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特開2024-160787レンズ装置、撮像装置、レンズ装置の制御方法、およびプログラム
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  • 特開-レンズ装置、撮像装置、レンズ装置の制御方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160787
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】レンズ装置、撮像装置、レンズ装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20241108BHJP
   G03B 19/07 20210101ALI20241108BHJP
   G03B 35/00 20210101ALI20241108BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20241108BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20241108BHJP
   G03B 13/32 20210101ALI20241108BHJP
   G03B 13/34 20210101ALI20241108BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20241108BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20241108BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20241108BHJP
   G02B 7/14 20210101ALI20241108BHJP
   H04N 23/65 20230101ALI20241108BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20241108BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20241108BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G03B19/07
G03B35/00
G03B17/14
G02B7/28 Z
G03B13/32
G03B13/34
G03B13/36
G02B7/02 H
G02B7/04
G02B7/14
H04N23/65 100
H04N23/55
H04N23/67
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076146
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】石川 智規
(72)【発明者】
【氏名】高橋 岳
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 耕平
【テーマコード(参考)】
2H011
2H044
2H054
2H059
2H101
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2H011CA14
2H011CA18
2H011CA29
2H011EA00
2H011FA08
2H044AG00
2H044BA04
2H044BE00
2H044DA01
2H044DA04
2H044DB01
2H044DC02
2H044DC04
2H044DC09
2H044HB00
2H054BB05
2H059AA08
2H101EE08
2H151AA06
2H151EA20
2H151EB04
2H151FA38
5C122FA07
5C122FB02
5C122FB04
5C122FD01
5C122HA87
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】二つの光学系のピント差を容易に調整することが可能なレンズ装置を提供する。
【解決手段】レンズ装置(200)は、第1光学系(210L)と、第1光学系と並列に配置された第2光学系(210R)と、第1モードおよび第2モードのそれぞれにおいて、焦点調節のために第1光学系の少なくとも一部のレンズおよび前記第2光学系の少なくとも一部のレンズを同時に移動させる第1駆動手段(300)と、第2モードにおいて、焦点調節のために第2光学系の一枚以上のレンズを移動させる第2駆動手段(400)とを有し、第1モードにおける第1駆動手段の第1駆動可能範囲は、最至近位置から無限遠までの範囲であり、第2モードにおける第1駆動手段の第2駆動可能範囲は、第1駆動可能範囲よりも狭い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学系と、
前記第1光学系と並列に配置された第2光学系と、
第1モードおよび第2モードのそれぞれにおいて、焦点調節のために前記第1光学系の少なくとも一部のレンズおよび前記第2光学系の少なくとも一部のレンズを同時に移動させる第1駆動手段と、
前記第2モードにおいて、焦点調節のために前記第2光学系の一枚以上のレンズを移動させる第2駆動手段とを有し、
前記第1モードにおける前記第1駆動手段の第1駆動可能範囲は、最至近位置から無限遠までの範囲であり、
前記第2モードにおける前記第1駆動手段の第2駆動可能範囲は、前記第1駆動可能範囲よりも狭いことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記第2駆動可能範囲は、前記最至近位置から、無限遠と前記最至近位置との間の所定の位置までの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記所定の位置は、前記無限遠ではない有限距離の位置であることを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記第1モードは、通常撮影モードであり、
前記第2モードは、前記第2光学系の合焦位置を、前記第1光学系の合焦位置に近づけるための調整モードであることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記第2モードにおいて、
前記第1駆動手段は、オートフォーカスで前記第1光学系の前記少なくとも一部のレンズおよび前記第2光学系の前記少なくとも一部のレンズを同時に移動させ、
前記第2駆動手段は、マニュアルフォーカスで前記第2光学系の前記少なくとも一部のレンズを移動させることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記第1光学系および前記第2光学系は、同一被写体の光学像を形成することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記第1光学系は、第1開口絞りを有し、
前記第2光学系は、第2開口絞りを有し、
前記第2モードにおいて、前記第1開口絞りおよび前記第2開口絞りはそれぞれ開放状態に設定されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のレンズ装置と、撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
前記レンズ装置は、前記撮像素子を有するカメラ本体に対して着脱可能であることを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
第1光学系と該第1光学系と並列に配置された第2光学系とを有するレンズ装置の制御方法であって、
前記第1光学系を合焦位置に移動させるように、第1駆動手段を用いて前記第1光学系の少なくとも一部のレンズおよび前記第2光学系の少なくとも一部のレンズを同時に移動させるステップと、
前記第2光学系の合焦位置と前記第1光学系の前記合焦位置との差を低減するように、第2駆動手段を用いて前記第2光学系の前記少なくとも一部のレンズを移動させるステップとを有することを特徴とするレンズ装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載のレンズ装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置、撮像装置、レンズ装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、VR(Virtual Reality)ゴーグルまたは3Dディスプレイ等の立体画像表示装置に表示される立体画像を記録するためのレンズ装置(立体画像撮影用レンズ装置)が知られている。特許文献1には、所定の距離(基線長)だけ互いに離間して並列に配置された二組の光学系を有し、一つの撮像素子に二つのイメージサークルが並列に結像するレンズ装置が開示されている。二組の光学系を基線長だけ互いに離間して配置することにより、右眼用と左眼用の視差のある一対の画像を同時に撮像することができる。
【0003】
ユーザが立体画像表示装置で違和感のない立体感を得るには、右眼用と左眼用の一対の画像を、同一被写体に対してピントが合った状態にする必要がある。特許文献2には、二つのアクチュエータで左右の光学系を独立に駆動することでフォーカスを行う構成が開示されている。一方、特許文献3には、一つのアクチュエータで左右の二つの光学系を一体的に駆動する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-3022号公報
【特許文献2】国際公開第2011/118078号
【特許文献2】特開2021-51282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されている構成では、フォーカスの際に左右の二つのアクチュエータがそれぞれ駆動するため消費電力が大きくなるとともに、駆動回路が複雑になる。一方、特許文献3に開示されている構成では、一つのアクチュエータで左右の二つの光学系を一体的に駆動するため、消費電力を低減することができる。しかし、左右の光学系にピント差が生じていると、一方の光学系から得られた画像のピントがずれてしまう。
【0006】
そこで特許文献3に開示されている構成では、組み立て時に、スペーサを用いて左右の光学系を光軸に対して相対的に変位させることで、左右のピント差を調整している。しかし、実際にはカメラセンサの倒れがあるため、左右のピント差は組立時だけでなく、カメラに取り付けた際にも発生する。このため、カメラ取り付け後に、左右のピント差を調整する機構を一方の光学系に設けた構成が考えられる。ユーザは、撮影された左右の画像を見比べながら、調整機構を用いてピント差を調整する。しかし、その際、無限遠にピントが合っていると、ピント差の調整が難しい。
【0007】
そこで本発明は、二つの光学系のピント差を容易に調整することが可能なレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、第1光学系と、前記第1光学系と並列に配置された第2光学系と、第1モードおよび第2モードのそれぞれにおいて、焦点調節のために前記第1光学系の少なくとも一部のレンズおよび前記第2光学系の少なくとも一部のレンズを同時に移動させる第1駆動手段と、前記第2モードにおいて、焦点調節のために前記第2光学系の一枚以上のレンズを移動させる第2駆動手段とを有し、前記第1モードにおける前記第1駆動手段の第1駆動可能範囲は、最至近位置から無限遠までの範囲であり、前記第2モードにおける前記第1駆動手段の第2駆動可能範囲は、前記第1駆動可能範囲よりも狭い。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二つの光学系のピント差を容易に調整することが可能なレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における撮像装置の概略図である。
図2】本実施形態における左右の光学系と撮像素子との関係を示す図である。
図3】本実施形態における撮像素子の倒れを示す図である。
図4】本実施形態におけるピント差調整の手順を示すフローチャートである。
図5】本実施形態における各モードでの第1駆動手段の駆動可能範囲の説明図である。
図6】本実施形態における左右の光学系とチャートの位置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
まず、図1を参照して、本実施形態における撮像装置100について説明する。図1は、撮像装置100の概略図である。撮像装置100は、カメラ本体(撮像装置本体)110と、カメラ本体110に着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)200とを有する。交換レンズ200は、レンズマウント250を有し、カメラマウント160を介してカメラ本体110に装着される。なお、本実施形態において交換レンズ200はカメラ本体110に対して着脱可能であるが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、カメラ本体とレンズ装置とが一体的に構成された撮像装置にも適用可能である。
【0014】
まず、交換レンズ200の構成について説明する。交換レンズ200は、左眼光学系(第1光学系)210L、右眼光学系(第2光学系)210R、第1駆動手段300、第2駆動手段400、モード切替スイッチ220、レンズマイコン230、および操作部240を有する。
【0015】
左眼光学系210Lおよび右眼光学系210Rは、同一被写体の光学像を形成することが可能である。左眼光学系210Lは、光量を調整するための左眼絞り(第1開口絞り)211Lを有する。同様に、右眼光学系210Rは、光量を調整するための右眼絞り(第2開口絞り)211Rを有する。左眼光学系210Lおよび右眼光学系210Rは、レンズベース212に取り付けられている。左眼光学系210Lはレンズベース212に固定され、右眼光学系210Rはレンズベース212に対して光軸OA2に沿った方向(光軸方向)に移動可能に支持される。なお本実施形態において、左眼光学系210Lを第1光学系、右眼光学系210Rを第2光学系として説明するが、これに限定されるものではなく、右眼光学系210Rを第1光学系、左眼光学系210Lを第2光学系としてもよい。
【0016】
第1駆動手段300は、右眼光学系210Rおよび左眼光学系210Lの各結像位置(合焦位置)を一体的に調整する機能を有する。すなわち第1駆動手段300は、後述の第1モードおよび第2モードのそれぞれにおいて、焦点調節のために左眼光学系210Lの少なくとも一部のレンズおよび右眼光学系210Rの少なくとも一部のレンズを同時に移動させる。このとき、左眼光学系210Lの少なくとも一部のレンズは光軸OA1に沿った方向に移動し、右眼光学系210Rの少なくとも一部のレンズは光軸OA2に沿った方向に移動する。
【0017】
第2駆動手段400は、右眼光学系210Rの合焦位置のみを調整する機能を有する。すなわち第2駆動手段400は、後述の第2モードにおいて、焦点調節のために右眼光学系210Rの少なくとも一部のレンズ(一枚以上のレンズ)を移動させる。右側光学系210Rは、第1モードと第2モードとで異なるレンズを駆動させて焦点調節を行ってもよい。または、右側光学系210Rは、第1モードでは全体繰り出し、第2モードでは部分フォーカスであってもよい。
【0018】
操作部240は、ユーザが合焦位置を調整するために設けられている。ユーザが操作部240を操作すると、レンズマイコン230は、ユーザによる操作部240の操作量および操作方向の検出結果に基づいて、第1駆動手段300および第2駆動手段400の駆動量と駆動方向とを決定する。
【0019】
撮像装置100は、通常撮影モード(第1モード)および左右ピント差調整モード(第2モード)を有する。モード切替スイッチ220は、通常撮影モードと左右ピント差調整モードとを切り替えるためのスイッチである。左右ピント差調整モードは、右眼光学系210Rの合焦位置(右眼光学系210Rにより形成された光学像の結像位置)を、左眼光学系210Lの合焦位置(左眼光学系210Lにより形成された光学像の結像位置)に近づけるための調整モードである。換言すると、左右ピント差調整モードは、左眼光学系210Lおよび右眼光学系210Rによりそれぞれ形成された二つの光学像の相対結像位置を許容範囲内に設定するためのモードである。
【0020】
モード切替スイッチ220により設定されたモードに応じて、操作部240が駆動可能な光学系は異なる。通常撮影モードにおいて、レンズマイコン230は、第1駆動手段300に指令を送り、左眼光学系210Lおよび右眼光学系210Rの二つの光学系の全体繰り出しによる(二つの光学系を同時に移動させることで)フォーカス調整を行う。一方、左右ピント差調整モードにおいて、レンズマイコン230は、第2駆動手段400に指令を送り、右眼光学系210Rのみを駆動して左右のピント差を調整する(フォーカス調整を行う)。
【0021】
次に、カメラ本体110の構成について説明する。カメラ本体110は、位相差焦点検出画素等を含む撮像素子120、信号処理回路130、カメラマイコン140、および表示デバイス150を有する。被写体像は、右眼光学系210Rを介して結像される右眼像と、左眼光学系210Lを介して結像される左眼像とが並ぶように、撮像素子120に結像される。撮像素子120は、交換レンズ200により形成された被写体像(光学像)を光電変換(撮像)して電気信号(アナログ撮像信号)を出力する。アナログ撮像信号は、不図示のA/D変換回路によりデジタル撮像信号に変換される。
【0022】
信号処理回路130は、デジタル撮像信号に対して各種画像処理を行うことで画像信号(撮像画像)を生成し、カメラマイコン140に出力する。また信号処理回路130は、撮像素子120の位相差焦点検出画素から出力される画素信号も同様に、カメラマイコン140に出力する。
【0023】
カメラマイコン140は、撮像装置100の全体を統括制御する。この制御は、合焦位置の調整に関する機能を含む。カメラマイコン140は、信号処理回路130から得られる焦点検出用画像データの像信号に基づいて、位相差検出方式による焦点ずれ量(デフォーカス量)を検出する。カメラマイコン140は、検出したデフォーカス量に応じて、第1駆動手段300の駆動量を算出する。
【0024】
表示デバイス150は、画像信号をライブビュー画像として表示し、また、撮影パラメータの変更もしくは合焦位置の調整に関する各種情報を表示する。表示デバイス150は、例えば、カメラ本体110の背面液晶または電子ビューファインダー等である。
【0025】
次に、図2および図3を参照して、左右ピント差調整モードが必要な理由について説明する。図2は、左右の光学系(右眼光学系210Rおよび左眼光学系210L)と撮像素子120との関係を示す図である。図3は、撮像素子120の倒れを示す図である。
【0026】
本実施形態の撮像装置100において、右眼光学系210Rおよび左眼光学系210Lは一体駆動でフォーカス調整を行う。このため、図2中のPで示されるように、撮像素子120上での右眼光学系210Rおよび左眼光学系210Lの合焦位置を予め合わせておく必要がある。工場出荷時にマスターカメラに基づいて右眼光学系210Rおよび左眼光学系210Lの合焦位置はそれぞれ一致した状態で出荷される。
【0027】
しかし、ユーザが所有する撮像装置では、製造誤差などの関係で、図3中のXで示されるように、撮像素子120がカメラマウント160に対して傾きをもってカメラ本体110に取り付けられている。このため、右眼光学系210Rは、Xだけ合焦位置がずれた状態(ピント差がある状態)となる。このようにピント差がある状態で撮影を行うと、左眼光学系210Lのピントが合っているが、右眼光学系210Rのピントが合っていない画像が得られる。その結果、ユーザは、右眼光学系210Rの合焦位置を、カメラ本体110の撮像素子120の傾きに応じて調整する必要がある。例えば、ユーザは、表示デバイス150に表示される撮影画像を見ながら、操作部240によって右眼光学系210Rと左眼光学系210Lのピント差を調整する。
【0028】
次に、図4を参照して、左右ピント差調整モードにおいてユーザが右眼光学系210Rと左眼光学系210Lのピント差調整を行う際の手順について説明する。図4は、ピント差調整の手順を示すフローチャートである。
【0029】
まずステップS1において、ユーザがモード切替スイッチ220で左右ピント差調整モードを選択すると、撮像装置100は、左右ピント差調整モードに移行する。続いてステップS2において、レンズマイコン230は、カメラマイコン140の指示により、第1駆動手段300を用いて、左右の光学系(右眼光学系210Rおよび左眼光学系210L)をピント差調整用の駆動可能範囲(ピント調整範囲)に移動する。ピント調整範囲は、後述のように、図5(b)中のYに相当する。続いてステップS3において、ユーザはピント差調整を行うために適切な位置にチャートを設置する。なお、ピント差調整用の駆動可能範囲および適切なチャート位置については後述する。
【0030】
続いてステップS4において、カメラマイコン140は、左眼光学系210Lの画像情報に基づいて、ステップS3にてユーザが設置したチャートに対してオートフォーカスを行う。このときレンズマイコン230は、カメラマイコン140の指示に従い、第1駆動手段300を駆動し、左眼光学系210Lの合焦位置に左右の光学系(右眼光学系210Rおよび左眼光学系210L)を一体的に移動する。そしてユーザは、表示デバイス150に表示される左眼光学系210Lで結像したチャート像のなかでピントが合っている位置を探す。このように第1駆動手段300は、左眼光学系210Lの少なくとも一部のレンズおよび右眼光学系210Rの少なくとも一部を同時に移動させることで、左眼光学系210Lを合焦位置(第1合焦位置)に移動させる。
【0031】
続いてステップS5において、ユーザは、右眼光学系210Rで結像したチャート像のなかで同一位置のピントが合うように(右眼光学系210Rの合焦位置に)、操作部240を用いて第2駆動手段400を駆動してピント差調整を行う。このように第2駆動手段400は、右眼光学系210Rの少なくとも一部のレンズを移動させることで、右眼光学系210Rの合焦位置(第2合焦位置)と左眼光学系210Lの合焦位置(第1合焦位置)との差を低減する。なお、本実施形態において、第2駆動手段400による右眼光学系210Rの移動はマニュアルフォーカスで行われるが、ステップS4と同様にオートフォーカスで行ってもよい。
【0032】
続いてステップS6において、ユーザは、右眼光学系210Rおよび左眼光学系210Lでそれぞれ結像したチャート上の同一位置でのピントが合ったことを確認し、モード切替スイッチ220を操作して左右ピント差調整モードから通常撮影モードに切り替える。これにより撮像装置100は、左右ピント差調整モードから通常撮影モードへ移行する。
【0033】
次に、図5(a)、(b)を参照して、通常撮影モードと左右ピント調整モードのそれぞれにおける第1駆動手段300の駆動可能範囲について説明する。図5(a)、(b)は、各モードでの第1駆動手段の駆動可能範囲の説明図である。
【0034】
図5(a)は、通常撮影モードにおける第1駆動手段300の駆動可能範囲(第1駆動可能範囲)を示す。図5(a)に示されるように、通常撮影モードにおいて、第1駆動手段300は、最至近位置(至近端)から無限遠までの範囲を駆動可能である。図5(b)は、左右ピント差調整モードにおける第1駆動手段300の駆動可能範囲(第2駆動可能範囲)を示す。図5(b)において、範囲Yは、左右ピント差調整モードにおける第1駆動手段300の駆動可能範囲である。
【0035】
図5(a)に示されるように、通常撮影モードにおける第1駆動手段300の第1駆動可能範囲は、最至近位置から無限遠までの範囲である。一方、図5(b)に示されるように、左右ピント差調整モードにおける第2駆動可能範囲は、通常撮影モードにおける第1駆動可能範囲よりも狭い。より具体的には、第2駆動可能範囲は、最至近位置から、無限遠と最至近位置との間の所定の位置L(無限遠ではない有限距離の位置)までの範囲である。このように左右ピント差調整モードにおいて、第1駆動手段300は、最至近位置から所定の位置Lまでの範囲を駆動可能であるが、所定の位置Lから無限遠までの範囲(点線部分)を駆動できない。すなわち、左右ピント差調整モードでは、通常撮影モードと比べると、点線部分だけ駆動範囲は狭まる。
【0036】
範囲Yは、有限距離の被写体にピントが合う範囲(合焦範囲)であり、左右ピント差調整モードにおいて、無限遠でピントを合わせることはできない。これにより、左右ピント差調整モードにおいて、撮像装置100は無限遠でピントが合わず、有限距離でピントが合うようになるため、ユーザは左右ピント差調整を行うことが容易になる。
【0037】
次に、図6を参照して、左右ピント差調整モードにおける左右の光学系(右眼光学系210Rおよび左眼光学系210L)とチャートの位置との関係について説明する。図6は、左右の光学系とチャートの位置との関係を示す図である。
【0038】
左右ピント差調整モードにおいて、図6中の位置Aに示されるように、左右の光学系(右眼光学系210Rおよび左眼光学系210L)から等距離となる位置にチャートを置くことが好ましい。例えば、図6中の位置Bのように左眼光学系210L側に寄った位置にチャートを置くと、左右の光学系からチャートまでの距離が異なり、大きな視差がついてしまうため、位置Bでピント差調整を行って撮影を行うと、良好な立体画像を得ることができない。左右の光学系からチャートまでの距離は、各光学系の焦点距離と基線長とに応じて、表示デバイス150に表示されるチャートの大きさが適切になるように設置されることが好ましい。
【0039】
また本実施形態において、撮像装置100が左右ピント差調整モードに移行した場合、左右の絞り(右眼絞り211Rおよび左眼絞り211L)が開放状態となるように開いてもよい。左右の絞りを開放状態にすることで、被写体深度を浅くすることができる。被写体深度が浅い状態で左右ピント差調整を行うことで、左右ピント差をより小さくすることが可能となる。
【0040】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0041】
各実施形態によれば、二つの光学系のピント差を容易に調整可能なレンズ装置、撮像装置、レンズ装置の制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【0042】
本実施形態の開示は、以下の構成および方法を含む。
【0043】
(構成1)
第1モードおよび第2モードを有するレンズ装置であって、
並列に配置された第1光学系および第2光学系と、
前記第1モードおよび前記第2モードのそれぞれにおいて、焦点調節のために前記第1光学系の少なくとも一部のレンズおよび前記第2光学系の少なくとも一部のレンズを同時に移動させる第1駆動手段と、
前記第2モードにおいて、焦点調節のために前記第2光学系の一枚以上のレンズを移動させる第2駆動手段とを有し、
前記第1モードにおける前記第1駆動手段の第1駆動可能範囲は、最至近位置から無限遠までの範囲であり、
前記第2モードにおける前記第1駆動手段の第2駆動可能範囲は、前記第1駆動可能範囲よりも狭いことを特徴とするレンズ装置。
(構成2)
前記第2駆動可能範囲は、前記最至近位置から、前記無限遠と前記最至近位置との間の所定の位置までの範囲であることを特徴とする構成1に記載のレンズ装置。
(構成3)
前記所定の位置は、前記無限遠ではない有限距離の位置であることを特徴とする構成2に記載のレンズ装置。
(構成4)
前記第1モードは、通常撮影モードであり、
前記第2モードは、前記第2光学系の合焦位置を、前記第1光学系の合焦位置に近づけるための調整モードであることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のレンズ装置。
(構成5)
前記第2モードにおいて、
前記第1駆動手段は、オートフォーカスで前記第1光学系の前記少なくとも一部のレンズおよび前記第2光学系の前記少なくとも一部のレンズを同時に移動させ、
前記第2駆動手段は、マニュアルフォーカスで前記第2光学系の前記少なくとも一部のレンズを移動させることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載のレンズ装置。
(構成6)
前記第1光学系および前記第2光学系は、同一被写体の光学像を形成することを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載のレンズ装置。
(構成7)
前記第1光学系は、第1開口絞りを有し、
前記第2光学系は、第2開口絞りを有し、
前記第2モードにおいて、前記第1開口絞りおよび前記第2開口絞りはそれぞれ開放状態に設定されることを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載のレンズ装置。
(構成8)
構成1乃至7のいずれかに記載のレンズ装置と、撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
(構成9)
前記レンズ装置は、前記撮像素子を有するカメラ本体に対して着脱可能であることを特徴とする構成8に記載の撮像装置。
(方法1)
第1光学系と該第1光学系と並列に配置された第2光学系とを有するレンズ装置の制御方法であって、
前記第1光学系を合焦位置に移動させるように、第1駆動手段を用いて前記第1光学系の少なくとも一部のレンズおよび前記第2光学系の少なくとも一部のレンズを同時に移動させるステップと、
前記第2光学系の合焦位置と前記第1光学系の前記合焦位置との差を低減するように、第2駆動手段を用いて前記第2光学系の前記少なくとも一部のレンズを移動させるステップとを有することを特徴とするレンズ装置の制御方法。
(構成10)
方法1に記載のレンズ装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
200 交換レンズ(レンズ装置)
210L 左眼光学系(第1光学系)
210R 右眼光学系(第2光学系)
300 第1駆動手段
400 第2駆動手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6