記加工装置の駆動モータを手動で操作可能にする手動操作モードに切り換えられた場合に、前記操作表示装置のモニタには前記加工装置の制御軸に対応した操作表示マークが示され、手動操作の対象として選択された前記制御軸の前記操作表示マークが特定表示となる工作機械の操作システム。
【請求項2】
手動操作モードの前記工作機械に対し、選択された前記加工装置の駆動モータの手動操作が行われた場合は、前記操作表示装置のモニタに示された該当する前記操作表示マークが前記特定表示から動作表示に切り換わる請求項1に記載する工作機械の操作システム。
【請求項3】
前記操作表示マークは、前記制御軸における移動方向または回転方向がプラス方向とマイナス方向とに分けて表示され、手動操作による前記駆動モータの回転に従った前記制御軸における移動方向または回転方向の表示部分が前記動作表示になる請求項2に記載する工作機械の操作システム。
【請求項4】
手動操作モードに切り換えられた前記操作表示装置のモニタに、前記工作機械を構成する前記複数の加工装置の装置マークが示され、前記操作表示マークは前記装置マークに対応して配置される請求項1に記載する工作機械の操作システム。
【請求項5】
前記工作機械が手動操作モードに切り換えられた前記操作表示装置のモニタは、前記操作表示マークとともに手動操作の種類を選択する選択ボタンが表示される請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する工作機械の操作システム。
【請求項6】
前記工作機械が手動操作モードに切り換えられた前記操作表示装置のモニタは、前記操作表示マークとともに表示されたタッチパネルボタンが押されることにより、前記操作表示マークが手動操作の対象となる前記制御軸を選択するための選択ボタンとなる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する工作機械の操作システム。
【請求項7】
前記工作機械は、複数の前記加工装置が、第1加工を実行する第1系統、第2加工を実行する第2系統および、前記第1加工と前記第2加工の両方の加工を実行する第3系統に分けられ、前記制御装置には、前記第1系統と前記第3系統の前記制御装置を駆動制御する前記第1加工のための第1加工プログラムおよび、前記第2系統と前記第3系統の前記制御装置を駆動制御する前記第2加工のための第2加工プログラムが格納された請求項1に記載する工作機械の操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が対象となる制御軸を間違うことなく手動操作できるようにした工作機械の操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、移動指令を行うために操作する操作盤を備えており、この操作盤には手動パルス発生器が設けられている。手動パルス発生器は、そのハンドル操作によって回転角度データがバスを介してプロセッサに読み取られる。そして、プロセッサからの移動指令に従ってサーボモータが回転し、所定の制御軸において移動操作が行われる。下記特許文献1には、工具の位置を表示する位置表示画面が設けられ、Z軸表示部、X-Y軸表示部および、ディジタル表示部から構成されている。Z軸表示部は、その領域が画面縦方向に棒状に設けられ、工具のZ軸方向への移動量に応じて、色分け等で区別表示されたカーソルが連続的に移動するようになっている。X-Y軸表示部は2次元平面に形成され、工具のX軸方向およびY軸方向への移動量に応じてカーソルが連続的に移動するようになっている。そして、ディジタル表示部は、工具の座標位置および機械座標位置がディジタルで表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-106317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例は、Z軸表示部およびX-Y軸表示部で工具の位置をアナログ表示することにより、工具のおおよその位置や移動方向が一目で確認できるものとして構成されている。ただし、この工作機械は、制御軸が工具を移動させるだけのものであるため、アナログ表示であっても確認し易い。そのため、作業者が手動パルス発生器を使用して工具を移動させる作業で間違いを生じる可能性は低いと考えられる。しかし、制御軸の数が多い多軸の工作機械の場合は、複数の駆動装置から正しく選択した制御軸において操作する必要があるが、その制御軸を間違えて操作してしまう操作ミスが生じやすい。仮に、作業者が選択を間違えてしまうと、意図しない制御軸において動作させてしまうことで、装置同士をぶつけるなどして破損させてしまうことがあり得る。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、制御軸を間違うことなく手動操作できるようにした工作機械の操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作機械の操作システムは、各々の駆動モータによって所定方向の移動や回転を出力する複数の加工装置と、前記駆動モータによる所定方向の移動や回転を制御軸として前記加工装置を駆動制御する制御装置と、所定の操作を行うための押しボタンやタッチパネル式のモニタを備えた操作表示装置と、を有する工作機械であって、前記工作機械が前記操作表示装置の操作によって前記加工装置の駆動モータを手動で操作可能にする手動操作モードに切り換えられた場合に、前記操作表示装置のモニタには前記加工装置の制御軸に対応した操作表示マークが示され、手動操作の対象として選択された前記制御軸の前記操作表示マークが特定表示となるものである。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、作業者が操作表示装置の操作によって加工装置の駆動モータを手動で操作できるよう工作機械を手動操作モードに切り換えた場合に、操作表示装置のモニタには加工装置の制御軸に対応した操作表示マークが示され、手動操作の対象として選択した制御軸は、その操作表示マークが特定表示されるため、作業者が制御軸を間違うことなく手動操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械の一実施形態を示した機体内部構造の斜視図である。
図2】工作機械の一実施形態を示した機体内部構造の側面図である。
図3】工作機械を構成する工具主軸装置を示した側面図である。
図4】工作機械の一実施形態を示した外観斜視図である。
図5】工作機械の制御システムを概念的に示した図である。
図6】手動パルス発生器などの手動操作モードの際に表示される操作画面を示した図である。
図7】操作表示部に表示された操作対象箇所の装置マークと操作表示マークとを示した図である。
図8】操作表示部に表示された操作対象箇所の装置マークと操作表示マークとを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る工作機械の操作システムの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の操作システムを搭載した工作機械の一例を示した図であり、機体の内部構造を示した斜視図である。また、図2は、同じく機体の内部構造を示した側面図である。本実施形態の工作機械1は、NC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を持ち合わせた複合加工機である。具体的には、ワークWを把持する第1ワーク主軸装置3および第2ワーク主軸装置4と、複数の工具を有する第1タレット装置5および第2タレット装置6が、それぞれ左右対称に配置された対向2軸旋盤である。そして、機体中央には工具主軸装置2が設けられている。
【0010】
工作機械1は、こうした図面左側に位置する第1ワーク主軸装置3および第1タレット装置5が第1系統として構成され、図面右側に位置する第2ワーク主軸装置4および第2タレット装置6が第2系統として構成されている(図5参照)。工作機械1は、第1系統の第1加工と第2系統の第2加工が、各々の加工プログラムに従った独立の駆動制御によって実行される。その際、第3系統の工具主軸装置2は、第1系統や第2系統に加わり、各加工プログラムに従った駆動制御が行われる。
【0011】
次に、その具体的構成について説明する。工作機械1を構成する第1および第2ワーク主軸装置3,4は同じ構造であり(以下、両装置共通の説明する場合はワーク主軸装置3,4とする)、円筒形状の主軸台22にスピンドルが回転自在に組み込まれ、そこにワークWを把持および解放するチャック機構21が組付けられている。スピンドルにはスピンドルモータ23の回転軸との間にプーリを介してベルトが掛け渡され、チャック機構21に把持されたワークWに対する加工時の位相決めや所定速度での回転が与えられるようになっている。
【0012】
ワーク主軸装置3,4は、主軸台22やスピンドルモータ23が主軸スライド24に搭載され、ベッド10の前側傾斜面11をZ軸方向に移動するよう構成されている。主軸の中心線は機体幅方向であって且つ水平に設計されているが、本実施形態においてZ軸方向とは、この中心線に平行な方向をいう。ベッド10の前側傾斜面11にはZ軸に平行な2本のガイドレール25が固定され、主軸スライド24の下面に固定されたガイドブロック26が摺動可能に噛み合っている。
【0013】
ワーク主軸装置3,4は、ボールネジ機構によってZ軸方向の移動が可能であり、2本のガイドレール25の間にはZ軸に平行なネジ軸27が軸受を介して支持されている。機体幅方向の外側にZ軸サーボモータ28が設けられ、その回転軸がネジ軸27に連結されている。一方、主軸スライド24にはネジ軸27が通ったナット部材が固定され、Z軸サーボモータ28の回転出力により主軸スライド24がZ軸方向に直線移動するよう構成されている。
【0014】
次に、第1タレット装置5および第2タレット装置6(以下、両装置共通の説明する場合はタレット装置5,6とする)は、複数の工具(タレット工具)Taの中から該当するものを旋回割出しによって選択し、ワークWに対する切削など所定の加工を行うものである。タレット装置5,6は、円盤状のタレット31に複数の工具Taが円周方向に等間隔で取り付けられ、割出し用サーボモータ32の回転制御によって、任意の工具Taを円周上の加工位置に位置決めできるよう構成されている。加工時にはワーク主軸装置3,4がZ軸方向に移動し、ワークWに対して工具Taが機体中央側から当てられることになる。
【0015】
タレット装置5,6は、工具Taを加工位置へと移動させるため、タレット31をZ軸に直交するXY平面上であって、水平方向および鉛直方向に対して45度の角度をもったYL軸とXL軸を制御軸として移動するよう構成されている。なお、「L」の文字は第1系統の各制御軸を示すものであり、第2系統の制御軸には「R」の文字が付いている(図6参照)。ベッド10にはYL軸に平行な後側傾斜面12が形成され、そこにYL軸ガイドレール33が固定されている。略三角形状のベーススライド34は、その一辺にYL軸ガイドレール33を摺動するガイド部35が設けられ、90度で隣り合う辺がタレット31の搭載面であり、そこにはXL軸ガイドレール36が設けられている。タレットスライド37は、ガイド部40がXL軸ガイドレール36に対して摺動可能に噛み合っている。
【0016】
ベーススライド34とタレットスライド37にはボールネジ機構が設けられている。YL軸ガイドレール33とXL軸ガイドレール36とのそれぞれに平行なネジ軸が軸受によって支持され、そのネジ軸がベーススライド34やタレットスライド37に固定されたナット部材を通っている。各々のネジ軸はYL軸サーボ―モータ38またはXL軸サーボモータ39の回転軸に連結されている。従って、タレット装置5,6は、YL軸サーボモータ38とXL軸サーボモータ39の駆動制御によってタレット31のYL軸およびXL軸の各方向の移動制御のほか、両軸方向の移動を合成した方向の移動制御が可能になっている。
【0017】
図3は、工具主軸装置2を示した側面図である。工具主軸装置2は、主軸ヘッド41内に主軸用サーボモータや工具スピンドルが内蔵され、その下端部に設けられた工具装着部に対して、自動工具交換装置8(図4参照)に収められた様々な工具(主軸ヘッド工具)Tbの取り換えが行われるようになっている。主軸ヘッド41は、主軸スライド42に対して回転可能に取り付けられ、回転伝達機構を介してBB軸モータ43の回転が伝達されるよう構成されている。工具主軸装置2は、工具Tbを加工位置へと移動させるための制御軸として、水平なYB軸と鉛直なXB軸とがある。なお、「B」の文字は第3系統の制御軸を示すものである(図6参照)。
【0018】
工具主軸装置2は、ベッド10上に水平なガイドレール44が固定され、ベーススライド45のガイド部451が摺動可能に噛み合っている。ベーススライド45には前側に鉛直なレール部46が構成され、そこに主軸スライド42のガイド部47が摺動可能に噛み合っている。ベーススライド45と主軸スライド42は、ともにボールネジ機構が設けられている。各方向のネジ軸がベーススライド45または主軸スライド42に固定されたナット部材を通り、YB軸サーボ―モータ48またはXB軸サーボモータ49が連結されている。
【0019】
図4は、工作機械1の全体を示した外観斜視図である。工作機械1は、ベッド10上の第1ワーク主軸装置3など各種加工装置が機体カバー60によって覆われている。機体正面には中央に操作盤である操作表示装置7が設けられ、その左右両側には左正面扉63と右正面扉64とが形成されている。機体の正面中央には工具主軸装置2に対して工具Tbの交換を行う自動工具交換装置8が設けられ、複数の工具を収納したツールマガジン18が機体前面上部に配置されている。また、工作機械1にはガントリ式のワーク自動搬送装置9が設けられ、把持したワークWをXYZの3軸方向に移動させることにより、機体内外のワーク搬送や機内における第1および第2ワーク主軸装置3,4間のワーク搬送が可能になっている。
【0020】
次に、図5は、工作機械1の制御システムを概念的に示した図である。工作機械1を駆動させる制御装置50は、マイクロプロセッサ(CPU)51、ROM52、RAM53、不揮発性メモリ54、I/Oユニット55などがバスライン58を介して接続されている。CPU51は制御部全体を統括制御するものであり、ROM52にはCPU51が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM53には一時的に演算データ等が格納される。
【0021】
揮発性メモリ54は、CPU51が行う処理に必要な情報であり、工作機械1の加工プログラムなどが格納されている。そして、制御装置50にはI/Oユニット55に接続されたプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)56が設けられ、ラダー形式で作成されたシーケンスプログラムによって工作機械1の工具主軸装置2など各種加工装置の駆動部制御が行われる。加工プログラムの各機能指令はシーケンスプログラムによって必要な信号に変換され、I/Oユニット55から工具主軸装置2などに対して出力が行われる。
【0022】
対向2軸旋盤である工作機械1は、第1ワーク主軸装置3に把持されたワークWを加工する第1系統の第1加工プログラムと、第2ワーク主軸装置4に把持されたワークWを加工する第2系統の第2加工プログラムとが制御装置50に格納され、それぞれ独立した加工制御が行われる。工作機械1では、正面から見て機体左側から搬入されたワークWが第1加工から第2加工へと搬送されて順番に加工される。具体的には、入力側ストッカのワークWがワーク自動搬送装置9により第1ワーク主軸装置3へと運ばれてチャック機構21に把持される。
【0023】
そして、第1タレット装置5では、タレット31の駆動により工具Taの旋回割出しが行われ、更にベーススライド34とタレットスライド37のXL軸およびYL軸方向の移動により、ワークWに対する工具Taの位置決めが行われる。第1ワーク主軸装置3は、スピンドルモータ23の駆動によりワークWが回転し、ZL軸サーボモータの駆動によりZ軸方向に移動して、工具Taが当てられたワークWに所定の加工が行われる。
【0024】
第1加工では、こうした第1系統におけるワークWの加工に加え、第3系統の工具主軸装置2を使用した加工が可能である。工具主軸装置2は、ベーススライド45がYB軸方向に移動し、主軸スライド42がXB軸方向に移動することにより、主軸ヘッド41の工具Tbが第1ワーク主軸装置3に把持されたワークWに対する加工位置へと運ばれる。さらに主軸ヘッド41は、BB軸モータ43の回転により鉛直下向きの工具Tbが傾けられ、ワークWに対する穴あけなど所定の加工が行われる。
【0025】
こうして第1加工が終了した後は、第1ワーク主軸装置3から第2ワーク主軸装置4へとワークWを移すため、例えば両装置が機体中央に近づき、チャック機構21同士によるワークWの掴みかえが行われる。そして、第2系統の加工プログラムに従ってワーク加工が実行される。第2加工でも第2ワーク主軸装置4と第2タレット装置6の第2系統における加工に加え、第3系統の工具主軸装置2を使用したワーク加工が可能である。
【0026】
工作機械1では、こうした第1加工(第2加工でも同じ)における第1タレット装置5と工具主軸装置2との制御は、高い加工精度を得るためにタレット工具Taと主軸ヘッド工具Tbとの加工位置の正確な位置決めが求められる。そうした加工位置(座標位置)の確認は、作業者によって手動で行われている。工作機械1は、第1系統、第2系統および第3系統を構成する各種加工装置について工具Ta,Tbの位置などを調整するため、手動パルス発生器17(図5参照)などを使用した操作が可能である。その手動パルス発生器17は、作業者が手に持って操作できる小型なものであり、図4に示すように機体前面に着脱可能に取り付けられ、操作表示装置7にケーブルを介して接続されている。
【0027】
手動パルス発生器17は、制御装置50の指令に従って駆動する各種加工装置の駆動モータを、ハンドル操作の指令パルスによって駆動できるようにしたものである。例えば、第1加工を実行するタレット工具Taや主軸ヘッド工具Tbの加工位置の確認は、第1タレット装置5のYL軸サーボモータ38およびXL軸サーボモータ39、また工具主軸装置2のYB軸サーボ―モータ48およびXB軸サーボモータ49の駆動が手動パルス発生器17の操作によって行われる。
【0028】
しかし、工作機械1の場合は、同じ座標軸(X軸およびY軸)によって操作が行われるので、作業者による第1系統と第3系統の切り換え忘れが問題になる。加工プログラムによる自動制御では、ワーク加工が第1タレット装置5から工具主軸装置2に移る際、Mコードによって座標軸が第1系統の駆動制御から第3系統の駆動制御へと切り換えられる。すなわち、第1系統と第3系統との間で座標軸の自動貸し借りが行われている(第2系統と第3系統でも同じ)。一方で手動操作の場合には、作業者が切り換えを行わないまま操作を開始してしまうことがあり、工具主軸装置2を操作するつもりが、意図しない第1タレット装置5を動作させてしまい、機内で装置同士の衝突を引き起こしてしまうことがある。
【0029】
そこで、本実施形態の工作機械1では、作業者が対象となる加工装置を間違うことなく手動操作できるようにした操作システムが設けられている。ここで、図6は、手動パルス発生器17などを使用する手動操作モードに切り換えられた時の操作画面を示した図である。操作表示装置7は、タッチパネル式のモニタを有し、手動操作モードボタンが押されることにより、そのモニタに図示する操作画面70が表示される。そして、操作画面70には、対応する制御軸での操作状況を示す操作表示部71、制御軸における座標値を表示する座標表示部72および、選択ボタンが並べられた選択部73が設けられている。
【0030】
操作表示部71は、工作機械1を構成する第1ワーク主軸装置3および第1タレット装置5など各種加工装置を示す装置マーク81、その各種加工装置の制御軸を表す軸名称および、制御軸ごとの操作状況を示す操作表示マーク83が示されている。装置マーク81は、工作機械1における実際の位置に対応して配置され、矢印である操作表示マーク83は、それぞれの装置マーク81の移動方向に合わせて表現されている。
【0031】
また、座標表示部72には、制御軸の軸名称と、その制御軸における移動位置を示す座標値とが、手動操作の対象となっている系統ごとに表示される。例えば、図6には後述する第1加工に対する手動操作時の状況が示されているため、第1系統と第3系統の加工装置に関する制御軸が表示されている。そして、選択部73には、手動操作の種類を選択する選択ボタンとして、手動パルス発生器17を使用する手動パルスボタン75、寸動で操作するジョグボタン76および、操作画面70上での操作を優先させるタッチパネルボタン77が表示されている。
【0032】
次に、本実施形態の工作機械1で手動操作を行う場合は、従来と同様の操作表示装置7に設けられた押しボタンの操作と、モニタに表示された操作画面70におけるタッチ操作とが可能である。従来からの押しボタンの操作であれば、モード切換えボタンによって工作機械1の手動操作モードへの切り換えが行われ、手動パルスボタンによって手動パルス発生器17の使用が可能になり、制御軸選択ボタンが押されて操作対象となる制御軸が特定される。
【0033】
一方で、操作画面70におけるタッチ操作の場合には、手動操作モードへの切り換えが行われた後、タッチパネルボタン77が押されることによって操作画面70上での操作入力が可能になる。特に、操作表示部71に示された複数の操作表示マーク83は、それぞれの制御軸を選択するボタンとして機能するようになる。そのため、手動パルスボタン75が押されることで手動パルス発生器17の使用が可能になり、更に操作表示部71に示された複数の操作表示マーク83のうち、いずれかが押されることで操作対象となる制御軸が特定される。
【0034】
このとき本実施形態の操作システムは、操作表示装置7に設けられたボタン操作であっても、また、操作画面70におけるタッチ操作であっても、操作対象である制御軸が間違っていないか確認ができるようになっている。図7は、その確認を可能にする操作表示部71の対象箇所を示した図であり、具体的には第1ワーク主軸装置3の制御軸XLが示されている。図7(A)に示すように、手動操作における制御軸XLの選択が行われると、まず第1ワーク主軸装置3の装置マーク81の隣に表示された該当する操作表示マーク83が特定表示となって点灯する。
【0035】
次に、手動パルス発生器17のハンドル操作が行われ、XL軸サーボモータ39が指令パルスに従って駆動する。そのとき第1ワーク主軸装置3のタレット31がXL軸のマイナス方向に移動する場合には、図7(B)に示すように、制御軸XLの操作表示マーク83は、移動方向であるマイナス側が動作表示に切り換わって点滅する。そして、座標表示部72に表示された座標値を基に移動位置の調整が行われる。また、第1ワーク主軸装置3の制御軸YLに関しても、作業者の操作に応じて同じように、操作表示部71の該当する操作表示マーク83が点灯(特定表示)および点滅(動作表示)することになる。
【0036】
ところで、第1加工における工具の位置確認は工具主軸装置2についても行われる。このとき操作表示装置7に設けられた切り換えボタン操作によって、座標軸が第1系統の駆動制御から第3系統の駆動制御へと切り換えられ、同じように手動パルス発生器17の使用や操作対象となる制御軸が特定される。また、タッチパネルボタン77が押されて操作画面70上の操作が優先状態であれば、工具主軸装置2の操作表示マーク83が押されることで、操作対象が例えば制御軸XBになり、同時に座標軸が第1系統の駆動制御から第3系統の駆動制御へと切り換えられる。操作対象となった制御軸XBは、図8(A)に示すように、操作表示部71に表示された該当する操作表示マーク83が点灯する。
【0037】
そこで、作業者が手動パルス発生器17のハンドル操作を行えば、座標軸は第1系統から第3系統の駆動制御へと切り換えられているため、XB軸サーボモータ49が駆動することになる。そして、XB軸サーボモータ49の駆動により、操作表示マーク83の点灯が点滅に切り換わる。例えば該当する操作表示マーク83のうち、制御軸XBの移動方向であるマイナス側が点滅する。また、工具主軸装置2の制御軸YBに関しても、作業者の操作に応じて同じように、操作表示部71の該当する操作表示マーク83が点灯および点滅することになる。一方、ジョグボタン76によって寸動を選択した場合でも、選択した制御軸の操作表示マーク83が点灯し、該当する動作ボタンを押し続ける操作中は操作表示マーク83が点滅する。
【0038】
よって、工作機械1の操作システムによれば、操作表示装置7のモニタに操作画面70が表示されるよう構成され、作業者による手動操作の際、操作表示部71に表示された操作表示マーク83が点灯および点滅すため、作業者が意図しない制御軸の操作をしてしまうといった操作ミスを防止することができる。特に、手動パルス発生器17などを使用した作業者による操作は、開けられた左正面扉63や右正面扉64の前に立って行われるため、操作表示装置7のモニタに表示された操作表示部71は作業者にとって見やすく、各種加工装置を示す装置マーク81や制御軸ごとの操作状況を示す操作表示マーク83の点灯および点滅から、作業者は直感的に自らの操作を把握することができる。
【0039】
本実施形態の工作機械1は、第1系統と第3系統の各種加工装置を、また第2系統と第3系統の各種加工装置をそれぞれ同じ座標軸で操作する場合があるため、作業者が座標軸の切り換えを忘れることがあるが、操作表示部71に点灯した加工装置の操作表示マーク83を確認することにより直ちにそのミスに気が付くことができる。また、本実施形態では、作業者による手動パルス発生器17などの操作に応じて、操作表示マーク83のうち移動方向側が点滅するため、作業者は、微小な動きを座標表示部72に表示された座標値とともに把握することができる。
【0040】
さらに、工作機械1では、手動パルス発生器17を使用した操作が、従来と同様の操作表示装置7に設けられた押しボタンによるもののほか、モニタに表示された操作画面70におけるタッチ操作とを可能にしたため、従来に比べて操作性が向上する。特に、操作表示部71には装置マーク81と操作表示マーク83とが装置ごとに表示され、その操作表示マーク83を作業者がタッチすることにより操作対象を選択することができる点で、操作性が格段に向上する。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、工作機械としてNC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を持つようにした複合加工機を例に挙げて説明したが、こうした制御軸の数が多い工作機械以外にも適応可能である。
また、前記実施形態では操作表示マークを矢印で表現したが、異なる形状のマークであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…工作機械 2…工具主軸装置 3…第1ワーク主軸装置 4…第2ワーク主軸装置 5…第1タレット装置 6…第2タレット装置 7…操作表示装置 17…手動パルス発生器 23…スピンドルモータ 28…Z軸サーボモータ 38…YL軸サーボ―モータ 39…XL軸サーボモータ 43…BB軸モータ 48…YB軸サーボ―モータ 49…XB軸サーボモータ 50…制御装置 70…操作画面 71…操作表示部 72…座標表示部 73…選択部 75…手動パルスボタン 76…ジョグボタン 77…タッチパネルボタン 81…装置マーク 83…操作表示マーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8