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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160768
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】水処理設備及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/70 20230101AFI20241108BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20241108BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20241108BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20241108BHJP
【FI】
C02F1/70 Z
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/72 101
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076093
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】近藤 司
(72)【発明者】
【氏名】椙原 健司
【テーマコード(参考)】
4D025
4D037
4D050
【Fターム(参考)】
4D025AA04
4D025AB29
4D025BB03
4D025BB04
4D025BB07
4D025DA01
4D025DA04
4D025DA05
4D025DA10
4D037AA03
4D037AB01
4D037BA18
4D037CA02
4D037CA03
4D037CA08
4D037CA11
4D037CA15
4D050AA05
4D050AB33
4D050BA14
4D050BD02
4D050BD06
4D050CA03
4D050CA07
4D050CA08
4D050CA09
4D050CA15
4D050CA16
(57)【要約】
【課題】触媒金属担持樹脂から触媒金属が超純水中へ溶出することを防ぐ、水処理設備及び水処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】過酸化水素を除去する過酸化水素除去手段を備える過酸化水素処理装置であって、前記過酸化水素除去手段は、アニオン交換樹脂の担体に白金族金属触媒が担持された触媒金属担持樹脂と、カチオン交換樹脂とが充填された樹脂塔を備えており、該樹脂塔内におけるカチオン交換樹脂の充填量が層高30cm以上分である過酸化水素処理装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中の過酸化水素を除去する過酸化水素除去手段を備える過酸化水素処理装置であって、
前記過酸化水素除去手段は、アニオン交換樹脂の担体に白金族金属触媒が担持された触媒金属担持樹脂と、カチオン交換樹脂とが充填された樹脂塔を備えており、該樹脂塔内におけるカチオン交換樹脂の充填量が層高30cm以上分である過酸化水素処理装置。
【請求項2】
前記樹脂塔において、前記被処理水の通水方向に、前記触媒金属担持樹脂、前記カチオン交換樹脂の順に積層されて充填されている請求項1に記載の過酸化水素処理装置。
【請求項3】
前記樹脂塔において、前記被処理水の通水方向に、前記カチオン交換樹脂、前記触媒金属担持樹脂、前記カチオン交換樹脂の順に積層されて充填されている請求項1に記載の過酸化水素処理装置。
【請求項4】
前記樹脂塔において、前記触媒金属担持樹脂と前記カチオン交換樹脂が混合されて充填されている請求項1に記載の過酸化水素処理装置。
【請求項5】
担体である前記アニオン交換樹脂のR-OHが60%であり、かつ触媒金属の担持量は、10mg-触媒/L-R~500mg-触媒/L-Rの範囲である請求項1に記載の過酸化水素処理装置。
【請求項6】
前記触媒金属担持樹脂がゲル形である請求項1に記載の過酸化水素処理装置。
【請求項7】
一次純水システム及び二次純水製造システムを備えた水処理設備であって、
前記二次純水製造システムは、請求項1~6のいずれか1項に記載された過酸化水素処理装置と、
前記過酸化水素処理装置の前段に設けられた紫外線酸化装置と、を有し、
前記過酸化水素処理装置で処理される過酸化水素含有水が、前記紫外線酸化装置で処理された処理水である、水処理設備。
【請求項8】
過酸化水素を除去する過酸化水素除去手段を備える過酸化水素処理装置により被処理水中の過酸化水素を処理する過酸化水素処理方法であって、
前記過酸化水素除去手段は、アニオン交換樹脂の担体に白金族金属触媒が担持された触媒金属担持樹脂と、カチオン交換樹脂とが充填された樹脂塔を備えており、該樹脂塔内におけるカチオン交換樹脂の充填量が層高30cm以上分である過酸化水素処理方法。
【請求項9】
前記樹脂塔の前段で前記被処理水に水素を添加する、請求項8に記載の過酸化水素処理方法。
【請求項10】
一次純水システム及び二次純水製造システムの順序で被処理水を処理することを特徴とする水処理方法であって、
前記二次純水製造システムは、請求項1~6のいずれか1項に記載された過酸化水素処理装置と、
前記過酸化水素処理装置の前段に設けられた紫外線酸化装置と、を有し、
前記過酸化水素処理装置で処理される過酸化水素含有水が、前記紫外線酸化装置で処理された処理水である、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水中の有機物を除去する方法として、紫外線酸化装置で被処理水に紫外線を照射する方法があるが、紫外線が被処理水に照射される際に過酸化水素等の過酸化物が発生することが知られている。この過酸化物を除去する方法として、触媒金属担持樹脂を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-194402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、触媒金属担持樹脂とアニオン交換樹脂とを同一塔内に充填すること、触媒金属担持樹脂とアニオン交換樹脂以外にカチオン交換樹脂を含んでもよいことが記載されている。
しかし、触媒金属担持樹脂に通水すると触媒金属が溶出し得る。触媒金属はカチオン交換樹脂に吸着されるため、カチオン交換樹脂が充填されていない、又は充填量が不十分である場合、触媒金属が超純水中に溶出する。
本発明は、処理水中に溶出した触媒金属を除去/低減することができる水処理設備及び水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被処理水中の過酸化水素を除去する過酸化水素除去手段を備える過酸化水素処理装置であって、
前記過酸化水素除去手段は、アニオン交換樹脂の担体に白金族金属触媒が担持された触媒金属担持樹脂と、カチオン交換樹脂とが充填された樹脂塔を備えており、該樹脂塔内におけるカチオン交換樹脂の充填量が30cm以上分である過酸化水素処理装置を提供する。
本発明は、前処理システム、一次純水システム及び二次純水製造システムを備えた水処理設備であって、
前記二次純水製造システムは、請求項1~6のいずれか1項に記載された過酸化水素処理装置と、
前記過酸化水素処理装置の前段に設けられた紫外線酸化装置と、を有し、
前記過酸化水素処理装置で処理される過酸化水素含有水が、前記紫外線酸化装置で処理された処理水である、水処理設備を提供する。
また本発明は、過酸化水素を除去する過酸化水素除去手段を備える過酸化水素処理装置により被処理水中の過酸化水素を処理する過酸化水素処理方法であって、
前記過酸化水素除去手段は、アニオン交換樹脂の担体に白金族金属触媒が担持された触媒金属担持樹脂と、カチオン交換樹脂とが充填された樹脂塔を備えており、該樹脂塔内におけるカチオン交換樹脂の充填量が層高30cm以上分である過酸化水素処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、処理水中に溶出した触媒金属を除去/低減することができる水処理設備及び水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る水処理設備の概略構成図である。
図2図2は、集水管、ストレーナのいずれも有さない樹脂塔の積層形態の一実施形態を示す概略構成図である。
図3図3は、集水管を有する樹脂塔の積層形態の一実施形態を示す概略構成図である。
図4図4は、ストレーナを有する樹脂塔の積層形態の一実施形態を示す概略構成図である。
図5図5は、実施例1及び2並びに比較例1における各カラム出口水中の触媒金属濃度を示すグラフである。
図6図6は、参考例1において、触媒金属担持樹脂(担体樹脂)のR-OH(%)とHの分解効率との関係性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の過酸化水素処理装置は、その前段に設けられた紫外線酸化装置により処理された過酸化水素含有水を、被処理水として処理する。
過酸化水素処理装置は、過酸化水素を除去する過酸化水素除去手段を備えている。過酸化水素除去手段には、樹脂塔が配置され、配置された樹脂塔に、アニオン交換樹脂の担体に白金族触媒が担持された触媒金属担持樹脂と、カチオン交換樹脂とが充填されている。
触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂とが同一の樹脂塔に充填されていることにより、触媒金属担持樹脂から溶出した触媒金属がカチオン交換樹脂に付着され、処理水中に溶出した触媒金属を除去/低減することができる。
【0009】
触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂とは、同一の樹脂塔に充填されていればよく、その際の充填形態は、特に制限されない。
積層は、触媒金属担持樹脂と一種以上のカチオン交換樹脂とを一塔内に充填して通水する際に、当該触媒金属担持樹脂と一種以上のカチオン交換樹脂とを混合状態で用いずに積層状態で用いることを言う。本明細書では、被処理水の流れ方向において触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂をこの順で積層して充填した状態を「積層」とし、被処理水の流れ方向においてカチオン交換樹脂、触媒金属担持樹脂及びカチオン交換樹脂をこの順で積層して充填した状態を「複層」とする。
また「混床」は、カチオン交換樹脂と触媒金属担持樹脂を混合状態で充填した状態をいう。
【0010】
触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂とを、同一の樹脂塔に充填する際、カチオン交換樹脂は充填量が層高30cm以上分となるよう充填する。
カチオン交換樹脂の充填量が層高30cm以上分となるよう充填するとは、触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂とが積層して充填されている場合は、カチオン交換樹脂の高さが30cm以上ということを意味する。また、カチオン交換樹脂、触媒金属担持樹脂及びカチオン交換樹脂をこの順で積層して充填した場合(つまり、複層の場合)は、触媒金属担持樹脂の下流側にあるカチオン交換樹脂の高さが30cm以上ということを意味する。また、カチオン交換樹脂と触媒金属担持樹脂とを混合して充填した場合(つまり、混床の場合)は、カチオン交換樹脂のみを樹脂塔に充填した場合のカチオン交換樹脂の高さが30cm以上ということを意味する。
層高は、通水方向に対して水平方向の被処理水の処理に寄与する樹脂の積層高さである。
【0011】
触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂が充填される樹脂塔としては、集水管、ストレーナのいずれも有さない形態、集水管を有し、ストレーナを有しない形態、ストレーナを有し、集水管を有しない形態の3つの代表的な形態が挙げられる。以下。図面を用いてこれらの代表的な形態について、それぞれ説明する。
図2は、集水管16及びストレーナ17の何れも有しない樹脂塔10の一形態を示している。図2では、触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂が、「積層」の形態、即ち、樹脂塔10の上段に触媒金属担持樹脂14、下段にカチオン交換樹脂15が、積層されており、被処理水は、樹脂塔10上段から投入され、下段から処理水として排出される。
図中、Xは、触媒担持樹脂14の層高を示し、Yは、カチオン交換樹脂15の層高を示している。カチオン交換樹脂15は、層高Yが30cm以上となるように充填される。なお、触媒担持樹脂の層高Xは特に制限されないが、10cm以上であることが好ましい。
触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂は「複層」の形態で充填されてもよい。この場合、樹脂塔の上段及び下段のカチオン交換樹脂に、中段の触媒金属担持樹脂が挟まれる形で積層される。また、触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂は混合された「混床」の形態で充填されてもよい。「混床」の場合の層高は、後述の図3及び図4の形態も含め、樹脂塔10に充填されている2つの樹脂のうち、いずれか一方のみの樹脂で充填した場合の層高を示す。
【0012】
図3は、集水管16を有する樹脂塔10の一形態を示している。図3では、触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂が、「積層」の形態、即ち、樹脂塔10の側面側から中央に設けられた集水管16に対し、触媒金属担持樹脂14、カチオン交換樹脂15の順に積層(配置)されており、被処理水は、樹脂塔10の側面から投入され、中央の集水管16から処理水として排出される。
図中、Xは、触媒担持樹脂14の層高を示し、Yは、カチオン交換樹脂15の層高を示している。カチオン交換樹脂15は、層高Yが30cm以上となるように充填される。なお、触媒担持樹脂の層高Xは特に制限されないが、10cm以上であることが好ましい。
触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂は「複層」の形態で充填されてもよい。この場合、樹脂塔の側面側から中央に向かって、カチオン交換樹脂、触媒金属担持樹脂、カチオン交換樹脂の順に積層(配置)される。また、触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂は混合された「混床」の形態で充填されてもよい。
【0013】
図4は、ストレーナ17を有する樹脂塔10の一形態を示している。ストレーナ17は、樹脂が樹脂塔10(処理水出口)から流出することを防ぎつつ、処理水の流出を許容するスリット形状の部材であり、スリット幅は、0.5mm以下になっており、樹脂塔10の最下段に設置される。ストレーナ17部分の樹脂層は、流路によって接触時間が異なるため、性能を発揮する用途には使用されない。コスト面・水質への影響の面からストレーナの周囲には、カチオン交換樹脂を充填するのが好ましい。
図4では、触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂が、「積層」の形態、即ち、樹脂塔10の上段から、触媒金属担持樹脂14及びカチオン交換樹脂15がこの順に積層され、最下段にストレーナ17及びカチオン交換樹脂18が設置され、被処理水は、樹脂塔10上段から投入され、下段から処理水として排出される。
図中、Xは、触媒担持樹脂14の層高を示し、Yは、カチオン交換樹脂15の層高を示している。カチオン交換樹脂15は、層高Yが30cm以上となるように充填される。なお、触媒担持樹脂の層高Xは特に制限されないが、10cm以上であることが好ましい。
触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂は「複層」の形態で充填されてもよい。この場合、樹脂塔の上段側から、カチオン交換樹脂、触媒金属担持樹脂、カチオン交換樹脂がこの順で積層される。また、触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂は混合された「混床」の形態で充填されてもよい。
【0014】
触媒金属担持樹脂は、アニオン交換樹脂の担体に、過酸化水素除去性能が高い白金金属触媒が担持されており、担持された白金金属触媒により、紫外線照射により発生した過酸化水素は、2H→2HO+Oの反応により、水と酸素に分解される。触媒金属担持樹脂の担体としては、アニオン交換樹脂が好ましい。
【0015】
白金族金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)などが挙げられ、これらの一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの白金族金属の中ではPtとPdが好ましく、触媒活性の観点からはPdがさらに好ましい。
【0016】
また担体であるアニオン交換樹脂としては、アニオン交換樹脂からの有機炭素(TOC)成分の溶出を抑えることができる点で、ゲル形が好ましい。さらに過酸化水素との接触効率の良い点から、R-OHが60%以上、特に95%以上であることがより好ましい。なお、触媒金属担持樹脂も同様である。
また、アニオン交換樹脂には、弱塩基性アニオン交換樹脂を一部含んでいても良いが、強塩基性アニオン交換樹脂の方が弱塩基性アニオン交換樹脂に比べて塩基度が高く、過酸化水素の分解をより促進することができるため、強塩基性アニオン交換樹脂のみで構成されていることが好ましい。
また触媒担持量は、10mg-触媒/L-R以上500mg-触媒/L-R以下であることが好ましい。10mg-触媒/L-R以上であると、過酸化物を十分に除去することができ、500mg-触媒/L-Rを超えるとコスト増加等の問題が生じる場合がある。
触媒の担体の形状は、大きさ及び形状に特に制限はなく、粒状、及びペレット状のいずれも使用できる。
【0017】
アニオン交換樹脂への触媒金属の担持方法は、特に制限されるものではないが、例えば、アニオン交換樹脂にヘキサクロロ白金酸、塩化パラジウム酸等の溶液を通水した後、ホルマリン等の還元剤を通水し、触媒金属を担持させる方法等がある。
【0018】
樹脂塔に触媒金属担持樹脂とともに充填されるカチオン交換樹脂としては、溶出の点からMR形よりもゲル形樹脂の方が好ましく、R-Hが90%以上が好ましい。
【0019】
樹脂塔への被処理水の通水速度は、SV=30~2000h-1の範囲で使用することが好ましい。本実施形態の触媒樹脂は高い過酸化水素の分解効率を有するため、触媒樹脂への被処理水の通水空間速度SVを高くしても、高度な過酸化水素除去性能を示す。通常、通水空間速度SVが30hr-1未満だと超純水製造では、樹脂からの不純物の溶出が増加するおそれがあるため好ましくない。また、通水空間速度SVが2000hr-1を超えると、通水の圧力損失が過大になる。樹脂塔10への被処理水の通水方向は、最終接液にカチオン交換樹脂が存在する必要があり、最終接液にカチオン交換樹脂が存在する限り、積層、複層及び混床に関係なく、下向流及び上向流のいずれでもよく、通水方向に制限はない。 次に、本発明の水処理設備の構成について、図面を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る超純水製造装置の概略構成図である。なお、図示した超純水製造装置の構成は、単なる一例であり、本発明を制限するものではない。
【0020】
水処理設備1は、前処理システム2、一次純水製造システム3、二次純水製造システク(サブシステム)4を備える。
前処理システム2は、例えば凝集、加圧浮上(沈殿)、ろ過装置(いずれも不図示)等を備えており、原水からろ過水を製造する。一次純水製造システム3は、例えばイオン交換装置、逆浸透膜装置、真空脱気装置、再生型イオン交換装置(混床式、2床3塔式又は4床5塔式等)(いずれも不図示)等を備え、前処理システム2で製造されたろ過水から一次純水(純水)を製造する。
二次純水製造システム4はサブシステムとも呼ばれ、一次純水製造システム3で製造された純水を被処理水として、二次純水(超純水)を製造し、その超純水をユースポイント5に供給する。
サブシステム4は、サブタンク(一次純水タンク)6と、ポンプ7と、熱交換器8と、紫外線酸化装置9と、過酸化水素除去装置(樹脂塔)10と、脱酸素装置11、非再生型混床式イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)12と、微粒子分離膜装置13と、とを有し、これらの装置6~13は被処理水の通水方向に沿って、上流から下流にこの順で配置されている。
水処理設備1は、必要に応じ、水処理の工程で生成する排水を処理する排水処理装置(不図示)が備えられていてもよい。
【0021】
前述の如く、樹脂塔10には、アニオン交換樹脂の担体に白金金属触媒が担持された触媒金属担持樹脂と、カチオン交換樹脂とが充填されている。
【0022】
サブシステム4では、サブタンク6に貯留された被処理水(一次純水)は、ポンプ7により送出され、熱交換器8に供給される。熱交換器8を通過して温度調節された被処理水は、紫外線酸化装置9に供給されて紫外線を照射され、被処理水中の全有機炭素(TOC)が分解される。被処理水に紫外線が照射されると、過酸化水素が生成する。紫外線照射後の過酸化物を含む被処理水(過酸化水素含有水)は、樹脂塔10に供給され、過酸化水素は、アニオン交換樹脂の担体に担持された白金金属触媒により水と酸素に分解される。被処理水を触媒金属担持樹脂に通水すると触媒金属が処理水中に溶出するが、同一の樹脂塔内に充填されたカチオン交換樹脂に吸着されるため、処理水中に溶出した触媒金属を除去/低減することができる。
樹脂塔10で処理された処理水は、脱酸素装置11に供給され、過酸化水素の分解により発生した酸素が除去される。続いて、脱酸素装置11で処理された処理水は、カートリッジポリッシャー12に供給され、イオン交換処理により金属などが除去される。なお、図1では、脱酸素装置11の後段に、カートリッジポリッシャー12が配置されているが、脱酸素装置11は溶存酸素除去が目的のため、樹脂塔10の後段に設けられていればよく、例えば、カートリッジポリッシャー12の後段に脱酸素装置11が配置されていてもよい。
そして、カートリッジポリッシャー12で処理された処理水は、微粒子分離膜装置13に供給され、微粒子が除去される。
こうして得られた超純水は、一部がユースポイント5に供給され、残りがサブタンク6に返送されるようになっている。サブタンク6には、必要に応じて、一次純水製造システム3から一次純水が供給される。
【0023】
紫外線酸化装置9は、被処理水(一次純水)に少なくとも100~200nm付近の波長の紫外線を照射可能な紫外線ランプを備え、被処理水中の有機物を酸化分解するものである。有機物は、有機酸、さらにはCOまで酸化分解される。紫外線酸化装置9は、例えば、185nm付近の波長の紫外線を照射可能な紫外線ランプを備えることが好ましい。紫外線酸化装置9等に用いられる紫外線ランプは、特に制限されるものではないが、例えば低圧水銀ランプ等が好ましい。また、紫外線酸化装置としては、流通型、浸漬型等があるが、処理効率の点で流通型が好ましい。
【0024】
脱酸素装置11としては、水に溶存する酸素(O)を除去できるものであれば任意のものを用いることができる。例えば、真空脱気装置、膜脱気装置および窒素脱気装置等が挙げられる。真空脱気装置、膜脱気装置および窒素脱気装置は、水中の溶存酸素濃度を低減すると同時に揮発性有機物や炭酸などを気相中に除去し、これらの水中の濃度を低減することができる。例えば、膜脱気装置は、気体分離膜で仕切られた一方の室に、樹脂塔10で処理された処理水が被処理水として供給されるとともに、他方の室を減圧することにより、気体分離膜を通して被処理水中に含まれるガス、本発明では酸素等を他方の室に移行させて除去する装置である。気体分離膜としては、例えばテトラフルオロエチレン系、ポリオレフィン系等の疎水性の高分子膜を中空糸膜状等の形状に形成したもの等を用いる。
その他の脱酸素装置11として、水素(H)を添加した上でパラジウム(Pd)触媒によって酸素を水素と反応させて水とすることにより酸素を除去するものを用いることもできる。
この水素添加は、樹脂塔10の前段で行うのが好ましい。この場合、後段の脱酸素装置11による酸素の除去は省略してもよいし、触媒反応を利用した酸素の除去と、脱酸素装置11による酸素の除去を併用してもよい。
【0025】
カートリッジポリッシャー12としては、被処理水中のカチオン、アニオン等の不純物を除去するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂との混床によるイオン交換装置(混床1塔式)等が挙げられる。
【0026】
微粒子分離膜装置13は、カートリッジポリッシャー12等から流出する微粒子等を除去するものであれば特に制限されるものではないが、微粒子分離膜として限外濾過膜を用いたものが挙げられる。
【0027】
その他、前処理システム2を構成する凝集、加圧浮上(沈殿)、ろ過装置等、一次純水システムを構成するイオン交換装置、逆浸透膜装置、真空脱気装置、再生型イオン交換装置等、サブシステムを構成するサブタンク6、ポンプ7、熱交換器8としては、サブシステムで設けられる超純水製造装置において一般的に用いられているものを使用することができる。
【0028】
以上の構成によれば、樹脂塔10に充填された触媒金属担持樹脂から処理水中へ溶出した触媒金属を除去/低減することができ、有機物、過酸化水素、溶存ガス(酸素、二酸化炭素等)、イオン性物質(不純物)及び微粒子等が除去された高純度の超純水を得ることができる。
そして、このような本実施形態により得られる超純水は、電子部品や電子部品の製造器具の洗浄に好適である。
【実施例0029】
[実施例1]
内径22mm、高さ1mのイオン交換樹脂容器(カラム)において、カラムの入り口側に、触媒金属担持樹脂(Cat.)を38mL(層高10cm)、カラムの出口側に、カチオン交換樹脂(CER)を304mL(層高80cm)、合計90cm積層して充填した。触媒金属担持樹脂は、ORLITE HR43-HG(オルガノ製)を用い、カチオン交換樹脂は、AMBERJET ESP-K(オルガノ製)を用いた。用いた触媒金属担持樹脂及びその担体樹脂のR-OHは、R-OH>95%であった。またカチオン交換樹脂のR-Hは、R-H≧90%であった。
このカラムに、超純水を空間速度SV50/hで通水した。この超純水は、FOXBOR製875CRにて測定した比抵抗が18.2MΩ・cmであり、Anatel製A-1000XPで測定したTOCが、TOC≦1.0μg/Lであり、モノリス濃縮法にてAgilent社製ICP-MSを用いて測定した触媒金属の濃度が≦1pq/Lであった。
通水から2週間、カラム出口水中の触媒金属の濃度を、WO2022/102326 A1の比較例1に準じた方法でサンプリングし、Agilent社製ICP-MS 8900にて測定した。結果を図5に示す。なお、図5は比較例1を基準に記載する。
【0030】
[実施例2]
触媒金属担持樹脂を(Cat.)を38mL及びカチオン交換樹脂(CER)を304mL混床で層高90cmにカラムに充填する以外は、実施例1と同様にして、カラム出口水中の触媒金属濃度を測定した。なお、触媒金属担持樹脂及びカチオン交換樹脂は、実施例1と同じ樹脂を用いた。結果を図5に示す。
【0031】
[比較例1]
触媒金属担持樹脂(Cat.)を38mL及び非再生型混床式イオン交換樹脂(CP)を304mL混床で層高90cmにカラムに充填する以外は、実施例2と同様にして、カラム出口水中の触媒金属濃度を測定した。非再生型イオン交換樹脂は、AMBERJET ESP-2(オルガノ製)を用いた。結果を図5に示す。
【0032】
[参考例1]
の含有量が35μg/Lである被処理水を準備した。これとは、別に、実施例1のカラムに、実施例1と同じ触媒金属担持樹脂(Cat.)を38mL(層高10cm)で充填したカラムを準備した。そして、SV:425h-1の通水速度で上記の被処理水を、上記のカラムに通水し、通水1週間後において、触媒金属担持樹脂(担体樹脂)のR-OH(%)とHの分解効率との関係性を評価した。結果を図6に示す。
【0033】
図5より、実施例2と比較例1との対比から、実施例2の方が、比較例1に比して処理水中の触媒金属がより除去/低減されていることが確認された。このことから、同一塔内に触媒金属担持樹脂とともに、カチオン交換樹脂をより多く充填した方が、触媒金属がより除去/低減されることが実証された。
また実施例同士を対比すると、実施例1の方が、実施例2に比して処理水中の触媒金属がより除去/低減されていることが確認された。このことから、触媒金属担持樹脂とカチオン交換樹脂の充填状態は、積層の方が、混床に比して、触媒金属がより除去/低減されることが実証された。これは、混床の方が、積層に比して、最終接液中に触媒金属担持樹脂がより多く存在するためであると考えられる。
また図6より、触媒金属担持樹脂(担体樹脂)のR-OHが60%以上であれば、十分なHの分解効率が得られることが実証された。
【符号の説明】
【0034】
1 水処理設備
2 前処理システム
3 一次純水製造システム
4 二次純水製造システム(サブシステム)
5 ユースポイント
6 サブタンク
7 ポンプ
8 熱交換器
9 紫外線酸化装置
10 過酸化水素除去装置(樹脂塔)
11 脱酸素装置
12 非再生型混床式イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)
13 微粒子分離膜装置
14 触媒担持樹脂
15 カチオン交換樹脂
16 集水管
17 ストレーナ
18 カチオン交換樹脂
X 触媒金属担持樹脂の層高
Y カチオン交換樹脂の層高
図1
図2
図3
図4
図5
図6