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特開2024-160789コンバータ装置及びこれを備えたモータ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160789
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】コンバータ装置及びこれを備えたモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
H02M7/06 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076153
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】久原 正和
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】角藤 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小宮 真一
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006BB05
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC08
5H006DB01
5H006DC05
5H006FA02
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子及びこれに接続される電気素子に流れるサージ電流を抑制することができるコンバータ装置及びこれを備えたモータ駆動装置を提供すること。
【解決手段】コンバータ装置は、交流電源から供給される電力を整流する複数の整流素子D1~D4を備えるブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の出力側に並列接続され、互いに直列接続された複数のコンデンサC1,C2と、直列接続された複数の整流素子の間の中点P1に第1端子が接続され、複数のコンデンサの間の中点P2に第2端子が接続されたスイッチング素子SW1と、スイッチング素子の状態を制御して、全てのコンデンサに一方向から電流が供給される低圧制御と、交流電源の半周期毎に充電されるコンデンサが切り替えられる高圧制御とを切替える制御部24とを備え、制御部は、スイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロとなる切替タイミングにおいて、スイッチング素子をオンする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電力を整流する複数の整流素子を備えるブリッジ整流回路と、
前記ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサと、
直列接続された複数の前記整流素子の間の中点に第1端子が接続され、複数の前記コンデンサの間の中点に第2端子が接続されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、全ての前記コンデンサに一方向から電流が供給される低圧制御と、交流電源の半周期毎に充電される前記コンデンサが切り替えられる高圧制御とを切替える制御部と
を備え、
前記制御部は、前記スイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロとなる切替タイミングにおいて、前記スイッチング素子をオンするコンバータ装置。
【請求項2】
前記交流電源から供給される交流電力のゼロクロスタイミングを検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部によって検出された前記ゼロクロスタイミングから所定位相ずれたタイミングを前記切替タイミングとする請求項1に記載のコンバータ装置。
【請求項3】
前記所定位相は、事前に行われたシミュレーション結果又は事前に実施した試験結果に基づいて設定されている請求項2に記載のコンバータ装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子の両端の電圧を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記切替タイミングを設定する請求項1に記載のコンバータ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のコンバータ装置と、
前記コンバータ装置から供給された直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ装置と
を備えるモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバータ装置及びこれを備えたモータ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタによって構成されたブリッジ回路を用いた整流制御及び昇圧制御が広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、交流電源から電力を供給する、ダイオードやコンデンサからなるブリッジ回路を備えたインバータ装置の構成が開示されている。このインバータ装置は、交流電源から出力された交流電圧を直流電圧に変換するとともに、変換した直流電圧の周波数に応じて、ブリッジ回路の導通状態を切替えるリレーのオン/オフを制御し、ブリッジ整流モードと倍圧整流モードの2つの整流モードを切替えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-112575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているブリッジ回路は、ブリッジ回路の動作中にリレーのオン/オフを切替えると、リレーの接点の両端子間に電圧が存在する場合、リレーをオンにした時点でリレー及びリレーと接続された電気素子にサージ電流が流れてしまう。リレーと接続された電気素子に流れるサージ電流は、リレーの接点の両端子間の電圧の大きさに比例して大きくなる。さらに、サージ電流が過大な場合には、リレー及びリレーと接続された電気素子の耐久性や寿命を低下させてしまい、故障の原因を誘発してしまう。
【0006】
本開示は、スイッチング素子及びスイッチング素子に接続される電気素子に流れるサージ電流を抑制することができるコンバータ装置及びこれを備えたモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の幾つかの実施形態におけるコンバータ装置は、交流電源から供給される交流電力を整流する複数の整流素子を備えるブリッジ整流回路と、前記ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサと、直列接続された複数の前記整流素子の間の中点に第1端子が接続され、複数の前記コンデンサの間の中点に第2端子が接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、全ての前記コンデンサに一方向から電流が供給される低圧制御と、交流電源の半周期毎に充電される前記コンデンサが切り替えられる高圧制御とを切替える制御部とを備え、前記制御部は、前記スイッチング素子の両端の電圧の差がゼロとなる切替タイミングにおいて、前記スイッチング素子をオンする。
【0008】
本開示の幾つかの実施形態におけるモータ駆動装置は、上記コンバータ装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、スイッチング素子及びスイッチング素子に接続される電気素子に流れるサージ電流を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置の構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る制御部の構成を示す図である。
図3】コンバータ装置における各制御時の電流及び電圧の推移を示す波形の例図である。
図4】リレーの接続状態を切替えるタイミングと切替時に発生するサージ電流と関係を示す比較図である。
図5図1のコンバータ装置において、フィルタとしての抵抗とコンデンサが設けられたコンバータ装置の例図である。
図6図5のコンバータ装置において、インダクタンスを1mHかつ静電容量を2000μFとした場合の入力電圧及びリレーの両端の電圧の差のシミュレーション結果を表した図である。
図7図5のコンバータ装置において、インダクタンスを10mHかつ静電容量を2000μFとした場合の入力電圧及びリレーの両端の電圧の差のシミュレーション結果を表した図である。
図8図5のコンバータ装置において、インダクタンスを1mHかつ静電容量を3000μFとした場合の入力電圧及びリレーの両端の電圧の差のシミュレーション結果を表した図である。
図9図1のコンバータ装置において、リレーの両端子の各電圧を検出する検出抵抗が設けられたコンバータ装置の例図である。
図10図1のコンバータ装置において、リレーの両端の電圧の差を検出する検出抵抗が設けられたコンバータ装置の例図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の一実施形態に係るコンバータ装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置の構成を示す図である。モータ駆動装置1は、図1に示すように、交流電源2と、コンバータ装置10と、インバータ装置40と、モータ50とを備える。また、コンバータ装置10は、リアクトルL1と、ブリッジ接続されたダイオード(整流素子)D1~D4と、コンデンサC1,C2と,リレー(スイッチング素子)SW1と、リレー駆動用電源装置3と、入力電圧検出部22と、ゼロクロス検出部23と、制御部24とを備える。
【0012】
コンバータ装置10は、交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換する装置である。コンバータ装置10によって生成された直流電力は、例えば、インバータ装置40によって三相交流電力に変換され、モータ50を駆動するために用いられる。なお、モータ50は、インバータ装置40から供給される三相交流電力に応じて駆動し、例えば、空気調和機に用いられる圧縮機モータである。
【0013】
交流電源2は、例えば、単相の交流電源であり、入力電圧及び入力電流をコンバータ装置10に供給する。
【0014】
コンバータ装置10が備えるブリッジ整流回路5は、交流電源2から供給される交流電力を整流する複数のダイオードD1~D4を備える。また、ダイオードD1~D4は、ブリッジ接続されており、交流電源2の極性に応じて、交流電源2から供給される交流電力がいずれのダイオードによって整流されるかが異なる。
【0015】
例えば、交流電源2の交流電力が正極から供給される場合、交流電源2から供給される交流電力は、ダイオードD1及びダイオードD4を通過して整流される。また、交流電源2の交流電力が負極から供給される場合、交流電源2から供給される交流電力は、ダイオードD3及びダイオードD2を通過して整流される。
【0016】
リアクトルL1は、交流電源2とブリッジ整流回路5との間に設けられている。リアクトルL1は、交流電源2から供給される電力をエネルギとして蓄え、更にこのエネルギを放出することで昇圧を行う。コンデンサC1は、ダイオードD1又はダイオードD3のそれぞれを通って整流化された電圧を平滑化して、直流電圧を生成する。
【0017】
複数のコンデンサC1,C2は、ブリッジ整流回路5の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続されている。なお、コンデンサC1は、正極側がダイオードD1及びダイオードD3のカソードに接続され、負極側がコンデンサC2の正極側に接続されている。また、コンデンサC2は、正極側がコンデンサC1の負極側に接続され、負極側がダイオードD2及びダイオードD4のアノードに接続されている。
ここで、コンデンサC1及びコンデンサC2は、ブリッジ整流回路5の出力する直流電力を平滑化するコンデンサである。コンデンサC1及びコンデンサC2によって、直流電圧の電圧値の変動を抑制する。コンデンサC1及びコンデンサC2は、例えば、電解コンデンサである。
【0018】
リレーSW1は、直列接続されたダイオードD3及びダイオードD4の間の中点P1に第1端子が接続され、コンデンサC1及びコンデンサC2の間の中点P2に第2端子が接続されている。また、リレーSW1は、リレー駆動用電源装置3からの電力供給によってオン/オフが切り替えられる。また、リレー駆動用電源装置3は、制御部24からの指令に基づいてリレーSW1へ電力を供給するか否かが制御される。
【0019】
コンバータ装置10は、後述するように、制御部24によってリレーSW1のオン/オフが制御されることにより、全てのコンデンサC1及びC2に一方向から電流が供給される低圧制御と、交流電圧の半周期毎に、充電されるコンデンサが切り替えられる高圧制御とを切替える。
【0020】
制御部24によってリレーSW1がオフに制御された場合、低圧制御が実行される。低圧制御において、交流電源2の正極側から電力が供給される際には、ダイオードD1で整流された電流がコンデンサC1、C2に流れることにより、C1、C2が充電され、他方、交流電源2の負極側から電力が供給される際には、ダイオードD3で整流された電流がコンデンサC1、C2に流れることにより、コンデンサC1,C2が充電される。
【0021】
制御部24によってリレーSW1がオンに制御された場合、高圧制御が実行される。高圧制御において、交流電源2の正極側から電力が供給される半周期においてはダイオードD1を流れる電流によりコンデンサC1が充電され、交流電源2の負極側から電力が供給される半周期においては、ダイオードD2を流れる電流によりコンデンサC2が充電される。これにより、コンデンサC1及びコンデンサC2の端子間には、交流電圧の入力値Vaの2倍の直流電圧が発生することとなり、この出力電力がインバータ装置へ供給される。
【0022】
また、コンバータ装置10は、交流電圧を入力電圧として検出する入力電圧検出部22を備えている。また、この他に、交流電源2とブリッジ整流回路5との間の電流を検出するための電流センサ(不図示)が設けられていてもよい。
【0023】
入力電圧検出部22は、交流電源2からブリッジ整流回路5へ供給される入力電圧の電圧値を、交流電源2が出力する交流電圧の周期よりも充分に短い周期毎に検出する。例えば、入力電圧検出部22は、交流電源2とブリッジ整流回路5との間に設けられた電圧センサを含み、その電圧センサの読み取った入力電圧の電圧値(入力電圧に係る物理量の一例)を検出する。
入力電圧検出部22は、検出した入力電圧の電圧値をゼロクロス検出部23に出力する。
【0024】
ゼロクロス検出部(検出部)23は、入力電圧検出部22によって検出される交流電源2の電圧の値に関して、その正負が切り替わったか否か(ゼロクロス点に達したか否か)を判定する機能を有する。また、ゼロクロス検出部23は、交流電源2の電圧の位相を検出する機能を有する。ゼロクロス検出部23は、交流電源2の電圧の極性を検出する極性検出部であり、ゼロクロス信号を制御部24に出力する。例えば、ゼロクロス検出部23は、交流電源2の電圧が正の期間中には制御部24に「1」の信号を出力し、交流電源2の電圧が負の期間中には制御部24に「0」の信号を出力する。
【0025】
ゼロクロス検出部23は、交流電源2の電圧に係るゼロクロス点以外の位相を検出し、位相検出信号を制御部24に出力することとしてもよい。この場合、ゼロクロス検出部23は、例えば、検出した位相と予め設定された位相の基準値に基づいて、制御部24に「1」又は「0」の信号を出力する。また、コンバータ装置10は、このような機能を有する位相検出部をゼロクロス検出部23と独立して備えることとしてもよい。
以下の実施形態の説明において、ゼロクロス検出部23は、ゼロクロス信号を制御部24に出力する場合を例に説明する。
【0026】
制御部24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0027】
制御部24は、モータ50の回転数であるモータ回転数に基づいて、リレーSW1のオンオフを切り替えることにより、低圧制御と高圧制御とを切り替える。例えば、制御部24は、モータ回転数が所定の閾値以下である場合に、リレーSW1をオフ状態として低圧制御を行うとともに、モータ回転数が所定の閾値を超えた場合に、リレーSW1をオン状態として高圧制御を行う。そして、リレーSW1の切り替えにおいて、制御部24は、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロとなるタイミングでリレーSW1をオフ状態からオン状態に切替える。
本実施形態では、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロとなるタイミングとして、ゼロクロスタイミング(ゼロクロス点)を採用する。すなわち、制御部24は、ゼロクロス検出部23から信号を受取り、入力電圧がゼロとなるゼロクロスタイミングにリレーSW1をオンに切替える。
【0028】
図2は、本開示の一実施形態に係る制御部24が備える機能の一例を示した機能構成図である。制御部24は、図2に示すように、タイミング特定部241、制御信号生成部243、記憶部244を備える。
【0029】
タイミング特定部241は、切替タイミングを特定する。具体的には、タイミング特定部241は、ゼロクロス検出部23からゼロクロス信号を取得し、取得したゼロクロス信号に基づいてリレーSW1を切り替える切り替えタイミングを特定する。本実施形態では、タイミング特定部241は、ゼロクロス信号に基づいてゼロクロスタイミングを特定し、特定したゼロクロスタイミングを切替タイミングとして制御信号生成部243に出力する。
【0030】
制御信号生成部243は、タイミング特定部241から取得した切替タイミングで、リレーSW1のオン/オフを切替えるための制御信号を生成し、生成した制御信号をリレー駆動用電源装置3に出力する。これにより、リレー駆動用電源装置3が制御信号に基づいて駆動することにより、リレーSW1の接点が閉じ、オンに切替わる。
【0031】
このように、制御部24は、ゼロクロス検出部の出力信号に基づいて、ゼロクロスタイミングにおいてリレーSW1をオンに切替える。これにより、リレーSW1の両端にサージ電流の発生を抑制することができる。
【0032】
図3は、ゼロクロスタイミングでリレーSW1をオフ状態からオン状態に切り替えた場合の電流波形及び電圧波形を示した図である。図3において、横軸は時間を示しており、縦軸は上図において電流を示し、下図において電圧を示している。また、実線は、図1におけるコンデンサC1を流れる電流I1を示し、破線は、図1におけるコンデンサC2を流れる電流I2を示している。一点鎖線は、図1における電圧Vacを、二点鎖線は、図1における電圧Vn1を示している。また、上下図を横断する点線は、ゼロクロスタイミングZCを示している。
【0033】
図3に示すように、ゼロクロスタイミングZC時点までは、リレーSW1の接続状態がオフであり、コンバータ装置10は低圧制御を実行している。そして、電圧VacがゼロとなるゼロクロスタイミングZC時点にリレーSW1の接続状態がオンに切替えられることにより、ゼロクロスタイミングZC以降において、コンバータ装置10は高圧制御を実行する。また、図3より、高圧制御が実行されることにより、電流I1、電流I2及び電圧Vn1の各値は、高圧制御の実行前(ゼロクロスタイミングZC以前)よりも増加していることが理解できる。このように、図1に示すコンバータ装置10は、リレーSW1の接続状態を切替えることにより、低圧制御及び高圧制御の両制御を実行することができる。
【0034】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係るリレーSW1の切替タイミングの特定について説明する。
上述した第1実施形態では、リレーSW1の両端の電圧の差がゼロとなるタイミングとして、ゼロクロスタイミングを採用していた。しかしながら、実際に発明者らが試験やシミュレーションを行ったところ、入力電圧のゼロクロスタイミングと、実際にリレーSW1の両端の電圧の差がゼロになるタイミングとに時間のずれが発生しており、これに起因して、多少のサージ電流が発生することがわかった。この結果から、リレーSW1を切り替える切替タイミングとして、より最適なタイミングがあるとの知見を得た。そこで、本実施形態では、事前にシミュレーション又は試験を行い、サージ電流が所定値以下となるゼロクロス点からの位相ずれ量の範囲を特定し、特定した位相ずれ量の範囲内でリレーSW1の切替タイミングを決定するための位相ずれ量θを決定する。
【0035】
図4は、リレーの接続状態を切替えるタイミングと切替時に発生するサージ電流との関係を示した比較図である。図4(a)~図4(e)の各図は、図3における範囲Rに相当する範囲を示しており、リレーSW1の切替タイミングが異なる。図4において、実線は、図1におけるコンデンサC1を流れる電流I1の推移を示す。破線は、図1におけるコンデンサC2を流れる電流I2の推移を示す。また、各図において縦軸と平行な実線は、サージ電流が発生していることを表す。
【0036】
まず、図4(c)は、ゼロクロスタイミングにおいてリレーSW1の接続状態をオンに切替えた場合のサージ電流を示している。図4(c)からわかるように、ゼロクロスタイミングにおいてリレーSW1をオフからオンに切替えた場合においても、サージ電流が発生している。すなわち、ゼロクロスタイミングにおけるリレーSW1の両端の電圧の差は必ずしもゼロではないことが理解できる。この原因は、コンバータ装置10が備えるリアクトルL1やコンデンサC1,C2の寄生容量や、ダイオードD1~D4のVfの不感帯の影響により、電圧に共振が発生してしまうためである。
【0037】
また、図4(a)及び図4(b)の例は、ゼロクロスタイミングよりもリレーSW1の切替えタイミングを早めた場合のサージ電流の有無を示している。また、図4(d)及び図4(e)の例は、ゼロクロスタイミングよりもリレーSW1の切替えタイミングを遅らせた場合のサージ電流の有無を示している。
各図を比較すると、リレーSW1の切替えタイミングを早めた図4(a)の例では、図4(c)の例よりも大きいサージ電流が発生している。同様に、リレーSW1の切替えタイミングを遅らせた図4(d)及び図4(e)の例も、図4(c)の例よりも大きいサージ電流が発生している。一方、リレーSW1の切替えタイミングを早めた図4(b)の例では、サージ電流が発生していない。これより、リレーSW1の切替えタイミングをゼロクロスタイミングから所定の位相、早めたタイミングにおいて、リレーSW1の両端の電圧の差がゼロになることが推測される。
【0038】
(事前に行われたシミュレーション結果に基づく切替タイミングの設定について)
以下に、事前行われたシミュレーション結果に基づいて、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロとなるリレーSW1の切替タイミングを設定する手法を説明する。
【0039】
本実施形態において、記憶部244には、事前に行われたシミュレーション結果又は試験結果によって得られた位相ずれ量θが記憶されている。そして、タイミング特定部241は、入力電圧のゼロクロスタイミングと、記憶部244に記憶されている位相ずれ量θとに基づいて、リレーSW1の両端の電圧の差がゼロになるタイミングである切替タイミングを特定する。
【0040】
本実施形態において、制御部24には圧縮機が備えるモータ50の回転数変更指令が入力され、回転数変更指令の回転数が高い場合に、制御部24は、低圧制御から高圧制御へ切り替えるための処理が必要であると判断する。
【0041】
次に、低圧制御から高圧制御へ切替えると判断されると、タイミング特定部241は、入力されたゼロクロス信号と、記憶部244に記憶されている位相ずれ量θとに基づいて、切替タイミングを特定する。
【0042】
そして、制御信号生成部243は、タイミング特定部241によって特定された切替タイミングにおいて、リレーSW1を切替える制御信号を出力し、リレーSW1をオフからオンへ切り替える。
【0043】
以下に、入力電圧のゼロクロスタイミングを補正する位相ずれ量θを求めるシミュレーション例を説明する。
図5は、事前に行われたシミュレーションの回路モデルである。なお、図5の回路モデルは図1の回路に対して抵抗R2,R3とコンデンサC3,C4を追加している。また、図6は、図5の回路モデルを用いて、インダクタンスを1mHかつ静電容量を2000μFとした場合の入力電圧及びリレーSW1の両端の電圧の差のシミュレーション結果を表した図である。また、図6において、上図は入力電圧の波形を示し、下図はリレーの両端の電圧の差の波形を示す。
【0044】
図6の上図及び下図を比較すると、両図において電圧がゼロになるタイミングは一致していない。これは、コンバータ装置10が備えるリアクトルL1のインダクタンス、コンデンサC1,C2の寄生容量、ダイオードD1~D4のVfの不感帯等の影響により、リレーの両端の電圧の差に共振が発生してしまうためである。そのため、コンバータ装置13の制御切替を実行するためにリレーSW1をオンに切替えるタイミングについては、入力電圧のゼロクロスタイミングと、リレーSW1の両端の電圧の差のゼロクロスタイミングとの時間差(又は位相差)を考慮する必要がある。
【0045】
ここで、図6に示すように、インダクタンスを1mHかつ静電容量を2000μFとした場合のシミュレーション結果によれば、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロになるタイミングは、入力電圧のゼロクロスタイミングよりも約1msec早いことが確認された。また、本シミュレーション結果を位相に換算すると約27degである。制御信号生成部243は、本シミュレーション結果に基づいて、リレーSW1の切替タイミングを、入力電圧のゼロクロスタイミングよりも約1msec(約27deg)早めたタイミングとする。そして、制御信号生成部243は、切替タイミングに基づいて、リレーSW1の接続状態をオンに切替える制御信号をリレー駆動用電源装置3へ出力する。
【0046】
このように、制御部24は、記憶部244に記憶された現在の制御条件と同条件のシミュレーション結果に基づいて、切替タイミングを設定し、切替タイミングに基づいてリレーSW1の接続状態を切替える。これにより、サージ電流の発生を回避することができる。
【0047】
また、図7は、図5のコンバータ装置において、インダクタンスを10mHかつ静電容量を2000μFとした場合の入力電圧及びリレーの両端の電圧の差のシミュレーション結果を表した図である。また、図7において、上図は入力電圧の波形を示し、下図はリレーSW1の両端の電圧の差の波形を示す。なお、本形態は、インダクタンスの値を除いて図6に示す例と同様である。
【0048】
図7に示すように、インダクタンスを10mHかつ静電容量を2000μFとした場合のシミュレーション結果によれば、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロになるタイミングは、入力電圧のゼロクロスタイミングよりも約1msec早いことが確認された。また、本シミュレーション結果を位相に換算すると約27degである。制御信号生成部243は、本シミュレーション結果に基づいて、実際にリレーSW1の切替タイミングを、入力電圧のゼロクロスタイミングよりも約1msec(約27deg)早めたタイミングとする。
【0049】
なお、本シミュレーション結果を図6の条件に基づくシミュレーション結果と比較すると、インダクタンスの増加は、入力電圧のゼロクロスタイミングとリレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロである切替タイミングとの時間差に対して大きな影響を与えないことが理解される。
【0050】
図8は、図5のコンバータ装置において、インダクタンスを1mHかつ静電容量を3000μFとした場合の入力電圧及びリレーの両端の電圧の差のシミュレーション結果を表した図である。また、図8において、上図は入力電圧の波形を示し、下図はリレーSW1の両端の電圧の差の波形を示す。なお、本形態は、静電容量の値を除いて図9に示す例と同様である。
【0051】
図8に示すように、インダクタンスを10mHかつ静電容量を3000μFとした場合のシミュレーション結果によれば、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロになるタイミングは、入力電圧のゼロクロスタイミングよりも約1.5msec早いことが確認された。また、本結果を位相に換算すると約40degである。制御信号生成部243は、本シミュレーション結果に基づいて、実際にリレーSW1の接続状態を切替えるタイミングである切替タイミングを、入力電圧のゼロクロスタイミングよりも約1.5msec(約40deg)早めたタイミングとする。
【0052】
なお、本シミュレーション結果を図6の条件に基づくシミュレーション結果と比較すると、静電容量の増加は、入力電圧のゼロクロスタイミングとリレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロである切替タイミングとの時間差に対して影響を与えることが理解される。
【0053】
以上の各シミュレーション結果に基づいて、各コンバータ装置が備える電気素子の影響を考慮して、ゼロクロスタイミングを位相ずれ量θずらしたタイミングを切替タイミングに設定することにより、リレーSW1の切替時において、より確実にサージ電流の発生を回避することができる。
【0054】
また、図6図8に例示したシミュレーション結果によれば、切替タイミングは、マージンを含めて、例えば、入力電圧のゼロクロスタイミングに対して10~50deg程度の位相を進めたタイミングであり、より好ましくは入力電圧のゼロクロスタイミングに対して27~40deg程度の位相を進めたタイミングである。なお、これらの範囲は、本シミュレーションによる一例であり、コンバータ装置の電気的特性に対応して適宜変更されるものである。
【0055】
以上の各シミュレーション結果より、ゼロクロスタイミングに与える位相ずれ量θは数値範囲を有している。すなわち、位相ずれ量θは、サージ電流の発生を回避できる数値範囲内の値であればよい。そこで、制御部24は、設定可能な位相ずれ量θの数値範囲を設定することとしてもよい。
また、位相ずれ量θを含む所定の数値範囲において段階的に減縮された複数の許容範囲を設定することしてもよい。このように、位相ずれ量θについて許容可能な範囲が段階的に設けられることにより、コンバータ装置の制御条件に対応して、位相ずれ量θを柔軟に設定することができる。
【0056】
(事前に実施した試験結果に基づく切替タイミングの設定について)
また、上述の手法では、事前に行われたシミュレーション結果に基づいて、位相ずれ量θを求め、切替タイミングを設定したが、制御部24は、シミュレーション結果に代わって、事前に実施した試験結果に基づいて、位相ずれ量θを求め、切替タイミングを設定してもよい。この場合、記憶部244には、事前に実施した試験結果によって求められた位相ずれ量θが記憶されており、タイミング特定部241は、記憶部に記憶された位相ずれ量θに基づいて切替タイミングを特定する。なお、制御部24が行うその他の処理については、シミュレーション結果を使用する場合と同様である。
【0057】
〔第3実施形態〕
(電圧監視による切替タイミングの設定について)
上述の実施形態では、入力電圧のゼロクロスタイミングの位相をずらすことにより、切替タイミングを特定する手法を説明したが、その他の手法としてリレーSW1の両端の電圧の差を監視して切替タイミングを決定してもよい。
以下に、リレーSW1の両端子の電圧を監視することにより、リレーSW1の接続状態を切替える切替タイミングを設定する手法を説明する。
図9は、図1のコンバータ装置において、リレーの両端子の各電圧を検出する検出抵抗が設けられたコンバータ装置の例図である。
図9の構成において、リレーSW1の両端子には、電圧を検出するため検出抵抗であって、それぞれ複数の抵抗を備える分圧抵抗群(検出部)Rd1,Rd2がそれぞれ接続されている。また、分圧抵抗群Rd1の中点P3における電圧と分圧抵抗群Rd2の中点P4における電圧との両電圧は、制御部24へ入力される。なお、制御部24は、マイコンADポートを備え、入力された電圧量をA/D変換できることとしてもよい。
【0058】
ここで、例えば、図9のコンバータ装置11が空気調和装置に搭載されて利用される場合、制御部24には圧縮機が備えるモータ50の回転数変更指令が入力され、回転数変更指令の回転数が高い場合に、制御部24はコンバータ装置11の制御を低圧制御から高圧制御へ切替える。この場合において、まず、制御部24は、入力された分圧抵抗群Rd1の中点P3における電圧と分圧抵抗群Rd2の中点P4における電圧との両電圧に基づいて、低圧制御から高圧制御へ切替可能か否かを判断する。
【0059】
次に、制御部24が低圧制御から高圧制御へ切替可能であると判断した場合、制御部24が備える制御信号生成部243は、中点P3における電圧と中点P4における電圧とが一致するタイミング、すなわち、リレーSW1の両端の電圧の差がゼロであるタイミングを切替タイミングとする。そして、制御信号生成部243は、切替タイミングに基づいて、リレーSW1の接続状態をオンに切替える制御信号をリレー駆動用電源装置3へ出力する。
【0060】
このように、制御部24が、リレーSW1の両端子の各電圧に基づいて切替タイミングを設定し、切替タイミングに基づいてリレーSW1の接続状態をオンに切替えることにより、コンバータ装置11におけるサージ電流の発生を回避することができる。
【0061】
図10は、図1のコンバータ装置において、リレーの両端の電圧の差を検出する検出抵抗が設けられたコンバータ装置の例図である。
図10の構成において、リレーSW1の両端子には、電圧を検出するため検出抵抗であって、複数の抵抗を備える分圧抵抗群(検出部)Rd3が、リレーSW1と並列に接続されている。また、分圧抵抗群Rd3の中点P5における電圧は、制御部24へ入力される。なお、制御部24は、マイコンADポートを備え、入力された電圧量をA/D変換できることとしてもよい。
【0062】
ここで、例えば、図10のコンバータ装置12が空気調和装置に搭載されて利用される場合、制御部24には圧縮機が備えるモータ50の回転数変更指令が入力され、回転数変更指令の回転数が高い場合に、制御部24はコンバータ装置12の制御を低圧制御から高圧制御へ切替える。この場合において、まず、制御部24は、入力された分圧抵抗群Rd3の中点P5における電圧に基づいて、低圧制御から高圧制御へ切替可能かを判断する。具体的には、制御部24は、リレーSW1をオンに切替えた際にサージ電流が流れないか否かを判断する。
【0063】
次に、制御部24が低圧制御から高圧制御への変更が可能であると判断した場合、制御部24が備える制御信号生成部243は、中点P5における電圧がゼロであるタイミング、すなわち、リレーSW1の両端の電圧の差がゼロであるタイミングを切替タイミングとする。そして、制御信号生成部243は、切替タイミングに基づいて、リレーSW1の接続状態をオンに切替える制御信号をリレー駆動用電源装置3へ出力する。
【0064】
このように、制御部24が、リレーSW1の両端子間の中点P5の電圧に基づいて切替タイミングを設定し、切替タイミングに基づいてリレーSW1の接続状態をオンに切替えることにより、コンバータ装置12におけるサージ電流の発生を回避することができる。
【0065】
なお、上述の例では検出抵抗を用いた電圧検出を例示したが、この例に限らず、例えば、電圧計や電圧センサを用いてリレーSW1の両端の電圧の差を検出することとしてもよく、その他の手法を適宜用いることとしてもよい。
【0066】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本開示のコンバータ装置10,11,12,13において、制御部24は、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロとなる切替タイミングにおいて、リレーSW1を切替えることにより、低圧制御と高圧制御とを切替えることとしてもよい。すなわち、制御部24は、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロとなる切替タイミングにおいて、リレーSW1をオンする。これにより、リレーSW1及びリレーSW1に接続される電気素子、例えば、ダイオードD1~D4やコンデンサC1,C2に流れるサージ電流を抑制することができる。また、各電気素子への被害を軽減することができる。
【0067】
本開示のコンバータ装置11,12において、交流電源から供給される交流電力のゼロクロスタイミングを検出するゼロクロス検出部23が備えられ、制御部24は、ゼロクロス検出部23によって検出されたゼロクロスタイミングから所定位相量ずれたタイミングを切替タイミングしてもよい。なお、本所定位相量は、事前に行われたシミュレーション結果又は事前に実施した試験結果に基づいて特定される。これにより、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロとなるタイミングである切替タイミングをより正確に設定することができ、サージ電流をより確実に抑制することができる。
【0068】
また、所定位相量は、シミュレーション結果に基づく所定の数値範囲において段階的に減縮された複数の許容範囲から選択されるものであってもよい。このように、所定量について許容可能な範囲が設けられることにより、コンバータ装置の制御条件に対応して、所定位相量を柔軟に設定することができる。
【0069】
本開示のコンバータ装置11,12において、リレーSW1の両端の電圧を検出する分圧抵抗群Rd1,Rd2,Rd3が備えられ、制御部24は、分圧抵抗群Rd1,Rd2,Rd3のいずれかによって検出された検出結果に基づいて切替タイミングを設定することとしてもよい。これにより、直接検出したリレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロとなるタイミングを切替タイミングとすることができる。そして、サージ電流をより確実に抑制することができる。
【0070】
以上、本開示について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0071】
例えば、本開示においては、リレーSW1の両端に電圧の差がゼロであるタイミングを切替タイミングとしたが、マージンを考慮して、リレーSW1の両端に電圧の差が略ゼロのタイミングが切替タイミングとして特定されてもよい。この場合、略ゼロの範囲は、コンバータ装置が備える電気素子の特性に応じて決定されてもよい。また、設計者が指定する範囲であってもよい。
【0072】
また、本開示においては、リレーSW1の両端の電圧の差が略ゼロであるタイミングを切替タイミングとして、切替タイミングにおいてリレーSW1をオンにすることにより、サージ電流の発生を回避する例を説明したが、これに限らず、その他のスイッチング素子に適用してもよい。また、コンバータ装置が備える整流素子の回路構成についても、本実施形態の例に限らず、ブリッジ整流回路、横型ブリッジレス回路、フルブリッジレス整流回路のいずれであってもよい。
【0073】
(付記事項)
上述した実施形態に記載の制御システム、本制御システムを備えた切替回路、本切替回路を備えた室外機は、例えば以下のように把握される。
上述した実施形態に記載のコンバータ装置、これを備えたモータ駆動装置は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係るコンバータ装置は、交流電源から供給される交流電力を整流する複数の整流素子(D1~D4)を備えるブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサ(C1,C2)と、直列接続された複数の整流素子の間の中点(P1)に第1端子が接続され、複数のコンデンサの間の中点(P2)に第2端子が接続されたスイッチング素子(SW1)と、前記スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、全ての前記コンデンサに一方向から電流が供給される低圧制御と、交流電源の半周期毎に充電される前記コンデンサが切り替えられる高圧制御とを切替える制御部(24)とを備え、制御部は、スイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロとなる切替タイミングにおいて、スイッチング素子をオンする。
【0074】
本開示のコンバータ装置によれば、制御部は、スイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロとなる切替タイミングにおいて、スイッチング素子を切替えることにより、低圧制御と高圧制御とを切替える。例えば、スイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロではないタイミングに、スイッチング素子がオフからオンへ切替わるとスイッチング素子及びスイッチング素子に接続される電気素子にサージ電流が流れてしまう。また、スイッチング素子の両端の電圧の差が大きい場合、サージ電流も大きくなり、スイッチング素子及びスイッチング素子に接続される電気素子を破損させる可能性がある。そこで、制御部は、スイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロとなる切替タイミングにおいて、スイッチング素子をオンする。これにより、スイッチング素子及びスイッチング素子に接続される電気素子に流れるサージ電流を抑制することができる。また、各電気素子への被害を軽減することができる。
【0075】
本開示の第2態様に係るコンバータ装置は、前記第1態様において、交流電源から供給される交流電力のゼロクロスタイミングを検出する検出部(23)を備え、制御部は、検出部によって検出されたゼロクロスタイミングから所定量ずれたタイミングを切替タイミングに設定する。
【0076】
本開示のコンバータ装置によれば、交流電源から供給される交流電力のゼロクロスタイミングを検出する検出部を備え、制御部は、検出部によって検出されたゼロクロスタイミングから所定量ずれたタイミングを切替タイミングとする。これにより、交流電源から供給される交流電力のゼロクロスタイミングにスイッチング素子をオンにするとサージ電流が発生する場合においても、スイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロとなるタイミングを切替タイミングに設定することができる。そして、スイッチング素子の切替タイミング適宜変更することができ、より確実にサージ電流の発生を抑制することができる。
【0077】
本開示の第3態様に係るコンバータ装置は、前記第2態様において、所定量は、事前に行われたシミュレーション結果又は事前に実施した試験結果に基づいて設定されている。
【0078】
本開示のコンバータ装置によれば、所定量は、事前に行われたシミュレーション結果又は事前に実施した試験結果に基づいて設定されている。これにより、スイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロとなるタイミングである切替タイミングをより正確に設定することができ、サージ電流をより確実に抑制することができる。
【0079】
本開示の第4態様に係るコンバータ装置は、前記第1態様において、スイッチング素子の両端の電圧を検出する検出部(Rd1,Rd2,Rd3)を備え、制御部は、検出部の検出結果に基づいて切替タイミングを設定する。
【0080】
本開示のコンバータ装置によれば、スイッチング素子の両端の電圧を検出する検出部を備え、制御部は、検出部によって検出された検出結果に基づいて切替タイミングを設定する。これにより、直接検出したスイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロとなるタイミングを切替タイミングとすることができる。そして、サージ電流をより確実に抑制することができる。
【0081】
本開示の第1態様に係るモータ駆動装置は、前記第1態様から前記第4態様のいずれかのコンバータ装置(10,11,12,13)を備える。
【符号の説明】
【0082】
1 モータ駆動装置
2 交流電源
3 リレー駆動用電源装置
5 ブリッジ整流回路
10、11、12、13 コンバータ装置
22 入力電圧検出部
23 ゼロクロス検出部
24 制御部
40 インバータ装置
50 モータ
241 タイミング特定部
243 制御信号生成部
244 記憶部
C1、C2 コンデンサ
D1~D4 ダイオード
I1、I2 電流
L1 リアクトル
Rd1、Rd2、Rd3 分圧抵抗群
SW1 リレー
ZC ゼロクロスタイミング

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電力を整流する複数の整流素子を備えるブリッジ整流回路と、
前記ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサと、
直列接続された複数の前記整流素子の間の中点に第1端子が接続され、複数の前記コンデンサの間の中点に第2端子が接続されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、全ての前記コンデンサに一方向から電流が供給される低圧制御と、交流電源の半周期毎に充電される前記コンデンサが切り替えられる高圧制御とを切替える制御部と
前記スイッチング素子の両端の電圧を検出する第1検出部と
を備え、
前記制御部は、前記第1検出部の検出結果に基づいて前記スイッチング素子の両端の電圧の差が略ゼロとなる切替タイミングにおいて、前記スイッチング素子をオンするコンバータ装置。
【請求項2】
前記交流電源から供給される交流電力のゼロクロスタイミングを検出する第2検出部を備え、
前記制御部は、前記第2検出部よって検出された前記ゼロクロスタイミングから所定位相ずれた切替タイミングにおいて、前記スイッチング素子をオンする請求項1に記載のコンバータ装置。
【請求項3】
前記所定位相は、事前に行われたシミュレーション結果又は事前に実施した試験結果に基づいて設定されている請求項2に記載のコンバータ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のコンバータ装置と、
前記コンバータ装置から供給された直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ装置と
を備えるモータ駆動装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
ゼロクロス検出部(第2検出部)23は、入力電圧検出部22によって検出される交流電源2の電圧の値に関して、その正負が切り替わったか否か(ゼロクロス点に達したか否か)を判定する機能を有する。また、ゼロクロス検出部23は、交流電源2の電圧の位相を検出する機能を有する。ゼロクロス検出部23は、交流電源2の電圧の極性を検出する極性検出部であり、ゼロクロス信号を制御部24に出力する。例えば、ゼロクロス検出部23は、交流電源2の電圧が正の期間中には制御部24に「1」の信号を出力し、交流電源2の電圧が負の期間中には制御部24に「0」の信号を出力する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
〔第3実施形態〕
(電圧監視による切替タイミングの設定について)
上述の実施形態では、入力電圧のゼロクロスタイミングの位相をずらすことにより、切替タイミングを特定する手法を説明したが、その他の手法としてリレーSW1の両端の電圧の差を監視して切替タイミングを決定してもよい。
以下に、リレーSW1の両端子の電圧を監視することにより、リレーSW1の接続状態を切替える切替タイミングを設定する手法を説明する。
図9は、図1のコンバータ装置において、リレーの両端子の各電圧を検出する検出抵抗が設けられたコンバータ装置の例図である。
図9の構成において、リレーSW1の両端子には、電圧を検出するため検出抵抗であって、それぞれ複数の抵抗を備える分圧抵抗群(第1検出部)Rd1,Rd2がそれぞれ接続されている。また、分圧抵抗群Rd1の中点P3における電圧と分圧抵抗群Rd2の中点P4における電圧との両電圧は、制御部24へ入力される。なお、制御部24は、マイコンADポートを備え、入力された電圧量をA/D変換できることとしてもよい。