(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160766
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】衛星放送受信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/18 20060101AFI20241108BHJP
H04N 5/44 20110101ALI20241108BHJP
【FI】
H04B1/18 B
H04N5/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076078
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】長坂 正史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雅
【テーマコード(参考)】
5K062
【Fターム(参考)】
5K062AA09
5K062AB01
5K062AB06
5K062AE01
5K062AE04
(57)【要約】
【課題】低C/N衛星放送信号のIF帯域における周波数利用効率を改善する衛星放送受信システムを提供すること。
【解決手段】衛星放送受信システムは、所要C/Nがマイナス値のチャンネルの衛星放送信号と、前記衛星放送信号と同じ周波数の電力制御した変調信号とを混合し、混合した前記衛星放送信号と前記変調信号とを宅内配信する電力制御部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要C/Nがマイナス値のチャンネルの衛星放送信号と、前記衛星放送信号と同じ周波数の電力制御した変調信号とを混合し、混合した前記衛星放送信号と前記変調信号とを宅内配信する電力制御部を備える、衛星放送受信システム。
【請求項2】
受信した衛星放送信号のチャンネルのうち前記所要C/Nがマイナス値の衛星放送信号のチャンネルを選定する周波数選定部と、
選定された前記衛星放送信号のチャンネルの設定に基づいて、選定された前記チャンネルの衛星放送信号と同じ周波数の前記変調信号を発生する信号発生部と、を備え、
前記電力制御部は、前記信号発生部により発生された前記変調信号の出力電力を制御する、請求項1に記載の衛星放送受信システム。
【請求項3】
受信した前記衛星放送信号の受信C/Nを測定するC/N測定部と、
受信した前記衛星放送信号の受信電力を測定する受信電力測定部と、を備え、
前記電力制御部は、前記信号発生部により発生された前記変調信号の出力電力、前記C/N測定部により測定された前記受信C/N、及び前記受信電力測定部により測定された前記受信電力に基づいて、前記信号発生部により発生された前記変調信号の出力電力を制御する、請求項2に記載の衛星放送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送信号の周波数利用効率を改善する衛星放送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衛星放送受信システムでは、衛星放送を1032~3224MHzに変換し、同軸ケーブルで宅内に伝送する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
また、光ファイバを用いて、3.2GHzを超える周波数の信号を宅内に伝送する技術が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ARIB標準規格 STD-B63, “高度広帯域衛星デジタル放送用受信装置(望ましい仕様)”
【非特許文献2】横澤ほか、「POFを用いた21GHz帯衛星放送の宅内配信の一検討」、2020年映像情報メディア学会創立70周年記念大会 12D-1
【非特許文献3】S. Yokozawa, M. Kamei, H. Sujikai, “Evaluation of 12-GHz-band Compact Planar Receiving Antenna for Satellite Broadcasting for Low C/N Reception using ISDB-S3”, 2020 IEEE International Symposium on Antennas and Propagation and North American Radio Science Meeting (AP-S 2022), pp. 187-188, July 2020
【非特許文献4】ARIB標準規格 STD-B44, “高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB-S3)”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行の衛星放送は11.7~12.75GHz(12GHz帯)を利用している。周波数帯域幅は1050MHzであり、偏波は、右旋円偏波(右旋)と左旋円偏波(左旋)を用いている。これにより、それぞれの偏波で異なるプログラムを放送することができる。
一般的に、宅内の配信には同軸ケーブルが用いられる。同軸ケーブルは12GHz帯の電波を伝送できないことから、Low noise block convertor(LNB)を用いて12GHz帯の衛星放送信号を中間周波数(IF)に変換している。
しかしながら、同軸ケーブの中は偏波による使い分けができない。そこで、非特許文献1では、
図4に示すように、12GHz帯衛星放送の左旋用IFは、右旋用IFよりも高い周波数に規定された。12GHz帯衛星放送のIF帯域(BS-IF及びCS-IF)は、右旋と左旋を合わせて1032~3224MHzである。
現在、左旋を用いた衛星放送では、4K放送及び8K放送が行われている。左旋は、一部の衛星中継器のみ使われていることから、新しい衛星放送サービスの伝送路としても期待されている。
例えば、約10cm四方の小型平面アンテナによる簡易受信で、10.9Mbpsの衛星伝送を実現するシステムが提案されている(例えば、非特許文献3参照)。このシステムでは、小型のアンテナを用いることで受信C/Nが低下する一方、変調方式にπ/2シフトBPSK(符号化率1/3)を適用することで、最大4.3dBの回線マージンを確保している。
ところで、放送衛星は日本一円に向けて同一の放送波を送信することが特徴であるため、前記小型平面アンテナによる受信を想定した放送信号(π/2シフトBPSK)は、一般的なBSパラボラアンテナでも受信することができる。
小型平面アンテナでの受信を想定した衛星放送(以下、「低C/N衛星放送」ともいう)においても、1つの衛星中継器を使うことに変わりはない。このため、パラボラアンテナで受信した低C/N衛星放送の信号は、宅内の配信に用いる同軸ケーブル内でも1中継器分の周波数帯域幅を占有する。
ここで、π/2シフトBPSK(1/3)の伝送容量は10.9Mbpsである(例えば、非特許文献4参照)。
つまり、宅内の同軸ケーブルでは、1中継器の周波数帯域幅で10.9Mbpsの低C/N衛星放送信号を伝送することになる。
一方、4K/8K衛星放送では変調方式に16APSK(符号化率7/9)を用いており、1中継器の伝送容量は約100Mbpsである(例えば、非特許文献4参照)。
以上より、低C/N衛星放送では、宅内の同軸ケーブルにおける周波数利用効率が、現行の衛星放送に比べて低下するという課題があった。
また、非特許文献2の光送受信機と光ファイバによるシステムは、高い周波数でも減衰が小さく良好な伝送が可能である。このため、伝送周波数を拡大でき、1配線当たりの伝送容量を向上できる。しかしながら、新設の光ファイバが必要であり、既存の同軸ケーブルを用いた受信システムは活用できなかった。
【0005】
本発明は、低C/N衛星放送信号のIF帯域における周波数利用効率を改善する衛星放送受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の衛星放送受信システムは、所要C/Nがマイナス値のチャンネルの衛星放送信号と、前記衛星放送信号と同じ周波数の電力制御した変調信号とを混合し、混合した前記衛星放送信号と前記変調信号とを宅内配信する電力制御部を備える。
【0007】
上記(1)によれば、低C/N衛星放送信号のIF帯域における周波数利用効率を改善することができる。
【0008】
(2) (1)に記載の衛星放送受信システムにおいて、受信した衛星放送信号のチャンネルのうち前記所要C/Nがマイナス値の衛星放送信号のチャンネルを選定する周波数選定部と、選定された前記衛星放送信号のチャンネルの設定に基づいて、選定された前記チャンネルの衛星放送信号と同じ周波数の前記変調信号を発生する信号発生部と、を備え、前記電力制御部は、前記信号発生部により発生された前記変調信号の出力電力を制御する。
【0009】
上記(2)によれば、低C/N衛星放送信号のIF帯域における周波数利用効率をより改善することができる。
【0010】
(3) (2)に記載の衛星放送受信システムにおいて、受信した前記衛星放送信号の受信C/Nを測定するC/N測定部と、受信した前記衛星放送信号の受信電力を測定する受信電力測定部と、を備え、前記電力制御部は、前記信号発生部により発生された前記変調信号の出力電力、前記C/N測定部により測定された前記受信C/N、及び前記受信電力測定部により測定された前記受信電力に基づいて、前記信号発生部により発生された前記変調信号の出力電力を制御する。
【0011】
上記(3)によれば、低C/N衛星放送信号のIF帯域における周波数利用効率をより改善することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低C/N衛星放送信号のIF帯域における周波数利用効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る衛星放送受信システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】受信C/Nと回線マージンとの説明の一例を示す図である。
【
図3】衛星放送受信システムの電力制御処理について説明するフローチャートである。
【
図4】12GHz帯衛星放送の周波数配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
<一実施形態>
図1は、一実施形態に係る衛星放送受信システムの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、衛星放送受信システム1は、例えば、衛星放送受信アンテナ10、LNB(Low noise block convertor)20、C/N測定部30、受信電力測定部40、周波数選定部50、信号発生部60、電力制御部70、及び受信機80(1)~80(n)を有する(nは2以上の整数)。また、LNB20は、偏波分離部21、及び周波数変換部22を有する。また、電力制御部70は、減衰器71、及び混合器72を有する。
【0015】
衛星放送受信アンテナ10は、例えば、開口径45cmのパラボラアンテナ等である。衛星放送受信アンテナ10として開口径45cmのパラボラアンテナを用いた場合、東京での晴天時受信C/Nは20.1dBである。また、4K/8K衛星放送の変調方式16APSK(7/9)の所要C/Nは12.2dBであり、π/2シフトBPSK(1/3)の所要C/Nは-2.2dBである(例えば、ARIB標準規格 STD-B44 A.2.3)。
低C/N衛星放送は、小型平面アンテナによるπ/2シフトBPSK(1/3)の受信を想定している。これを開口径45cmアンテナで受信すると、回線マージンは大幅に増大する。
開口径45cmアンテナで受信したときの回線マージンは、
図2に示すように、4K/8K衛星放送が20.1-12.2=7.9dBに対して、低C/N衛星放送では20.1-(-2.2)=22.3dBとなる。
そこで、本実施形態に係る衛星放送受信システム1では、低C/N衛星放送の回線マージンに着目し、低C/N衛星放送の受信信号に、別の信号(以下、「変調信号」ともいう)を混合して宅内に伝送する。
そして、後述するように、混合する変調信号の電力レベルを適切に設定することで、低C/N衛星放送信号と変調信号の受信機80(1)~80(n)は、それぞれ特別な処理をすることなく、各信号を受信し復調することができる。つまり、衛星放送受信システム1として周波数利用効率を改善することができる。
【0016】
LNB20は、12GHz帯の衛星放送信号を中間周波数(IF)に変換する。
具体的には、LNB20の偏波分離部21は、12GHz帯の衛星放送信号を右旋円偏波(右旋)と左旋円偏波(左旋)とに分離する。
LNB20の周波数変換部22は、偏波分離部21により分離された12GHz帯の衛星放送信号を右旋と左旋とをそれぞれIFに変換し、右旋と左旋とを合わせて低C/N衛星放送信号を含む信号を出力する。なお、
図4に示すように、12GHz帯衛星放送の左旋用IFは、右旋用IFよりも高い周波数に規定され、12GHz帯衛星放送のIF帯域(BS-IF及びCS-IF)は、右旋と左旋を合わせて1032~3224MHzである。
【0017】
C/N測定部30は、LNB20から出力される低C/N衛星放送信号の受信C/Nを測定する。なお、受信C/Nの測定法は種々あるが、例えば、衛星放送の送信電力はどのチャンネルでも基本的には同じなので、C/N測定部30は、BS-1の放送帯域とBS-1下側の雑音帯域とを同じ積分電力で測定し、比をとる。C/N測定部30は、測定した受信C/Nを後述する電力制御部70に出力する。
【0018】
受信電力測定部40は、LNB20から出力される低C/N衛星放送信号の受信電力を測定する。受信電力測定部40は、測定した受信電力を後述する電力制御部70に出力する。
【0019】
周波数選定部50は、LNB20から出力される低C/N衛星放送信号のチャンネルのうち所要C/Nがマイナス値の衛星放送信号のチャンネルを選定する。
具体的には、周波数選定部50は、例えば、LNB20から出力される信号をスキャンし、伝送多重制御信号(TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)信号)から変調方式を参照する。ここで、非特許文献4のISDB-S3は1中継器(以下、チャンネル)あたり120スロットに分割されているが、120スロットすべてがπ/2シフトBPSK(1/3)で伝送されていれば、低C/N衛星放送信号のチャンネルである。
このようにして、周波数選定部50は、低C/N衛星放送信号のチャンネルを把握し、後述する信号発生部60が発生する変調信号を混合する、所要C/Nがマイナス値のチャンネルを選定する。
【0020】
信号発生部60は、例えば、入力データを非特許文献4に準拠した信号に変調し、周波数選定部50で選定したチャンネルの設定に従い、低C/N衛星放送信号と同じIF周波数で変調信号を発生し出力する。ここで、信号発生部60に入力されるデータの内容は問わないようにしてもよい。
【0021】
電力制御部70は、周波数選定部50により選定された所要C/Nがマイナス値のチャンネルの低C/N衛星放送信号と、低C/N衛星放送信号と同じ周波数の電力制御した変調信号とを混合し、混合した衛星放送信号と変調信号とを宅内配信する。
具体的には、電力制御部70は、例えば、低C/N衛星放送信号の受信電力と信号発生部60の変調信号の出力電力とを制御し、適切な電力レベルを保つ。なお、以下の説明では、受信電力測定部40により測定された低C/N衛星放送の受信電力をCとし、信号発生部60により出力される変調信号の出力電力をIとする。
つまり、電力制御部70の混合器72において、LNB20から出力される低C/N衛星放送信号に信号発生部60から出力される出力Iの変調信号を加えたとき、低C/N衛星放送信号の信号品質は、C/(N+I)として、以下の式で求めることができる。ただし、以下の式では、受信C/N=x[dB]、及び信号発生部60の変調信号の出力による干渉量C/I=y[dB]とし、信号品質C/(N+I)は、
C/(N+I)=-10log{10^(-x/10)+10^(-y/10)}[dB]
と表すことができる。
そして、低C/N衛星放送信号を正常に受信するためには、このC/(N+I)が所要C/N以上であればよく、低C/N衛星放送の所要C/NをA[dB]とすると、次式1の条件が求まる。
-10log{10^(-x/10)+10^(-y/10)}≧A ・・・式1
【0022】
所要C/Nの値Aはマイナス値であればよく、例えば、上述したように、π/2シフトBPSK(1/3)では-2.2dBとなることから、
A=-2.2[dB] ・・・式2
となる。
また、信号発生部60の変調信号の出力I、雑音N、低C/N衛星放送信号の受信電力Cであることから、変調信号の信号品質I/(C+N)は、低C/N衛星放送信号との電力比I/C=-y[dB]、雑音Nとの電力比I/N=z[dB]とすると、
I/(C+N)=-10log{10^(y/10)+10^(-z/10)}[dB]
となる。変調信号の変調方式が決まると、信号品質I/(C+N)の条件も決まる。
変調信号を正常に受信するためには、信号品質I/(C+N)が所要C/N以上であればよく、変調信号の所要C/NをB[dB]とする場合、信号品質I/(C+N)の条件は、
-10log{10^(y/10)+10^(-z/10)}≧B ・・・式3
となる。
例えば、変調方式がQPSK(1/2)の場合、32.6Mbpsの伝送容量で伝送でき(例えば、ARIB STD-B44 A.1)、所要C/Nは1.9dBであることから、
B=1.9[dB] ・・・式4
となる(例えば、ARIB STD-B44 A.2.3)。
なお、I/Nは、真数ではI/N=C/N÷C/Iとなることから、式5の関係が得られる。
z=x-y[dB] ・・・式5
【0023】
また、変調方式の選定はC/N測定部30が行い、電力制御部70は、信号発生部60を制御してパラメータを変更するようにしてもよい。
具体的には、例えば、衛星からの信号は雨が降ると減衰で受信C/Nが劣化することから、電力制御部70は、降雨の状況(受信C/Nの値)に応じて、式1~式5を満たす変調方式を選定するようにしてもよい。なお、制御の仕方は、受信C/Nの閾値で変調方式を変えればよいため、公知の手法を用いることが可能である。
【0024】
電力制御部70は、C/N測定部30により測定された受信C/Nを用いて、式1~式5の信号品質I/(C+N)の条件を満たすyとなるように減衰器71のC/Iを設定する。
例えば、東京の晴天時の受信C/N=20.1dBをxとする場合、電力制御部70は、減衰器71のC/I=-2dBをyに設定すればよく、下記のとおり式1及び式3の条件を満たす。
-10log{10^(-x/10)+10^(-y/10)}=-2.03[dB]
≧A=-2.2[dB]
-10log{10^(y/10)+10^(y/10-x/10)}=1.96[dB]
≧B=1.9[dB]
なお、上記の計算では式5の関係を用いている。また、低C/N衛星放送はマイナスC/Nで受信できるので、変調信号の電力Iは低C/N衛星放送信号の受信電力Cよりも大きくなり、結果、C/Iはマイナスの値となる。
【0025】
電力制御部70は、混合器72において、低C/N衛星放送信号と変調信号とを混合し、混合した信号を宅内の受信機80(1)~80(n)に分配(宅内配信)する。
そうすることで、電力制御部70は、伝送容量を約4倍(10.9Mbps+32.6Mbps)に拡大することができる。
【0026】
受信機80(1)~80(n)は、低C/N衛星放送に対応した受信機であり、宅内に配置される。そして、本実施形態に係る衛星放送受信システム1は、低C/N衛星放送信号と変調信号の所要C/Nを同時に満たすことから、受信機80(1)~80(n)を直接接続できる。
【0027】
<衛星放送受信システム1の電力制御処理>
次に、
図3を参照しながら、衛星放送受信システム1の電力制御処理の流れを説明する。
図3は、衛星放送受信システム1の電力制御処理について説明するフローチャートである。
【0028】
ステップS1において、衛星放送受信アンテナ10は、衛星放送信号を受信する。
【0029】
ステップS2において、LNB20は、ステップS1で受信した衛星放送信号を中間周波数(IF)に変換し、低C/N衛星放送信号を出力する。
【0030】
ステップS3において、C/N測定部30は、ステップS2で出力された低C/N衛星放送信号の受信C/Nを測定する。
【0031】
ステップS4において、受信電力測定部40は、ステップS2で出力された低C/N衛星放送信号の受信電力を測定する。
【0032】
ステップS5において、周波数選定部50は、ステップS2で出力された低C/N衛星放送信号のチャンネルのうち所要C/Nがマイナス値のチャンネルを選定する。
【0033】
ステップS6において、信号発生部60は、入力データを用いて、周波数選定部50で選定したチャンネルの設定に従い、低C/N衛星放送信号と同じIF周波数で変調信号を発生する。
【0034】
ステップS7において、電力制御部70は、ステップS6で発生した変調信号の信号品質I/(C+N)の条件に基づいて、減衰器71における変調信号の出力電力を制御する。
【0035】
ステップS8において、電力制御部70は、低C/N衛星放送信号と、変調信号とを混合器72で混合し、混合した信号を宅内の受信機80(1)~80(n)に配信する。
【0036】
以上により、一実施形態に係る衛星放送受信システム1は、低C/N衛星放送信号の受信信号と同じ周波数に、電力レベルを管理した変調信号を混合して宅内の受信機80(1)~80(n)に伝送し、受信機80(1)~80(n)それぞれは、特別な処理をすることなく、各信号を受信して復調する。これにより、衛星放送受信システム1は、低C/N衛星放送信号のIF帯域における周波数利用効率を改善することができる。
また、衛星放送受信システム1は、衛星放送サービスに影響を与えることなく、低C/N衛星放送を宅内に伝送しつつ、館内向けの映像・音声配信やデータ伝送などを同時に行うことができる。
また、衛星放送受信システム1は、特別な分離回路を使用することなく、既存技術による受信機80(1)~80(n)で実現することができ、コスト面でもメリットがある。
【0037】
以上、一実施形態について説明したが、衛星放送受信システム1は、上述の実施形態に限定されるものではなく、目的を達成できる範囲での変形、改良等を含む。
【0038】
<変形例>
一実施形態では、LNB20、C/N測定部30、受信電力測定部40、周波数選定部50、信号発生部60、及び電力制御部70は、互いに独立した構成としたが、これに限定されない。例えば、LNB20、C/N測定部30、受信電力測定部40、周波数選定部50、信号発生部60、及び電力制御部70は、1つの装置として構成されてもよい。
【0039】
なお、一実施形態における衛星放送受信システム1に含まれる各機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0040】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(Non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(Tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は、無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0041】
なお、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0042】
1 衛星放送受信システム
10 衛星放送受信アンテナ
20 LNB
21 偏波分離部
22 周波数変換部
30 C/N測定部
40 受信電力測定部
50 周波数選定部
60 信号発生部
70 電力制御部
71 減衰器
72 混合器
80(1)~80(n) 受信機