(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160781
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】麺類及び麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241108BHJP
A23L 7/113 20160101ALI20241108BHJP
A01H 5/10 20180101ALN20241108BHJP
A01H 6/46 20180101ALN20241108BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/113
A01H5/10
A01H6/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076129
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】302024571
【氏名又は名称】株式会社 山本忠信商店
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】山本 マサヒコ
(72)【発明者】
【氏名】宮部 稔勝
(72)【発明者】
【氏名】玉江 宇臣
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 裕乃
(72)【発明者】
【氏名】加瀬谷 望
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 日菜子
(72)【発明者】
【氏名】山内 宏昭
【テーマコード(参考)】
2B030
4B046
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB02
2B030AD08
4B046LA02
4B046LA05
4B046LA06
4B046LB01
4B046LB04
4B046LB07
4B046LC01
4B046LC02
4B046LG02
4B046LG04
4B046LG11
4B046LG29
(57)【要約】
【課題】生地の製麺性に優れ、食感が良好な高品質の無塩又は減塩の麺類、並びに該麺類を、食品添加物を加えることなく、低コストかつ簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】麺類は、高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型がGlu-B3g、Glu-B3b又はGlu-B3abである小麦由来の小麦粉と、対原料粉当たりの添加量が0.0~0.5重量%である食塩と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型がGlu-B3g、Glu-B3b又はGlu-B3abである小麦由来の小麦粉と、
対原料粉当たりの添加量が0.0~0.5重量%である食塩と、
を含む麺類。
【請求項2】
前記小麦において、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型はGlu-B3gであり、低分子グルテニンサブユニットのAゲノムの遺伝子型はGlu-A3dであり、かつ、該Bゲノムのアミロース合成遺伝子型はWx-B1bである、
ことを特徴とする請求項1に記載の麺類。
【請求項3】
前記小麦は、「みのりのちから」である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の麺類。
【請求項4】
対原料粉当たりの食塩の添加量は、0.0~0.25重量%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の麺類。
【請求項5】
対原料粉当たりの食塩の添加量は、0.0重量%である、
ことを特徴とする請求項4に記載の麺類。
【請求項6】
前記小麦粉におけるタンパク質含有量は、10.0~15.0重量%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の麺類。
【請求項7】
原料粉は、前記小麦粉のみであり、前記麺類は、うどん又は中華麺である、
ことを特徴とする請求項1に記載の麺類。
【請求項8】
高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型がGlu-B3g、Glu-B3b又はGlu-B3abである小麦由来の小麦粉を加える工程と、
対原料粉当たりの添加量が0.0~0.5重量%である食塩を加える工程と、
を含むことを特徴とする麺類の製造方法。
【請求項9】
前記小麦において、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型はGlu-B3gであり、低分子グルテニンサブユニットのAゲノムの遺伝子型はGlu-A3dであり、かつ、該Bゲノムのアミロース合成遺伝子型はWx-B1bである、
ことを特徴とする請求項8に記載の麺類の製造方法。
【請求項10】
前記小麦は、「みのりのちから」である、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の麺類の製造方法。
【請求項11】
対原料粉当たりの食塩の添加量は、0.0~0.25重量%である、
ことを特徴とする請求項8に記載の麺類の製造方法。
【請求項12】
対原料粉当たりの食塩の添加量は、0.0重量%である、
ことを特徴とする請求項11に記載の麺類の製造方法。
【請求項13】
前記小麦粉におけるタンパク質含有量は、10.0~15.0重量%である、
ことを特徴とする請求項8に記載の麺類の製造方法。
【請求項14】
原料粉は、前記小麦粉のみであり、うどん又は中華麺を製造する、
ことを特徴とする請求項8に記載の麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類及び麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ナトリウム(食塩)に含まれるナトリウムは、人体の細胞の細胞液のバランスを維持し、ヒトの神経及び筋肉の機能において重要な役割を果たしている。しかし、食塩の過剰摂取は、高血圧、循環器系、腎臓疾患の危険因子であると言われている。これらの罹患を回避して健康を維持するためには、1日当たりの食塩摂取量を低減することが推奨されている。厚生労働省は、日本人の食事摂取基準(2015年版)(平成26年厚生労働省)に基づいて、2015年4月から、日本人の食事からのナトリウム(食塩相当量)摂取目標量を、男性9.0g未満/日、女性7.5g未満/日から、男性8.0未満g/日、女性7.0未満g/日に低減させた。このような背景から、日本においては昨今、食塩摂取量を減らす動きが拡大しており、それを達成するための食品として、各種の無塩食品、低塩食品、減塩食品が製造販売されている。
【0003】
食塩は、食品全般において広く使用されている代表的な調味料であり、多くの加工食品に添加されている。特に、日本人に馴染みの深い麺類の製造において、適当量の食塩の添加は、麺生地の物性の改善(弾性の強化)を通じて麺生地の製麺性に大きく寄与し、得られた麺類の食感(主に、弾性)に大きく影響すると言われている。
【0004】
無塩又は減塩(低塩)の麺類の製法がいくつか提案されてきた。
【0005】
特許文献1には、食塩の代替として、多くの食品に使用されている塩化カリウムを、食塩の代わりに麺類生地に添加する麺類の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、食塩を添加しない即席麺の製造技術が開示されており、小麦粉を主体とする穀物粉を配合してなる即席麺において、前記穀物粉100質量部に対し、グルタチオンを0.02~1.0質量部含有することを特徴とする即席麺が記載されている。そして、適度なグルタチオンの添加により、上記麺類製造時の製麺性、得られた麺類の外観、食感、風味が向上することが報告されている。
【0007】
特許文献3では、食感の改善された中華麺の製造方法並びに無塩又は減塩中華麺改質用製剤に関する技術が開示されており、小麦粉100gあたり、アルギニン又はアルギニン塩の量がアルギニン換算で0.1~0.5g、食塩含量が0.01~0.9g、卵白の量が0.1~5g、グアガムの量が0.1~5g、アルギン酸の量が0.01~2g又はアルギン酸塩が0.01~2gである減塩中華麺の製造方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、主原料粉1kgに対して10~30gの塩化カリウムを添加して混捏した麺生地から、常法により作製した麺線をα化し、水分が7~14重量%となるまで熱風乾燥した乾燥麺塊に対して、さらに120~200℃の高温熱風、高温熱風と水蒸気の混合気体、または過熱水蒸気によって、水分が3~6重量%となるまで加熱乾燥することにより、減塩を目的に食塩の代替として塩化カリウムを使用したノンフライ麺において、塩化カリウムの独特のえぐみがマスキングされたノンフライ麺の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭63-57023号公報
【特許文献2】特開平10-262588号公報
【特許文献3】特開2015-213434号公報
【特許文献4】特開2017-175923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び特許文献4の方法では、食塩の代替物質として塩化カリウムが使用されている。塩化カリウムは、食品添加物であるため、近年の無添加食品が好まれる傾向に鑑みると、消費者に必ずしも好印象を与えず、また、塩化カリウムを腎障害患者が摂取すると高カリウム血症をきたす可能性がある点で問題視されていた。また、特許文献1~4の方法ではいずれも、原料粉以外の他原料の添加を要するため、麺製造時の生地配合が複雑となってコストもかかり、また、生地の製麺性や得られた麺類の食感の点で課題を残していた。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、生地の製麺性に優れ、食感が良好な高品質の無塩又は減塩の麺類、並びに該麺類を、食品添加物を加えることなく、低コストかつ簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る麺類は、
高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型がGlu-B3g、Glu-B3b又はGlu-B3abである小麦由来の小麦粉と、
対原料粉当たりの添加量が0.0~0.5重量%である食塩と、
を含む。
【0013】
例えば、前記小麦において、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型はGlu-B3gであり、低分子グルテニンサブユニットのAゲノムの遺伝子型はGlu-A3dであり、かつ、該Bゲノムのアミロース合成遺伝子型はWx-B1bである。
【0014】
例えば、前記小麦は、「みのりのちから」である。
【0015】
例えば、対原料粉当たりの食塩の添加量は、0.0~0.25重量%である。
【0016】
例えば、対原料粉当たりの食塩の添加量は、0.0重量%である。
【0017】
例えば、前記小麦粉におけるタンパク質含有量は、10.0~15.0重量%である。
【0018】
例えば、原料粉は、前記小麦粉のみであり、前記麺類は、うどん又は中華麺である。
【0019】
本発明の第2の観点に係る麺類の製造方法は、
高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型がGlu-B3g、Glu-B3b又はGlu-B3abである小麦由来の小麦粉を加える工程と、
対原料粉当たりの添加量が0.0~0.5重量%である食塩を加える工程と、
を含むことを特徴とする。
【0020】
例えば、前記小麦において、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型はGlu-B3gであり、低分子グルテニンサブユニットのAゲノムの遺伝子型はGlu-A3dであり、かつ、該Bゲノムのアミロース合成遺伝子型はWx-B1bである。
【0021】
例えば、前記小麦は、「みのりのちから」である。
【0022】
例えば、対原料粉当たりの食塩の添加量は、0.0~0.25重量%である。
【0023】
例えば、対原料粉当たりの食塩の添加量は、0.0重量%である。
【0024】
例えば、前記小麦粉におけるタンパク質含有量は、10.0~15.0重量%である。
【0025】
例えば、原料粉は、前記小麦粉のみであり、うどん又は中華麺を製造する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、生地の製麺性に優れ、食感が良好な高品質の無塩又は減塩の麺類、並びに該麺類を、食品添加物を加えることなく、低コストかつ簡便に製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1.麺類)
本発明による麺類は、高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型がGlu-B3g、Glu-B3b又はGlu-B3abである小麦由来の小麦粉と、対原料粉(水分含量13.5%ベース)100に対する添加量が0.0~0.5重量%である食塩と、を含む。本発明によって、いわゆる、食塩不添加の無塩麺類、又は食塩添加量が通常より少ない減塩麺類を提供することができる。
【0028】
本発明による麺類は、高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がグルテンの強度(弾性)を強める効果の高いGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型がグルテンの強度(弾性)を強める効果の高いGlu-B3g、Glu-B3b、Glu-B3abのいずれかである、グルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉した小麦粉単独粉、又は該小麦粉を用いたブレンド小麦粉が用いられる。このようなグルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉した小麦粉を用いることで、対原料粉当たりの添加量が0.0~0.5重量%という無塩又は少ない量の食塩添加量であっても、製麺時の製麺性が良好で、食感が良好かつ高品質の無塩麺類又は減塩麺類を簡便に低コストで製造することができる。
【0029】
本発明において、「麺類」には、うどん、中華麺、生パスタ、パスタ、即席麺、フライ即席中華麺、きしめん、そば、冷麺等、小麦粉を主原料とする麺類全てが含まれ得る。本発明において、特に好適な麺類として、例えば、うどん、中華麺、フライ即席中華麺、生パスタを挙げることができ、さらに好適な麺類として、例えば、うどん及び中華麺を挙げることができる。
【0030】
本発明において使用される小麦粉として、好ましくは、高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がグルテンの強度(弾性)を強める効果の最も高いGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのA、Bゲノムの遺伝子型がそれぞれグルテンの強度(弾性)を強める効果の高いGlu-A3d、Glu-B3gであり、Bゲノムのアミロース合成遺伝子型がWx-B1bである、小麦粉生地のグルテン特性の最も強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉された小麦粉、又は当該小麦粉を用いたブレンド小麦粉が用いられ得る。このような特性を持つ小麦品種・系統由来の小麦粉を用いて各種生地ミキシング用のピンミキサーを用いてファリノグラフにおける500BUを示す適性吸水の生地のミキシングを行った場合、通常の市販強力粉(例えば、日清製粉(株)製カメリヤ)を用いた生地に比して、例えば、ピーク時間が1.5倍以上長くなる。このような小麦品種・系統として、これらに限定されるものではないが、例えば、「みのりのちから」、「ゆめちから」、「ゆめちから2020」、「北海259号」、「ハナマンテン」、「北海266号」等を挙げることができる。本発明において、好ましくは、特にグルテン特性に優れる「みのりのちから」が用いられる。
【0031】
本発明において、原料粉としては、上述のグルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦由来の小麦粉のみ、又は該小麦粉を用いたブレンド小麦粉が用いられるが、好ましくは、上述の小麦由来の小麦粉のみが用いられる。上述の小麦由来の小麦粉のみが用いられる場合、製造される麺類は、好ましくは、うどん又は中華麺である。
【0032】
本発明の麺類において、対原料粉(水分含量13.5%ベース)100に対する食塩添加量は、0.0~0.5重量%であるが、好ましくは0.0~0.25重量%であり、さらに好ましくは0.0重量%である。製麺において、適当量の食塩の添加は、麺生地の物性の改善(弾性の強化)を通じて麺生地の製麺性に大きく寄与し、得られた麺類の食感(主に、弾性)に大きな影響を与えるところ、本発明においては、グルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉した小麦粉を用いることで、対原料粉当たりの添加量が0.0~0.5重量%という無塩又は少ない量の食塩添加量であっても、強靭なグルテンを持つ超強力粉の特性が発揮され、製麺性を低下させることなく、食感が良好かつ品質良好な無塩麺類又は減塩麺類の製造が可能となる。
【0033】
本発明においては、上述のとおり、グルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉した小麦粉を用いることで、製麺性に優れ、かつ高品質な無塩麺類又は減塩麺類を製造できる。通常、適当量の食塩を添加する公知の麺類では、添加されている食塩の作用によって、麺類生地中の小麦粉グルテンの弾性が強化され、それぞれの麺類に適した食感の麺類の製造が可能になる。例えば、うどんではうどん用粉(通常中力粉)、中華麺では中華麺用粉(通常準強力粉)がそれぞれの特徴的な品質の麺を製造するために使用される。しかし、これらの麺製造に用いられる生地において食塩が添加されない、又は減塩された場合、上記の食塩による小麦粉グルテンの弾性の強化作用が得られなくなる。それにより、生地は著しく軟化し、その製麺性が大きく低下するとともに、得られた麺の食感も著しく低下し、麺の総合的品質が大きく低下することになる。本発明においてはこの問題を解決するために、グルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉した小麦粉又はそのブレンド小麦粉が用いられる。すなわち、「みのりのちから」に代表されるような非常に強力な超強力小麦由来の小麦粉は、グルテンが非常に強靭であるため、無塩又は減塩としても、上記のような通常の各種麺類用小麦粉を用いて通常の麺類(従来の適当量の食塩を添加した麺)を製造した場合とほぼ同等の製麺性及び品質の麺類を製造することが可能になる。逆に、従来の適当量の食塩を添加した生地において、本発明に使用される超強力小麦品種・系統の小麦由来の小麦粉を用いると、その強靭なグルテン特性ゆえに、生地が強くなり過ぎ、硬くなってしまうため、製麺性が低下する。一方で、本発明において、無塩又は減塩の生地に超強力小麦品種・系統の小麦由来の小麦粉を用いると、生地がべとつかず適度に軟化して、それぞれの麺類に適した生地物性が得られ、優れた製麺性が実現するとともに、食感の良い高品質の麺類を製造できるようになる。
【0034】
本発明の無塩又は減塩の麺類の製造に用いられる小麦粉のタンパク質含有量(水分含量13.5%ベース)は10.0~15.0%であり、好ましくは11.0~14.0%である。このタンパク質含有量(水分含量13.5%ベース)の範囲では、製麺性に優れ、食感が良好な品質の高い麺類の製造が可能となる。
【0035】
本発明による麺類は、茹で麺をそのまま食することも可能であるし、麺類の通常の食し方と同様に、茹で麺をそれぞれの麺類にマッチするつゆやソースに絡ませて食することも可能である。特に、食塩含有量が0.0重量%の無塩麺類の場合、味が淡泊になる傾向があるが、本発明の麺類は公知の麺類(食塩を通常量添加した麺類)とほぼ同等の品質(風味や食感)を示すため、無塩麺類であることをほとんど感じることなく美味しく食することが可能である。このため、公知の麺類を、本発明の麺類に変更するだけで、風味、食感が低下することなく、大幅な減塩が可能になる。特に、うどん、中華麺、即席麺のように、つゆに浸された麺類を食する場合、つゆを飲み干さないことによってその減塩効果をさらに向上させることが可能である。
【0036】
なお、本発明の麺類において、副原料として一般的に使用されている、エタノール剤、アルカリ剤、リン酸塩類、各種増粘剤、麺質改良剤、食用油脂、pH調整剤、色素等を適宜添加することができる。特に、本発明の麺類は、無塩麺類又は減塩麺類であるため、生麺又は茹で麺の保存中の雑菌抑制効果が低下する傾向がある。このため、雑菌抑制の目的で、エタノール剤を、エタノール濃度で対原料粉(水分含量13.5%ベース)1~5重量%、好ましくは2~4重量%添加してもよい。
【0037】
(2.麺類の製造方法)
本発明の麺類の製造方法は、
高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型がGlu-B3g、Glu-B3b又はGlu-B3abである小麦由来の小麦粉を加える工程と、
対原料粉(水分含量13.5%ベース)100に対する添加量が0.0~0.5重量%である食塩を加える工程と、
を含む。
【0038】
本発明の麺類の製造方法において、高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がグルテンの強度(弾性)を強める効果の高いGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのBゲノムの遺伝子型がグルテンの強度(弾性)を強める効果の高いGlu-B3g、Glu-B3b、Glu-B3abのいずれかである、グルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉した小麦粉単独粉、又は該小麦粉を用いたブレンド小麦粉が用いられる。このようなグルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉した小麦粉を用いることで、対原料粉当たりの添加量が0.0~0.5重量%という無塩又は少ない量の食塩添加量であっても、製麺時の製麺性が良好で、食感が良好かつ高品質の無塩麺類又は減塩麺類を簡便に低コストで製造することができる。なお、麺類の詳細については、前述同様である。
【0039】
本発明において使用される小麦粉として、好ましくは、高分子グルテニンサブユニットのDゲノムの遺伝子型がグルテンの強度(弾性)を強める効果の最も高いGlu-D1dであり、かつ、低分子グルテニンサブユニットのA、Bゲノムの遺伝子型がそれぞれグルテンの強度(弾性)を強める効果の高いGlu-A3d、Glu-B3gであり、Bゲノムのアミロース合成遺伝子型がWx-B1bである、小麦粉生地のグルテン特性の最も強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉された小麦粉、又は該小麦粉を用いたブレンド小麦粉が用いられ得る。このような特性を持つ小麦品種・系統由来の小麦粉を用いて各種生地ミキシング用のピンミキサーを用いてファリノグラフにおける500BUを示す適性吸水の生地のミキシングを行った場合、通常の市販強力粉(例えば、日清製粉(株)製カメリヤ)を用いた生地に比して、例えば、ピーク時間が1.5倍以上長くなる。このような小麦品種・系統として、これらに限定されるものではないが、例えば、「みのりのちから」、「ゆめちから」、「ゆめちから2020」、「北海259号」、「ハナマンテン」、「北海266号」等を挙げることができる。本発明において、好ましくは、特にグルテン特性に優れる「みのりのちから」が用いられる。
【0040】
本発明において、原料粉としては、上述のグルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦由来の小麦粉のみ、又は該小麦粉を用いたブレンド小麦粉が用いられるが、好ましくは、上述の小麦由来の小麦粉のみが用いられる。上述の小麦由来の小麦粉のみが用いられる場合、製造される麺類は、好ましくは、うどん又は中華麺である。
【0041】
本発明において、対原料粉(水分含量13.5%ベース)100に対する食塩添加量は、0.0~0.5重量%であるが、好ましくは0.0~0.25重量%であり、さらに好ましくは0.0重量%である。本発明においては、グルテン特性の強い超強力小麦品種・系統の小麦から製粉した小麦粉を用いることで、無塩又は少ない量の食塩添加量であっても、強靭なグルテンを持つ超強力粉の特性が発揮され、製麺性を低下させることなく、食感が良好かつ品質良好な無塩麺類又は減塩麺類の製造が可能となる。
【0042】
本発明の無・減塩麺類の製造に用いられる小麦粉のタンパク質含有量(水分含量13.5%ベース)は10.0~15.0%であり、好ましくは11.0~14.0%である。このタンパク質含有量(水分含量13.5%ベース)の範囲では、製麺性に優れ、食感が良好な品質の高い麺類の製造が可能となる。
【0043】
なお、本発明の麺類の製造方法において、副原料として一般的に使用されている、エタノール剤等を添加することができるが、その詳細については前述同様である。
【0044】
本発明によるうどんの製造方法の一例について以下に説明する。
<うどん配合>
みのりのちから粉 100
食塩 0又は0.25
水 40
<製麺工程>
食塩水溶液の調製:仕込み水に原材料の食塩を添加し完全に溶解
ミキシング:ミキサーに小麦粉を入れ、ミキサー蓋の穴から食塩水溶液を徐々に滴下しながら加え6分間ミキシング
荒延:1回(ロールクリアランス:3mm)
複合:2回(ロールクリアランス:3mm)
圧延:3回(ロールクリアランス:2.5mm→2.3mm→2.0mm、最終麺帯厚2.2mm程度に圧延)
切り出し:切り刃10番角でカット
麺のカット:製麺機のカッターを用いて約15cmに麺線をカット
麺の茹で条件:沸騰水中で20分間
【0045】
(3.結語)
本発明によれば、生地の製麺性に優れ、食感が良好な高品質の無塩又は減塩の麺類を提供することができる。本発明において、麺類の生地の弾性を非常に強くする高分子グルテニンサブユニット、低分子グルテニンサブユニット遺伝子型構成を有する、非常にグルテン特性の強い超強力小麦粉を用いるため、無塩又は少ない量の食塩添加量であっても、生地の製麺性を低下させることなく、食感が良好かつ品質良好な無塩麺類又は減塩麺類を提供することができる。日本においては昨今、食塩摂取量を減らす動きが拡大しているが、本発明によって、大幅な減塩を図りつつ、日本人に馴染みの深い麺類を美味しく食することが可能になり、高血圧患者、循環器系疾患患者、腎疾患患者のみならず、これらの疾患の予備軍の消費者や健康志向の高い消費者を中心に大きなインパクトを与え、現代の食生活改善及び麺類の需要拡大への多大な貢献及び寄与が期待できる。
【0046】
本発明はまた、食品添加物を加えることなく、低コストかつ簡便に食感が良好かつ品質良好な無塩麺類又は減塩麺類を製造する方法を提供する。従来の無塩又は減塩の麺類の製造においては、原料粉以外の他原料の添加を要していたため、麺製造時の生地配合が複雑となり、コストもかかっていたが、本発明においては、原料粉以外の食品添加物を加えることなく、低コストかつ簡便に無塩又は減塩の麺類を製造できる。また、本発明においては、従来添加されていた塩化カリウムも使用しないため、腎障害患者が安心して食することができる点でも優位性を有する。
【実施例0047】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
超強力粉を用いて無塩うどん及び減塩うどんを製造し、製麺時の製麺性及び茹で麺を評価した。
【0049】
製麺時の製麺性評価は、製麺時の生地状態及び生麺の状態(外観、物性)を評価することで行った。得られたうどんの茹で麺の評価は、沸騰水中で20分間茹でた麺を用い、麺の硬さ、粘弾性、表面状態(なめらかさ)及び総合的食感を評価することで行った。各評価は、5人のパネラーにより、5段階の官能評価によって行った。また、茹で麺の硬さを数値で評価するため、物性測定装置を用いて楔型プランジャーにより、1mm/sの速度で麺の破断試験を行い最大の力を測定した。なお、表中の各種小麦粉のタンパク質含量は、常法であるNIR法によって測定した。また、本実施例において、配合は、小麦粉(水分含量13.5%ベース)100に対する重量部%で示される。
【0050】
以下に製麺工程を示す。試験例1~4及び比較例1~2について、表1に示す配合により製麺を行った。
食塩水溶液の調製:仕込み水に原材料の食塩を添加し完全に溶解
ミキシング:ミキサーに小麦粉を添加し、ミキサー蓋の穴から食塩水溶液を徐々に滴下しながら加え6分間ミキシング
荒延:1回(ロールクリアランス:3mm)
複合:2回(ロールクリアランス:3mm)
圧延:3回(ロールクリアランス:2.5mm→2.3mm→2.0mm、最終麺帯厚2.2mm程度に圧延)
切り出し:切り刃10番角でカット
麺のカット:製麺機のカッターを用いて約15cmに麺線をカット
麺の茹で条件:沸騰水中で20分間
【0051】
表1に試験例1~4及び比較例1~2のうどんの製麺時の製麺性及び茹で麺の評価結果を示す。通常の市販うどん用粉を用いた食塩無添加うどん区の比較例1では、製麺時評価が非常に悪く、茹で麺の評価も全ての項目で著しく劣っており、特に硬さ及び総合的食感の評価が劣っていた。市販うどん用粉を用いて食塩を2.0%添加した通常配合のうどん区の比較例2では、製麺時及び茹で麺の評価結果がともに概ね「普通」であった。これに対して、超強力粉を用いた試験例1~4の実施例うどん区では、製麺性及び茹で麺の評価結果が非常に良好であり、概ね通常配合のうどん区の比較例2と同等かそれ以上の評価結果を示した。特に、みのりのちから及びゆめちからのブレンド粉を用いて食塩を0.5%添加した試験例4では、製麺時及び茹で麺の評価が高く、特に食感については、通常配合のうどん区の比較例2よりも明らかに良好であった。また、みのりのちからのみを用いた食塩不添加(無塩)の試験例1では、通常の市販うどん用粉を用いた食塩無添加(無塩)の比較例1に比して、製麺性及び茹で麺の評価ともに著しく良好であり、市販うどん用粉を用いて食塩を2.0%添加した通常配合のうどん区の比較例2と比べてもすべての項目において優れた結果となった。
【0052】
【0053】
以上の結果から、本実施例の無塩うどん及び減塩うどんは、製麺時の製麺性に非常に優れ、また、茹で麺の麺の硬さ、粘弾性、表面状態(なめらかさ)及び総合的食感も非常に優れていることがわかった。また、本実施例の製麺によって、高品質の無塩うどん及び減塩うどんを低コストかつ簡便に製造できることが示された。
【0054】
(実施例2)
超強力粉を用いて無塩中華麺及び減塩中華麺を製造し、製麺時の製麺性及び茹で麺を評価した。
【0055】
製麺時の製麺性評価は、製麺時の生地状態及び生麺の状態(外観、物性)を評価することで行った。得られた中華麺の茹で麺の評価は、沸騰水中で3分間茹でた麺を用い、麺の硬さ、粘弾性、表面状態(なめらかさ)及び総合的食感を評価することで行った。各評価は、5人のパネラーにより、5段階の官能評価によって行った。また、茹で麺の硬さを数値で評価するため、物性測定装置を用いて楔型プランジャーにより、1mm/sの速度で麺の破断試験を行い最大の力を測定した。なお、表中の各種小麦粉のタンパク質含量は、実施例1と同様に測定した。また、本実施例において、配合は、小麦粉(水分含量13.5%ベース)100に対する重量部%で示される。
【0056】
以下に製麺工程を示す。試験例5~8及び比較例3~5について、表2に示す配合により製麺を行った。
塩水溶液の調製:仕込み水に原材料の食塩及びかん紛を添加、混合し完全に溶解
ミキシング:ミキサーに小麦粉を入れ、ミキサーの蓋の穴から塩水溶液を徐々に滴下しながら加え6分間ミキシング
荒延:1回(ロールクリアランス:3mm)
複合:2回(ロールクリアランス:3mm)
圧延:3回(ロールクリアランス:2.0mm→1.4mm→1.1mm、最終麺帯厚1.2mm程度に圧延)
切り出し:切刃20番角でカット
麺のカット:製麺機のカッターを用いて約15cmに麺線をカット
生麺の茹で条件:沸騰水中で3分間
【0057】
表2に試験例5~8及び比較例3~5の中華麺の製麺時の製麺性及び茹で麺の評価結果を示す。通常の市販中華麺用粉を用いた食塩無添加中華麺区の比較例3では、製麺時評価が非常に悪く、茹で麺の評価も全ての項目で著しく劣っていた。そして、通常の市販中華麺用粉を用いて食塩を0.5%添加した比較例4では、製麺時の評価、茹で麺の評価共に劣っていた。また、通常の市販中華麺用粉を用いて食塩を1.0%添加した比較例5では、製麺時及び茹で麺の評価結果がともに概ね「普通」であった。これに対して、超強力粉を用いた試験例5~8の実施例中華麺区では、製麺性及び茹で麺の評価結果が良好であり、概ね通常配合の中華麺区の比較例5と同等かそれ以上の評価結果を示した。特に、食塩を0.5%添加した試験例6及び試験例8では、製麺時及び茹で麺の評価が高く、特に、みのりのちからを用いた試験例6の評価が総合的に非常に良好であった。また、みのりのちからを用いた食塩不添加(無塩)の試験例5、及びゆめちからを用いた食塩不添加(無塩)の試験例7では、通常の市販中華麺用粉を用いた食塩無添加(無塩)の比較例3に比して、製麺性及び茹で麺の評価ともに著しく良好であり、市販中華麺用粉を用いて食塩を1.0%添加した通常配合の中華麺区の比較例5と比べてもすべての項目において優れた結果となった。
【0058】
【0059】
以上の結果から、本実施例の無塩中華麺及び減塩中華麺は、製麺時の製麺性に非常に優れ、また、茹で麺の麺の硬さ、粘弾性、表面状態(なめらかさ)及び総合的食感も非常に優れていることがわかった。また、本実施例の製麺によって、高品質の無塩中華麺及び減塩中華麺を低コストかつ簡便に製造できることが示された。
【0060】
(実施例3)
超強力粉を用いて無塩フライ即席中華麺及び減塩フライ即席中華麺を製造し、製麺時の製麺性及び茹で麺を評価した。
【0061】
製麺時の製麺性評価は、製麺時の生地状態及び生麺の状態(外観、物性)を評価することで行った。得られたフライ即席中華麺の茹で麺の評価は、お湯で3分湯戻した麺を用い、麺の硬さ、粘弾性、表面状態(なめらかさ)及び総合的食感を評価することで行った。各評価は、5人のパネラーにより、5段階の官能評価によって行った。なお、表中の各種小麦粉のタンパク質含量は、実施例1と同様に測定した。また、本実施例において、配合は、小麦粉+馬鈴薯澱粉(水分含量13.5%ベース)100に対する重量部%で示される。
【0062】
以下に製麺工程を示す。試験例9~11及び比較例6~7について、表3に示す配合により製麺を行った。
塩水溶液の調製:仕込み水に原材料の食塩及びかん紛を添加、混合し完全に溶解
ミキシング:ミキサーに小麦粉、馬鈴薯澱粉を入れ、ミキサーの蓋の穴から塩水溶液を徐々に滴下しながら加え6分間ミキシング
荒延:1回(ロールクリアランス:3mm)
複合:2回(ロールクリアランス:3mm)
圧延:5回(ロールクリアランス:2.5mm→2.0mm→1.5mm→1.1mm→0.8mm、最終麺帯厚1.0mm程度に圧延)
切り出し:切刃20番角でカット
蒸煮:100℃、3分間
定量カット:30g
フライイング:150℃、1分30秒
湯戻し条件:発泡スチロール容器に30gのフライイングした麺を入れ沸騰水を注ぎ容器のふたをして3分間保持
【0063】
表3に試験例9~11及び比較例6~7のフライ即席中華麺の製麺時の製麺性及び湯戻し麺の評価結果を示す。通常の市販中華麺用粉を用いた食塩無添加フライ即席中華麺区の比較例6では、製麺時評価が非常に悪く、湯戻し麺の評価も総合的に劣っており、特に表面状態(なめらかさ)の評価が劣っていた。市販中華麺用粉を用いて食塩を2.0%添加した通常配合のフライ即席中華麺区の比較例7では、製麺時及び茹で麺の評価結果がともに概ね「普通」であった。これに対して、超強力粉を用いた試験例9~11のフライ即席中華麺区では、製麺性及び湯戻し麺の評価結果が非常に良好であり、通常配合のフライ即席中華麺区の比較例7より良好な評価結果を示した。特に、みのりのちからを用いた食塩不添加(無塩)の試験例9では、通常の市販中華麺用粉を用いた食塩無添加(無塩)の比較例6に比して、製麺性及び湯戻し麺の評価ともに著しく良好であり、市販中華麺用粉を用いて食塩を2.0%添加した通常配合のフライ即席中華麺区の比較例7と比べてもすべての項目において優れる結果となった。
【0064】
【0065】
以上の結果から、本実施例の無塩フライ即席中華麺及び減塩フライ即席中華麺は、製麺時の製麺性に非常に優れ、また、茹で麺の麺の硬さ、粘弾性、表面状態(なめらかさ)及び総合的食感も非常に優れていることがわかった。また、本実施例の製麺によって、高品質の無塩フライ即席中華麺及び減塩フライ即席中華麺を低コストかつ簡便に製造できることが示された。
【0066】
(実施例4)
超強力粉を用いて無塩生パスタ及び減塩生パスタを製造し、製麺時の製麺性及び茹で麺を評価した。
【0067】
製麺時の製麺性評価は、製麺時の生地状態及び生麺の状態(外観、物性)を評価することで行った。得られた生パスタの茹で麺の評価は、沸騰水中で7分間茹でた麺を用い、麺の硬さ、粘弾性、表面状態(なめらかさ)及び総合的食感を評価することで行った。各評価は、5人のパネラーにより、5段階の官能評価によって行った。なお、表中の各種小麦粉のタンパク質含量は、実施例1と同様に測定した。また、本実施例において、配合は、小麦粉(水分含量13.5%ベース)100に対する重量部%で示される。
【0068】
以下に製麺工程を示す。試験例12~14及び比較例8~9について、表4に示す配合により製麺を行った。
生地のミキシング:水以外の全原料をパスタマシンの混合機部分に入れ、仕込み水を徐々に添加しながら7分間混合
パスタの製麺:パスタマシンを用いて押し出し製麺(ダイス:平麺用)
パスタのカット:パスタマシンから押し出された麺を約10cm程度にカット
保存(熟成):カットパスタ生麺をポリエチレン袋に入れ封をして、20℃、2時間保存し熟成
生麺の茹で条件:沸騰水中で7分間
【0069】
表4に試験例12~14及び比較例8~9の生パスタの製麺時の製麺性及び茹で麺の評価結果を示す。通常の市販生パスタ用粉を用いた食塩無添加生パスタ区の比較例8では、製麺時評価が著しく悪く、生地が軟弱で綺麗な形状の麺が製造できず、茹で麺の評価も試験例に比べ劣っていた。市販生パスタ用粉を用いて食塩を1.5%添加した通常配合の生パスタ区の比較例9では、製麺時及び茹で麺の評価結果がともに概ね「普通」であった。これに対して、超強力粉を用いた試験例12~14の生パスタ区では、製麺性及び茹で麺の評価結果が非常に良好であり、通常配合の生パスタ区の比較例9より良好な評価結果を示した。特に、みのりのちからを用いた食塩不添加(無塩)の試験例12では、通常の市販生パスタ用粉を用いた食塩無添加(無塩)の比較例8に比して、製麺性及び茹で麺の評価ともに著しく良好であり、市販生パスタ用粉を用いて食塩を1.5%添加した通常配合の生パスタ区の比較例9と比べても、特に茹で麺の評価のすべての項目において優れた結果となった。
【0070】
【0071】
以上の結果から、本実施例の無塩生パスタ及び減塩生パスタは、製麺時の製麺性に非常に優れ、また、茹で麺の麺の硬さ、粘弾性、表面状態(なめらかさ)及び総合的食感も非常に優れていることがわかった。また、本実施例の製麺によって、高品質の無塩生パスタ及び減塩生パスタを低コストかつ簡便に製造できることが示された。