(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160784
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】長尺材支持具
(51)【国際特許分類】
F16B 1/00 20060101AFI20241108BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20241108BHJP
F16L 3/11 20060101ALI20241108BHJP
F16L 3/133 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
F16B1/00 A
E04B9/00 F
F16L3/11
F16L3/133
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076137
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘川 邦彦
【テーマコード(参考)】
3H023
【Fターム(参考)】
3H023AB04
3H023AC03
3H023AC08
3H023AD18
3H023AD21
(57)【要約】
【課題】確実に吊部材の係合状態を維持できるようにする。
【解決手段】長尺材300を支持する長尺材支持具100は、吊ボルト200(吊部材)に係止される係止凹部111aを有する上係止部材111(吊部材係止部材)と、上方に開放部122を有し長尺材300を支持する支持本体部121と、開放部122を閉塞する蓋部材131とを備え、蓋部材131は、開放部122を閉塞する状態の時に、開口閉鎖部132が係止凹部111aの開口部111cを閉じ、上係止部材係止部133(吊部材係止部材係止部)が上係止部材111に係止して上記状態を保つ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂下された吊部材に取り付けられて長尺材を支持する長尺材支持具であって、
上記吊部材に係止される吊部材係止部材と、
上記吊部材係止部材に接続され、上方に開放された開放部を有するU字状で上記長尺材を支持する支持本体部と、
を備え、
上記支持本体部の開放端部、または上記支持本体部に取り付けられた蓋部材が上記吊部材係止部材に接続されることにより上記開放部が閉塞されるように構成されるとともに、
上記吊部材係止部材は、上記支持本体部から上記吊部材に向かう方向に交差する方向に開口する開口部を有する係止凹部を有し、
上記開放端部、または上記蓋部材は、上記開放部を閉塞する状態の時に、上記吊部材係止部材の係止凹部の開口部を閉じる開口閉鎖部と、上記吊部材係止部材に係止されて係止凹部の開口部を閉じた状態を保つ吊部材係止部材係止部とを有することを特徴とする長尺材支持具。
【請求項2】
請求項1の長尺材支持具であって、
上記蓋部材は、上記吊部材の長手方向に垂直な面内で揺動可能に設けられ、上記吊部材係止部材係止部は、上記吊部材係止部材における上記開口部と反対側の縁部に係止されることを特徴とする長尺材支持具。
【請求項3】
請求項2の長尺材支持具であって、
上記蓋部材は、さらに、上記吊部材係止部材の下面に当接して、上記蓋部材が上記係止凹部の開口部を閉じた状態の時に、上記蓋部材が上記支持本体部の開放部を開放する方向に揺動するのを阻止する開放抑制当接部を有することを特徴とする長尺材支持具。
【請求項4】
請求項1の長尺材支持具であって、
さらに、上記支持本体部に、上記吊部材を上記吊部材係止部材の上記当接部に向けて付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする長尺材支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の天井等から垂下された吊部材に取り付けられて、配管等の長尺材を支持する長尺材支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の天井等から垂下された吊ボルト等の吊部材に取り付けられて、配管等の長尺材を支持する長尺材支持具としては、吊部材に掛止めする挿入溝が形成された固定片と、係止溝が設けられた配管支持体とによって、吊部材を挟み込むようにして配管支持部を固定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように挿入溝が形成された固定片と、係止溝が設けられた配管支持体とによって、吊部材を挟み込むようにして配管支持部を固定しても、例えば地震による震動などによって上記固定片や配管支持体と吊部材が相対的に移動すると、挿入溝や係止溝から吊部材が外れてしまうのを確実に防止することは容易ではない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、より確実に吊部材の係合状態を維持できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
垂下された吊部材に取り付けられて長尺材を支持する長尺材支持具であって、
上記吊部材に係止される吊部材係止部材と、
上記吊部材係止部材に接続され、上方に開放された開放部を有するU字状で上記長尺材を支持する支持本体部と、
を備え、
上記支持本体部の開放端部、または上記支持本体部に取り付けられた蓋部材が上記吊部材係止部材に接続されることにより上記開放部が閉塞されるように構成されるとともに、
上記吊部材係止部材は、上記支持本体部から上記吊部材に向かう方向に交差する方向に開口する開口部を有する係止凹部を有し、
上記開放端部、または上記蓋部材は、上記開放部を閉塞する状態の時に、上記吊部材係止部材の係止凹部の開口部を閉じる開口閉鎖部と、上記吊部材係止部材に係止されて係止凹部の開口部を閉じた状態を保つ吊部材係止部材係止部とを有することを特徴とする。
【0007】
これにより、蓋部材の吊部材係止部材係止部を吊部材係止部材に係止させることによって、吊部材の動きの有無に係わらず、より確実に吊部材の係合状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、より確実に吊部材の係合状態を維持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】蓋部材131が開いた状態の長尺材支持具100を示す斜視図
【
図2】蓋部材131が閉じる過程の長尺材支持具100を示す斜視図
【
図3】蓋部材131が閉じた状態の長尺材支持具100を示す斜視図
【
図4】蓋部材131が閉じた状態の長尺材支持具100を示す他の方向の斜視図
【
図7】実施形態2の長尺材支持具100の要部の構成を示す斜視図
【
図8】実施形態3の長尺材支持具100の要部の構成を示す斜視図
【
図9】実施形態4の長尺材支持具100の要部の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、他の実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。また、各実施形態や変形例で説明する構成要素は、論理的に可能な範囲で種々組み合わせてもよい。
【0011】
(実施形態1)
長尺材支持具100は、
図1~
図4に示すように、例えば、天井から垂下された吊部材である吊ボルト200に取り付けられて、配管などの長尺材300を支持するようになっている。上記長尺材支持具100は、それぞれ吊ボルト200における相対的に上下の位置に係止される上係止部材111(吊部材係止部材)、および下係止部材112と、上記上下係止部材111・112を連結する帯状の連結部113と、連結部113に接続され、長尺材300を支持するU字状の支持本体部121と、支持本体部121の上方の開放部122を閉塞する蓋部材131とを備えている。
【0012】
上下係止部材111・112は、それぞれ、連結部113の幅方向と平行な方向に開口する開口部111c・112cを有する係止凹部111a・112a、および吊ボルト200における上記連結部113と反対側部分(
図1~
図3の左手前部分)に当接する当接部111b・112bを有している。ここで、特に限定はされないが、本実施形態の例では、係止凹部111a・112aは、互いに逆方向に開口部111c・112cを有するように形成され、長尺材支持具100をひねるような動作によって吊ボルト200に取り付けられるようになっている。また、係止凹部112aは、開口部112cから奥の部分まで一定の幅に形成される一方、係止凹部111aは、奥の部分の幅が少し拡がった鉤状に形成され、吊ボルト200を係止凹部112aの幅方向に多少揺動可能にされるとともに、吊ボルト200が、当接部111bに当接した状態では係止凹部111aから抜け出しにくいようになっている。また、必須ではないが、上下係止部材111・112の間で、平面視において下係止部材112の係止凹部112aを塞ぐように支持本体部121または連結部113等から突出した突出部124が設けられ、吊ボルト200の下方側が下係止部材112の係止凹部112aから抜け出る方向にひねられるように傾いて吊ボルト200の係止状態が解除されるのを確実に抑制できるようになっている。
【0013】
連結部113には、吊ボルト200を上下係止部材111・112の当接部111b・112bに向けて付勢する付勢部材140が設けられている。上記付勢部材140は、
図5、
図6に示すように、連結部113に取り付けられる基板部141の互いに対抗する両縁部から、それぞれ板状の第1の付勢部142、および第2の付勢部143が、上記連結部113から上下係止部材111・112の当接部111b・112bの方向に向けて互いに交差する斜め方向に延びるように形成されている。より詳しくは、第1の付勢部142は、連結部113における幅方向の一方側の縁部113aから他方側の縁部113bの方向、かつ上下係止部材111・112の当接部111b・112bの方向に向けて斜め方向に延びるように形成されている。第2の付勢部143は、連結部113の他方側の縁部113bから上記一方側の縁部113aの方向、かつ上下係止部材111・112の当接部111b・112bの方向に向けて斜め方向に延びるように形成されている。すなわち、第1の付勢部142と第2の付勢部143とは、平面視において互いに交差するように形成されている。第1の付勢部142、および第2の付勢部143の幅方向縁部には、必須ではないが、縁部の一部が折り返されて、吊ボルト200のねじ溝に食い込む凸部142a・143aが形成されている。
【0014】
上記第1の付勢部142と、第2の付勢部143とは、吊ボルト200の長手方向の少なくとも一部の領域で互いに重なるオーバラップ部分を有している。第2の付勢部143における上記オーバラップ部の先端縁である連動当接部143bは、第1の付勢部142における連結部113側に当接し、第1の付勢部142の先端部の操作部142bが連結部113に向けて押し込まれる際に、その押し込み力が、上記連動当接部143bを介して第2の付勢部143に伝達され、第2の付勢部143も連動して連結部113側に押し込まれるようになっている。これにより、1箇所の操作部142bを押し込む操作によって付勢力が解除されるので、吊ボルト200への長尺材支持具100の取り付け/取り外しが容易になるとともに、片手で配管の高さ調整をすることも容易になる。また、必須ではないが、第2の付勢部143に先端部を折り返した凸部143cを設けて、より吊ボルト200が上係止部材111の係止凹部111aから抜け出しにくいようにしてもよい。この場合でも、上記のように第2の付勢部143が第1の付勢部142に連動して押し込まれることにより、吊ボルト200を上係止部材111に係止させることが容易にできる。
【0015】
蓋部材131は、支持本体部121における、連結部113との接続部と反対側の上端部の枢支部123に揺動可能に枢支されている。より詳しくは、
図1に矢印Aで示すように略鉛直面内で揺動可能にされることにより、支持本体部121の開放部122を閉塞したり開放したりし得るようになっているとともに、
図2に矢印Bで示すように、略水平面内でわずかに揺動可能にされている。蓋部材131の先端部には、開口閉鎖部132と、上係止部材係止部133(吊部材係止部材係止部)と、開放抑制当接部134とが設けられている。
【0016】
上係止部材係止部133は、蓋部材131が
図2に示す揺動位置から
図3に示す揺動位置に揺動したときに、上係止部材111における開口部111cと反対側の縁部111dに係止されるようになっている。このとき、吊ボルト200の側方付近に位置する開口閉鎖部132が、上係止部材111の係止凹部111aの開口部111cを閉じることにより、吊ボルト200が係止凹部111aから抜け出すのをより確実に抑制し得るようになっている。
【0017】
また、上記開放抑制当接部134は、上係止部材111の下面に当接して、
図3に示すように蓋部材131が係止凹部111aの開口部111cを閉じた状態の時に、蓋部材131が支持本体部121の開放部122を開く方向に揺動するのを阻止するようになっている。なお、上記のような開放抑制当接部134は、吊ボルト200の係合状態を維持する観点からは、必ずしも設けなくてもよいが、これを設けることにより、上係止部材111と蓋部材131とを密着させやすくなるので、上係止部材係止部133を上係止部材111の縁部111dに確実に係止させる作業を容易にできる。
【0018】
上記のように、第1の付勢部142と第2の付勢部143とが、平面視において互いに交差するように形成されていることによって、これらによる付勢力の合力は、吊ボルト200を連結部113から遠ざける方向の成分が大きくなるようにされ、吊ボルト200が係止凹部111a・112aから抜け出す方向の成分が生じにくいようにしたり、係止凹部111a・112aから抜け出すのを阻止する方向の成分が生じやすいようにしたりすることができる。
【0019】
また、第2の付勢部143の連動当接部143bが、第1の付勢部142における連結部113側に当接していることによって、第1の付勢部142が連結部113に向けて押し込まれる際に、第2の付勢部143も連動して連結部113側に押し込まれることにより、上記のように互いに異なる方向の付勢力を生じる第1の付勢部142、および第2の付勢部143を単一の操作で容易に撓ませることができ、吊ボルト200への長尺材支持具100の脱着や長尺材支持具100の高さ調整などの作業性を向上させることができる。
【0020】
また、第1の付勢部142と、第2の付勢部143とが、吊ボルト200の長手方向の少なくとも一部の領域で互いに重なるオーバラップ部分を有していることによって、付勢部材140における吊ボルト200の長手方向の全長が短くても大きな付勢力を作用させることが容易にできる。
【0021】
なお、上記の例では第2の付勢部143におけるオーバラップ部分の先端縁が連動当接部143bとされる例を示したが、これに限らず、オーバラップ部分がない場合でも、連動当接部143bを設けて、単一の操作で第1の付勢部142と第2の付勢部143とを撓ませ得るようにしてもよい。
【0022】
また、上記のように、蓋部材131の上係止部材係止部133を上係止部材111に係止させることによって、吊ボルト200の動きの有無に係わらず、より確実に吊部材の係合状態を維持することができる。
【0023】
(実施形態2)
蓋部材131の開口閉鎖部132が上係止部材111の係止凹部111aの開口部111cを閉じて吊ボルト200が係止凹部111aから抜け出すのを抑制する状態を保つためには、上記のように蓋部材131の上係止部材係止部133が上係止部材111における開口部111cと反対側の縁部111dに係止されるの限らず、種々の機構によって蓋部材131と上係止部材111との位置関係が固定されるようにすればよい。
【0024】
具体的には、例えば
図7(a)に示すように、蓋部材131の先端部に上係止部材係止部133を設けるのに代えて垂下係止部135を設ける一方、上係止部材111における開口部111cと反対側の縁部付近に係止孔111eを設け、
図7(b)に示すように上記垂下係止部135を嵌合させて係止固定されるようにしてもよい。
【0025】
上記のような嵌合状態の有無は、一目見て判りやすいので、施工完了を確認することなどが容易にできる。
【0026】
(実施形態3)
また、
図8(a)に示すように、上係止部材111における開口部111c付近の縁部に上方に折り曲げられた係止部111fを設け、
図8(b)に示すように蓋部材131の開口閉鎖部132付近の縁部が係止されて固定されるようにしてもよい。
【0027】
この場合にも、同様に施工完了を確認することなどが容易にできる。
【0028】
(実施形態4)
また、
図9(a)に示すように、蓋部材131の開口閉鎖部132付近に段差部137を設けて上係止部材111の下方側に入り込むようにするとともに、先端部に上方に折り曲げられた係止部136を設け、
図9(b)に示すように、上記係止部136を上係止部材111の下方側から上係止部材111の縁部111dに係止されるようにしてもよい。
【0029】
この場合、蓋部材131の端部が上係止部材111の下方側に入り込んでいるかは判別しやすいので、やはり、施工完了を確認することなどが容易にできる。
【0030】
(その他の事項)
上記の例では、蓋部材131が上係止部材111に接続、係止される例を示したが、これに限らず、例えば支持本体部121の開放端部が上係止部材111に接続されて開放部が閉塞される場合には、その支持本体部121の開放端部が上記蓋部材131と同様に上係止部材111に係止されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
100 長尺材支持具
111 上係止部材
111a 係止凹部
111b 当接部
111c 開口部
111d 縁部
111e 係止孔
111f 係止部
112 下係止部材
112a 係止凹部
112b 当接部
112c 開口部
113 連結部
113a 一方側の縁部
113b 他方側の縁部
121 支持本体部
122 開放部
123 枢支部
124 突出部
131 蓋部材
132 開口閉鎖部
133 上係止部材係止部
134 開放抑制当接部
135 垂下係止部
136 係止部
137 段差部
140 付勢部材
141 基板部
142 第1の付勢部
143 第2の付勢部
143a 連動当接部
143b 連動当接部
200 吊ボルト
300 長尺材