(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160747
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】シート製造装置、および水蒸気回収機構
(51)【国際特許分類】
D04H 1/732 20120101AFI20241108BHJP
B01D 46/71 20220101ALI20241108BHJP
B01D 46/72 20220101ALI20241108BHJP
【FI】
D04H1/732
B01D46/71
B01D46/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076032
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 健太
【テーマコード(参考)】
4D058
4L047
【Fターム(参考)】
4D058JA02
4D058MA15
4D058SA20
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB06
4L047EA01
(57)【要約】
【課題】水蒸気を含む空気から塵埃を捕集するシート製造装置および水蒸気回収機構を提供すること。
【解決手段】シート製造装置1は、繊維を含むウェブWを加熱する加熱部70と、加熱部70の上方に配置され、ウェブWから発生する水蒸気Vを集めるフード部41と、フード部41の内部に連通する排気部42と、を有し、排気部42は、フード部41の内部の空気を吸引するファン部491,492と、ファン部491,492によって吸引される空気が通過する廃粉捕集部44と、を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含むウェブを加熱する加熱部と、
前記加熱部の上方に配置され、前記ウェブから発生する水蒸気を集めるフード部と、
前記フード部の内部に連通する排気部と、を有し、
前記排気部は、
前記フード部の前記内部の空気を吸引するファン部と、
前記ファン部によって吸引される前記空気が通過する廃粉捕集部と、を含むことを特徴とするシート製造装置。
【請求項2】
前記加熱部の上流に、前記ウェブを加湿する加湿部を有し、
前記排気部は、排気管を含み、
前記排気管は、前記フード部の前記内部と前記加湿部の内部とを連通させ、
前記ファン部、および前記廃粉捕集部は、前記排気管が連通させる前記フード部の前記内部から前記加湿部の前記内部までの経路に設置されることを特徴とする、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項3】
前記廃粉捕集部へ圧搾空気を噴射するブロー部と、
前記ファン部および前記ブロー部の稼働を制御する制御部と、を有し、
前記ブロー部は、前記排気管が連通させる前記フード部の前記内部から前記加湿部の前記内部までの経路に設置され、
前記制御部は、前記ファン部の回転速度を変更し、
前記ブロー部が前記圧搾空気を噴射する際の前記回転速度は、前記ウェブが前記加熱部を流動する際の前記回転速度よりも低いことを特徴とする、請求項2に記載のシート製造装置。
【請求項4】
前記廃粉捕集部において、前記圧搾空気が噴射される方向は、前記フード部の前記内部の前記空気が流れる方向とは異なることを特徴とする、請求項3に記載のシート製造装置。
【請求項5】
下方から生じる水蒸気を集めるフード部と、
前記フード部の内部に連通する排気部と、を有し、
前記排気部は、
前記フード部の前記内部の空気を吸引するファン部と、
前記ファン部によって吸引される前記空気が通過する廃粉捕集部と、
前記廃粉捕集部へ圧搾空気を噴射するブロー部と、を含むことを特徴とする水蒸気回収機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート製造装置、および水蒸気回収機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水蒸気を含む空気を吸引するファンを備える装置が知られていた。例えば、特許文献1には、水蒸気を対流させるファンを備える画像形成装置が開示されている。上記ファンは、定着部の筐体内で生じる水蒸気をダクトへ強制的に対流させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、水蒸気移動部などの対流の経路を、塵埃が目詰まりさせるおそれがあるという課題があった。詳しくは、記録材として普通紙などを用いると、紙粉などの塵埃を含む空気がファンによって対流する場合がある。上記空気には水蒸気も含まれるため、塵埃が湿気を帯びて水蒸気移動部などの経路に付着し易くなる。塵埃の付着が顕著になると、上記経路に目詰まりが発生するおそれがあった。すなわち、水蒸気を含む空気から塵埃を捕集する機構が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シート製造装置は、繊維を含むウェブを加熱する加熱部と、前記加熱部の上方に配置され、前記ウェブから発生する水蒸気を集めるフード部と、前記フード部の内部に連通する排気部と、を有し、前記排気部は、前記フード部の前記内部の空気を吸引するファン部と、前記ファン部によって吸引される前記空気が通過する廃粉捕集部と、を含むことを特徴とする。
【0006】
水蒸気回収機構は、下方から生じる水蒸気を集めるフード部と、前記フード部の内部に連通する排気部と、を有し、前記排気部は、前記フード部の前記内部の空気を吸引するファン部と、前記ファン部によって吸引される前記空気が通過する廃粉捕集部と、前記廃粉捕集部へ圧搾空気を噴射するブロー部と、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るシート製造装置の構成を示す模式図。
【
図2】加熱部に対するフード部の配置を示す模式図。
【
図6】廃粉捕集部およびブロー部の構成を示す斜視断面図。
【
図7】廃粉捕集部およびブロー部の構成を示す側方断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の実施形態では、乾式にて古紙などの紙片を再生するシート製造装置1を例示し、図面を参照して説明する。本発明のシート製造装置は、乾式であることに限定されず、湿式であってもよい。なお、本明細書において乾式とは、液体中で実施されずに、大気などの空気中で実施されることをいう。
【0009】
以下の各図においては、相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。Z軸は鉛直方向に沿う仮想軸であって+Z方向を上方とし、-Z方向を下方とする。-Z方向は重力が作用する方向である。また、シート製造装置1において、原料、ウェブ、およびシートなどの搬送方向の先を下流、搬送方向を遡る側を上流ということもある。図示の便宜上、各部材の大きさを実際とは異ならせている。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るシート製造装置1は、第1ユニット群101、第2ユニット群102、および第3ユニット群103を有する。第1ユニット群101、第2ユニット群102、および第3ユニット群103は、図示しないフレームに支持される。なお、
図1においては、古紙C、シートP3、スリット片S、および不要な端材などが移動する方向を白抜きの矢印で示している。
【0011】
シート製造装置1は古紙CからシートP3を製造する。シート製造装置1では、-X方向からの側面視にて、-Y方向から+Y方向に向かって、第1ユニット群101、第3ユニット群103、および第2ユニット群102が配置される。
【0012】
古紙Cは、第1ユニット群101から、第3ユニット群103内を横断する配管21を介して第2ユニット群102へ搬送される。そして古紙Cは、第2ユニット群102にて解繊などが施されて繊維と成ってから、結着材などを含む混合物とされる。混合物は、配管24を介して第3ユニット群103へ搬送される。混合物は、第3ユニット群103にてウェブWとされてから、帯状のシートP1に成形される。帯状のシートP1は、第1ユニット群101にて切断されてシートP3と成る。
【0013】
第1ユニット群101は、バッファータンク13、定量供給部15、合流部17、および配管21を有する。第1ユニット群101では、上流から下流に向かって、これらの構成が上記の順番にて配置される。また、第1ユニット群101は、第1切断部81、第2切断部82、トレイ91、および細断部95も有する。第1切断部81および第2切断部82は、帯状のシートP1を所定の形状のシートP3に切断する。さらに、第1ユニット群101は給水部67を有する。給水部67は貯水タンクである。給水部67は、後述する第1加湿部65および第2加湿部66の各々へ、図示しない給水管にて加湿用の水を供給する。
【0014】
古紙Cは、原料投入口11からバッファータンク13へ投入される。古紙Cは、セルロースなどの繊維を含み、例えば細断された古紙の紙片である。バッファータンク13の内部には、第3ユニット群103に備わる第2加湿部66から、加湿された空気が供給される。
【0015】
解繊される古紙Cは、バッファータンク13にて一時的に貯留された後、シート製造装置1の稼働に応じて定量供給部15へ搬送される。シート製造装置1は、バッファータンク13の上流側に、古紙などを細断するシュレッダーを備えてもよい。
【0016】
定量供給部15は、計量器15a、および図示しない供給機構を有する。計量器15aは古紙Cの質量を計量する。供給機構は、計量器15aにて計量された古紙Cを、下流の合流部17に供給する。すなわち、定量供給部15は、計量器15aにて古紙Cを所定の質量毎に計量して、供給機構にて下流の合流部17へ供給する。
【0017】
計量器15aには、デジタル式およびアナログ式の何れの計量機構も適用可能である。具体的には、計量器15aとして、ロードセルなどの物理センサー、およびバネ秤や天秤などが挙げられる。本実施形態では計量器15aとしてロードセルを用いる。計量器15aが古紙Cを計量する所定の質量とは、例えば、数gから数10g程度である。
【0018】
供給機構には、振動式フィーダーなどの公知の技術を適用可能である。供給機構は、計量器15aに含まれる構成であってもよい。
【0019】
定量供給部15での古紙Cの計量および供給はバッチ処理である。すなわち、定量供給部15から合流部17への古紙Cの供給は、間欠的に実施される。定量供給部15は、計量器15aを複数有してもよく、複数の計量器15aを時差稼働させて、計量の効率を向上させてもよい。
【0020】
合流部17では、定量供給部15から供給される古紙Cに対して、細断部95から供給されるスリット片Sの細断片が合流して混合される。スリット片Sおよび細断部95については後述する。上記細断片が混合された古紙Cは、合流部17から配管21へと流入する。
【0021】
配管21は、図示しないブロアーが発生させる気流によって、古紙Cを第1ユニット群101から第2ユニット群102へ搬送する。
【0022】
第2ユニット群102は、乾式解繊機である解繊部31、分離部32、配管23、混合部33、および配管24を有する。第2ユニット群102では、上流から下流に向かって、これらの構成が上記の順番にて配置される。また、第2ユニット群102は、分離部32に接続される配管25、回収部35、コンプレッサー38、および電源部39も有する。
【0023】
配管21を搬送された古紙Cは、解繊部31に流入する。解繊部31は、定量供給部15から供給される古紙Cを乾式にて解繊して繊維にする。解繊部31には、公知の解繊機構が適用可能である。
【0024】
解繊部31としては、例えば以下の構成が挙げられる。解繊部31は、ステーターおよびローターを備える。ステーターは略円筒状の内側面を有する。ローターは、ステーターの内部に設置されて、ステーターの内側面に沿って回転する。古紙Cの細片は、ステーターの内側面とローターとの間に挟まれて、これらの間に生じるせん断力によって解繊される。これにより、古紙Cは、紙片に含まれる絡まった繊維が解きほぐされる。古紙Cは繊維とされて分離部32に搬送される。
【0025】
分離部32は解繊された繊維を分別する。詳しくは、分離部32は、繊維に含まれる、シートP3の製造に不要な成分を取り除く。具体的には、分離部32は、比較的に長い繊維と、比較的に短い繊維とを分別する。比較的に短い繊維は、シートP3の強度低下を招く場合があるため、分離部32にて分別される。また、分離部32は、古紙Cに含まれる色材や添加剤なども分別して排除する。分離部32には、円盤メッシュ方式などの公知の技術が適用可能である。
【0026】
分離部32の内部には、第3ユニット群103の第2加湿部66から加湿された空気が供給される。
【0027】
解繊された繊維は、比較的に短い繊維などが排除されて、配管23を介して混合部33へ搬送される。比較的に短い繊維や色材などの不要分は、配管25を介して回収部35へ排出される。
【0028】
混合部33は、繊維に結着材などを空気中で混合して混合物とする。図示を省略するが、混合部33は、繊維が搬送される流路、ファン、ホッパー、供給管、およびバルブを備える。
【0029】
ホッパーは、供給管を介して繊維の流路に連通する。バルブは、ホッパーと流路との間の供給管に設けられる。ホッパーは、でんぷんなどの結着材を流路内へ供給する。バルブは、ホッパーから流路に供給される結着材の質量を調整する。これにより、繊維と結着材との混合比が調整される。
【0030】
混合部33は、結着材を供給する上記構成の他に、色材や添加剤などを供給する同様な構成を備えてもよい。
【0031】
混合部33のファンは、発生させる気流により、繊維を下流へ搬送しながら結着材などを空気中で混入させて混合物とする。混合物は、混合部33から配管24へ流入する。
【0032】
回収部35は、図示しないフィルターを備える。フィルターは、配管25を気流にて搬送された比較的に短い繊維などの不要分を濾し取る。
【0033】
コンプレッサー38は圧縮空気を生成する。上記フィルターでは、不要分のうちの微細な粒子などによって目詰まりが生じる場合がある。コンプレッサー38が生成する圧縮空気をフィルターに吹き付けて、付着した粒子を吹き飛ばしてフィルターをクリーニングすることが可能である。
【0034】
電源部39は、制御部5、およびシート製造装置1に電力を供給する図示しない電力供給装置を含む。電源部39は、外部から供給される電力をシート製造装置1の各構成に分配する。制御部5は、後述するブロー部46およびファン部491,492を含むシート製造装置1の各構成と電気的に接続され、これらの構成の稼働を統合的に制御する。
【0035】
第3ユニット群103は、繊維を含む混合物を堆積させて圧縮し、再生紙である帯状のシートP1に成形する。第3ユニット群103は、堆積部50、第1搬送部61、第2搬送部62、第1加湿部65、第2加湿部66、排水部68、加熱部70、および水蒸気回収機構40を有する。水蒸気回収機構40は、排気管48b1,48b2を備える排気部42、およびフード部41を含む。ここで、第1加湿部65が本発明の加湿部の一例である。
【0036】
なお、
図1では図の視認性を向上させるために、排気部42に含まれる構成のうち、排気管48b1,48b2のみを破線で示し、その他の構成の図示を省略している。また、上記と同様な理由から、実際は2本である排気管48b1,48b2を1本の管で表示している。
【0037】
第3ユニット群103では、上流から下流に向かって、堆積部50、第1搬送部61、第2搬送部62、第1加湿部65、加熱部70が、上記の順番にて配置される。第2加湿部66は、第1加湿部65の下方に配置される。水蒸気回収機構40のうち、フード部41は加熱部70の上方に配置される。
【0038】
堆積部50は、分別された繊維が含まれる混合物を空気中で堆積させてウェブWを生成する。堆積部50は、ドラム部材53、ドラム部材53内に設置される羽根部材55、ドラム部材53を収容するハウジング51、吸引部59を有する。混合物は、配管24からドラム部材53の内部に取り込まれる。
【0039】
堆積部50の下方には、第1搬送部61が配置される。第1搬送部61は、メッシュベルト61a、メッシュベルト61aを張架する図示しない5つの張架ローラーを有する。吸引部59は、Z軸に沿う方向において、メッシュベルト61aを挟んでドラム部材53と対向する。
【0040】
羽根部材55は、ドラム部材53の内部にあって、図示しないモーターによって回転駆動される。ドラム部材53は半円柱状の篩である。ドラム部材53の下方を向く側面には、篩の機能を有する網が設けられる。ドラム部材53は、篩の網の目開きの大きさより小さい繊維や混合物などの粒子を、内部から外側に通過させる。
【0041】
混合物は、ドラム部材53内において、回転する羽根部材55に撹拌されながらドラム部材53の外側に放出される。ドラム部材53の内部には、第2加湿部66から加湿された空気が供給される。
【0042】
吸引部59はドラム部材53の下方に配置される。吸引部59は、メッシュベルト61aが有する複数の穴を介して、ハウジング51内の空気を吸引する。メッシュベルト61aの複数の穴は、空気を通し、混合物に含まれる繊維や結着材などを通し難い。これにより、ドラム部材53の外側に放出された混合物は、空気と共に下方に吸引される。吸引部59はブロアーなどの公知の吸引装置である。
【0043】
混合物は、ハウジング51内の空気中に分散されて、重力と吸引部59の吸引によって、メッシュベルト61aの上方の面に堆積してウェブWとなる。
【0044】
メッシュベルト61aは、無端ベルトであって、5つの張架ローラーによって張り架けられる。メッシュベルト61aは、張架ローラーの自転によって、
図1において反時計回りに回動する。これにより、メッシュベルト61aに連続して混合物が堆積し、ウェブWが形成される。ウェブWは、空気を比較的に多く含み、柔らかく膨らんでいる。第1搬送部61は、形成されたウェブWを、メッシュベルト61aの回動により下流へ搬送する。
【0045】
第2搬送部62は、第1搬送部61の下流において、第1搬送部61に代わってウェブWを搬送する。第2搬送部62は、メッシュベルト61aの上方の面からウェブWを剥離させて、加熱部70に向けて搬送する。第2搬送部62は、ウェブWの搬送経路の上方にあって、メッシュベルト61aのリターン側の起点よりもやや上流側に配置される。第2搬送部62の+Y方向と、メッシュベルト61aの-Y方向とは、鉛直方向において一部が重なる。
【0046】
第2搬送部62は、図示しない輸送ベルト、複数のローラー、およびサクション機構を有する。輸送ベルトには空気を通す複数の穴が設けられる。輸送ベルトは、複数のローラーによって張り架けられ、ローラーの回転により回動する。
【0047】
第2搬送部62は、サクション機構が発生させる負圧により、ウェブWの上方の面を輸送ベルトの下方の面に吸着させる。この状態にて輸送ベルトが回動することによって、ウェブWは、輸送ベルトに吸着されて下流へ搬送される。
【0048】
第1加湿部65は、加熱部70の上流に配置され、第3ユニット群103の堆積部50にて堆積された繊維を含むウェブWを加湿する。詳しくは、第1加湿部65は、例えば、ミスト式加湿器であって、第2搬送部62によって搬送されるウェブWへ下方からミストMを供給して加湿する。第1加湿部65は、第2搬送部62の下方に配置され、第2搬送部62が搬送するウェブWとZ軸に沿う方向に対向する。第1加湿部65には、例えば超音波式などの公知の加湿装置が適用可能である。
【0049】
ウェブWがミストMにて加湿されることにより、でんぷんの結着材としての機能が促進されて、シートP3の強度が向上する。また、ウェブWに対して下方から加湿するため、ミスト由来の雫のウェブWへの落下が防止される。さらに、輸送ベルトとウェブWとの接触面の反対側から加湿するため、輸送ベルトに対するウェブWの貼り付きが低減される。第2搬送部62はウェブWを加熱部70へ搬送する。
【0050】
加熱部70は、ウェブWを加熱および加圧して帯状のシートP1に成形する。加熱部70は、一対の加熱ローラー71,72を有する。一対の加熱ローラー71,72の各々は、電熱ヒーターを内蔵し、ローラー表面を加熱する機能を有する。
【0051】
一対の加熱ローラー71,72の間へ、ウェブWを連続的に通過させることにより、ウェブWが加熱されながらプレス加工される。これにより、比較的に空気を多く含んで柔らかいウェブWから、内包する空気が低減されると共に結着材によって繊維同士が結着されて、帯状のシートP1が成形される。帯状のシートP1は、図示しない搬送ローラーにより、第1ユニット群101へ搬送される。
【0052】
加熱部70にてウェブWが加熱されることにより、ウェブWに含まれる水分が水蒸気Vとして揮散する。一般に、水蒸気Vは冷やされると結露を生じさせる。従来、結露が顕著になると水滴が下方に落下して、完成品などの品質を低下させる場合があった。これに対して、水蒸気回収機構40は、ウェブWから生じる水蒸気Vを回収して、水蒸気Vの結露に由来する水滴が、加熱部70などの要部やシートP1へ落下することを抑える機能を有する。
【0053】
フード部41は、下方が開放され、下方から上方へ向かってテーパー状に内部の空間が狭まる形状である。これにより、フード部41は、下方から生じる水蒸気V、すなわちウェブWから発生する水蒸気Vを集める。なお、フード部41の詳細な形態については後述する。
【0054】
フード部41の頂部には排気部42が接続される。排気部42は、フード部41の内部に連通すると共に、第1加湿部65の内部とも連通する。特に、排気部42の排気管48b1、48b2は、下方に引き回されて、第1加湿部65の内部に接続される。
【0055】
排気部42は、後述するファン部491,492を含む。排気部42は、ファン部491,492によってフード部41の内部の空気を吸引して、ウェブWから発生する水蒸気Vを含む多湿な空気を集めて第1加湿部65へと送り出す。排気部42の吸引により、フード部41の内部へ水蒸気Vがさらに集まり易くなる。そのため、フード部41の外側において、結露の発生をさらに抑えることができる。
【0056】
これらにより、加熱部70においてウェブWから発生した水蒸気Vは、上方のフード部41の内部に集められる。そして、水蒸気Vは、排気部42を介して第1加湿部65へ戻されて、第1加湿部65が発生させるミストMと共にウェブWを加湿する。なお、排気部42の詳細については後述する。
【0057】
第2加湿部66は、第1加湿部65の下方に配置される。第2加湿部66には、公知の気化式の加湿装置が適用可能である。気化式の加湿装置としては、例えば、湿らせた不織布などに風をあてて水分を気化させ、加湿した空気を発生させるものが挙げられる。
【0058】
第2加湿部66は、シート製造装置1の所定の領域を加湿する。所定の領域とは、バッファータンク13、分離部32、および堆積部50のドラム部材53内のうちの1つ以上である。具体的には、図示しない複数の管を介して、第2加湿部66から上記領域へ加湿された空気が供給される。加湿された空気は、上記の各構成において、古紙Cや繊維などの帯電を抑制して、これらの静電気による部材への付着を抑える。
【0059】
排水部68は排水タンクである。排水部68は、第1加湿部65および第2加湿部66などで使用され、古くなった水分を集めて貯留する。排水部68は、必要に応じてシート製造装置1から取り外して、溜まった水を廃棄することが可能である。
【0060】
第1ユニット群101に搬送される帯状のシートP1は、第1切断部81に至る。第1切断部81は、帯状のシートP1を搬送方向と交差する方向、例えばX軸に沿う方向に切断する。帯状のシートP1は、第1切断部81にて単票状のシートP2に切断される。単票状のシートP2は、第1切断部81から第2切断部82へ搬送される。
【0061】
第2切断部82は、単票状のシートP2を搬送方向、例えばY軸に沿う方向に切断する。詳しくは、第2切断部82は、単票状のシートP2において、X軸に沿う方向の両側の辺近傍を切断する。これにより、単票状のシートP2は、A4判やA3判などの所定の形状のシートP3と成る。シートP3は、斜め上方に搬送されてトレイ91に集積される。シートP3は、例えばコピー用紙などの代替品として適用可能である。
【0062】
第2切断部82にて、単票状のシートP2をシートP3に切断する際に、端材であるスリット片Sが生じる。スリット片Sは、略-Y方向へ搬送されてシュレッダーである細断部95に至る。細断部95は、スリット片Sを細断して細断片として、合流部17へ供給する。細断部95と合流部17との間には、スリット片Sの細断片を計量して合流部17へ供給する機構が設置されてもよい。
【0063】
図2に示すように、フード部41は、下方が広く上方が狭い形状を有する。X軸に沿う方向において、フード部41の下端の長さは、加熱部70の加熱ローラー71,72の長さより長い。そして、X軸に沿う方向において、フード部41の下方の両端は、一対の加熱ローラー71,72の両端よりも外側に張り出している。そのため、図示しないウェブWからの水蒸気Vが、フード部41に集まり易くなっている。なお、
図2および以降説明する
図3では、排気部42のうち、フード部41と接続される排気管48aの一部も図示している。
【0064】
図3に示すように、フード部41は、略角錐状であって、角錐の側面に相当する部位から成る。図示を省略するが、上述したように、フード部41における角錐の底面に相当する領域は開放されている。フード部41は樹脂や金属などで形成される。
【0065】
フード部41の上方の頂部には排気管48aが接続される。フード部41の内部と排気管48aの内部とは連通している。そのため、フード部41に集められる水蒸気Vを含む空気は、排気管48aの内部に流入する。図示を省略するが、フード部41はステーなどを介して上記フレームに支持される。
【0066】
図4、
図5、
図6に示すように、排気部42は、排気管48a、中継部43,45、廃粉捕集部44、ブロー部46、排気管48b1,48b2、およびファン部491,492を含む。フード部41から図示しない第1加湿部65に向かう水蒸気Vを含む空気が流れる経路において、排気管48a、中継部43、中継部45、排気管48b1,48b2がこの順番にて配置される。
【0067】
排気管48a,48b1,48b2は、中継部43,45およびファン部491,492を介して、フード部41の内部と第1加湿部65の内部とを連通させる。換言すれば、ファン部491,492、廃粉捕集部44、およびブロー部46は、排気管48a,48b1,48b2が連通させるフード部41の内部から第1加湿部65の内部までの上記経路に設置される。
【0068】
詳しくは、排気管48aは、フード部41の内部と中継部43の内部とを連通させる。廃粉捕集部44は、中継部43の内部にあって、中継部43と中継部45との境界に配置される。中継部43の内部と中継部45の内部とは、廃粉捕集部44を介して連通する。
【0069】
ブロー部46は、中継部45の内部に配置される。ブロー部46には、図示しない配管を介して、中継部45の外部から圧搾空気が供給される。
【0070】
排気管48b1,48b2は、中継部45の内部と、上述した第1加湿部65の内部とを各々連通させる。ファン部491は、排気管48b1にあって、上記経路の途中に設置される。ファン部492は、排気管48b2にあって、上記経路の途中に設置される。つまり、中継部45の内部から第1加湿部65の内部までの間で、排気管48b1と排気管48b2との2つの上記経路が並列に配置されている。なお、中継部45の内部と第1加湿部65の内部とを接続するのは、2つの排気管48b1,48b2に限定されず、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0071】
ファン部491,492は、排気管48b1,48b2、中継部45、廃粉捕集部44、中継部43、および排気管48aを介して、フード部41の内部の水蒸気Vを含む空気を吸引すると共に、上記空気を第1加湿部65の内部へ流入させる。ファン部491,492は、例えば電動式の吸引ファンである。
【0072】
ファン部491,492の稼働は、上述した制御部5によって制御される。制御部5は、ファン部491,492の運転および停止に加えて、ファン部491,492のファンの回転速度を変更する。これにより、フード部41の内部から吸引される空気の流速が変化する。
【0073】
ウェブWから発生した水蒸気Vは、フード部41にて集められて、上記経路を経て第1加湿部65の内部へ導入される。これにより、第1加湿部65にて多湿な空気が再利用されるため、第1加湿部65の加湿の効率を向上させることができる。また、シート製造装置1の外部へ放出される排気を低減することができる。
【0074】
図7に示すように、排気管48aは、中継部43の-Y方向の上方に接続される。中継部45は、中継部43の+Y方向の上方に接続される。排気管48b1,48b2は、中継部45の+X方向に接続される。ブロー部46は、中継部45の上方の面に配置される。なお、
図7では、フード部41から吸引される空気の流れを破線の矢印で示し、ブロー部46から噴射される圧搾空気の流れを白抜きの矢印で示している。
【0075】
フード部41の内部から吸引される水蒸気Vを含む空気は、排気管48aから中継部43に流入し、廃粉捕集部44を通過して中継部45に至る。そして、上記空気は、排気管48b1,48b2の二手に分かれて、図示しない第1加湿部65へ送り出される。
【0076】
廃粉捕集部44には、ファン部491,492によって吸引される上記空気が通過する。廃粉捕集部44は、略円柱状であって、円柱の高さ方向がZ軸に沿う。廃粉捕集部44では、円柱の側面および下方の底面に相当する部位が中継部43の内部に露出し、円柱の内側が中継部45の内部に連通している。
【0077】
廃粉捕集部44は、例えば乾式の粉塵フィルターであり、多数の微細な孔を有する。そのため、廃粉捕集部44において、円柱の側面および底面に相当する部位を上記空気が通過することにより、上記空気に含まれる塵埃が捕集され、水蒸気Vは空気と共に通過する。
【0078】
ここで、上記空気には、水蒸気Vの他、ウェブWの原料などに由来する粉塵や繊維などの塵埃が含まれる場合がある。従来、これらの塵埃は、水蒸気Vによって湿気を帯びているため、上記経路などに付着する可能性があった。特に、塵埃を含んだままファン部491,492や第1加湿部65の内部に上記空気が流入すると、ファン部491,492や第1加湿部65の稼働に支障をきたす場合があった。
【0079】
これに対して、廃粉捕集部44は、上記空気中の塵埃を捕集して、ファン部491,492や第1加湿部65の内部に流入する塵埃を削減する。これにより、ファン部491,492および第1加湿部65の稼働を安定化させることが可能となる。
【0080】
ブロー部46は、廃粉捕集部44の内側へ圧搾空気を噴射する。詳しくは、ブロー部46は、下方の先端部に、図示しない噴射ノズルを備える。上記噴射ノズルは、廃粉捕集部44の内側に対応して、下方向きに配置される。図示を省略するが、ブロー部46には、コンプレッサーまたは圧搾空気タンクが接続されると共に、圧搾空気の噴射と停止とを切り替える電磁弁が備わる。
【0081】
廃粉捕集部44において、ブロー部46から圧搾空気が噴射される方向は、フード部41の内部の吸引された空気が流れる方向とは異なる。つまり、廃粉捕集部44に対して、フード部41から吸引される空気は外側から内側へ流れ、圧搾空気は内側から外側へ流れる。
【0082】
これにより、廃粉捕集部44に捕集された塵埃は、圧搾空気によって除去され易くなる。つまり、廃粉捕集部44に捕集された塵埃は、上記空気が吸引される方向と同じ方向から圧搾空気を噴射させる場合よりも、除去することが容易となる。そのため、廃粉捕集部44における目詰まりの発生を抑えて、塵埃の捕集性能をより良好に保つことができる。なお、中継部43の内部には塵埃が溜まり易いことから、溜まった塵埃を取り除くための開閉自在な蓋などを設けてもよい。
【0083】
ブロー部46の稼働は、上述した制御部5によって制御される。制御部5は、ブロー部46の電磁弁を制御して、圧搾空気の噴射時期および噴射時間を調整する。制御部5は、ブロー部46による圧搾空気の噴射と、ファン部491,492の稼働とを関連付けて制御する。
【0084】
詳しくは、制御部5は、シート製造装置1にてシートP3を製造する通常稼働時には、圧搾空気を噴射させず、通常稼働時以外のタイミングで圧搾空気を噴射させる。具体的には、ブロー部46が圧搾空気を噴射する際のファン部491,492のファンの回転速度は、ウェブWが加熱部70を流動する際の通常稼働における上記回転速度よりも低いことが好ましい。
【0085】
これによって、廃粉捕集部44に噴射される圧縮空気の勢いが減衰され難くなり、廃粉捕集部44に捕集された塵埃がさらに除去され易くなる。また、上記回転速度を低くしつつも回転させることにより、廃粉捕集部44に捕集された塵埃のフード部41などへの逆流を抑えることができる。特に限定されないが、圧搾空気が噴射される際の上記回転速度は、通常稼働時の上記回転速度を100%とした場合に、10%以上20%以下とする。なお、圧搾空気の噴射は、ファン部491,492のファンの回転を停止させた状態で実施されてもよい。
【0086】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0087】
水蒸気Vを含む空気から塵埃を捕集することができる。詳しくは、フード部41の内部から吸引される空気は、廃粉捕集部44を通過する。そのため、ウェブWから生じる短繊維などの塵埃が廃粉捕集部44に捕集されて、上記空気中の塵埃が低減される。これにより、空気の経路における目詰まりなどの発生が抑制される。したがって、水蒸気Vを含む空気から塵埃を捕集するシート製造装置1および水蒸気回収機構40を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…シート製造装置、5…制御部、40…水蒸気回収機構、41…フード部、42…排気部、44…廃粉捕集部、46…ブロー部、65…加湿部としての第1加湿部、70…加熱部、491,492…ファン部、V…水蒸気、W…ウェブ。