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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160755
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/54 20210101AFI20241108BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M50/54
H01M10/04 Z
H01M10/058
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076058
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 功一
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028BB05
5H028CC05
5H028CC08
5H028HH05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ05
5H029DJ05
5H029HJ04
5H029HJ12
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043EA07
5H043EA32
5H043EA39
5H043LA02E
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】信頼性が好適に向上された蓄電デバイスを得ることができる技術を提供すること。
【解決手段】ここで開示される蓄電デバイスの製造方法の一態様では、電極体を用意する、用意工程(S1);正極集電箔積層部および負極集電箔積層部のうち少なくとも一方の電極集電箔積層部において、幅方向における該電極集電箔積層部のコア部が存在する側とは反対側の端部側から該コア部側にかけて押圧部材を屈曲点付近と当接するように順次ずらしながら、該電極集電箔積層部を集箔する、集箔工程(S2);および、上記集箔工程において集箔した上記電極集電箔積層部と、対応する極側の集電端子とを接合する、接合工程(S3);を包含する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、負極シートとが、セパレータシートを介して積層された電極体と、
前記電極体に接合された、前記正極シートおよび前記負極シートのそれぞれに対応する集電端子と、
を備えた蓄電デバイスの製造方法であって、以下の工程:
前記電極体を用意する、用意工程,ここで、前記電極体における所定の一の幅方向の中央部には、正極活物質層および負極活物質層が対向するコア部が存在しており、該幅方向の両端部のうち一方の端部には、前記正極活物質層が形成されていない正極活物質層非形成部分が前記負極シートからはみ出た状態で積層された正極集電箔積層部が存在し、かつ、該両端部のうちの他方の端部には、前記負極活物質層が形成されていない負極活物質層非形成部分が前記正極シートからはみ出た状態で積層された負極集電箔積層部が存在している;
前記正極集電箔積層部および前記負極集電箔積層部のうち少なくとも一方の電極集電箔積層部において、前記幅方向における該電極集電箔積層部の前記コア部が存在する側とは反対側の端部側から該コア部側にかけて押圧部材を屈曲点付近と当接するように順次ずらしながら、該電極集電箔積層部を集箔する、集箔工程;および
前記集箔工程において集箔した前記電極集電箔積層部と、対応する極側の前記集電端子とを接合する、接合工程;
を包含する、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記集箔工程において集箔する前記電極集電箔積層部の、前記幅方向における長さは、30mm以下である、請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記集箔工程において、少なくとも前記正極集電箔積層部を集箔する、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、集電箔に活物質を担持した部分と、該活物質を担持した部分から突出する該集電箔が露出した部分と、を有する電極を積層して構成した電極体について、該露出した集電箔の積層部に端子を溶接する端子溶接方法が開示されている。かかる端子溶接方法では、積層部と端子とを溶接する際に、集電箔に活物質を担持した部分が積層配置された部分を押圧して拘束した状態で、該積層部の被溶接部よりも、電極における活物質を担持した部分側を、積層方向の両側から押圧手段によって押圧して該積層部の該集電箔を集箔することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5751218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者検討によると、上述したような端子溶接方法では、集電箔を集箔する際に該集電箔と押圧手段との間に摺動が生じる可能性があり、これによって、該集電箔に歪みが生じる(負荷がかかる)おそれがあることがわかった。即ち、上述したような端子溶接方法は、信頼性の高い蓄電デバイスを得るという観点から、まだまだ改善の余地があることがわかった。
【0005】
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、信頼性が好適に向上された蓄電デバイスを得ることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を実現すべく、本開示は、正極シートと、負極シートとが、セパレータシートを介して積層された電極体と、上記電極体に接合された、上記正極シートおよび上記負極シートのそれぞれに対応する集電端子と、を備えた蓄電デバイスの製造方法を提供する。かかる蓄電デバイスの製造方法は、上記電極体を用意する、用意工程,ここで、上記電極体における所定の一の幅方向の中央部には、正極活物質層および負極活物質層が対向するコア部が存在しており、該幅方向の両端部のうち一方の端部には、上記正極活物質層が形成されていない正極活物質層非形成部分が前記負極シートからはみ出た状態で積層された正極集電箔積層部が存在し、かつ、該両端部のうちの他方の端部には、上記負極活物質層が形成されていない負極活物質層非形成部分が上記正極シートからはみ出た状態で積層された負極集電箔積層部が存在している;を包含する。かかる蓄電デバイスの製造方法は、好ましくは、上記正極集電箔積層部および上記負極集電箔積層部のうち少なくとも一方の電極集電箔積層部において、上記幅方向における該電極集電箔積層部の上記コア部が存在する側とは反対側の端部側から該コア部側にかけて屈曲点付近と当接するように押圧部材を順次ずらしながら、該電極集電箔積層部を集箔する、集箔工程;を包含する。かかる蓄電デバイスの製造方法は、好ましくは、上記集箔工程において集箔した上記電極集電箔積層部と、対応する極側の上記集電端子とを接合する、接合工程;を包含する。詳細については後述するが、かかる構成の蓄電デバイスの製造方法によると、集箔時の集電箔にかかる負荷を好適に低減することができるため、信頼性が好適に向上された蓄電デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る電池の内部構造を模式的に示す正面図である。
図2】一実施形態に係る巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
図3】一実施形態に係る電池の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図4】一実施形態に係る正極集電箔積層部における屈曲点を算出する方法について説明するためのグラフである。
図5】一実施形態に係る正極集電箔積層部における屈曲点について説明するための模式図である。
図6】一実施形態に係る正極集電箔積層部の集箔前を示す模式図である。
図7】一実施形態に係る正極集電箔積層部の集箔後を示す模式図である。
図8】一実施形態に係る巻回電極体と集電端子との接続部分を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される技術のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない蓄電デバイスの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の説明は、本開示を以下の形態に限定することを意図したものではない。なお、ここで開示される電池の製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよいし、その工程が必須なものとして説明されていなければ適宜削除することも可能である。また、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、工程の順序を入れ替えることもできる。
【0009】
本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味する。また、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。また、本明細書において「蓄電デバイス」とは、充電と放電とを行うことができるデバイスをいう。蓄電デバイスには、一次電池、二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池、ニッケル水素電池)等の電池と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)とが包含される。また、電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。以下、ここで開示される蓄電デバイスの一実施形態であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池100」ともいう)を例に挙げて説明する。
【0010】
<電池の全体構成>
先ず、本実施形態に係る電池の製造方法によって得られる電池100の構成について簡単に説明する。ここで、図1は、一実施形態に係る電池の内部構造を模式的に示す正面図である。図2は、一実施形態に係る巻回電極体を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、電池100は、扁平形状の電極体20(ここでは、巻回電極体)と、非水電解質80と、電極体20および非水電解質80とを収容する電池ケース(即ち外装容器)30とを備える。
【0011】
電極体20は、図2に示すように、長尺状の正極シート50と、長尺状の負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシートシート70を介して積層された積層体が、長手方向に巻回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電箔52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電箔62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電箔52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電箔62が露出した部分)は、電極体20の巻回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交する幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。また、巻回軸方向における中央部には、正極活物質層54および負極活物質層64が対向するコア部20aが存在している。正極活物質層非形成部分52aが複数積層された正極集電箔積層部52Aおよび負極活物質層非形成部分62aが複数積層された負極集電箔積層部62Aには、それぞれ正極集電端子42aおよび負極集電端子44aが接合されている。なお、図2中のWLは巻回軸を示している。
【0012】
正極シート50を構成する正極集電箔52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電箔を用いてよく、その例としては、アルミニウム箔やアルミニウム合金箔等が挙げられる。正極集電箔52の厚みは、特に限定されず、例えば3μm~35μmであり、好ましくは5μm~20μmである。
【0013】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。正極活物質の結晶構造は、特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。リチウム複合酸化物の例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。正極活物質として好ましくは、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物である。
【0014】
正極活物質の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、0.05μm~25μmであり、好ましくは1μm~20μmであり、より好ましくは3μm~15μmである。なお、正極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折散乱法により求めることができる。
【0015】
正極活物質層54中の正極活物質の含有量(すなわち、正極活物質層54の全質量に対する正極活物質の含有量)は、特に限定されないが、例えば80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
【0016】
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分(すなわち、任意成分)を含有していてもよい。当該任意成分の例としては、導電材、バインダ等が挙げられる。導電材としては、例えば、カーボンブラック(例、アセチレンブラック)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト等の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。導電材としてCNTを用いる場合、正極活物質層54は、CNTの分散剤をさらに含有していてもよい。
【0017】
正極活物質層54中の導電材の含有量は、特に制限はないが、0.1質量%~15質量%が好ましく、0.5質量%~13質量%がより好ましい。正極活物質層54中のバインダの含有量は、特に制限はないが、1質量%~15質量%が好ましく、1.5質量%~10質量%がより好ましい。また、正極活物質層54の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm~300μmであり、好ましくは20μm~200μmである。そして、正極シート50は、正極活物質層非形成部分52aと正極活物質層54との境界部に絶縁層(図示せず)を含有していてもよい。当該絶縁層は、例えば、セラミック粒子等を含有する。
【0018】
負極シート60を構成する負極集電箔62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電箔を用いてよく、その例としては、銅箔が挙げられる。負極集電箔62の厚みは、特に限定されず、例えば3μm~35μmであり、好ましくは5μm~20μmである。
【0019】
負極活物質層64は負極活物質を含有する。当該負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。
【0020】
負極活物質の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、0.1μm~50μmであり、好ましくは1μm~25μmであり、より好ましくは5μm~20μmである。なお、負極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折散乱法により求めることができる。
【0021】
負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。また、負極活物質層64中の負極活物質の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%~99質量%がより好ましい。負極活物質層64中のバインダの含有量は、0.1質量%~8質量%が好ましく、0.5質量%~3質量%がより好ましい。負極活物質層64中の増粘剤の含有量は、0.3質量%~3質量%が好ましく、0.5質量%~2質量%がより好ましい。そして、負極活物質層64の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm~300μmであり、好ましくは20μm~200μmである。
【0022】
セパレータシート70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から構成される多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータシート70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。セパレータシート70の厚みは特に限定されないが、例えば5μm~50μmであり、好ましくは10μm~30μmである。
【0023】
非水電解質80は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。なかでも、カーボネート類とエステル類とが好ましく、その具体例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩(好ましくはLiPF)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L~1.3mol/Lが好ましい。
【0025】
なお、非水電解質80は、本開示の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した成分以外の成分、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、オキサラト錯体等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;増粘剤;等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0026】
電池ケース30は、ケース本体32と、蓋体34とを有している。電池ケース30は、例えば金属製(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼等)である。良好な導電性、熱伝導性、および強度を有し、かつ軽量であることから、電池ケース30は、好ましくはアルミニウム製である。ケース本体32は、扁平直方体形状を有し、その面の一つ(図において上面)は、開口部となっている。蓋体34は、当該開口部の形状に適合する略長方形状を有している。蓋体34には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。また、蓋体には、非水電解質80を注入するための注液孔(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電端子42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電端子44aと電気的に接続されている。正極端子42や正極集電端子42aは、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等から構成されている。負極端子44や負極集電端子44aは、例えば銅や銅合金等から構成されている。
【0027】
<電池の製造方法>
続いて、本実施形態に係る電池の製造方法について説明する。ここで、図3は、一実施形態に係る電池の製造方法の各工程を示すフローチャートである。先ず、本実施形態に係る電池100の製造方法は、正極シート50と、負極シート60とが、セパレータシート70を介して積層された電極体20(ここでは、巻回電極体)と、電極体20に接合された、正極シート50および負極シート60のそれぞれに対応する集電端子(ここでは、正極集電端子42a,負極集電端子44a)と、を備えた電池の製造方法である。また、図3に示すように、本実施形態に係る電池100の製造方法は、電極体20を用意する、用意工程(ステップS1),ここで、電極体20における所定の一の幅方向(ここでは、図2のX方向に対応)の中央部には、正極活物質層54および負極活物質層64が対向するコア部20aが存在しており、該幅方向の両端部のうち一方の端部には、正極活物質層54が形成されていない正極活物質層非形成部分52aが負極シート60からはみ出た状態で積層された正極集電箔積層部52Aが存在し、かつ、該両端部のうちの他方の端部には、負極活物質層64が形成されていない負極活物質層非形成部分62aが正極シート50からはみ出た状態で積層された負極集電箔積層部62Aが存在している;を包含する。また、本実施形態に係る電池100の製造方法は、正極集電箔積層部52Aおよび負極集電箔積層部62Aのうち少なくとも一方の電極集電箔積層部において(ここでは、正極集電箔積層部52Aおよび負極集電箔積層部62Aにおいて)、上記幅方向における該電極集電箔積層部のコア部20aが存在する側とは反対側の端部側からコア部20a側にかけて押圧部材202を屈曲点P付近と当接するように順次ずらしながら、該電極集電箔積層部を集箔する、集箔工程(ステップS2)を包含する。そして、本実施形態に係る電池100の製造方法は、上記集箔工程において集箔した電極集電箔積層部と、対応する極側の集電端子とを接合する、接合工程(ステップS3);を包含する。
【0028】
上述したような構成の電池の製造方法によると、集箔工程において、電極集電箔が屈曲するポイント(即ち、屈曲点)を通過するような軌跡を描きながら該電極集電箔を集箔するため、該電極集電箔と押圧部材との間で摺動(換言すると、滑り)が生じにくくなる。これによって、電極集電箔に生じる歪みが好適に低減されるため、該電極集電箔の損傷(破断)を好適に防止することができる。即ち、ここで開示される電池の製造方法によると、信頼性が好適に向上された蓄電デバイス(例えば、電池)を得ることができる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0029】
<用意工程:ステップS1>
本工程では、上述したような構成の電極体20を用意する。具体的には、電極体20(ここでは、巻回電極体)を公知方法に従い作製する。例えば、正極シート50、負極シート60、および2枚のセパレータシートシート70を用意する。公知の巻回機を用いて、正極シート50と負極60シートとを、これらの間にセパレータシートシート70が介在するように積層しながら巻回する。得られた巻回体を、その側面方向からプレス処理することによって、扁平形状に加工し、図2に示すような電極体20を作製する。
【0030】
<集箔工程:ステップS2>
本工程では、正極集電箔積層部52Aおよび負極集電箔積層部62Aのうち少なくとも一方の電極集電箔積層部において(ここでは、正極集電箔積層部52Aおよび負極集電箔積層部62Aにおいて)、幅方向(図5のX方向に対応)における該電極集電箔積層部のコア部20aが存在する側とは反対側の端部R側からコア部20a側にかけて(ここでは、図5の白抜き矢印方向に向けて)押圧部材202を屈曲点P付近と当接するように順次ずらしながら、該電極集電箔積層部を集箔する。屈曲点Pは、幅方向における正極集電箔積層部52Aのコア部20aが存在する側とは反対側の端部側からコア部20a側にかけて押圧部材202を順次ずらしながら移動させた際に、正極集電箔積層部52Aを構成する各々の正極活物質層非形成部分52aが座屈する点ということができる。
【0031】
ここで、図4は、一実施形態に係る正極集電箔積層部における屈曲点を算出する方法について説明するためのグラフである。図5は、一実施形態に係る正極集電箔積層部における屈曲点について説明するための模式図である。図6は、一実施形態に係る正極集電箔積層部の集箔前を示す模式図である。図7は、一実施形態に係る正極集電箔積層部の集箔後を示す模式図である。なお、図4図7では、電極集電箔積層部のうち正極集電箔積層部52Aに焦点を当てて説明しているが、負極集電箔積層部62Aについても同様な方法によって集箔することができる。即ち、以下の説明における正極集電箔積層部および正極活物質層非形成部分を、それぞれ負極集電箔積層部および負極活物質層非形成部分に読み替えることができる。また、図5図7では、見易くするために、負極シート60およびセパレータシート70の記載を省略している。
【0032】
先ず、本工程では、図5に示すような集箔する各々の正極活物質層非形成部分52aにおける屈曲点Pを定める。ここで、図5中の距離l~lは、それぞれ正極集電箔積層部52Aの幅方向におけるコア部20a側の端部Sから屈曲点P1~P4までの距離を示している。また、距離sは、各正極活物質層非形成部分52a間の距離を示している。厚みtは、正極活物質層非形成部分52aの厚みを示している。かかる屈曲点Pを算出する方法の一例としては、例えば以下の方法が挙げられる。具体的には、先ず、距離lの値を定める。特に限定されるものではないが、かかる距離lは、正極集電箔積層部52A(詳しくは、正極集電箔積層部52Aを構成する正極活物質層非形成部分52a)の幅方向における長さQを100%としたとき、概ね40~80%の範囲内(例えば50~70%の範囲内)とすることができる。距離lの値は、集箔条件等によって適宜変更することが好ましい。続いて、次式:l=(l +s1/2,l={l +(2s+t)1/2,l={l +(3s+2t)1/2に基づいて距離l~lを算出する。l=[l +{(n-1)s+(n―2)t}1/2(ただし、nは2以上の整数)と表すことができる。このようにして、図4に示すようなグラフを取得する。ここで、図4に示すグラフの縦軸は、正極集電箔52(換言すると、正極活物質層非形成部分52a)の枚数を示しており、横軸は、正極集電箔積層部52Aの幅方向Xにおける端部Sから屈曲点Pまでの距離を示している。また、本実施形態では、正極集電箔積層部52Aを構成する正極活物質層非形成部分52aのうちの真ん中の正極活物質層非形成部分52aについては屈曲点が存在しないため、正極活物質層非形成部分52aよりも上方側に存在する正極活物質層非形成部分52aを順に1枚目,2枚目,3枚目,4枚目としている。そして、各々の正極活物質層非形成部分52aにおける屈曲点Pを順にP1,P2,P3,P4としている。正極活物質層非形成部分52aの下方側に存在する各々の正極活物質層非形成部分52aにおける屈曲点P11,P12,P13,P14は、それぞれP1,P2,P3,P4に対応させることができる。以上のようにして、正極集電箔積層部52Aを構成する正極活物質層非形成部分52aにおける各々の屈曲点Pを求めることができる。なお、負極集電箔積層部62Aにおける屈曲点についても同様な方法によって求めることができる。ただし、屈曲点Pの算出方法は、上述した方法に限られるものではない。屈曲点Pは、予備試験等を行うことによって定めることもできる。
【0033】
続いて、図6に示すように、正極集電箔積層部52Aにおいて、上述のようにして定められた屈曲点P付近と当接するように、幅方向における正極集電箔積層部52Aのコア部20aが存在する側とは反対側の端部R側からコア部20a側にかけて、押圧部材202を順次ずらしながら移動させる。このようにして、図7に示すように、正極集電箔積層部52Aを集箔することができる。かかる集箔工程によると、屈曲点Pを通過するような軌跡を描きながら各々の正極活物質層非形成部分52aを集箔するため、正極活物質層非形成部分52aと押圧部材202との間で摺動が生じにくくなる。これによって、正極活物質層非形成部分52aに生じる歪みが好適に低減されるため、正極活物質層非形成部分52aの損傷を好適に防止することができる。なお、「屈曲点P付近」とは、集箔工程において集箔する正極集電箔積層部52A(詳しくは、正極集電箔積層部52Aを構成する正極活物質層非形成部分52a)の幅方向における長さQを100%としたとき、屈曲点Pの前後方向(即ち、幅方向)において5%以下の範囲内であることが好ましく、3%以下、1%以下であることがより好ましく、0%(即ち、屈曲点P上)であることが特に好ましい。なお、負極集電箔積層部62Aについても同様である。
【0034】
次に、本実施形態に係る集箔工程において用いられる箔押さえ可動部200について説明する。図6に示すように、本実施形態では、押圧部材202はY方向に2つ存在している。箔押さえ可動部200は、図示しない制御部によって制御されている。また、かかる制御部には、上述したような方法等により算出された屈曲点Pに関する情報が記憶されている。押圧部材202(箔押さえということもできる)は、正極集電箔積層部52Aを構成する各々の正極活物質層非形成部分52aを集箔するための部材である。押圧部材202は、直動するシリンダ(図示せず)にばね204を介して接続されている。なお、押圧部材202の押圧強度は、例えば、従来公知の押圧強度に準じて設定することができる。押圧部材202は、図6中のX方向において動作可能なガイド(リニアモーションガイド:LMガイドともいう)208上に存在している。また、ガイド208が備える箱型のユニット206には、X方向に動作可能なカムフロア210が存在している。カムフロア210は、カム溝212に沿って移動可能に構成されている。図6および図7に示すように、押圧部材202が集箔位置近傍に差し掛かると、カムフロア210がカム溝212に沿って移動し、これに連動して、押圧部材202は正極集電箔積層部52Aを構成する各々の正極活物質層非形成部分52aが有する屈曲点Pと当接するように移動する。押圧部材202の移動は、シリンダを駆使して実施される。このようにして、予め定められた奇跡を描きながら、正極集電箔積層部52Aを集箔することができる。なお、負極集電箔積層部62Aについても同様な方法によって集箔することができる。
【0035】
図5において、集箔工程において集箔する正極集電箔積層部52A(詳しくは、正極集電箔積層部52Aを構成する正極活物質層非形成部分52a)の、幅方向(ここでは、図5のX方向)における長さが小さい程、正極集電箔積層部52Aと押圧部材202との間の摺動によって箔が破断し易いため、ここで開示される技術を適用する対象として好適であるということができる。特に限定されるものではないが、かかる観点から、集箔工程において集箔する正極集電箔積層部52Aの幅方向における長さQは、30mm以下であることが好ましくは、25mm以下、20mm以下であることがより好ましい。また、かかる長さQの下限は、例えば5mm以上であり、10mm以上であってもよい。なお、負極集電箔積層部62Aについても同様である。
【0036】
ここで、電極体20(ここでは、巻回電極体)の巻回数は、ここで開示される技術の効果が得られる限りにおいて、特に限定されない。一方、例えば電極体20の巻回数が多い程、電極体20の最外面近傍における電極集電箔において、押圧部材202との間の摺動によって箔が破断し易いため、ここで開示される技術を適用する対象として好適であるということができる。特に限定されるものではないが、かかる観点から、電極体20の巻回数は、10以上が好ましく、20以上、30以上、40以上であることがより好ましい。また、電極体20の積層数の積層数は、例えば60以下であり、50以下であってもよい。なお、電極体が積層電極体の場合は、上記説明における「巻回数」を「積層数」に読み替え、かつ、各数値を2倍した数値に読み替えるものとする。
【0037】
正極集電箔積層部52Aを構成する正極集電箔52は、一般的にアルミニウム箔やアルミニウム合金箔等の剛性の低い(換言すると、柔らかい)金属箔から構成されているため、箔が破断し易い。即ち、本実施形態のように、集箔工程において、少なくとも正極集電箔積層部52Aを集箔する態様は、ここで開示される技術を適用する対象として好適であるということができる。
<接合工程:ステップS3>
【0038】
続いて、集箔工程において集箔した電極集電箔積層部(ここでは、正極集電箔積層部52Aおよび負極集電箔積層部62A)に対して、圧接、抵抗溶接、超音波溶接等によって正極集電端子42aおよび負極集電端子44aをそれぞれ取り付ける(図8を参照)。例えば、集箔部26と集電端子(正極集電端子42a,負極集電端子52a)とを超音波溶接する場合には、図示しない一対の押圧治具の一方にホーンを内蔵し、他方の押圧治具をアンビル(受け治具)とすることが好ましい。これによって、集箔部26を押圧成形しながら集電端子を接続することができる。なお、ここでは、電池ケース30の蓋体34に、正極端子42、負極端子44、正極集電端子42a、および負極集電端子44aが取り付けられているものとする。これによって、電極体20が電池ケース30の蓋体34に接続される。そして、電極体20を、ケース本体32の開口部から、ケース本体32の内部に挿入する。その後、ケース本体32と蓋体34をレーザ溶接等によって封止する。
【0039】
次に、公知方法に従い、非水電解質80を用意する。電池ケース30の蓋体34の注液孔から、非水電解質80を電池ケース30の内部に注液し、注液孔を封止する。このようにして、電池100を得ることができる。
【0040】
電池100は、各種用途に利用可能である。具体的な用途としては、パソコン、携帯電子機器、携帯端末等のポータブル電源;電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源;小型電力貯蔵装置の蓄電池などが挙げられ、なかでも、車両駆動用電源が好ましい。リチウムイオン二次電池200は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0041】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、正極集電箔積層部52Aおよび負極集電箔積層部62Aの両方に対してここで開示される技術を適用しているが、これに限定されない。他の実施形態では、正極集電箔積層部および負極集電箔積層部のうち一方のみに対して、ここで開示される技術を適用してもよい。
【0043】
例えば、上記実施形態では、電極体20を巻回電極体としているが、これに限定されない。他の実施形態では、電極体が、正極シートと、負極シートとが、セパレータシートを介して積層された積層電極体であってもよい。
【0044】
例えば、上記実施形態では、扁平形状の電極体20を備える角形の電池100について説明した。しかしながら、電池の形状は、例えば円筒形等の他の形状であってもよい。
【0045】
以上、本開示の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0046】
20 電極体
20a コア部
26 集箔部
30 電池ケース
32 ケース本体
34 蓋体
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電端子
44 負極端子
44a 負極集電端子
50 正極シート(正極)
52 正極集電箔
52a 正極活物質層非形成部分
52A 正極集電箔積層部
54 正極活物質層
60 負極シート(正極)
62 負極集電箔
62a 負極活物質層非形成部分
62A 負極集電箔積層部
64 負極活物質層
70 セパレータシート
80 非水電解質
100 リチウムイオン二次電池
200 箔押さえ可動部
202 押圧部材(箔押さえ)
204 ばね
206 ユニット
208 ガイド
210 カムフロア
212 カム溝
P 屈曲点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8