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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160756
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20241108BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 372
G03G9/097 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076059
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上倉 健太
(72)【発明者】
【氏名】津田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】石井 亨
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500AA10
2H500CA06
2H500CA36
2H500EA13C
2H500EA36B
2H500EA40B
2H500EA40C
2H500EA41B
2H500EA42D
(57)【要約】
【課題】画像が長時間摺擦された場合にも画像の滑り性を維持することができ、画像の欠落を抑制できるトナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤と、を有するトナーであって、該外添剤が、脂肪酸金属塩の粒子を含み、該トナーがフマル酸を含有し、該トナー中の該フマル酸の含有量をa(mol/g)とし、該トナー中の該脂肪酸金属塩の粒子の含有量をb(mol/g)としたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とするトナー。
0.50≦a/b≦70.00 (1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤と、を有するトナーであって、
該外添剤が、脂肪酸金属塩の粒子を含み、
該トナーがフマル酸を含有し、
該トナー中の該フマル酸の含有量をa(mol/g)とし、
該トナー中の該脂肪酸金属塩の粒子の含有量をb(mol/g)としたとき、
下記式(1)を満たすことを特徴とするトナー。
0.50≦a/b≦70.00 (1)
【請求項2】
下記式(2)を満たす、請求項1に記載のトナー。
1.20≦a/b≦70.00 (2)
【請求項3】
下記式(3)を満たす、請求項2に記載のトナー。
1.50≦a/b≦70.00 (3)
【請求項4】
前記トナー中の前記フマル酸の含有量a(mol/g)が、8.60×10-7~1.05×10-5mol/gである、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記トナー中の前記脂肪酸金属塩の粒子の含有量b(mol/g)が、1.55×10-7~7.90×10-6mol/gである、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記脂肪酸金属塩が、炭素数12~22の飽和脂肪酸の金属塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸の金属塩である、請求項6に記載のトナー。
【請求項8】
前記脂肪酸金属塩が、亜鉛の塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項9】
前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸亜鉛である、請求項8に記載のトナー。
【請求項10】
前記トナー粒子が、離型剤を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項11】
前記離型剤の融点が、70~120℃である、請求項10に記載のトナー。
【請求項12】
前記離型剤の融点が、80~120℃である、請求項11に記載のトナー。
【請求項13】
前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項14】
前記トナー粒子が、離型剤を含有し、
前記ポリエステル樹脂の溶解度パラメータをSPp((J/cm1/2)とし、該離型剤の溶解度パラメータをSPw((J/cm1/2)として、SPpとSPwとの差をΔSPpwとしたとき、
該ΔSPpwの2乗と、該離型剤の分子量との積が、10000.00(J/cm)以上である、請求項13に記載のトナー。
【請求項15】
前記脂肪酸金属塩の溶解度パラメータをSPf((J/cm1/2)とし、前記離型剤の溶解度パラメータをSPw((J/cm1/2)として、SPfとSPwとの
差をΔSPfwとしたとき、
該ΔSPfwが0.20~1.60である、請求項10に記載のトナー。
【請求項16】
前記結着樹脂のピーク分子量(Mp)が5000~10000である、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法、静電記録法及びトナージェット方式記録法を利用した記録方法に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真による画像形成が利用される分野は、プリンターや複写機から商業印刷機にいたるまで多岐にわたってきている。それに伴い、電子写真によって得られた画像の用途も多様化してきている。
その中で、電子写真画像の用途は商品の外装等にも拡大しており、物流において積層や運搬の過程で画像がこすられることによって画像の欠落が起こる課題が生じている。
このような画像の欠落に対して、画像表面の強度を上げる対策や、画像表面の滑り性を向上させる対策が行われている。
【0003】
特許文献1には、単量体としてフマル酸を用いて合成した非晶性ポリエステル樹脂、及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子と、脂肪酸金属塩粒子とを含有するトナーが開示されている。
一方、特許文献2には、トナーの低温定着性、耐熱保存性、帯電安定性(帯電立ち上がり性)、耐汚染性を改良し、機内へのトナー飛散や地汚れの発生を抑制することを目的として、トナー中のカルボン酸基を有するモノマーの含有量を規定したトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-052627号公報
【特許文献2】特開2016-173396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載のトナーを用いて形成した画像は、脂肪酸金属塩粒子の滑剤作用によって、表面の滑り性に優れていた。しかしながら、特許文献1に記載のトナーを用いて形成した画像表面を長時間摺擦した場合には、徐々に画像の滑り性が低下することが明らかになった。その結果として、画像強度が低下するという課題があり、改善が必要であることを見出した。
また、特許文献2のトナーは画像表面の滑り性を向上させる効果が無かった。
上述のように、従来の検討では、長時間摺擦された場合に画像表面の滑り性を維持でき、画像の欠落を抑制できるトナーは得られておらず、改善が必要であることを見出した。
【0006】
本開示は、上記課題を解決し、画像が長時間摺擦された場合にも、画像の滑り性を維持することができ、画像の欠落を抑制できるトナー、すなわち画像の耐摺擦性が高いトナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
結着樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤と、を有するトナーであって、
該外添剤が、脂肪酸金属塩の粒子を含み、
該トナーがフマル酸を含有し、
該トナー中の該フマル酸の含有量をa(mol/g)とし、
該トナー中の該脂肪酸金属塩の粒子の含有量をb(mol/g)としたとき、
下記式(1)を満たすトナーに関する。
0.50≦a/b≦70.00 (1)
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、画像が長時間摺擦された場合にも、画像の滑り性を維持することができ、画像の欠落を抑制できるトナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中の重合性単量体が重合した主鎖中の、炭素-炭素結合1区間を1ユニットとする。重合性単量体とは下記式(C)で表すことができる。
【化1】
【0010】
式(C)中、Rは水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、Rは任意の置換基を表す。
【0011】
本開示は、
結着樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤と、を有するトナーであって、
該外添剤が、脂肪酸金属塩の粒子を含み、
該トナーがフマル酸を含有し、
該トナー中の該フマル酸の含有量をa(mol/g)とし、
該トナー中の該脂肪酸金属塩の粒子の含有量をb(mol/g)としたとき、
下記式(1)を満たすトナーに関する。
0.50≦a/b≦70.00 (1)
【0012】
本開示のトナーにおいて、画像が長時間摺擦された場合にも画像の滑り性を維持できる要因について、本発明者らは以下のように推測している。
外添剤として脂肪酸金属塩の粒子を有するトナーを用いて得られた画像を長時間摺擦した場合に画像の滑り性が低下する一因は、画像表面に存在する脂肪酸金属塩の粒子が摺擦によって脱離することにあると考えられる。すなわち、画像形成後の画像は、滑剤として働く脂肪酸金属塩の粒子を画像表面に有するため、画像の滑り性が高く、画像の欠落を抑制できる。一方で、画像が長時間摺擦されると、滑剤として働く脂肪酸金属塩の粒子が脱離してしまい、画像の滑り性が低下する。その結果、画像の強度が低下し、画像の欠落が生じる。
よって、本発明者らは、本開示の課題を解決するためには、画像からの脂肪酸金属塩の粒子の脱離を抑制することが必要であると考えた。
【0013】
摺擦によって脂肪酸金属塩の粒子が脱離してしまう理由は、脂肪酸金属塩が低分子化合物であり、分子の運動性が高いためであると考えた。よって、脂肪酸金属塩の粒子が脱離
することを抑制するためには、脂肪酸金属塩同士を架橋して、見かけの分子量を上げることが有効と考えた。
本発明者らは、上記考察のもとに鋭意検討の結果、トナー中にフマル酸を含有させ、トナー中のフマル酸の含有量と、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量とのモル比を制御することで、画像の摺擦による脂肪酸金属塩の粒子の脱離が抑制可能となり、摺擦後の画像の欠落を抑制可能であることを見出した。
これは、画像形成過程中の定着工程において、脂肪酸金属塩分子中の金属原子間をフマル酸分子が架橋することで、脂肪酸金属塩分子の見かけの分子量が向上したためであると考えられる。フマル酸は、二重結合を有し、トランス型の分子構造を有するため、直線状の構造を取りやすい。さらに、フマル酸の分子サイズは、脂肪酸金属塩の金属原子間距離に近い。これらによって、フマル酸は、脂肪酸金属塩の金属原子間を架橋するのに適している。そのため、フマル酸は、他のジカルボン酸と比較して脂肪酸金属塩分子間の架橋性に優れると考えられる。
【0014】
以下に、本開示を詳細に説明する。
トナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤と、を有する。該外添剤が、脂肪酸金属塩の粒子を含む。トナーがフマル酸を含有する。トナーは、トナー中のフマル酸の含有量をa(mol/g)とし、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量をb(mol/g)としたとき、下記式(1)を満たす。
0.50≦a/b≦70.00 (1)
【0015】
上記式(1)中のa/bは、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量に対するトナー中のフマル酸の含有量のモル比を表している。ここで、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量b(mol/g)は、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量(g)を、当該脂肪酸金属塩の分子量で除してトナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量(モル数)を得て、さらに当該含有量(モル数)をトナー質量(g)を基準とした値に換算することで得られる。bの具体的な測定方法は後述する。
上記式(1)を満たすことで、脂肪酸金属塩の個数に対するフマル酸のトナー中での個数比が最適となる。その結果、脂肪酸金属塩分子間の架橋度が最適となり、画像の耐摺擦性が向上する。また、定着工程における脂肪酸金属塩分子間の架橋速度が適切になるため、定着温度を上昇させることもない。
a/bが0.50未満の場合、脂肪酸金属塩分子間の架橋度が不十分となり、画像の欠落抑制の効果が劣る場合がある。一方で、a/bが70.00を超える場合、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量に対して、フマル酸の含有量が多すぎるため、定着工程の初期において架橋が進行してしまう場合がある。そのため、定着温度が上昇する場合があると考えられる。a/bは、後述の方法によってa及びbを測定し、得られた値から算出する。
a/bは、1.20~70.00であることがより好ましく、1.50~70.00であることがさらに好ましく、1.50~60.00であることがさらにより好ましく、2.00~50.00であることが特に好ましく、2.00~30.00であることが殊更好ましい。
【0016】
トナー中のフマル酸の含有量a(mol/g)は、8.60×10-7~1.25×10-5mol/gであることが好ましく、8.60×10-7~1.05×10-5mol/gであることがより好ましい。上記条件を満たすことで、トナー中のフマル酸の含有量がより適切となる。フマル酸は帯電性及び吸湿性を有する。したがって、フマル酸の含有量を適切にすることで、高温高湿環境下での帯電量と帯電立ち上がりを両立可能となり、高温高湿環境下における画像濃度の低下を抑制することができる。トナー中のフマル酸の含有量aの測定方法は後述する。後述の方法によってaが測定されることは、トナー中のフマル酸が遊離状態で存在することを示している。また、トナー中のフマル酸の含有量
aの値は、トナー製造時のフマル酸の添加量を変更することによって、調整することができる。
【0017】
トナーにフマル酸を含有させる手段は特に問わず、公知の手段を用いることができる。例えば、トナーに含まれるトナー粒子に、フマル酸を含有させることが挙げられる。すなわち、トナー粒子は、フマル酸を含有することが好ましい。
具体的には、粉砕法によりトナー粒子を製造する場合には、原料の樹脂に予めフマル酸を含有させておく手段や、原料を溶融混練する際にフマル酸を添加してトナー粒子に含有させる手段を用いることができる。
懸濁重合法や乳化凝集法などの湿式製造法でトナー粒子を製造する場合には、原料にフマル酸を含有させる手段や、製造過程において水系媒体を介してフマル酸を添加する手段などを用いることができる。
また、トナー粒子に対して、公知の外添手段を用いて、フマル酸を外添する手段を用いることもできる。
【0018】
トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量b(mol/g)は1.55×10-7~7.90×10-6mol/gであることがより好ましい。上記条件を満たすことで、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量が適切となる。そのため、画像の耐摺擦性をさらに高めることが可能となる。また、脂肪酸金属塩は滑剤として働く。そのため、脂肪酸金属塩粒子の含有量を適切にすることで、ブレードクリーニング方式を採用したシステムにおいて、クリーニングブレードと感光体との滑り性を改善することができる。その結果、トナーから感光体へ移行した外添剤のクリーニング性を向上することができる。トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量bの測定方法は後述する。また、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量bの値は、トナー製造時の脂肪酸金属塩の粒子の添加量を変更することによって、調整することができる。
【0019】
続いて、以下に本開示のトナーに用いることができる材料について詳細に述べる。
【0020】
<脂肪酸金属塩>
トナーは、外添剤を有する。また、外添剤は、脂肪酸金属塩の粒子を含む。
脂肪酸金属塩としては、特段の制限なく公知の脂肪酸金属塩を用いることができる。
脂肪酸金属塩としては、2価以上の多価金属の塩が好ましく、亜鉛、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも一の金属の塩であることがより好ましい。中でも、フマル酸との架橋性の観点から、亜鉛の塩であることが更に好ましい。亜鉛の塩であると、フマル酸との架橋性が高く、耐摺擦性がより向上しやすくなる。
【0021】
脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、特に限定されないが、不飽和脂肪酸であってもよく、飽和脂肪酸であることが好ましい。
脂肪酸は、直鎖であってもよく、分岐を有していてもよいが、直鎖であることが好ましい。脂肪酸は、炭素数10~24であることが好ましく、12~22であることがより好ましい。脂肪酸の炭素数が上記範囲であると、フマル酸と、脂肪酸金属塩の金属原子との架橋構造形成を阻害せず、画像の耐摺擦性をさらに向上できる。また、脂肪酸金属塩の金属原子間の架橋によって画像の耐熱性が向上するため、画像が高温下に置かれた場合においても画像の耐摺擦性を維持できる。さらに、滑り性に優れるため、外添剤のクリーニング性もより向上する。
脂肪酸としては、オクチル酸、ノニル酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びモンタン酸からなる群から選択される少なくとも一が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びベヘン酸からなる群から選択される少なくとも一であることが好ましく、ステ
アリン酸であることがさらに好ましい。
【0022】
脂肪酸金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、リシノール酸バリウム等が挙げられる。中でもステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸バリウムが好ましく。ステアリン酸亜鉛がより好ましい。
【0023】
脂肪酸金属塩の溶解度パラメータSPf((J/cm1/2)は特に限定されないが、18.00~21.00((J/cm1/2)が好ましく、18.50~20.50((J/cm1/2)がより好ましく、18.50~19.50((J/cm1/2)がさらに好ましい。SPfが上記範囲であると、後述するΔSPfwを好ましい範囲に制御しやすくなる。
【0024】
脂肪酸金属塩の粒子の体積基準のメジアン径は、0.15~2.0μmが好ましく、0.3~1.5μmがより好ましく、0.3~1.0μmがさらに好ましい。体積基準のメジアン径が上記範囲であると、脂肪酸金属塩の粒子の含有量が少量でも、優れた耐摺擦性およびクリーニング性を達成することが可能となる。
【0025】
<結着樹脂>
トナーは、トナー粒子を有する。また、トナー粒子は、結着樹脂を含有する。
結着樹脂としては、特段の制限なく公知の結着樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。結着樹脂はポリエステル樹脂を含むことが好ましく、フマル酸をトナー中に保持しやすくなることから、フマル酸に対応するモノマーユニットを有するポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。
ポリエステル樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂、及び結晶性ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一を用いることが好ましい。
【0026】
上記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸などの中から好適なものを選択して組み合わせ、例えば、エステル交換法又は重縮合法など、公知の方法を用いて合成することで得られる。
多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物であって、好ましく使用される。
【0027】
ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、スペリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレン二酢酸、o-フェニレン二酢酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸などを挙げることができる。
上述の通り、ジカルボン酸としてフマル酸を含むことが好ましく、フマル酸と芳香族ジカルボン酸を併用することがより好ましい。
【0028】
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレント
リカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸、イタコン酸、グルタコン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、及びn-オクテニルコハク酸などが挙げられる。
多価カルボン酸は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリオールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、好ましく使用される。
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、ポリテトラメチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、及び上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物である。
【0030】
三価以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン、ソルビトール、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、及び上記三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリオールは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPp((J/cm1/2)は特に限定されないが、19.00~22.50(J/cm1/2であってよく、20.00~21.30(J/cm1/2であってよい。また、20.50~21.30(J/cm1/2であることが好ましく、21.10~21.30(J/cm1/2であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の溶解度パラメータが上記範囲であると、後述のΔSPの2乗と離型剤の分子量との積の値を後述の範囲に調整しやすくなる。
溶解度パラメータは、SP値ともいい、ある物質がある物質にどのくらい溶解するかを示す溶解性や親和性の指標として用いられる数値である。
結着樹脂の種類は、NMRなど公知の方法によって測定することができる。
【0031】
トナー粒子100質量部に対する結着樹脂の含有量は特に限定されないが、50.0~98.0質量部であってよく、60.0~95.0質量部であってよい。
【0032】
結着樹脂のピーク分子量(Mp)は特に限定されないが、5000~10000であることが好ましく、5000~8000であることがより好ましい。結着樹脂のピーク分子量が上記範囲であると、定着時のフマル酸および脂肪酸金属塩の運動性が高まるため、フマル酸が脂肪酸金属塩分子間をより効率的に架橋することが可能となる。よって、画像の耐摺擦性をさらに高めることが可能となる。
結着樹脂のピーク分子量は、例えば結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、反応時間を制御する等の公知の手法で制御可能である。
【0033】
<離型剤>
トナー粒子は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤を含有することで、画像表面に離型剤層が形成されるため、画像表面の強度が向上する。
離型剤としては、特段の制限なく公知のワックスやシリコーンオイル等を用いることができる。中でも、ワックスを用いることが好ましい。
ワックスとしては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系炭化水素ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルのような1価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、1価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルに代表される1官能エステルワックス;
エチレングリコールジステアレート、セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートのような2価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、2価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルに代表される2官能エステルワックス;
グリセリントリベヘネートのような3価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、3価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルに代表される3官能エステルワックス;
ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートのような4価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、4価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルに代表される4官能エステルワックス;
ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートのような6価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルに代表される6官能エステルワックス;
ポリグリセリンベヘネートのような多価アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、多価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;
カルナバワックス、ライスワックスのような天然エステルワックス;
等に代表されるエステルワックス、
ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系炭化水素ワックス及びその誘導体、並びにカルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びそれらの誘導体が挙げられる。
誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。
また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸又はその酸アミド、エステル、ケトン;硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0034】
中でも、炭化水素ワックス及びエステルワックスからなる群から選択される少なくとも一が好ましく、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス、4官能エステルワックス及び6官能エステルワックスからなる群から選択される少なくとも一がさらに好ましい。これらのワックスは、結晶性が高いために画像表面に均一な離型剤層を形成しやすく、画像表面の強度を高める効果に優れる。
【0035】
離型剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、1.0~30.0質量部であることが好ましく、5.0~20.0質量部であることがより好ましい。
離型剤の融点は、60~120℃であることが好ましく、70~120℃であることがより好ましく、80~120℃であることがさらに好ましい。融点が上記範囲である離型剤を用いることにより、画像の耐熱性がさらに向上する。
離型剤の溶解度パラメータSPw((J/cm1/2)は、特に限定されないが、16.50~19.00(J/cm1/2であってよく、17.00~18.50(
J/cm1/2であってよい。SPwが上記範囲であると、後述のΔSPpwの2乗と離型剤の分子量との積の値を上記範囲に調整しやすくなる。離型剤の分子量は、特に限定されないが、500~1800であってよく、700~1500であることが好ましい。離型剤の分子量が上記範囲であると、後述のΔSPpwの2乗と離型剤の分子量との積の値を後述の範囲に調整しやすくなる。
【0036】
<ポリエステル樹脂の溶解度パラメータと離型剤の溶解度パラメータ及び分子量の関係>
トナー粒子に含有される結着樹脂がポリエステル樹脂を含有し、トナー粒子が離型剤を含有するトナーにおいて、ポリエステル樹脂の溶解度パラメータをSPp((J/cm1/2)とし、離型剤の溶解度パラメータをSPw((J/cm1/2)として、SPpとSPwとの差をΔSPpwとしたとき、ΔSPpwの2乗と離型剤の分子量との積が、10000.00(J/cm)以上であることが好ましく、11000.00(J/cm)以上であることがより好ましく、12000.00(J/cm)以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されないが、20000.00(J/cm)以下であってよく、15000.00以下(J/cm)であってよい。例えば、好ましくは10000.00~20000.00(J/cm)、11000.00~15000.00(J/cm)、12000.00~15000.00(J/cm)、が挙げられる。
ΔSPpwの2乗と離型剤の分子量との積の値は、樹脂と離型剤の分離のしやすさを表す。10000以上であると、定着工程において速やかに離型剤が分離し、画像表面に強固な離型剤層を形成する。その結果、定着画像の表面が保護される。よって、脂肪酸金属塩による滑り性向上と併せて、定着画像の強度をより高めることができ、画像上をテーピングした際の画像の耐テーピング性や、画像の耐摺擦性が向上する。
溶解度パラメータの算出方法及び離型剤の分子量の算出方法については後述する。
【0037】
<脂肪酸金属塩の溶解度パラメータと離型剤の溶解度パラメータとの関係>
トナー粒子が離型剤を含有するトナーにおいて、脂肪酸金属塩の溶解度パラメータをSPf((J/cm1/2)とし、離型剤の溶解度パラメータをSPw((J/cm1/2)として、SPfとSPwとの差をΔSPfwとしたとき、ΔSPfwは0.00~3.00((J/cm1/2)であることが好ましく、0.20~1.60((J/cm1/2)であることがより好ましく、0.30~0.80((J/cm1/2)であることがさらに好ましい。
ΔSPfwが上記範囲であると、定着の画像表面における脂肪酸金属塩の粒子の分散性を高めることが可能となり、画像表面の均一性が向上する。そのため、摺擦後においても、よりグロスの高い画像を得ることが可能となる。
【0038】
<溶解度パラメータ(SP値)の算出方法>
脂肪酸金属塩の溶解度パラメータSPf、ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPp及び離型剤の溶解度パラメータSPwは、Fedorsによって提案された算出方法に従い、以下のようにして求める。
脂肪酸金属塩のSP値(SPf)(J/cm1/2及び離型剤のSP値(SPw)(J/cm1/2を計算する場合、脂肪酸金属塩および離型剤の分子構造中の原子又は原子団に対して、「Polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)」に記載の表から蒸発エネルギー(Δei)(J/mol)及びモル体積(Δvi)(cm/mol)を求め、下記式により算出する。
(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
【0039】
ポリエステル樹脂のSP値(SPp)(J/cm1/2を計算する場合、まず、ポリエステル樹脂を構成する繰り返しユニットのSP値を以下のようにして求める。ここで、ポリエステル樹脂を構成する繰り返しユニットとは、該ポリエステル樹脂の主鎖をエス
テル結合で区切った部分の分子構造を意味する。
例えば、繰り返しユニットのSP値(σm)(J/cm1/2を計算する場合、その繰り返しユニットの分子構造中の原子又は原子団に対して、「Polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)」に記載の表から蒸発エネルギー(Δei)(J/mol)及びモル体積(Δvi)(cm/mol)を求め、下記式より算出する。
σm=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
ポリエステル樹脂のSP値(SPp)は、樹脂を構成する繰り返しユニットの蒸発エネルギー(Δei)及びモル体積(Δvi)を繰り返しユニット毎に求める。そして各繰り返しユニットの樹脂中におけるモル比(j)との積をそれぞれ算出し、各繰り返しユニットの蒸発エネルギーの総和をモル体積の総和で割ることによって求め、下記式より算出する。
σp={(Σj×ΣΔei)/(Σj×ΣΔvi)}1/2
【0040】
例えば、ポリエステル樹脂がX及びYの2種類の繰り返しユニットより構成されるものと仮定した時、各繰り返しユニットの組成比をWx及びWy(質量%)、分子量をMx及びMy、蒸発エネルギーをΔei(X)、Δei(Y)、及び、モル体積をΔvi(X)、Δvi(Y)とすると、各繰り返しユニットのモル比(j)はそれぞれWx/Mx及びWy/Myとなり、この樹脂の溶解度パラメータ(SPp)は下記式のようになる。
SPp=[{(Wx/Mx)×Δei(X)+Wy/My×Δei(Y)}/{(Wx/Mx)×Δvi(X)+Wy/My×Δvi(Y)}]1/2
なお、複数種のポリエステル樹脂が混合されている場合は、その混合物のSP値をSPpとする。混合物のSP値(σM)は混合物の質量組成比(Wi)とそれぞれの樹脂のSP値(σi)の積として算出し、下記式のようになる。
σM=Σ(Wi×σi)
【0041】
<可塑剤>
トナー粒子は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては、特に限定されることなく、離型剤の項に挙げたワックス類などを用いることができる。
【0042】
<着色剤>
トナー粒子は、着色剤を含有してもよい。上記着色剤としては、特段の制限なく公知のブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色及び他の色の顔料及び染料、磁性体などを用いることができる。
ブラック着色剤としては、カーボンブラックなどのブラック顔料が挙げられる。
【0043】
イエロー着色剤としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アントラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物などのイエロー顔料及びイエロー染料が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185、C.I.ソルベントイエロー162などが挙げられる。
【0044】
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物などのマゼンタ顔料及びマゼンタ染料などが挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269
、C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。
【0045】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レーキ化合物などのシアン顔料及びシアン染料などが挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
【0046】
着色剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、1.0~20.0質量部であることが好ましい。
【0047】
また、トナー粒子に磁性体を含有させて、トナーを磁性トナーとすることも可能である。
この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどに代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルなどに代表される金属又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどの金属との合金及びその混合物などが挙げられる。
着色剤として磁性体を用いる場合の磁性体の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、20.0~120.0質量部であることが好ましい。
【0048】
<荷電制御剤>
トナーは、荷電制御剤を含有してもよい。上記荷電制御剤としては、特段の制限なく公知の荷電制御剤を用いることができる。
具体的には、負帯電制御剤として、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物又は該芳香族カルボン酸の金属化合物を有する重合体又は共重合体;スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体;アゾ染料若しくはアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。
一方、正帯電制御剤として、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物などが挙げられる。
スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体としては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系モノマーの単重合体又はその他公知のビニル系単量体と上記スルホン酸基含有ビニル系モノマーの共重合体などを用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0049】
<外添剤>
トナーは、外添剤を有する。外添剤は、脂肪酸金属塩の粒子を含む。外添剤は、脂肪酸金属塩の粒子に加えて、脂肪酸金属塩の粒子以外の外添剤を含有してもよい。
上記外添剤としては、特段の制限なく公知の外添剤を用いることができる。
具体的には、湿式製法シリカ、乾式製法シリカなどの原体シリカ微粒子又はそれら原体シリカ微粒子にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルなどの処理剤により表面処理を施した表面処理シリカ微粒子;フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子などの樹脂微粒子などが挙げられる。
外添剤の含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1~5.0質量部であることが好ましい。
【0050】
続いて、以下に本開示のトナーを得る方法について詳細に述べる。
【0051】
<トナー粒子の製造方法>
トナー粒子の製造方法は、特に限定されることはなく、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法、粉砕法などを用いることができる。その中でも、乳化凝集法を用いることが好ましい。すなわち、トナー粒子は乳化凝集トナー粒子であることが好ましい。乳化凝集トナー粒子は表面に適度な凹凸を有するため、クリーニング性、転写性に優れる。また、脂肪酸金属塩の粒子の分散性を高めやすい。
乳化凝集法は、まず結着樹脂の微粒子の分散液を調製し、必要に応じて着色剤や離型剤などの各材料の分散液を調製する。得られた各材料の分散液を、必要に応じて分散安定剤を添加して、分散混合させる。その後、凝集剤を添加することによって所望のトナー粒子の粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。さらに必要に応じて、熱による形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する。
【0052】
トナーの製造方法は下記工程を有することが好ましい。
(1)結着樹脂及びフマル酸を含む結着樹脂微粒子分散液(必要に応じて着色剤微粒子分散液など)を調製し、混合して混合分散液を得る分散混合工程、
(2)得られた混合分散液に含まれる結着樹脂微粒子(必要に応じて着色剤微粒子など)を凝集して凝集体を形成する凝集工程、及び
(3)前記凝集体を加熱して融合させ、融合粒子を形成する融合工程
を有することが好ましい。得られた融合粒子を冷却し、トナー粒子を得ることができる。
【0053】
そして、上記(3)の工程中、又は上記(1)~(3)の工程の後に、下記(4)の工程を有することが好ましい。
(4)前記凝集体を、さらに温度を上げて加熱する球形化工程
さらに、上記(4)の工程の後に、下記(5)及び(6)の工程をこの順で有することがより好ましい。
(5)前記凝集体を、0.1℃/min以上の冷却速度で冷却する冷却工程
(6)前記冷却工程後に、前記結着樹脂の結晶化温度以上又はガラス転移温度以上の温度に加熱保持するアニール工程
【0054】
ここで、結着樹脂の微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法からなる群から選択される少なくとも一の製法により製造することができる。
【0055】
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子に内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤を含む内添剤微粒子の分散液を調製し、内添剤微粒子を樹脂微粒子と凝集させる際に共に凝集させてもよい。
また、凝集時に組成の異なる樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることにより組成の異なる層構成のトナー粒子を製造することもできる。すなわち、コアシェル構造を有するトナー粒子を製造することもできる。結着樹脂を含む樹脂微粒子を凝集させコア部を形成したのち、シェル用の樹脂を含む樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることでシェル部を形成することができる。
シェル用の樹脂は、結着樹脂と同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。例えばシェル用の樹脂にフマル酸を含有させることができる。シェル用の樹脂を含む樹脂微粒子がフマル酸を含んでもよい。シェル用の樹脂の添加量(シェルの含有量)は、コア粒子に含まれる結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1.0~10.0質量部であり、より好ましくは2.0~7.0質量部である。
【0056】
コアシェル構造を有するトナー粒子を製造する場合、トナーの製造方法は下記工程を有することが好ましい。また、下記工程を下記の順で有することが好ましい。
(1)結着樹脂及びフマル酸を含む結着樹脂微粒子の分散液(必要に応じて着色剤微粒子分散液など)を調整し、混合して混合分散液を得る分散混合する分散工程、
(2)得られた混合分散液に含まれる結着樹脂微粒子(必要に応じて着色剤微粒子など)を凝集して、凝集体を形成する凝集工程、
(3)凝集体を含む分散液にシェル用の樹脂を含む樹脂微粒子をさらに添加し、樹脂微粒子を凝集させてシェルを有する凝集体を形成するシェル形成工程、及び
(4)前記凝集体を加熱して融合させ、融合粒子を形成する融合工程
【0057】
また、上記(4)の工程中、又は上記(1)~(4)の工程の後に、下記(5)の工程を有することが好ましい。
(5)前記凝集体を、さらに温度を上げて加熱する球形化工程
そして、上記(5)の工程の後に、下記(6)及び(7)の工程を有することがより好ましい。
(6)前記凝集体を、0.1℃/sec以上の冷却速度で冷却する冷却工程
(7)前記冷却工程後に、前記結着樹脂の結晶化温度以上又はガラス転移温度以上の温度に加熱保持するアニール工程
【0058】
フマル酸の添加量は特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して、0.006~0.500質量部であることが好ましく、0.006~0.400質量部であることがより好ましく、0.006~0.200質量部であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、トナー中のフマル酸の含有量aを好適に調整しやすくなる。
また、脂肪酸金属塩の粒子の添加量は特に限定されないが、トナー粒子100質量部に対して、0.003~0.700質量部であることが好ましく、0.005~0.600質量部であることがより好ましく、0.005~0.500質量部であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量bを好適に調整しやすくなる。
【0059】
分散安定剤としては以下のものを使用することができる。
分散安定剤としては、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤としては、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することができる。
無機分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0060】
凝集剤としては、上述した分散安定剤に使用する界面活性剤と逆極性の界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の無機金属塩を好適に用いることができる。特に無機金属塩は、多価金属元素を水系媒体中でイオン化することで、凝集性制御及びトナー帯電性制御がしやすいため好ましい。
好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムの金属塩、及び、ポリ塩化鉄、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カル
シウムの無機金属塩重合体である。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上であることが好ましく、また、同じ価数であっても無機金属塩重合体の方がより適している。
【0061】
画像の高精細、高解像の観点から、トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、3.0~10.0μmであることが好ましい。
また、現像性、転写性とクリーニング性とのバランスの観点から、トナー粒子の平均円形度は、0.940~0.980であってよく、0.950~0.980であることが好ましく、0.955~0.970であることがより好ましい。平均円形度を上記範囲に制御することで、トナー上に脂肪酸金属塩が均一に分布しやすくなる。そのため、画像摺擦後における画像表面の均一性が向上し、摺擦後においてもよりグロスの高い画像を得ることができる。また、トナーからクリーニングブレードへ脂肪酸金属塩が安定して供給されるようになり、外添剤のクリーニング性がより向上する。
【0062】
<トナーの製造方法>
上記で得られたトナー粒子に、脂肪酸金属塩の粒子を含む外添剤を混合しトナー粒子の表面に付着させることで、トナーとすることができる。すなわち、トナーの製造方法は、トナー粒子に脂肪酸金属塩の粒子を含む外添剤を外添する外添工程を有する。このとき、必要に応じて、上述の脂肪酸金属塩の粒子以外の外添剤を添加してもよい。
トナー粒子に外添剤を外添する混合機としては、特に制限されず、乾式湿式問わず公知の混合機を用いることができる。例えば、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイザー(奈良機械社製)などが挙げられる。外添剤の被覆状態を制御するために、上記の外添装置の回転数、処理時間、ジャケットの水温・水量を調整してトナーを調製することができる。
また、外添後に粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製)などが挙げられる。
【0063】
以下、トナー及び各材料の物性の測定方法を説明する。
【0064】
<トナー中のフマル酸の含有量a(mol/g)の測定方法>
クロロホルム1mlにトナー0.1gを溶解する。得られた試料溶液にメタノール20mlを滴下し、溶液中の樹脂分を沈殿させたのち、遠心分離(機種HITACHI himac CR22G、条件12000rpm、10分間)によって固体分を除去する。得られた溶液から、溶媒を減圧留去し、さらに60℃雰囲気中、減圧下で4時間乾燥する。得られたサンプルに、BSTFA(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド) 0.5mL及びアセトニトリル 0.5mLを添加し、80℃、1時間加熱することでシリル化処理を行う。得られたサンプルをGC-MS(ガスクロマトグラフィ質量分析)により分析する。
【0065】
測定条件は、具体的には下記の通りである。
GCMS装置: Trace1310(Thermo Fisher Scientific製)、ISQ(Thermo Fisher Scientific製)
カラム:HP-5ms 30m
注入口温度:250℃
注入量:1μL
カラムオーブン温度:40℃→300℃ (15℃/min)
MS イオン化モード:EI
イオン源温度:250℃
マスレンジ:35-800 m/z
【0066】
分析によって得られたプロファイルを解析し、測定サンプルの各ピーク位置と、フマル酸標品から得られたプロファイルのピーク位置とを比較し、さらにマススペクトルの確認を行うことで、フマル酸含有の有無を特定する。
一方、フマル酸標品のみを精秤したものを数点(例えば100ng、200ng、300ng)準備し、トナーから得られたサンプルの測定を行う前に、上記分析条件にてそれぞれ測定を行った後、フマル酸の仕込み量とフマル酸ピーク面積値から検量線を作成する。
トナー中のフマル酸の含有量a(mol/g)は、この検量線をもとにトナーのフマル酸成分の面積値をフマル酸の質量に換算し、更にトナー質量を基準としたモル数に換算することによって得られる。
【0067】
<脂肪酸金属塩の粒子の同定方法>
脂肪酸金属塩の同定は、走査型電子顕微鏡(SEM)による形状観察、及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組み合わせることで行うことができる。
走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて、最大5万倍に拡大した視野において、トナーを観察する。トナー粒子表面にピントを合わせて、判別対象の外添剤を観察する。判別対象の外添剤のEDS分析を行い、元素ピークの有無から脂肪酸金属塩の同定を行うことができる。脂肪酸金属塩を構成しうる金属、例えばMg、Zn、Ca、Al、Na、Liからなる群より選ばれる少なくとも一の金属の元素ピークが観察された場合に、脂肪酸金属塩の存在を類推することができる。
EDS分析により類推された脂肪酸金属塩の標品を別途準備して、SEMによる形状観察及びEDS分析を行う。標品の分析結果が、判別対象の粒子の分析結果と一致するか否かを比較し、脂肪酸金属塩を同定する。
【0068】
<トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量b(mol/g)の測定方法>
前記脂肪酸金属塩の同定方法において観察された金属(以下、測定対象の金属ともいう。)の量を、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて測定する。具体的には、以下のトナーを4g用意し、これをペレット化し、測定対象の金属の含有量を求める。
まず、測定対象の金属について、トナーに外添されている脂肪酸金属塩の粒子に由来するものと、トナー粒子に由来するものとに分けるため、以下の操作を行う。
まず、(1)そのままのトナー、(2)目開き38μm(400メッシュ)の篩を5回通したトナー、(3)目開き38μm(400メッシュ)の篩を20回通したトナーを用意する。そして、(1)、(2)及び(3)のトナーそれぞれについて、下記の通り波長分散型蛍光X線分析装置を用いて測定する。
トナーが篩を通過すると、トナーに外添された脂肪酸金属塩の粒子が剥がれ、篩を通過するほどより多くの脂肪酸金属塩の粒子が剥がれる。そのため、(1)より(2)のトナーに含まれる金属の含有量が減少し、(2)より(3)のトナーに含まれる金属の含有量が減少する。後述の方法によりグラフを作り、外挿することにより、トナー粒子に由来する金属の含有量を特定することができる。なお、金属が脂肪酸金属塩の粒子にのみ含まれている場合は、上記(1)の測定値のみから計算することができる。
【0069】
波長分散型蛍光X線分析装置を用いた測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「Sup
erQ ver.5.0L」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mmとする。
測定は、Omnianのメソッドを用いて元素FからUまでの範囲を測定し、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。また、X線発生装置の加速電圧、電流値は、出力2.4kWとなるように設定する。測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中に上記トナーサンプル4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
【0070】
前述の条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに各元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)から各元素の質量比率を算出する。
解析は、FP(ファンダメンタルパラメーター)定量法を用いて、サンプルに含まれる全元素の質量比率を算出し、トナー中の金属の含有量を求める。なお、FP定量法においては、トナーの結着樹脂に合わせたバランスを設定する。
蛍光X線で求めたトナー中の該当金属について、上記(1)、(2)及び(3)のトナーそれぞれについて、(1)の定量値をA、(2)の定量値をB、(3)の定量値をCとして、横軸がAに対する各測定値の比、縦軸がそれぞれの測定値のグラフを作る。すなわち、(横軸、縦軸)=(A/A=1、A)、(B/A、B)、(C/A、C)をプロットして、最小二乗法によって近似直線を作製する。近似直線の切片が、トナー粒子に由来する金属であるとし、Aの値と、近似直線の切片の値との差を取ることにより、トナーに外添されている脂肪酸金属塩の粒子に由来する金属の含有量を求めることができる。
こうして測定された金属の含有量を、例えばステアリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩の主要構成である金属として用い、トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量(g)を求めることができる。具体的には、測定された含有量(g)を上述の脂肪酸金属塩の粒子の同定方法にて同定された脂肪酸金属塩の分子量で除することにより、含有量(mol)に換算する。
トナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量b(mol/g)は、得られた含有量(mol)をトナー質量(g)を基準とした量に換算することによって得られる。
また、上記で得られたa及びbの値を用いて、a/bを算出する。
【0071】
<トナー中の離型剤の同定>
(1)トナーから離型剤を分離する方法
まず、トナー中の離型剤の融点を、熱分析装置(DSC Q2000 TAインスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて測定する。
トナー試料3.0mgをアルミニウム製パン(KITNO.0219-0041)の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットにのせ、電気炉中にセットする。窒素雰囲気下、30℃から200℃まで昇温速度10℃/分で加熱して示差走査熱量計(DSC)によりDSC曲線を計測し、トナー試料中の離型剤の融点を算出する。
次に、トナーに対して貧溶媒であるエタノールにトナーを分散させ、離型剤の融点を超える温度まで昇温させる。この時必要に応じて加圧してもよい。この操作により融点を超えた離型剤は溶融し、エタノール中に抽出される。加温、さらに加圧している場合は加圧したまま固液分離することにより、トナーから離型剤を分離できる。次いで、抽出液を乾燥・固化することにより離型剤を得る。
【0072】
(2)熱分解GCMSによる離型剤の同定
具体的な熱分解GCMSによる離型剤の同定条件を以下に示す。
質量分析装置:ThermoFisherScinetific社 ISQ
GC装置:ThermoFisherScinetific社 FocusGC
イオン源温度:250℃
イオン化方法:EI
質量範囲:50-1000m/z
カラム:HP-5MS[30m]
熱分解装置:日本分析工業(株)製 JPS-700
【0073】
590℃のパイロホイルに、抽出操作により分離した離型剤を、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)に1質量%になるように加えて、測定サンプルとする。作製したサンプル1μLについて上記条件で熱分解GCMS測定を実施し、離型剤由来のピークを得る。
離型剤がエステル化合物の場合、アルコール成分、カルボン酸成分のそれぞれについてのピークを得る。メチル化剤であるTMAHの作用によりアルコール成分、カルボン酸成分はメチル化物として検出される。得られたピークを解析し、離型剤の構造を同定することができる。また、離型剤の構造の同定により、離型剤の分子量も得ることができる。離型剤が炭化水素ワックスなどの分子量に分布を有するものである場合には、最も多く検出される成分を当該ワックスの分子量とする。
【0074】
<融点の測定方法>
結晶性材料(結晶性樹脂又はワックスなどの離型剤)の融点は、示差走査熱量計(DSC) Q2000(TA Instruments社製)を使用して、以下の条件にて測定する。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしてはアルミニウム製の空パンを用いる。そのときの最大吸熱ピークのピーク温度を融点とする。
【0075】
<結着樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いて、ASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、結着樹脂5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲を30~200℃とし、昇温速度1℃/minで測定を行う。この昇温過程で、温度40℃~100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
【0076】
<平均円形度の測定方法>
トナー及びトナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、以下の条件で測定及び解析を行う。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め固形物などの不純物を除去したイオン交換水20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.2mL加える。さらに測定試料を0.02g加え、超音波分散器
を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10~40℃となるように適宜冷却する。
超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用する。
【0077】
上記手順に従い調製した分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。
【0078】
<重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー、又はトナー粒子(以下、トナーなど、ともいう)の重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。
測定条件の設定及び測定データの解析には、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0079】
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電
気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナーなど10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーなどを分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0080】
<脂肪酸金属塩の粒子のメジアン径の測定>
脂肪酸金属塩の粒子の体積基準のメジアン径の測定は、JIS Z8825-1(2001年)に準じて測定されるが、具体的には以下の通りである。測定装置としては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA-920」(堀場製作所社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、LA-920に付属の専用ソフト「HORIBA LA-920 for Windows(登録商標)WET(LA-920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水を用いる。
【0081】
測定手順は、以下の通りである。
(1)バッチ式セルホルダーをLA-920に取り付ける。
(2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
(3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
(4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、ファイル「110A000I」(相対屈折率1.10)を選択する。
(5)「表示条件設定」画面において、粒子径基準を体積基準とする。
(6)1時間以上の暖気運転を行った後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。
(7)ガラス製の100ml平底ビーカーに約60mlのイオン交換水を入れる。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora 150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(9)前記(7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(10)前記(9)のビーカー内の水溶液に超音波を照射した状態で、約1mgの脂肪酸
金属塩の粒子を少量ずつ前記ビーカー内の水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、この際に脂肪酸金属塩がかたまりとなって液面に浮く場合があるが、その場合はビーカーを揺り動かすことでかたまりを水中に沈めてから60秒間の超音波分散を行う。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となるように適宜調節する。
(11)前記(10)で調製した脂肪酸金属塩の粒子が分散した水溶液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%~95%となるように調整する。そして、粒度分布の測定を行う。得られた体積基準の粒度分布のデータを元に、50%積算径を算出する。
【0082】
<結着樹脂の同定と定量>
結着樹脂のモノマーユニットの種類とモノマーユニットの比率の同定には、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(以下、「熱分解GC/MS」とも称する)及びNMRを用いる。樹脂の構成化合物の種類の分析には熱分解GC/MSを用いる。樹脂を550℃~700℃で熱分解させた際に生じる、樹脂の分解物の成分のマススペクトルを分析する事で、モノマーユニットの種類を同定する。具体的な測定条件は以下の通りである。
【0083】
(熱分解GC/MSの測定条件)
熱分解装置:JPS-700(日本分析工業)
分解温度:590℃
GC/MS装置:Focus GC/ISQ (Thermo Fisher)
カラム:HP-5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
注入口温度:200℃
フロー圧:100kPa
スプリット:50mL/min
MSイオン化:EI
イオン源温度:200℃ Mass Range 45-650
続いて、同定した結着樹脂のモノマーユニットの比率を、H-NMRで測定・算出する。構造決定は、FT-NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)[H-NMR 400MHz、CDCl、室温(25℃)]を用いて行う。
【0084】
H-NMRの測定条件)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :1024回
測定温度 :25℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
得られたスペクトルの積分値から各モノマーユニットのmol比を求め、これを基に各モノマーユニットの比率(質量%)を算出する。
【0085】
<ピーク分子量(Mp)の測定方法>
結着樹脂のピーク分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。まず、室温で、測定したいサンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。溶解しにくいようであれば35℃以下の範囲で加熱する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF-604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液:THF
流速:0.6mL/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダードポリスチレンF-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成された分子量校正曲線を使用する。
【実施例0086】
本開示を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本開示をなんら限定するものではない。「部」及びび「%」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0087】
[ポリエステル樹脂の製造例]
<ポリエステル樹脂1>
・フマル酸: 10.6部(23mol%)・テレフタル酸: 8.5部(13mol%)・トリメリット酸: 3.3部(4mol%)
・ビスフェノールA-エチレンオキサイド2モル付加物: 47.6部(38mol%)・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物:30.0部(22mol%)・酸化ジブチル錫: 0.5部
・ハイドロキノン: 0.05部
上記材料を減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中に仕込み、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、さらに60~70mmHgの減圧下でピーク分子量が6000になるまで反応させ、非晶性のポリエステル樹脂1を得た。
得られたポリエステル樹脂1の酸価は20.3mgKOH/g、ピーク分子量(Mp)は6000、ガラス転移温度は54.6℃、溶解度パラメータは21.01((J/cm1/2)であった。
【0088】
<ポリエステル樹脂2>
・テレフタル酸: 22.6部(36mol%)・トリメリット酸: 3.2部(4mol%)
・ビスフェノールA-エチレンオキサイド2モル付加物: 45.5部(38mol%)・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物:28.7部(22mol%)・酸化ジブチル錫: 0.5部
・ハイドロキノン: 0.05部
上記材料を減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中に仕込み、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、さらに60~70mmHgの減圧下で1時間反応させ、非晶性のポリエステル樹脂2を得た。
得られたポリエステル樹脂1の酸価は20.1mgKOH/g、ピーク分子量(Mp)は6000、ガラス転移温度は59.4℃、溶解度パラメータは21.28((J/cm1/2)であった。
【0089】
<ポリエステル樹脂3>
ポリエステル樹脂1の製造例において、ピーク分子量が12000に達するまで反応させること以外はポリエステル樹脂1の製造例と同様にして、非晶性のポリエステル樹脂3
を得た。
得られたポリエステル樹脂3の酸価は12.2mgKOH/g、ピーク分子量(Mp)は12000、ガラス転移温度は55.2℃、溶解度パラメータは21.01((J/cm1/2)であった。
【0090】
[樹脂粒子分散液の製造例]
<樹脂粒子分散液1>
・ポリエステル樹脂1 200部
・イオン交換水 500部
・フマル酸 0.250部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部及びイオン交換水297部の混合溶液を徐々に滴下し、7800rpmで撹拌しながら乳化分散することで、樹脂粒子分散液1を得た。樹脂粒子分散液1の固形分濃度は20%であった。
樹脂粒子分散液1に含まれるポリエステル樹脂1の粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ポリエステル樹脂1の粒子の個数平均粒径は、0.25μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0091】
<樹脂粒子分散液2~11>
樹脂粒子分散液1の製造例において、使用する樹脂及びフマル酸添加量を表1に記載のものに変更する以外は、樹脂粒子分散液1の製造例と同様にして、樹脂粒子分散液2~11を製造した。但し、樹脂粒子分散液9においては、フマル酸を添加せず、マレイン酸を表1に記載の量添加した。いずれの場合にも、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。また、樹脂粒子分散液2~11におけるポリエステル樹脂の粒子の個数平均粒径を表1に示す。
【0092】
<樹脂粒子分散液12>
以下のように、乳化凝集法を用いて、ビニル樹脂1が分散した樹脂粒子分散液12を製造した。
スチレン78.0部、アクリル酸ブチル22.0部をステンレス製の容器に入れ、混合した。この溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0部をイオン交換水150部に混合した水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部をイオン交換水10部に混合した水溶液を添加した。ステンレス製の容器を窒素置換した後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度を20.0質量%に調整した。
樹脂粒子分散液12の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ビニル樹脂1の粒子の個数平均粒径は、0.25μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。なお、樹脂粒子分散液11からビニル樹脂1を分離して、ビニル樹脂1の各物性を測定したところ、酸価は0.0(mgKOH/g)、ピーク分子量は20000、ガラス転移温度は54.0℃であった。
【表1】

表中、(マレイン酸)は、フマル酸を添加せず、マレイン酸を表に記載の量添加したことを示す。
【0093】
[ワックス粒子分散液の製造例]
<ワックス粒子分散液1>
・イオン交換水 500部
・ワックス(FNP0090(日本精蝋社製):フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス、融点90℃、分子量771、溶解度パラメータ:17.16(J/cm1/2) 200部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部及びイオン交換水295部の混合溶液を徐々に滴下し、7800rpmで撹拌しながら乳化分散することで、ワックス粒子分散液1を得た。ワックス粒子分散液1の固形分濃度は20%であった。
ワックス粒子分散液1に含まれるワックス粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ワックス粒子の個数平均粒径は、0.35μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0094】
<ワックス粒子分散液2~6>
ワックス粒子分散液1の製造例において、使用するワックスを表2に記載の物に変更する以外は、ワックス粒子分散液1の製造例と同様にして、ワックス粒子分散液2~6を製造した。
【表2】
【0095】
<着色剤粒子分散液の製造例>
・カーボンブラック(Nipex35:Orion Engineered Carbons社製) 100部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5部
・イオン交換水 400部
上記材料を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散して着色剤粒子分散液を得た。着色剤粒子分散液の固形分濃度は20%であった。この着色剤粒子分散液に含まれる着色剤粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の個数平均粒径は、0.2μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0096】
[トナー粒子の製造例]
<トナー粒子1>
・樹脂粒子分散液1 500部
・着色剤粒子分散液 50部
・ワックス粒子分散液1 50部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5部
反応器(容積1リットルフラスコ、バッフル付きアンカー翼)に樹脂粒子分散液1、ワックス粒子分散液1及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを仕込み、均一に混合した。一方、500mLビーカーに着色剤粒子分散液を均一に混合しておき、これを撹拌しながら反応器に徐々に添加し、混合分散液を得た。得られた混合分散液を撹拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を固形分として0.5部滴下し、凝集粒子を形成させた。
滴下終了後、窒素を用いて系内を置換し、50℃にて1時間保持し、さらに55℃にて1時間保持した。その後昇温して、90℃にて30分保持した。その後、63℃まで降温したのち3時間保持し、融合粒子を形成した。
融合粒子を形成した後、毎分0.5℃の降温速度にて室温になるまで冷却を行った。
冷却後、反応生成物を10L容量の加圧濾過器にて、0.4MPaの圧力下で固液分離を行い、トナーケーキを得た。その後、加圧濾過器が満水になるまでイオン交換水を加え、0.4MPaの圧力で洗浄した。さらに同様に2回洗浄して、計3回洗浄した。その後0.4MPaの圧力下で固液分離をしたのち、45℃で流動層乾燥を行い、重量平均粒径(D4)が6.9μm、平均円形度が0.960のトナー粒子1を得た。
【0097】
<トナー粒子2~18>
トナー粒子1の製造例において、使用する樹脂粒子分散液とワックス粒子分散液を表3に記載のものに変更する以外はトナー粒子1の製造例と同様にして、トナー粒子2~18を製造した。
【0098】
<トナー粒子19>
下記の方法により、粉砕トナーを製造した。
・ポリエステル樹脂1: 100.0部
・フマル酸: 0.125部
・離型剤(FNP0090): 5.0部
・着色剤 Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製カーボンブラック)
5.0部
上記材料をヘンシェルミキサーFM10C(日本コークス工業(株)(旧三井三池化工機(株)))で前混合した後、二軸混練機(池貝鉄工社製PCM-30型)によって、溶融混練して混練物を得た。得られた混練物を冷却し、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製)で粗粉砕した後、機械式粉砕機(ターボ工業社製、T-250)で粉砕して微粉砕粉末を得た。得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機(日鉄鉱業社製:EJ-L-3型)を用いて分級し、重量平均粒径(D4)が6.9μm、平均円形度が0.940のトナー粒子19を得た。
【表3】
【0099】
[脂肪酸金属塩の粒子の製造例]
<脂肪酸金属塩の粒子1>
撹拌装置付きの受け容器を用意し、撹拌器を350rpmで回転させた。この受け容器に脂肪酸源として0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液500部を投入し、液温を85℃に調整した。次に、この受け容器に金属源として0.2質量%硫酸亜鉛水溶液525部を、15分かけて滴下した。全量仕込み終了後、反応時の温度状態で10分間熟成し、反応を終結した。
次に、このようにして得られた脂肪酸金属塩スラリーを濾過洗浄した。得られた洗浄後の脂肪酸金属塩ケーキを粗砕後、連続瞬間気流乾燥機を用いて105℃で乾燥した。その後、ナノグラインディングミル〔NJ-300〕(サンレックス社製)にて風量6.0m3/min、処理速度80kg/hの条件で粉砕した後、リスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行った。その後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥して脂肪酸金属塩の粒子1を得た。得られた脂肪酸金属塩の粒子1の体積基準におけるメジアン径(D50s)は、0.45μmであった。
【0100】
<脂肪酸金属塩の粒子2~8>
脂肪酸金属塩の粒子1の製造例において、脂肪酸源と金属源を表4に記載のものに変更する以外は脂肪酸金属塩1の製造例と同様にして、脂肪酸金属塩の粒子2~8を製造した。
【表4】
【0101】
[トナーの製造例]
<トナー1>
トナー粒子1 100.0部
脂肪酸金属塩の粒子1 0.200部
シリカ粒子 (RX200:一次平均粒子径12nm、HMDS処理、日本アエロジル社製) 1.5部
上記材料を、FM10C(日本コークス工業株式会社製)によって外添混合した。外添条件は、下羽根をA0羽根とし、デフレクターの壁との間隔を20mmにセットし、トナー粒子の仕込み量:2.0kg、回転数:66.6s-1、外添時間:10分、冷却水を温度20℃・流量10L/min、で行った。
その後、目開き37μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。得られたトナー1の物性を表6及び表7に示す。
【0102】
<トナー2~32>
トナー1の製造例において、トナー粒子、脂肪酸金属塩の粒子を表5に記載のものに変更し、脂肪酸金属塩の粒子の量を表5に記載のように変更する以外はトナー1の製造例と同様にして、トナー2~32を製造した。得られたトナー2~32の物性を表6及び表7に示す。
【表5】

【表6】

表中、aはトナー中のフマル酸の含有量(mol/g)を示し、bはトナー中の脂肪酸金属塩の粒子の含有量(mol/g)を示し、例えば8.62E-06は、8.62×10-6を示す。
【表7】

表中、PES含有は、結着樹脂におけるポリエステル樹脂の有無を示し、Yは結着樹脂がポリエステル樹脂を含むことを示し、Nは結着樹脂がポリエステル樹脂を含まないことを示す。また、ΔSPpwは、ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPpと離型剤の溶解度パラメータSPwとの差を示し、ΔSPfwは、脂肪酸金属塩の溶解度パラメータSPfとSPwとの差を示し、ピーク分子量は結着樹脂のピーク分子量を示す。
【0103】
[実施例1~27、比較例1~5]
上記トナー1~32を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表8に示す。
【0104】
以下に、本開示の評価方法及び評価基準について説明する。
画像形成装置としては市販のレーザープリンターであるLBP-712Ci(キヤノン製)のプロセススピードを200mm/secとした改造機、及び、市販のプロセスカートリッジであるトナーカートリッジ040H(ブラック)(キヤノン製)を用いた。カートリッジ内部からは製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、評価対象のトナーを165g充填した。なお、イエロー、マゼンタ、シアンの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたイエローカートリッジ、マゼンタカートリッジ及びシアンカートリッジを挿入して評価を行った。
常温常湿環境(25℃/50%RH、以下N/N環境)にて、BROCHURE PAPER 150g GLOSSY紙(HP社製:150g/m)を用い、トナー載り量0.50g/cmのベタ黒画像を10枚出力した。
【0105】
〈画像の耐摺擦性及び摺擦後画像のグロス〉
得られたベタ黒画像のうち、10枚目のサンプルをこすり試験機にて画像左上、右上、中央、左下、右下の5点について、7.35kPaの荷重をかけて10回摺擦し、摺擦前後の画像濃度が変化しないことを確認した。その後、同サンプルをこすり試験機にて更に100回摺擦し、摺擦前後の濃度変化から画像の耐摺擦性を確認した。
画像濃度の測定には、カラー反射濃度計X-RITE 404A(X-Rite Co.製)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、摺擦前の画像濃度に対する、摺擦後の画像濃度の低下率を算出した。評価基準は以下の通りとした。
また、摺擦後の画像のグロスをハンディ光沢度計グロスメーターPG-3D(日本電色工業製)を用いて、光の入射角75°の条件にて測定した。評価基準は以下の通りとした。
本試験においては、10回摺擦前後で濃度が変化していないことから、画像は十分に紙上に定着している。よって、その後100回の摺擦で濃度が低下した場合、画像表面の滑り性低下による画像欠落が起こったと判断した。
【0106】
〈画像の耐摺擦性〉
[評価基準]
A:濃度低下率が1%未満
B:濃度低下率が1%以上3%未満
C:濃度低下率が3%以上10%未満
D:濃度低下率が10%以上
〈摺擦後画像のグロス〉
[評価基準]
A:画像グロスが70以上
B:画像グロスが60以上70未満
C:画像グロスが50以上60未満
D:画像グロスが50未満
【0107】
〈画像の耐熱性〉
得られたベタ黒画像のうち、8枚目のサンプルと9枚目のサンプルとを画像面が接するように重ね、7.35kPaの荷重をかけて、50℃で24時間静置した。静置後の貼りつき状態から画像の耐熱性を評価した。評価基準は以下の通りとした。
[評価基準]
A:貼り付きが見られない
B:わずかに貼り付きが見られるが、はがしても跡が残らない
C:貼り付きが見られ、はがすとわずかに画像の欠落が見られる
D:貼り付きが顕著であり、はがすと画像の欠落が目立つ
【0108】
〈画像の耐テーピング性〉
得られたベタ黒画像のうち、7枚目のサンプルの画像中央部にマイラーテープ(日東電工社製)を7.35kPaの荷重をかけて貼り付けた。その後、貼り付けたテープをゆっくりとはがし、画像の欠落状態から画像の耐テーピング性を以下の基準で評価した。評価基準は以下の通りとした。画像の耐テーピング性が高いことは、画像表面の強度が高いことを示す。
[評価基準]
A:テープに貼り付きが見られない
B:テープにはわずかに貼り付くが、画像は欠落しない
C:画像がわずかに欠落する
D:画像の欠落が目立つ
【0109】
〈画像濃度及び画像濃度ムラ〉
上記の画像形成装置を高温高湿環境(30℃/80%RH、以下H/H環境ともいう)に24時間静置した。その後、H/H環境にて、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(A4:81.4g/m)に、トナー載り量0.50g/cmのベタ黒画像を1枚出力し、初期の画像サンプルとした。その後、印字率1%の横線画像を5000枚連続で出力した。続いて、5000枚連続出力直後、及び5000枚連続出力してから60時間静置後に、トナー載り量0.50g/cmのベタ黒画像をキヤノンカラーレーザーコピア用紙(A4:81.4g/m)にそれぞれ1枚ずつ出力した。得られた画像の濃度を測定し、初期の画像サンプルに対する濃度の変化率をそれぞれ確認した。5000枚連続出力直後のサンプルと、5000枚連続出力してから60時間静置後のサンプルのうち、変化率が大きいものをサンプルの画像濃度変化率として、以下の基準で評価した。
また、初期の画像サンプルについて、同一画像上の5点で画像濃度を測定し、画像濃度の最も高い点を基準とした画像濃度の最も低い点の画像濃度変化を画像濃度ムラとして以下の基準で評価した。具体的には、画像左端から3cmかつ画像上端から3cmの点A、画像左端から3cmかつ画像下端から3cmの点B、画像右端から3cmかつ画像上端から3cmの点C、画像右端から3cmかつ画像下端から3cmの点D、画像中央の点Eの5点を測定箇所とした。
【0110】
〈画像濃度〉
[評価基準]
A:画像濃度の変化が3%未満
B:画像濃度の変化が3%以上5%未満
C:画像濃度の変化が5%以上10%未満
D:画像濃度の変化が10%以上
〈画像濃度ムラ〉
[評価基準]
A:画像濃度の変化が3%未満
B:画像濃度の変化が3%以上5%未満
C:画像濃度の変化が5%以上10%未満
D:画像濃度の変化が10%以上
【0111】
〈帯電ローラ汚染〉
上記の画像形成装置を低温低湿環境(15℃/10%RH、以下L/L環境ともいう)に24時間静置した。その後、L/L環境にて、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(A4:81.4g/m)に、印字率1%の横線画像を5000枚連続で出力した。続いて、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(A4:81.4g/m)に、トナー載り量0.20g/cmのハーフトーン画像を1枚出力した。その後、カートリッジを分解し、帯電ローラ(帯電部材)の表面を観察した。
[評価基準]
A:帯電部材上にもスジが見られない
B:帯電部材上にはわずかにスジが見られるが、画像上にはスジが見られない
C:帯電部材上にスジが見られ、画像上にもわずかにスジが見られる
D:画像上のスジが顕著に見られる
【表8】
【0112】
本開示は、以下の構成に関する。
(構成1)
結着樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤と、を有するトナーであって、
該外添剤が、脂肪酸金属塩の粒子を含み、
該トナーがフマル酸を含有し、
該トナー中の該フマル酸の含有量をa(mol/g)とし、
該トナー中の該脂肪酸金属塩の粒子の含有量をb(mol/g)としたとき、
下記式(1)を満たすことを特徴とするトナー。
0.50≦a/b≦70.00 (1)
(構成2)
下記式(2)を満たす、構成1に記載のトナー。
1.20≦a/b≦70.00 (2)
(構成3)
下記式(3)を満たす、構成2に記載のトナー。
1.50≦a/b≦70.00 (3)
(構成4)
前記トナー中の前記フマル酸の含有量a(mol/g)が、8.60×10-7~1.05×10-5mol/gである、構成1~3のいずれかに記載のトナー。
(構成5)
前記トナー中の前記脂肪酸金属塩の粒子の含有量b(mol/g)が、1.55×10-7~7.90×10-6mol/gである、構成1~4のいずれかに記載のトナー。
(構成6)
前記脂肪酸金属塩が、炭素数12~22の飽和脂肪酸の金属塩である、構成1~5のい
ずれかに記載のトナー。
(構成7)
前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸の金属塩である、構成6に記載のトナー。
(構成8)
前記脂肪酸金属塩が、亜鉛の塩である、構成1~7のいずれかに記載のトナー。
(構成9)
前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸亜鉛である、構成8に記載のトナー。
(構成10)
前記トナー粒子が、離型剤を含有する、構成1~9のいずれかに記載のトナー。
(構成11)
前記離型剤の融点が、70~120℃である、構成10に記載のトナー。
(構成12)
前記離型剤の融点が、80~120℃である、構成11に記載のトナー。
(構成13)
前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂を含有する、構成1~12のいずれかに記載のトナー。
(構成14)
前記トナー粒子が、離型剤を含有し、
前記ポリエステル樹脂の溶解度パラメータをSPp((J/cm1/2)とし、該離型剤の溶解度パラメータをSPw((J/cm1/2)として、SPpとSPwとの差をΔSPpwとしたとき、
該ΔSPpwの2乗と、該離型剤の分子量との積が、10000.00(J/cm)以上である、構成13に記載のトナー。
(構成15)
前記脂肪酸金属塩の溶解度パラメータをSPf((J/cm1/2)とし、前記離型剤の溶解度パラメータをSPw((J/cm1/2)として、SPfとSPwとの差をΔSPfwとしたとき、
該ΔSPfwが0.20~1.60である、構成10~14のいずれかに記載のトナー。
(構成16)
前記結着樹脂のピーク分子量(Mp)が5000~10000である、構成1~14のいずれかに記載のトナー。